(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、複数の配管を接続する管継手が広く用いられている。管継手は、例えば、その構成部材として雄部材と雌部材とを備え、雄部材と雌部材とが接続されることによって、雄部材に接続された配管と雌部材に接続された配管とを接続する。こうした管継手の構造の一例について、管継手の断面構造が示された
図10を参照して説明する。なお、
図10には、雄部材と雌部材とが接続された状態が示されている。
【0003】
図10に示されるように、管継手100の雄部材110は、管T1に接続される基端部を有する雄側外筒部材111を備えている。雄側外筒部材111の内部には、雄側外筒部材111と同心の筒状をなす雄側弁体112と、雄側外筒部材111の先端部に向けて雄側弁体112を付勢するばね113とが収容されている。
【0004】
雌部材120は、管T2に接続される基端部を有する雌側外筒部材121を備えている。雌側外筒部材121の内部には、雌側外筒部材121と同心の筒状をなす雌側弁体122と、雌側外筒部材121の先端部に向けて雌側弁体122を付勢するばね123とが収容されている。加えて、雌側外筒部材121の内部には、基端が雌側外筒部材121に固定され、且つ、雌側弁体122の筒内に通されて先端が膨大した柱状をなす弁座部材124が連結されている。
【0005】
雄部材110と雌部材120とが接続されていない状態では、雄側弁体112が、雄側外筒部材111における管T1とは反対側の開口である雄側連通口を閉塞する。このとき、雄側弁体112の外周面に取り付けられたシールリングである弁体シール部材114は、雄側外筒部材111の内周面と雄側弁体112の外周面とに密着し、雄側外筒部材111の内部は、雄側弁体112によって封止される。
【0006】
これに対し、雌側弁体122は、雌側外筒部材121における管T2とは反対側の開口である雌側連通口を弁座部材124によって閉塞する。このとき、弁座部材124の外周面に取り付けられたシールリングである雌側弁座シール部材125は、雌側弁体122の内周面と弁座部材124の外周面とに密着する。同時に、雌側弁体122の外周面に取り付けられたシールリングである雌側シール部材126は、雌側外筒部材121の内周面と雌側弁体122の外周面とに密着する。これによって、雌側外筒部材121の内部は、雌側弁体122によって封止される。
【0007】
雄部材110と雌部材120とが接続されるときには、雄側外筒部材111の先端面と雌側弁体122の先端面とが突き合わせられ、且つ、雄側弁体112の先端面と弁座部材124の先端面とが突き合わせられる。こうした状態から、雄側外筒部材111が雌側外筒部材121の内部に押し込まれる。これにより、弁座部材124の押圧力によって、雄側弁体112が雄側外筒部材111の内部に押し込まれる。結果として、雄側外筒部材111の内部である流路と、雌側外筒部材121の内部である流路とが接続されて、例えば、管T1から雄部材110に供給された流体が、雌部材120を介して管T2に流れる。
【0008】
このとき、雄側外筒部材111の外周面に取り付けられたシールリングである雄用シール部材115は、雌側外筒部材121の内周面と雄側外筒部材111の外周面とに密着する。同時に、雌側弁体122の外周面に取り付けられた雌側弁座シール部材125は、雌側外筒部材121の内周面と雌側弁体122の外周面とに密着する。結果として、雌側外筒部材121の内部における流体は、雌側弁体122の外周面と雌側外筒部材121の内周面との間を通じて外部に漏れ難くなる。また、雌側外筒部材121の内部における流体は、雌側外筒部材121の内周面と雄側外筒部材111の外周面との間を通じて外部に漏れ難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本開示における管継手構成部材を具体化した一実施形態について
図1から
図5を参照して説明する。まず、管継手構成部材である雌部材について
図1から
図3を参照して説明する。なお、雌部材10は回転対称をなす構成ではないため、弁座の固定構造を説明する上で好適な
図1を主に参照し、
図1の補助として
図2を参照しながら説明する。また、雌部材と対となる雄部材の構成は、弁体の収容される外筒部材の一端に弁座が形成される点において、上記従来の雄部材の構成と同様である。そのため以下では、雄部材の構成についての説明を割愛する。
【0023】
[雌部材10の構成]
図1に示されるように、管継手構成部材としての雌部材10には、流体の流れる管T2が接続され、雌部材10の中心軸Cに沿った軸方向では、管T2の接続される端が基端として設定され、基端とは反対側の端が先端として設定される。
【0024】
雌部材10は、円筒状をなす第1筒部としての接続筒部材11と、円筒状をなして接続筒部材11に固定された第2筒部としてのケース12とを備えている。接続筒部材11とケース12との形成材料には、各種の合成樹脂が用いられ、これら接続筒部材11とケース12とによって、外筒部材13が構成されている。
【0025】
接続筒部材11は、二段の円筒状をなし、基端側の円筒部である基端部11aには、その基端部11aよりも内径の大きい先端側の円筒部である固定部11bが、基端部11aと一体に形成されている。
【0026】
接続筒部材11の内周面には、雌側基端部11aの先端にて、
図1の紙面とは直交する方向に延びる板状をなす第1連結部としての1つの連結部11cが形成されている(
図2参照)。連結部11cは、雌側基端部11aの径方向における全体にわたる板状をなし、接続筒部材11と一体に形成されている(
図2参照)。連結部11cの径方向における略中央には、第1筒側嵌合部としての一つの外筒嵌合軸部11eが連結され、外筒嵌合軸部11eは、中心軸Cの軸方向に沿って延びて固定部11bの軸方向の全体にわたる多段の円柱状をなしている。
【0027】
固定部11bの外周面には、固定部11bの外周面から内周面まで貫通する複数の固定孔11dが、固定部11bの周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。ケース12の外周面にて、当該外周面の基端には、中心軸Cに向かって張り出した環状をなすフランジ12aが形成されている。フランジ12aの固定部11b側には、軸方向に沿って固定部11bに向けて延びる環状のフランジ溝形成部12a1が形成されている。フランジ溝形成部12a1には、フランジ溝形成部12a1の外周面から径方向の内側に窪む環状のフランジ溝12a2が形成されている。フランジ溝12a2には、固定部11bの内側面に密着する外筒シール12bが挟持されている。
【0028】
環状をなすフランジ12aの内側には、
図1の紙面とは直交する方向に延びる板状をなす第2連結部としての複数の連結部12cが形成されている(
図2参照)。連結部12cは、周方向に沿って所定の隙間を空けて等配されている(
図2参照)。複数の連結部12cの各々における内側の端部には、第2筒側嵌合部としての一つのケース嵌合筒部12dが連結され、ケース嵌合筒部12dは、中心軸Cの軸方向に沿って延びる円筒形状をなしている。ケース嵌合筒部12dには、軸方向の先端から基端に向けて延びる複数のスリット部が、周方向に沿って所定の間隔を空けて等配されている。ケース嵌合筒部12dの内径は、外筒嵌合軸部11eの外径と略同じ大きさであって、これらケース嵌合筒部12dと外筒嵌合軸部11eとは、中心軸Cが同心となる円筒形状をなす。そして、外筒嵌合軸部11eは、ケース嵌合筒部12dの基端からケース嵌合筒部12dの内部に嵌め込まれ、ケース12は、接続筒部材11に対し径方向にて位置決めされている。本実施形態では、ケース嵌合筒部12dと上記外筒嵌合軸部11eとが筒側嵌合部を構成している。
【0029】
ケース嵌合筒部12dの先端には、複数の係止突起12d1が、ケース嵌合筒部12dの周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。係止突起12d1の外側面は、係止突起12d1の先端から基端に向かって径方向に拡がるテーパ面である。
【0030】
ケース12の外周面にて、フランジ12aよりも先端側には、ケース12の外側面から径方向に突き出た複数の固定突起12eが形成されている。固定突起12eは、固定孔11dと同じ数だけ形成され、且つ、固定孔11dに対向する位置に形成されている。そして、固定突起12eが固定孔11dに嵌め込まれることにより、ケース12は、固定部11bの内側に固定され、ケース12の外周面と接続筒部材11の内周面とに囲まれる空間は、外筒シール12bによって封止される。
【0031】
ケース12の内周面は、先端に向けて拡開された多段の周面を含み、ケース12の基端から軸方向に沿って延びる弁体収容周面12S1と、弁体収容周面12S1から拡開されたシール収容周面12S2とを備えている。シール収容周面12S2の一部には、中心軸Cを中心とした環状をなす溝形成部材14が、弁体収容周面12S1から離れた位置に嵌め込まれている。溝形成部材14の外径は、シール収容周面12S2の内径と略等しく、且つ、溝形成部材14の内径は、弁体収容周面12S1の内径と略等しい。そして、シール収容周面12S2の内側には、弁体収容周面12S1とシール収容周面12S2との段差からなる段差面12S3と、溝形成部材14における基端側の端面とによって挟まれた溝である環状をなすシール嵌入溝12fが形成されている。
【0032】
シール嵌入溝12fには、中心軸Cを中心とした環状をなすシールリングであるシール部材15が嵌め込まれている。シール部材15の内径は、溝形成部材14の内径や弁体収容周面12S1の内径よりも小さく、シール部材15の内縁は、シール嵌入溝12fから内側に突き出ている。シール部材15は、雌部材10が雄部材と接続された状態で、雄部材の外筒部材における外周面と、ケース12の内周面とに密着する。
【0033】
図3に示されるように、ケース12の内側にて、ケース嵌合筒部12dの外側には、先端側の開口が塞がれた円筒状をなす弁座である弁座部材16が外嵌されている。弁座部材16は、外筒嵌合軸部11eやケース嵌合筒部12dと同心の円筒状をなして、中心軸Cに沿った軸方向にて、ケース嵌合筒部12dの基端から段差面12S3まで延びている。弁座部材16の基端部には、ケース嵌合筒部12dが嵌め込まれる弁座側嵌合部としての弁座嵌合孔16aが形成されている。
【0034】
弁座部材16は、ケース嵌合筒部12dの外側に配置されているため、ケース12の径方向では、ケース嵌合筒部12dの幅よりも弁座部材16の幅が大きい。それゆえに、ケース嵌合筒部12dの幅よりも弁座部材16の幅が小さい構成と比べて、弁座部材16そのものの機械的な強度が高められる。
【0035】
弁座部材16の基端側には、弁座部材16の内周面から弁座部材16の外周面まで貫通する複数の固定嵌合孔16bが形成されている。固定嵌合孔16bは、ケース嵌合筒部12dの係止突起12d1と同じ数だけ、且つ、係止突起12d1と対向する位置に形成されている。そして、複数の固定嵌合孔16bの各々に係止突起12d1が嵌め込まれることによって、弁座部材16は、接続筒部材11とケース12とに対し、径方向と軸方向とに位置決めされている。
【0036】
弁座部材16にて固定嵌合孔16bよりも先端側には、弁座部材16の内周面から外周面まで貫通する複数の弁座部材流通孔16cが形成されている。複数の弁座部材流通孔16cは、中心軸Cに沿って延びる矩形孔であって、弁座部材16の周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。
【0037】
弁座部材16の外周面にて弁座部材流通孔16cよりも先端側には、弁座部材16の外周面から径方向の外側に向かって突き出た環状をなす凸溝であるシール嵌入溝16dが、弁座部材16の周方向の全体にわたり形成されている。
【0038】
シール嵌入溝16dには、弁座部材16の軸方向を含む平面での断面形状が矩形状をなすシールリングである弁座シール部材17が嵌め込まれている。弁座シール部材17の外径は、シール嵌入溝16dを構成する溝側壁のうち、弁座部材16の先端側の溝側壁における外径RFoと略等しい。
【0039】
ケース12の内側、且つ、弁座部材16の外側には、先端側の開口の一部が塞がれた円筒状をなす弁体18が収容されている。また、弁体18の内部における先端面とケース12の底面との間には、弁体18を弁座部材16の先端に向けて付勢する付勢部材としてのコイルばね19が挟持されている。
【0040】
弁体18は、ケース12の内径よりも若干小さい外径を有してケース12と同心の円筒状をなしている。弁体18の基端には、ケース12の筒内と弁体18の筒内とに通じる開口である連通口18aが形成されている。また、弁体18の頂壁は、弁体18の外周面から中心軸Cに向かって張り出す環状をなす弁体フランジ18bを備え、弁体18の頂壁には、弁体フランジ18bによって囲まれた円形孔である流通孔18cが連通口18aに通じている。流通孔18cは、弁体フランジ18bの頂面から基端に向けて縮径された多段の円形孔であって、流通孔18cの内周面には、その内周面の周方向の全体にわたり径方向の内側に突出するシール突起18dが形成されている。
【0041】
シール突起18dにおける先端側の側面は、弁座シール部材17における外側の角部のうち基端側の角部が押し付けられるシール面18eである。シール面18eは、中心軸Cに対して傾きを有する筒面であり、且つ、基端に向かって内径が次第に小さくなる傾斜面である。
【0042】
流通孔18cの内径のうち、弁体フランジ18bの頂面での内径は、シール嵌入溝16dの溝側壁の外径うち、大径である外径RFoよりも若干大きく、弁座シール部材17が軸方向に沿って挿通される大きさである。一方で、シール面18eの内径のうち、基端側の内径は、シール嵌入溝16dの溝側壁のうち、大径である外径RFoよりも若干小さく、且つ、小径である外径RFiよりも若干大きい。すなわち、シール面18eの内径のうち基端側の内径は、シール嵌入溝16dの溝側壁のうち、小径である基端側の溝側壁が挿通される大きさであって、且つ、弁座シール部材17が挿通できない大きさである。
【0043】
そして、弁体18は、コイルばね19の付勢力に抗した力を受けて、弁座シール部材17がシール面18eに当接する着座位置から、接続筒部材11に向かって移動する。また、弁体18は、コイルばね19の付勢力に抗した力が解除されることによって、弁座シール部材17がシール面18eから離れた脱座位置から、上記着座位置に戻る。
【0044】
弁体フランジ18bの外周面には、弁体18の外周面から径方向の内側に向かって窪んだ環状をなすシール嵌入溝18fが形成されている。シール嵌入溝18fには、中心軸Cを中心とした環状をなすシールリングであるシール部材20が嵌め込まれている。シール部材20の外径は、ケース12の外径よりも大きく、シール部材20がシール嵌入溝18fに収容されることによって、ケース12の内周面と弁体18の外周面とに密着している。
【0045】
[雌部材10の組み立て工程]
次に、雌部材10を構成する接続筒部材11、ケース12、及び、弁座部材16を組み立てる工程について
図4及び
図5を参照して説明する。
【0046】
図4に示されるように、ケース12内には、まず、コイルばね19と弁体18とが順に収容される。これにより、コイルばね19が、弁体18の先端面とケース12の底面との間に挟持される。そして、弁体18がコイルばね19によってケース12の先端に付勢されることで、弁体18の先端面が、軸方向にて上記段差面12S3に一致している。
【0047】
次いで、弁座部材16が、ケース12の先端から基端に向けてケース12の軸方向に沿って移動する。弁座部材16の基端が係止突起12d1に接すると、弁座部材16の内周面によって係止突起12d1の外周面が押されるため、ケース嵌合筒部12dが径方向の内側に撓む。
【0048】
そして、固定嵌合孔16bの縁が係止突起12d1の基端に達すると、ケース嵌合筒部12dを撓ませる力が解除されるため、ケース嵌合筒部12dの延びる方向が再び軸方向に戻される。これにより、ケース嵌合筒部12dが弁座嵌合孔16aに嵌め込まれ、且つ、係止突起12d1が固定嵌合孔16bに嵌め込まれる。結果として、弁座部材16は、ケース12の内周面から連結部12cの分だけ径方向に離れた位置にて、ケース12に対して径方向と軸方向とに位置決めされる。
【0049】
ケース12の内周面からケース嵌合筒部12dが連結部12cの分だけ離れているため、ケース12の径方向では、ケース12の内周面とケース嵌合筒部12dとの間の隙間に従って、ケース12の外周面よりもケース嵌合筒部12dが小さくなる。
【0050】
結果として、上述のようにケース嵌合筒部12dと弁座部材16とが嵌合する構成であれば、弁座部材16の基端部がケース12の内周面に固定されるよりも、弁体18の内周面と弁座部材16との間の隙間のばらつきが抑えられる。それゆえに、弁体18に対して弁座部材16の位置の精度を高めることができる。
【0051】
このように、ケース嵌合筒部12dと弁座嵌合孔16aとは、ケース12の軸方向に沿って嵌合する。すなわち、軸方向に延びる部材であるケース嵌合筒部12dが、同じく軸方向に延びる弁座嵌合孔16aに対して嵌め合わせられる。そのため、ケース12の軸方向と交差する方向にて、ケース嵌合筒部12dに対する弁座嵌合孔16aの位置ずれが生じにくくなる。それゆえに、軸方向に沿って延びる弁座部材16の位置の精度が、軸方向と交差する方向にて特に高められる。
【0052】
次いで、
図5に示されるように、接続筒部材11が、ケース12の軸方向に沿ってケース12の基端に近付く。そして、接続筒部材11の移動に伴い、外筒嵌合軸部11eが、ケース嵌合筒部12dの基端から先端に向けて挿入される。同時に、固定突起12eが固定孔11dに嵌め込まれる。
【0053】
これにより、ケース嵌合筒部12dの外周面は弁座部材16の内周面に押し付けられた状態に維持されるため、ケース嵌合筒部12dが径方向の内側に撓まなくなる。そのため、弁座部材16の径方向と軸方向における位置が、接続筒部材11とケース12とに対して変わりにくくなる。
【0054】
このように、弁座部材16、ケース12、及び接続筒部材11は、弁座部材16に対してケース12が嵌め込まれ、次いで、接続筒部材11に対してケース12が嵌め込まれることによって組み立てられる。そのため、これらの部材が、溶着あるいは接着によって組み立てられる構成と比べて、溶着あるいは接着の工程を省くことができる分、これら部材の組み立てを簡単にすること、及び、組み立てに必要な費用を減らすことができる。
【0055】
以上説明したように、本開示における管継手構成部材の第1実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)ケース12の内周面から離れたケース嵌合筒部12dと弁座嵌合孔16aとが嵌合する構成であるため、弁座部材16の基端部がケース12の内周面に固定されるよりも、弁体18の内周面と弁座部材16の外周面との間の隙間のばらつきが抑えられる。それゆえに、筒状をなす弁体18に対して当該弁体18の筒内に通る弁座部材16の位置の精度を高めることが可能になる。
【0056】
(2)ケース12の軸方向と交差する方向にて、ケース嵌合筒部12dに対する弁座嵌合孔16aの位置ずれを生じ難くなる。そのため、軸方向に沿って延びる弁座部材16の位置の精度が、軸方向と交差する方向にて特に高められる。
【0057】
(3)ケース嵌合筒部12dの周囲に弁座嵌合孔16aが配置されるため、ケース12の径方向では、ケース嵌合筒部12dの幅よりも弁座部材16の幅が大きい。それゆえに、ケース嵌合筒部12dの幅よりも弁座部材16の幅が小さい構成に比べて、弁座部材16そのものの機械的な強度が高められる。
【0058】
(4)外筒嵌合軸部11eとケース嵌合筒部12dとが嵌合することによって、接続筒部材11に対するケース12の位置が定められる。それゆえに、外筒部材13が接続筒部材11とケース12とを備える構成にて、弁体18に対して当該弁体18の筒内に通る弁座部材16の位置の精度を高めることが可能になる。結果として、接続筒部材11とケース12とを用いて外筒部材13が構成されるから、外筒部材13の構造が複雑になる場合であっても、上述の効果を得ることが可能となる。
【0059】
[第2実施形態]
本開示の管継手構成部材を雌部材として具体化した第2実施形態について、
図6から
図9を参照して説明する。なお、第2実施形態の雌部材は、第1実施形態の雌部材と比べて、外筒部材と弁座部材との嵌合に用いられる構成が異なっている。そのため、以下では、こうした相違点について詳しく説明することとし、その他の構成の説明は割愛する。なお、雌部材と対をなす雄部材の説明については、上記第1実施形態と同様の理由で割愛する。また、
図6から
図9に示される雌部材には、第1実施形態における雌部材10と同様の構成に対して、同一の符号が付されている。
【0060】
[雌部材30の構造]
図6に示されるように、管継手構成部材としての雌部材30は、上記第1実施形態と同様、外筒部材13を構成する第1筒部としての接続筒部材11と第2筒部としてのケース12とを備えている。
【0061】
接続筒部材11の内周面には、基端部11aの先端にて、接続筒部材11の径方向に沿って内側に延びる板状をなす第1連結部としての複数の筒体側構成片31cが、周方向に沿って所定の隙間を空けて等配されている。
【0062】
固定部11bの先端には、固定部11bの内周面から径方向の内側に突き出た複数の固定突起31fが、固定部11bの周方向にて所定の間隔を空けて形成されている。
ケース12に形成されたフランジ12aの内側には、フランジ12aの径方向に沿って内側に延びる板状をなす第2連結部としての複数のケース側構成片32cが、周方向に沿って所定の隙間を空けて等配されている。ケース側構成片32cは、上記筒体側構成片31cと同じ数だけ形成されている。本実施形態では、筒体側構成片31cとケース側構成片32cとが連結部を構成している。
【0063】
ケース12の外周面にて、上記固定突起12eよりも先端側には、固定突起12eの形成面とこの形成面よりも縮径された面とによる段差部32fが形成されている。段差部32fは、上記固定突起31fと同じ数だけ、且つ、固定突起31fと対向する位置に形成されている。そして、上記固定突起12eが固定孔11dに嵌め込まれ、且つ、固定突起31fが段差部32fに嵌め込まれることにより、ケース12は、固定部11bの内側に固定される。
【0064】
ケース12の内側には、円柱状をなす弁座部材36が、ケース12の中心軸Cに沿って配置されている。弁座部材36は、中心軸Cに沿った軸方向にて、筒体側構成片31cにおける先端側の面から段差面12S3まで延びている。弁座部材36の基端には、軸方向において筒体側構成片31cとケース側構成片32cとに挟持される弁座側嵌合部としての複数の弁座嵌合片36aが形成されている。
【0065】
図7に示されるように、上記ケース側構成片32cと筒体側構成片31cとは、径方向から見て階段状をなしている。ケース側構成片32cと筒体側構成片31cとは、周方向に間隔を空けて配置され、ケース側構成片32cと筒体側構成片31cとの間には、階段状をなす隙間が径方向に連なっている。ケース側構成片32cと筒体側構成片31cとの隙間によって筒側嵌合部としての嵌合溝30aが形成される。
【0066】
上記弁座嵌合片36aは、ケース側構成片32c及び筒体側構成片31cと同様、径方向から見て階段状をなしている。そして、弁座嵌合片36aは、ケース側構成片と筒体側構成片とに周方向において挟まれ、嵌合溝30aに対して弁座嵌合片36aが嵌合する。これにより、弁座嵌合片は、軸方向と径方向との両方で、ケース側構成片32cと筒体側構成片31cとによって位置決めされる。
【0067】
[雌部材30の組み立て工程]
次に、上記雌部材30を構成する接続筒部材11、ケース12、及び、弁座部材36を組み立てる工程について
図8及び
図9を参照して説明する。
【0068】
図8に示されるように、第1実施形態と同様、ケース12内には、まず、コイルばね19と弁体18とが順に収容される。次いで、弁座部材36が、ケース12の先端から基端に向けてケース12の軸方向に沿って移動する。弁座部材36の基端が、ケース側構成片32cの内側面によって囲まれる空間を通る。これにより、弁座嵌合片36aにおける先端側の面が、ケース側構成片32cにおける基端側の面に重なる。
【0069】
次いで、
図9に示されるように、接続筒部材11が、ケース12の軸方向に沿ってケース12の基端に近付く。そして、接続筒部材11の移動に伴い、筒体側構成片31cにおける先端側の面が、弁座嵌合片36aにおける基端側の面に重なる。これにより、弁座嵌合片36aが、ケース側構成片32cと筒体側構成片31cとによって形成される嵌合溝30aに嵌め込まれることで、弁座部材36は、ケース12の内周面からケース側構成片32cの分だけ径方向に離れた位置にて、ケース12に対して径方向と軸方向とに位置決めされる。
【0070】
ケース12の内周面から離れた位置に弁座部材36が位置決めされるため、ケース12の径方向では、第1実施形態と同様、弁座部材36の基端部がケース12の内周面に固定されるよりも、弁体18の内周面と弁座部材36との間の隙間のばらつきが抑えられる。それゆえに、弁体18に対して弁座部材36の位置の精度を高めることができる。
【0071】
また、弁座嵌合片36aは階段状をなすケース側構成片32cと同じく階段状をなす筒体側構成片31cによって形成される嵌合溝30aに嵌め込まれる階段状をなしている。そのため、これらが平面板状をなしている構成と比べて、軸方向と径方向との両方にて、弁座嵌合片36aの位置ずれが生じにくくなる。それゆえに、軸方向及び径方向における弁座部材36の位置の精度が高められる。
【0072】
同時に、固定突起12eが固定孔11dに嵌め込まれ、且つ、固定突起31fが段差部32fに嵌め込まれる。
このように、弁座部材36、ケース12、及び接続筒部材11は、弁座部材36が、ケース12と接続筒部材11に挟まれ、且つ、接続筒部材11がケース12に対して嵌め込まれることにより組み立てられる。そのため、第1実施形態と同様、溶着あるいは接着の工程を省くことができる分、これら部材の組み立てを簡単にすること、及び、組み立てに必要な費用を減らすことができる。
【0073】
以上説明したように、本開示における管継手構成部材の第2実施形態によれば、上記(1)及び(4)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(5)筒体側構成片31c、ケース側構成片32c、及び、弁座嵌合片36aの各々が階段状をなすため、軸方向と径方向との両方にて弁座嵌合片36aの位置ずれが生じにくくなり、軸方向及び径方向における弁座部材36の位置の精度が高められる。
【0074】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・第1実施形態では、接続筒部材11が外筒嵌合軸部11eを備える構成としたが、外筒嵌合軸部11eが割愛されてもよい。この場合、雌部材10の外筒部材は、ケース12によって構成される。
【0075】
・第1実施形態では、接続筒部材11の基端部とケース12の基端部とにそれぞれ筒状の嵌合部が形成され、且つ、弁座部材16の基端部に、これら筒状の嵌合部が重ねられた2重の筒状嵌合部に嵌め込まれる柱状の嵌合部が形成されてもよい。
【0076】
・第1実施形態では、ケース12の基端部に柱状の嵌合部が形成され、接続筒部材11の基端部と弁座部材16の基端部に筒状の嵌合部が形成され、ケース12の嵌合部に対して接続筒部材11の嵌合部と弁座部材16の嵌合部とが外嵌される構成でもよい。
【0077】
・第1実施形態では、接続筒部材11、ケース12、及び弁座部材16のそれぞれは、径方向の外側、あるいは径方向の内側に向けて形成された嵌合部を備え、外筒部材13の備える接続筒部材11及びケース12の径方向に沿って嵌合する構成でもよい。
【0078】
・第1実施形態では、弁座部材16に対してケース嵌合筒部12dが外嵌される構成でもよい。
・外筒部材13は、接続筒部材11とケース12とを備える構成としたが、外筒部材13は、これらの部材が一体に成形された構成でもよい。この場合、外筒部材は、弁座部材16の嵌合部に嵌合される少なくとも1つの嵌合部を備える構成であればよい。
【0079】
・ケース12の内周面には、ケース12の内周面と弁体18の外周面とに密着するシール部材が取り付けられてもよい。こうしたシール部材によれば、上記シール部材20と同等の効果を得ることができる。そのため、これら2つのシール部材が相互に干渉しない位置に配置されて、これらシール部材が併用されることによって、雌部材10,30の外部に流体が漏れることをさらに抑制できる。あるいは、シール部材20の省略が可能でもある。
【0080】
・シール部材15の位置は、ケース12の内周面のうち、弁体18が開弁位置に到達した状態で、ケース12の内周面と弁体18の外周面とに挟まれる位置であってもよい。
・弁座シール部材17は、断面がU字状をなすシールリングであってもよい。この際に、弁座シール部材17に形成される窪みは、雌部材10,30の基端を向くことが好ましい。こうした構成によれば、雌部材10,30が雄部材と接続されていない状態で、弁座シール部材17の窪みに対し、弁体18の内部を通して流体が入り込む。結果として、弁座シール部材17の窪みに貯められる流体の圧力によって、流通孔18cの内周面と弁座シール部材17との密着性が高められ、ひいては、雌部材10,30そのものの封止性が高められる。
【0081】
・弁座部材16では、弁座シール部材17が省略され、弁座部材16の一部である先端部そのものがシール機能を有してもよい。
・弁座部材16と弁体18との間では、シール部材が弁体18に設けられ、シール面が弁座部材16に形成されてもよい。
【0082】
・ケース嵌合筒部12dには、スリット部が形成されていなくともよい。
・本開示における管継手構成部材は、雌部材に限らず雄部材として具体化されてもよい。この場合、雄部材は、弁体を収容する外筒部材と、弁体の筒内を通る弁座と、弁体を付勢する付勢部材とを備え、外筒部材と弁座とが外筒部材の内周面から離れた位置にて嵌合される構成であればよい。
【0083】
・本開示における管継手構成部材は、雄部材と雌部材とを1つずつ備える管継手を構成する部材に限らない。管継手構成部材は、雄部材と雌部材との対を複数備え、且つ、複数の雄部材若しくは雌部材が1つの部材に取り付けられることによって、3以上の配管を接続することのできる管継手を構成する部材に適用することもできる。