(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流高圧出力回路にダイオードと抵抗を組み合わせた正電圧ブリーダ回路を設け、これらの回路要素のうち抵抗の抵抗値を選択することによって、正電圧と負電圧との波高値比率が1:X(≠1)となるような非対称の交流高圧電圧を得ることができる非対称交流高圧電源には、平行する一対の板状の電極(1・1)を備えている一方、
これらの電極(1・1)を絶縁体により成形された支柱(11)によって所定間隔で支持せしめ、かつ、これらの電極(1・1)間に、植物(P)の種子(S)が載置可能な苗床(2)を配設して、
この苗床(2)に載置された植物(P)の種子(S)に対し、非対称交流電界を一様に印加可能であることを特徴とする植物の発芽促進装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の技術において、上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、非対称交流電界の生体的効用に着目し、その電界作用による植物の
発芽促進を確実に行うことができる植物の
発芽促進装置および
植物の発芽促進方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0008】
即ち、本発明は、交流高圧出力回路にダイオードと抵抗を組み合わせた正電圧ブリーダ回路を設け、これらの回路要素のうち抵抗の抵抗値を選択することによって、正電圧と負電圧との波高値比率が1:X(≠1)となるような非対称の交流高圧電圧を得ることができる非対称交流高圧電源には、平行する一対の板状の電極1・1を備える一方、
これらの電極1・1を絶縁体により成形された支柱11によって所定間隔で支持せしめ、かつ、これらの電極1・1間に、植物P
の種子Sが載置可能な
苗床2を配設して、
この
苗床2の表面の植物P
の種子Sに対し、非対称交流電界を一様に印加可能にするという技術的手段を採用したことによって、植物の
発芽促進装置を完成させた。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、非対称交流高圧電源の負電圧を正電圧の2〜4倍にするという技術的手段を採用することができる。
【0010】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、
苗床2には板体の表面に複数の凹部21・21…を略等間隔で設け、これらの各凹部21にそれぞれ植物P
の種子Sを設置可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、電極1をアルミニウム製にするという技術的手段を採用することができる。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、
成長用シートが敷かれた苗床(2)上に植物(P)の種子(S)を設置した後、前記成長用シートに肥料を含まない水を染みこませた状態で、前記植物Pの種子Sに対して、正負の絶対値が異なる非対称交流電界を印加することによって、植物Pの種子Sの発芽率を上昇せしめるという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、複数の種子S・S…を
苗床2の表面に設けられた凹部21・21…に載置するという技術的手段を採用することができる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、平行する一対の板状の電極1の間に
苗床2を配設して、この
苗床2
上に植物P
の種子Sを設置して、この植物P
の種子Sに電界を一様に印加するという技術的手段を採用することができる。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、
苗床2が設置されたカラーボックス3内に加湿装置4を配設して、ボックス3内の湿度を100%にするという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、交流高圧出力回路にダイオードと抵抗を組み合わせた正電圧ブリーダ回路を設け、これらの回路要素のうち抵抗の抵抗値を選択することによって、正電圧と負電圧との波高値比率が1:X(≠1)となるような非対称の交流高圧電圧を得ることができる非対称交流高圧電源に、平行する一対の板状の電極を備え、これらの電極を絶縁体により成形した支柱によって所定間隔で支持せしめ、かつ、これらの電極間に、植物が載置可能なプラントを配設することによって、このプラントの表面の植物に対して、非対称交流電界を一様に印加することができる。
【0018】
また、かかる装置を用いることにより、植物に対して、正負の絶対値が異なる非対称交流電界を印加することによって、植物の成長を促進せしめることができ、また、植物の種子の発芽率を上昇せしめることができる。
【0019】
したがって、本発明によれば、(非対称の)交流電界を採用したことによって、エネルギー(電力)の消費が極めて少なく、環境に優しく、コストパフォーマンスにも優れている。また、本装置の構造により、非対称交流電界の電界作用による植物の成長促進を確実に行うことができることから、産業上の利用価値は頗る大きいと云える。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて、更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0022】
本発明の実施形態を
図1から
図10に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは電極であり、符号2で指示するものはプラント(苗床)である。また、符号3で指示するものはカラーボックスであり、符号4で指示するものは加湿装置である。
【0023】
しかして、本実施形態における成長促進装置の構成について説明する。まず、本実施形態の電源は、交流高圧出力回路にダイオードと抵抗を組み合わせた正電圧ブリーダ回路を設け、これらの回路要素のうち抵抗の抵抗値を選択することによって、正電圧と負電圧との波高値比率が1:X(≠1)となるような非対称の交流高圧電圧を得ることができる非対称交流高圧電源を採用する。
【0024】
この際、本実施形態では、非対称交流高圧電源の負電圧を正電圧の2〜4倍にすることができ、高い効果を得ることができる。
【0025】
そして、この電源には平行する一対の板状の電極1・1を備えており、これらの電極1・1を絶縁体(プラスチック)により成形された支柱11によって所定間隔で支持する(
図1参照)。本実施形態では、電極1をアルミニウム製にすることができる。
【0026】
また、これらの電極1・1間に、植物Pが載置可能なプラント2を配設する一方、このプラント2の表面に植物Pに対して、非対称交流電界を一様に印加することができるようにした。
【0027】
本実施形態では、プラント2には板体の表面に複数の凹部21・21…を略等間隔で設け、これらの各凹部21にそれぞれ植物P(種子S)を設置することができる(
図2および
図3参照)。
【0028】
また、本発明の成長促進方法は、上記のように構成した装置を用いて、植物Pに対して、正負の絶対値が異なる非対称交流電界を印加することによって、植物Pの成長を促進せしめるものである。また、植物Pの種子Sに対して、正負の絶対値が異なる(正電圧と負電圧との波高値比率が1:X(≠1)である)非対称交流電界を印加することによって、植物Pの種子Sの発芽率を上昇せしめるものである。
【0029】
この際、平行する一対の板状の電極1・1の間にプラント2を配設して、このプラント2の表面に植物Pを設置することによって、この植物Pに非対称交流電界を一様に印加する。
【0030】
以下、本発明における植物の成長促進装置および方法について、実験に基づいて、正負の絶対値が異なる非対称交流電界を、植物P(本実施形態ではカイワレ大根)に印加する場合の発芽・成長に影響を、従来の直流電界または対称交流電界を印加する場合と比較して説明する。なお、各電界の場合について、栽培条件(土壌、水耕など)、環境条件(実験容器、温度など)、電気的条件(電界強度、イオン濃度など)などの条件にばらつきのないように環境を統一する。
【0031】
まず、本実施形態における成長促進装置の具体的仕様について説明する。電極1は、上側の電極が240mm×200mm×2mmのアルミニウム製板体で、下側の電極が300mm×200mm×2mmのアルミニウム製板体であり、これら板状の電極1・1を支える支柱11は100mm×φ15mmのプラスチック製棒体であり、土台の柱は50mm×φ15mmのアルミニウム製のものを採用し、電極1・1間のギャップ(間隔)は100mmである。
【0032】
なお、本実施形態では、電極1(アルミ板)の厚さを2mmにすることで、電極強度の向上を図った。また、電源との接続をY型端子にし、ボルト・ナット・スプリング座金を用いて固定することで、接続が外れにくくした。また、プラスチック製のネジを用いて電極1を固定した。
【0033】
本実施形態では、交流高圧出力回路にダイオードと抵抗を組み合わせた正電圧ブリーダ回路を設け、これらの回路要素のうち抵抗の抵抗値を適正に選択することによって、正電圧と負電圧との波高値比率が1:3となるような交流高圧電圧を得ることができる。ここで、正電圧と負電圧との波高値比率が1:3となる非対称交流電源の回路図の一例を
図4に示す。
【0034】
また、本実施形態では、正電圧と負電圧との波高値比率が3:1となるような交流高圧電圧を得ることもできる。下に正電圧と負電圧との波高値比率が3:1となる非対称交流高圧電源の回路図の一例を
図5に示す。
【0035】
なお、本実施形態では、信号発生器を非対称交流高圧電源に接続することによって、出力範囲を制御し、ギャップ100mmの平行平板電極に100V印加して、10V/cmの電界を形成することができる。この信号発生器の仕様は以下のとおりである。
〔信号発生器の仕様〕
会社名 KENWOOD
型名 AG−203 CROSCILLATOR
出力波形 正弦波,方形波,三角波
出力電圧 0V〜70V
周波数範囲 10Hz〜1MHz
電源電圧 AC100V
【0036】
<比較例:直流高圧電源>
ここで、本実施形態における従来技術との比較例に用いる直流高圧電源の回路図の一例を
図6に示す。この直流高圧電源の動作原理は、基準電圧として温度係数及び寿命の点から電圧標準管(85A2)を使用している。また、電圧標準管の放電電圧と基準抵抗(R)で定電圧を作り、この定電流をレンジ切換抵抗(Rf)に流し、この時の電圧降下(i・Rf)をもって安定化出力電圧としている。以下に直流高圧電源の仕様を示す。
【0037】
〔電源仕様〕
会社名 KAWAGUCHI ELECTRIC WORKS CO.,LTD.
型名 高精度高圧電源 ModelV−710
出力電圧 0〜±1KV,DC
電圧測定精度 ±0.25%又は200mV
リップル 5mV
メーター ±10KV2.5級
出力電流 10mA2.5級
出力電圧極性 正又は負
過負荷保護 11mAで回路遮断
電源 100±10% 50〜60Hz 300W
【0038】
また、種子を配列することができるプラント2は、複数の凹部21・21…が形成されたプラスチック製の板体である。本実施形態におけるプラント2は、プラントの板の厚さを厚くし、歪みに強くして、設置した種子に一様に水を与えることができる。また、板のほぼ中央に大きな取っ手を設置し、測定等の作業をしやすくした。
【0039】
更にまた、プラント2の凹部21(穴)の大きさを大きくし、かつ、数を少なめにすることで、成長実験時の種子の配置がずれないようにし、成長実験時にカイワレ大根の根が通る場所を確保して、種子の配置がずれて、種子の番号が分からなくなってしまうのを防ぐ。
【0040】
本実施形態における発芽実験および成長実験は、ともに、気温25℃、湿度100%、照度0lxの統一した環境の中で行う。方法としては、気温はエアコンで管理し、湿度はカラーボックス3内の加湿装置4に47.5℃の湯を1L入れ2時間放置し、照度はカラーボックス3によって光を遮断することでこれらの環境を実現する(
図7および
図8参照)。また、与える水を天然水と肥料水との場合に分けて電界効果を調べた。
【0041】
なお、本実施形態の実験では、植物の葉の表面の気化を防ぎ、実験条件のばらつきを減らすために、クーラー等による空調設備で風を直接当てないようにする。
【0042】
また、カイワレ大根に与える水は、同一の水(天然水)で統一する。また、肥料水はこの水に有機液肥を入れ、100倍に希釈したものを用いる。
【0043】
<発芽実験>
まず、発芽率の測定実験について説明する。まず、プラント2にカイワレ大根の成長用シート(ろ過フィルター、脱脂綿など)を敷き、プラントの形に切ったものの上に種子を50個設置し、水(肥料実験の場合は肥料水)を30ml染み込ませる。
【0044】
この状態のプラント2を上記雰囲気条件を満たしたカラーボックス3内に設置して、各条件の電界をそれぞれ印加し、24時間後に発芽率を測定する。発芽の基準は、種子の表面の薄皮にヒビが入るか、芽が出ていることが確認できたら発芽とみなす。
【0046】
(比較例2)対称交流電界の印加効果
次に、対称交流電界を印加した実験結果を以下の表に示す。対称交流の表示はすべて最大値である。
〔対称交流電界、天然水〕
電界[V/cm] 1000 100 10 0
1回目 90 86 86 86
2回目 84 82 86 80
3回目 82 80 80 84
平均 85.3 82.7 84 83.3
〔対称交流電界、肥料水〕
電界[V/cm] 1000 100 10 0
1回目 84 90 88 88
2回目 86 84 84 86
3回目 90 82 82 84
平均 86.7 85.3 84.7 86
ここからは発芽率の変化の規則性が見られず、発芽率の変化は電界印加によるものではなく、統計的なばらつきによるものだと考えられる。
【0047】
(本発明)非対称交流電界の印加効果
次に、本発明の非対称交流電界の印加効果(発芽率)について説明する。非対称交流電界は正電圧が負電圧の3倍ある非対称交流を1000V/cm、100V/cm、10V/cmの3種類、負電圧が正電圧の3倍ある非対称交流も1000V/cm、100V/cm、10V/cmの3種類についてそれぞれ天然水、肥料水で電界効果を調べた。非対称交流の表示はすべて最大値である。
【0048】
非対称交流電界を印加した発芽率の実験結果を以下の表に示す。
〔非対称電界、天然水〕
電界[V/cm] 1000 100 10 0 −10 − 100 −1000
1回目 90 86 90 86 92 86 82
2回目 86 88 84 80 98 88 92
3回目 86 82 88 84 88 88 90
平均 87.3 85.3 87.3 83.3 92.7 87.3 88
〔非対称電界、肥料水〕
電界[V/cm] 1000 100 10 0 −10 − 100 −1000
1回目 84 84 90 88 84 82 88
2回目 90 92 88 86 80 92 90
3回目 84 84 86 84 88 84 92
平均 86 86.7 88 86 84 86 90
【0049】
低い電界では、天然水の場合、正電圧が負電圧の3倍の時は10V/cmと1000V/cmの発芽率が等しく、100V/cmの時のみ発芽率が低い。電界無しの場合より発芽率は大きいので発芽を促進すると言える。負電圧が正電圧の3倍の時は電界が強くなるにつれて発芽率が増加している。
【0050】
天然水の場合、対称交流電界は両方とも発芽を促進する。肥料水の場合、正電圧が負電圧の3倍の時は、発芽率は電界に依存せず、負電圧が正電圧の3倍の時は1000V/cmのとき発芽率が増加する。したがって、負電圧が正電圧の3倍の時は発芽が非対称交流電界に促進される。
【0051】
全体的に見ると、負電圧が正電圧の3倍の場合、天然水でも肥料水でも非対称交流電界が発芽を促進するが、天然水の方が少し効果が大きい。正電圧が負電圧の3倍の場合、天然水の場合は、非対称交流電界が発芽を促進するが、肥料水を使うと電界効果が消える。
【0052】
なお、植物Pに対して高すぎる電界(コロナ電流50μA以上)を印加すると、葉の縁によってコロナ放電が生じ、葉先から水分が蒸発して、葉が変色したり萎え始めるおそれがある。
【0053】
<成長実験>
次に、成長実験について説明する。電源等の条件は、前記発芽率実験と同じである。成長実験には、市販されているカイワレ大根の種子(40ml、発芽率85%)を用いる。この種子を実験の1日前に水に浸しておき、発芽させた状態でプラント2にセットする。
【0054】
そして、プラント2の板を囲い容器にセットし、容器内に天然水(肥料実験の場合は肥料水)を300ml入れ、それを前記実験条件を満たしたカラーボックス3内に設置して、電界を印加し、4日間1日ごとに茎の長さを測定する。測定基準はプラント2からの垂直長さを茎の長さとする。
【0055】
<「t検定」による成長実験の考察>
ここで、実験によってカイワレ大根の成長に及ぼす電界の効果を調べるにあたって、「t分布」を用いた統計的検定(t検定)を行う。この「t検定」とは、標本調査により得られた結果から母集団に関する判断を下す時、単に表に現れた数値を比較するだけでなく、一定の統計的な尺度を持って判断することをいう。本実施形態では、この「t検定」により、カイワレ大根の成長の実験結果が本当に電界によって得られたものなのかどうかを判断するものである。
【0056】
「t検定」を行う場合、多くの場合は母分散が未知であり、標本普偏分散の値から検討することを考えなければならない。そこで、2つの正規母集団の分散が等しいと仮定したうえで「t検定」を行う。なお、「母分散」とは母集団(カイワレ大根全て)の確率変数の分布が標本平均からどれだけ散らばっているかを表す値であり、「普偏分散」とは母集団から取り出した一部の標本(実際に育てたカイワレ大根)の確率変数の分布が標本平均からどれだけ散らばっているかを表す値である。この場合の母集団A,Bの標本不偏分散の値U
A,U
Bは、次の式で表される。
【数1】
【0057】
これより共通の分散σ
2の不偏推定量U
2を求めると、
【数2】
となる。
【0058】
これより統計量Tを求めると、
【数3】
となり、統計量Tは自由度n
A+n
B−2のt分布に従う。2つの正規母集団について、帰無仮説「μ
A=μ
B」とし(μ
A,μ
Bは母集団A,Bの平均値)、これを用いて有意水準αで平均値の差の検定を行う。
【0059】
【数4】
この式を満たすとき、この仮説は有意水準αで棄却され、「αの確率で両者に異なる結果が表れている」といえる。t
nA+nB−2(α)は、信頼度n
A+n
B−2でx=αの時のt分布の値である。
【0060】
t検定は、「2つの正規母集団の分散が等しいと仮定できる場合」においてのみ有効な方法であるため、事前にこの分散の差の検定を行うことにより、2つの正規母集団の分散が等しいかどうかを確認することができる。
【0061】
まず、2つの正規母集団について、帰無仮説「σ
A=σ
B」とする(σ
A,σ
Bは母集団A,Bの分散)。この仮説のもとで、統計量Fは、
【数5】
で表され、自由度対(n
A−1,n
B−1)のF分布に従う。σ
A,σ
Bのどちらの値が大きいかは未知なので、棄却域を両側にとる両側検定となる。
【0062】
これより、
【数6】
この式を満たす場合、仮説は有意水準αで棄却され、2つの正規母集団の分散は等しくない。t検定はσ
A≠σ
Bでは行えないので、この仮説が棄却されてはならない。
【0063】
以上の3種類の電界の印加実験について調べた結果、以下のことが明らかになった。
(1)天然水の場合、直流電界は1000V/cmになると正負電界ともに、カイワレ大根の発芽を促進する。やや負電界の方が効果は大である。それより低い電界では、発芽に対する促進効果と抑制効果が混在している(低電界では、発芽にほとんど効果がないという見方もできる)。
また、肥料水の場合、正負電界が1000V/cmになると発芽率(%)は電界なしと同等か少し高くなる傾向になる。負電界の場合、−10V/cm,−100V/cmにおいて発芽が著しく抑制される。
(2)対称交流電界は発芽率にほとんど影響を及ぼさない。
(3)負電圧が正電圧の3倍の場合、天然水でも肥料水でも非対称交流電界が発芽を促進するが、天然水の方が、少し効果が大きい。正電圧が負電圧の3倍の場合、天然水の場合は、非対称交流電界が発芽を促進するが、肥料水を使うと電界効果が消える。
(4)肥料水は発芽を抑制し、直流電界及び非対称交流電界による促進効果を相殺する。
(5)高電界(±1000V/cm)は発芽率を顕著に高める。やや負の高電界の方が効果は大きい。
(6)電界なしの場合、肥料水は発芽率を高める。
【0064】
なお、本実施形態においては、照明5を用いた別の実験を行うこともできる。具体的には、照明5に蛍光灯の光(照度:850lx)を採用し、太陽光はブラインドで遮断した。この蛍光灯の光は、午前10時から午後5時の7時間照射し、種子に当たる光の量は全て均一になるように配置している。この理由は太陽光では、実験条件の統一を図るのが困難だからである。
【0065】
また、他の照明5として、
図8に示すように、LEDの光(赤と青)のみで実験を行うことで、電界と光の相乗効果を確認することもできる(
図9参照)。そのため、LED光源51を電極1の上板の上に設置し、植物(種子)に直接光を照射できるように植物(種子)の配置と同様の通孔1aを上板に開けることができる。LEDが電界の影響を受けないように光源と電極の間に絶縁板52を設けることができる。
【0066】
そして、ステンレス製平行平板電極1・1間に、カイワレ大根の栽培ユニット(プラント2)を置き、その周りを円筒状に丸めたプラスチックボード6で覆い、外部からの光を遮断することができる(
図10参照)。
【0067】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、正負の絶対値が異なる非対称交流電界であれば、この波高値比率は3:1や1:3に限らず、他の比率にすることもできる。