特許第5951376号(P5951376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951376スチレン系樹脂組成物および該樹脂組成物成形品並びにスチレン系樹脂用マスターバッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951376
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物および該樹脂組成物成形品並びにスチレン系樹脂用マスターバッチ
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20160630BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20160630BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20160630BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   C08L25/04
   C08L9/00
   C08K5/42
   C08J3/22CET
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-155269(P2012-155269)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-15569(P2014-15569A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘一
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−089527(JP,A)
【文献】 特開2011−184655(JP,A)
【文献】 特開平08−048768(JP,A)
【文献】 特表2006−508221(JP,A)
【文献】 特開2011−190371(JP,A)
【文献】 特開2011−252114(JP,A)
【文献】 特開平10−204239(JP,A)
【文献】 特開2006−123364(JP,A)
【文献】 特開2004−352927(JP,A)
【文献】 特開2009−298845(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/146478(WO,A1)
【文献】 特開2008−045029(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/056917(WO,A1)
【文献】 特開2002−226652(JP,A)
【文献】 特開2001−226590(JP,A)
【文献】 特開2010−013522(JP,A)
【文献】 特開昭64−000156(JP,A)
【文献】 特表平06−503849(JP,A)
【文献】 特開平07−300543(JP,A)
【文献】 特開2004−035587(JP,A)
【文献】 特開2008−150476(JP,A)
【文献】 特開2010−070715(JP,A)
【文献】 特開2011−201961(JP,A)
【文献】 特表2012−530164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08J 3/00 − 3/28
C08J 99/00
DB名 JSTPlus/JMEDPlus/
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂100質量部に対して、(A)シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンまたは(A)シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンおよび(B)スチレン系熱可塑性エラストマーを0.1〜5.0質量部と、(C)アルキルスルホン酸塩を0.3〜2.0質量部とを配合してなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
スチレン系樹脂100質量部に対して、(A)シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンまたは(A)シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンおよび(B)スチレン系熱可塑性エラストマーを1〜100質量部と、(C)アルキルスルホン酸塩を5〜50質量部とを、溶融混練してなることを特徴とするスチレン系樹脂用マスターバッチ。
【請求項3】
スチレン系樹脂100質量部に対して、請求項2のスチレン系樹脂用マスターバッチを0.5〜10質量部を配合してなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または3に記載のスチレン系樹脂組成物を成形してなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止効果に優れたスチレン系樹脂組成物および該樹脂組成物成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スチレン系樹脂は、他の樹脂に比べ、成形加工性、着色性に優れているため、電気・工業用、食品包装用、雑貨・産業用、発泡製品用途など様々な分野で利用されている。しかし、スチレン系樹脂は帯電しやすく、埃の付着といった問題が生じやすい。この問題を解決するために、一般的に界面活性剤(帯電防止剤)の添加が行われている。しかし、スチレン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂などとは異なりガラス転移点が室温よりも高く、成形品の使用温度において界面活性剤のブリードは起こりにくく帯電防止効果の発現が悪い。帯電防止効果を発現させるために界面活性剤の添加量を増量する方法がとられているが、成形品の印刷性不具合や成形加工性の低下並びに物性低下などを引き起こす場合がある。そこで、従来よりも界面活性剤の添加量が少なくても帯電防止効果が得られるスチレン樹脂組成物が望まれている。
【0003】
スチレン系樹脂の帯電防止効果を改善する従来技術としては、スチレン系樹脂 100重量部に対して、炭素数8〜20のアルカンスルホン酸塩とポリオキシエチレン脂肪族アミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸グリセリンエステルなどの化合物の内から選ばれる少なくとも一種以上とを重量比で40/60〜80/20の割合で配合した帯電防止剤を1〜10重量部配合してなることを特徴とする制電性に優れたスチレン系樹脂組成物(特許文献1)が開示されている。しかし、十分な帯電防止効果を獲得するためには、樹脂に対して2%以上という高濃度の帯電防止剤を添加しなければならないという問題点ある。また、樹脂組成物を成形した直後には十分な帯電防止効果が得られない場合や、高濃度にアルキルスルホン酸塩を添加することによって、印刷不良や成形加工性の低下が起こる場合があるため、より良い方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−49303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、帯電防止効果を有するスチレン系樹脂組成物および該樹脂組成物成形品並びにスチレン系樹脂用マスターバッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、スチレン系樹脂にポリブタジエン系熱可塑性エラストマーとアルキルスルホン酸塩を配合することにより上記課題を解決すること見出した。本発明者は、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)スチレン系樹脂100質量部に対して、(A)ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーおよび/または(B)スチレン系熱可塑性エラストマーを0.1〜5.0質量部と、(C)アルキルスルホン酸塩を0.3〜2.0質量部とを配合してなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物、
(2)スチレン系樹脂100質量部に対して、(A)ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーおよび/または(B)スチレン系熱可塑性エラストマーを1〜100質量部と、(C)アルキルスルホン酸塩を5〜50質量部とを、溶融混練してなることを特徴とするスチレン系樹脂用マスターバッチ、
(3)スチレン系樹脂100質量部に対して、上記(2)のスチレン系樹脂用マスターバッチを0.5〜10質量部を配合してなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物、
(4)上記(1)または(3)に記載のスチレン系樹脂組成物を成形してなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物成形品、
からなっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、該樹脂組成物成形品を成形した直後から経時的に優れた帯電防止効果を有する。また、本発明のスチレン系樹脂用マスターバッチを配合したスチレン系樹脂組成物は、(A)ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーおよび/または(B)スチレン系熱可塑性エラストマーと、(C)アルキルスルホン酸塩をそれぞれ配合したスチレン系樹脂組成物より優れた帯電防止効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、例えば、汎用ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーEPDM−スチレン共重合樹脂、メチルメタクリレートーブタジエンラバー−スチレン共重合樹脂(MBS樹脂)、アクリロ二トリル−エチレンプロピレンラバー−スチレン共重合樹脂(AES樹脂)、アクリロ二トリル−アクリル系ラバー−スチレン共重合樹脂(AAS樹脂)などが挙げられる。これらのスチレン系樹脂の中で、好ましくはGPPS、HIPS、ABSであり、さらに好ましくはHIPSである。
【0009】
本発明で用いられる(A)ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー(以下A成分ともいう)としては、シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンが挙げられる。
【0010】
前記シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンは、分子中の1,2結合の割合が約90%以上であることが好ましい。分子中の1、2結合の割合が90%より低い場合、融点が低下してシンジオタクティック1,2−ポリブタジエン自身のベタツキによりハンドリング性が低下し、また成形品にベタツキきが発生する場合がある。
【0011】
前記シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンの平均分子量は、約10万〜30万であることが好ましく、さらに結晶化度は約10〜40%であることが好ましい。平均分子量が10万以下であると、シンジオタクティック1,2−ポリブタジエンが成形品表面に移行しやすくなり外観不良を引き起こす場合があり、平均分子量が30万以上であると、成形品表面への移行しにくくなり帯電防止剤のキャリアとしての効果が弱くなる場合がある。また、結晶化度が約10%以下であると成形品のベタツキの原因となる場合があり、結晶化度が約40%以上であると帯電防止剤のブリードアウトを阻害する場合がある。
【0012】
本発明で用いられる(B)スチレン系熱可塑性エラストマー(以下B成分ともいう)は、芳香族ビニル単位と、ジエン系単位(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)とで構成され、通常、スチレン−ジエン系ブロック共重合体である。スチレン−ジエン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)などのスチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン共重合体、水添スチレン−イソプレン共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)などが挙げられる。ブロック共重合体において、末端ブロックは、スチレン系ブロック又はジエン系ブロックのいずれで構成してもよい。これらのスチレン系熱可塑性エラストマーの中で、好ましくはSBS、SISであり、さらに好ましくはSBSである。
【0013】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーを構成するスチレンとゴム成分(ジエン成分)との割合(質量比)は、好ましくはスチレン/ゴム成分=約20/80〜80/20、より好ましくは約20/80〜50/50である。
【0014】
スチレン系樹脂100質量部に対するA成分および/またはB成分の配合量は、0.1〜5.0質量部であり、好ましくは約0.2〜3.0質量部である。上記範囲より少ないと、成形品表面に帯電防止剤を運ぶキャリーとして量が少ないために帯電防止効果は得られず、上記範囲より多いと、スチレン系樹脂との相溶性が悪いため、加工時に目やにの発生や物性低下を起こす場合がある。
【0015】
本発明で用いられる(C)アルキルスルホン酸塩(以下C成分ともいう)としては、例えば、直鎖パラフィンの2級位置にスルホン基が結合した直鎖パラフィンのスルホン酸金属塩が挙げられる。前記パラフィンの炭素数は、好ましくは約8〜22であり、より好ましくは約10〜16である。また、構成する金属塩はアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウムがさらに好ましい。具体的には、オクタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸カリウム、デカンスルホン酸ナトリウム、デカンスルホン酸カリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸カリウム、テトラデカンスルホン酸ナトリウム、テトラデカンスルホン酸カリウム、ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデカンスルホン酸カリウム、オクタデカンスルホン酸ナトリウム、オクタデカンスルホン酸カリウム、イコサンスルホン酸ナトリウム、イコサンスルホン酸カリウム、ヘンイコサンスルホン酸ナトリウム、ヘンイコサンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。
【0016】
スチレン系樹脂100重量部に対するC成分の配合量は、0.3〜2.0質量であり、好ましくは約0.5〜1.5質量部である。配合量が上記範囲を超えると印刷性阻害や加工性の低下を起こす場合があり、上記範囲より少ないと十分な帯電防止効果を発揮することができない場合がある。
【0017】
本発明のスチレン系樹脂組成物には、所望により、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、着色剤などを添加することが出来る。本発明のスチレン系樹脂組成物は、当該分野にて公知の方法にて成形することができる。
【0018】
本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、スチレン系樹脂と、A成分および/またはB成分とC成分とを溶融混練することによって製造することができる。溶融混練する方法としては、通常公知の方法を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いることができる。
【0019】
前記A成分および/またはB成分とC成分を、あらかじめスチレン系樹脂に高濃度に配合して溶融混練して得られるスチレン系樹脂用マスターバッチ(以下マスターバッチともいう。)も本発明の形態の一つである。該マスターバッチをスチレン系樹脂に配合することにより、前記A、B、Cの各成分を別々に配合する場合よりも、さらに帯電防止効果が高まるという効果を奏する。これは、スチレン系樹脂にA成分および/またはB成分とC成分とを高濃度にあらかじめ押出機などを用いて溶融混練することにより、C成分がA成分および/またはB成分に吸着する量が増えるためと考えられる。
【0020】
本発明のマスターバッチの配合量は、スチレン系樹脂100質量部に対し、好ましくはA成分および/またはB成分が1〜100質量部であり、C成分が5〜50質量部である。さらに好ましくはA成分および/またはB成分が約10〜30質量部であり、C成分が約10〜50質量部である。
【0021】
本発明のマスターバッチの製造方法は、スチレン系樹脂と、A成分および/またはB成分とC成分とを溶融混練すればよくその製造方法に特に制限はないが、例えば、各原料を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて溶融混練することにより製造することができる。
【0022】
前記マスターバッチは、スチレン系樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部を配合して溶融混練することにより、帯電防止効果を有するスチレン系樹脂組成部物が得られる。
【0023】
本発明のスチレン系樹脂組成物成形品は、スチレン系樹脂組成物を公知の成形方法で成形することによりえられる。例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形などの方法が挙げられる
得られたスチレン系樹脂成形品は、帯電防止効果を有するため、特に食品容器、工業用部品搬送トレー、雑貨、文房具などに用いられる。
【0024】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0025】
<スチレン系樹脂組成物および該組成物成形品の作製>
(1)原材料
スチレン系樹脂1:GPPS(商品名:HRM26;東洋スチレン社製)
スチレン系樹脂2:HIPS(商品名:E640N;東洋スチレン社製)
スチレン系樹脂3:ABS(商品名:スタイラックA3941;旭化成社製)
A1:1,2−ブタジエン(商品名:RB810;JSR社製)
B1:SBS(商品名:タフプレン315;旭化成ケミカルズ社製)
B2:SEBS(商品名:DYNARON8601P;JSR社製)
B3:SIS(商品名:TR2001;JSR社製)
C1:アルキルスルホン酸ナトリウム(商品名:アンステックスHT−100;東邦化学工業社製)
【0026】
(2)スチレン系樹脂組成物の配合
上記原材料を用いて作製したスチレン系樹脂の配合組成を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
(3)スチレン系樹脂組成物および該組成物成形品の作製
表1に記載の原材料の15倍量を二軸押出機(型式KZW15TW−45MG−NH;テクノベル社製)を用いて、バレル温度200〜240℃、ヘッド温度230℃、スクリュー回転数300rpm、押出量3kg/hrの条件で溶融混練してスチレン系樹脂組成物(実施例品1〜10、比較例品1〜8)を得た。次いで、ストランド状に押し出されたスチレン系樹脂組成物をペレタイザーにてカットし円柱状(直径3mm、長さ3mm)のペレットに造粒し、このペレットをプレス成形機(型式:AYSR−5;神藤金属工業所社製)を用いて温度240℃の条件で、3MPaで30秒、5MPaで30秒、10MPaで120秒プレス後、5Mpaの圧力をかけながら水冷し、厚さ0.5mmのシート状スチレン系樹脂組成物成形品(試作品1〜18)を得た。
【0029】
<帯電防止効果の評価1>
得られたシート状スチレン系樹脂組成物成形品(試作品1〜18)の帯電防止効果は、シート表面の表面固有電気抵抗率をシートを作製してから1日後、7日後、14日後、30日後、60日後に測定して評価した。表面固有電気抵抗値が、1.0×1014以下であると帯電防止効果があるといえ、1.0×1013以下であると非常に帯電防止効果があるといえる。表面固有電気抵抗率測定条件は下記の条件で行った。測定結果を表2に示す。
(表面固有電気抵抗値測定条件)
試験機械:超絶縁計 SM−8220(東亜DKK社製)
印加電圧:500V
印加時間:1分
温度 :25℃
湿度 :65%
【0030】
【表2】
結果より、試作品1〜10は、全てにおいて表面固有電気抵抗率が1.0×1014以下であり、帯電防止効果を有し、特に試作品1〜6および試作品10は、全てにおいて1.0×1013以下であり優れた帯電防止効果を有していた。また、前記帯電防止効果は、該樹脂組成物を成形した直後から経時的に帯電防止効果を有していた。 一方、試作品11〜16、18は、全てにおいて表面固有電気抵抗率が1.0×1014より大きく、帯電防止効果を有していなかった。また、試作品17は成形してから30日後、60日後の表面固有電気抵抗率が1.0×1014以下であり、帯電防止効果を有しているが、成形してから1日後、7日後、14日後の表面固有電気抵抗率が1.0×1014より大きく、帯電防止効果を有していなかった。
【0031】
<スチレン系樹脂用マスターバッチを用いたスチレン系樹脂組成物および該組成物成形品の作製>
(1)スチレン系樹脂用マスターバッチの作製
原材料として、「<スチレン系樹脂組成物および該組成物成形品の作製>(1)原材料」に記載の原材料を用いてマスターバッチを作製した。マスターバッチの配合組成を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
マスターバッチは、表3に記載の原材料の15倍量を二軸押出機(型式KZW15TW−45MG−NH;テクノベル社製)を用いてバレル温度200〜240℃、ヘッド温度230℃、スクリュー回転数500rpm、押出量2.5kg/hrの条件で溶融混練し、ストランド状に押し出されたスチレン系樹脂組成物をペレタイザーにてカットしてペレット状のスチレン系樹脂用マスターバッチを得た。
【0034】
(2)スチレン系樹脂用マスターバッチを用いたスチレン系樹脂組成物および該組成物成形品の作製
原材料として「<スチレン系樹脂組成物および該組成物成形品の作製>(1)原材料」に記載の原材料と得られたマスターバッチを用いてスチレン系樹脂組成物および該組成物成形品を作製した。スチレン系樹脂組成物の配合組成を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
マスターバッチを用いたスチレン系樹脂組成物は、表4に記載の原材料の15倍量を用い、「<スチレン系樹脂組成物および該組成物成形品の作製>(3)スチレン系樹脂組成物および該組成物成形品の作製」と同じ方法でスチレン系樹脂組成物(実施例品11、12)およびシート状スチレン系樹脂組成物成形品(試作品19、20)を得た。
ここで、スチレン系樹脂組成物に含まれる成分Aと成分Cの量は、実施例11と実施例1が同量であり、実施例12と実施例5が同量である。
【0037】
<帯電防止効果の評価2>
得られたシート状スチレン系樹脂組成物成形品(試作品19、20)の帯電防止効果は、「<帯電防止効果の評価1>」と同じ方法で評価した。測定結果を表5に示す。
スチレン系樹脂組成物に含まれる成分Aと成分Cの量が同等であるスチレン系樹脂組成物成形品(試作品1、5)の測定結果も表5に示す。
【0038】
【表5】
結果より、A成分とC成分を同量配合した試作品19と試作品1とでは、A成分とC成分をあらかじめ溶融混練して得たスチレン系樹脂用マスターバッチを用いた試作品19が試作品1より帯電防止効果に優れていた。 同様に、スチレン系樹脂用マスターバッチを用いた試作品20は、試作品5より帯電防止効果に優れていた。