(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向の一方の端面から他方の端面まで多孔質の隔壁によって区画形成されたセルを複数個有するモノリス基材の前記セルの内壁面に分離膜が成膜されたモノリス型分離膜構造体を横置きで強度検査装置にセットし、その後、70°〜110°回転させて縦置きとした後に、下側のセル開口部から前記セル内に液体を導入し、前記液体を加圧することにより前記モノリス型分離膜構造体を加圧して強度を検査するモノリス型分離膜構造体の強度検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
1.強度検査方法の概要
本発明のモノリス型分離膜構造体の強度検査方法は、長手方向の一方の端面から他方の端面まで多孔質の隔壁によって区画形成されたセルを複数個有するモノリス基材のセルの内壁面に分離膜が成膜されたモノリス型分離膜構造体のセル内に液体を導入し、液体を加圧することによりモノリス型分離膜構造体を加圧して強度を検査する方法である。所定圧まで加圧して、その圧力まで耐える強度を有するか検査する。
【0025】
本発明のモノリス型分離膜構造体の強度検査方法は、液体を用いるが、液体は圧縮率が低いため、仮に検査時にサンプル(モノリス型分離膜構造体)が破壊してもケガをする危険性が低い。またガスと比較して膜透過量も少ないため、容易に評価できる。さらに、セッティングミスによりシール部から液体が漏れた場合も分かりやすい。一方、ガスは分離膜を透過するため、ガスを用いた検査は必要とするガス量が多く、検査コストがかかり、モノリス型分離膜構造体(以下、単に分離膜構造体ともいうこともある)が割れたときにも危険である。
【0026】
モノリス型分離膜構造体を縦置きとした後に、下側のセル開口部からセル内に液体を導入し、液体を加圧することが好ましい。液体を使用する場合、細く長いセルを有するモノリス型分離膜構造体は、単にセルに液体を入れるとセル内にエアーが残ってしまうため、加圧に必要な圧縮容積が増えて大きな容量の加圧装置(ブースター、ポンプ等)が必要になる。しかし、セルの下側から液体を封入することにより、セル全体に水が行き渡りエアーを巻き込むことがなくなる。これにより、小さな容量の加圧装置で容易に強度評価が可能となる。
【0027】
液体の導入をレイノルズ数が2000以下となる流速で行うことが好ましい。レイノルズ数をこの範囲とすることにより、小さな容量の加圧装置で加圧することができる。レイノルズ数は、下記の式を用いて求められるものである。
レイノルズ数(−)=セル内での液体線速(m/s)×セル径(m)×液体密度(kg/m
3)/液体粘度(Pa・s)
セル内での液体線速(m/s)=液体流速(m
3/s)/全セルの合計断面積(m
2)
【0028】
セルに充填する液体は、水を含むことが好ましく、液体の水含有率が80%以上であることがさらに好ましい。液体として水を使用することにより、サンプルに悪影響を及ぼすことがなく、安価で検査することができる。また、検査後は、乾燥するのみでそのまま出荷することができる。
【0029】
本発明のモノリス型分離膜構造体の強度検査方法では、モノリス型分離膜構造体の全長をL、直径をΦとしたとき、L/Φ≧1である場合、モノリス型分離膜構造体を横置きでセットし、すなわち、横置きで配置し、その後、70°〜110°回転させて縦置きとし、液体をセル内に導入して強度を検査することが好ましい。モノリス型分離膜構造体を固定する際、セラミックスは重量があるため、片当たりせずに両端均等にシールをとるためには、横向きでセッティングすることが好ましい。無理な荷重もかからないため、モノリス型分離膜構造体のガラスシール部を破損することもなく、容易にセットできる。
【0030】
次に、強度検査方法の対象のモノリス型分離膜構造体、その製造方法等について説明し、その後、モノリス型分離膜構造体の強度検査方法について説明する。
【0031】
2.モノリス型分離膜構造体
図1に、強度検査の対象となるモノリス型分離膜構造体1の一実施形態を示す。モノリス型分離膜構造体1は、モノリス型の基材30(モノリス基材)と、分離膜33とを備える(本明細書では、基材30を、モノリス型多孔質体9(または、単に多孔質体9)ともいう。)。「モノリス型の基材(モノリス基材)」とは、長手方向の一方の端面2aから他方の端面2bまで複数のセルが形成された形状あるいはハニカム状の基材を言う。
【0032】
(基材)
基材30の材質としては、強度や化学的安定性の観点から、アルミナ、シリカ、コージェライト、ムライト、チタニア、ジルコニア、炭化珪素等のセラミックス材料からなるものが好ましい。基材30の気孔率は、当該基材の強度と透過性の観点から10〜60%程度とすることが好ましい。また、多孔質基材の平均細孔径は、0.005〜5μm程度とすることが好ましい。
【0033】
基材30は、多数の細孔が形成された多孔質のセラミックからなる隔壁3を有し、その隔壁3によって、流体の流路となるセル4が形成されている。基材30は長手方向の両端側に貫通し、長手方向と平行なセル4を、30〜2500個有している。
【0034】
基材30の全体的な形状としては、例えば、円柱(円筒)状、四角柱状(中心軸に直交する断面が四角形の筒状)、三角柱状(中心軸に直交する断面が三角形の筒状)等の形状が挙げられる。
【0035】
基材30の大きさは、限定されるものではないが、外径28mm以上、かつ全長が100mm以上である基材30に成膜された分離膜33は、従来の分離膜33に比較して均質な膜性能を有する。
【0036】
セル4の、基材30の長手方向に垂直なセル断面の形状は、特に限定されないが、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形等を採用することができる。基材30のセル4の断面形状が円形の場合、セル4の直径は、1〜5mmであることが好ましい。1mm以上とすることにより、膜面積を十分に確保することができる。5mm以下とすることにより、セラミックフィルタの強度を十分なものとすることができる。
【0037】
セル4を、基材30の端面2の単位面積中に1ヶ/cm
2以上で複数個有することが好ましい。このようなセル4の内壁面4sに分離膜33を形成することにより、実用上十分な処理量を得るための膜面積を確保することができ、分離機能を果たすことができる。
【0038】
基材30の両端面2,2には、シール部1sが配設されていることが好ましい。シール部1sは、基材30の両端面2,2全体にセル4を塞がないようにして配設する。また、外周面6の端面2の近傍にもシール部1sが配設されていることが好ましい。このようにシール部1sが配設されていると、混合物の一部が分離膜33を通過することなく基材30の端面2から基材30の内部に直接流入し、分離膜33を通過したガス等と混ざって外周面6から排出されることを防止することができる。
【0039】
シール部1sとしては、例えば、ガラスシールや金属シールを挙げることができ、これらの中でも、モノリス基材30との熱膨張係数を合わせやすい点で、ガラスシールが好ましい。ガラスシールに用いるガラスの物性としては、特に限定されないが、モノリス基材30の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有することが好ましい。
【0040】
なお、本発明の強度検査方法にて検査する分離膜構造体1は、上記の構成に限定されるものではなく、基材30上に、平均細孔径が基材30の表面に比して小さい中間層や、さらに平均細孔径が小さい表面層を有していてもよい。この場合、基材30と、中間層と、表面層とを、モノリス型多孔質体9という。
【0041】
(分離膜)
分離膜33は、複数の細孔が形成され、その平均細孔径が多孔質体9(基材30)に比して小さく、セル4内の壁面(隔壁3の表面)に配置されたものである。
【0042】
分離膜33の平均細孔径は、要求される濾過性能または分離性能(除去すべき物質の粒径)により、適宜決定することができる。例えば、精密濾過や限外濾過に用いるセラミックフィルタの場合であれば、0.01〜1.0μmが好ましい。この場合、分離膜33の平均細孔径は、ASTM F316に記載のエアフロー法により測定した値である。
【0043】
分離膜33としては、ガス分離膜、逆浸透膜を採用することができる。分離膜33は、特に限定されるものではないが、無機材料で形成されていることが好ましい。さらに具体的には、無機材料としては、ゼオライト、炭素、およびシリカ等を挙げることができる。
【0044】
分離膜33が、ゼオライト膜である場合には、ゼオライトとしては、LTA、MFI、MOR、FER、FAU、DDR、CHA、BEAといった結晶構造のゼオライト等を利用することができる。
【0045】
3.分離方法
分離膜構造体1は、複数種類が混合した流体から一部の成分を分離することができる。分離膜構造体1のセル4内に流入した被処理流体は、分離膜33を透過して処理済流体となって基材30の外周面6から基材30外に排出される。
【0046】
4.製造方法
(基材)
次に、分離膜構造体1の製造方法について説明する。最初に、多孔質体の原料を成形する。例えば、真空押出成形機を用い、押出成形する。
【0047】
次いで、未焼成の基材30を、例えば、900〜1450℃で焼成する。中間層、表面層を形成する場合は、所望の粒径のセラミックス原料のスラリーを調整し、基材30内面に成膜後に更に900〜1450℃で焼成する。その後、シール部1sを形成する。
【0048】
(分離膜)
(ゼオライト膜)
次に、セル4の内壁面4s上に、分離膜33を形成する。分離膜33としてゼオライト膜を配設する場合について説明する。
【0049】
本発明に用いるゼオライト膜は従来既知の方法により合成できる。たとえば、シリカ源、アルミナ源、有機テンプレート、アルカリ源、水などの原料溶液を作製し、耐圧容器内に基材と調合した原料溶液を入れた後、これらを乾燥器に入れ、100〜200℃にて1〜240時間、加熱処理(水熱合成)を行うことにより、ゼオライト膜を製造する。
【0050】
このときに種結晶として予めゼオライトを基材に塗布しておくことが好ましい。次に、ゼオライト膜が形成された多孔質体9を、水洗または、80〜100℃の温水にて洗浄し、それを取り出して、80〜100℃にて乾燥する。そして、多孔質体9を電気炉に入れ、大気中で、400〜800℃、1〜200時間加熱することにより、ゼオライト膜の細孔内の有機テンプレートを燃焼除去する。以上により、ゼオライト膜を形成することができる。
【0051】
シリカ源としては、コロイダルシリカ、テトラエトキシシラン、水ガラス、シリコンアルコキシド、ヒュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。
【0052】
有機テンプレートはゼオライトの細孔構造を形成するために用いられる。特に限定されるものではないが、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、1−アダマンタンアミン、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、等の有機化合物が挙げられる。
【0053】
アルカリ源としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属や、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属や、四級アンモニウムヒドロキサイド等が挙げられる。
【0054】
ゼオライト膜の製造方法は、LTA、MFI、MOR、FER、FAU、DDR、CHA、BEAといった結晶構造のゼオライトについて適用することができる。
【0055】
(シリカ膜)
次に、セル4の内壁面4s上に、分離膜33としてシリカ膜を配設する場合について説明する。シリカ膜となる前駆体溶液(シリカゾル液)は、テトラエトシキシランを硝酸の存在下で加水分解してゾル液とし、エタノールで希釈することで調製することができる。また、エタノールで希釈する代わりに、水で希釈することも可能である。そして、多孔質体9の上方から、シリカ膜となる前駆体溶液(シリカゾル液)を流し込み、セル4を通過させ、あるいは、一般的なディッピングによって、前駆体溶液を、セル4の内壁面4sに付着させる。その後、100℃/時にて昇温し、500℃で1時間保持した後、100℃/時で降温する。このような流し込み、乾燥、昇温、降温の操作を3〜5回繰り返すことによって、シリカ膜を配設することができる。以上により、分離膜33がシリカ膜である分離膜構造体1が得られる。
【0056】
(炭素膜)
次に、セル4の内壁面4s上に、分離膜33として炭素膜を配設する場合について説明する。この場合、ディップコート、浸漬法、スピンコート、スプレーコーティング等の手段によって、炭素膜となる前駆体溶液を多孔質体9の表面に接触をさせ、成膜すればよい。フェノ一ル樹脂、メラミン樹脂、ユリヤ樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、又はセルロース系樹脂等、あるいは、それら樹脂の前駆体物質を、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、NMP、トルエン等の有機溶媒や水等に混合、溶解させれば、前駆体溶液を得ることができる。前駆体溶液を成膜する際には、それに含まれる樹脂の種類に応じて、適切な熱処理を施してもよい。こうして得られた、前駆体膜を炭化して、炭素膜を得る。
【0057】
図2に、分離膜構造体1の他の実施形態を示す。本実施形態では、一方の端面2aから他方の端面2bまで貫通して列をなして形成された複数の分離セル4aと、一方の端面2aから他方の端面2bまで列をなして形成された複数の集水セル4bを備える。分離膜構造体1の分離セル4aと集水セル4bの断面形状は円形である。そして、分離セル4aの両端面2a,2bの開口は開放されている(開口のままである)。集水セル4bは、その両端面2a,2bの開口が目封止部材で目封止されて目封止部8が形成され、集水セル4bが外部空間と連通するように、排出流路7が設けられている。また、分離セル4aの内壁面4sの表面に分離膜33が配設されている。
【0058】
5.強度検査装置
次に、以上のようにして作製されたモノリス型分離膜構造体1の強度検査装置について、
図3A〜
図3Cを参照しつつ、説明する。分離膜構造体1の一方の端面2aと他方の端面2bを覆い、セル4に液体を供給、セル4から液体を排出する流路部47(
図4A参照)が設けられた端面シール用治具11と、液体を加圧する加圧装置12(
図5参照)と、を備える強度検査装置10を、強度検査に用いることができる。
【0059】
強度検査装置10は、端面シール用治具11により、分離膜構造体1の端面2を覆うことができる。そして、端面シール用治具11に設けられた流路部47から、液体をセル4内に供給することができる。液体をセル4内に供給した後に、加圧装置12によって液体を加圧することで、セル4内から分離膜構造体1を加圧して分離膜構造体1の強度を検査することができる。検査後、セル4内に供給された液体は、端面シール用治具11の流路部47から排出することができる。
【0060】
端面シール用治具11(第一端面シール用治具11a、第二端面シール用治具11b)により、セル4内にのみ液体を封入するため、少ない量での評価が可能である。強度検査装置10は、液体を使用するため、ガスを用いるよりも安全である。なぜなら、液体は圧縮率が低いため、仮に検査時に分離膜構造体1が破壊してもケガをする危険性が低いからである。またガスと比較して膜透過量も少ないため、容易に評価できる。セッティングミスによりシール部1sから漏れた場合も分かりやすい。液体としては、水を含むことが好ましく、液体の水含有率が、80%以上であることがより好ましい。液体として水を使用することにより、分離膜構造体1に悪影響を及ぼすことがない。また、安価で、しかも乾燥するのみで製品(分離膜構造体1)をそのまま出荷できる。
【0061】
図3A等に示すように、端面シール用治具11には、液体用配管13が備えられている。
図4Aに端面シール用治具11の断面図を示す。端面シール用治具11は、一方の側面11mに、凹部41が形成されている。また、他方の側面11nに、液体用配管13が備えられている。凹部41は、分離膜構造体1の端部が収容できる大きさ、形状とされており、端面シール用治具11には、凹部41から他方の側面11nに連通する流路部47が設けられている。流路部47には、分離膜構造体1をセル4内に充填する液体が流通する。
【0062】
図3A等に示すように、強度検査装置10は、一方に第一端面シール用治具11a、他方に第二端面シール用治具11bをスライド可能に備えるガイド軸14を有する。図に示す実施形態では、ガイド軸14を4本備えている。端面シール用治具11の四隅にガイド軸14が挿入されており、端面シール用治具11は、スライド可能に構成されている。
【0063】
また、ガイド軸14には、端面シール用治具11が分離膜構造体1側に過剰に移動しないように、ストッパー15が備えられている。
【0064】
図3Bに示すように、第一端面シール用治具11aと第二端面シール用治具11bにより分離膜構造体1を長手方向の両側から挟んで支持することができる。このとき、
図4Aに示すように、端面シール用治具11がストッパー15に当たり、端面シール用治具11が分離膜構造体1に直接当たらないようになっている。
【0065】
図3A等に示すように、強度検査装置10は、ガイド軸14に、分離膜構造体1を、分離膜構造体1の外周面6を受け止め載置する載置部16を有する。載置部16は、分離膜構造体1の外形に沿った形状、すなわち、分離膜構造体1の外周面6の形状に沿った円弧形状を有することが好ましい。このような形状を有することにより、分離膜構造体1を横置きしやすい。
【0066】
強度検査装置10は、分離膜構造体1の長手方向の両側を第一端面シール用治具11aと第二端面シール用治具11bで覆った状態で、分離膜構造体1を横置きから縦置き、または縦置きから横置きにするための回転手段17を有する。回転手段17は、載置部16に連接する回転軸と、回転軸が挿入された固定台座部とによって構成することができる。
【0067】
最初から重量のある分離膜構造体1を垂直にセッティングするのは容易ではなく、垂直を保ったままシールをとるのも難しい。まずは基材30を横置きした後に両端から端面シール用治具11を閉めこむため位置合わせが容易であり、回転手段17を有することから、回転させて垂直にセッティング(縦置き)として検査することができる。
【0068】
図4Aおよび
図4Bに示すように、端面シール用治具11の凹部41は、一方の側面11m側に、分離膜構造体1のシール部1sの外形よりも径の大きな第一凹部41aと、内部側に、分離膜構造体1のシール部1sの外形よりも径の小さな第二凹部41bとを有する。したがって、第一凹部41aの内部側には、径の小さな第二凹部41bへと続く、分離膜構造体1の端面2が対向する対向面42が設けられている。その対向面42には、分離膜構造体1の端面2が接触することにより破損することを防ぐための弾力性シート43が備えられている。
【0069】
弾力性シート43は、厚さが0.5mm以上であることが好ましい。このような厚さにすることにより、分離膜構造体1の端面2の破損を防止することができる。また、分離膜構造体1を載置部16に載置し、端面シール用治具11で分離膜構造体1の端面2を覆ったときの分離膜構造体1の端面2と弾力性シート43とのクリアランスDは、5mm以下であることが好ましい。このようなクリアランスDとすることにより、分離膜構造体1を縦置きとした場合に、分離膜構造体1が移動することを防止することができる。
【0070】
端面シール用治具11は、分離膜構造体1の外周面6のシール部1sとの間をシールするO−リング45を備える。具体的には、
図4Bに示すように、第一凹部41aには、O−リング45等のシール部材を収容するためのシール部材収容部44が設けられている。そして、シール部材収容部44に、O−リング45が備えられている。
【0071】
さらに、端面シール用治具11は、分離膜構造体1の外周面6のシール部1sとの間をシールするバックアップリング46を備える。バックアップリング46は、
図4Bに示すように、O−リング45に隣接してシール部材収容部44に備えられている。O−リング45やバックアップリング46をシール部材収容部44に備えることにより、分離膜構造体1の加圧のための液体が外部に漏れることを防止できる。また、O−リング45を使用することで分離膜構造体1のシール部1sの変形を吸収し、多少寸法に誤差があっても、測定できる。
【0072】
端面シール用治具11の内径をA、分離膜構造体1のシール部1sの外径をB、O−リング45の内径をCとしたとき、0.5≦(A−B)≦3.0mm、かつ−2.1≦(C−B)≦0.8mmであることが好ましい。このような範囲とすることにより、分離膜構造体1の加圧のための液体が外部に漏れることを、より効果的に防止できる。
【0073】
また、
図4Bに示すように、端面シール用治具11の、シール部材収容部44よりも一方の側面11m側の、シール部1sに対向する面は、テーパ面11tとすることも好ましい。このようにすると、分離膜構造体1が端面シール用治具11の角部11kに接触して破損することを防止することができる。このような場合、内径Aとは、第一凹部41aの最も狭い部分をいう。
【0074】
端面シール用治具11は、O−リング45やバックアップリング46の代わりに、分離膜構造体1の外周面6のシール部1sとの間をシールするUパッキンまたは横Uパッキンをシール部材収容部44に備える仕様とすることもできる。Uパッキンまたは横UパッキンもO−リング45やバックアップリング46と同様に、分離膜構造体1の加圧のための液体が外部に漏れることを防止できる。
【0075】
図5に、強度検査装置10の全体構成を示す。強度検査装置10は、液体(例えば、水)を入れたタンク、タンクの液体を分離膜構造体1に供給するための供給ポンプ、液体を加圧するための加圧装置12が液体用配管13によって接続されている。液体用配管13の途中には、バルブが設けられている。
【0076】
液体充填時には、バルブAを開、バルブBを閉とする。そして、分離膜構造体1の下端から液体を充填する。
【0077】
加圧装置12は、第一端面シール用治具11a、および第二端面シール用治具11bに接続されており、加圧時には、バルブAを閉、バルブBを開とすることにより、分離膜構造体1の両側から加圧可能である。
【0078】
排液時には、排液用バルブを開とすることにより、分離膜構造体1内の液体を排出することができる。
【0079】
加圧装置12がピストンの往復運動など断続的な加圧機構の場合、加圧装置12を複数個、並列配置することが好ましい。このようにすると、第一の加圧装置12で加圧が終了した後、第二の加圧装置12で加圧することが可能となり、連続的に加圧可能である。連続的に加圧可能であると、分離膜33から液体が透過する場合やシール部1sから若干の液漏れがある場合でも、圧力を低下しにくくできる。
【0080】
6.強度検査方法
本発明のモノリス型分離膜構造体の強度検査方法は、モノリス型分離膜構造体のセル内に液体を導入し、液体を加圧することによりモノリス型分離膜構造体を加圧して強度を検査する方法である。
図3A〜
図3Cを用いて強度検査方法について説明するが、本発明の強度検査方法は、
図3A〜
図3Cに示す強度検査装置を用いる場合に限定されるものではない。
【0081】
図3Aに示すように、分離膜構造体1は、まず横置きで強度検査装置10の載置部16に載置することが好ましい。セラミックスは重量があるため、片当たりせずに両端均等にシールをとるためには、横向きでセッティング、すなわち横置きで載置部16に載置することが好ましい。このようにすると、無理な荷重もかからないため、分離膜構造体1の端面2のガラスシールを破損することもなく、大型の分離膜構造体1であってもセッティングが容易である。例えば、直径Φ2.5mmのセル4を2050ヶ有する、外径Φ180mm−全長が1000mmの大型のもの(重量が40〜50kg)であっても、検査することができる。
【0082】
そして、
図3Bに示すように、載置部16に載置した後に、端面シール用治具11をスライドさせて分離膜構造体1の端面2を端面シール用治具11で覆う。
【0083】
次に、
図3Cに示すように、載置部16やガイド軸14、端面シール用治具11を回転させることにより、分離膜構造体1を横置きから縦置きにして検査を行う。横置きから縦置きにする場合、水平状態から70°〜110°(90°が垂直状態)回転させることが好ましい。必ずしも垂直状態でなくてもよい。すなわち、本明細書では、完全に垂直の状態でなくても縦置きに含まれる。
【0084】
分離膜構造体1を水平状態から90°±20°の縦置き状態(
図3C参照)として、下側のセル開口部からセル4内に液体を導入する。セル4の長手方向を地面に対して垂直に近い状態でセッティングして液体を充填することで、セル4内に空気が残留するのを防止することができる。液体の導入をレイノルズ数が2000以下となる流速で行うことが好ましい。このような流速で液体を導入することにより、分離膜構造体1の内部の空気を排出しつつ、液体を充填することができる。
【0085】
すなわち、液体を使用する場合、細く長いセル4を有する分離膜構造体1は、単にセル4に液体を入れるとセル4内に空気が残ってしまい、加圧に必要な圧縮容積が増えて大きな液体供給容量の加圧装置12(ブースター、ポンプ等)が必要になる。しかし、上記のように、分離膜構造体1を縦置きとして、セル4の下側からレイノルズ数が2000以下となる流速で液体を導入することにより、セル4全体に液体が行き渡り、空気を巻き込むことがなくなるため、更に小さな液体供給容量の加圧装置12で容易に強度評価が可能となる。
【0086】
7.防液層
本発明のモノリス型分離膜構造体の強度検査方法では、強度検査対象が液体を多量に透過させる膜である場合には、モノリス型分離膜構造体1の分離膜33上に剥離可能な防液層を形成し、その後にセル4内に液体を導入して強度を検査することができる。具体的には、防液層として剥離可能なゴム層を強度検査前に分離膜33の表面に一層追加した状態で強度検査を実施することが好ましい。仮に液体(水等)を多量に透過させる膜であっても、ゴム層で液体の透過を防止することができるようになるため、分離膜33に損傷を与えることなく、容易に強度検査を実施することができる。
【0087】
ゴムの防液層は、ゴムラテックスにて形成することができる。具体的には、天然ゴムラテックス、または合成ゴムラテックスを基材30上部より、セル4に流し込んでセル4内を流下させる。ラテックスを流下させた後に、セル内部が閉塞するのを防ぐために、セル4内をエアー吹きすることが好ましい。乾燥させた後、基材30を上下反転し、同様に、ラテックスの流下、エアー吹き、乾燥を行う。これにより、分離膜33上に防液層としてゴム層を形成することができる。なお、検査終了後は、ゴム層を容易に剥離することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
1.モノリス型分離膜の作製方法
モノリス基材30を作製し、そのセル4内に分離膜33を形成した。まず、基材30の作製について説明する。
【0090】
(基材)
アルミナ粒子(骨材粒子)に無機結合材(焼結助剤)を添加し、更に、水、分散剤、及び増粘剤を加えて混合し混練することにより坏土を調製した。得られた坏土を押出成形し、その後焼成することにより、モノリス基材30を作製した。
【0091】
その後、モノリス基材30内面に中間層、表面層を形成し、焼成することで、直径Φ2.5mmのセル4を2050ヶ有する、外径Φ180mm−全長が1000mm、および直径Φ2.5mmのセル4を30ヶ有する、外径Φ30mm−全長が160mmのモノリス型多孔質体9を作製した。その後、モノリス型多孔質体9の両端面にガラスを使用し、シール部を形成した。
【0092】
次に、多孔質体9のセル4内の壁面に、分離膜33として、DDR型ゼオライト膜、シリカ膜、炭素膜のいずれかを形成した試料を作製した。それぞれの作製方法について説明する。
【0093】
(
参考例1〜3、実施例1〜
8,
12,
13)
(DDR型ゼオライト膜の形成)
分離膜33としてDDR型ゼオライト膜をセル4の内壁面4s上に形成した。
【0094】
(1)種結晶の作製
M. J. den Exter, J. C. Jansen, H. van Bekkum, Studies in Surface Science and Catalysis vol.84, Ed. by J. Weitkamp et al., Elsevier(1994)1159−1166、または特開2004−083375号公報に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法を基に、DDR型ゼオライト結晶粉末を製造し、これをそのまま、または必要に応じて粉砕して種結晶として使用した。
【0095】
(2)種付け(粒子付着工程)
(1)で作製した種結晶分散液をイオン交換水またはエタノールで希釈し、種結晶濃度0.001〜0.36質量%(スラリー中の固形分濃度)になるように調整し、種付け用スラリー液(スラリー)とした。多孔質体9の上部から種付け用スラリー液を流し込みセル内を通過させ、内壁面4sに種結晶を付着させた。
【0096】
(3)膜化(膜形成工程)
フッ素樹脂製の広口瓶にエチレンジアミン(和光純薬工業製)を入れた後、1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器にコロイダルシリカ(スノーテックスS,日産化学製)とイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、原料溶液を調製した。原料溶液の各成分のモル比は1−アダマンタンアミン/SiO
2=0.016、水/SiO
2=21である。その後、原料溶液を入れた広口瓶をホモジナイザーにセットし、1時間攪拌した。フッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器内に(2)でDDR粒子を付着させた多孔質体9を配置し、調合した原料溶液を入れ、140℃にて50時間、加熱処理(水熱合成)を行った。
【0097】
(4)構造規定剤除去
被覆できた膜を電気炉で大気中または酸素雰囲気下にて450または500℃で50時間加熱し、細孔内の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。
【0098】
(実施例
9,
10)
(炭素膜の形成)
分離膜33として炭素膜をセル4の内壁面4s上に形成した。フェノ一ル樹脂の有機溶媒に混合、溶解させ、前駆体溶液を得た。ディップコーティングによって、炭素膜となる前駆体溶液を多孔質体9の表面に接触をさせ、成膜した。その後、300℃、1時間の熱処理を行い炭素膜の前駆体であるポリイミド樹脂を表面に配設した。そして、得られたポリイミド樹脂層配設基材を、非酸化雰囲気下600℃、5時間の条件で熱処理し炭素膜を得た。
【0099】
(実施例
11)
(シリカ膜の形成)
次に、分離膜33としてシリカ膜をセル4の内壁面4s上に形成した。シリカ膜となる前駆体溶液(シリカゾル液)は、テトラエトシキシランを硝酸の存在下で加水分解してゾル液とし、エタノールで希釈することで調製した。多孔質体9の上方から、シリカ膜となる前駆体溶液(シリカゾル液)を流し込み、セル4を通過させ、前駆体溶液を、セル4の内壁面4sに付着させた。その後、100℃/時にて昇温し、500℃で1時間保持した後、100℃/時で降温した。このような流し込み、乾燥、昇温、降温の操作を3〜5回繰り返すことによって、シリカ膜を配設した。
【0100】
2.強度検査
直径Φ180mm−長さL1000mmのモノリス型分離膜構造体1(
参考例1〜3、実施例1〜
11)の強度検査方法を説明する。まず、モノリス型分離膜構造体1をハンドリフターにて吊り上げ、直径Φ180mm用の強度検査装置10の載置部16上に配置した。端面シール用治具11を左右両端部から押し込み、押し込み深さ位置決め用に予め配置したストッパー15で止まるまで移動させて、モノリス型分離膜構造体1を端面シール用治具11にて固定した。次に、治具回転用のハンドル(回転手段17)を回転させ、モノリス型分離膜構造体1を表1に記載の角度まで傾けた。なお、直径Φ30mm−長さL160mmのモノリス型分離膜構造体1(実施例
12〜
13)については、人力にて直径Φ30mm用の強度検査装置10の載置部16上に配置した。
【0101】
モノリス型分離膜構造体1の下部から水を充填し、加圧するセル4と管内を水で満たした。加圧装置12によりセル内部を所定圧力まで加圧した。
【0102】
所定圧力まで加圧した後は、バルブを開いて圧力を常圧にもどし、その後、排液用バルブを開放してセル4内の水を排出した。端面シール用治具11か移転用のハンドルを回転させ、モノリス型分離膜構造体1を元の水平位置にまで戻した。端面シール用治具11を膜から外し、ハンドリフターを使用し、モノリス型分離膜構造体1を装置より外した。
【0103】
水充填時の回転角度、水の流量を変化させた場合、セル内の水圧を1MPa上昇させるのに必要な加圧装置の押し込み容量(積算値)を表1に示す。表1のL/Φは
図1に、水充填時の回転角度は
図3Cに示したものである。本試験は、すべてゴム層を塗布していない膜にて実施した(
参考例1〜3、実施例1〜
13)。
【0104】
水充填時のレイノルズ数は、下記の式を用いて計算した。
レイノルズ数(−)=セル内での液体線速(m/s)×セル径(m)×液体密度(kg/m
3)/液体粘度(Pa・s)
セル内での液体線速(m/s)=液体流速(m
3/s)/全セルの合計断面積(m
2)
【0105】
【表1】
【0106】
表中のサンプルNoが同じものは、同じサンプルを使用して実験を行った。
参考例1〜3、実施例1〜
4,
7〜
8を比べると、水充填時の角度を0°から90°にするにしたがって、加圧装置の押込み容量が少なくなり、より少ない押込み容量能力の加圧装置にて加圧検査可能である。
【0107】
実施例
5,
6は、レイノルズ数が大きいため、実施例
2〜
4に比べ、押し込み容量が大きくなった。
【0108】
炭素膜(実施例
9,
10)、シリカ膜(実施例
11)についても、水充填時の角度を90°程度とすることにより、押し込み容量を小さくすることができた。
【0109】
実施例
13は、実施例
12に比べ、レイノルズ数が大きいため、押し込み容量が大きかった。
【0110】
3.ゴム層の形成による分離膜への影響評価
(実施例
14〜
18)
(ゴム層の形成)
ゴム層(防液層)を形成したことによる分離膜への影響を以下のようにして調べた。ゴム層を形成するための原料として合成ゴムラテックス(合同ゴム社製)を使用した。まず、Φ30mmの基材の上部よりセル内部に
のみラテックスを流下により流し込み、室温で12時間以上放置して乾燥させた。その後、Φ30mm基材の上下を反転させて再度セル内部にラテックスを流下させ、室温で12時間以上放置して乾燥させた。Φ180mmについても、同様の手法にてセル内部にのみラテックスを塗布した。流下したラテックスでセル内部が閉塞するのを防ぐために、ラテックス流下後に上部からセル内部をエアー吹きし、その後、2日放置した後、上下を反転させ、再度同様の流下、エアー吹き、放置を行ってセル内の膜上ゴム層を形成した(DDR膜、炭素膜、シリカ膜の3種に対して、同様の方法で実施)。乾燥後に、目視で各セルがゴム層で目詰まりしていないことを確認した。
【0111】
強度検査を上記と同様に行い、その後にセル内部のゴム層を除去し、分離膜の分離係数、ガス(N
2)透過性能を調べた。表2に、コーティングしたゴム層の厚み、ゴム層を形成前と剥離後の分離係数の比、ゴム層を形成前と剥離後のN
2透過量の比を示す。
【0112】
【表2】
【0113】
ゴム層を剥離後の分離係数、N
2透過量は、ゴム層を形成前と変わらず、ゴム層を形成し強度検査を行っても分離膜に問題はないことが分かった。