特許第5951371号(P5951371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951371
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】電力系統監視制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20160630BHJP
   H02J 3/24 20060101ALI20160630BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20160630BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20160630BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20160630BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20160630BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H02J13/00 311R
   H02J3/24
   H02J3/32
   H02J3/38 130
   H02J3/38 160
   H02J3/46
   H02J7/34 D
   H02J7/35 K
   H02J13/00 301A
   H02J7/34 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-150015(P2012-150015)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-14211(P2014-14211A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000221096
【氏名又は名称】東芝システムテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100149065
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 直美
(72)【発明者】
【氏名】菅原 淳
(72)【発明者】
【氏名】市川 忠
(72)【発明者】
【氏名】森 恵子
(72)【発明者】
【氏名】山田 光影
(72)【発明者】
【氏名】山口 善大
(72)【発明者】
【氏名】木谷 元紀
(72)【発明者】
【氏名】菊池 宣幸
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−182641(JP,A)
【文献】 特開2012−019598(JP,A)
【文献】 特開2005−057841(JP,A)
【文献】 特開2012−055130(JP,A)
【文献】 特開2007−166860(JP,A)
【文献】 実開昭55−032664(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
H02J 1/00−7/12
7/34−7/36
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池がそれぞれ設置された複数の電力系統を連系する連系線に設置された開閉装置の開閉を制御する電力系統監視制御システムにおいて、
前記蓄電池の充電状態量を取得する通信部と、
前記通信部によって取得された前記充電状態量が所定の状態であるか否かを判定する演算部と
を有し
前記演算部は、前記蓄電池のうち少なくとも1つの蓄電池における充電状態量が基準値を下回っているか否かを判定し、
前記通信部は、前記充電状態量が基準値を下回っていると判定された場合に、前記開閉装置の投入指令を出力し、
前記通信部は、現在の発電量をさらに取得し、
前記演算部は、前記発電量および記憶部から読み出した過去の発電量、過去変動抑制量から、現在の変動抑制量を算出し、前記現在の変動抑制量および前記蓄電池の充電状態量から、前記蓄電池の充放電の配分比を決定する
電力系統監視制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力系統監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
変動の大きな自然エネルギーの出力を抑制する1つの方法として、蓄電池を分散型電源
として電力系統へ接続することが挙げられる。蓄電池を用いることで、需要量より供給量
が多い場合には充電をリアルタイムで行い、供給量より需要量が多い場合には放電をリア
ルタイムで行うことで、電力系統内の需給バランスを最適に保持することが可能である。
【0003】
従来の電力系統監視制御システムでは、電力系統ごとに各蓄電池のSOC(State
Of Charge:充電状態量)を取得し、充放電を制御することで、充電と放電の
両方に対して余力を持って行うことが可能である。
【0004】
しかし、自然エネルギーは天候等に左右されるため、電力系統ごとにSOCを管理する
場合では、その電力系統に接続された全ての蓄電池のSOCが上限であり充電できない場
合や全ての蓄電池のSOCが下限であり放電できない場合が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−233287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、複数の電力系統に接続された蓄電池の充
電および放電に対して余力を持って行うことを可能にする電力系統監視制御システムを提
供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電力系統監視制御システムは、蓄電池がそれぞれ設置された複数の電力系統を連系する連系線に設置された開閉装置の開閉を制御する電力系統監視制御システムにおいて、通信部は、前記蓄電池の充電状態量を取得する。演算部は、前記通信部によって取得された前記充電状態量が所定の状態であるか否かを判定する。前記演算部は、前記蓄電池のうち少なくとも1つの蓄電池における充電状態量が基準値を下回っているか否かを判定し、前記通信部は、前記充電状態量が基準値を下回っていると判定された場合に、前記開閉装置の投入指令を出力し、前記通信部は、現在の発電量をさらに取得し、前記演算部は、前記発電量および記憶部から読み出した過去の発電量、過去変動抑制量から、現在の変動抑制量を算出し、前記現在の変動抑制量および前記蓄電池の充電状態量から、前記蓄電池の充放電の配分比を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の電力系統監視制御システムを含む出力変動抑制システムの構成を示すブロック図。
図2】実施形態の電力系統監視制御システムの構成を示すブロック図。
図3】実施形態の電力系統監視制御システムの動作を示すフローチャート。 以下、実施形態を図面に基づき説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は実施形態の電力系統監視制御システムを含む出力変動抑制システムの構成を示す
ブロック図である。
【0010】
実施形態の電力系統監視制御システムを含む出力変動抑制システムは、図1に示すよう
に電力系統監視制御システム1、自然エネルギー変換装置2a,2b、出力計測装置3a
,3b、制御装置4a,4b、蓄電装置5a,5bを有する。ここで、蓄電装置5a,5
bは、PCS(Power Conditioner System)501a,501
b、蓄電池502a,502bを有する。
【0011】
自然エネルギー変換装置2a,2bは、太陽光や風力といった自然エネルギーを電力に
変換し、電力系統7a,7bに取り込む発電装置、発電手段である。具体的には、ソーラ
ーパネルや風力発電機などが挙げられる。
【0012】
出力計測装置3a,3bは、自然エネルギー変換装置2a,2bによって発電された電
力量(発電量)を計測する計測装置、計測手段である。そして、計測した発電量を電力系
統監視制御システム1および制御装置4a,4bに出力する。
【0013】
蓄電池502a,502bは、リチウムイオン電池、鉛電池、ナトリウム硫黄電池、電
気二重層コンデンサ、レドックスフロー電池などの二次電池である。
【0014】
PCS501a,501bは、電力系統7a,7bの交流電力を直流電力に変換して蓄
電池502a,502bに充電する、または蓄電池502a,502bに充電された直流
電力を交流電力に変換して電力系統7a,7bに出力する電力変換装置、電力変換手段で
ある。
【0015】
またPCS501a,501bは、蓄電池502a,502bのSOC(State
Of Charge:充電状態量)を取得し、電力系統監視制御システム1に出力する。
【0016】
電力系統監視制御システム1は、出力計測装置3a,3bで計測された発電量、PCS
501a,501bから得られたSOCを取得する。そして各蓄電池502a,502b
の充放電量を決定する配分比を算出し、制御装置4a,4bに出力する。
【0017】
制御装置4a,4bは、出力計測装置3a,3bによって計測された発電量および電力
系統監視制御システム1によって算出された配分比を取得する。そして、発電量および配
分比から各蓄電池502a,502bが充電(放電)する電力量を算出し、PCS501
a,501bに充電(放電)指令を出力する。
【0018】
図2は実施形態の電力系統監視制御システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
実施形態の電力系統監視制御システム1は、通信部101、演算部102、記憶部10
3を有する。
【0020】
通信部101は、出力計測装置3a,3b、制御装置4a,4b、PCS501a,5
01bとデータの授受を行うインターフェース(Interface)などの通信装置、
通信手段である。
【0021】
通信部101は、出力計測装置3a,3bで計測された発電量、PCS501a,50
1bで得られたSOCを取得する。そして、後述する演算部102で算出された配分比を
制御装置4a,4bに出力する。また、演算部102での判定結果に応じて、開閉器8に
対して投入指令を出力し、連系線9a,9bが接続される。
【0022】
記憶部103は、RAM(Random Access Memory)やROM(R
ead Only Memory)などのメモリ及び、ハードディスクドライブ(Har
d Disk Drive:HDD)などの記憶装置、記憶手段である。HDDなどの磁
気ディスク以外にも光磁気ディスクやCD(Compact Disc)、DVD(Di
gital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu−ray
Disc)などの光ディスクを利用してもよい。
【0023】
記憶部103には、過去に通信部101が取得した発電量および、過去に演算部102
が算出した、抑制すべき電力量である変動抑制量が格納される。また、CPU(Cent
ral Processing Unit)などのプロセッサが演算部102での処理に
必要なプログラムが格納されている。
【0024】
演算部102は、通信部101が取得した発電量および各蓄電池502a,502bの
SOCから、各蓄電池502a,502bの充放電量を決定する配分比を算出する。
【0025】
また演算部102は、通信部101が取得した蓄電池502a,502bのSOCの情
報から、開閉器8を投入するか否かの判定を行う。
【0026】
これら演算部102における処理は、記憶部103に格納されるプログラムがCPUな
どのプロセッサによって動作されることで実現される。
【0027】
次に動作について図3を用いて説明する。図3は実施形態の電力系統監視制御システム
の動作を示すフローチャートである。
【0028】
通信部101は、出力計測装置3a,3bから現在の発電量を、PCS501a,50
1bから各蓄電池502a,502bのSOCを、それぞれ取得する(ステップS601
)。
【0029】
演算部102は、通信部101が取得したSOCを参照し、開閉器8を投入するか否か
の判定を行う(ステップS602)。
【0030】
具体的には、電力系統監視制御システム1が管理する1つの地点(例えば図1中のa地
点)における蓄電池502aのうち、少なくとも1つの蓄電池502aにおけるSOCが
基準値を下回った場合に、開閉器8を投入する。
【0031】
また、電力系統監視制御システム1が管理する1つの地点(例えば図1中のa地点)に
おける各蓄電池502aのSOCの平均値が基準値を下回った場合に、開閉器8を投入す
るようにしてもよい。
【0032】
なお、基準値は記憶部103に記憶されており、任意に変更可能である。
【0033】
通信部101は、演算部102が開閉器8を投入すると判定した場合(ステップS60
2YES)に、開閉器8に対して投入指令を出力する(ステップS603)。
【0034】
演算部102は、記憶部103から過去の発電量および過去の変動抑制量を読み出す。
【0035】
そして演算部102は、通信部101が取得した現在の発電量、記憶部103から読み出
した過去の発電量、過去の変動抑制量から、現在変動抑制量を算出する(ステップS60
4)。
【0036】
具体的には、現在の変動抑制量は以下のように与えられる。
【0037】
変動抑制量=過去の変動抑制量−(発電量−過去の発電量)
現在の変動抑制量の値がプラスの場合は、余剰電力分を電力系統7a,7bから蓄電池
502a,502bに充電することになる。一方で、現在の変動抑制量の値がマイナスの
場合は、不足電力分を蓄電池502a,502bから電力系統7a,7bに放電すること
になる。
【0038】
また、演算部102は、取得したSOCを参照し、算出した現在の変動抑制量に対して
、各蓄電池502a,502bがどれくらい充放電するかの配分比を算出する(ステップ
S605)。
【0039】
この配分比は、各蓄電池502a,502bのSOCがおよそ均等になるように決めら
れる。
【0040】
配分比の具体的な求め方は以下のようになる。
【0041】
現在の変動抑制量がプラスの場合(放電を行う場合)は、蓄電池502a,502bの
うち、SOCが大きい方を選択し、選択された蓄電池にて放電する。
【0042】
現在の変動抑制量がマイナスの場合(充電を行う場合)は、蓄電池502a,502b
のうち、SOCが小さい方を選択し、選択された蓄電池にて充電する。
【0043】
ただし、この配分比の算出方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0044】
通信部101は、演算部102が算出した配分比を制御装置4a,4bに出力する(ス
テップS606)。
【0045】
ここで、演算部102は、配分比ではなく各蓄電池502a,502bが充放電する電
力量を直接算出してもよい。その場合、通信部101は、演算部102が算出した電力量
をPCS501a,501bに出力する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の電力系統監視制御システムは、SOCを取得し、取
得したSOCから蓄電池502a,502bが充放電する電力量の配分比を算出する。そ
のため、開閉器8が開極している状態では、図1におけるa地点の各蓄電池502aのS
OCをおよそ均等に維持することができる。同様に、b地点の各蓄電池503bのSOC
についても、およそ均等に維持することができる。
【0047】
また、a地点(b地点)の全ての蓄電池502a(502b)のSOCが上限であり充
電できない場合や下限であり放電できない場合、もしくは事故等により充放電が行えない
場合でも、本実施形態の電力系統監視制御システムでは開閉器8の投入指令を出力するこ
とで、開閉器8が投入し、連系線9a,9bが接続される。そのため、b地点(a地点)
からの電力の融通が可能となり、複数の電力系統に接続された蓄電池の充電および放電に
対して余力を持って行うことを可能にする。そのことにより、電力系統7a,7bを安定
的に制御することができる。
【0048】
上記の実施例および図1では、簡単のためにa,bの2地点を連系する(2つの連系線
9a,9bを接続する)例を示しているが、3つ以上の地点(連系線)が連系されていて
もよい。
【0049】
上記の実施例では、演算部102が、通信部101を介して開閉器8の投入指令を開閉
器8に対して直接出力しているが、電力系統監視制御システム1とは別の電力系統を管理
している電力系統監視制御システムに出力し、その別の電力系統を管理している電力系統
監視制御システムから開閉器8に対して投入指令を出させてもよい。
【0050】
また、SOCは百分率でもよいし、充放電可能容量(Ah)や充放電可能電力量(Wh
)でもよい。
【0051】
本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図してい
ない。本実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を
逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態やその
変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその
均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…電力系統監視制御システム
101…通信部
102…演算部
103…記憶部
2a,2b…自然エネルギー変換装置
3a,3b…出力計測装置
4a,4b…制御装置
5a,5b…蓄電装置
501a,501b…PCS(Power Conditioner System)
502a,502b…蓄電池
6…電力予想使用量計算装置
7a,7b…電力系統
8…開閉器
図1
図2
図3