特許第5951275号(P5951275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951275
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/36 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   B60N2/36
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-31098(P2012-31098)
(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-166477(P2013-166477A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】長坂 智
(72)【発明者】
【氏名】瀧中 宣明
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−129317(JP,A)
【文献】 特開2000−142196(JP,A)
【文献】 特開2004−224094(JP,A)
【文献】 特開2006−335311(JP,A)
【文献】 特開平08−299094(JP,A)
【文献】 特開平10−155587(JP,A)
【文献】 実開昭61−172824(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
A47C 7/00−7/74
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面を構成するシートクッションと、
前記シートクッションに対して可動的に連結されて背もたれを構成するシートバックとを有し、
前記シートバックを前記シートクッション側に倒すことにより、前記シートクッションを前方および下方に移動させつつ前記シートバックを前記シートクッション上に重畳させて格納状態となる車両用シートにおいて、
車両のフロアに対して回動自在に設けられて前記シートクッションを移動可能に支持するフロントアームと、
前記車両のフロアに対して回動自在に設けられて前記シートバックを傾倒可能に支持するリアアームと、
前記フロントアームおよび/または前記リアアームの回動速度を規制するロータリダンパとを備え、
前記ロータリダンパは、
前記車両のフロア上における前記フロントアームおよび/または前記リアアームの回動中心軸からずれた位置に設けられて前記フロントアームおよび/または前記リアアームに連結機構を介して連結されており、
前記連結機構は、
前記ロータリダンパの回転部から延びる可動片と、
前記可動片および前記ロータリダンパが連結された前記フロントアームおよび/または前記リアアームのうちの一方に形成されたガイド用長孔と、
前記可動片およびロータリダンパが連結された前記フロントアームおよび/または前記リアアームうちの他方に形成された前記ガイド用長孔に案内されるガイド用ピンとで構成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載した車両用シートにおいて、
前記ガイド用長孔は、前記ロータリダンパが連結された前記フロントアームおよび/または前記リアアームに形成されており、
前記ガイド用ピンは、前記ロータリダンパにおける前記可動片に形成されていることを特徴する車両用シート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した車両用シートにおいて、さらに、
前記ガイド用長孔は、内周面にブッシュを備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した車両用シートにおいて、
前記ロータリダンパは、前記リアアームに連結して設けられていることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の室内に設置される折り畳み可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両の室内に設けられる車両用シートには、リクライニング操作時や折り畳み操作時におけるシートの変形動作を滑らかにするためにロータリダンパが用いられている。ロータリダンパは、回転運動する機構に制動力を作用させて回転運動を減衰させる機械装置であり、回転運動する機構に連結されるロータが機械的な摩擦力やオイルなどの流動体の流動抵抗に抗しながら回転するように構成されている。
【0003】
そして、このようなロータリダンパは、一般的に、車両用シートにおけるシートクッションやシートバックの回動中心となる回動中心軸に対して同軸上に配置されて車両用シートの一部を構成している。例えば、下記特許文献1,2には、回動変位するシートクッションおよびシートバックの各回動中心軸(ヒンジピン)の同軸上にロータリダンパが取り付けられた車両用シートがそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−244081号公報
【特許文献2】特開2004−224094号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2にそれぞれ示された各車両用シートにおいては、ロータリダンパが車両用シートにおけるシートクッションやシートバックに隣接配置される回動中心軸と同軸上に設けられているため、回動中心軸に物理的に取り付け可能なロータリダンパの大きさ、すなわち、ロータリダンパの制動容量が制限されるとともにシートクッションやシートバックの大きさや形状が制限されるという問題がある。特に、車両室内において折り畳み可能な車両用シートにおいては、座り心地や質感の一層の向上およびより多彩なシートアレンジの実現が求められるため、これらの実現のためのシートクッションおよびシートバックの大きさや形状と車両用シートの重量化に起因して大型化したロータリダンパの配置スペースの確保との両立が極めて困難となっている。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、ロータリダンパを備えた折り畳み可能な車両用シートにおいて、シートクッションやシートバックの大きさや形状の制限およびロータリダンパの配置位置や容量の制限を緩和することができる車両用シートを提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、座面を構成するシートクッションと、シートクッションに対して可動的に連結されて背もたれを構成するシートバックとを有し、シートバックをシートクッション側に倒すことにより、シートクッションを前方および下方に移動させつつシートバックをシートクッション上に重畳させて格納状態となる車両用シートにおいて、車両のフロアに対して回動自在に設けられてシートクッションを移動可能に支持するフロントアームと、車両のフロアに対して回動自在に設けられてシートバックを傾倒可能に支持するリアアームと、フロントアームおよび/またはリアアームの回動速度を規制するロータリダンパとを備え、ロータリダンパは、車両のフロア上におけるフロントアームおよび/またはリアアームの回動中心軸からずれた位置に設けられてフロントアームおよび/またはリアアームに連結機構を介して連結されており、連結機構は、ロータリダンパの回転部から延びる可動片と、可動片およびロータリダンパが連結されたフロントアームおよび/またはリアアームのうちの一方に形成されたガイド用長孔と、可動片およびロータリダンパが連結されたフロントアームおよび/またはリアアームうちの他方に形成されたガイド用長孔に案内されるガイド用ピンとで構成されていることにある。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、車両用シートは、ロータリダンパをフロア上におけるフロントアームおよびリアアームの回動中心軸からずれた位置に連結機構を介してフロントアームおよび/またはリアアームに連結して構成されている。これにより、車両用シートは、ロータリダンパとの干渉を避けて自由な大きさおよび形状のシートクッションおよびシートバックを採用することができるとともに、このようなシートクッションおよびシートバックを採用したことに起因してロータリダンパが大型化した場合であってもシートクッションおよびシートバックに干渉させることなくロータリダンパを配置することができる。また、車両用シートは、ロータリダンパをフロア側に設けているため、ロータリダンパをシートクッションおよびシートバック側に設けた場合に比べて、シートクッションおよびシートバックの設計の自由度およびロータリダンパの配置の自由度を拡大することができる。すなわち、車両用シートは、シートクッションやシートバックの大きさや形状およびロータリダンパの配置位置や容量の各設計の自由度を向上させることができるため、座り心地や質感の一層の向上およびより多彩なシートアレンジを実現することができる。
【0009】
削除
【0010】
また、本発明の特徴によれば、車両用シートは、ロータリダンパの連結機構がロータリダンパの可動片と、この可動片およびロータリダンパが連結されるフロントアームおよび/またはリアアームのうちの一方に形成されるガイド用長孔と他方に形成されるガイド用ピンとで構成される。すなわち、車両用シートは、固定的に設けられるロータリダンパに対して揺動可動するフロントアームおよび/またはリアアームをガイド用長孔内にガイド用ピンをスライドさせるスライド機構によって両者を可動的に連結している。これにより、車両用シートは、簡易な構成によってロータリダンパとフロントアームおよび/またはリアアームとを連結しつつロータリダンパをフロントアームおよびリアアームの回転中心軸からずれた位置に配置して構成することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記車両用シートにおいて、ガイド用長孔は、ロータリダンパが連結されたフロントアームおよび/またはリアアームに形成されており、ガイド用ピンは、ロータリダンパにおける可動片に形成されていることにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、車両用シートは、連結機構を構成するガイド用長孔がフロントアームおよび/またはリアアーム側に形成されるとともに、ガイド用ピンがロータリダンパの可動片側に形成されて構成される。このため、ロータリダンパにおける可動片をロータリダンパの外筒とともに鋳造加工や鍛造加工で一体成型することができ、ガイド用長孔を可動片に形成する場合に比べて製造工数およびコストを低減することができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記車両用シートにおいて、さらに、ガイド用長孔は、内周面にブッシュを備えることにある。
【0014】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、車両用シートは、ガイド用長孔内にブッシュが設けられて構成されている。この場合、ブッシュは、ガイド用ピンに対して摩耗し易い材料、例えば樹脂材で構成するとよい。これによれば、車両用シートは、連結機構におけるガイド用ピンの摺動性を向上させることができるとともにガイド用長孔およびガイド用ピンの摩耗をそれぞれ防止することができる。また、車両用シートは、ブッシュが摩耗した場合においては、摩耗したブッシュを新品のブッシュに交換することにより連結機構の機能を回復させることができるため、ロータリダンパの可動片、フロントアームおよびリアアームを交換する場合に比べてメンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記車両用シートにおいて、ロータリダンパは、リアアームに連結して設けられていることにある。
【0016】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、車両用シートは、ロータリダンパがリアアームに連結されて構成されている。このため、ロータリダンパをフロントアームに連結して設ける場合のようにフロア上に下降して折り畳まれるシートクッションとの干渉を考慮する必要がないため、シートクッションおよびシートバックの設計の自由度およびロータリダンパの配置の自由度を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る車両用シートの全体構成を概略的に示した側面図である。
図2図1に示す車両用シートが折り畳まれる過程の一つの状態を示した側面図である。
図3図1に示す車両用シートが折り畳まれた状態を示した側面図である。
図4図1〜3に示す車両用シートにおけるロータリダンパとリアアームとの関係を説明するための部分拡大図である。
図5図1〜3に示す車両用シートにおけるロータリダンパとリアアームとの関係を説明するための部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両用シートの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る車両用シート100の全体構成を概略的に示した側面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この車両用シート100は、自動車などの車両(図示せず)の室内において乗員の座席として用いられるものである。
【0019】
(車両用シート100の構成)
車両用シート100は、シートクッション101を備えている。シートクッション101は、図示しない車両の室内において乗員が着座する座板を構成する部分であり、図示しない鋼製のフレームの外側をクッション材で覆って構成されている。このシートクッション101は、車両室内のフロアF上にフロントアーム102を介して支持されている。
【0020】
フロントアーム102は、シートクッション101をフロアFに対して移動可能に支持する鋼製の棒状部材であり、シートクッション101およびフロアFに対して回動自在な状態でそれぞれ連結されている。具体的には、フロントアーム102は、一方(図示上側)の端部がシートクッション101の図示しない前記フレームに支持軸103aを介して回動自在に連結されるとともに、他方(図示下側)の端部がフロアF上に固定された支持金具103bに支持軸103cを介して回動自在に連結されている。この場合、支持軸103a,103cは、シートクッション101の幅方向に延びる鋼製の丸棒体である。これにより、シートクッション101は、図2および図3に示すように、フロントアーム102が起立状態から車両の前方側(図示左側)に倒れることにより車両の前方側に移動しながらフロアF側に下降するように移動する。
【0021】
このシートクッション101には、シートバックアーム104を介してシートバック105が連結されている。シートバックアーム104は、シートバック105をシートクッション101に対して回動自在に支持する部材であり、鋼製の板状体の外側を樹脂製のカバーで覆って構成されている。このシートバックアーム104は、一方(図示左側)の端部がシートクッション101の図示しない前記フレームに固定的に連結されているとともに、他方(図示右側)の端部がシートバック105を構成する図示しないフレームに支持軸104aを介して回動自在に連結されている。支持軸104aは、シートバック105の幅方向の端部にそれぞれ回転自在に設けられた鋼製の丸棒体である。
【0022】
シートバック105は、シートクッション101上に着座した着座者(車両の乗員)の背中を支える背もたれであり、図示しない鋼製のフレームの外側をクッション材で覆って構成されている。また、シートバック105の図示上端部には、着座者の頭部を支えるヘッドレスト105aが設けられている。このシートバック105は、詳しくは図4および図5に示すように、フロアF上にリアアーム106を介して支持されている。
【0023】
リアアーム106は、シートバック105をフロアFに対して傾倒可能に支持する鋼製の棒状部材であり、フロアFに対して回動自在な状態でそれぞれ連結されている。具体的には、リアアーム106は、一方(図示上側)の端部がシートバック105の図示しない前記フレームに固定的に連結されているとともに、他方(図示下側)の端部がフロアF上に固定された支持金具107aに支持軸107bを介して回動自在に連結されている。この場合、支持軸107bは、シートバック105の幅方向に延びる鋼製の丸棒体である。これにより、シートバック105は、リアアーム106が起立状態からシートクッション101側(図示左側)に倒れることにより支持軸107bを回転中心としてシートクッション101側に向かって傾倒する。
【0024】
この場合、シートバック105がシートバックアーム104およびシートクッション101を構成するフレームを介してフロントアーム102に連結されているため、シートクッション101はシートバック105の傾倒とともに車両の前方側に移動しながらフロアF側に下降する。すなわち、フロントアーム102、シートクッション101、シートバックアーム104、シートバック105およびリアアーム106は、支持軸103a,103c,104a,107bを介して4節リンク機構を構成している。
【0025】
また、このリアアーム106には、支持金具107aとの連結部の近傍にガイド用長孔108が形成されるとともに、このガイド用長孔108を介してロータリダンパ110が連結されている。ガイド用長孔108は、ロータリダンパ110との連結部分を構成する貫通孔であり、ロータリダンパ110のガイド用ピン113が嵌合して摺動可能な内径の貫通孔がリアアーム106の長手方向に沿って形成されている。このガイド用長孔108には、内周面を覆う状態でブッシュ108aが嵌め込まれている。ブッシュ108aは、ガイド用長孔108およびこのガイド用長孔108内を摺動するガイド用ピン113相互間の摩耗を防止するための筒状の部品であり、ガイド用ピン113よりも摩耗し易い材料、例えば、樹脂材で構成されている。
【0026】
ロータリダンパ110は、車両の前後方向に揺動するリアアーム106に制動力を与えることによりリアアーム106の揺動運動を滑らかにするための機械装置であり、主として、ハウジング111および図示しないロータによって構成されている。ハウジング111は、ロータリダンパ110の筐体を構成する断面形状がリング状に形成された筒状部品であり、亜鉛材を射出成型することによって成形されている。
【0027】
このハウジング111の外周部には、径方向外側に張り出した状態で可動片112が形成されている。可動片112は、ロータリダンパ110に対して位置が変化するリアアーム106との連結状態を維持するためにハウジング111の外周部から径方向外側に延びた片状の部分であり、ハウジング111の外周部から径方向外側に向かって幅が狭くなる上面視略三角形状に形成されている。この可動片112の先端部には、平面部から直交する向きに突出した状態でガイド用ピン113が設けられている。
【0028】
ガイド用ピン113は、前記リアアーム106に形成されたガイド用長孔108内にブッシュ108aを介して摺動可能に嵌まり込んでリアアーム106とロータリダンパ110とを可動的に連結する部分であり、ブッシュ108aの内径よりも小さい外径でかつブッシュ108a(ガイド用長孔108)を貫通する長さの円柱状に形成されている。これらの可動片112およびガイド用ピン113は、ハウジング111の筒状の部分と一体的に成形されている。
【0029】
このハウジング111の内部には、ハウジング111の一方の端部から露出した状態でロータ(図示せず)が組み付けられている。ロータは、ハウジング111内に所定の粘性を有した図示しない流動体(例えば、オイル)を介して回転可能に組み付けられている。
すなわち、ハウジング111とロータとは、ハウジング111とロータとの間に封入された流動体の流動時における流動抵抗に応じたトルクを伴いつつ相対的に回転変位するように組み付けられている。
【0030】
このロータリダンパ110は、ロータが図示しない支持金具を介してフロアF上に固定されるとともにハウジング111の可動片112に形成されたガイド用ピン113がリアアーム106に形成されたガイド用長孔108にブッシュ108aを介して嵌合してリアアーム106に対して可動的に連結される。この場合、ロータリダンパ110は、フロアF上においてリアアーム106を揺動自在に支持する支持軸107bの回転中心軸線AX107bに対してハウジング111とロータとが相対回転する回転中心軸線AX111が車両の後方にずれた位置に固定される。そして、車両用シート100が固定されるフロアFは、折り畳まれた状態の車両用シート100におけるシートクッション101を収納するために、フロントアーム102を固定する床面がリアアーム106を固定する床面よりも低く形成されている。
【0031】
また、この車両用シート100には、シートバック105の傾倒角度を段階的に変更するためのリクライニング機構および車両用シート100を折り畳む際にシートバック105のシートクッション101側への傾倒を助勢するスプリングを備えた折り畳み機構を備えているが、これらの機構自体は本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
【0032】
(車両用シート100の作動)
このように構成された車両用シート100の作動について説明する。まず、この車両用シート100を座席として使用する場合について説明する。車両用シート100は、座席として使用される場合、フロントアーム102およびリアアーム106はフロアFに対して起立状態とされる。これにより、車両用シート100は、シートクッション101がフロントアーム102の起立状態によって車両の前後方向における所定の前後位置およびフロアFから所定の高さ位置にそれぞれ位置決めされるとともに、シートバック105がリアアーム106の起立状態によって所定の起立角度で位置決めされた状態で固定される(図1参照)。
【0033】
また、この場合、ロータリダンパ110は、可動片112に形成されたガイド用ピン113がリアアーム106に形成されたガイド用長孔108内におけるシートバック105側(図示上側)に位置した状態でリアアーム106に連結された状態となる。そして、このように、車両用シート100を座席として使用する場合においては、シートクッション101における後端部がシートバック105を支持する支持軸107bに最も接近した状態となるが、ロータリダンパ110が支持軸107bの回転中心軸線AX107bに対して車両の後方にずれた位置に配置されているためロータリダンパ110と干渉することはない(図4参照)。なお、図4においては、座席状態でのシートクッション101およびシートバック105をそれぞれ二点鎖線で示している。また、図4および図5においては、図2および図3に示すロータリダンパ110とリアアーム106との関係を二点鎖線で示している。
【0034】
次に、車両用シート100を折り畳む場合について説明する。この場合、車両用シート100のユーザは、シートバック105をシートクッション101側に倒す操作を行うことにより、図示しない折り畳み機構によってシートバック105に対してシートクッション101側に倒す力を作用させる。これにより、車両用シート100は、図2図4および図5の各破線矢印で示すように、シートバック105(リアアーム106)が支持軸107bを回動中心としてシートクッション101側に回動するとともに、このシートバック105の回動に伴ってフロントアーム102が支持軸103cを回動中心として車両の前方に向かって回動することによりシートクッション101が車両の前方側に移動しながらフロアF側に下降する。
【0035】
そして、この場合、ロータリダンパ110は、リアアーム106の変位に追従しながらリアアーム106に対して制動力を作用させる(図4図5参照)。具体的には、ロータリダンパ110は、フロアFに固定されたロータに対してハウジング111が回転変位することにより可動片112に形成されたガイド用ピン113がリアアーム106に形成されたガイド用長孔108内を案内されて支持軸107b側にスライド変位しながらリアアーム106の変位に追従する。これにより、ロータリダンパ110は、リアアーム106の変位過程、すなわち、シートバック105の傾倒過程において制動力を継続的に作用させることができるため、シートバック105の傾倒動作を含む車両用シート100の折り畳み動作を滑らかに行わせることができる。また、このシートバック105の傾倒過程においては、ロータリダンパ110が支持軸107bの回転中心軸線AX107bに対して車両の後方にずれた位置に配置されているため、傾倒するシートバック105の下端部が支持軸107b上を通過する際においてもロータリダンパ110に干渉することなく円滑に変位させることができる。
【0036】
この後、車両用シート100は、シートクッション101上にシートバック105が重畳した状態でフロアF上に固定的に配置されて折り畳み状態となる(図3図4図5参照)。この車両用シート100の折り畳み状態においては、ロータリダンパ110は、可動片112に形成されたガイド用ピン113がリアアーム106に形成されたガイド用長孔108内における支持軸107b側(図示左側)に位置した状態でリアアーム106に連結された状態を維持する。
【0037】
一方、車両用シート100を再び座席として使用する場合には、ユーザは、車両用シート100の折り畳み状態を解除してシートバック105を起こす。これにより、車両用シート100は、図2図4および図5の各破線矢印に示すように、前記した折り畳み状態への移行動作とは逆方向の動作過程を経て座席状態に移行する。この座席状態への復帰過程においても、ロータリダンパ110は、支持軸107bの回転中心軸線AX107bに対して車両の後方にずれた位置に配置されているため、起立するシートバック105および座席状態に移行したシートクッション101に干渉することがないため、車両用シート100を円滑に座席状態に移行させることができる。
【0038】
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、車両用シート100は、ロータリダンパ110をフロアF上におけるリアアーム106の回動中心軸となる支持軸107bからずれた位置にガイド用長孔108、可動片112およびガイド用ピン113からなる連結機構を介してリアアーム106に連結して構成されている。これにより、車両用シート100は、ロータリダンパ110との干渉を避けて自由な大きさおよび形状のシートクッション101およびシートバック105を採用することができるとともに、このようなシートクッション101およびシートバック105を採用したことに起因してロータリダンパ110が大型化した場合であってもシートクッション101およびシートバック105に干渉させることなくロータリダンパ110を配置することができる。また、車両用シート100は、ロータリダンパ110をフロアF上に設けているため、ロータリダンパ110をシートクッション101およびシートバック105側に設けた場合に比べて、シートクッション101およびシートバック105の設計の自由度およびロータリダンパ110の配置の自由度を拡大することができる。すなわち、車両用シート100は、シートクッション101やシートバック105の大きさや形状およびロータリダンパ110の配置位置や容量の各設計の自由度を向上させることができるため、座り心地や質感の一層の向上およびより多彩なシートアレンジを実現することができる。
【0039】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、車両用シート100は、ロータリダンパ110をリアアーム106に連結して構成した。しかし、ロータリダンパ110は、互いに連結されたシートクッション101およびシートバック105をそれぞれ支持するフロントアーム102およびリアアーム106のうちの少なくとも一方に連結されて車両用シート100の折り畳み動作を円滑することができれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、ロータリダンパ110は、リアアーム106に代えてまたは加えてフロントアーム102に連結されていてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、ロータリダンパ110は、リアアーム106を回動自在に支持する支持軸107bに対して車両の後方にずれた位置に配置した。しかし、ロータリダンパ110は、ロータリダンパ110が連結されるフロントアーム102および/またはリアアーム106を回動自在に支持する支持軸103c,107bから径方向にずれた位置に配置されていれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。例えば、フロントアーム102および/またはリアアーム106を回動自在に支持する支持軸103c,107bの下方や車両前方側のフロアFに凹状に凹んだ逃げ部を形成しておき、この逃げ部内にロータリダンパ110の全部または一部を配置することにより、ロータリダンパ110を支持軸103c,107bに対して下方や車両前方側に配置することもできる。これによれば、支持軸103c,107bに対して車両後方側にロータリダンパ110を配置するスペースが物理的に確保できない場合に有効である。
【0042】
また、上記実施形態においては、ロータリダンパ110は、図示しないロータをフロアF側に固定するとともにハウジング111側をリアアーム106側に可動的に連結した。すなわち、ハウジング111が本発明に係る回転部に相当する。しかし、ロータリダンパ110は、ハウジング111とロータとが相対的に回転変位する構成であれば、どちらがフロアFに固定されていてもよい。すなわち、ロータリダンパ110は、ハウジング111側をフロアF側に固定するとともにロータをリアアーム106側に可動的に連結するように構成してもよい。この場合、ガイド用ピン113を備える可動体112は、リアアーム106に連結されるロータ側に形成することになる。
【0043】
また、上記実施形態においては、ロータリダンパ110は、流動体の流動抵抗により回転トルクを生じるように構成した。しかし、ロータリダンパ110は、何らかの抵抗に回転トルクを生じるように構成されていれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ロータリダンパ110は、互いに摩擦接触する2枚以上の板状体の摩擦抵抗により回転トルクを得るように構成してもよいし、ゼンマイなどの弾性体を弾性力により回転トルクを得るように構成することもできる。
【0044】
また、上記実施形態においては、リアアーム106とロータリダンパ110とを、ガイド用長孔108、可動体112およびガイド用ピン113で構成される連結機構を用いて連結した。しかし、リアアーム106とロータリダンパ110とは、互いに可動的に連結されていれば、上記実施形態における連結機構以外の構成の連結機構を用いてもよい。また、上記実施形態においては、連結機構は、ガイド用長孔108をリアアーム106側に形成するとともに、ガイド用ピン113を備える可動体112をロータリダンパ110側に形成した。しかし、連結機構は、ガイド用長孔108をロータリダンパ110に形成された可動体112に形成するとともに、ガイド用ピン113をリアアーム106側に形成することもできる。
【0045】
また、上記実施形態においては、ガイド用長孔108内にブッシュ108aを嵌め込んで、ガイド用長孔108およびガイド用ピン113の摩耗を防止した。しかし、ブッシュ108aは、必ずしも必要なものではなく省略することもできる。この場合、ガイド用長孔108とガイド用ピン113とは直接摺動するように構成してもよいし、ガイド用長孔108とガイド用ピン113との間にグリスなどの潤滑剤を塗布してこの潤滑剤を介して摺動するように構成することもできる。また、ガイド用長孔108とガイド用ピン113とを互いに異なる材質、例えば、ガイド用長孔108およびガイド用ピン113のうち部品交換し易い側の一方を他方に比べて摩耗し易い材料で構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
F…フロア、AX107b,AX111…回転中心軸線
100…車両用シート、101…シートクッション、102…フロントアーム、103a…支持軸、103b…支持金具、103c…支持軸、104…シートバックアーム、104a…支持軸、105…シートバック、105a…ヘッドレスト、106…リアアーム、107a…支持金具、107b…支持軸、108…ガイド用長孔、108a…ブッシュ、
110…ロータリダンパ、111…ハウジング、112…可動片、113…ガイド用ピン。
図1
図2
図3
図4
図5