(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力センサによる噴射圧力の計測値には、ノズルからの噴射流が圧力センサや圧力センサを支持する架台に当たる衝撃等に起因するノイズが含まれる。
特許文献1では、圧力センサおよび架台の自然振動数をノズルの移動周期である900ノズル/分(15Hz)よりも大きくなるようにしておき、ローパスフィルタを用いて計測値からノイズを除去している。しかし、装置の構造によっては、あるいはノズルの移動周期によっては、圧力センサおよび架台の自然振動数とノズル回転周期とを十分に離すことが難しいので、ローパスフィルタを用いてもノイズを十分に除去できないおそれがある。
そうすると、正常時と比べて50%程度にまで噴射圧力が低下した場合は異常を検出できても、噴射圧力の低下が例えば20%程度に留まる場合には、
図15に示すように、正常なノズルの噴射圧力と異常なノズルの噴射圧力との差がノイズによって埋没してしまうために、異常の検出が行えない。
【0006】
本発明は、上記のような課題に基づいてなされたもので、ノズルの噴射圧力の異常をより確実に検出できる容器搬送装置、充填設備、およびノズルの異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の容器搬送装置は、複数の容器を外周部に保持して回転する回転体と、容器と同期して移動するとともに、容器内に流体を噴射する複数のノズルと、回転体の外周部に対向し、ノズルからの流体の噴射圧力を計測する圧力計測手段と、圧力計測手段による計測値に基づいて、ノズルの噴射状態を検出するノズル噴射状態検出手段と、を備えている。
そして、本発明は、ノズル噴射状態検出手段が、計測値を移動平均処理する移動平均処理部と、移動平均処理部による処理結果に基づいて、ノズルの噴射圧力が正常か異常かを判定する判定部と、を有
し、圧力計測手段は、ノズルが有する複数のノズル孔からの流体の噴射圧力を計測し、判定部は、ノズル孔毎に、計測値の移動平均処理結果におけるピーク値と、予め取得される噴射圧力の正常ピーク値とを比較することにより判定を行うことを特徴とする。
本発明において、圧力計測手段は、ゲージ抵抗が形成された受圧ダイアフラムを有し、受圧ダイアフラムが撓むことでゲージ抵抗に生じる電気抵抗率の変化に基づいてノズルからの流体の噴射圧力を計測することが好ましい。
【0008】
この発明によれば、移動平均処理部により、ノズルの噴射圧力の計測値に含まれるノイズが除去されるので、移動平均処理結果に基づいてノズルの噴射圧力が正常か異常かを判定することにより、正常時から噴射圧力がさほど低下していない噴射異常をも確実に検出できる。
ここで、移動平均処理は、その計算に高い処理能力が要求されず、圧力計測手段による計測に遅滞なく行われるので、容器搬送装置が備える全ノズルを対象に、リアルタイムでノズル異常検出を実施できる。このため、異常の生じたノズルを即検知し、そのノズルにより噴射された容器を即特定できるので、歩留まりが良くなる。
【0009】
第1の容器搬送装置において、圧力計測手段は、ノズルが有する複数のノズル孔からの流体の噴射圧力を計測し、判定部は、ノズル孔毎に、計測値の移動平均処理結果におけるピーク値と、予め取得される噴射圧力の正常ピーク値とを比較することにより判定を行う
。
このように複数のノズル孔からの噴射圧力に基づいてノズル異常を検出すれば、計測のバラツキによる影響が少なく、ノズルの異常検出を安定して行うことができる。
【0010】
本発明の第2の容器搬送装置は、複数の容器を外周部に保持して回転する回転体と、容器と同期して移動するとともに、容器内に流体を噴射する複数のノズルと、回転体の外周部に対向し、ノズルからの流体の噴射圧力を計測する圧力計測手段と、圧力計測手段による計測値に基づいて、ノズルの噴射状態を検出するノズル噴射状態検出手段と、を備えている。
そして、本発明は、ノズル噴射状態検出手段が、計測値を積分化処理する積分化処理部と、積分化処理部による処理結果を回転体の回転速度に基づいて補正する補正処理部と、補正処理部により得られる特性値に基づいて、ノズルの噴射圧力が正常か異常かを判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、積分化処理部により、ノズルの噴射圧力の計測値に含まれるノイズの影響が少ない特性値を得ることができるので、正常時から噴射圧力がさほど低下していない噴射異常をも確実に検出できる。
その上、補正処理部による積分値の補正処理により、回転速度に依存しない特性値を得ることができる利点を有する。回転速度に依存しないので、回転速度を制御パラメータに設定する手間が掛からない。
【0012】
上記の容器搬送装置はいずれも、殺菌成分を含む流体をノズルから噴射する殺菌装置や、洗浄成分を含む流体をノズルから噴射する洗浄装置としても構成することができる。
したがって、本発明は、このような殺菌装置および洗浄装置と、容器に内容物を充填する充填装置と、各容器搬送装置のノズル噴射状態検出手段が実装される制御装置と、を備える充填設備を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記の回転体と、上記の複数のノズルと、上記の圧力計測手段と、を備える容器搬送装置に用いられるノズルの異常検出方法も提供する。
第1のノズルの異常検出方法は、圧力計測手段によりノズルからの流体の噴射圧力を計測する圧力計測ステップと、圧力計測ステップにより得られる計測値を移動平均処理する移動平均処理ステップと、移動平均処理ステップによる処理結果に基づいて、ノズルの噴射圧力が正常か異常かを判定する判定ステップと、を備え
、圧力計測ステップでは、ノズルが有する複数のノズル孔からの流体の噴射圧力を計測し、判定ステップでは、ノズル孔毎に、計測値の移動平均処理結果におけるピーク値と、予め取得される噴射圧力の正常ピーク値とを比較することにより判定を行うことを特徴とする。
【0014】
また、第2のノズルの異常検出方法は、圧力計測手段によりノズルからの流体の噴射圧力を計測する圧力計測ステップと、圧力計測ステップにより得られる計測値を積分化処理する積分化処理ステップと、積分化処理ステップによる処理結果を回転体の回転速度に基づいて補正する補正処理ステップと、補正処理ステップにより得られる特性値に基づいて、ノズルの噴射圧力が正常か異常かを判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
【0015】
第2のノズルの異常検出方法では、ノズル毎に、圧力計測ステップ、積分化処理ステップ、および補正処理ステップを実施して特性値を取得しておき、複数のノズルから順次選択される1つ以上のノズルを処理対象として、圧力計測ステップと、積分化処理ステップと、補正処理ステップと、判定ステップとを実施することが好ましい。
【0016】
この発明では、複数のノズルから順次選択されるノズルを対象に異常検出を行うので、移動平均処理と比べて処理能力を多く要する積分化処理を行いながら、異常検出の一連の処理に掛かる時間を抑えることができる。このため、処理能力の高い制御装置を導入しなくても、タイミングを順次ずらしながら、全ノズルの異常検出を行うことができる。
【0017】
さらに、第2のノズルの異常検出方法では、圧力計測ステップにより得られる計測値を移動平均処理する移動平均処理ステップを備え、積分化処理ステップでは、移動平均処理ステップによって処理された計測値を積分化処理することが好ましい。
このように、移動平均処理によってノイズが除去された計測値を積分化処理することにより、ノイズの影響がより少ない特性値が得られるので、それに基づいてノズルの異常検出を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ノズルの噴射圧力の異常をより確実に検出できる容器搬送装置、充填設備、およびノズルの異常検出方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に示す実施形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示す充填設備1は、供給されるボトル18(
図2)を搬送しながらボトル18内を殺菌、洗浄した後、ボトル18内に飲料水を充填する。
充填設備1は、ボトル18内を殺菌する第1ロータリー殺菌装置11および第2ロータリー殺菌装置12と、ボトル18内を洗浄するロータリー洗浄装置13と、ボトル18内に飲料水を充填するロータリー充填装置14と、ボトル18の口を封止するキャッパ装置15と、不良ボトルを除去するボトル振分装置16と、これら装置11〜16を収容するクリーンチャンバ17と、各装置11〜16の動作を制御する制御装置40(
図4)とを備えている。
クリーンチャンバ17の内部は正圧に維持される。
【0021】
この充填設備1において、ボトル18は、各装置11〜16の回転体(スターホイール)の外周部に一定ピッチで保持されるとともに、各スターホイールの矢印の向きへの回転に伴って前段から後段に向けて順次搬送される。
充填設備1の最前段Ftには、空のボトル18が供給される。また、充填設備1の最後段Bkでは、正常に充填が済んだボトル18がボトル振分装置16を通過して次の設備へと送り出される一方、不良が生じたボトル18がスターホイール161に移送されて除去される。
【0022】
各装置11〜16は、各装置11〜16間のボトル18の転送を行う転送スターホイール19A〜19Lを介して連結されている。第1ロータリー殺菌装置11の前段に設けられる転送スターホイール19Cは、ボトル18を正立状態から180度転回して倒立状態にする。また、ロータリー充填装置14の前段に設けられる転送スターホイール19Jは、ボトル18を倒立状態から180度転回して正立状態に戻す。
【0023】
第1ロータリー殺菌装置11は、
図2に示すように、ボトル18を外周部に一定ピッチで保持するスターホイール11Aと、スターホイール11Aと同期して回転する図示しない回転体に設けられる複数個(n個)のノズル20と、ノズル20の目詰りを検知するための圧力センサ30と、ノズル20を数えるカウンタ38(
図4)とを備えている。
【0024】
各ノズル20には、1番からn番までの番号が付与されている。これらのノズル20は、図示しない給液手段に接続されており、ボトル18と同期して回転しながら、搬送されるボトル18内に殺菌液を噴射する。目詰りしてない正常な各ノズル20からは、等しい噴射圧力で殺菌液が噴射される。
ノズル20は、4つのノズル孔21を有しており、ノズル20の移動軌跡付近に2つのノズル孔21が位置する。そのうち、ノズル20の移動方向前方側に位置するものを前方ノズル孔211と称し、ノズル20の移動方向後方に位置するものを後方ノズル孔212と称する。
【0025】
圧力センサ30は、クリーンチャンバ17の底面に立設される支柱2と、支柱2に両端を支持される梁3とを備える架台4の梁3上に、ブラケット5により固定されており、スターホイール11Aの外周部において転送スターホイール19C,19Dに挟まれる箇所PosAに位置している。スターホイール11Aの外周部においてボトル18が通過しないPosAでもノズル20による噴射が行われており、その噴射圧力を圧力センサ30が計測する。圧力センサ30は、スターホイール11Aの回転に伴って各ノズル20からの噴射圧力を順次計測する。
【0026】
圧力センサ30は、各種構造のものを用いることができるが、本実施形態では、ピエゾ抵抗型の圧力センサ30を採用している。圧力センサ30は、基板に形成された受圧ダイヤフラム35を備えている。受圧ダイヤフラム35には、図示しないゲージ抵抗が形成されている。受圧ダイヤフラム35が撓むとゲージ抵抗に生じる電気抵抗率の変化(ピエゾ抵抗効果)に基づいて、ノズル20からの噴射圧力を計測することができる。
【0027】
カウンタ38は、ノズル20の番号を1番から順次カウントし、スターホイール11Aが1周してn番までカウントすると、ノズル番号をリセットして再び1番からカウントを続ける。このようなカウンタ38は、例えば光学式や磁気式の公知の構成とすることができる。
【0028】
第2ロータリー殺菌装置12も、第1ロータリー殺菌装置11のスターホイール11Aと同様のスターホイール12Aと、複数のノズル20と、圧力センサ30と、カウンタ38とを備えている。但し、第2ロータリー殺菌装置12の圧力センサ30は、スターホイール12Aの外周部において転送スターホイール19D,19Eに挟まれる箇所PosBに設けられている。
【0029】
また、ロータリー洗浄装置13も、スターホイール11Aと同様のスターホイール13Aと、複数のノズル20と、圧力センサ30と、カウンタ38とを備えている。ロータリー洗浄装置13の圧力センサ30は、スターホイール13Aの外周部において転送スターホイール19G,19Hに挟まれる箇所PosCに設けられている。ロータリー洗浄装置13は、洗浄液をノズル20から噴射する。
【0030】
第1ロータリー殺菌装置11、第2ロータリー殺菌装置12,およびロータリー洗浄装置13の各々の圧力センサ30およびカウンタ38は、
図4に示す制御装置40に接続されている。
制御装置40は、充填設備1の各スターホイールの駆動制御を行う駆動制御部41と、飲料水の充填を制御する充填制御部42と、殺菌液および洗浄液の給液を制御する給液制御部43と、制御に必要なデータを記憶する記憶部44と、圧力センサ30から送られる計測値に基づいて、ノズル20の噴射状態を検出するノズル噴射状態検出手段45と、ノズル噴射状態検出手段45の検出結果およびカウンタ38から送られるノズル番号に基づいて不良ノズルを特定した上で、不良処理する不良ボトル処理部46とを備えている。
また、制御装置40には、充填設備1の運転状態や、異常が検出されたノズル番号等を表示する図示しない表示装置が接続されている。
【0031】
本実施形態の充填設備1は、ノズル噴射状態検出手段45の構成に最も大きな特徴を有している。
ノズル噴射状態検出手段45は、圧力センサ30による計測値を移動平均処理する移動平均処理部451と、移動平均処理部451による処理結果に基づいて、ノズル20の噴射圧力が正常か異常かを判定する判定部452とを有している。
【0032】
移動平均処理部451は、圧力センサ30による計測値を所定のサンプリング周期で切り出した所定数のデータに対して移動平均処理する。
図5は、圧力センサ30による計測値からサンプリング周期を変えて切り出した20周期分のデータに対して移動平均処理を施した処理結果を示している。
ノズル20の噴射毎に現れる2つのピークP1,P2は、圧力センサ30の受圧ダイヤフラム35に噴射流を直接及ぼす前方ノズル孔211および後方ノズル孔212からの噴射圧力を示している。
ここでは、給液圧力が260kPa、各ノズル20からの平均噴射流量が2.5l/min、スターホイールの回転速度が46rpmとなる動作条件とされている。
圧力センサ30によって計測されるノズル20の噴射時間は約0.2s(秒)であり、これはスターホイールの回転速度によって変わる。スターホイールの回転速度は、充填設備1の能力によって決まる。本実施形態では、スターホイールの回転速度のことをボトル18の処理速度であるBPM(Bottle Per Minute)で表す。上記の回転速度46rpmは600BPMに相当する。
【0033】
図5に示すように、サンプリング周期を5ms、10msとして計測すると、処理結果の噴射圧力が計測値から乖離し、噴射特性を維持できないので、サンプリング周期は1ms以下とするのが好ましい。
以上を踏まえて、本実施形態の移動平均処理部451は、サンプリング周期1msとし平均個数20の計測データに対して移動平均処理を行う。この処理により、
図6に示すように、給液圧力に対して、回転速度毎に線形の噴射特性が得られる。なお、
図6に示す噴射圧力は、正常な1番のノズル20の前方ノズル孔211および後方ノズル孔212の各々からの噴射圧力のピーク(P1,P2)の合成値を示している。
また、移動平均処理に用いる計測データの個数は10〜20位が好ましい。
【0034】
判定部452は、移動平均処理部451の処理結果からピーク値を取得するとともに、そのピーク値に基づいて、ノズル20の噴射圧力が正常か異常かを判定する。本実施形態では、前方ノズル孔211からの噴射圧力のピーク値(P1)と、後方ノズル孔212からの噴射圧力のピーク値(P2)との両方に基づいて判定するが、いずれか一方のピーク値に基づいて判定を行うこともできる。
【0035】
以上のように構成される充填設備1の作用について説明する。
ノズル20の異常を検出する準備として、第1ロータリー殺菌装置11、第2ロータリー殺菌装置12,およびロータリー洗浄装置13をそれぞれ動作させ、正常なノズル20の噴射圧力のピーク値(正常ピーク値)を取得しておく。
正常ピーク値は、個体差を考慮してノズル20毎に、圧力センサ30による計測値に対して移動平均処理部451により移動平均処理を行ってノイズを除去した上で求められる。計測値のバラツキを考慮すると、各装置のスターホイールを何周かさせて、各ノズル20の噴射圧力を複数回ずつ計測し、計測値の移動平均処理結果に基づくノズル20毎のピーク平均値を正常ピーク値とすることが好ましい。この正常ピーク値は、前方ノズル孔211と、後方ノズル孔21Bとについてそれぞれ求められる。
【0036】
以上の事前準備を終えたら、充填設備1を運転させる。
充填設備1の最前段Ftの転送スターホイール19Aに順次供給されるボトル18は、充填設備1の各装置11〜16によって最後段Bkまで搬送されるまでの間、第1ロータリー殺菌装置11および第2ロータリー殺菌装置12によって殺菌されるとともに、ロータリー洗浄装置13によって洗浄される。そして、ロータリー充填装置14およびキャッパ装置15によって充填、封止を終えたボトル18は、次の設備に送り出される。
【0037】
充填設備1の運転中、第1ロータリー殺菌装置11,第2ロータリー殺菌装置12,およびロータリー洗浄装置13の各圧力センサ30により計測される噴射圧力に基づいて、
図7に示すノズル異常検出処理が行われる。
圧力センサ30は、スターホイールの回転に伴って対向するノズル20からの噴射圧力を計測する(圧力計測ステップS1)
【0038】
次に、移動平均処理部451により、圧力センサ30による計測値を
図8に示すように平滑化する(移動平均処理ステップS2)。
そして、判定部452は、移動平均処理結果から、前方ノズル孔211、後方ノズル孔212の双方について噴射圧力のピーク値(計測ピーク値)を検出し(ピーク検出ステップS3)、いずれかの計測ピーク値が正常ピーク値から許容範囲を逸脱して低いときに異常と判定する(判定ステップS4)。その許容範囲は、ここでは、前方ノズル孔211、後方ノズル孔212共に、正常ピーク値から0.5kPaの範囲に設定するものとする。
【0039】
図9に示す1番のノズル20では、前方ノズル孔211の計測ピーク値b1が3.4kPaであり、前方ノズル孔211の正常ピーク値a1との差Pa1が0.1となる。また、後方ノズル孔212の計測ピーク値b2が3.3kPaであり、後方ノズル孔212の正常ピーク値a2との差Pa2も0.1となる。したがって、圧力差Pa1,Pa2のいずれも許容範囲内(0.5kPaより小)なので、各ノズル20は正常と判定される。
2番のノズル20も1番のノズル20と同様に正常と判定される。
しかし、3番のノズル20は、前方ノズル孔211の計測ピーク値b1が3.0、後方ノズル孔212の計測ピーク値b2が2.7であり、正常ピーク値との差Pa1、Pa2がいずれも0.5以上となって許容範囲から逸脱するので、異常と判定される。
また、4番のノズル20も、前方ノズル孔211の計測ピーク値b1が3.3、後方ノズル孔212の計測ピーク値b2が2.9であり、正常ピーク値との差Pa1、Pa2のうち一方のPa2が許容範囲から逸脱するために、異常と判定される。
【0040】
なお、前方ノズル孔211および後方ノズル孔212の一方の計測ピーク値が許容範囲から逸脱するものの、他方の計測ピーク値が許容範囲内に納まっている場合には、上記とは違って正常と判定するようにしてもよい。
また、上記では、判定部452が正常ピーク値と計測ピーク値との差Pa1およびPa2を求め、それらが正常ピーク値から許容範囲(0.5kPa)内にあるかどうかで正常異常を判定していたが、事前準備において正常ピーク値から許容範囲0.5kPaを引いた値を閾値として設定しておき、計測ピーク値が閾値以下となるかどうかで正常異常を判定することもできる。
【0041】
以上の移動平均処理ステップS2、ピーク検出ステップS3、および判定ステップS4は、圧力センサ30が次のノズル20の計測を開始する前までに終了するので、ノズル20の番号順に、噴射圧力の計測、移動平均処理、ピークの検出、および正常異常の判定(ステップS1〜S4)がノズル20の移動に同期して繰り返し行われる。
【0042】
上記のノズル異常検出処理は、第1ロータリー殺菌装置11,第2ロータリー殺菌装置12,およびロータリー洗浄装置13の各々が備えるノズル20に対して並行して行われる。
ノズル20の噴射異常が検出されると、不良ボトル処理部46は、カウンタ38が示す番号に基づいて、その異常ノズル20により殺菌処理あるいは洗浄処理されたボトル18を特定し、そのボトル18の以降の処理を中断する。そして、ボトル振分装置16はそのボトル18をラインから除去する。
【0043】
本実施形態によれば、移動平均処理部451により、ノズル20の噴射圧力の計測値に含まれるノイズを除去しつつも、噴射特性が維持された移動平均処理結果に基づいて、噴射圧力の異常が検出されるので、正常時と比べて噴射圧力が大きく低下したノズル20は勿論のこと、正常時から噴射圧力がさほど低下しないものの殺菌、洗浄が不十分となりうるノズル20の異常をも確実に検出できる。
本実施形態で用いる移動平均処理は、第1ロータリー殺菌装置11,第2ロータリー殺菌装置12、およびロータリー洗浄装置13の各々が備える全ノズル20を対象に、リアルタイムで実施されるので、異常の生じたノズル20を即検知し、殺菌不良、洗浄不良のボトル18を即特定して、不良ボトルをラインから除去できるので、歩留まりが良くなる。
また、本実施形態では、ノズル20の2つのノズル孔211,21Bの噴射圧力に基づいてノズル異常を検出するので、計測のバラツキによる影響が少なく、ノズル20の噴射異常を安定して検出することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について
図10〜
図12を参照して説明する。
第2実施形態は、第1実施形態のノズル噴射状態検出手段45に代えて、ノズル噴射状態検出手段47により、ノズル20の噴射異常を検出する。この点を除いて、第2実施形態に係る充填設備は、第1実施形態の充填設備1と同様に構成されている。
【0045】
ノズル噴射状態検出手段47は、
図10に示すように、圧力センサ30による計測値を積分化処理する積分化処理部471と、積分化処理部471による処理結果を補正する補正処理部472と、補正処理部472により得られる特性値に基づいて、ノズル20の噴射圧力が正常か異常かを判定する判定部473とを有している。
【0046】
積分化処理部471は、ノズル20からの噴射圧力を時間で積分する。その積分値は、高周波数のノイズが存在していても安定した値を示すため、積分値をノズル20の噴射特性を示す特性値として採用する。このように積分値を用いることで、ノイズによる影響をさほど受けずにノズル20の異常を検出できる。
【0047】
本実施形態では、積分値を補正処理することにより、回転速度に依存しない共通の特性値を得ることができる。回転速度が異なっていても同一サンプリング周期の計測データを積分すると、回転速度が遅いときは計測されるノズル20の噴射時間が長いためデータ数が多くなるので、積分値が大きくなり、回転速度が速いときは逆に積分値が小さくなってしまう。そのため、補正処理部472は、ノズル20からの噴射流が圧力センサ30を通過する時間と、圧力センサ30による計測のサンプリング周期との比率を補正係数Kとする以下の処理を行う。圧力センサ30による計測サンプリング周期は、例えば0.1msである。
【0048】
まず、ノズル20の移動速度Vは、次式(1)で表される。
【数1】
PCDはノズル20が周回する円中心からノズル20までの径であり、ωは2π・N/60である。Nはスターホイールの回転速度[rpm]である。
【0049】
次に、ノズル20からの噴射流の通過時間tpは、次式(2)で表され、回転速度に依存する。
なお、ノズル20の噴射流の通過時間は、例えば、
図8に示すピークP1の山の始点からピークP2の山の終点までの時間tpを指している。
【数2】
Lは、噴射流の移動距離であり、受圧ダイヤフラム35の長さに相当する。
【0050】
以上で求めた噴射流の通過時間tpと、計測サンプリング周期tsとの比率として、次式(3)に示すように補正係数Kが求められる。
【数3】
【0051】
そして、噴射圧力の積分値(P
J)に回転速度に基づく補正係数Kを用いて、次式(4)のように、補正された噴射圧力の積分値P
JCを得る。
【数4】
【0052】
補正処理部472によって以上のように補正すると、
図11に示すように、回転速度に依存しない特性値が得られる。
【0053】
判定部473は、補正処理部472により補正された特性値に基づいて、ノズル20の噴射圧力が正常か異常かを判定する。
【0054】
本実施形態におけるノズル異常検出処理では、事前準備として、第1ロータリー殺菌装置11、第2ロータリー殺菌装置12,およびロータリー洗浄装置13をそれぞれ動作させ、上記の積分化処理および補正処理により、正常なノズル20の正常特性値と、補正係数Kとを圧力センサ30による計測値からノズル20毎に取得しておく。計測のバラツキを考慮すると、各装置のスターホイールを何周かさせて、各ノズル20を複数回ずつ計測し、それを積分化、補正処理して得られたものの平均値を特性値とするのが好ましい。補正係数Kも、ノズル20毎の複数回の計測に基づいて求められる平均値とするのが好ましい。
【0055】
以上の事前準備を終えたら、制御装置40により、
図12に示すノズル異常検出処理が行われる。ノズル異常検出処理は、第1ロータリー殺菌装置11,第2ロータリー殺菌装置12,およびロータリー洗浄装置13の各々が備えるノズル20に対して並行して行われる。
【0056】
ノズル異常検出処理は、n個のノズル20から順次選択される1つのノズル20について、圧力計測ステップS21、積分化処理ステップS22、補正処理ステップS23、および判定ステップS24を行う。
圧力計測ステップS21および積分化処理ステップS22では、カウンタ38によって特定される該当のノズル番号のノズル20の噴射圧力を計測し、その計測値を積分化処理部471により積分化処理する。
次いで、補正処理ステップS23では、積分化処理結果を補正処理部472により、補正係数Kに基づいて上記式(4)のように補正して計測特性値を得る。計測のバラツキを考慮すると、スターホイールがm周する間に該当のノズル番号のノズル20の噴射圧力をm回計測し、その計測値を積分化処理部471、補正処理部472により処理したものの平均値を計測特性値とすることが好ましい。
なお、本実施形態では、準備段階で得られた補正係数Kを用いることにより、設備運転時には式(4)のみ計算しているが、圧力センサ30による計測の都度、ノズル20の通過時間tpを求め、それに基づいて求められた補正係数Kを用いて補正することもできる。
【0057】
次に、判定ステップS24では、上記で得られた計測特性値を判定部473によって正常特性値と比較する。計測特性値が正常特性値から許容範囲内であれば正常と判定し、許容範囲を逸脱していれば異常と判定する。許容範囲は、例えば0.5kPaとする。
判定部473によって異常と判定されると、第1実施形態と同様に、不良ボトル処理部46によるボトル18の特定、処理中断、およびボトル振分装置16による不良ボトル18の除去が行われる。
以上の処理を終えたら、カウンタ38により次の番号のノズル20を特定し、そのノズル20について、上記のステップS21〜S24を行う。n番のノズル20まで処理を繰り返したら、再び1番のノズル20を対象に処理を行う。
【0058】
本実施形態によれば、積分化処理部471により、ノズル20の噴射圧力の計測値に含まれるノイズの影響が少ない特性値を得ることができるので、第1実施形態とほぼ同様に、正常時から噴射圧力が大きくは低下しないものの殺菌、洗浄が不十分となりうるノズル20をも確実に検出できる。
また、上記の補正処理部472により、回転速度に依存しない特性値を得ることができる利点を有する。回転速度に依存しないので、回転速度を制御装置40に設定する手間が掛からない。
しかも、本実施形態によれば、上記のように、複数のノズル20から順次選択されるノズル20を対象に異常検出を行うので、移動平均処理と比べて処理能力を多く要する積分化処理ステップS22を行いながら、異常検出の一連のステップS21〜S24の処理時間をスターホイールが1周する間の時間内に納めることができる。そうすると、処理能力の高い制御装置を導入しなくても、同一ノズル20の複数回の計測、次のノズル20の計測に遅滞なく、タイミングを順次ずらしながら、全ノズル20の異常検出を行うことができる。
なお、本実施形態ではノズル20を1つずつ順次選択したが、まず1番および2番のノズル20を選択し、次に3番および4番のノズル20を選択するといったように、2つ以上のノズル20を順次選択してもよい。
【0059】
第2実施形態では、圧力センサ30による計測値を積分化処理していたが、計測値を第1実施形態のように移動平均処理したものに対して積分化処理することもできる。
図13は、
図12に示したノズル20毎の処理に相当するフローを示しており、まず噴射圧力を計測し(ステップS1)、次に移動平均処理を実施する(ステップS2)。次いで、移動平均処理結果を積分化処理し(ステップS22)、それを補正することにより(ステップS23)得られた特性値に基づいて、ノズル20が正常か異常かを判定する(ステップS24)。
積分化処理ステップS22では、
図14に示すように、移動平均処理により平滑化された計測値の積分値(格子パターンで図示)を得る。
このように、移動平均処理によりノイズが除去された計測値を積分化処理することにより、ノイズの影響がより少ない特性値が得られるので、ノズルの噴射異常を安定して検出することができる。
【0060】
なお、上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。