(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951282
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】粉砕機およびその粉砕方法
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
B02C15/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-44765(P2012-44765)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180231(P2013-180231A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】福井 和司
(72)【発明者】
【氏名】成田 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】筒場 孝志
(72)【発明者】
【氏名】沖本 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】月野 隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 徳親
(72)【発明者】
【氏名】田辺 秀雄
【審査官】
大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−144548(JP,U)
【文献】
特開平06−343887(JP,A)
【文献】
特開2007−209838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 15/00−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内で回転駆動されるテーブルと、
前記テーブルの上面に押圧されつつ回転し前記テーブル上の被粉砕物を粉砕するローラと、
前記ケーシング内で前記テーブルの外周部に取付けられた酸化ガス吹出リングと、
前記酸化ガス吹出リングより上方に取付けられケーシング中央に向けて傾斜した偏流板と、を備え、
前記酸化ガス吹出リングは、環状の酸化ガス通路を形成する内側円環壁および外側円環壁と、前記内側円環壁と前記外側円環壁の間において、前記酸化ガス吹出リングの周方向に間隔を隔てて複数が設けられた偏流ベーンと、を備え、
前記偏流ベーンは、下方から前記酸化ガス吹出リングに送り込まれる酸化ガスを前記ケーシングの中心に向けて偏流させるよう、当該偏流ベーンの下辺において前記内側円環壁と前記外側円環壁とを結ぶ下端面に対し、当該偏流ベーンの上辺において前記内側円環壁と前記外側円環壁とを結ぶ上端面が、前記酸化ガス吹出リングの中心側に傾斜して設けられており、
前記上端面は、前記外側円環壁側の端部が、前記内側円環壁側の端部よりも、前記テーブルと一体に回転する前記酸化ガス吹出リングの回転方向後方に位置するよう形成されていることを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
前記偏流ベーンは、前記下端面と前記上端面との間に屈曲部を有した立体形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
前記上端面は、前記下端面よりも前記酸化ガス吹出リングの回転方向後方に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉砕機。
【請求項4】
ケーシングと、
前記ケーシング内で回転駆動されるテーブルと、
前記テーブルの上面に押圧されつつ回転し前記テーブル上の被粉砕物を粉砕するローラと、
前記ケーシング内で前記テーブルの外周部に取付けられた酸化ガス吹出リングと、
前記酸化ガス吹出リングより上方に取付けられケーシング中央に向けて傾斜した偏流板と、を備え、
前記酸化ガス吹出リングは、環状の酸化ガス通路を形成する内側円環壁および外側円環壁と、前記内側円環壁と前記外側円環壁の間において、前記酸化ガス吹出リングの周方向に間隔を隔てて複数が設けられた偏流ベーンと、を備えた粉砕機の粉砕方法であって、
前記偏流ベーンは、当該偏流ベーンの下辺において前記内側円環壁と前記外側円環壁とを結ぶ下端面に対し、当該偏流ベーンの上辺において前記内側円環壁と前記外側円環壁とを結ぶ上端面が、前記酸化ガス吹出リングの中心側に傾斜して設けられ、
前記上端面は、前記外側円環壁側の端部が、前記内側円環壁側の端部よりも、前記テーブルと一体に回転する前記酸化ガス吹出リングの回転方向後方に位置するよう形成され、
前記偏流ベーンにより、下方から前記酸化ガス吹出リングに送り込まれる酸化ガスを前記ケーシングの中心に向けて偏流させて供給することを特徴とする粉砕機の粉砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き火力プラントにおける石炭等の固体燃料をローラにより粉砕を行う粉砕機およびその粉砕方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭焚きボイラでは、粉砕機へ原炭を投入して粉砕した微粉炭を燃料として使用する。粉砕機の内部では、原炭が粉砕されるとともに、粉砕された微粉炭が乾燥及び分級され、粉砕機上部に設置された微粉炭管より搬送用の一次空気等の酸化ガスによりボイラまで気流搬送される。
【0003】
図1に示すように、粉砕機10は、給炭管2から落下する原炭を受け、モータ3aによって垂直軸周りに回転駆動されるテーブル3と、テーブル3上の原炭を粉砕するローラ4と、ローラ4により粉砕された粉砕炭を分級する分級部6とを備えている。
【0004】
このような粉砕機10内においては、粉砕された粉砕炭を粉砕機に設けられた微粉炭管よりボイラへ搬送する方法として、空気等の酸化ガスによる気流搬送が用いられている。
ケーシング5内において、ケーシング5の下部には、気流搬送用の酸化ガスを外部から取り込むための供給口5aが設けられている。この供給口5aからケーシング5内に供給された酸化ガスは、テーブル3の外周部に設けられた環状の酸化ガス吹出リング7からテーブル3の上方空間に流出し、テーブル3上で粉砕された粉砕炭を、上方の分級部6へと搬送する。分級部6においては、粉砕機10の運転時には、微粉炭粒子のみが分級部6を通過して粉体出口8から流出して分級される。
【0005】
ここで、
図5に示すように、酸化ガス吹出リング7は、環状の酸化ガス通路を形成する内側円環壁7aと外側円環壁7bからなり、内側円環壁7aと外側円環壁7bの間に複数のベーン7cを設けた構成を有している。このベーン7cは、下端部7dに対して上端部7eが周方向にオフセットして位置し、周方向に傾斜して設けられている。このベーン7cにより、酸化ガス吹出リング7の上方の空間において、渦巻き状の気流を発生させることができ、粉砕炭が旋回しながら上昇し分級部6に均一に送り込むようになっている。
【0006】
また、
図1に示したように、酸化ガス吹出リング7の上方には、気流をケーシング5内の中央部に向けて偏流させる偏流板9が設けられている。これにより、酸化ガス吹出リング7から吹き出た酸化ガスは偏流板9に当り、偏流板下面傾斜部により中央部に向かうようになり、ここである程度粒径の大きな微粉炭はテーブル上に落ち一次分級され、粒径の小さい粉砕炭だけを分級部6に効率よく送り込むことができている。
【0007】
しかしながら、酸化ガス吹出リング7から吹き上げられて粉砕炭を巻き込んだ空気が偏流板9に衝突し、偏流板9が摩耗してしまうという問題があった。偏流板9には摩耗し難い材料を利用しているが、長期間の使用により摩耗したり、原炭中に硬い異物が混入している場合にはこの問題を回避できなかった。さらに、偏流板9をケーシング5に取付ける取付ボルトまで摩耗した場合、偏流板9が脱落し、粉砕機1を運転停止せざるを得なかった。
【0008】
そこで、特許文献1には、分級性能を維持しながら搬送用酸化ガスが衝突する偏流板9の摩耗を最小限に抑えて長寿命化し、酸化ガスを円環中心側に向けて偏流させる偏流リングを外側円環壁7bに設ける構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−209838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、酸化ガス吹出リング7の上方においては、テーブル3の回転にともなう遠心力によって、粉砕炭がテーブル3の外周側に飛散する。一方上記の酸化ガス吹出リング7は、垂直に酸化ガスを吹出すだけであり、外周側に飛散する石炭を粉砕機中心部に戻す力は弱く、上方にある偏流板に当る。このようにテーブル3の外周側に飛散する粉砕炭も、テーブル3の内周側に向けて確実に搬送するよう、気流を強く偏流させることができないのが現状である。
【0011】
また、従来のベーン7cは平板状であるため、曲がり易く、変形に対する強度が十分でないこともある。
粉砕機10においては、ローラ4が、回転するテーブル3上の原炭との間の摩擦によって自転しながら、ローラ4とテーブル3の間に原炭を挟み込んで粉砕する。このとき、
ローラ4を、テーブル3に対して油圧シリンダ等の加圧機構によって押し付けているため、テーブル3上の原炭を粉砕するときに炭層に合わせてローラ4が上下動すると、その反力が油圧シリンダ等の加圧機構を介して粉砕機10のケーシング5に伝達される。すると、粉砕機10全体が振動する。
ローラ4の上下動によって発生する振動には、定常的に発生する振動と、ローラ4がテーブル3上の原炭との間でスリップを生じたときの自励振動で発生する異常振動とがある。ローラ4の自励振動は、ローラ4が原炭を粉砕するときに、ローラ4が横方向(回転軸に沿った方向)にスリップした後、摩擦の回復、スリップを繰り返すことによって生じる。このような自励振動においてローラ4にスリップが生じると、ローラ4には衝撃が加わったような大きな異常振動が発生する。このような異常振動が粉砕機10のケーシング5に伝わったときに、前記のベーン7cが変形、割れを発生する可能性がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、偏流板の摩耗や損傷を防ぐとともに、酸化ガス吹出リングの強度を高めることのできる粉砕機およびその粉砕方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の粉砕機およびその粉砕方法は以下の手段を採用する。
ケーシングと、前記ケーシング内で回転駆動されるテーブルと、前記テーブルの上面に押圧されつつ回転し前記テーブル上の被粉砕物を粉砕するローラと、前記ケーシング内で前記テーブルの外周部に取付けられた酸化ガス吹出リングと、前記酸化ガス吹出リングより上方に取付けられケーシング中央に向けて傾斜した偏流板と、を備え、前記酸化ガス吹出リングは、環状の酸化ガス通路を形成する内側円環壁および外側円環壁と、前記内側円環壁と前記外側円環壁の間において、前記酸化ガス吹出リングの周方向に間隔を隔てて複数が設けられた偏流ベーンと、を備え、前記偏流ベーンは、下方から
前記酸化ガス吹出リングに送り込まれる酸化ガスを前記ケーシングの中心に向けて偏流させるよう、当該偏流ベーンの下辺において前記内側円環壁と前記外側円環壁とを結ぶ下端面に対し、当該偏流ベーンの上辺において前記内側円環壁と前記外側円環壁とを結ぶ上端面が、前記酸化ガス吹出リングの中心側に傾斜して設けられて
おり、前記上端面は、前記外側円環壁側の端部が、前記内側円環壁側の端部よりも、前記テーブルと一体に回転する前記酸化ガス吹出リングの回転方向後方に位置するよう形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような偏流ベーンは、下方から酸化ガス吹出リングに送り込まれる酸化ガスをケーシングの中心に向けて偏流させることができ、これによって、テーブル上でローラによって粉砕された粉砕物が偏流板にぶつかるのを防ぐことができる。
【0015】
偏流ベーンは、
前記下端面と
前記上端面との間に屈曲部を有した立体形状をなしているのが好ましい。これにより、偏流ベーンの強度が高まる。
【0016】
さらに本発明に係る粉砕機の粉砕方法では、ケーシングと、前記ケーシング内で回転駆動されるテーブルと、前記テーブルの上面に押圧されつつ回転し前記テーブル上の被粉砕物を粉砕するローラと、前記ケーシング内で前記テーブルの外周部に取付けられた酸化ガス吹出リングと、前記酸化ガス吹出リングより上方に取付けられケーシング中央に向けて傾斜した偏流板と、を備え、前記酸化ガス吹出リングは、環状の酸化ガス通路を形成する内側円環壁および外側円環壁と、前記内側円環壁と前記外側円環壁の間において、前記酸化ガス吹出リングの周方向に間隔を隔てて複数が設けられた偏流ベーンと、を備えた粉砕機の粉砕方法であって、前記偏流ベーンは、当該偏流ベーンの下辺において前記内側円環壁と前記外側円環壁とを結ぶ下端面に対し、当該偏流ベーンの上辺において前記内側円環壁と前記外側円環壁とを結ぶ上端面が、前記酸化ガス吹出リングの中心側に傾斜して設けられ、
前記上端面は、前記外側円環壁側の端部が、前記内側円環壁側の端部よりも、前記テーブルと一体に回転する前記酸化ガス吹出リングの回転方向後方に位置するよう形成され、前記偏流ベーンにより、下方から
前記酸化ガス吹出リングに送り込まれる酸化ガスを前記ケーシングの中心に向けて偏流させて供給することを特徴とする。
【0017】
ローラにより形成された微粉炭は、テーブルの外周側の酸化ガス吹出リングから導入された酸化ガスにより上方に搬送され、分級部において、所定粒径以下の微粉炭を通過させ、微粉炭管に流入し外部へ気流搬送される。
これにより、酸化ガス吹出リングから上方に噴き出した酸化ガスは、ケーシングの内側に向かって強く偏流され、テーブルの回転時に遠心力によって外周側に流れようとする粉砕炭が偏流板に衝突しにくくなる。その結果、偏流板の摩耗や損傷を防ぐことができ、高い耐久性を有したものとなる。
【発明の効果】
【0018】
偏流ベーンが、酸化ガスをケーシングの中心に向けて偏流させることで、テーブル上でローラによって粉砕された粉砕物が偏流板にぶつかるのを防ぐことができる。その結果、偏流板の摩耗や損傷を防ぐことができる。
また、偏流ベーンを、酸化ガスをケーシングの中心に向けて偏流させるために立体形状とすることで、その強度を高め、酸化ガス吹出リングの強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の粉砕機の一例である粉砕機の全体構成を示す断面図である。
【
図2】本発明における酸化ガス吹出リングの周方向の一部を示す斜視図である。
【
図3】酸化ガス吹出リングの断面図および平面図である。
【
図4】酸化ガス吹出リングおよび偏流板を示す図である。
【
図5】従来の本発明の酸化ガス吹出リングの周方向の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る粉砕機およびその粉砕方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
以下、本発明の一実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1に示すように、粉砕機10は、その外殻をなす円筒状のケーシング11内に、石炭を粉砕して微粉炭にする粉砕部20と、微粉炭の粒径を分級する分級部30と、を備えている。また、ケーシング11の上方には、貯炭場等、外部から供給される石炭をケーシング11内に供給する給炭部15が配置されている。
ケーシング11の上面には、給炭部15から石炭をケーシング11内に送り込む給炭管12と、分級部30で分級された微粉炭を外部に送出する複数本の微粉炭管13とが設けられている。
【0021】
給炭部15は、その外殻をなすケーシング16内に、外部から供給された石炭を給炭管12の入口まで搬送するコンベヤ部17が設けられた構成を有している。ケーシング16内には、シールエアが導入されている。
【0022】
粉砕部20は、給炭管12から原炭が供給される円盤状のテーブル21と、テーブル21を鉛直軸周りに回転駆動させるモータ23と、テーブル21上の石炭を押し潰して微粉炭にするローラ機構(ローラ)24を備えている。
【0023】
テーブル21の外周部の上方には、気流をケーシング11内の中央部に向けて偏流させる偏流板25が設けられている。これにより、気流が中央部に向かうようになり、粉砕炭を分級部6に効率よく送り込むことができている。
【0024】
ケーシング11内において、ケーシング11の下部には、気流搬送用の酸化ガスを外部から取り込むための供給口18が設けられている。この供給口18からケーシング11内に供給された酸化ガスは、テーブル21の上方空間に流出し、テーブル21上で粉砕された粉砕炭を、上方の分級部30へと搬送する。ここで、ケーシング11とテーブル21の外周部との間には、環状の酸化ガス吹出リング50が設けられている。
【0025】
ここで、
図2、
図3に示すように、酸化ガス吹出リング50は、テーブル21の外周部に一体に設けられている。酸化ガス吹出リング50は、環状の酸化ガス通路を形成する2重円構造の帯上リングの内側円環壁51と、内側円環壁51の外周側に同心状に設けられた筒状の外側円環壁52と、内側円環壁51と外側円環壁52の間に設けられた偏流ベーン53と、を備えた構成を有している。
【0026】
偏流ベーン53は、酸化ガス吹出リング50の周方向に間隔を隔てて複数が設けられている。
それぞれの偏流ベーン53は、中間部の稜線53aを屈曲部として、板状部材をくの字状に折り曲げて形成されている。偏流ベーン53の下端面53bは、内側円環壁51の下端部51aと外側円環壁52の下端部52aとを、酸化ガス吹出リング50の径方向に結ぶよう設けられている。稜線53aは、内側円環壁51側から外側円環壁52側に向けて、漸次低くなるよう傾斜して形成されている。また、この稜線53aは、外側円環壁52側の端部53dが、内側円環壁51側の端部53eよりも、テーブル21と一体に回転する酸化ガス吹出リング50の回転方向前方に位置するよう形成されている。これにより、外側円環壁52側の端部53dと下端面53bの距離よりも、内側円環壁51側の端部53eと下端面53bの距離の方が大きくなるよう形成されている。
また、偏流ベーン53の上端面53cは、内側円環壁51の上端部51bと外側円環壁52の上端部52bとを結ぶよう設けられている。また、この上端面53cは、外側円環壁52側の端部53fが、内側円環壁51側の端部53gよりも、テーブル21と一体に回転する酸化ガス吹出リング50の回転方向後方に位置するよう形成されている。これにより、偏流ベーン53は、その下端面53bに対し、上端面53cが酸化ガス吹出リング50の中心側に傾斜して設けられている。
このようなベーン53は、下端面53bと稜線53aとの間の偏流ベーン下部53Aと、稜線53aと上端面53cとの間の偏流ベーン上部53Bとからなり、偏流ベーン下部53Aに対し、偏流ベーン上部53Bが径方向内側にひねった(ツイストされた)ような形状をなしている。
【0027】
このような酸化ガス吹出リング50を備えることで、ケーシング11内の下部において供給口18からケーシング11内に供給された酸化ガスは、テーブル21と一体に回転する酸化ガス吹出リング50を経てテーブル21の上方空間に流出して、粉砕炭を分級部30へと搬送する。
酸化ガス吹出リング50は、偏流ベーン53が、その偏流ベーン下部53Aに対し、偏流ベーン上部53Bが径方向内側にひねったような形状をなしているので、テーブル21と一体に回転する酸化ガス吹出リング50により、酸化ガスがケーシング11の中心に向けてねじられるようにして送り出される。これにより、
図4に示されるように、本発明の酸化ガスは、偏流板25に衝突せずに流される。
【0028】
このような粉砕機10において、屋外または屋内の貯炭場から送られてきた石炭は、給炭部15のコンベヤ部17により給炭管12に搬送される。給炭管12を通った石炭は粉砕部20のテーブル21に供給され、テーブル21に配置される。テーブル21に配置された原炭は、テーブル21とともに回転しながら粉砕部20のローラ機構24により押し砕かれて微粉炭となる。
ローラ機構24により形成された微粉炭は、テーブル21の外周側の酸化ガス吹出リング50から導入された酸化ガスにより上方に搬送され、分級部30において、所定粒径以下の微粉炭を通過させ、微粉炭管13に流入し外部へ気流搬送される。
【0029】
これにより、酸化ガス吹出リング50から上方に噴き出した酸化ガスは、ケーシング11の内側に向かって強く偏流され、テーブル21の回転時に遠心力によって外周側に流れようとする粉砕炭が偏流板25に衝突しにくくなる。その結果、偏流板25の摩耗や損傷を防ぐことができ、高い耐久性を有したものとなる。
また、偏流ベーン53は、偏流ベーン下部53A、偏流ベーン上部53Bが稜線53aにおいて折り曲げられたような形状を有しているので、これを平板状とする構成に比較して、剛性を大幅に高めることができる。これにより、ローラ機構24においてローラのスリップに起因する自励振動等が生じても、偏流ベーン53が変形するのを防ぎ、高い信頼性を有するものとすることができる。
【0030】
なお、上記実施形態において、粉砕機10の各部の構成は、本発明の主旨を逸脱しないのであれば、適宜他の構成に変更することができる。
例えば、偏流ベーン53は、稜線53aにおいて屈曲された立体形状をなしているが、下端面53bから上端面53cに向けて連続する湾曲形状をなすようにしても良い。
さらに、石炭を粉砕する粉砕機10以外であっても、テーブル上の被粉砕物をローラにより粉砕する粉砕機であれば、上記構成を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 粉砕機
11 ケーシング
12 給炭管
13 微粉炭管
15 給炭部
16 ケーシング
18 供給口
20 粉砕部
21 テーブル
24 ローラ機構(ローラ)
25 偏流板
30 分級部
50 酸化ガス吹出リング
51 内側円環壁
52 外側円環壁
53 偏流ベーン
53A 偏流ベーン下部
53B 偏流ベーン上部
53a 稜線(屈曲部)
53b 下端面
53c 上端面