特許第5951345号(P5951345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951345
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】内視鏡用スネア
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20160630BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61B1/00 334D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-104806(P2012-104806)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-230299(P2013-230299A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】杉田 憲幸
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−130965(JP,A)
【文献】 特開2000−300577(JP,A)
【文献】 特開平11−047154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓管と、
前記可撓管内に挿通された操作ワイヤと、
前記操作ワイヤの先端に連結されたループ状のスネアワイヤと、
前記操作ワイヤを前記可撓管内で軸線方向に進退させることにより、前記スネアワイヤを前記可撓管の先端から突没させる操作部と、
を備え、
前記スネアワイヤに、該スネアワイヤのループで囲われる平面に対して直交する方向に延びる、先端が尖鋭な、少なくとも一つの爪部材が取り付けられている、
内視鏡用スネア。
【請求項2】
前記爪部材の一つは、前記可撓管の軸線の延長線上に配置されている
請求項1に記載の内視鏡用スネア。
【請求項3】
前記可撓管の先端面に少なくとも一つの爪状突片を有する
請求項1又は請求項2に記載の内視鏡用スネア。
【請求項4】
前記可撓管及び前記スネアワイヤが摺動可能に挿通されており、該可撓管に対して軸線方向に進退することにより、該可撓管及び該スネアワイヤを管内に収容し又は管先端から突出させる収容管
を備える
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の内視鏡用スネア。
【請求項5】
前記スネアワイヤは、前記可撓管に対して前記軸線周りに回転可能である
請求項1から請求項の何れか一項に記載の内視鏡用スネア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病変部を切除するために使用される内視鏡用スネアに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下外科手術において病変部を切除するため、内視鏡用スネアが使用される。この種の内視鏡用スネアの具体的構成が例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の内視鏡用スネアには、複数の爪部材がループ(スネアワイヤ)の内側に向けられた状態でスネアワイヤに取り付けられている。術者によりループが病変部を囲うように載置されてスネアワイヤの引き込み操作が行われると、引き込み時に爪部材が病変部に食い込み、例えば隆起の小さい病変部であっても絞扼される。病変部が絞扼されている状態でスネアワイヤに高周波電流が流されると、病変部が切除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−258899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、ループが病変部を囲うようにスネアワイヤを載置した上で引き込むことにより、はじめて、スネアワイヤが病変部に対して固定される。そのため、例えばスネアワイヤを病変部付近に載置してから引き込むまでの間にスネアワイヤが病変部から外れる虞がある。このような事情に鑑み、スネアワイヤを病変部に対して確実かつ簡易に固定することができる内視鏡用スネアの提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る内視鏡用スネアは、可撓管と、可撓管内に挿通された操作ワイヤと、操作ワイヤの先端に連結されたループ状のスネアワイヤと、操作ワイヤを可撓管内で軸線方向に進退させることにより、スネアワイヤを可撓管の先端から突没させる操作部とを備えており、スネアワイヤに、該スネアワイヤのループで囲われる平面に対して直交する方向に延びる少なくとも一つの爪部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一形態に係る内視鏡用スネアによれば、スネアワイヤを病変部付近に載置するだけで爪部材が病変部付近に引っ掛かり、スネアワイヤが病変部に対して固定される。すなわち、病変部に対するスネアワイヤの固定が確実かつ簡易に達成される。
【0008】
爪部材の一つは、例えば可撓管の軸線の延長線上に配置されていてもよい。
【0009】
また、本発明の一形態に係る内視鏡用スネアは、可撓管の先端面に少なくとも一つの爪状突片を有する構成としてもよい。
【0010】
また、本発明の一形態に係る内視鏡用スネアは、可撓管及びスネアワイヤが摺動可能に挿通されており、可撓管に対して軸線方向に進退することにより、可撓管及びスネアワイヤを管内に収容し又は管先端から突出させる収容管を備える構成としてもよい。
【0011】
爪部材は、例えば、スネアワイヤの一部をループで囲われる平面に対して直交する方向に折り曲げた形状であってもよく、又は、スネアワイヤに取り付けられた部材であってもよい。
【0012】
スネアワイヤは、可撓管に対して軸線周りに回転可能に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一形態によれば、スネアワイヤを病変部に対して確実かつ簡易に固定することができる内視鏡用スネアが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の内視鏡用スネアの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態の内視鏡用スネアの先端付近の構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態の内視鏡用スネアを用いた病変部の切除方法を説明する図である。
図4】本発明の実施形態の内視鏡用スネアが備える可撓性シースの先端面の形状を示す図である。
図5】別の実施形態の内視鏡用スネアの構成を示す図である。
図6】別の実施形態の内視鏡用スネアの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による内視鏡用スネアについて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の内視鏡用スネア1の構成を示す図である。図1(a)は、内視鏡用スネア1の外観側面図であり、図1(b)は、内視鏡用スネア1の側断面図である。図1に示されるように、内視鏡用スネア1は、手元操作部本体10を備えている。手元操作部本体10は、スライド操作部材11を矢印A方向にスライド可能に支持している。手元操作部本体10には、回転保持環12が軸線周り(矢印B方向)に回転可能に支持されている。回転保持環12には、可撓性シース13の基端が連結固着している。可撓性シース13は、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブなど、滑りのよい電気絶縁性の可撓性チューブである。可撓性シース13の基端部分は、折れ止めチューブ14によって補強されている。
【0017】
可撓性シース13内には、導電性を有し、かつ軸線方向に進退可能な操作ワイヤ15が全長に亘って挿通されている。操作ワイヤ15の基端部分は、補強パイプ16によって被膜されており、手元操作部本体10に形成された軸線位置上のスリット10a内に通されている。操作ワイヤ15の基端は、スライド操作部材11に固定されている。スライド操作部材11には、高周波電源コード接続端子17が付設されている。高周波電源コード接続端子17は、一端が図示省略された高周波電源装置に接続され、他端が操作ワイヤ15の基端に接続されている。
【0018】
図2(a)は、図1(a)の符号Cで囲われる領域内の構成を拡大して示す図であり、図2(b)は、当該構成を図2(a)内の矢印D方向より見たときの図である。また、図2(c)は、図1(b)の符号Eで囲われる領域内の構成を拡大して示す図である。
【0019】
図2(c)に示されるように、操作ワイヤ15の先端には、連結パイプ18を介してスネアワイヤ19が連結固着している。スネアワイヤ19は、導通性を有する一対のワイヤ(例えばステンレス鋼線)の基端同士を連結パイプ18内で接続すると共に先端同士をロー付けで固定したものであり、自然状態でループ状に広がる。スライド操作部材11が手元操作部本体10に対して矢印A方向にスライド操作されると、操作ワイヤ15及びスネアワイヤ19が軸線方向に進退する。スネアワイヤ19は、例えば、軸線方向に後退して可撓性シース13内に引き込まれると、可撓性シース13内で弾性変形して細長く押しつぶされ、軸線方向に前進して可撓性シース13の先端から突き出されると、自然状態(ループ状)に広がる。
【0020】
操作ワイヤ15の先端は、連結パイプ18内で(又は連結パイプ18を介して)スネアワイヤ19と電気的に接続している。高周波電源装置が駆動すると、高周波電源コード接続端子17、操作ワイヤ15、(連結パイプ18)、スネアワイヤ19に高周波電流が通電される。
【0021】
スネアワイヤ19の先端のロー付け部分には、爪部材20もロー付けされている。爪部材20は、図2(a)及び図2(b)に示されるように、可撓性シース13の軸線の延長線上に配置されており、スネアワイヤ19のループで囲われる平面S(別の表現では、ループを含む平面S)に対して直交する方向に延びた形状を持つ。
【0022】
術者が回転保持環12を指先等で保持して手元操作部本体10を軸線周り(矢印B方向)に回転させると、操作ワイヤ15が可撓性シース13内で回転すると共にスネアワイヤ19も操作ワイヤ15と一体となって回転する。すなわち、術者は、手元操作部本体10を回転操作することにより、スネアワイヤ19のループの向き及び爪部材20の向きを例えば病変部等の切除対象部位の位置に応じて適宜コントロールすることができる。操作ワイヤ15は、例えば回転追従性に優れたトルクワイヤで構成されるのが好ましい。
【0023】
また、可撓性シース13及びスネアワイヤ19は、収容シース21内に摺動可能に挿通されている。収容シース21の基端には、スライダ部材22が取り付けられている。スライダ部材22が軸線方向に前進操作されると収容シース21も軸線方向に前進し、これにより、可撓性シース13、スネアワイヤ19及び爪部材20が収容シース21内に収容される。スライダ部材22が軸線方向に後退操作されると収容シース21も軸線方向に後退し、これにより、可撓性シース13、スネアワイヤ19及び爪部材20が収容シース21の先端から外部に露出する。
【0024】
図3(a)〜図3(d)は、内視鏡用スネア1を用いた病変部の切除方法を説明する図である。図3においては、便宜上、内視鏡用スネア1の先端部分のみを図示する。
【0025】
内視鏡用スネア1は、例えば内視鏡の処置具チャネル(不図示)に挿通されて、病変部付近に導かれる。このとき、先端が鋭利な爪部材20が外部に露出していると、処置具チャネル内を損傷させる虞がある。そこで、処置具チャネルへの内視鏡用スネア1の挿通に先立ち、スライダ部材22が軸線方向に前進操作されて、図3(d)に示されるように、可撓性シース13、スネアワイヤ19及び爪部材20が収容シース21内に収容される。この状態で内視鏡用スネア1が処置具チャネルに挿通されることにより、爪部材20による処置具チャネルの損傷が避けられる。
【0026】
内視鏡用スネア1が処置具チャネルに挿通されると、次いで、スライダ部材22が軸線方向に後退操作されて、可撓性シース13、スネアワイヤ19及び爪部材20が収容シース21の先端から外部に露出されると共に、スライド操作部材11が軸線方向に前進操作されて、スネアワイヤ19が可撓性シース13の先端から突き出されてループ状に広がる。この状態でループが病変部を囲うようにスネアワイヤ19が載置されると、例えば図3(a)に示されるように、スネアワイヤ19のループで囲われる平面Sに対して直交する方向に延びた爪部材20が病変部の(内視鏡用スネア1から見て)奥側に引っ掛かり、スネアワイヤ19が病変部に対して固定される。すなわち、本実施形態では、スネアワイヤ19を病変部付近に載置した段階でスネアワイヤ19が病変部に対して固定される。
【0027】
ここで、図4(a)、図4(b)の各図において、可撓性シース13の先端面の形状を例示する。これらの図面に例示されるように、可撓性シース13の先端面には、先端が鋭利な、少なくとも一つの爪状突片23が形成されている。具体的には、図4(a)の例では、一対の爪状突片23の各々が一対のV溝間に形成されており、図4(b)の例では、二対の爪状突片23の各々が各V溝間に形成されている。なお、爪状突片23は、可撓性シース13に一体に形成されたものであっても、別体(絶縁部材)で形成されたものであってもよい。
【0028】
爪部材20が病変部の奥側に引っ掛けられた状態で可撓性シース13が病変部に押し当てられると、可撓性シース13の先端面に設けられた各爪状突片23が病変部の(内視鏡用スネア1から見て)手前側に食い込み、スネアワイヤ19が病変部に対してより確実に固定される。次いで、スネアワイヤ19が可撓性シース13内に引き込まれながら通電されると、図3(b)、図3(c)に示されるように、病変部がスネアワイヤ19により絞扼されて切除される。
【0029】
本実施形態では、爪部材20が可撓性シース13の軸線の延長線上に配置されており、かつ各爪状突片23が可撓性シース13の軸線近傍位置に配置されている。そのため、スネアワイヤ19が軸線方向に引き込まれると、病変部は、爪部材20と爪状突片23とによって摘まれた状態で絞扼される。そのため、スネアワイヤ19と病変部との固定は強固であり、例えば、スネアワイヤ19が軸線方向に引き込まれている間に意図しない外力が加わったとしても、スネアワイヤ19が病変部から簡単には外れない。
【0030】
病変部の切除後は、図3(d)に示されるように、可撓性シース13、スネアワイヤ19及び爪部材20が収容シース21内に収容される。この状態で内視鏡用スネア1が処置具チャネルから抜去されることにより、爪部材20による処置具チャネルの損傷が避けられる。
【0031】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0032】
図5(a)及び図5(b)は、別の実施形態の内視鏡用スネア1zの構成を示す図である。別の実施形態の内視鏡用スネア1zは、爪部材の構成を除き、図1の内視鏡用スネア1と同一の構成を有している。図5(a)及び図5(b)に示されるように、別の実施形態のスネアワイヤ19zは、導通性を有する一対のワイヤの基端同士を連結パイプ18内で接続すると共に先端同士をレーザ溶接した上で、溶接された先端を、スネアワイヤ19zのループで囲われる平面Sと直交する方向に折り曲げて爪部材20zとしている。別の実施形態では、スネアワイヤ19と爪部材20zとが一体化されており、部品点数の削減に有利な構成となっている。
【0033】
図6(a)及び図6(b)は、別の実施形態の内視鏡用スネア1yの構成を示す図である。別の実施形態の内視鏡用スネア1yは、図1の内視鏡用スネア1に対して一対の爪部材20を追加した構成を有している。追加された各爪部材20は、例えばスネアワイヤ19先端の爪部材20と連結パイプ18との中間地点にロー付けされている。爪部材20の数を増加させるほどスネアワイヤ19を病変部に対してより一層強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 内視鏡用スネア
10 操作部本体
10a スリット
11 スライド操作部材
12 回転保持環
13 可撓性シース
14 折れ止めチューブ
15 操作ワイヤ
16 補強パイプ
17 高周波電源コード接続端子
18 連結パイプ
19 スネアワイヤ
20 爪部材
21 収容シース
22 スライダ部材
23 爪状突片
図1
図2
図3
図4
図5
図6