【実施例】
【0032】
実施例1.コンクリート製枕木のクラック検知試験
コンクリート製枕木のクラックの形成及びその検知を検証した。
図1はコンクリート製枕木のクラック検知試験の構成を示す説明図である。
図1に示す通り、プレストレスト・コンクリート(PC)製枕木11の表面にレールを載置する箇所に対向する裏面の両端部を支持するように一組の支持片12を配置した。PC製枕木11の表面のレールを載置する箇所に油圧ジャッキ13を配置し、所定の荷重をかけることとした。
【0033】
PC製枕木11の表面のレールを載置する箇所を跨ぐように、超音波発信器14と超音波受信器16とがPC製枕木11の表面に設置される。超音波発信器14の超音波の入射方向は一組の支持片12の間のレールを載置する箇所に対向する裏面18に向かう方向に調整され、超音波受信器16は裏面で反射される反射波を受信するように受信方向を裏面18に調整した。
【0034】
計測は油圧ジャッキ13でPC製枕木11に荷重を加えた状態で行った。即ち、油圧ジャッキ13でPC製枕木11に所定の荷重を加えた状態で、発信器制御手段15の制御により超音波発信器14の振動子を駆動し、超音波受信器16で裏面18で反射した反射波を受信し、解析手段を備えたモニター17で反射波を確認した。
【0035】
図2は
図1のコンクリート製枕木のクラックの状態を示す説明図である。
図3は
図2のa図の状態で受信器に受信された反射波の波形図である。
図4は
図2のb図の状態で受信器に受信された反射波の波形図である。
図5は
図2のc図の状態で受信器に受信された反射波の波形図である。
図6は
図2のd図の状態で受信器に受信された反射波の波形図である。
図3〜
図6において、破線は受信器で計測されたオリジナルの反射波であり、実線はオリジナルの反射波にフィルタをかけたものである。
【0036】
このフィルターは、波線のオリジナルデータを強調して表示するためのアナログフィルターであり、本実施例ではコンクリートの反射成分に絞った設定を行った。詳しくは、400MHz以上の区域成分をカットし、50MHz以下の低域成分をカットした。尚、フィルターの中心検出周波数は200MHzに設定した。
【0037】
図3は、油圧ジャッキ13で1000kgの荷重を加えた状態で、発信器制御手段15の超音波の反射波を超音波受信器16で受信し、解析手段を備えたモニター17で反射波を確認したものである。
図2のa図に示す通り、PC製枕木の裏面18にクラックの形成はなく、
図3に示した通り、計測された反射波は鋭いピークを示しており、破線で示した反射波で最も鋭いピークのものの路程は189mmあった。この路程は実際のPC製枕木の厚さ187mmとよく一致していた。
【0038】
図4は、
図3に引き続き、油圧ジャッキ13で16000kgの荷重を加えた状態で、発信器制御手段15の超音波の反射波を超音波受信器16で受信し、解析手段を備えたモニター17で反射波を確認したものである。
図2のb図に示す通り、PC製枕木の裏面18の略中央部に1つのクラック21が確認された。
図4に示した通り、計測された反射波は鋭いピークが示されているものの、
図3と比較するとピーク自体が小さく、少なくなっていた。破線で示した反射波で最も鋭いピークのものの路程は192mmであった。この路程は実際のPC製枕木の厚さよりも若干大きくなっていた。
【0039】
図5は、
図4に引き続き、油圧ジャッキ13で20000kgの荷重を加えた状態で、発信器制御手段15の超音波の反射波を超音波受信器16で受信し、解析手段を備えたモニター17で反射波を確認したものである。
図2のc図に示す通り、PC製枕木の裏面18の略中央部のクラック21の他に、一方の支持片12の近くに別のクラック22が確認された。
図5に示した通り、計測された反射波は更に小さく、少なくなっていた。破線で示した反射波で最も鋭いピークのものの路程は191mmであった。この路程は実際のPC製枕木の厚さよりも大きくなっていた。
【0040】
図6は、
図5に引き続き、油圧ジャッキ13で22000kgの荷重を加えた状態で、発信器制御手段15の超音波の反射波を超音波受信器16で受信し、解析手段を備えたモニター17で反射波を確認したものである。
図2のd図に示す通り、PC製枕木の裏面18の略中央部のクラック21及び別のクラック22の他に、他方の支持片12の近くに更に別のクラック23が確認された。
図6に示した通り、計測された反射波は更に更に小さく平坦になっていた。破線で示した反射波で最も鋭いピークのものの路程は370mmであった。この路程は実際のPC製枕木の厚さよりも更に大きくなっていた。
【0041】
以上のように、クラックが形成されるに従い、多数あった鋭いピークの反射波が小さく細かくなり、更には平坦となることが確認された。これは、クラックによって入射された超音波や反射波が遮られたり、乱反射するためであることが推認された。
【0042】
実施例2.コンクリート製枕木のクラック検知装置
実施例1の結果を踏まえて、コンクリート製枕木のクラック検知装置を提案する。
図7はコンクリート製枕木のクラック検知装置の一実施例の概要を示す説明図である。a図に示す通り、本実施例のクラック検知装置70は、超音波発信器74と超音波受信器76とがレール底部の幅以上の15cm以上の間隔で保持するように横木フレーム71で保持されている。横木フレームの中央部にはグリップ72が設置されている。
【0043】
超音波発信器74は円筒状の発信器シャフト73の下端部に複数のクリップ77で固定されている。クリップ77をシャフト73に固定するリング部材78からは、発信器74を駆動するためのケーブル79が導出され、図示しない発信器制御手段に導通されている。
【0044】
同じく超音波受信器76は円筒状の受信器シャフト75の下端部に複数のクリップ77で固定されている。クリップ77をシャフト75に固定するリング部材78からは、受信器75で受信した反射波の信号を伝達するためのケーブル79が導出され、図示しない表示装置や解析装置に反射波の信号を伝達する。b図に示す通り、クリップ77は後端部に配されたバネで先端部が常にシャフト側壁方向に付勢されており、この先端部で発信器74及び受信器76を固定している。
【0045】
シャフト73,75の各々の上部には、横木フレーム71の各々の端部が貫通する貫通孔80が各々貫通されており、シャフト73,75を横木フレーム71に沿って移動させることができる。尚、横木フレーム71の両端には各々、エンドキャップ81が装着され、各々のシャフト73,75が横木フレーム71から脱落することを防止している。また、横木フレーム71の両端部には各々目盛82が記載されており、横木フレーム71の中央部からの距離が計測できるようになっている。
【0046】
c図に示す通り、各々のシャフトの上端にはキャップ83が固着されており、シャフト73,75内に配されたピストン84をキャップ83で端部を押さえるバネ85で横木フレーム71を押圧する。これにより、各々のシャフト73,75の横木フレーム71に沿った移動が抑制され、不用意に移動することが防止される。