(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951268
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】医療用チューブ及び医療用チューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
A61M25/00 600
A61M25/00 500
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-16901(P2012-16901)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-153948(P2013-153948A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】597089576
【氏名又は名称】株式会社リバーセイコー
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5658263(US,A)
【文献】
特開2010−162290(JP,A)
【文献】
特開2006−102024(JP,A)
【文献】
特表平7−501232(JP,A)
【文献】
特開2011−72561(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0030400(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0208166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の医療治具を先端側に挿通して案内する所定外径の円筒形状のガイドチューブと、該ガイドチューブの基端側に取り付けられ、ガイドチューブの先端側を湾曲させるための湾曲操作部とを備え、該ガイドチューブが可撓性をもつ長尺円筒形状の可撓部及び該可撓部に比べて剛性が低く前記湾曲操作部の操作によって湾曲する湾曲部とを有する医療用チューブであって、
前記湾曲部が、前記ガイドチューブ外径の3倍から5倍の長さであって前記可撓部に基端側が接合され該可撓部に比べて剛性が低いことにより湾曲を補助する湾曲補助部及び該湾曲補助部と同一剛性であって該湾曲補助部の先端側に接合された先端湾曲部とを有し、該湾曲補助部及び該先端湾曲部が溶着されている節部を有し、該節部は該湾曲補助部と該先端湾曲部との間に金属環が配置されていることを特徴とする医療用チューブ。
【請求項2】
長尺状の医療治具を先端側に挿通して案内する所定外径の円筒形状のガイドチューブと、該ガイドチューブの基端側に取り付けられ、ガイドチューブの先端側を湾曲させるための湾曲操作部とを備え、該ガイドチューブが可撓性をもつ長尺円筒形状の可撓部及び該可撓部に比べて剛性が低く前記湾曲操作部の操作によって湾曲する湾曲部とを有する医療用チューブであって、
前記湾曲部が、前記ガイドチューブ外径の3倍から5倍の長さであって前記可撓部に基端側が接合され該可撓部に比べて剛性が低いことにより湾曲を補助する複数の湾曲補助部及び該湾曲補助部と同一剛性であって該複数の湾曲補助部の先端側に接合された先端湾曲部とを有し、該複数の湾曲補助部及び該先端湾曲部が溶着されている節部を有し、該節部は該複数の湾曲補助部と該先端湾曲部との間に金属環が配置されていることを特徴とする医療用チューブ。
【請求項3】
前記複数の湾曲補助部の剛性を、前記可撓部の剛性から前記先端湾曲部の剛性の範囲で
順に小さくなるように設定したことを特徴とする請求項2に記載の医療用チューブ。
【請求項4】
前記可撓部をショア硬さ試験方法による硬度72のポリアミド製とし、前記湾曲補助部
をショア硬さ試験方法による硬度42〜72のポリアミドエラストマー樹脂製とすることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の医療用チューブ。
【請求項5】
長尺状の医療治具を先端側に挿通して案内する所定外径の円筒形状のガイドチューブと、該ガイドチューブの基端側に取り付けられ、ガイドチューブの先端側を湾曲させるための湾曲操作部とを備え、該ガイドチューブが可撓性をもつ長尺円筒形状の可撓部及び該可撓部に比べて剛性が低く前記湾曲操作部の操作によって湾曲する湾曲部とを有する医療用チューブの製造方法であって、
前記ガイドチューブ外径の3倍から5倍の長さであって前記可撓部に基端側が接合され該可撓部に比べて剛性が低いことにより湾曲を補助する湾曲補助部及び該湾曲補助部と同一剛性であって該湾曲補助部の先端側に接合された先端湾曲部とから前記湾曲部を形成する工程と、前記湾曲補助部及び先端湾曲部とを金属環を挟んで押し当てた状態で該押し当て位置の外周から前記湾曲補助部及び先端湾曲部の融点温度まで加熱する圧接加熱溶着によって節部を形成する工程とによりガイドチューブを製造することを特徴とする医療用チューブの製造方法。
【請求項6】
長尺状の医療治具を先端側に挿通して案内する所定外径の円筒形状のガイドチューブと、該ガイドチューブの基端側に取り付けられ、ガイドチューブの先端側を湾曲させる湾曲操作部とを備え、該ガイドチューブが可撓性をもつ長尺円筒形状の可撓部及び該可撓部に比べて剛性が低く前記湾曲操作部の操作によって湾曲する湾曲部と、を有し、
前記湾曲部が、前記ガイドチューブ外径の3倍から5倍の長さであって前記可撓部に基端側が接合され該可撓部に比べて剛性が低いことにより湾曲を補助する湾曲補助部と、該湾曲補助部と同一剛性であって該湾曲補助部の先端側に接合された先端湾曲部と、を有し、
前記湾曲補助部と前記先端湾曲部に、円筒形状の操作ワイヤー挿通孔がそれぞれ形成されている医療用チューブの製造方法であって、
該湾曲補助部と該先端湾曲部の円筒形状に芯金を刺し通し、該操作ワイヤー挿通孔に、ステンレス線または耐熱性樹脂を通して、該湾曲補助部と該先端湾曲部を押し当てて突き合わせる第1工程と、
押し当て位置の周囲を熱収縮チューブにより覆う第2工程と、
該熱収縮チューブにより覆われた押し当て位置を加熱して熱収縮チューブを収縮させると同時に、押し当て位置の周囲を該湾曲補助部及び該先端湾曲部の融点温度まで加熱することによって該湾曲補助部及び該先端湾曲部の押し当て部を溶着させる第3工程と、
該湾曲補助部と該先端湾曲部を常温に戻した後に、該熱収縮チューブを剥がし、該ステンレス線または該耐熱性樹脂を該操作ワイヤー挿通孔から抜き取る第4工程と、を含むことを特徴とする医療用チューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡や診断用あるいは治療用処置具を体内の所望の部位に到達させるための導入ガイドとなる医療用チューブ及び医療用チューブの製造方法に関し、特に円筒形状の湾曲部の内径が潰れることなく任意の方向に湾曲させることができる医療用チューブ及び医療用チューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カテーテル等の医療治具を体内の所望の位置に案内するため血管内等に挿入される医療用チューブは、医療用チューブ内部に挿入した診断又は治療用の医療治具を患部に対して高精度に位置づけるため、先端部分が湾曲し易くなっており、押し込み性と押し込みによる曲がり性とを利用して先端部を湾曲させる構成としたものや、チューブ先端部の端部からチューブ円筒内壁に180度の間隔で一対の操作ワイヤーを操作部まで内装させ、該操作部において一方の操作ワイヤーを牽引することによって先端部を湾曲するように構成したものがある。
【0003】
従来技術による医療用チューブに関する技術が記載された文献としては下記の特許文献が挙げられ、下記の特許文献1には、細外径且つ内径が大きい肉薄で先端部から基端部にかけて硬度を徐々に変化させ、基端部で与えた押し込み力や回転力がスムーズに先端部に伝達されることにより、バックアップ力・抗キンク性・トルク伝達性を有する医療用ガイディングカテーテルチューブの製造技術が記載され、特許文献2には、内装管をフッ素樹脂とX線造影剤粉体を含む合成樹脂から構成することによってX線視認性を向上したガイディングカテーテルチューブの製造技術が記載され、特許文献3には、基端部から先端部にかけて曲がり剛性を段階的に小さくした医療用カテーテルチューブの製造技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−202979号公報
【特許文献2】特開2007−29510号公報
【特許文献3】特開2007−29120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献に記載された医療用チューブは、折れ曲がりに対する耐キンク性を向上することや両方向の捻り力を与えた際の先端部の回転異方性を低減するものであって、押し込み性と押し込みによる曲がり性とを利用して患部まで導入する場合、屈折の強い管腔内への挿入や、分岐した管腔への選択的な挿入が困難であり、その結果、該医療用チューブ内に挿通して使用する内視鏡や診察用あるいは治療用の医療治具を心臓・肝臓・胃等の臓器内の所望の位置に導くことが困難であるという課題があった。また、前述の操作ワイヤーを用いて先端部を湾曲させる医療用チューブの場合、操作ワイヤーの牽引によって湾曲開始部分に作用する引き力が大きく、湾曲途中においてチューブが湾曲を開始した近傍で潰れて内径が小さくなることによって、医療治具が湾曲部を滑らかに挿脱できないという課題があった。
【0006】
このような課題に鑑みて、本発明は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、先端部を小さい曲率半径で湾曲することができると共に湾曲操作の際にも湾曲部の潰れを防止し、内径が確保されて、医療治具を滑らかに挿脱することができる医療用チューブ及び医療用チューブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、長尺状の医療治具を先端側に挿通して案内する所定外径の円筒形状のガイドチューブと、該ガイドチューブの基端側に取り付けられ、ガイドチューブの先端側を湾曲させるための湾曲操作部とを備え、該ガイドチューブが可撓性をもつ長尺円筒形状の可撓部及び該可撓部に比べて剛性が低く前記湾曲操作部の操作によって湾曲する湾曲部とを有する医療用チューブであって、前記湾曲部が、前記ガイドチューブ外径の3倍から5倍の長さであって前記可撓部に基端側が接合され該可撓部に比べて剛性が低いことにより湾曲を補助する湾曲補助部及び該湾曲補助部と同一剛性であって該湾曲補助部の先端側に接合された先端湾曲部とを有し、該湾曲補助部及び先端湾曲部とを押し当てた状態で該押し当て位置の外周から前記湾曲補助部及び先端湾曲部の融点温度まで加熱する圧接加熱溶着によって節部を形成したことを第1の特徴とする。
【0008】
また、本発明は、第1の特徴の医療用チューブにおいて、前記節部を、前記湾曲補助部と先端湾曲部とを金属環を挟んで押し当てた状態で該押し当て位置の外周から前記湾曲補助部及び先端湾曲部の融点温度まで加熱する圧接加熱溶着によって形成したことを第2の特徴とし、第1又は第2何れかの特徴の医療用チューブにおいて、前記先端湾曲部の剛性を前記湾曲補助部に比べて低く形成したことを第3の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、長尺状の医療治具を先端側に挿通して案内する所定外径の円筒形状のガイドチューブと、該ガイドチューブの基端側に取り付けられ、ガイドチューブの先端側を湾曲させるための湾曲操作部とを備え、該ガイドチューブが可撓性をもつ長尺円筒形状の可撓部及び該可撓部に比べて剛性が低く前記湾曲操作部の操作によって湾曲する湾曲部とを有する医療用チューブであって、前記湾曲部が、前記ガイドチューブ外径の3倍から5倍の長さであって前記可撓部に基端側が接合され該可撓部に比べて剛性が低いことにより湾曲を補助する複数の湾曲補助部及び該湾曲補助部と同一剛性であって該複数の湾曲補助部の先端側に接合された先端湾曲部とを有し、該複数の湾曲補助部及び先端湾曲部とを押し当てた状態で該押し当て位置の外周から前記湾曲補助部及び先端湾曲部の融点温度まで加熱する圧接加熱溶着によって節部を形成したことを第4の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、第4の特徴の医療用チューブにおいて、前記節部を、前記複数の湾曲補助部と先端湾曲部とを金属環を挟んで押し当てた状態で該押し当て位置の外周から前記湾曲補助部及び先端湾曲部の融点温度まで加熱する圧接加熱溶着によって形成したことを第5の特徴とし、第4又は第5の特徴の医療用チューブにおいて、前記先端湾曲部の剛性を前記湾曲補助部に比べて低く形成したことを第6の特徴とし、第4から第6何れかの特徴の医療用チューブにおいて、前記複数の湾曲補助部の剛性を、前記可撓部の剛性から前記先端補助部の剛性の範囲で順に小さくなるように設定したことを第7の特徴とし、前記何れかの特徴の医療用チューブにおいて、前記可撓部をショア硬さ試験方法による硬度72のポリアミド製とし、前記湾曲補助部をショア硬さ試験方法による硬度42〜72のポリアミドエラストマー樹脂製とし、前記先端湾曲部をショア硬さ試験方法による硬度30〜35のポリアミドエラストマー樹脂製としたことを第8の特徴とする。
【0011】
更に、本発明は、長尺状の医療治具を先端側に挿通して案内する所定外径の円筒形状のガイドチューブと、該ガイドチューブの基端側に取り付けられ、ガイドチューブの先端側を湾曲させるための湾曲操作部とを備え、該ガイドチューブが可撓性をもつ長尺円筒形状の可撓部及び該可撓部に比べて剛性が低く前記湾曲操作部の操作によって湾曲する湾曲部とを有する医療用チューブの製造方法であって、
前記ガイドチューブ外径の3倍から5倍の長さであって前記可撓部に基端側が接合され該可撓部に比べて剛性が低いことにより湾曲を補助する湾曲補助部及び該湾曲補助部と同一剛性であって該湾曲補助部の先端側に接合された先端湾曲部とから前記湾曲部を形成する工程と、前記湾曲補助部及び先端湾曲部とを押し当てた状態で該押し当て位置の外周から前記湾曲補助部及び先端湾曲部の融点温度まで加熱する圧接加熱溶着によって節部を形成する工程とによりガイドチューブを製造することを第11の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による医療用チューブ及び医療用チューブの製造方法は、ガイドチューブの湾曲部を、ガイドチューブ外径の3倍から5倍の長さであって可撓部に基端側が接合され該可撓部に比べて剛性が低いことにより湾曲を補助する湾曲補助部及び該湾曲補助部と同一剛性であって該湾曲補助部の先端側に接合された先端湾曲部とから構成し、該湾曲補助部及び先端湾曲部とを押し当てた状態で該押し当て位置の外周から前記湾曲補助部及び先端湾曲部の融点温度まで加熱する圧接加熱溶着により節部を形成したことによって、湾曲操作の際に、湾曲開始位置において節部が支えとなるため医療用チューブが潰れる事が無く、内径が確保されて、医療治具が湾曲部を滑らかに挿脱できると共に、先端部を小さい曲率半径で湾曲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の対象となる医療用チューブを説明するための図。
【
図2】本実施形態による医療用チューブを説明するための図。
【
図3】本発明の第1実施形態による医療用チューブを説明するための図。
【
図4】本発明の第2及び第3実施形態による医療用チューブを説明するための図。
【
図5】本発明の第4施形態による医療用チューブを説明するための図。
【
図6】従来技術による医療用チューブの課題を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による医療用チューブ及び医療用チューブの製造方法の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
本発明の対象となる医療用チューブは、
図1に示すように、長尺状の医療治具8を先端側に挿通する円筒形状のガイドチューブ100と、医療治具8を挿通するとともに、該ガイドチューブ100の基端側に取り付けられ、湾曲ノブ11aを回転操作することによって該ガイドチューブ100の先端側を湾曲させるための湾曲操作部11とから構成され、前記ガイドチューブ100は、所定の可撓性をもって血管等に挿入される長尺円筒形状の可撓部40と、該可撓部40に比べて可撓性が高く(剛性が低く)、前記湾曲操作部11の湾曲ノブ11aを回転操作することによって湾曲する湾曲部30とから構成される。
【0015】
この医療用チューブの湾曲部30を湾曲させる機構は、
図2に示すように、前記湾曲操作部11の湾曲ノブ11aの回転により巻き取り及び巻き戻しが行われる一対の操作ワイヤー20a及び20bを、円筒状内壁の円周対向位置に沿って延びるように該湾曲ノブ11aから湾曲部30先端の円環状の操作ワイヤー留め具21にわたって対称位置(
図1における上下位置)に配置し、前記湾曲ノブ11aを回転することによって、円筒状内壁の円周対向位置に沿って延びた操作ワイヤー20a又は20bの一方を巻き取り、他方の操作ワイヤー20b又は20aを巻き戻すことにより、巻き取られた側へ向かって湾曲部30が湾曲するように構成されている。
【0016】
前記ガイドチューブ100は、
図3に示すように、血管等に挿入された際に血管等に沿って変形可能な剛性(例えばISO868に規定されたショア硬さ試験方法による硬度が72)を有し、長さが約600mmから1200mm、外径dが3mmから4.3mm(好ましくは3.5mm)の可撓部40と、該可撓部40と接合部31で連結され、可撓部40に比べて剛性が低く長さが約60mmから80mmの湾曲部30とによって構成される。この湾曲部30は、長さが外径dの3倍〜5倍の長さL1(例えば約15mm)、外径が前記可撓部40の外径dと同一であって剛性が該可撓部40より低硬度(例えば約42〜63)の湾曲補助部30aと、長さがL2(例えば約45mm)、外径が前記可撓部40の外径dと同一であって剛性が前記湾曲補助部30aと同一の先端湾曲部30eとから構成される。これら湾曲補助部30a及び先端湾曲部30eは、ゴム弾性を有するナイロンエラストマー樹脂製が好ましい。
【0017】
特に本実施形態による湾曲部30は、ナイロンエラストマー樹脂製の湾曲補助部30aと先端湾曲部30eとが溶融する融点温度まで加熱した状態で圧着することによって溶着して製造され、この湾曲補助部30aと先端湾曲部30eとの熱溶着した箇所に竹の節のような節部50が形成されている。この節部50は、ナイロンエラストマー樹脂製の湾曲補助部30aと先端湾曲部30eとを圧接加熱溶着しているため、加熱して溶融されてつなぎ合わさることによって樹脂が硬くなり圧接加熱溶着部位を竹の節のように形成することができる。
【0018】
このように構成されたガイドチューブ100は、前述した湾曲操作部11の湾曲ノブ11aを回転させて、円筒状内壁の円周対向位置に沿って延びた操作ワイヤー20a又は20bの一方を巻き取り、他方の操作ワイヤー20b又は20aを巻き戻すことにより、操作ワイヤー先端留め具21の円環の一方が引かれ他方が押されて湾曲部30が湾曲するが、従来技術においては、一方の操作ワイヤー20a又は20bの引き力が湾曲開始近傍において大きくなるために湾曲部30の湾曲開始位置近傍(
図6の支点▽位置から外径dのおよそ4倍程度の長さ位置)で潰れる可能性があるものであった。
これに対し、本実施形態においては上記のように湾曲開始位置の前方3〜5倍程度の位置に折れを防止する節部50を形成したことによって、節部50の硬度がエラストマー樹脂の硬度より硬くなり、湾曲操作時に、潰れを防止して、内径を保つことができて滑らかな湾曲が可能となると共に、湾曲部30を小さい曲率半径で湾曲させることができる。
【0019】
この節部50の製造方法は、湾曲補助部30aと先端湾曲部30eのナイロンエラストマー樹脂製の円筒形状に芯金を刺し通し、さらに30aと30eに形成された円筒形状の操作ワイヤー挿通孔に予め該ワイヤーより0.1mm〜0.3mm程度の太めのステンレス線(耐熱性樹脂であっても良い)を通して、湾曲補助部30aと先端湾曲部30eを押し当てて突き合わせる第1工程と、当該押し当て位置の周囲に熱収縮チューブにより覆う第2工程と、該熱収縮チューブにより覆われた押し当て位置の周囲を加熱収縮させることによって熱収縮チューブを収縮させると同時に該押し当て位置の周囲を該エラストマー樹脂の融点温度まで加熱することによって湾曲補助部30aと先端湾曲部30eの押し当て部を圧接加熱溶着させる第3工程と、該圧接加熱溶着後に常温に戻した後に熱収縮チューブを剥がし、前記ステンレス線を抜き取る第4工程とを行うことによって行われる。なお、湾曲補助部3aと先端湾曲部3eとの圧接力は100〜300g程度あれば良い。また、熱収縮チューブは、例えばナイロン樹脂よりも耐熱性があってナイロンエラストマー樹脂の融点より低い温度で収縮するシリコンゴム(80°以上)等がよい。
【0020】
前記第2工程により押し当て位置の周囲を覆う熱収縮チューブは、成形後の外径寸法を他の部位と同一に保つためのものであって、前記押し当て位置の継ぎ目部分周辺を覆えば良く、前記第3工程による圧接加熱溶着のための加熱は、短時間にナイロンエラストマー樹脂を溶融温度に達する程度に加熱することが好ましく、ナイロンエラストマー樹脂の溶融温度は160℃〜175℃より高温、例えば温度240度の熱風を1秒から2秒程度当てることによって行うことができる。
【0021】
[第2実施形態]
前述の第1実施形態による医療用チューブは、同一硬度のナイロンエラストマー樹脂製の湾曲部の湾曲を補助する節部50を一箇所設ける例を説明したが、本発明による医療用チューブは、これに限られるものではなく、次に第2の実施形態による医療用チューブを説明する。
【0022】
この第2実施形態による医療用チューブは、
図4(a)に示すように、湾曲部30を、前述の製造法と同様に複数の湾曲補助部30a〜30d及び先端湾曲部30eを加圧熱溶着により可撓部40に接合して複数の節部33を設けるように構成され、各湾曲補助部30a〜30dは、長さが第1実施形態同様にガイドチューブ100の外径dの3倍〜5倍であり、湾曲補助部30a〜30d及び先端湾曲部30eは、ショア硬さ試験方法による硬度が一律の約33〜63(好ましくは42)に設定されるナイロンエラストマー樹脂製である。
【0023】
このように構成された第2実施形態による医療用チューブは、湾曲操作部11の湾曲ノブ11aを回転させて、円筒状内壁の円周対向位置に沿って延びた一方の操作ワイヤー20a又は20bを巻き取り、他方の操作ワイヤー20b又は20aを巻き戻すことにより操作ワイヤー先端留め具21の円環の一方が引かれ他方が押されて湾曲部30が湾曲する際、複数の節部33を設けたことによって、第1実施形態による医療用チューブに比べて更に滑らかに湾曲させることができ、180度以上湾曲した場合であっても複数箇所において湾曲部30の潰れを防止することができる。
【0024】
[第3実施形態]
また、前記実施形態による医療用チューブは、複数の湾曲補助部30a〜30d及び先端湾曲部30eの硬度が同一の例を説明したが、
図4(b)に示すように、湾曲部30を湾曲させたとき、操作ワイヤーの一方を巻き取る力が可撓部40との継ぎ目に相当する接合部31から作用するため、各湾曲補助部30a〜30dに作用する引き力を、湾曲補助部30aに作用する引き力をF1、湾曲補助部30bに作用する引き力をF2、湾曲補助部30cに作用する引き力をF3、湾曲補助部30dに作用する引き力をF4としたとき、引き力の大きさがF1>F2>F3>F4のように作用することが考えられ、先端湾曲部30eおよび湾曲補助部30a〜30dから成る湾曲部30の湾曲を容易にするためには、先端湾曲部30eおよび各湾曲補助部30a〜30dの硬度を
、湾曲補助部30a>湾曲補助部30b>湾曲補助部30c>湾曲補助部30d
>先端湾曲部30eの順に小さくするように構成することによって、180度以上湾曲した場合であっても潰れないように構成しても良く、この湾曲補助部30a〜30dの硬度は、例えば湾曲補助部30aが72、湾曲補助部30bが63、湾曲補助部30cが55、湾曲補助部30dが42、先端湾曲部30eが33のように設定するのが好ましい。即ち、本実施形態による湾曲補助部30a〜30dの各硬度は、引き力Fが大きい基端側に耐え得る程度の堅さとし、先端側に向かって湾曲しやすいように徐々に小さくなるように設定している。この場合には湾曲部30の長さは80mmから100mm程度に構成するとよい。
【0025】
また、各湾曲補助部の長さも直径dの3倍〜5倍の範囲で湾曲率が大きい中央近傍箇所の長さを短く、他の箇所の長さを長く設定しても良い。
【0026】
[第4実施形態]
前述の実施形態においては、複数の節部によって医療用チューブの湾曲時の潰れを防止する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、
図5に示すように、可撓部40の接合部31と各節部33に金属製の金属環60を内在させ、更に医療用チューブの潰れを防止するように構成しても良い。
【0027】
この医療用チューブは、可撓部40と湾曲補助部30aとの間と、該湾曲補助部30aと湾曲補助部30bとの間と、該湾曲補助部30bと湾曲補助部30cの間と、該湾曲補助部30cと湾曲補助部30dとの間と、該湾曲補助部30dと先端湾曲部30eとの間に前記金属環60を位置させた状態で前述した圧接加熱溶着を行うことによって容易に製造することができる。
【0028】
このように構成した医療用チューブは、他の実施形態に比べてチューブの潰れを更に防止することができる。なお、金属環60は、第1実施形態のように湾曲補助部及び節部が1つである場合に適用してもよく、また、各湾曲補助部及び湾曲部の硬度は、第2実施形態のように一律であっても良く、可撓部40>湾曲補助部30a>湾曲補助部30b>湾曲補助部30c>湾曲補助部30d>先端湾曲部30eの順に硬度が小さくなるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0029】
8 医療治具
11 湾曲操作部
11a 湾曲ノブ
20a及び20b 操作ワイヤー
21 操作ワイヤー留め具
30 湾曲部
30a〜30d 湾曲補助部
30e 先端湾曲部
31 接合部
33、33a〜33d、50 節部
40 可撓部
60 金属環
100 ガイドチューブ