(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.分散剤
(1)ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体
ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体の製造に用いるポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより得られる。使用するアルデヒドの例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、イソブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、イソノナナール、デカナール、ベンズアルデヒドおよびこれらの混合物が挙げられる。ポリビニルアセタールの分子量は、重量平均分子量で100〜100,000が好ましく、より好ましくは1,000〜50,000である。その重量平均分子量が100未満であると分散性が低下する等の性能低下が見られ、100,000を超えると分散剤としての使用時に粘度が高くなり、扱いにくくなる。
【0014】
また、グラフト共重合体の製造に用いるポリエステルは、ラクトン化合物の開環重合反応、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合反応、ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応等の公知の手段によって得られる。
【0015】
上記ラクトン化合物の例としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、2−メチルカプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、ノナノラクトン等が挙げられ、これらの2種以上の混合物も使用可能である。
【0016】
上記ラクトン化合物の開環重合反応は公知の方法で行うことができる。例えば、アルコール又はアミンを有する化合物を開始剤として使用し、ラクトン化合物を開環重合させることができる。
【0017】
上記開始剤に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチルペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナナール、イソノナナール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール等の脂肪族モノアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等の芳香族モノアルコール、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ヘキサン等の二価アルコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ヘキサンジオールグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコールを挙げることができる。
【0018】
上記開始剤に用いるアミンの例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ピロリジン、モルホリン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジフェニルジアミノメタン、パラフェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、エタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ピペラジン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0019】
ラクトン化合物の開環重合反応は、ラクトン化合物に開始剤と触媒を加え、加熱することで進行する。反応温度は100℃〜220℃、好ましくは140℃〜210℃の範囲で行う。触媒としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、ジオクチルスズネオデカネート等の有機スズ化合物、酸化第一スズ、塩化第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、その他公知のエステル化触媒が利用できる。触媒の使用量は0.1ppm〜1000ppmが好ましく、より好ましくは1ppm〜100ppmである。また、着色を防ぐため窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0020】
ラクトン化合物の開環重合物としては、市販のポリエステルポリオールを使用することもできる。その例としては、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル」シリーズが挙げられる。
【0021】
本発明で使用するポリエステルは、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合反応によっても得ることができる。多価カルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。また多価アルコールの例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ヘキサン、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ヘキサンジオールグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0022】
上記多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応は、触媒を加えて加熱することで行うことができる。反応温度は100℃〜220℃が好ましく、より好ましくは140℃〜210℃の範囲で行う。触媒としては、これらに限定されるものではないが、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、ジオクチルスズネオデカネート等の有機スズ化合物、酸化第一スズ、塩化第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、その他公知のエステル化触媒が利用できる。触媒の使用量は0.1ppm〜1000ppmが好ましく、より好ましくは1ppm〜100ppmである。また、着色を防ぐため窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0023】
本発明で使用するポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応によっても得ることができる。ヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族、芳香族、不飽和のヒドロキシカルボン酸を使用することができる。例としては、リシノレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ひまし油脂肪酸、水添ひまし油脂肪酸、δ−ヒドロキシ吉草酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシピバリン酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、サリチル酸、11−オキシヘキサドデカン酸、2−オキシドデカン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)酪酸、グルクロン酸、3−ヒドロキシブタン酸が挙げられ、これらの2種以上の混合物も使用できる。
【0024】
上記ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応は、触媒を加えて加熱することにより行うことができる。反応温度は好ましくは100℃〜220℃、より好ましくは140℃〜210℃の範囲とする。触媒としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、ジオクチルスズネオデカネート等の有機スズ化合物、酸化第一スズ、塩化第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、その他公知のエステル化触媒が利用できる。触媒の使用量は0.1ppm〜1000ppmが好ましく、より好ましくは1ppm〜100ppmである。また、着色を防ぐため窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0025】
本発明で使用するポリエステルの分子量は、重量平均分子量で100〜50,000が好ましく、より好ましくは1,000〜10,000の範囲である。その重量平均分子量が100未満であると分散性が低下するなどの性能低下が見られ、50,000を超えると分散剤としての使用時に粘度が高くなり、扱いにくくなる。
【0026】
本発明で使用するグラフト共重合体の製造方法は特に限定されないが、ポリビニルアセタールに対して直接モノマーを反応させる方法、ポリビニルアセタールが有する水酸基とポリエステルが有するカルボン酸とを脱水縮合させる方法、ポリビニルアセタールが有する水酸基またはエステル基に対し、ポリエステルのエステル交換反応をさせる方法などが挙げられる。
【0027】
ポリビニルアセタールが有する水酸基またはエステル基は、1〜95モル%の範囲でポリエステルとグラフト結合を形成するのが好ましい。より好ましくは、この水酸基またはエステル基の2〜50モル%がポリエステルとグラフト結合を形成したものとする。いずれの場合も未反応のポリエステルが残存していてもよい。
【0028】
(2)クマロン・インデン樹脂
本発明で使用するクマロン・インデン樹脂は、モノマー成分としてクマロン及びインデンを含む樹脂である。両者の割合は、分散剤の用途等により適宜選択されるが、通常はクマロンが1〜20重量%、インデンが40〜90重量%程度である。クマロンはメチルクマロン等のクマロン類を含んでもよく、インデンはメチルインデン等のインデン類を含んでもよいものとする。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。クマロン・インデン樹脂の分子量も分散剤の用途等により適宜選択され、特に限定されるものではないが、通常は重量平均分子量で500〜10,000が好ましく、500〜5,000がより好ましい。商業生産品として入手可能なクマロン・インデン樹脂としては、日塗化学株式会社製のニットレジンクマロンG−90、G−100N、V−120、V−120Sなどがある。
【0029】
(3)分散剤の製造
本発明の分散剤は、上記ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体とクマロン・インデン共重合体との混合物である。ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体に対するクマロン・インデン樹脂の割合は、ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましい。0.1質量部未満であると所望の粘度低下効果が得られ難く、50質量部を超えると分散性能の低下が生じるようになる。
【0030】
ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体とクマロン・インデン共重合体との混合物を製造する方法は特に限定されず、あらかじめポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体を製造してクマロン・インデン樹脂と溶融混練してもよいし、分散剤としての使用時に固体のクマロン・インデン樹脂または分散媒に溶解したクマロン・インデン樹脂を混合してもよい。また、あらかじめポリビニルアセタールとクマロン・インデン樹脂を混合し、その混合物に対してポリエステル鎖をグラフト結合させる方法も用いることができる。
【0031】
2.分散剤の用途等
上記本発明の分散剤は、無機および有機の各種固体粒子の分散に対して有効である。具体的には、塗料、印刷インク、複写用トナー、プラスチック、顔料捺染剤、インクジェット記録用インク、熱転写記録用インク、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インク等の各分野で通常用いられる分散媒体中に、高濃度かつ安定に、固体粒子を分散させることができる。
【0032】
特に本発明では、ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体とクマロン・インデン樹脂を混合して分散剤としたことにより、ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体単独で分散剤として使用した場合と比較して、分散体の粘度を顕著に低下させることができる。分散体の粘度が低下することにより、塗装時の作業性が向上する等の利点が得られ、分散体の用途がさらに広がる。
【0033】
本発明の分散剤により分散される固体粒子は特に限定されないが、無機粒子の例としては、カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸マグネシウム、アスベスト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、三酸化アンチモン、酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、カーボンブラック、黒鉛、鉄粉、銀粉、アルミ粉、銅粉、ニッケル粉、金粉等が挙げられる。有機粒子の例としては、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾロン系、ペリレン系、フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系等の有機顔料、澱粉、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸、固体パラフィン等が挙げられる。
【0034】
分散媒としては、トルエン、キシレン、芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ブチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジグライムなどのエーテル系溶媒、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、p−t−ブチルベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキレングリコールのモノエーテル系溶剤の他、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒等が挙げられ、これらを単独で、または2種以上を混合して適宜使用することができる。
【0035】
本発明の分散剤の使用量は、分散対象となる固体粒子の種類等により適宜調整すればよく、特に限定されないが、通常は固体粒子に対して1〜300質量%程度が好ましい。
【0036】
分散方法は特に限定されず、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の粉砕機を用いる公知の方法で分散することができる。
【0037】
また、本発明の分散剤を用い、固体粒子、樹脂を含有し、さらに必要に応じて溶剤等を含有する、固体粒子含有樹脂組成物を製造することができる。この固体粒子含有樹脂組成物は、例えば塗料組成物又はインク組成物に使用することができる。固体粒子含有樹脂組成物に含有される樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等、広範囲の樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
固体粒子含有樹脂組成物の製造方法としては、本発明の分散剤と固体粒子、樹脂、溶剤、その他添加剤などと混練して直接固体粒子含有樹脂組成物を調製することもできるが、分散剤、固体粒子、分散媒を混練して固体粒子分散体を作った後に、これに樹脂を添加して固体粒子含有樹脂組成物とすることもできる。また、本発明の分散剤と固体粒子、モノマー又は反応性基を有するオリゴマーを混練して分散させた後、これを重合して固体粒子含有樹脂組成物を製造することもできる。
【0039】
さらに、本発明の分散剤により固体粒子の表面処理を行うことができる。処理方法としてはヘンシェルミキサー、ボールミル、アトマイザーコロイドミル、バンバリミキサー等を用いて固体粒子を攪拌しながら分散剤を添加して混合する乾式法、溶剤中で処理した後溶剤を除去する湿式法のいずれも用いることができる。このように本発明の分散剤で表面処理を行うことにより固体粒子の分散性を向上させ、凝集を防止することができる。得られた表面処理固体粒子によれば、さらに分散剤を用いることなしに、上記本発明の固体粒子分散体、固体粒子含有樹脂組成物を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、以下の記載中、特に他に特定しない限り、「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0041】
[分散剤の調製]
[製造例1](ポリビニルアセタール−ポリエステルグラフト共重合体)
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、12−ヒドロキシステアリン酸50.0部、ε−カプロラクトン800.0部、テトラブチルチタネート0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は7,100、酸価は7.9mgKOH/gであった。
【0042】
窒素導入管、温度計、還流管、検水管を取り付けた反応容器に、ポリビニルアセタール(積水化学工業株式会社製、商品名「エスレックBX−L」、平均分子量約20000、水酸基37±3モル%、アセチル基3モル%以下、アセタール化度約61モル%)4.1部、上記反応生成物であるポリエステル129.0部、ジオクチルスズネオデカネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で200℃まで昇温し、6時間加熱を行った。反応生成物は黄色粘調液体で、重量平均分子量は95,000、酸価は3.3mgKOH/gであった。
【0043】
[製造例2](ポリビニルブチラール−ポリエステルグラフト共重合体)
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、ポリビニルブチラール48.8部(積水化学工業株式会社製、商品名「エスレックBL−1」、平均分子量約19000、水酸基約36モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度63±3モル%)、ε−カプロラクトン114.0部(2.5モル当量/対水酸基)、ジオクチルスズネオデカネート0.2部を仕込み、窒素雰囲気下で、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで180℃で加熱を行った。反応生成物は淡黄色粘調液体で、重量平均分子量は85,000であった。
【0044】
[製造例3](ポリビニルブチラール−ポリエステルグラフト共重合体)
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、ジエチレングリコール50.0部、ε−カプロラクトン800.0部、テトラブチルチタネート0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は2000であった。
【0045】
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製、商品名「エスレックBL−1」、平均分子量約19,000、水酸基約36モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度63±3モル%)49.7部、上記反応生成物であるポリエステル50.3部(8モル%/対水酸基)、ジオクチルスズネオデカネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で200℃まで昇温し、6時間加熱を行った。反応生成物は黄色粘調液体で、重量平均分子量は67,500であった。
【0046】
[製造例4](ポリビニルブチラール−ポリエステル共重合体とクマロン・インデン樹脂の混合物)
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製、商品名「エスレックBL−1」、平均分子量約19,000、水酸基約36モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度63±3モル%)27.5部、クマロン・インデン樹脂(日塗化学株式会社製、商品名「ニットレジンクマロンV−120」、平均分子量960)3.1部、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製、商品名「プラクセルH1P」、分子量10,000)50.0部、ジオクチルスズネオデカネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で200℃まで昇温し、6時間加熱を行った。反応生成物は黄色粘調液体で、重量平均分子量は92,500であった。
【0047】
[製造例5](ポリビニルブチラール−ポリエステル共重合体とクマロン・インデン樹脂の混合物)
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、メタノール10.0部、ε−カプロラクトン800.0部、テトラブチルチタネート0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は3100であった。
【0048】
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製、商品名「エスレックBL−1」、平均分子量約19,000、水酸基約36モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度63±3モル%)49.7部、クマロン・インデン樹脂(日塗化学株式会社製、商品名「ニットレジンクマロンG−100N」、平均分子量730)30.1部、上記反応生成物であるポリエステル50.3部、ジオクチルスズネオデカネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で200℃まで昇温し、6時間加熱を行った。反応生成物は黄色粘調液体で、重量平均分子量は70,500であった。
【0049】
[比較製造例1]
窒素導入管、温度計、還流管、検水管を取り付けた反応容器に、ポリエチレンイミン(BASF社製、商品名「Lupasol PR8515」、分子量2000)8.1部、製造例1のポリエステル91.9部、テトラブチルチタネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で200℃まで昇温し、6時間加熱を行った。反応生成物は茶褐色固体で、アミン価は45.5mgKOH/g、酸価は1.1mgKOH/gであった。
【0050】
[製造例6](表面処理顔料の製造)
ピグメントブルー15:6 50.0部、製造例4のグラフト共重合物5.0部、酢酸エチル250部を混合し、1時間攪拌した後、酢酸エチルを減圧留去して表面処理顔料を得た。
【0051】
[分散剤の調製及び耐熱性試験]
上記製造例、比較製造例により得られた分散剤及び次の比較分散剤につき、以下の方法により耐熱性の評価を行った。比較分散剤1,2の詳細は次の通りである。結果を表1に示す。
比較分散剤1:高分子系顔料分散剤(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名「アジスパーPB−822」、アミン価17mgKOH/g、酸価14mgKOH/g)
比較分散剤2:ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製、商品名「エスレックBL−1」、平均分子量約19000、水酸基約36モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度63±3モル%)
【0052】
<色差>
分散剤0.5mgを塩化メチレン20mLに溶解し、シリカゲル10gと混合し室温で乾燥させた。得られたシリカゲルの半量を200℃で1時間加熱処理を行い、処理前後の色差を測色色差計(日本電色工業(株)製)により測定した。
【0053】
<耐熱性>
上記色差を以下の基準により判定した。
○:色差(ΔE)0以上5以下
△:色差(ΔE)5より大きく10未満
×:色差(ΔE)10以上
【0054】
【表1】
【0055】
[固体粒子分散体の調製及び評価]
<分散性>
上記製造例により得られたポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体等、及び比較対象の分散剤を表2に示した分散媒に溶解し、表2に示した固体粒子、0.3mmのジルコニアビーズをそれぞれ加え、ペイントシェーカーを用いて4時間分散した。分散操作停止直後の分散性を目視にて観察し、以下の基準で評価した。実施例14については、製造例7で得られた表面処理顔料に分散媒及び上記ジルコニアビーズを加え、さらなる分散剤の使用は行わなかった以外は同じ操作を行った。結果を表2に示す。
◎:すべての粉末が液中に分散し、まったく底部に沈澱が発生していない
○:ほとんどの粉末が液中に分散しているが、わずかに底部に沈澱が発生した
△:半分程度の粉末が液中に沈澱した
×:ほとんどの粉末が底部に沈澱した
【0056】
<粘度>
上記分散試験で得られた分散体の粘度をB型粘度計で測定した。結果を表2に示す。
【0057】
<塗膜状態>
分散試験後の分散体10.0部にアクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリペットMD」)またはブチラール樹脂(積水化学工業(株)製、商品名「エスレックBH−3」)を0.4部添加し、攪拌して溶解させた。得られた混合液をガラス基板に平均膜厚が1.8μmになるようにスピンコートし、120℃のオーブンで1時間加熱した。得られた塗膜を目視にて観察し、以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
【0058】
○:得られた塗膜が透明である
△:得られた塗膜に曇りが見られる
×:粒子が凝集し、透明性がない
【0059】
<塗膜の耐熱性>
塗膜状態試験で作製した試験板と、さらにそれを230℃で1時間加熱した試験板との色差を測定し、以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
○:色差(ΔE)0以上1以下
△:色差(ΔE)1より大きく2.5未満
×:色差(ΔE)2.5以上
【0060】
【表2】
【0061】
[感光性着色樹脂組成物の調製及び評価]
メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(25/75質量比、重量平均分子量約30000)40.0部、ピグメントブルー15:6 23.0部、製造例4のポリビニルブチラール−ポリエステル共重合体とクマロン・インデン樹脂の混合物7.0部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10.0部、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(2−エトキシスチリル)−s−トリアジン3.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)200部を混合し、0.3mmジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカーにより分散を行い、感光性着色樹脂組成物を得た。
【0062】
ガラス基板に上記感光性着色樹脂組成物をスピンコート塗布し、70℃のクリーンオーブン中で20分間プリベークを行い、乾燥塗布膜を作製した。次いで、この基板を室温に冷却した後、超高圧水銀ランプを用い、紫外線を露光した。その後、この基板を0.04%水酸化カリウム水溶液を用いてスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し、風乾した。その後、クリーンオーブン中で、230℃で30分間ポストベークを行った。乾燥塗膜は±0.5μm以内の均一で平滑な塗膜であり、光透過率(380〜780nmの平均)は98%であった。