(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記CT画像に基づいて、設定された前記X線検出器の取り付け位置と前記X線画像データが撮像された前記回転ガントリにおける前記X線検出器の取り付け位置との差を検出する第3の検出部と、
前記第3の検出部における検出結果に基づいて前記X線画像データを補正する第3の補正部と、
を備え、
前記再構成部は、前記第3の補正部により補正されたX線画像データに基づいてCT画像を再構成する請求項1記載の荷電粒子線治療用CT画像作成装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る荷電粒子線治療用CT画像作成装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、荷電粒子線治療用CT画像作成装置が組み込まれた荷電粒子線治療システムの1種である陽子線治療システム1について説明する。陽子線治療システム1は、例えば、患者(検査対象)の内部の病巣(例えば、腫瘍等)に対して、陽子線を照射する装置である。なお、荷電粒子線としては、本実施形態で説明する陽子線の他に、例えば、重粒子(重イオン)線、パイ中間子線等が挙げられ、これらの荷電粒子線を用いた治療に対しても本実施形態に係る荷電粒子線治療用CT画像作成装置を適用することができる。
【0020】
図1に示すように、陽子線治療システム1は、イオン源(図示省略)で生成されたイオンを加速して陽子線を出射するサイクロトロン(粒子加速器)2、サイクロトロン2から出射された陽子線を輸送するビーム輸送ライン3を有する。なお、粒子加速器としては、上記のサイクロトロンに限定されず、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン、ライナック(線形加速器)等を用いることもできる。
【0021】
サイクロトロン2で加速された陽子線は、ビーム輸送ライン3に沿って偏向され、固定照射式の陽子線照射ユニット4、及び回転ガントリ7の陽子線照射ユニットに供給される。ビーム輸送ライン3には、陽子線を偏向させるための偏向磁石や、ビーム成形を行う四重極電磁石等が設けられている。荷電粒子線を調整するための電磁石としては、ビーム成形を行う四重極電磁石、ビームを偏向させる偏向磁石などが含まれる。
【0022】
陽子線治療システム1は、建屋5内に収容されている。建屋5には、放射線の透過を抑制する放射線遮蔽壁によって構成された複数の照射室(検査室)6A,6Bが設けられている。照射室6Aには、X線を照射するX線撮影ユニット及び陽子線照射ユニットを一体として回転させる回転ガントリ7が設けられている。照射室6Bには、X線撮影装置8と、陽子線照射ユニット4とが個別に設けられている。
【0023】
本実施形態の建屋5は、例えば3つの照射室6Aと、1つの照射室6Bとを備えている。ビーム輸送ライン3は、所定の位置で分岐され、照射室6Aへ導入されるライン3aと、照射室6Bへ導入されるライン3bを有する。以下の実施形態では、照射室6Aに設けられた回転ガントリ7と、回転ガントリ7に含まれる陽子線照射ユニット及びX線撮影ユニットについて説明する。
【0024】
(回転ガントリ)
図2は、回転ガントリの構造を説明する概略斜視図である。また、
図3は、回転ガントリの側面図である。
図4は、回転ガントリの一部破断上面図である。
図5は、回転ガントリの治療室付近について説明する概略斜視図である。なお、
図4では、
図2,3の回転ガントリを90度回転させた構成について示している。
【0025】
図2〜5に示すように、回転ガントリ7は、患者が横たわる治療台11(
図5参照)、治療台11を囲むように設けられた回転部10、回転部10の内側に配置され、治療台11上の患者に向けて陽子線を照射する照射部12、誘導ライン5によって誘導された陽子線を照射部12へ導入する導入ライン13を備えている。回転ガントリ
7は、図示されていないモータによって回転駆動され、図示されていないブレーキ装置によって回転が停止される。なお、以下の説明において、回転ガントリ7の正面とは、治療台11が設置されて患者の出入りが可能になるように回転部10が開放されている側の側面を意味し、背面とは、その裏側の側面を意味する。
【0026】
回転部10は、回転自在とされ、正面側から順に第1円筒部14及びコーン部15を備える。第1円筒部14、コーン部15は、同軸に配置され互いに固定されている。また、回転部10より背面側に設けられる第2円筒部16は、コーン部15と同軸に配置されるがコーン部15に対して回転可能とされている。
【0027】
治療台11は、6軸制御が可能な支持装置11aにより支持されて、治療時には、第1円筒部14の内側に配置される。支持装置11aは、回転部10ではなく建屋5の床部5aに対して固定されるので、第1円筒部14の回転とは関連がなく治療台11を移動させることができる。
【0028】
照射部12は、第1円筒部14の内面に配置され、第1円筒部14の軸心方向に向けられている。第1円筒部14の内側の軸心(回転軸線)P近傍には、治療台11が配置される。第2円筒部16は、第1円筒部14より小径とされる。また、コーン部
15は、一端側の径は第1円筒部14と同じくされ、他端側で第2円筒部16と連結するように円錐状に形成されている。また、コーン部15と第1円筒部14の後端側とは、第1円筒部14の外周に沿って設けられた軸線方向に伸びる複数本の支柱17aと、軸線方向に対して交差する方向に伸びる複数本の支柱17bと、によって接続されている。
【0029】
第1円筒部14の前端の外周部には外方に突出するリング部21が設けられる。また、コーン部15の前端外周部においても外方に突出するリング部22が設けられる。第1円筒部14及びコーン部15は、第1円筒部14のリング部21の下方に配置されたローラ装置25(
図2、
図3参照)と、コーン部15のリング部22の下方に配置されたローラ装置26(
図2、
図3参照)によって、回転可能に支持されている。リング部21の外周部がローラ装置25と当接すると共に、リング部22の外周部がローラ装置26と当接することにより、ローラ装置25,26によって第1円筒部14及びコーン部15に対して回転力が付与される。
【0030】
導入ライン13は、回転ガントリ7の背面側でビーム輸送ライン3から分岐されたライン3aに連結されている。導入ライン13は、45度の偏向電磁石を1セット備えると共に、135度の偏向電磁石を1セット備えている。導入ライン13は、ライン3a(
図1参照)に連絡して軸心Pに沿って径方向外方に向かって延在する軸方向導入ライン13aと、この軸方向導入ライン13aの後段に連続し、径方向に延在する径方向導入ライン13bを有する。なお、導入ライン13には、陽子線をその内部に通過させて輸送する真空管であるビーム輸送管(図示省略)が設けられている。
【0031】
軸方向導入ライン13aは、第2円筒部16内の軸心P上でライン3aに連絡する始端部から、コーン部15内で軸心Pに対して45度湾曲して径方向に延在し、終端部が第1円筒部14の外部に張り出している経路部分である。また、径方向導入ライン13bは、軸方向導入ライン13aの終端部に連絡する始端部から回転部10の径方向の内側へ向けて135度湾曲して終端部が照射部
12に連絡する経路部分である。
【0032】
上記の導入ライン13は、第1円筒部14とコーン部15とを接続する支柱17a,17bから第1円筒部14の径方向の外側に張り出すように支柱17c等を介して取り付けられている。
【0033】
また、軸心Pを挟んで導入ライン13に対して対向するようにカウンタウェイト18が配置されている。カウンタウェイト18は、第1円筒部14とコーン部15とを接続する支柱17a,17bから第1円筒部14の径方向の外側に張り出すように支柱17d等を用いて設置されている。カウンタウェイト18を設置することで、導入ライン13との重量バランスが確保されている。
【0034】
上記の回転ガントリ7では、ローラ装置41,42の駆動により、支柱17a〜17dにより接続された第1円筒部14、コーン部15、
導入ライン13及びカウンタウェイト18が軸心Pを中心に一体的に回転する。これらが回転することで治療台11に対する照射部12の位置を変更させた上で照射部12から治療台11上の患者に対して陽子線を出射することで、患者(検査対象)の内部の病巣(例えば腫瘍等)に対して、任意の方向から陽子線(荷電粒子線)が照射される。
【0035】
ここで、治療台11が取り付けられる第1円筒部14の内部について、
図5に基づいて説明する。第1円筒部14の内部に設けられる照射部12には、サイクロトロン2から出射されて導入ライン13を輸送された陽子線の出射口12aが設けられる。さらに、照射部12の外側には、荷電粒子線治療用CT画像を作成するためのX線を出射するX線管31が2つ設けられる。これらのX線管31は、軸心Pに対して垂直であり出射口12aを含む平面上であって、出射口12aが2つのX線管31の中点となる位置に設けられ、円錐状のX線ビーム(コーンビーム)を出射する。そして、X線管31から出射されて軸心P周辺の撮像対象を透過したX線を受光するための2次元に画素が配置されたX線検出器であるFPD(Flat Panel Ditector)32が軸心Pを挟んでX線管31に対向する位置にそれぞれ設けられる。
【0036】
FPD32は、第1円筒部14の内部の背面側にあって軸心Pに対して垂直な壁面14aに対して取り付けられていて第1円筒部14の回転に応じて回転する。また、FPD32は壁面14aよりも背面側へ収納可能となっている。X線管31及びFPD32は、荷電粒子線治療用のCT画像を撮像する目的において使用されるため、陽子線を用いた治療時には照射部12及び壁面14aに対して収納される。そして、FPD32は使用時に壁面14aから正面側に引き出して、使用時の位置に移動される。なお、FPD32に代えて、FPDと同様にX線を受光可能なX線II(Image Intensifier)等を用いてもよい。
【0037】
(荷電粒子線治療用CT画像作成方法)
次に、本実施形態に係る陽子線治療システム1における荷電粒子線治療用CT画像作成装置について説明する。陽子線治療システム1を用いた病巣の治療に際しては、患者を撮像したCT画像を用いた治療計画が予め作成され、これに基づいて陽子線治療システム1において陽子線を病巣に対して照射を行う。しかしながら、治療計画を作成する際に用いるCT画像は、陽子線治療システム1とは別の装置において撮像されるため、治療計画用のCT画像撮像時の患者の位置と、陽子線治療システム1を用いた治療時の患者の位置が必ずしも一致しない。ここで、陽子線治療システム1の治療台
11において患者の位置を正確に配置することができないと、陽子線治療システム1における患者の病巣の位置が不正確になってしまい、結果として、病巣に対して治療計画通りの正確な位置への陽子線の照射ができなくなる可能性がある。これに対して、本実施形態に係る荷電粒子線治療CT画像作成装置は、上記の装置上における患者の位置のずれによる誤差をできるだけ小さくするために、陽子線治療システム1に搭載されたX線管31及びFPD32を用いて、治療に用いる装置である陽子線治療システム1上でのコーンビームCT画像(粒子線治療用CT画像)を作成した後に、予め作成された治療計画CT画像と比較して陽子線治療システム1における患者の位置を補正することを目的に用いられる。
【0038】
なお、本実施形態では、内部にX線透過しない部品が設けられ、本体の大きさ及び内部部品の位置と大きさとが明らかであるファントムを用いてX線画像を撮像することでCT画像を取得し、CT画像の荒れを取り除く補正をすることで、位置校正用データを先に作成した後に、この位置校正用データを用いて、患者を撮像したX線画像データの補正を行ってCT画像を再構成する場合について説明する。上記のようにファントムにより位置校正用データを作成してこれを用いて補正後のCT画像を再構成する方法に代えて、ファントムを撮像して得られた位置校正用データを用いずに、患者を撮像したCT画像について都度補正を行う方法を採用してもよい。ただし、この方法では正確な位置が分かるファントムを用いずに補正を行うため、ファントムを用いた補正のほうが得られるCT画像の精度の向上が格段に高い。
【0039】
図6は、荷電粒子線治療用CT画像作成装置の構成について説明する図である。
【0040】
本実施形態に係る荷電粒子線治療用CT画像作成装置(患者位置照合システム)100は、X線画像取得部101(画像取得部)と、画像再構成部102(再構成部)と、画像補正部103(第1〜第3の検出部・第1〜第3の補正部)と、位置校正用DB104と、位置ずれ量計算部111と、を含んで構成される。また陽子線治療ユニットにおいては、位置ずれ量計算部111において計算された結果を受信する位置ずれ量受信部112が設けられる。このうち、X線画像取得部101、画像再構成部102、及び画像補正部103は、位置校正を行うためのデータ(位置校正用データ)の作成と、治療台
11に載置された患者のCT画像の作成と、に用いられる。また、位置ずれ量計算部111は、この陽子線治療システム1において患者を撮像することで得られたCT画像を位置校正用DB104に格納された位置校正用データを用いて補正した後に、治療計画の策定のために予め撮像された治療計画CT画像との位置ずれ量を計算する機能を有する。また、
図6では、治療計画CT画像は、本システム1とは別体のCT装置を用いて撮像することで提供される情報であり、位置ずれ量情報は陽子線治療に用いられることを示している。
【0041】
X線画像取得部101は、X線管31、FPD32、及びX線画像収集部33を含んで構成される。X線画像取得部101は、X線画像を取得する機能を有する。位置校正用データの作成に用いられるX線画像とは、内部構成が既知のファントムを撮像した画像である。X線管31からX線を出射することによりファントムを通過してFPD32で撮像されるX線画像は、X線画像収集部33において、撮像時刻と対応付けて収集される。ここでは、回転ガントリ7を回転させながら予め設定された所定の角度ごとにX線画像を複数枚撮像することで、ファントムを複数の方向から撮像する。X線画像収集部33において撮像時刻とX線画像とを対応付けて収集することで、回転ガントリ7の位置とX線画像とが対応付けて収集される。
【0042】
画像再構成部102は、X線画像取得部101により取得されたX線画像からCT画像を再構成する機能を有する。また、画像再構成部102は、後段の画像補正部103において補正されたX線画像を用いてもCT画像を再構成する機能を有する。画像再構成部102において再構成される画像は、ファントムのX線画像及び患者のX線画像が含まれる。
【0043】
画像補正部103は画像再構成部102により再構成されたCT画像に基づいて、当該CT画像を再構成するために用いられたX線画像について後述の位置校正をする必要があるかを判定し、当該判定結果に基づいてX線画像を補正する機能を有する。
【0044】
位置校正用DB104は、ファントムを撮像したX線画像及びこのX線画像から再構成されたCT画像に基づいて、X線画像を撮像する装置における位置ずれに係る情報、すなわち位置校正を行うための情報を格納するデータベースである。画像再構成部102におけるCT画像の再構成及び画像補正部103におけるX線画像の補正を繰り返すことで求められた装置の位置ずれに係る情報はこの位置校正用DB104に格納される。
【0045】
上記の位置校正用DB104に格納された情報を用いて、患者を撮像したCT画像を修正する場合は、本実施形態に係る陽子線治療システム1のX線管31及びFPD32を用いて撮像したX線画像データをX線画像収集部33において収集した後、画像再構成部102においてCT画像を再構成する。その後、位
置校正用DB104に格納された位置校正用データを用いることで、画像補正部103においてCT画像を構成するX線画像データの補正を行う。そして、画像再構成部102において、補正後のX線画像データに基づいたCT画像を再構成し、これを画像表示装置等に出力する。これにより、補正後のCT画像を粒子線治療用CT画像として利用することができる。
【0046】
位置ずれ量計算部111は、画像再構成部102において得られた患者のCT画像と、治療計画の策定のために予め撮像された治療計画CT画像との位置ずれ量を計算する。そして、この情報を位置ずれ量受信部112に対して送信する。そして、陽子線治療ユニットにおいては、位置ずれ量受信部112においてこれを受信した後に、治療計画に基づいて患者の病巣に対して適切に陽子線を照射するために、位置ずれ情報に基づいて、陽子線の出射位置を変更する、治療台11を移動して患者の位置を変更する等の処置が行われる。
【0047】
ここで、位置校正用データを作成する際に算出される装置の位置ずれは、陽子線治療における装置の誤差となり、陽子線治療の際にも影響を与える場合がある。したがって、位置校正用のデータに基づいて位置ずれ量計算部111において位置ずれ量を算出しこれを陽子線治療ユニットに対して送信する構成とすることで、陽子線治療時の回転ガントリ7の回転の制御や陽子線の照射位置の調整に対してもこれらの情報を利用することもできる。
【0048】
ここで、回転ガントリ7に取り付けられたX線管31及びFPD32を用いて測定対象のX線画像データを撮像した場合に、装置において発生する位置ずれについて
図7を用いて説明する。
【0049】
陽子線治療システム1のような粒子線治療装置は、大型且つ高重量であるため、患者の位置合わせを目的として荷電粒子線治療装置に取り付けられたCT画像撮像装置によって得られたCT画像(荷電粒子線治療用CT画像)は、不鮮明となる。これは、複数の測定対象のX線画像データを撮像した後にCT
画像を再構成する際に、X線画像データが実際に撮像された位置が予め設定されていた位置と異なる、すなわち位置ずれが発生した状態で撮像された画像が含まれることによる。そして、この陽子線治療システム1における陽子線治療時の患者の位置合わせを目的に取得されたCT画像が不鮮明であると、治療計画を作成する際に用いるCT画像との比較が困難であり、陽子線治療時の患者の位置合わせが困難となる。このため、治療計画に基づいて患者の病巣に対して陽子線を正確に照射できなくなるという問題がある。
【0050】
陽子線治療システム1において撮像されたX線画像データに基づいて再構成されたCT画像が不鮮明になる原因となる「位置ずれ」が発生する原因としては、大きく以下の3つが挙げられる。
(1)回転ガントリ7の回転角度が所定の値とずれている
(2)X線管31の位置が設定された位置からずれている
(3)FPD32(X線検出器)の位置が設定された位置からずれている
【0051】
このうち、(1)回転角度については、例えば
図7(A)に示すように、軸心Pに対して本来は回転ガントリ7を角度Sずつ回転させて撮像すべきところ、回転ガントリ7の回転角度がS±αとなっている場合等には、撮像位置が当初想定していた位置からずれてしまうという問題がある。このような角度ずれが発生している場合に、その誤差を修正せずに画像の再構成を行った場合には、再構成後のCT画像が不明瞭となる。
図8は、ファントムを撮像したX線画像データを補正せずに再構成した例である。
図8では、破線で示した領域において、円弧状のアーチファクト(円弧状に白く見える領域)が確認される。このように、回転ガントリ7の回転角度ずれはX線画像データにおいて円弧状のアーチファクトとして確認することができる。
【0052】
また、(2)X線管の位置ずれ、及び(3)FPDの位置ずれについては、例えば
図7(B)に示すように、FPD32の中心から延びるFPD32の検出器表面に対する垂線上に軸心P及びX線管31の出射口が設けられているべきところ、X線管31’やFPD32’のように位置がずれている場合に、その誤差を修正せずに画像の再構成を行った場合には、再構成後のCT画像が不明瞭となる。
図9は、ファントムを撮像したX線画像データを補正せずに再構成した例である。
図9では、破線で示した領域において、画像がぼやけている領域が発生する。このように、X線管及びFPDの位置ずれはX線画像データにおける画像のぼやけとして確認することができる。
【0053】
上記の(1)〜(3)の装置由来のずれのうち、(1)回転ガントリの角度ずれによる影響が、他の(2)、(3)の影響よりも特に大きい。
【0054】
そこで、本実施形態に係る荷電粒子線治療用のCT画像の作成のための画像補正に関しては、(1)回転ガントリの角度ずれについて補正した後に、(2)X線管及び(3)FPDの位置ずれについて補正を行う。その具体的な方法について
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
まず、
図10に示すように、回転ガントリ7を回転させながら、X線画像取得部101に含まれるX線管31及びFPD32により画像を撮像し、これらのX線画像データをX線画像収集部33において収集する(S01)。次に、画像再構成部102において、複数枚のX線画像データからCT画像を再構成する(S02)。次に、画像補正部103において、再構成されたCT画像において、円弧状のアーチファクトが確認できるか否かを判定する(S03)。
【0056】
ここで、円弧状のアーチファクトが確認できない場合には次のステップに進むが、アーチファクトが確認された場合には、角度ずれの補正を行う(S04)。アーチファクトの補正は、アーチファクトの大きさ・形状及び強度に基づいて回転ガントリの角度のずれ(回転角がS±αとなっている場合の±α)を求め、この角度ずれを除去するための補正を行
う。そして、角度ずれを補正した後に、画像再構成部102において
CT画像の再構成を行い(S02)、得られたCT画像において円弧状のアーチファクトが現れているかを確認する(S03)。再構成後のCT画像において円弧状のアーチファクトが消えるまでこれを繰り返すことで、回転ガントリの角度のずれの成分を除去する。
【0057】
次に、円弧状のアーチファクトがなくなったCT画像において、X線管31及びFPD32(検出器)の位置ずれに由来する画像の荒れの有無があるかに基づいてX線管31及びFPD32の位置ずれの有無を確認する(S05)。ここで、X線管及びFPDに由来する位置ずれに由来する画像の荒れが確認された場合には、これらを除去すべくX線画像データの補正を行う(S06)。そして、補正後のX線画像データに基づいて、画像再構成部102において画像を再構成し(S02)、円弧状アーチファクトの有無の確認(S03)、X線管・検出器由来のずれの有無の確認(S05)を行い、これらが全てないことが確認された時点で補正後のCT画像を画像表示装置等に出力すると同時に、回転角度のずれ補正、X線管のずれ補正及び検出器のずれ補正に用いたパラメータを位置校正用データとして位置校正用DB104に格納する。
【0058】
ここで、X線管及び検出器のずれをどのように区別して補正をするかについて、
図11〜15を用いて説明する。
【0059】
図11は、X線管31及びFPD32が正常な位置に配置されている、すなわち、FPD32の受光面において受光面の中心から伸びる垂線L上にX線管31が設けられている場合(理想状態)について説明する図である。
図11では、X線管31とFPD32との間に測定対象物となるファントム90が配置されている。このファントム90の内部には、X線画像データにおいて白色で示される金属91が4つ設けられていて、そのうちの2つは、垂線L上にあるとする。ここで、X線管31とFPD32とが正常な位置に配置されている場合には、垂線L上の2つの金属91が重なった状態で投影されるため、FPD32において撮像されたX線画像データでは、金属91に対応した白色領域Mが3か所に現れるはずである。
【0060】
一方、
図12(A)に示すように、X線管31が本来の位置から矢印方向(
図12(A)では左側)にずれていた場合、垂線L上にあった2つの金属91が重なって投影されなくなるため、FPD32において撮像されたX線画像データでは、金属91に対応した白色領域Mが4か所に発生することになる。このように、FPD32に対してX線管31の位置がずれていた場合には、結果としてX線管31から出射するX線のコーンビームに対するFPD32の受光面の角度が変わってしまう。
【0061】
また、
図12(B)で示すように、FPD32が本来の位置から矢印方向(
図12(B)では右側)に平行にずれていた場合(すなわち上下方向には位置ずれをしていない場合)、X線管31とファントム90との位置関係については正常な場合と変わりがないため、FPD32において撮像されたX線画像データでは、金属91に対応した白色領域Mは3か所となるが、白色領域Mが形成される位置が、本来のFPD32の位置とは異なる。
【0062】
このように、X線管31の位置ずれに応じて発生する画像のずれとFPD32の位置ずれとは相違するので、これらに基づいて、X線管31とFPD32との双方が位置ずれしている場合には、以下の方法でまず位置ずれ量の算出を行う。ここでは、
図13に示すように、X線管31が図示左方向に位置ずれしていて、FPD32が図示右方向に位置ずれしているとする。この場合、
図11,12と同様のファントム90を撮像した結果得られるX線画像データには、金属12に対応した白色領域Mが4か所に現れるはずである。このうち、中央の領域M
1及び領域M
2はX線管31が理想状態であれば重なっているはずの白色領域である。また、
図13で示す破線で囲まれた領域M’は、理想状態で撮像をした場合に白色領域が現れると考えられる領域を示しているが、X線管31及びFPD32の位置ずれに由来して、領域M
3に現れている。したがって、まず領域M
1と領域M
2との間隔に基づいて、X線管31の理想位置からの位置ずれ量を算出し、続いて、領域M’と領域M
3との間隔からX線管31の位置ずれに由来する成分を除去することで、FPD32の位置ずれ量を求めることができる。このように、X線管31及びFPD32の位置ずれ量については、ファントム90を撮像することにより得られるX線画像データに基づいて区別して算出することができる。
【0063】
なお、上記ではFPD32は受光面の角度が変わらない前提での位置ずれについて説明したが、受光面の角度が変わるように位置ずれを起こした場合には、X線管31の位置ずれの場合と同様の事象が起きると考えられる。X線管31の位置ずれ量及びFPD32の位置ずれ量を正確に算出する必要がある場合には、X線管31側が位置ずれした場合とFPD32側が位置ずれした場合とにおける影響をさらに細かく検討して反映させる必要がある。しかしながら、X線管31及びFPD32の位置ずれは、回転ガントリ7の回転角度ずれと比較すると、再構成後のCT画像における画像荒れの影響が軽微であるため、位置ずれ量を正確に算出しなくてもよい場合には、以下の方法によって画像の補正を行うことができる。
【0064】
次に、X線管31及びFPD32の位置ずれ量を算出した後に補正を行う方法について説明する。ここでは、(1)X線管とFPDとが平行な状態での位置ずれに由来する成分の補正、(2)X線管に対するFPDの角度ずれに由来する成分の補正、について説明する。(1)は、理想状態からFPDが平行に移動した場合に発生する可能性がある。また、(2)は、理想状態からX線管が位置ずれした場合及びFPDが上下方向に移動してした場合に発生する可能性がある。
【0065】
まず、(1)X線管とFPDとが平行な状態での位置ずれに由来する成分の補正について説明する。この場合、
図14に示すように、理想状態と比較して各画素において受光されるX線強度は異なるため結果として得られるX線画像データは理想状態のものと異なるが、理想状態において撮像されるべき画像データと比較して全体的に位置がずれている状態である。したがって、位置ずれ量に基づいて各画素の情報をシフトしていく、すなわち、すべての画素において位置ずれ分だけ各画素のX線強度をずらしていくことで、理想状態でのX線画像データを得ることができる。
【0066】
次に(2)X線管に対するFPDの角度ずれに由来する成分の補正について説明する。(1)では各画素において受光されるX線強度は理想状態と位置ずれ状態とで受光位置は異なっていても同じ情報が受光されていたが、(2)の場合では、各画素において受光されるX線強度が理想状態とは異なる。そこで、線形補間の手法を用いてデータの作成を行う。
図15では、理想状態とは異なる位置に配置されたFPD32’において得られたずれ2つの位置において取得されたデータN1、N2に基づいて理想状態におけるFPD32上の位置dにおけるデータDを取得する方法について説明する。データN1、N2は、それぞれFPD32上のP1、P2を通過したX線である。ここで、P1とdとの距離をL1、P2とdとの距離をL2としたときに、以下の数式(1)を用いて、理想状態のFPD32における位置dのデータDを求めることができる。
D=N1×L2/(L1+L2)+N2×L1/(L1+L2)…(1)
これを、理想状態のFPD32上の各画素について計算することで、理想状態のFPD32におけるデータを算出することができる。
【0067】
最後に、上記の補正を行った結果を
図16に示す。
図16は、
図8のファントム画像に対して円弧状アーチファクトの除去に係る補正、すなわち回転ガントリの回転角度の補正を行い、さらに、
図9のファントム画像に対してX線管及び検出器の位置ずれに由来する画像荒れの除去に係る補正を行った後に再構成されたCT画像である。
図8と
図16とを比較すると、円弧状のアーチファクトが除去されている。また、
図9と
図16とを比較すると、円弧状のアーチファクトが除去されている。
図9の破線部分の画像では、白色領域が2重にずれて示されていたのが、
図16では鮮明になっている。このように、上記で示した補正を行うことで、CT画像における画像荒れを補正することができ、その結果荷電粒子線治療用CT画像をより高精度で作成することができる。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る荷電粒子線治療用CT画像作成装置を含む陽子線治療システム1によれば、CT画像に基づいてX線画像データ撮像時の回転ガントリ7の角度の所定の角度に対するずれを検出し、これに基づいてX線画像データを補正してCT画像が再構成されることで、荷電粒子線治療用CT画像が作成される。このため、陽子線治療システム1のような大型且つ高重量な装置であっても、患者の位置合わせを目的として得られた荷電粒子線治療用CT画像において回転ガントリ7の角度のずれに由来するCT画像の乱れを修正することができ、より高精度の荷電粒子線治療用CT画像を作成することができる。そして、この高精度となった荷電粒子線治療用CT画像に基づいて、陽子線照射システム1における陽子線照射時の患者の位置合わせをより正確に行うことができるため、治療計画に基づいて患者の病巣に対して陽子線を正確に照射することができる。
【0069】
また、上記実施形態のように、CT画像に基づいてX線管31の取り付け位置のずれを検出し、これに基づいてX線画像データを補正してCT画像を再構成する構成を備えることで、より高精度のCT画像を作成することができる。
【0070】
さらに、CT画像に基づいてX線検出器であるFPD32の取り付け位置のずれを検出し、これに基づいてX線画像データを補正してCT画像を再構成する構成を備えることで、より高精度のCT画像を作成することができる。
【0071】
そして、再構成されたCT画像では、CT画像の撮像に係る装置の位置ずれのうち、回転ガントリ7の角度のずれに由来する画像の乱れが最も大きくなる。したがって、回転ガントリ7の角度のずれに係る補正した後にX線管31の取り付け位置のずれ及びFPD32の取り付け位置のずれに基づく修正を行う態様とすることで、CT画像の補正の精度がさらに向上する。
【0072】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、荷電粒子線治療用CT画像作成装置が陽子線治療システムに含まれる構成について説明したが、本実施形態に係る荷電粒子線治療用CT画像作成装置は、陽子線治療システムとは別体であってもよい。すなわち、本実施形態に係る荷電粒子線治療用CT画像作成装置は
、陽子線を照射する機構を備えた回転ガントリに対してX線管とX線検出器とが取り付けられた陽子線治療システムにおいて撮像されたCT画像を、荷電粒子線治療用CT画像として用いることができるように補正して出力することを目的とした装置である。したがって
、陽子線を照射する機構を備えた回転ガントリに対してX線管とX線検出器とが取り付けられた陽子線治療システムにおいて撮像されたCT画像を外部から取得しこれを補正するCT画像作成装置としての構成を陽子線治療システムとは別体で設けることが可能である。