(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、ポリエーテル化合物(B)を0.001〜5重量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0028】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
【0029】
また、フェノキシエチル(メタ)アクリレートのような芳香族環を含有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。芳香族環を含有するアルキル(メタ)アクリレートは、これを重合したポリマーを前記例示の(メタ)アクリル系ポリマーに混合して用いることができるが、透明性の観点から、芳香族環を含有するアルキル(メタ)アクリレートは、前記アルキル(メタ)アクリレートと共重合して用いるのが好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として水酸基含有モノマーを含有する。水酸基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。長期保管後の耐久性を向上するためには、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中、モノマー単位として水酸基含有モノマーを含むことが肝要であり、好ましくは0.3重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上である。ただし、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中に水酸基含有モノマーを過多に含む場合であっても、接着力が上昇してリワーク性が不利になるため、10重量部以下であることが好ましく、7重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましい。
【0031】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、 (メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0032】
上記共重合モノマーの中で、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中にカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、粘着剤の接着力が上昇し、長期保管後においても粘着剤層の剥がれが発生し難くなる。しかしながら、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中のカルボキシル基含有モノマーの含有量が多くなると、粘着剤層のリワーク性が低下する。したがって、リワーク性と、長期保管後の耐久性とをよりバランス良く向上するためには、モノマー単位として、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中にカルボキシル基含有モノマーを0〜0.5重量部含有することが好ましく、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中にカルボキシル基含有モノマーを含有しないことが好ましい。
【0033】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、なども改質目的のモノマー例としてあげられる。
【0034】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等があげられる。
【0035】
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0036】
また、共重合モノマーとしては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、全構成モノマーの重量比率において、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、前記共重合モノマーの割合は、全構成モノマーの重量比率において、0〜20%程度、0.1〜15%程度、さらには0.1〜10%程度であるのが好ましい。
【0038】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常、重量平均分子量が50万〜400万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は80万〜300万であるものを用いることが好ましい。さらには140万〜270万であることが好ましく、さらには170万〜250万であることがより好ましく、180万〜240万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が50万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が400万よりも大きくなると貼り合せ性、接着力が低下する点でも好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0039】
このような(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0040】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0041】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0042】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0044】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.2重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.175重量部程度とするのが好ましい。
【0045】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0046】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0048】
本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)に加えて、ポリエーテル化合物(B)を含有する。
【0049】
ポリエーテル化合物(B)は、一般式(1):
[X−A
2−(AO)
p−]
n−Y−[(AO)
q−A
2−SiR
aM
3−a]
t−n
(式中、Yは一分子内にt個の水酸基を有する化合物から全ての水酸基を除いたt価の残基を示し、Xは極性基を示し、AOは炭素数2〜6のオキシアルキレン基を繰り返し単位として含む骨格を示す。pは10〜1700の整数であり、qは10〜1700の整数であり、AOの平均付加モル数を示す。p+q≧20である。A
2は単結合、炭素数2〜6のアルキレン基、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合またはカーボネート結合である。Rは置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Mは水酸基又は加水分解性基を示し、tは2〜8までの整数であり、aは0〜2の整数であり、nは1〜7までの整数であり、t>nである。但し、Rが複数存在するとき複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、Mが複数存在するとき複数のMは互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表される、反応性シリル基および極性基を有するポリエーテル化合物(B)である。
【0050】
一般式(1)中、Yは一分子中にt個の水酸基を有するモノヒドロキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物から全部の水酸基を除いたt価の残基であって、ポリエーテル化合物(B)を製造するのに用いた開始剤に由来する残基である。該開始剤は2〜8個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物であって、具体的には例えば、水;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール又は1,4−シクロヘキサンジオール等の2価アルコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はトリペンタエリスリトール等の多価アルコール類;グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトース、蔗糖又はメチルグルコシド等の糖類又はその誘導体;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック、レゾール又はレゾルシン等のフェノール化合物等が挙げられる。残基Yは、炭素数1〜20のt価の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のt価の炭化水素基であることがより好ましい。
【0051】
前記ポリエーテル化合物(B)における、前記反応性シリル基は、1分子あたり、末端に少なくとも1個を有する。ポリエーテル化合物(B)が直鎖状の化合物の場合には、末端に前記反応性シリル基を少なくとも1個、ポリエーテル化合物(B)が分岐鎖状の化合物の場合には、末端の数に応じて前記反応性シリル基は2個以上、さらには3個以上のものが好ましい。末端には主鎖末端の他に側鎖末端も含まれる。
【0052】
反応性シリル基を有するポリエーテル化合物(B)はその分子末端の少なくとも一部に上記反応性シリル基を有し、かつその分子中に少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個、さらに好ましくは1.1〜3個の反応性シリル基を有することが好ましい。
【0053】
前記一般式(1)に含まれる反応性シリル基における、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の1価の有機基である。Rは、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のフルオロアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。Rが同一分子中に複数存在するとき複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Mは水酸基又は加水分解性基である。加水分解性基はケイ素原子に直結し、加水分解反応及び/又は縮合反応によってシロキサン結合を生じるものである。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、カルバモイル基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基等があげられる。加水分解性基が炭素原子を有する場合には、その炭素数は6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。特に、炭素数4以下のアルコキシ基又はアルケニルオキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが特に好ましい。Mが同一分子中に複数存在するとき複数のMは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
前記一般式(1)に含まれる反応性シリル基は、下記一般式(2):
【化5】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、炭素数1〜6の1価の炭化水素基であり、同一分子中で同一であっても異なっていてもよい。)で表されるアルコキシシリル基が好ましい。
【0055】
前記一般式(2)で表されるアルコキシシリル基における、R
1、R
2およびR
3としては、例えば、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖または分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、フェニル基等があげられる。式中の−OR
1、−OR
2および−OR
3の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、プロペニルオキシ基、フェノキシ基等があげられる。なかでもメトキシ基、エトキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
【0056】
ポリエーテル化合物(B)は、反応性シリル基に加えて少なくとも1個の極性基Xを有する。ポリエーテル化合物(B)が直鎖状の化合物の場合には、末端に前記極性基Xを少なくとも1個、ポリエーテル化合物(B)が分岐鎖状の化合物の場合には、末端の数に応じて前記極性基Xは2個以上、さらには3個以上のものが好ましい。末端には主鎖末端の他に側鎖末端も含まれる。極性基Xは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中の水酸基と共有結合または水素結合などを介して相互作用し得る官能基であり、具体的には例えば、イソシアネート基のように水酸基と反応して共有結合を形成する官能基、あるいはアセトアセチル基、カルボキシル基、N−メチルアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、カルバミル基などのカルボニル基やチオカルボニル基を含有するもの、オキサゾリン環やチアゾリン環などのヘテロ環を含む構造などの、水酸基と水素結合を形成する官能基が挙げられる。これらの官能基の中でも、特にアセトアセチル基が好ましい。
【0057】
前記ポリエーテル化合物(B)が有するオキシアルキレン骨格AOは、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖のオキシアルキレン基の繰り返し構造単位を有するものが好ましい。オキシアルキレン基の構造単位は、炭素数2〜6であることが好ましく、さらには2であるのが好ましい。また、オキシアルキレン基の繰り返し構造単位は、1種のオキシアルキレン基の繰り返し構造単位であってもよく、2種以上のオキシアルキレン基のブロック単位またはランダム単位の繰り返し構造単位であってもよい。オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等があげられる。これらオキシアルキレン基のなかでも、オキシエチレン基の構造単位を有するものは、骨格の親水性が高く、シラノールの発生による被着体への移行量の変化が小さいことから、長期保管後の耐久性がより低下しにくく特に好ましい。
【0058】
リワーク性と、長期保管後の耐久性とをよりバランス良く向上するために、前記一般式(1)中、オキシアルキレン骨格AOの平均付加モル数p、qはいずれも10〜1700の整数であり、p+q≧20であることが肝要である。長期保管後の耐久性とをさらにバランス良く向上するためには、p+q≧30であることが好ましく、p+q≧60であることがより好ましく、p+q≧80であることがさらに好ましい。
【0059】
前記ポリエーテル化合物(B)は、前記反応性シリル基の他は、主鎖が実質的にオキシアルキレン基の繰り返し構造単位からなることが好ましい。ここで、主鎖が実質的にオキシアルキレン基の繰り返し構造単位からなるとは、他の化学構造を少量含んでもよいことを意味する。他の化学構造としては、例えば、オキシアルキレン基の繰り返し構造単位を製造する場合の開始剤の化学構造および反応性シリル基との連結基等を含んでもよいことを示す。オキシアルキレン基の繰り返し構造単位は、ポリエーテル化合物(B)の全重量の50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0060】
上記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物(B)のなかでも、リワーク性の点から、下記一般式(3)、(4)または(5A)もしくは(5B);
一般式(3):X−A
2−(AO)
p−R
4−(AO)
q−A
2−Z
0
(式中、AO、p、q、A
2は、前記と同じ。R
4は単結合、炭素数2〜6のアルキレン基、ウレタン結合、エステル結合またはカーボネート結合である。Z
0は、一般式(2):
【化6】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、炭素数1〜6の1価の炭化水素基であり、同一分子中で同一であっても異なっていてもよい。)で表されるアルコキシシリル基である。)で表される化合物、
一般式(4):X−A
2−(AO)
p−NHCOO−(AO)
q−A
2−Z
0
(式中、AO、p、q、Z
0は、前記と同じ。)で表される化合物、
一般式(5A):
X−A
2−(AO)
p−G−CR
5{−G−(AO)
q−A
2−Z
0}
2
または一般式(5B):
Z
0−A
2−(AO)
p−G−CR
5{−G−(AO)
q−A
2−X}
2
(式中、AO、p、q、A
2、Z
0は、前記と同じ。R
5は水素原子、または炭素数1〜3のアルキレン基を示す。Gは単結合またはメチレン基を示す。)で表される化合物が好ましい。
【0061】
ポリエーテル化合物(B)は、数平均分子量がリワーク性の点から、300〜100000であることが好ましい。前記数平均分子量の下限は、500以上、さらには1000以上、さらには2000以上、さらには3000以上、さらには4000以上、さらには5000以上であることが好ましく、一方、上限は50000以下、さらには40000以下、さらには30000以下、さらには20000以下、さらには10000以下であるのが好ましい。前記数平均分子量は、前記上限値または下限値を採用して好ましい範囲を設定できる。
【0062】
また、重合体のMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は、3.0以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下が特に好ましい。Mw/Mnが小さな反応性シリル基を有するポリエーテル化合物(B)を得るためには、特に下記複合金属シアン化物錯体を触媒に用い、開始剤の存在下、環状エーテルを重合させて得られるオキシアルキレン重合体を用いることが特に好ましく、そのような原料オキシアルキレン重合体の末端を変性して反応性シリル基とする方法が最も好ましい。
【0063】
前記一般式(1)、(3)、(4)または(5)で表されるポリエーテル化合物(B)は、例えば、分子末端に極性基を有するオキシアルキレン重合体を原料に用い、その分子末端にアルキレン基等の有機基を介して反応性シリル基を結合させて製造することができる。原料として用いるオキシアルキレン重合体としては、触媒および開始剤の存在下に環状エーテルを開環重合反応させて得られる水酸基末端の重合体が好ましい。
【0064】
開始剤存在下に環状エーテルを開環重合させる際には、重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、例えば水酸化カリウムおよびカリウムメトキシド等のカリウム化合物、ならびに水酸化セシウム等のセシウム化合物などのアルカリ金属化合物;複合金属シアン化物錯体;金属ポルフィリン錯体;ならびに、P=N結合を有する化合物などが例示できる。
【0065】
前記一般式(1)、(3)、(4)または(5)で表されるポリエーテル化合物(B)におけるポリオキシアルキレン鎖は、炭素数2〜6のアルキレンオキシドの開環重合により形成されたオキシアルキレンの重合単位からなるのが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上のアルキレンオキシドの開環重合により形成されたオキシアルキレン基の繰り返し構造単位からなるのがより好ましく、エチレンオキシドの開環重合により形成されたオキシエチレン基の繰り返し構造単位からなるのが特に好ましい。ポリオキシアルキレン鎖が2種以上のオキシアルキレン基の繰り返し構造単位からなる場合、2種以上のオキシアルキレン基の繰り返し構造単位の並び方は、ブロック状であってもよくランダム状であってもよい。
【0066】
また、前記一般式(4)で表されるポリエーテル化合物(B)は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖とヒドロキシ基を有する重合体、および一般式(1)に含まれる反応性シリル基とイソシアネート基を有する化合物をウレタン化反応させることにより得ることができる。その他、不飽和基を有するオキシアルキレン重合体、例えば、アリルアルコールを開始剤としてアルキレンオキシドを重合して得られるアリル末端ポリオキシアルキレンモノオールを、不飽和基へのヒドロシランまたはメルカプトシランの付加反応を用いて分子末端に一般式(1)に含まれる反応性シリル基を導入する方法を用いることもできる。
【0067】
開始剤存在下に環状エーテルを開環重合させて得られる、末端の少なくとも1個が極性基であって、かつ水酸基末端のオキシアルキレン重合体(原料オキシアルキレン重合体とも記す)の末端基に反応性シリル基を導入する方法は特に限定されないが、通常は前記末端基にさらに有機基を介して反応性シリル基を連結させる下記(a)乃至(c)の方法が好ましい。
【0068】
(a)水酸基を有する原料オキシアルキレン重合体の末端に、不飽和基を導入した後、この不飽和基に反応性シリル基を結合させる方法。この方法としてはさらに以下の2つの方法(a−1)および(a−2)が例示できる。(a−1)上記不飽和基に白金化合物などの触媒の存在下に、ヒドロシリル化合物を反応させる、いわゆるヒドロシリル化反応を用いる方法。(a−2)不飽和基にメルカプトシラン化合物を反応させる方法。メルカプトシラン化合物としては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルモノメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
不飽和基とメルカプト基とを反応させる際には、ラジカル重合開始剤として用いられるラジカル発生剤などの化合物を用いてもよく、所望によりラジカル重合開始剤を用いることなく放射線や熱によって反応を行ってもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えばパーオキシド系、アゾ系、およびレドックス系の重合開始剤、ならびに金属化合物触媒などが挙げられ、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、tert−アルキルパーオキシエステル、アセチルパーオキシド、およびジイソプロピルパーオキシカーボネートなどが挙げられる。ラジカル重合開始剤を用いて不飽和基とメルカプト基を反応させる場合は、前記重合開始剤の分解温度(半減期温度)によって異なるが、一般に20〜200℃、好ましくは50〜150℃の反応温度で、数時間〜数十時間反応を行うことが好ましい。
【0070】
原料オキシアルキレン重合体の末端に不飽和基を導入する方法としては、原料オキシアルキレン重合体の末端水酸基と、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、またはカーボネート結合などにより連結しうる官能基および不飽和基を併有する反応剤を、原料オキシアルキレン重合体と反応させる方法が挙げられる。また、開始剤存在下に環状エーテルを重合する際に、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和基含有エポキシ化合物を共重合させることにより原料オキシアルキレン重合体の末端の少なくとも一部に不飽和基を導入する方法も使用できる。好ましくは60〜120℃の温度で行い、一般に数時間以内の反応時間でヒドロシリル化反応が充分に進行する。
【0071】
(b)末端に水酸基を有する原料オキシアルキレン重合体を、反応性シリル基を有するイソシアネートシラン化合物と反応させる方法。当該化合物としては、1−イソシアネートメチルトリメトキシシラン、1−イソシアネートメチルトリエトキシシラン、1−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、1−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、1−イソシアネートメチルメチルジメトキシシラン、1−イソシアネートメチルジメチルモノメトキシシラン、1−イソシアネートメチルメチルジエトキシシラン、1−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、1−イソシアネートプロピルジメチルモノメトキシシラン、1−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルモノメトキシシラン、および3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシランなどのイソシアネートシラン系化合物が例示できる。この中で、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、1−イソシアネートメチルメチルジメトキシシランがさらに好ましく、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0072】
原料オキシアルキレン重合体の水酸基(OH)に対し、イソシアネートシラン系化合物のイソシアネート基(NCO)が、モル比でNCO/OH=0.80〜1.05となるようにして反応を行うことが好ましい。この方法は製造工程数が少ないために工程時間を大幅に短縮でき、製造工程途中で副生する不純物もなく、精製等の煩雑な操作も不要である。さらに好ましいNCO基とOH基の比率は、NCO/OH(モル比)=0.85〜1.00である。NCO比率が少ない場合には、残ったOH基と反応性シリル基との反応等が起こり、貯蔵安定性が好ましくない。そのような場合には、新たにイソシアネートシラン化合物かもしくはモノイソシアネート化合物を反応させ、過剰のOH基を消費し、所定のシリル化率に調整することが好ましい。
【0073】
原料オキシアルキレン重合体の水酸基を上記イソシアネートシラン化合物と反応させる際には、公知のウレタン化反応触媒を用いてもよい。ウレタン化反応触媒の使用の有無および使用量によって反応温度および反応が完結するまでに要する反応時間は異なるが、一般に20〜200℃、好ましくは50〜150℃の温度で数時間反応を行うことが好ましい。
【0074】
(c)分子末端に水酸基を有するオキシアルキレン重合体にイソシアネート基過剰の条件でポリイソシアネート化合物を反応させて末端の少なくとも一部にイソシアネート基を有するオキシアルキレン重合体を製造し、さらに前記イソシアネート基に官能基を有するケイ素化合物を反応させる方法。当該ケイ素化合物の官能基は、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、1級アミノ基、および2級アミノ基からなる群から選ばれる活性水素含有基である。当該ケイ素化合物としては、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、および3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノシラン系化合物;ならびに、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン系化合物を例示できる。原料オキシアルキレン重合体の水酸基と上記イソシアネート基に官能基を有するケイ素化合物とを反応させる際には、公知のウレタン化反応触媒を用いてもよい。ウレタン化反応触媒の使用の有無および使用量によって反応温度および反応が完結するまでに要する反応時間は異なるが、一般に20〜200℃、好ましくは50〜150℃の温度で数時間反応を行うことが好ましい。
【0075】
本発明の粘着剤組成物におけるポリエーテル化合物(B)の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましい。ポリエーテル化合物(B)が0.001重量部未満では、リワーク性の向上効果が十分ではない場合がある。ポリエーテル化合物(B)は、0.005重量部以上が好ましく、さらには0.01重量部以上であるのが好ましい。一方、ポリエーテル化合物(B)は5重量部より多いと、耐湿性が十分ではなく、信頼性試験等で剥がれが生じやすくなる。ポリエーテル化合物(B)は、1重量部以下が好ましく、さらには0.5重量部以下であるのが好ましい。前記ポリエーテル化合物(B)の割合は、前記上限値または下限値を採用して好ましい範囲を設定できる。
【0076】
本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)およびポリエーテル化合物(B)に加えて、シランカップリング剤(C)を含有しても良い。シランカップリング剤(C)の具体例としては、下記一般式(6):
−SiR
aM
3−a (6)
(式中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の1価の有機基であり、Mは水酸基又は加水分解性基であり、aは0〜2の整数である。但し、Rが複数存在するとき複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、Mが複数存在するとき複数のMは互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表される反応性シリル基を含有する化合物が挙げられる。シランカップリング剤(C)の市販品としては、例えば綜研化学社製のA100などのアセトアセチル基含有シランカップリング剤、信越化学工業社製のKBM403、KBE403などのエポキシ基含有シランカップリング剤、信越化学工業社製のKBM903、KBM573などのアミノ基含有シランカップリング剤、信越化学工業社製のKBM5103、KBE503などの(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、信越化学工業社製のKBE9007などのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。本発明の粘着剤組成物におけるシランカップリング剤(C)の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましい。シランカップリング剤(C)が0.001重量部未満では、長期保管後の剥がれが発生する場合があり、5重量部を超えると、製造直後および長期保管後のいずれの耐久試験においても、粘着剤層の剥がれが発生し易くなる。本発明の粘着剤組成物におけるシランカップリング剤(C)の割合は、0.02重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。また、3重量部以下がより好ましく、2重量部以下がさらに好ましい。
【0077】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、架橋剤(D)を含有することできる。架橋剤(D)としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤などがあげられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0078】
架橋剤(D)としては、イソシアネート系架橋剤および/または過酸化物形架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤に係る化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらにはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。特に好ましくは、ポリイソシアネート化合物であり、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種またはそれに由来するポリイソシアネート化合物である。ここで、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種またはそれに由来するポリイソシアネート化合物には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリオール変性ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリオール変性水添キシリレンジイソシアネート、トリマー型水添キシリレンジイソシアネート、およびポリオール変性イソホロンジイソシアネートなどが含まれる。例示したポリイソシアネート化合物は、水酸基との反応が、特にポリマーに含まれる酸、塩基を触媒のようにして、迅速に進む為、特に架橋の早さに寄与し、好ましい。
【0079】
過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0080】
用いることができる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0081】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0082】
架橋剤(D)の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.01〜2重量部が好ましく、さらには0.03〜1重量部が好ましい。なお、架橋剤(D)が0.01重量部未満では、粘着剤の凝集力が不足する傾向があり、加熱時に発泡が生じるおそれがあり、一方、2重量部より多いと、耐湿性が十分ではなく、信頼性試験等で剥がれが生じやすくなる。
【0083】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、前記ポリイソシアネート化合物架橋剤を0.01〜2重量部含有してなることが好ましく、0.02〜2重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1.5重量部含有してなることがさらに好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0084】
前記過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、前記過酸化物0.01〜2重量部であり、0.04〜1.5重量部含有してなることが好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがより好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
【0085】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0086】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0087】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0088】
前記粘着剤組成物により、粘着剤層を形成するが、粘着剤層の形成にあたっては、架橋剤全体の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮することが好ましい。
【0089】
使用する架橋剤によって架橋処理温度や架橋処理時間は、調整が可能である。架橋処理温度は170℃以下であることが好ましい。
【0090】
また、かかる架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0091】
また、架橋処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常0.2〜20分間程度であり、0.5〜10分間程度であることが好ましい。
【0092】
本発明の粘着剤層付光学フィルムなどの粘着型光学部材は、光学フィルムの少なくとも片面に、前記粘着剤により粘着剤層を形成したものである。
【0093】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に光学フィルムに転写する方法、または光学フィルムに前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を光学フィルムに形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0094】
剥離処理したセパレーターとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の接着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0095】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0096】
また、光学フィルムの表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0097】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0098】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0099】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレーター)で粘着剤層を保護してもよい。
【0100】
セパレーターの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0101】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0102】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0103】
なお、上記の粘着剤層付光学フィルムの作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着剤層付光学フィルムのセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0104】
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光フィルムがあげられる。偏光フィルムは偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0105】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0106】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0107】
≪薄型偏光子≫
前記偏光子としては厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることができる。薄型化の観点から言えば当該厚みは1〜7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。しかしながら、一般的に偏光フィルムが薄くなるにつれて、リワーク性と長期保管後の耐久性との両立が難しくなり、特に薄型偏光子を使用することに起因して、偏光フィルムが薄くなる場合には、リワークの際に特に偏光フィルムが破断しやすくなるため、リワーク性と長期保管後の耐久性との両立が著しく困難になるのが実情であった。これに対して、本発明に係る粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、リワーク性を向上させても長期保管後の耐久性が低下しないため、本発明に係る粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、透明保護フィルムが片側または両側に積層された薄型偏光子を有する、粘着剤層付偏光フィルム用の粘着剤層として特に有用である。
【0108】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51−069644号公報や特開2000−338329号公報や、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0109】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
【0110】
上記のPCT/JP2010/001460の明細書に記載の薄型高機能偏光膜は、樹脂基材に一体に製膜される、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる厚みが7μm以下の薄型高機能偏光膜であって、単体透過率が42.0%以上および偏光度が99.95%以上の光学特性を有する。
【0111】
上記薄型高機能偏光膜は、少なくとも20μmの厚みを有する樹脂基材に、PVA系樹脂の塗工および乾燥によってPVA系樹脂層を生成し、生成されたPVA系樹脂層を二色性物質の染色液に浸漬して、PVA系樹脂層に二色性物質を吸着させ、二色性物質を吸着させたPVA系樹脂層を、ホウ酸水溶液中において、樹脂基材と一体に総延伸倍率を元長の5倍以上となるように延伸することによって、製造することができる。
【0112】
また、二色性物質を配向させた薄型高機能偏光膜を含む積層体フィルムを製造する方法であって、少なくとも20μmの厚みを有する樹脂基材と、樹脂基材の片面にPVA系樹脂を含む水溶液を塗工および乾燥することによって形成されたPVA系樹脂層とを含む積層体フィルムを生成する工程と、樹脂基材と樹脂基材の片面に形成されたPVA系樹脂層とを含む前記積層体フィルムを、二色性物質を含む染色液中に浸漬することによって、積層体フィルムに含まれるPVA系樹脂層に二色性物質を吸着させる工程と、二色性物質を吸着させたPVA系樹脂層を含む前記積層体フィルムを、ホウ酸水溶液中において、総延伸倍率が元長の5倍以上となるように延伸する工程と、二色性物質を吸着させたPVA系樹脂層が樹脂基材と一体に延伸されたことにより、樹脂基材の片面に、二色性物質を配向させたPVA系樹脂層からなる、厚みが7μm以下、単体透過率が42.0%以上かつ偏光度が99.95%以上の光学特性を有する薄型高機能偏光膜を製膜させた積層体フィルムを製造する工程を含むことで、上記薄型高機能偏光膜を製造することができる。
【0113】
本発明では、厚みが10μm以下の偏光子として、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる連続ウェブの偏光膜であって、熱可塑性樹脂基材に製膜されたポリビニルアルコール系樹脂層を含む積層体が空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段延伸工程で延伸されることにより得られたものを用いることができる。前記熱可塑性樹脂基材としては、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材または結晶性エステル系熱可塑性樹脂基材が好ましい。
【0114】
上記の特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書の薄型偏光膜は、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる連続ウェブの偏光膜であって、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体が空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段延伸工程で延伸されることにより、10μm以下の厚みにされたものである。かかる薄型偏光膜は、単体透過率をT、偏光度をPとしたとき、P>−(10
0.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、およびP≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足する光学特性を有するようにされたものであることが好ましい。
【0115】
具体的には、前記薄型偏光膜は、連続ウェブの非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層に対する空中高温延伸によって、配向されたPVA系樹脂層からなる延伸中間生成物を生成する工程と、延伸中間生成物に対する二色性物質の吸着によって、二色性物質(ヨウ素またはヨウ素と有機染料の混合物が好ましい)を配向させたPVA系樹脂層からなる着色中間生成物を生成する工程と、着色中間生成物に対するホウ酸水中延伸によって、二色性物質を配向させたPVA系樹脂層からなる厚さが10μm以下の偏光膜を生成する工程とを含む薄型偏光膜の製造方法により製造することができる。
【0116】
この製造方法において、空中高温延伸とホウ酸水中延伸とによる非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層の総延伸倍率が、5倍以上になるようにするのが望ましい。ホウ酸水中延伸のためのホウ酸水溶液の液温は、60℃以上とすることができる。ホウ酸水溶液中で着色中間生成物を延伸する前に、着色中間生成物に対して不溶化処理を施すのが望ましく、その場合、液温が40℃を超えないホウ酸水溶液に前記着色中間生成物を浸漬することにより行うのが望ましい。上記非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材は、イソフタル酸を共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールを共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートまたは他の共重合ポリエチレンテレフタレートを含む非晶性ポリエチレンテレフタレートとすることができ、透明樹脂からなるものであることが好ましく、その厚みは、製膜されるPVA系樹脂層の厚みの7倍以上とすることができる。また、空中高温延伸の延伸倍率は3.5倍以下が好ましく、空中高温延伸の延伸温度はPVA系樹脂のガラス転移温度以上、具体的には95℃〜150℃の範囲であるのが好ましい。空中高温延伸を自由端一軸延伸で行う場合、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層の総延伸倍率が、5倍以上7.5倍以下であるのが好ましい。また、空中高温延伸を固定端一軸延伸で行う場合、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層の総延伸倍率が、5倍以上8.5倍以下であるのが好ましい。
更に具体的には、次のような方法により、薄型偏光膜を製造することができる。
【0117】
イソフタル酸を6mol%共重合させたイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(非晶性PET)の連続ウェブの基材を作製する。非晶性PETのガラス転移温度は75℃である。連続ウェブの非晶性PET基材とポリビニルアルコール(PVA)層からなる積層体を、以下のように作製する。ちなみにPVAのガラス転移温度は80℃である。
【0118】
200μm厚の非晶性PET基材と、重合度1000以上、ケン化度99%以上のPVA粉末を水に溶解した4〜5%濃度のPVA水溶液とを準備する。次に、200μm厚の非晶性PET基材にPVA水溶液を塗工し、50〜60℃の温度で乾燥し、非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を得る。
【0119】
7μm厚のPVA層を含む積層体を、空中補助延伸およびホウ酸水中延伸の2段延伸工程を含む以下の工程を経て、3μm厚の薄型高機能偏光膜を製造する。第1段の空中補助延伸工程によって、7μm厚のPVA層を含む積層体を非晶性PET基材と一体に延伸し、5μm厚のPVA層を含む延伸積層体を生成する。具体的には、この延伸積層体は、7μm厚のPVA層を含む積層体を130℃の延伸温度環境に設定されたオーブンに配備された延伸装置にかけ、延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸したものである。この延伸処理によって、延伸積層体に含まれるPVA層を、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層へと変化させる。
【0120】
次に、染色工程によって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を生成する。具体的には、この着色積層体は、延伸積層体を液温30℃のヨウ素およびヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される高機能偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA層にヨウ素を吸着させたものである。本工程において、染色液は、水を溶媒として、ヨウ素濃度を0.12〜0.30重量%の範囲内とし、ヨウ化カリウム濃度を0.7〜2.1重量%の範囲内とする。ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度の比は1対7である。ちなみに、ヨウ素を水に溶解するにはヨウ化カリウムを必要とする。より詳細には、ヨウ素濃度0.30重量%、ヨウ化カリウム濃度2.1重量%の染色液に延伸積層体を60秒間浸漬することによって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を生成する。
【0121】
さらに、第2段のホウ酸水中延伸工程によって、着色積層体を非晶性PET基材と一体にさらに延伸し、3μm厚の高機能偏光膜を構成するPVA層を含む光学フィルム積層体を生成する。具体的には、この光学フィルム積層体は、着色積層体をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温範囲60〜85℃のホウ酸水溶液に設定された処理装置に配備された延伸装置にかけ、延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸したものである。より詳細には、ホウ酸水溶液の液温は65℃である。それはまた、ホウ酸含有量を水100重量部に対して4重量部とし、ヨウ化カリウム含有量を水100重量部に対して5重量部とする。本工程においては、ヨウ素吸着量を調整した着色積層体をまず5〜10秒間ホウ酸水溶液に浸漬する。しかる後に、その着色積層体をそのまま処理装置に配備された延伸装置である周速の異なる複数の組のロール間に通し、30〜90秒かけて延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸する。この延伸処理によって、着色積層体に含まれるPVA層を、吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向した3μm厚のPVA層へと変化させる。このPVA層が光学フィルム積層体の高機能偏光膜を構成する。
【0122】
光学フィルム積層体の製造に必須の工程ではないが、洗浄工程によって、光学フィルム積層体をホウ酸水溶液から取り出し、非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に付着したホウ酸をヨウ化カリウム水溶液で洗浄するのが好ましい。しかる後に、洗浄された光学フィルム積層体を60℃の温風による乾燥工程によって乾燥する。なお洗浄工程は、ホウ酸析出などの外観不良を解消するための工程である。
【0123】
同じく光学フィルム積層体の製造に必須の工程というわけではないが、貼合せおよび/または転写工程によって、非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に接着剤を塗工しながら、80μm厚のトリアセチルセルロースフィルムを貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離し、3μm厚のPVA層を80μm厚のトリアセチルセルロースフィルムに転写することもできる。
【0124】
[その他の工程]
上記の薄型偏光膜の製造方法は、上記工程以外に、その他の工程を含み得る。その他の工程としては、例えば、不溶化工程、架橋工程、乾燥(水分率の調節)工程等が挙げられる。その他の工程は、任意の適切なタイミングで行い得る。
上記不溶化工程は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、不溶化工程は、積層体作製後、染色工程や水中延伸工程の前に行う。
上記架橋工程は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。また、上記染色工程後に架橋工程を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、架橋工程は上記第2のホウ酸水中延伸工程の前に行う。好ましい実施形態においては、染色工程、架橋工程および第2のホウ酸水中延伸工程をこの順で行う。
【0125】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0126】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光フィルムに、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0127】
偏光フィルムに前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光フィルムと他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0128】
本発明の粘着剤層付光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着剤層付光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着剤層付光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプなどの任意なタイプのものを用いうる。
【0129】
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着剤層付光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0130】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0131】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000H
XL+GMH
XL+GMH
XL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0132】
<ポリエーテル化合物(B)の数平均分子量の測定>
ポリエーテル化合物(B)の数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製,HLC−8120GPC
・カラム:TSKgel,SuperHZM‐H/HZ4000/HZ2000
・カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
・カラム温度:40℃
・流量:0.6ml/min
・注入量:20μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0133】
(偏光フィルム1(SEG)の作成)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い偏光子(厚さ30μm)を得た。当該偏光子の両面に、けん化処理した厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光フィルム1(SEG)を作成した。
【0134】
(偏光フィルム2(薄型偏光フィルム)の作成)
薄型偏光膜を作製するため、まず、非晶性PET基材に24μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130度の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された高機能偏光膜を構成する、厚さ10μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を生成することができた。
更に、当該光学フィルム積層体の偏光膜の表面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布しながら、けん化処理した80μm厚のトリアセチルセルロースフィルムを貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離し、偏光フィルム2(薄型偏光フィルム)を作製した。
【0135】
<アクリル系ポリマー(A1)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100gと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、重量平均分子量160万のアクリル系ポリマー(A1)の溶液を調製した。
【0136】
実施例1
(粘着剤組成物の調製)
製造例1で得られたアクリル系ポリマー(A1)溶液の固形分100部に対して、ポリエーテル化合物(B1)を0.1部、イソシアネート架橋剤(三井武田ケミカル社製のタケネートD110N、トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート)0.095部、およびベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.3部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液(固形分15%)を調製した。ポリエーテル化合物(B1)は一般式(3)で表される化合物であり、Xはアセトアセチル基、A
2は−C
3H
6−、反応性シリル基(Z
0‐)は、R
1、R
2およびR
3がいずれもメチル基のジメトキシメチルシリル基であり、R
4は単結合であり、AOは直鎖構造のオキシエチレン基であり、p+q=108であり、Mw=5000の化合物である。
【0137】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施した、38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが23μmになるように塗布し、155℃で1分間乾燥を行い、偏光フィルム(日東電工製、SEG)に転写し、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0138】
実施例2
実施例1において、ポリエーテル化合物(B2)を0.1部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。ポリエーテル化合物(B2)は一般式(3)で表される化合物であり、Xはアセトアセチル基、A
2は−C
3H
6−、反応性シリル基(Z
0‐)は、R
1、R
2およびR
3がいずれもメチル基のジメトキシメチルシリル基であり、R
4は単結合であり、AOは直鎖構造のオキシプロピレン基(特に、−CH
2CH(CH
3)O−)であり、p+q=82であり、Mw=5000の化合物である。
【0139】
比較例1
実施例1において、ポリエーテル化合物(B2)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0140】
比較例2
実施例1において、ポリエーテル化合物(B3)を0.1部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。ポリエーテル化合物(B3)はGELEST社製の「SIB1824.82」である。
【0141】
上記実施例1〜2および比較例1〜2で得られた、粘着剤層付偏光フィルム(サンプル)について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0142】
<リワーク性>
サンプル(偏光フィルム1を使用した粘着剤層付偏光フィルム)を、縦420mm×横320mmに裁断し、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニング社製,EG−XG)に、ラミネーターを用いて貼り付け、次いで50℃、5atmで15分間オートクレーブ処理して完全に密着させた(初期)。その後、60℃乾燥条件下で48時間加熱処理を施した(加熱後)。かかるサンプルの接着力を測定した。接着力は、かかるサンプルを、引張り試験機(オートグラフSHIMAZU AG−1 1OKN)にて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで引き剥がす際の接着力(N/25mm、測定時80m長)を測定することにより求めた。測定は、1回/0.5sの間隔でサンプリングし、その平均値を測定値とした。
【0143】
また、上記接着力を測定した対象と同様のサンプルについて、人の手によって無アルカリガラス板(コーニング社製,EG−XG)からサンプルを剥がし、下記基準でリワーク性を評価した。リワーク性の評価は上記手順にて3枚作製し、3回繰り返し実施した。
◎:3枚とも糊残りやフィルムの破断がなく良好に剥離可能。
○:3枚中一部はフィルムが破断したが、再度の剥離によって剥がせた。
△:3枚ともフィルム破断したが、再度の剥離によって剥がせた。
×:3枚とも糊残りが生じるか、または何度は剥離してもフィルムが破断して剥がせなかった。
【0144】
<塗工直後の耐久性試験>
サンプル(偏光フィルム1を使用した粘着剤層付偏光フィルムまたは偏光フィルム2を使用した粘着剤層付偏光フィルム)を、37インチサイズとし、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,EG−XG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、80℃、90℃の各雰囲気下で500時間処理を施した後(加熱試験)、60℃/90%RH、65℃/95%RHの各雰囲気下で500時間処理を施した後(加湿試験)、85℃と−40℃の環境を1サイクル1時間で300サイクル施した後(ヒートショック試験)、偏光板とガラスの間の外観を下記基準で目視にて評価した。
◎:発泡、剥がれ、浮きなしなどの外観上の変化が全くなし。
○:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし。
△:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0145】
<長期保管後の耐久性試験>
偏光フィルム1を使用した粘着剤層付偏光フィルムまたは偏光フィルム2を使用した粘着剤層付偏光フィルムを23℃/55%RHの条件下で12か月間保管した。かかるサンプルを、37インチサイズとし、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,EG−XG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、80℃、90℃の各雰囲気下で500時間処理を施した後(加熱試験)、60℃/90%RH、65℃/95%RHの各雰囲気下で500時間処理を施した後(加湿試験)、85℃と−40℃の環境を1サイクル1時間で300サイクル施した後(ヒートショック試験)、偏光板とガラスの間の外観を下記基準で目視にて評価した。
◎:発泡、剥がれ、浮きなしなどの外観上の変化が全くなし。
○:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし。
△:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0146】
【表1】