【実施例1】
【0020】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0021】
図1は本発明の加湿器の外観斜視図であり、1は加湿器本体、2は本体1に着脱自在に設けられる水タンクである。また、本体1の側面には室内の空気を本体1内部に取り入れるための吸気口3が設けられ、上部には本体1内で加湿された空気を室内に放出するための吹出口4と、操作キーが配置された操作表示部5が設けられている。
【0022】
図2は加湿器の縦断面構成図であり、水タンク2から供給された水を一時的に貯える水槽部6、水槽部6内に配置され水槽部6に貯えられた水を吸水して湿潤する加湿フィルタ7、乾燥した室内空気を吸気口3から取り込み湿潤している加湿フィルタ7を通過させ加湿空気として吹出口4より室内に放出する送風機8、送風機8により吸気口3から取り入れられた空気を加熱する温風用ヒータ9が設けられており、温風用ヒータ9は加湿フィルタ7の上流に配置されている。
【0023】
図3は制御部の構成を示すブロック図である。10は制御部であり、マイコンである演算部11と不揮発性メモリである記憶部12とを有している。演算部11の入力側には、操作キーが配置された操作表示部5と湿度センサ13が接続されている。また、演算部11の出力側には、送風機8と温風用ヒータ9、使用者に加湿フィルタ7の交換時期を報知する報知手段14が接続されている。
【0024】
図4は操作表示部5の拡大図である。操作表示部5には、運転スイッチ15や湿度設定スイッチ16、運転モード切換スイッチ17、フィルタ交換リセットスイッチ18、LEDからなる報知手段14が設けられている。報知手段14は演算部11からの作動指示に基づいて点滅により使用者へフィルタ交換の報知を行う。なお、報知手段14についてはこの限りではなく、ブザー音による報知を行ってもよい。
【0025】
上述の構成からなる加湿器において加湿運転を行う場合には、まず水タンク2を本体1に挿入すると水槽部6には水タンク2から水が流れ出して一定水位の水が貯えられるので、水槽部6に設置されている加湿フィルタ7は毛細管現象により水槽部6の水を吸い上げ湿潤する。
【0026】
この状態で、操作表示部5の運転スイッチ15を押下し湿度設定スイッチ16で目標とする湿度を選択すると、送風機8の回転により室内空気は吸気口3から本体1内に取り入れられる。そして設定された湿度と室内の湿度に基づいて、温風用ヒータ9への通電と送風機8の回転が制御される。
【0027】
吸気口3から取り込まれた空気は、温風用ヒータ9への通電が行われた場合には暖められて温風となり、この空気が加湿フィルタ7に送られることで加湿フィルタ7内の水を気化して水分を含んだ加湿空気となって、吹出口4から放出されることにより室内の加湿が行われる。
図2中の白矢印は室内の乾燥した空気、黒矢印は水分を含んだ加湿空気の流れを表している。
【0028】
演算部11は、設定湿度と湿度センサ13が検知した検知湿度の差に応じて、温風用ヒータ9への通電と送風機8の風量段数を制御する。例えば、設定湿度と検知湿度との差が大きい場合には温風用ヒータ9の通電をオンするとともに送風機8の風量を大きくして加湿フィルタ7からの水の気化を促進して、室内への加湿量を急激に増大させるようにし、一方、検知湿度が上昇して設定湿度に近づいたならば、温風用ヒータ9の通電をオフするとともに送風機8の風量を下げて加湿量を抑えるようにしている。
【0029】
また、使用者は操作表示部5の運転モード切換スイッチ17において運転モードを選択することができる。運転モードは例えば「標準」、「省エネ」、「静音」モードを備えており、運転モード切換スイッチ17を操作するごとに運転モードが切換わり、演算部11は運転モードの設定にしたがって温風用ヒータ9への通電と送風機8の風量段数の組み合わせを可変させる。
【0030】
図5は各運転モードにおける送風機8の風量段数および温風用ヒータ9の通電制御を運転パターンとして示した表である。縦列には使用者が運転モード切換スイッチ17によって選択することのできる運転モードを表記しており、横列には設定湿度と検知湿度との差による運転制御について表記している。
【0031】
図5より、例えば使用者が運転モードを「標準」に選択して運転開始させた場合、「運転立ち上げ時」には急速に室内の加湿を行うために、演算部11は温風用ヒータ9の通電をオンにするとともに送風機8の風量段数を最大である5段目に設定して加湿運転を行う。その後、湿度センサ13によって室内の湿度が設定湿度付近にて安定したことを検知すると、演算部11は「湿度安定時」の運転制御にしたがって温風用ヒータ9の通電をオフにするとともに送風機8の風量段数を2段目に下げることによって加湿量を抑える。
【0032】
また、室内の湿度が安定した状態から換気などにより、湿度センサ13の検知湿度が設定湿度よりも下回った場合には演算部11は「湿度不足時」の運転制御に切換え、送風機8の風量段数を4段目に上げて風量を大きくすることで加湿量を増やす。逆に、検知湿度が設定湿度を上回った場合には演算部11は「湿度超過時」の運転制御に切換えて、送風機8の風量段数を1段目に下げることで加湿量を最小に抑えることで、室内の湿度を調節する。
【0033】
そして、演算部11は送風機8の風量と温風用ヒータ9の通電から加湿量を推定し、加湿量の総量が所定値に達すると報知手段14を作動させて使用者に加湿フィルタ7の交換時期であることを報知するのである。
【0034】
ここで、加湿フィルタ交換時期の算出方法について
図6を用いて詳細に説明する。
【0035】
演算部11はある所定の周期ごとにその時点で行われている運転パターンの検出を行っており、
図6は
図5の運転パターンに対応して設定された所定の周期あたりの加湿量との対応表である。例えば、運転モードが「標準」のとき「運転立ち上げ時」の運転パターンに対応する所定の周期あたりの加湿量は、
図6より「1.9cc」が想定されることとなる。なお、プログラムの設定上、
図6の加湿量の数値は小数ではなく整数に直して設定してもよい。
【0036】
そして、演算部11は周期あたりの加湿量を積算し、記憶部12においてその積算値を記憶させている。演算部11には予め総加湿量の上限となる所定値が設定されており、演算部11はこの所定値と記憶部12にて記憶している加湿量の積算値との比較を周期ごとに行う。両者を比較した結果、加湿量の積算値が所定値に達したことを判定すると、これ以上の加湿運転を行うと加湿フィルタ7に付着する汚れが過剰になり加湿性能が低下することから、報知手段14を作動させて加湿フィルタ7の交換時期であることを使用者に報知する。
【0037】
つまり、実際には加湿量の積算値はそのまま加湿フィルタ7を通過する水量であることから、加湿フィルタ7に付着する汚れの度合いはこの通水量に比例して多くなるものとしてフィルタ交換時期の算出に反映させるのである。これによって、加湿フィルタ7の交換時期を精度よく算出でき、使用者に適切なタイミングで報知することが可能となる。
【0038】
上記の制御に加え、加湿量の積算値を記憶させるのと並行して、演算部11は記憶部12において本体1の電源投入時間を積算した電源投入累積時間を記憶させている。
【0039】
演算部11には予め電源投入累積時間の上限となる所定時間が設定されており、演算部11はこの所定時間と記憶部12にて記憶している電源投入累積時間とを比較して電源投入累積時間が所定時間に達したことを判定すると、加湿量の積算値が所定値に達していなくとも優先的に報知手段14を作動させる。
【0040】
これにより、例えば使用者の湿度設定により微弱量の加湿運転が長時間続いてしまい総加湿量の所定値に達しなかったとしても、最長でもこの所定時間が経過すれば強制的にフィルタ交換を促すよう報知を行うのである。したがって、加湿フィルタ7が長期間水槽部6の水に浸水していると経時的な水の劣化によって発生する雑菌繁殖やスケールの堆積を抑えることができる。
【0041】
以上の制御により、室内環境および使用者の設定により変化する加湿運転制御に応じて、加湿量の積算値および電源投入累積時間による2段階のフィルタ交換時期の算出方法を用いることで適切なタイミングでフィルタ交換を報知させることができるので、加湿性能の低下を未然に防ぐことができる。
【0042】
なお、使用者は加湿フィルタ7の交換を行った後、操作表示部5に設けられたフィルタ交換リセットスイッチ18を押下することで演算部11が報知手段14の作動を停止させるとともに、演算部11は記憶部12における加湿量の積算値および電源投入累積時間をリセットさせ、次回のフィルタ交換時期の算出を開始する。