【実施例1】
【0011】
図において、1は本実施例構造が採用された自動車の車体前部であり、これはエンジンルーム2の側壁を構成するフレーム部材を左,右側方から覆う左,右のフロントフェンダ3,3と、該左,右のフロントフェンダ3,3間の空間である前記エンジンルーム2を開閉するフード4と、前記エンジンルーム2の前壁を構成するフロントバンパ5とを備えている。
【0012】
前記フロントフェンダ3は、車幅方向最外側に位置し、前輪6を上方から覆うように形成された外壁部3aと、該外壁部3aの上端から略垂直下方に折り曲げられた縦壁部3bと、該縦壁部3bの下端からエンジンルーム2側に折り曲げ形成されたフランジ部3cとを有する。
【0013】
前記フランジ部3cは、フェンダブラケット7にボルト3dにより締め付け固定されている。該フェンダブラケット7は、前記エンジンルーム2の左,右側部に配置されて前記フレーム部材の一部を構成するアッパメンバ8に固定されている。
【0014】
前記フェンダブラケット7は、一対の脚部7a,7aと、該両脚部7a,7aの上端部同士を連結する天
壁部7bと、前記両脚部7a,7aの下端に折り曲げ形成されたフランジ部7c,7cとを有し、該両フランジ部7cが上記アッパメンバ8の前部8aに溶接固定されている。
【0015】
そして前記両脚部7aの中途部には折れ線7dが外側に膨らむように形成されている。また前記天壁部7bには可変部7eがエンジンルーム2側に突出するように一体形成されている。このようにして、本実施例のフェンダブラケット7は、大きな衝撃荷重が作用すると前記折れ線7d,可変部7e部分が変形することにより該衝撃荷重を吸収する衝撃吸収部材として機能する。
【0016】
前記フード4は、フード本体9と、該フード本体9に取り付けられたヒンジアーム10とを有する。このヒンジアーム10はヒンジブラケット11により回動可能に支持され、該ヒンジブラケット11は、前記アッパメンバ8の後部8bに固定されている。
【0017】
前記フード本体9は、鋼板製のアウタパネル9aとインナパネル9bとを最中状をなすようにその周縁をヘミング加工等で固定したものである。また、前記ヒンジアーム10は、鋼板をプレス成形したものであり、支持フランジ部10cが形成されたアーム前部10aと、下方に凹む円弧状に形成されたアーム後部10bとを有する。前記支持フランジ部10cに前記フード本体9がボルト締め固定されている。また前記後部10bの後端に形成されたボス部10dがヒンジピン12により前記ヒンジブラケット11に回動可能に連結されている。
【0018】
ここで
図4に示すように、前記フロントフェンダ3の縦壁3bは、前記フェンダブラケット7の天壁部7bの車幅方向外側端部付近に上方から対向当接するように位置している。また前記ヒンジアーム10のアーム前部10aは、前記フェンダブラケット7の可変部7eに上方から少し隙間を明けて対向している。
【0019】
本実施例構造では、
図4又は
図2に示すように、上方から大きな衝撃荷重Fがフード4及びフェンダ3に跨がるように入力されると、該衝撃荷重Fは、衝撃吸収過程の最初期には前記フロントフェンダ3の縦壁部3bを介して前記フェンダブラケット7に入力され、続いて前記衝撃荷重Fにより前記フード本体9及びヒンジアーム10のアーム前部10aが下方に変位してフェンダブラケット7の可変部7eに当接する。
【0020】
このようにして、前記フェンダブラケット7の脚部7a,7aが前記折れ線7dを起点にして外方に膨らむように折れ変形し(
図2の二点鎖線参照)、また前記可変部7eが下方に折れ曲がるように変形する(
図4の符号7e′参照)、アーム前部10aは車幅方向内側斜め下方に変位し(
図4の符号10a′参照)、さらに変形が進むとアーム前部10aは可変部7eから外れる(
図4の符号10a′′参照)。
【0021】
このように本実施例では、上方からの衝撃荷重Fに対して、フェンダブラケット7の脚部7aの折れ変形及び可変部7eの折れ変形を誘発でき、前記衝撃荷重Fを効率良く吸収できる。また、可変部7eの変形が進むと、アーム前部10aが可変部7eから外れるので、 衝撃吸収過程の後半において最大衝撃値が過大になるのを回避できる。
【0022】
荷重−変形量特性を示す
図6において、特性線Aは従来の特性カーブを示し、特性線Bは本実施例における特性カーブを示す。同図から、本実施例構造では、衝撃吸収過程の前半における荷重値b1は従来の荷重値a1に比べて高くなっており、その分、後半における最大荷重値b2は従来の最大荷重値a2より低くなっていることが判る。なお、特性線Cは理想的な荷重特性を示す。
【0023】
また、本実施例では、フロントフェンダ3からの荷重及びフード4からの荷重を、1つの、しかもフェンダ取付け用のフェンダブラケット7をその形状を工夫することにより衝撃吸収部材に兼用して吸収するようにしたので、部品点数の増加や構造の複雑化を来すことがない。また、専用の衝撃吸収部材を必要としないので、その配置スペースを確保する必要もない。