(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、複数の配管を接続する管継手が広く用いられている。管継手は、例えば、その構成部材として雄部材と雌部材とを備え、雄部材と雌部材とが接続されることによって、雄部材に接続された配管と雌部材に接続された配管とを接続する。こうした管継手の構造の一例について、管継手の断面構造が示された
図12を参照して説明する。なお、
図12には、雄部材と雌部材とが接続された状態が示されている。
【0003】
図12に示されるように、管継手100の雄部材110は、管T1に接続される基端部を有する雄側外筒部材111を備えている。雄側外筒部材111の内部には、雄側外筒部材111と同心の筒状をなす雄側弁体112と、雄側外筒部材111の先端部に向けて雄側弁体112を付勢するばね113とが収容されている。
【0004】
雌部材120は、管T2に接続される基端部を有する雌側外筒部材121を備えている。雌側外筒部材121の内部には、雌側外筒部材121と同心の筒状をなす雌側弁体122と、雌側外筒部材121の先端部に向けて雌側弁体122を付勢するばね123とが収容されている。加えて、雌側外筒部材121の内部には、基端が雌側外筒部材121に固定され、且つ、雌側弁体122の筒内に通されて先端が膨大した柱状をなす押圧部材124が連結されている。
【0005】
雄部材110と雌部材120とが接続されていない状態では、雄側弁体112が、雄側外筒部材111における管T1とは反対側の開口である雄側連通孔114を閉塞する。このとき、雄側弁体112の外周面に取り付けられたシールリングである弁体シール部材115は、雄側外筒部材111の内周面と雄側弁体112の外周面とに密着し、雄側外筒部材111の内部は、雄側弁体112によって封止される。
【0006】
これに対し、雌側弁体122は、雌側外筒部材121における管T2とは反対側の開口である雌側連通孔125を押圧部材124によって閉塞される。このとき、押圧部材124の外周面に取り付けられたシールリングである雌側弁座シール126は、雌側弁体122の内周面と押圧部材124の外周面とに密着する。同時に、雌側弁体122の外周面に取り付けられたシールリングである雌側シール部材127は、雌側外筒部材121の内周面と雌側弁体122の外周面とに密着する。これによって、雌側外筒部材121の内部は、雌側弁体122によって封止される。
【0007】
雄部材110と雌部材120とが接続されるときには、雄側外筒部材111の先端面と雌側弁体122の先端面とが突き合わせられ、且つ、雄側弁体112の先端面と押圧部材124の先端面とが突き合わせられる。こうした状態から、雄側外筒部材111が雌側外筒部材121の内部に押し込まれる。これにより、押圧部材124の押圧力によって、雄側弁体112が雄側外筒部材111の内部に押し込まれ、且つ、雄側外筒部材111の押圧力によって、雌側弁体122が雌側外筒部材121の内部に押しこまれる。結果として、雄側外筒部材111の内部である流路と、雌側外筒部材121の内部である流路とが接続されて、例えば、管T1から雄部材110に供給された流体が、雌部材120を介して管T2に流れる。
【0008】
このとき、雄側外筒部材111の外周面に取り付けられたシールリングである雄用シール部材116は、雌側外筒部材121の内周面と雄側外筒部材111の外周面とに密着する。同時に、雌側弁体122の外周面に取り付けられた雌側シール部材127は、雌側外筒部材121の内周面と雌側弁体122の外周面とに密着する。結果として、雌側外筒部材121の内部における流体は、雌側弁体122の外周面と雌側外筒部材121の内周面との間を通じて外部に漏れ難くなる。また、雌側外筒部材121の内部における流体は、雌側外筒部材121の内周面と雄側外筒部材111の外周面との間を通じて外部に漏れ難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示における管継手構成部材を具体化した一実施形態について
図1から
図6を参照して説明する。まず、管継手構成部材の1つである雄部材について
図1及び
図2を参照して説明し、次いで、管継手構成部材の1つである雌部材について
図3から
図6を参照して説明する。
【0027】
[雄部材10の構成]
図1に示されるように、雄部材10には、流体の流れる管T1が接続され、雄部材10の中心軸Cに沿った軸方向では、管T1の接続される端が基端として設定され、基端とは反対側の端が先端として設定される。
【0028】
雄部材10は、円筒形状をなす雄側接続筒部材11と、円筒形状をなして雄側接続筒部材11に固定されたシール対象である雄側ケース12とを備えている。雄側接続筒部材11と雄側ケース12との形成材料には、各種の合成樹脂が用いられ、これら雄側接続筒部材11と弁座部材としての雄側ケース12とによって、管継手構成部材における雄側外筒部材13が構成されている。
【0029】
雄側接続筒部材11は、二段の円筒形状をなし、基端側の筒端部である雄側基端部11aには、その雄側基端部11aよりも内径の大きい先端側の筒端部である雄側固定部11bが、雄側基端部11aと一体に形成されている。雄側固定部11bには、雄側固定部11bの外側面から内側面まで貫通する複数の固定孔11cが、雄側固定部11bの周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。
【0030】
雄側ケース12の外周面にて、当該外周面の基端には、雄側ケース12の外周面から径方向の内側に向かって窪んだ環状の雄側リング溝12aが形成されている。雄側リング溝12aには、雄側ケース12の外周面と雄側固定部11bの内周面とに密着するシールリングである雄側外筒シール12bが嵌め込まれている。
【0031】
雄側ケース12の外周面にて、雄側リング溝12aよりも先端側には、雄側ケース12の外側面から径方向に突き出た複数の固定突起12cが形成されている。固定突起12cは、固定孔11cと同じ数だけ形成され、且つ、固定孔11cに対向する位置に形成されている。そして、固定突起12cが固定孔11cに嵌め込まれることにより、雄側ケース12は、雄側固定部11bの内側に固定され、雄側ケース12の外周面と雄側接続筒部材11の内周面とに囲まれる空間は、雄側外筒シール12bによって封止される。
【0032】
雄側ケース12の外周面にて、固定突起12cよりも先端側には、雄側ケース12の外側面から径方向に窪んだ環状の雄側接続溝12dが形成されている。
雄側ケース12の先端には、雄側ケース12の外周面から中心軸Cに向かって張り出した環状をなす雄側弁座12eと、雄側弁座12eによって囲まれた開口である雄側連通孔12fとが形成されている。雄側弁座12eの内側には、雄側ケース12の基端に向かって突き出た環状をなす雄用シール突起12gが形成されている。雄用シール突起12gの内周面である環状周面としての雄側シール面12hは、中心軸Cに対して傾きを有する筒面であり、且つ、基端に向かって内径が次第に大きくなる傾斜面である。
【0033】
雄側ケース12の内側には、有蓋の円筒形状をなすシール保持体としての雄側弁体14が収容されている。また、雄側弁体14の内周面に含まれる段差面と雄側固定部11bの内側底面との間には、雄側弁体14を雄側弁座12eに向けて付勢する付勢部材としての雄側コイルばね15が挟持されている。雄側弁体14の形成材料には、雄側接続筒部材11や雄側ケース12と同様に、各種の合樹樹脂が用いられる。
【0034】
雄側弁体14は、先端に向かって外径が小さくなる多段の筒状をなし、雄側弁体14にて最大の外径は、雄側ケース12の内径よりも若干小さい。雄側弁体14の頂壁には、雄側弁体14の先端側から基端側に向かって窪んだ倒置錘台形状をなす凹部である雄側嵌合部14aが形成されている。雄側弁体14の周壁には、雄側弁体14の外周面から雄側弁体14の内周面まで貫通する複数の弁体連通孔14bが、雄側弁体14の周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。
【0035】
図2に示されるように、雄側弁体14の周壁にて、弁体連通孔14bよりも先端側には、雄側弁体14の外周面から径方向の内側に向かって窪んだ環状をなす凹溝であるシール嵌入溝14cが、雄側弁体14の周方向の全体にわたり形成されている。シール嵌入溝14cでは、中心軸Cの軸方向にて相互に対向する2つの溝側壁のうち、基端側の溝側壁における外径RMoが、雄側弁体14の先端側の溝側壁における外径RMiよりも大きい。
【0036】
シール嵌入溝14cには、雄側弁体14の軸方向を含む平面での断面形状が矩形状をなすシールリングである雄側弁体シール16が嵌め込まれている。雄側弁体シール16の外径は、シール嵌入溝14cを構成する溝側壁のうち、雄側弁体14の基端側の溝側壁における外径RMoと略等しい。なお、
図2では、雄側弁体シール16における外側の角部のうち先端側の角部16aは、雄側シール面12hに押し付けられて潰れている。
【0037】
そして、雄側コイルばね15の付勢力に抗した力を雄側弁体14が受けると、雄側弁体シール16の角部16aは、雄側シール面12hに当接する着座位置から雄側接続筒部材11に向かって移動する。また、雄側コイルばね15の付勢力に抗した力が雄側弁体14から解除されると、雄側弁体シール16の角部16aは、雄側シール面12hに当接しない脱座位置から上記着座位置に戻る。
【0038】
[雌部材20の構成]
以下、雌部材20の構成について、
図3から
図6を参照して説明する。なお、雌部材20は回転対称をなす構成ではないため、弁座の固定構造を説明する上で好適な
図3を主に参照し、
図3の補助として
図4を参照しながら説明する。
【0039】
図3に示されるように、雌部材20には、流体の流れる管T2が接続され、雌部材20の中心軸Cに沿った軸方向では、管T2の接続される端が基端として設定され、基端とは反対側の端が先端として設定される。
【0040】
雌部材20は、円筒形状をなす雌側接続筒部材21と、円筒形状をなして雌側接続筒部材21に固定された雌側ケース22とを備えている。雌側接続筒部材21と雌側ケース22との形成材料には、雄側接続筒部材11や雄側ケース12と同様に、各種の合成樹脂が用いられ、これら雌側接続筒部材21と雌側ケース22とによって、雌側外筒部材23が構成されている。
【0041】
雌側接続筒部材21は、二段の円筒形状をなし、基端側の円筒部である雌側基端部21aには、その雌側基端部21aよりも内径の大きい先端側の円筒部である雌側固定部21bが、雌側基端部21aと一体に形成されている。
【0042】
雌側接続筒部材21の内周面には、雌側基端部21aの先端にて、
図3の紙面とは直交する方向に延びる板状をなす1つの連結部21cが形成されている(
図4参照)。連結部21cは、雌側基端部21aの径方向における全体にわたる板状をなし、雌側接続筒部材21と一体に形成されている(
図4参照)。連結部21cの径方向における略中央には、一つの外筒嵌合軸部21eが連結され、外筒嵌合軸部21eは、中心軸Cの軸方向に沿って延びて雌側固定部21bの軸方向の全体にわたる多段の円柱状をなしている。
【0043】
雌側固定部21bの外周面には、雌側固定部21bの外周面から内周面まで貫通する複数の固定孔21dが、雌側固定部21bの周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。雌側ケース22の外周面にて、当該外周面の基端には、中心軸Cに向かって張り出した環状をなす雌側フランジ22aが形成されている。雌側フランジ22aの雌側固定部21b側には、軸方向に沿って雌側固定部21bに向けて延びる環状のフランジ溝形成部22a1が形成されている。フランジ溝形成部22a1には、フランジ溝形成部22a1の外周面から径方向の内側に窪む環状のフランジ溝22a2が形成されている。フランジ溝22a2には、雌側固定部21bの内側面に密着する雌側外筒シール22bが挟持されている。
【0044】
環状をなす雌側フランジ22aの内側には、
図3の紙面とは直交する方向に延びる板状をなす複数の連結部22cが形成されている(
図4参照)。連結部22cは、周方向に沿って所定の隙間を空けて等配されている(
図4参照)。複数の連結部22cの各々における内側の端部には、一つのケース嵌合筒部22dが連結され、ケース嵌合筒部22dは、中心軸Cの軸方向に沿って延びる円筒形状をなしている。ケース嵌合筒部22dには、軸方向の先端から基端に向けて延びる複数のスリット部が、周方向に沿って所定の間隔を空けて等配されている。ケース嵌合筒部22dの内径は、外筒嵌合軸部21eの外径と略同じ大きさであって、これらケース嵌合筒部22dと外筒嵌合軸部21eとは、中心軸Cが同心となる円筒形状をなす。そして、外筒嵌合軸部21eは、ケース嵌合筒部22dの基端からケース嵌合筒部22dの内部に嵌め込まれ、雌側ケース22は、雌側接続筒部材21に対し径方向にて位置決めされている。ケース嵌合筒部22dの先端には、複数の係止突起22d1が、ケース嵌合筒部22dの周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。係止突起22d1の外側面は、係止突起22d1の先端から基端に向かって径方向に拡がるテーパ面である。
【0045】
雌側ケース22の外周面にて、雌側フランジ22aよりも先端側には、雌側ケース22の外側面から径方向に突き出た複数の固定突起22eが形成されている。固定突起22eは、固定孔21dと同じ数だけ形成され、且つ、固定孔21dに対向する位置に形成されている。そして、固定突起22eが固定孔21dに嵌め込まれることにより、雌側ケース22は、雌側固定部21bの内側に固定され、雌側ケース22の外周面と雌側接続筒部材21の内周面とに囲まれる空間は、雌側外筒シール22bによって封止される。
【0046】
雌側ケース22の内周面は、先端に向けて拡開された多段の周面を含み、雌側ケース22の基端から軸方向に沿って延びる弁体収容周面22S1と、弁体収容周面22S1から拡開されたシール収容周面22S2とを備えている。弁体収容周面22S1の内径は、雄側ケース12の外径よりも若干大きく、雄側ケース12の軸方向に沿った移動を許容する。シール収容周面22S2の一部には、中心軸Cを中心とした環状をなす溝形成部材24が、弁体収容周面22S1から離れた位置に嵌め込まれている。溝形成部材24の外径は、シール収容周面22S2の内径と略等しく、且つ、溝形成部材24の内径は、弁体収容周面22S1の内径と略等しい。そして、シール収容周面22S2の内側には、弁体収容周面22S1とシール収容周面22S2との段差からなる段差面22S3と、溝形成部材24における基端側の端面とによって挟まれた溝である環状をなすシール嵌入溝22fが形成されている。
【0047】
シール嵌入溝22fには、中心軸Cを中心とした環状をなすシールリングである雄用シール部材25が嵌め込まれている。雄用シール部材25の内径は、溝形成部材24の内径や弁体収容周面22S1の内径よりも小さく、雄用シール部材25の内縁は、シール嵌入溝22fから内側に突き出ている。
【0048】
雌側ケース22の内周面にて、シール嵌入溝22fよりも先端側には、雌側ケース22の内周面から中心軸C側に向かって突き出た環状をなす雌側接続突起22gが形成されている。
【0049】
図5に示されるように、雌側ケース22の内側にて、ケース嵌合筒部22dの外側には、先端側の開口が塞がれた円筒形状をなすシール保持体としての雌側弁座部材26が外嵌されている。雌側弁座部材26は、外筒嵌合軸部21eやケース嵌合筒部22dと同心の円筒形状をなして、中心軸Cに沿った軸方向にて、ケース嵌合筒部22dの基端から段差面22S3まで延びている。雌側弁座部材26の頂壁には、雌側弁座部材26の基端側から雌側弁座部材26の先端側に向かって突き出た錘台形状をなす雌側嵌合部26aが形成されている。
【0050】
雌側弁座部材26の基端側には、雌側弁座部材26の内周面から雌側弁座部材26の外周面まで貫通する複数の固定嵌合孔26bが形成されている。固定嵌合孔26bは、ケース嵌合筒部22dの係止突起22d1と同じ数だけ、且つ、係止突起22d1と対向する位置に形成されている。そして、複数の固定嵌合孔26bの各々に係止突起22d1が嵌め込まれることによって、雌側弁座部材26は、雌側接続筒部材21と雌側ケース22とに対し、径方向と軸方向とに位置決めされている。
【0051】
雌側弁座部材26にて固定嵌合孔26bよりも先端側には、雌側弁座部材26の内周面から外周面まで貫通する複数の押圧弁座連通孔26cが形成されている。複数の押圧弁座連通孔26cは、中心軸Cに沿って延びる矩形孔であって、雌側弁座部材26の周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。
【0052】
雌側弁座部材26の外周面にて押圧弁座連通孔26cよりも先端側には、雌側弁座部材26の外周面から径方向の外側に向かって突き出た環状をなす凸溝であるシール嵌入溝26dが、雌側弁座部材26の周方向の全体にわたり形成されている。
【0053】
図6に示されるように、シール嵌入溝26dは、中心軸Cに沿った方向である軸方向にて相互に対向する2つの溝側壁を有し、基端側の溝側壁における外径RFoは、雄側弁体14の先端側の溝側壁における外径RFiよりも小さい。
【0054】
シール嵌入溝26dには、雌側弁座部材26の軸方向を含む平面での断面形状が矩形状をなすシールリングである雌側弁座シール27が嵌め込まれている。雌側弁座シール27の外径は、シール嵌入溝26dを構成する溝側壁のうち、雌側弁座部材26の先端側の溝側壁における外径RFoと略等しく、雌側弁座部材26の基端側の溝側壁における外径RFiよりも大きい。
【0055】
雌側ケース22の内側、且つ、雌側弁座部材26の外側には、先端側の開口の一部が塞がれた円筒形状をなすシール対象としての雌側弁体28が収容されている。また、雌側弁体28の内部における先端面と雌側ケース22の底面との間には、雌側弁体28を雌側弁座部材26の先端に向けて付勢する雌側コイルばね29が挟持されている。
【0056】
雌側弁体28は、雌側ケース22の内径よりも若干小さい外径を有して雌側ケース22と同心の円筒形状をなしている。雌側弁体28の頂壁は、雌側弁体28の外周面から中心軸Cに向かって張り出す環状をなす弁体フランジ28bを備え、雌側弁体28の頂壁には、弁体フランジ28bによって囲まれた円形孔である雌側連通孔28cが形成されている。雌側連通孔28cは、弁体フランジ28bの頂面から基端に向けて縮径された多段の円形孔であって、雌側連通孔28cの内周面には、その内周面の周方向の全体にわたり径方向の内側に突出する雌側シール突起28dが形成されている。
【0057】
雌側シール突起28dにおける先端側の側面は、雌側弁座シール27における外側の角部のうち基端側の角部27aが押し付けられる環状周面としての雌側シール面28eである。雌側シール面28eは、中心軸Cに対して傾きを有する筒面であり、且つ、基端に向かって内径が次第に小さくなる傾斜面である。
【0058】
雌側連通孔28cの内径のうち、弁体フランジ28bの頂面での内径は、シール嵌入溝26dの溝側壁の外径うち、大径である外径RFoよりも若干大きく、雌側弁座シール27が軸方向に沿って挿通される大きさである。一方で、雌側シール面28eの内径のうち、基端側の内径は、シール嵌入溝26dの溝側壁のうち、大径である外径RFoよりも若干小さく、且つ、小径である外径RFiよりも若干大きい。すなわち、雌側シール面28eの内径のうち基端側の内径は、シール嵌入溝26dの溝側壁のうち、小径である基端側の溝側壁が挿通される大きさであって、且つ、雌側弁座シール27が挿通できない大きさである。
【0059】
そして、雌側コイルばね29の付勢力に抗した力を雌側弁体28が受けると、雌側弁座シール27の角部27aは、雌側シール面28eに当接する着座位置から雌側接続筒部材21に向かって移動する。また、雌側コイルばね29の付勢力に抗した力が雌側弁体28から解除されると、雌側弁座シール27の角部27aは、雌側シール面28eに当接しない脱座位置から上記着座位置に戻る。
【0060】
この際に、雌側弁体28の筒内に雌側弁座部材26が通されて、雌側弁体28の移動する方向が雌側弁座部材26の延びる方向と略平行になる。また、雌側弁体28を付勢する雌側コイルばね29が雌側弁座部材26の周囲に配置されて、雌側コイルばね29による付勢力の作用方向が雌側弁座部材26の延びる方向と略平行になる。それゆえに、雌側弁体28の移動方向と雌側コイルばね29による付勢力の作用方向とが、雌側弁座部材26によって軸方向に整合される。
【0061】
なお、雌側弁座シール27と当接する雌側シール面28eは、雌側連通孔28cの内周面にて軸方向の途中に形成されている。それゆえに、雌側シール面28eと雌側弁座シール27とが当接するとき、雌側弁座シール27は、雌側弁体28の先端面よりも軸方向の基端側に配置される。結果として、雌側弁座部材26の収容される空間が雌側弁体28の筒内に形成されるから、こうした構成を有しない弁機構に比べて、弁機構の占有する空間の大きさを小さくすることが可能にもなる。
【0062】
弁体フランジ28bの外周面には、雌側弁体28の外周面から径方向の内側に向かって窪んだ環状をなすシール嵌入溝28fが形成されている。シール嵌入溝28fには、中心軸Cを中心とした環状をなすシールリングである雌側シール部材30が嵌め込まれている。雌側シール部材30の外径は、雌側ケース22の外径よりも大きく、雌側シール部材30がシール嵌入溝28fに収容されることによって、雌側ケース22の内周面と雌側弁体28の外周面とに密着している。
【0063】
[管継手の作用]
次に、雄部材10と雌部材20との接続について
図7を参照して説明する。
雄部材10と雌部材20とが接続されるときには、まず、
図7に示されるように、雄部材10と雌部材20とは、互いの中心軸Cが一致し、且つ、雄部材10における雄側連通孔12fと雌部材20における雌側連通孔28cの開口とが相互に対向する位置に配置される。そして、雄部材10の先端が雌部材20に近付けられることによって、雄側ケース12が、雌側ケース22の内側に差し込まれる。これにより、雄側嵌合部14aに雌側嵌合部26aが嵌め込まれ、同時に、雄側弁座12eの先端面と弁体フランジ28bの先端面とが接する。
【0064】
次いで、雄部材10が、雌側コイルばね29の付勢力を超える力で雌部材20の基端側に押し込まれると、雌側弁座部材26の押圧によって、雄側弁体14は雄側ケース12の基端側に向けて着座位置から押し込まれる。同時に、雄側ケース12の押圧によって、雌側弁体28は、雌側ケース22の基端側に向けて着座位置から押し込まれる。そして、雌側シール突起28dの雌側シール面28eから雌側弁座シール27が離れることによって、雌部材20における雌側連通孔28cが開放される。また、雄用シール突起12gの雄側シール面12hから雄側弁体シール16が離れることによって、雄部材10における雄側連通孔12fが開放される。
【0065】
次いで、雄部材10がさらに雌部材20の基端側に押し込まれると、雄側接続溝12dにおける先端側の溝側壁に雌側接続突起22gが嵌め込まれ、雌側弁体28は最も雌側ケース22の基端側の位置である開弁位置にまで押し込まれる。同時に、雄側弁体14は、最も雄側ケース12の基端側の位置である脱座位置にまで押し込まれる。これにより、雄部材10の内部に形成された流体の流路と、雌部材20の内部に形成された流体の流路とが接続される。このように雄部材10の流路と雌部材20の流路とが接続された状態で、例えば、外部ポンプが駆動されることにより管T1から管T2に向かって流体が流される。この際に、雄側弁座12eの先端面と弁体フランジ28bの先端面との間の隙間を通じて、雌側ケース22の内周面と雄側ケース12の外周面との間に流体が流れ込む。そして、雌側ケース22の内周面と雄側ケース12の外周面との間に流れ込んだ流体は、管継手の外部への漏れを雄用シール部材25によって抑えられる。
【0066】
雄部材10と雌部材20との接続が解除されるときには、雄部材10が雌部材20から抜き出されることによって、雄側接続溝12dから雌側接続突起22gが外される。この際に、雄側コイルばね15の付勢力は雄側弁体14に作用し続け、また、雌側コイルばね29の付勢力は雌側弁体28に作用し続ける。そのため、雌側嵌合部26aが雄側嵌合部14aに嵌め込まれ、且つ、雄側弁座12eの先端面と弁体フランジ28bの先端面とが接した状態は維持される。また、雄側コイルばね15の付勢力によって、雄側弁体14は脱座位置から着座位置に向けて移動し、且つ、雌側コイルばね29の付勢力によって、雌側弁体28は脱座位置から着座位置に向けて移動する。そして、雄側弁体シール16が雄側シール面12hに押し付けられることで、雄部材10の雄側連通孔12fが閉塞される。また、雌側弁座シール27が雌側シール面28eに押し付けられることで、雌部材20の雌側連通孔28cが閉塞される。
【0067】
このように、雄側弁体シール16が雄側シール面12hから離れることによって雄側連通孔12fが開放され、また、雄側弁体シール16が雄側シール面12hに押し付けられることによって雄側連通孔12fが閉塞される。同様に、雌側弁座シール27が雌側シール面28eから離れることによって雌側連通孔28cが開放され、また、雌側弁座シール27が雌側シール面28eから離れることによって雌側連通孔28cが閉塞される。
【0068】
この際に、雄側シール面12hは、雄側コイルばね15の付勢方向に抗した方向に対して傾いている。それゆえに、雄側弁体14が脱座位置に配置される際には、雄側弁体14に対する付勢方向と雄側シール面12hとが平行である構成に比べて、雄側弁体シール16が雄側シール面12hに対して擦れることが抑えられる。それゆえに、雄側弁体14の移動する方向と雄側シール面12hとが平行である構成に比べて、雄側弁体14を脱座位置に戻すことに必要とされる力が抑えられる。
【0069】
同様に、雌側シール面28eは、雌側コイルばね29の付勢方向に抗した方向に対して傾いている。それゆえに、雌側弁体28が脱座位置に配置される際には、雌側弁体28に対する付勢方向と雌側シール面28eとが平行である構成に比べて、雌側弁座シール27が雌側シール面28eに対して擦れることが抑えられる。それゆえに、雌側弁体28の移動する方向と雌側シール面28eとが平行である構成に比べて、雌側弁体28を脱座位置に戻すことに必要とされる力が抑えられる。
【0070】
また、雄側コイルばね15の付勢方向に対して雄側シール面12hが傾いているため、着座位置に向けて雄側弁体14を付勢する力の一部は、雄側シール面12hに対して雄側弁体シール16を押し付ける力に変換される。それゆえに、雄側弁体14が着座位置に配置される際には、雄側弁体14に対する付勢方向と雄側シール面12hとが平行である構成に比べて、雄側シール面12hと雄側弁体シール16との密着性が失われることが抑えられる。しかも、雄側弁体シール16の断面が矩形状をなすため、雄側弁体14が着座位置に配置される際には、雄側弁体シール16の角部16aが雄側シール面12hに押し付けられる。それゆえに、雄側弁体シール16の断面が単なる円形状である場合に比べて、雄側弁体シール16の潰れる量は大きくなる。結果として、雄部材10における流体の封止性が高められる。
【0071】
同様に、雌側コイルばね29の付勢方向に対して雌側シール面28eが傾いているため、着座位置に向けて雌側弁体28を付勢する力の一部は、雌側シール面28eに対して雌側弁座シール27を押し付ける力に変換される。それゆえに、雌側弁体28が着座位置に配置される際には、雌側弁体28に対する付勢方向と雌側シール面28eとが平行である構成に比べて、雌側シール面28eと雌側弁座シール27との密着性が失われることが抑えられる。しかも、雌側弁座シール27の断面が矩形状をなすため、雌側弁体28が着座位置に配置される際には、雌側弁座シール27の角部27aが雌側シール面28eに押し付けられる。それゆえに、雌側弁座シール27の断面が単なる円形状である場合に比べて、雌側弁座シール27の潰れる量は大きくなる。これにより、雌部材20における流体の封止性が高められる。
【0072】
結果として、雄側弁体シール16による封止性が失われることを抑え、且つ、雄側弁体14の操作に必要な力を小さくすることが可能となる。また、雌側弁座シール27による封止性が失われることを抑え、且つ、雌側弁体28の操作に必要な力を小さくすることが可能となる。
【0073】
なお、シール嵌入溝14cでは、基端側の溝側壁における外径RMoが、先端側の溝側壁における外径RMiよりも大きい。そして、雄側弁体シール16の外径は、相対的に小さい上記外径RMoよりも大きく、且つ、相対的に大きい上記外径RMoと略等しい。このような構成であれば、雄側弁体シール16は、雄側シール面12hと向かい合う対向側でシール嵌入溝14cからはみ出す一方で、対向側とは反対側ではシール嵌入溝14cの溝側壁に覆われる。それゆえに、雄側弁体シール16が雄側シール面12hに押し付けられた状態では、シール嵌入溝14cの全体から雄側弁体シール16がはみ出す構成に比べて、雄側弁体シール16の配置の安定性が高められる。
【0074】
同様に、シール嵌入溝26dでは、先端側の溝側壁における外径RFoが、基端側の溝側壁における外径RFiよりも大きい。そして、雌側弁座シール27の外径は、相対的に小さい上記外径RFiよりも大きく、且つ、相対的に大きい上記外径RFoと略等しい。このような構成であれば、雌側弁座シール27は、雌側シール面28eと向かい合う対向側でシール嵌入溝26dからはみ出す一方で、対向側とは反対側ではシール嵌入溝26dの溝側壁に覆われる。それゆえに、雌側弁座シール27が雌側シール面28eに押し付けられた状態では、シール嵌入溝26dの全体から雌側弁座シール27がはみ出す構成に比べて、雌側弁座シール27の配置の安定性が高められる。
【0075】
以上説明したように、上記実施形態によれば以下に列記する効果が得られる。
(1)雄側弁体14を付勢する方向と雄側シール面12hとが平行である構成に比べて、雄側弁体14が着座位置に配置される際に、雄側シール面12hと雄側弁体シール16との密着性が失われることが抑えられる。
【0076】
また、雄側弁体14の移動する方向と雄側シール面12hとが平行である構成に比べて、雄側弁体14を脱座位置に配置することに必要とされる力が抑えられる。結果として、雄側弁体シール16による封止性が失われることを抑え、且つ、雄側弁体14の操作に必要な力を小さくすることが可能となる。
【0077】
(2)雌側弁体28を付勢する方向と雌側シール面28eとが平行である構成に比べて、雌側弁体28が着座位置に配置される際に、雌側シール面28eと雌側弁座シール27との密着性が失われることが抑えられる。
【0078】
また、雌側弁体28の移動する方向と雌側シール面28eとが平行である構成に比べて、雌側弁体28を脱座位置に配置することに必要とされる力が抑えられる。結果として、雌側弁座シール27による封止性が失われることを抑え、且つ、雌側弁体28の操作に必要な力を小さくすることが可能となる。
【0079】
(3)弁体フランジ28bの内周面のうち、軸方向における中間の部位に雌側シール突起28dが形成されるため、雌側弁座部材26の収容される空間を雌側弁体28の筒内に形成することが可能になる。そして、雌側弁体28での軸方向における端部に雌側シール突起が形成される構成に比べて、弁機構の占有する空間の大きさを小さくすることが可能にもなる。
【0080】
(4)雌側コイルばね29の付勢力が作用する方向と雌側弁体28の移動する方向とが、柱状をなす雌側弁座部材26によって整合される。それゆえに、雌側弁座シール27による封止性が失われることを抑え、且つ、雌側弁体28の操作に必要な力を小さくすることの確実性が高められる。
【0081】
(5)シール嵌入溝14cに嵌め込まれた雄側弁体シール16は、雄側シール面12hと向かい合う対向側で溝側壁からはみ出す一方で、対向側とは反対側では溝側壁に覆われている。それゆえに、雄側弁体シール16がシール嵌入溝14cの全体からはみ出す構成に比べて、雄側シール面12hに押し付けられた状態での雄側弁体シール16の配置の安定性が高められる。
【0082】
(6)シール嵌入溝26dに嵌め込まれた雌側弁座シール27は、雌側シール面28eと向かい合う対向側で溝側壁からはみ出す一方で、対向側とは反対側では溝側壁に覆われている。それゆえに、雌側弁座シール27がシール嵌入溝26dの全体からはみ出す構成に比べて、雌側シール面28eに押し付けられた状態での雌側弁座シール27の配置の安定性が高められる。
【0083】
(7)雄側弁体シール16ではその角部が雄側シール面12hに押し付けられるため、雄側弁体シール16の断面が円形状をなす構成に比べて、雄側弁体シール16が雄側シール面12hに押し付けられたときに、その潰れ量が大きくなる。結果として、雄側弁体シール16を介した雄側弁座12eと雄側弁体14との封止性が高められる。
【0084】
(8)雌側弁座シール27ではその角部が雌側シール面28eに押し付けられるため、雌側弁座シール27の断面が円形状をなす構成に比べて、雌側弁座シール27が雌側シール面28eに押し付けられたときに、その潰れ量が大きくなる。結果として、雌側弁座シール27を介した雌側弁座部材26と雌側弁体28との封止性が高められる。
【0085】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・
図8に示されるように、雄部材におけるシール部材は、雄側弁体14の先端面の全体を覆うシール部材51であってもよい。要するに、付勢部材の付勢する方向に対して斜めに傾いたシール面が設けられ、雄部材におけるシール部材は、そのシール面と当接する構造であればよい。こうしたシール部材51であっても、雄側シール面12hに対してシール部材51の押圧と非押圧とが切り替えられることによって、雄側連通孔12fの閉塞と開放とが切り替えられる。
【0086】
・
図9に示されるように、雌部材におけるシール部材は、雌側弁座部材26の先端の全体を覆うシール部材61であってもよい。要するに、付勢部材の付勢する方向に対して斜めに傾いたシール面が設けられ、雌部材におけるシール部材は、そのシール面と当接する構造であればよい。こうしたシール部材61であっても、雌側シール面28eに対してシール部材61の押圧と非押圧とが切り替えられることによって、雌側連通孔28cの閉塞と開放とが切り替えられる。
【0087】
・雄部材において、シール部材は雄側ケース12に設けられ、シール面は雄側弁体に形成されてもよい。
例えば、
図10に示されるように、雄側弁座12eの内側面に環状をなすシール部材52が取り付けられ、且つ、雄側弁体14のうちでシール部材52と対向する部位に、軸方向に対して傾いた筒面であるシール面14hが形成されてもよい。
【0088】
・雌部材において、シール部材は雌側弁体28に設けられ、シール面は雌側弁座部材26に形成されてもよい。
例えば、
図11に示されるように、雌側弁体28の内周面に環状をなすシール部材62が取り付けられ、且つ、雌側弁座部材26の外周面における先端部に、軸方向に対して傾いた筒面であるシール面26hが形成されてもよい。
【0089】
・雄側弁体シール16の断面の形状や雌側弁座シール27の断面の形状は、矩形状以外の多角形状、円形状、L字形状等、矩形状以外の形状であってもよい。
・雄側弁体シール16は、断面がU字形状をなすシールリングであってもよい。この際に、雄側弁体シール16に形成される窪みは、雄部材10の基端を向くことが好ましい。こうした構成によれば、雄部材10が雌部材20と接続されていない状態で、雄側弁体シール16の窪みに対し、雄側弁体14の内部を通して流体が入り込む。結果として、雄側弁体シール16の窪みに貯められる流体の圧力によって、雄側連通孔12fの内周面と雄側弁体シール16との密着性が高められ、ひいては、雄部材10そのものの封止性が高められる。
【0090】
・雌側弁座シール27は、断面がU字形状をなすシールリングであってもよい。この際に、雌側弁座シール27に形成される窪みは、雌部材20の基端を向くことが好ましい。こうした構成によれば、雌部材20が雄部材10と接続されていない状態で、雌側弁座シール27の窪みに対し、雌側弁体28の内部を通して流体が入り込む。結果として、雌側弁座シール27の窪みに貯められる流体の圧力によって、雌側連通孔28cの内周面と雌側弁座シール27との密着性が高められ、ひいては、雌部材20そのものの封止性が高められる。
【0091】
・ケース嵌合筒部22dには、スリット部が形成されていなくともよい。
・本開示の管継手は、雄部材と雌部材とを1つずつ備える管継手に限らず、雄部材と雌部材との対を複数備え、且つ、複数の雄部材が1つの部材に取り付けられることによって、3以上の配管を接続することのできる管継手に適用することもできる。