【文献】
Satoshi Hasegawa, Yoshio Hayasaki, and Nobuo Nishida,"Holographic femtosecond laser processing with multiplexed phase Fresnel lenses",OPTICS LETTERS,2006.06.01, Vol.31, No.11,p.1705-1707
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレネル型キノフォームは、前記照射対象物における前記変調光の形状を、円形状、矩形状、又は直線状とするキノフォームであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光照射装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光照射装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る光照射装置1Aの構成を示す図である。本実施形態の光照射装置1Aは、光学顕微鏡において観察対象物B(以下、照射対象物という)を照らすための照明装置である。
図1に示されるように、本実施形態の光照射装置1Aは、読み出し光源10と、前段光学系12と、空間光変調器(Spatial Light Modulator;SLM)20と、両側テレセントリック光学系30A(以下、単に光学系30Aという)と、制御部40と、照射対象物Bを支持するステージ50とを備えている。
【0013】
読み出し光源10は、所定波長の読み出し光L1を出力する。読み出し光L1は、単色且つ或る程度のコヒーレンシーを有することが好ましく、例えばレーザ光である。また、読み出し光L1としては、LEDからの光などのコヒーレント性が低い光でもよいが、読み出し光L1に複数の波長成分が含まれる場合、色補正レンズなどによる補正が必要になる場合がある。
【0014】
前段光学系12は、読み出し光源10と光学的に結合されており、読み出し光源10から出力された読み出し光L1を、空間光変調器20へ導く。前段光学系12は、例えばビームエキスパンダや空間フィルタなどの光学系を含むことができる。また、前段光学系12は、例えばビームスプリッタ、波長板、偏光子、及びレンズといった種々の光学部品を含むことができる。
【0015】
空間光変調器20は、二次元配列された複数の領域を含む位相変調面20aを有し、その複数の領域毎に読み出し光L1の位相を変調することにより、変調光L2を生成する。位相変調面20aには、制御部40から提供される制御信号に応じて、フレネル型キノフォームが表示される。なお、キノフォームとは、位相の空間情報を意味する。空間光変調器20は、変調光L2を、光学系30Aに提供する。なお、フレネル型キノフォームの算出方法については後述する。
【0016】
光学系30Aは、前段レンズ31(第1のレンズ)及び後段レンズ32(第2のレンズ)を有している。前段レンズ31は、凸レンズであって、空間光変調器20の位相変調面20aと光学的に結合されている。また、後段レンズ32は、いわゆる対物レンズであり、前段レンズ31と照射対象物Bとの間に配置され、一方の面が前段レンズ31と光学的に結合され、他方の面が照射対象物Bと光学的に結合されている。なお、後段レンズ32は凸レンズであってもよい。光学系30Aは、このような構成を有することにより、位相変調面20aと照射対象物Bとを光学的に結合する。
【0017】
図2は、本実施形態の空間光変調器20の一例として、LCOS型の空間光変調器を概略的に示す断面図であって、読み出し光L1の光軸に沿った断面を示している。この空間光変調器20は、透明基板21、シリコン基板22、複数の画素電極23、液晶層24、透明電極25、配向膜26a及び26b、誘電体ミラー27、並びにスペーサ28を備えている。透明基板21は、読み出し光L1を透過する材料からなり、シリコン基板22の主面に沿って配置される。複数の画素電極23は、シリコン基板22の主面上において二次元格子状に配列され、空間光変調器20の各画素を構成する。透明電極25は、複数の画素電極23と対向する透明基板21の面上に配置される。液晶層24は、複数の画素電極23と透明電極25との間に配置される。配向膜26aは液晶層24と透明電極25との間に配置され、配向膜26bは液晶層24と複数の画素電極23との間に配置される。誘電体ミラー27は配向膜26bと複数の画素電極23との間に配置される。誘電体ミラー27は、透明基板21から入射して液晶層24を透過した読み出し光L1を反射して、再び透明基板21から出射させる。
【0018】
また、空間光変調器20は、複数の画素電極23と透明電極25との間に印加される電圧を制御する画素電極回路(アクティブマトリクス駆動回路)29を更に備えている。画素電極回路29から何れかの画素電極23に電圧が印加されると、該画素電極23と透明電極25との間に生じた電界の大きさに応じて、該画素電極23上の液晶層24の屈折率が変化する。したがって、液晶層24の当該部分を透過する読み出し光L1の光路長が変化し、ひいては、読み出し光L1の位相が変化する。そして、複数の画素電極23に様々な大きさの電圧を印加することによって、位相変調量の空間的な分布を電気的に書き込むことができ、必要に応じて様々なキノフォームを表示することができる。
【0019】
なお、空間光変調器20は、
図2に示されたような電気アドレス型の液晶素子に限られず、例えば光アドレス型の液晶素子や、可変鏡型の光変調器であってもよい。また、
図2には反射型の空間光変調器20が示されているが、本実施形態の空間光変調器20は透過型であってもよい。
【0020】
以下、空間光変調器20に表示されるフレネル型キノフォームの算出方法の例として、逆伝搬による計算方法について説明する。
【0021】
本実施形態では、空間光変調器20によって変調された変調光L2の再生像面が、照射対象物Bと重なるように設定される。この再生像面における変調光L2のパターン(ターゲットパターン)がM個(但しMは2以上の整数)の点光源によって構成されていると仮定すると、位相変調面20aにおけるホログラム面は、各点光源からの波面伝搬関数の総和として扱うことができる。そして、再生像面における各点光源の座標を(x
m,x
m)(但し、m=0,1,・・・,M−1)とすると、ホログラム面の各画素の座標(x
a,y
b)(但し、a,b=0,1,・・・,N−1、Nはx方向及びy方向における画素数)における各点光源の波面伝搬関数u
m(x
a,y
b)は、次の数式(1)のように表される。
【数1】
但し、iは虚数単位であり、kは波数(=2π/λ、λは変調光L2の波長)であり、zは再生像面とホログラム面との距離であり、A
mは複素振幅成分(すなわち光の強さ)であり、θ
mは位相成分であり、δは各画素での初期位相である。また、r
mは次の数式(2)
【数2】
により定義される数値であって、再生像面内の各点光源からホログラム面の各画素までの距離を表している。
【0022】
本方法では、M個の点光源に関する波面伝搬関数u
mの総和u
total(x
a,y
b)を次の数式(3)によって求める。
【数3】
そして、この総和u
total(x
a,y
b)から位相成分を抽出することにより、計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram;CGH)を作成する。なお、ここで位相成分を抽出するのは、空間光変調器20が位相変調型の空間光変調器であることから、波面伝搬関数u
mに含まれる振幅情報を無視するためである。また、この計算の際、位相折り畳みの折り返し線がナイキスト周波数を越えないように、すなわち波面伝搬関数u
mの位相項exp(−iθ
m)において、隣接する画素との位相差がπ(rad)を越えないように、波面伝搬関数u
mの関数領域を制限する必要がある。
【0023】
図3〜
図5は、(a)上記の計算方法により算出されたフレネル型キノフォームを示す画像と、(b)そのキノフォームによって照射対象物Bに照射される変調光L2の形状(光軸に垂直な断面形状)を示す図である。
図3は、照射対象物Bにおける変調光の形状が矩形状である場合を示している。
図4は、照射対象物Bにおける変調光の形状が円形状である場合を示している。
図5は、照射対象物Bにおける変調光の形状が、互いに平行な2本の直線状である場合を示している。
【0024】
上記の計算方法によれば、位相変調面20aに表示されるフレネル型キノフォームを、これらのように、照射対象物Bにおける変調光L2の形状を円形状、矩形状、又は直線状とするキノフォームとすることが可能である。なお、照射対象物Bにおける変調光L2の形状はこれらに限られず、様々な形状が可能である。
【0025】
また、上記の計算方法を用いると、照射対象物Bに対して立体的に(三次元的に)変調光L2を照射することができるキノフォームも計算可能である。
図6は、照射対象物B(例えば細胞)に対して変調光L2を立体的に照射している様子を概念的に示す図である。図中に示された実線Cは、照射対象物Bの表面において変調光L2が照射される部分を表している。
【0026】
なお、上記の計算方法において、再生像面における光強度分布の中心部分の光強度を、該光強度分布の周囲部分の光強度よりも小さくすることにより、十分な開口数(NA)を維持しつつ照射光量を調整することができる。また、計算的もしくは実験的なフィードバックを行う反復法によって、光強度A
mの分布を調整してもよい。
【0027】
また、上記の計算方法において、開口数(NA)を、ナイキスト周波数を超えない程度に変更してもよい。これにより、照射対象物Bに照射される変調光L2の光強度、及び集光点の大きさを任意に変更することができる。
【0028】
また、上記の計算方法における数式の中に初期値を含めても良いが、次の数式(4)によって算出される初期位相θ
m’を、キノフォーム算出後に加算してもよい。
【数4】
なお、この初期位相θ
m’は、収差補正、ビーム整形、ビーム拡がりなどを調整するためのものであってもよい。
【0029】
また、上記の計算方法において、変調光L2の波長(設計波長)は、空間光変調器20が変調し得る範囲に含まれる波長であればよく、他の要件によっては何ら制限されない。
【0030】
また、上記の計算方法において使用される読み出し光L1の強度の値は、理論値及び実験値の何れでもよい。但し、読み出し光L1の光軸に垂直な断面における強度分布は、均一に近いことが望ましい。読み出し光L1の強度分布が均一ではない場合には、読み出し光L1の強度分布情報を含めた計算によりキノフォームを設計する必要がある。このときの読み出し光L1の強度分布は、位相変調面20aと共役な面において取得された強度分布であることが望ましい。
【0031】
なお、位相変調面20aに表示されるキノフォームは、上述した逆伝搬による計算方法以外にも、様々な方法により算出されることができる。例えば、一般的な反復法(例えばGS法)などにフレネル回折を適用した計算方法を用いて、キノフォームを計算してもよい。
【0032】
続いて、位相変調面20aに表示されるフレネル型キノフォームおよび光学系30Aの構成について、詳細に説明する。
図7(a)〜
図7(c)は、位相変調面20aから出射される変調光L2が光学系30Aによって集光される様子を示す図である。本実施形態において、位相変調面20aと前段レンズ31との光学距離d1は、前段レンズ31の焦点距離と実質的に等しい。本実施形態の光学系30Aは、このような点において
図12に示された構成とは相違している。
図12の構成では、空間光変調器102の位相変調面とレンズ106との距離は、位相変調面に表示されるフレネルレンズの焦点距離dと、レンズ106の焦点距離faとの和となる。
【0033】
本実施形態において、位相変調面20aに表示されるフレネル型キノフォームは、前段レンズ31に向けて変調光L2を縮径させる(集光する)キノフォームを含むことができる。
図7(a)及び
図7(b)は、前段レンズ31に向けて縮径される変調光L2を示している。
図7(a)に示される形態では、フレネル型キノフォームによる焦点距離は、位相変調面20aと前段レンズ31との光学距離d1よりも長い。また、
図7(b)に示される形態では、フレネル型キノフォームによる焦点距離は、位相変調面20aと前段レンズ31との光学距離d1よりも短い。
【0034】
また、本実施形態において、位相変調面20aに表示されるフレネル型キノフォームは、前段レンズ31に向けてレーザ光を拡径させるキノフォームを含んでもよい。
図7(c)は、前段レンズ31に向けて拡径される変調光L2を示している。なお、比較のため、
図7(a)〜
図7(c)には、位相変調面20aから平行光として出射された変調光L3の輪郭が破線で示されている。
【0035】
図7(a)〜
図7(c)に示されるように、位相変調面20aから出射される変調光L2の形態によって、光軸方向における集光点P0の位置が変化する。すなわち、集光点P0と後段レンズ32の焦平面Fとの距離Δzは、位相変調面20aに表示されるフレネル型キノフォームによって決定される。
【0036】
照射対象物Bを照明する際、集光点が大きく照射領域が広い場合には、このような光学系30Aは省略されることも可能であるが、顕微鏡での光照射においては、集光点を小さくし、且つ狭い領域に効率良く集光させる必要がある。しかし、位相変調型の空間光変調器20のみでは、その位相分解能及び空間分解能が十分ではない場合があり、そのような場合には十分に小さな集光点を生成することが難しい。したがって、高い開口数(NA)を有するレンズを用いて光学系30Aを構成することが望ましい。
【0037】
そして、このような場合、ケプラー型アフォーカル光学系(4f光学系)を用い、且つ、この光学系の後段レンズを対物レンズとすることが望ましい。本実施形態の光学系30Aはケプラー型アフォーカル系を成しており、前段レンズ31と後段レンズ32との光学距離d2が、前段レンズ31の焦点距離f
1と後段レンズ32の焦点距離f
2との和(f
1+f
2)と実質的に等しい。また、このような光学系30Aは両側テレセントリックな光学系であるため、対物レンズ(後段レンズ32)の焦平面は、空間光変調器20の位相変調面20aと共役な関係にある。なお、フーリエ光学系の0次光成分はバックグラウンドノイズとして残留するが、本実施形態の光学系30Aでは、このようなノイズは集光点に比べて無視できる程度に小さい。
【0038】
ここで、4f光学系の縮小倍率Mは、次の数式(5)によって求められる。
【数5】
空間光変調器20から共役面までの距離Lは
【数6】
であるため、これらの数式(5)及び(6)に基づいて、最適な前段レンズ31及び後段レンズ32の組み合わせを決定することができ、光学系の最適化を図ることができる。
【0039】
一方、光軸方向における集光点の位置は、キノフォーム設計値及び縮小倍率Mによって一義的に決定される。すなわち、キノフォームの設計焦点距離をzとすると、集光点は、後段レンズ32の焦平面からΔz(=z×M)の距離に位置することとなる(
図7(a)〜
図7(c)を参照)。この関係は、zが負である場合であっても同様に成り立つ。
【0040】
なお、後段レンズ32と位相変調面20aとの間隔が変化しても上記の関係は成り立つが、この間隔が大きく変化する場合には、合成焦点距離の計算を含めてΔzを求めることが好ましい。これは、光学系30Aがケプラー型アフォーカル系を構成する場合であっても同様である。このようなΔzは、例えば次のようにして求められる。位相変調面20aに表示されるフレネル型キノフォームの焦点距離をf
SLM、前段レンズ31の焦点距離をf
1、後段レンズ32の焦点距離をf
2、位相変調面20aと前段レンズ31との距離をf
1、前段レンズ31と後段レンズ32との距離をf
1+f
2とすると、フレネル型キノフォームと前段レンズ31との合成焦点距離f’は、次の数式(7)によって算出される。
【数7】
これと同様に、合成焦点距離f’と後段レンズ32との合成焦点距離fは、次の数式(8)によって算出される。
【数8】
そして、Δzは次の数式(9)によって算出される。
【数9】
【0041】
なお、本実施形態の光学系30Aにおいて、前段レンズ31及び後段レンズ32は、それぞれが単一のレンズから成ってもよく、また、それぞれが複数のレンズから成ってもよい。また、光学系30Aは、前段レンズ31及び後段レンズ32に加えて、別のレンズを含んでもよい。その場合、別のレンズの焦点距離を上記の合成焦点距離fの計算に含めるとよい。また、光学系30Aは、前段レンズ31及び後段レンズ32に加えて、レンズ以外の光学部品(例えば、ビームスプリッタ、波長板、偏光子、スキャナなど)を、大きな波面収差が生じない程度に含んでもよい。
【0042】
以上に説明した、本実施形態による光照射装置1Aによって得られる効果について説明する。前述したように、非特許文献1に記載された装置では、
図12に示されたように、集光点P1において変調光Laを一旦収束させているため、レンズ108から出力される変調光Laの集光点P2の光軸方向における可変範囲は、レンズ108の焦点深度程度であり、極めて小さい。したがって、光軸方向における変調光Laの照射位置を可変とするためには、テレセントリック光学系104や照射対象物を光軸方向に移動させる必要があり、装置の構造が複雑になってしまう。つまり、空間光変調器102に表示されるフレネルレンズの焦点距離をd、レンズ106の焦点距離をfaとすると、空間光変調器102とレンズ106との距離がd+faとなるように、テレセントリック光学系104をステージなどによって移動させなくてはならない。また、レンズ108の焦点距離をfbとすると、レンズ108から距離fbを隔てた位置に対象物を配置する必要があるので、テレセントリック光学系104と同時に対象物の位置をも移動させなくてはならない。
【0043】
このような問題点に対し、本実施形態の光照射装置1Aでは、位相変調面20aに表示されるキノフォームを変更することのみによって、光学系30Aを移動させることなく、光軸方向における変調光L2の照射位置(すなわち集光点の位置、Δz)を変化させることができる。したがって、この光照射装置1Aによれば、光軸方向における変調光L2の照射位置の変化を、簡易な構成によって容易に行うことができ、装置の小型化が可能となる。また、位相変調面20aに表示されるキノフォームとしてフレネル型キノフォームを採用しているので、変調光L2の照射位置の可変範囲を十分に広くすることができる。また、読み出し光L1の光強度分布や波長が変動した場合であっても、光学系30Aを移動させることなく、キノフォームの変更のみによって変調光L2の照射位置を調整することができる。
【0044】
また、照射対象物Bに照射される変調光L2の光軸を変更する場合においても、位相変調面20aに表示されるキノフォームを変更することのみによって、光学系30Aを移動させることなく変更することができる。したがって、このような光軸の変更も容易に行うことができる。更には、光学系30Aを交換することなく、開口数(NA)を変更することも容易にできる。また、照射対象物Bに照射される変調光L2の光量の調整も容易である。
【0045】
また、この光照射装置1Aによれば、顕微鏡の拡大倍率を変更するために対物レンズ(後段レンズ32)が交換された場合であっても、キノフォームの変更のみによって変調光L2の形状を維持することができ、光学系の変更を不要とすることができる。
【0046】
また、この光照射装置1Aによれば、フーリエ型CGHでは実現困難な、強度均一性の高い直線などの連続した断面形状を有する照明光を容易に実現することができる。また、この光照射装置1Aによれば、同時に照明される照射対象物Bの領域は平面的な領域に限られず、立体的な領域を同時に照明することもできる。
【0047】
また、この光照射装置1Aによれば、位相変調面20aに表示されるキノフォームとしてフレネル型キノフォームを採用しているので、前述したように0次光成分による影響を抑えることができる。したがって、例えばこの光照射装置1Aが蛍光顕微鏡に適用される場合には、退色(Photobleach)を小さく抑えることができる。
【0048】
また、この光照射装置1Aでは、変調光L2の光強度分布を実験的に計測し、その計測結果をキノフォームの設計にフィードバックしてもよい。これにより、使用者側の需要に適合し且つ汎用性の高い態様での照明が可能となる。なお、変調光L2の光強度分布を計測する際には、変調光L2の集光面と同じ像面を観察可能な位置に計測器を配置するとよい。
【0049】
また、この光照射装置1Aでは、読み出し光源10とは別に参照用光源及び波面センサを更に設けることにより、変調光L2に対して光学的な補償を行ってよい。このとき、波面センサの検出結果から算出された補償用波面は、上述したキノフォーム算出の際の初期値として与えられるとよい。
【0050】
なお、この光照射装置1Aは、近年盛んに研究されているSIM(Structured Illumination Microscopy)への適用も可能である。
【0051】
(第1の変形例)
図8は、上記実施形態の第1変形例として、光照射装置1Bの構成を示す図である。この光照射装置1Bは、上記実施形態の光学系30Aに代えて、光学系30Bを備えている。なお、光学系30Bを除く他の構成については、上記実施形態と同様である。
【0052】
本変形例の光学系30Bは、前段レンズ31と、後段レンズ33とを有する。前段レンズ31及び後段レンズ33は、いわゆるガリレイ型アフォーカル系を成しており、後段レンズ33は凹レンズである。このような構成を備える光照射装置1Bであっても、上述した光照射装置1Aと同様の作用効果を奏することができる。但し、本変形例では、位相変調面20aに表示されるキノフォームの位相分布の正負を反転する必要があり、また、後段レンズ33は凹レンズとなるので通常の対物レンズを使用することができない。なお、本変形例において、Δzの算出方法は上記実施形態と同様である。
【0053】
(第2の変形例)
図9は、上記実施形態の第2変形例として、光照射装置1Cの構成を示す図である。この光照射装置1Cは、上記実施形態の光照射装置1Aの構成に加えて、観察光学系40Aを備えている。この観察光学系40Aは、照射対象物Bを支持するステージ50に対して照射対象物Bと同じ側に配置されている。
【0054】
本変形例の観察光学系40Aは、ビームスプリッタ41と、画像取得用センサ42とを有する。ビームスプリッタ41は、位相変調面20aと前段レンズ31との間に光学的に結合されている。ビームスプリッタ41は、位相変調面20aから出射された変調光L2を前段レンズ31に向けて透過するとともに、後段レンズ32及び前段レンズ31を介して得られる照射対象物Bに関する光像L4を、画像取得用センサ42に向けて反射する。画像取得用センサ42は、ビームスプリッタ41と光学的に結合された光検出面を有し、光像L4を撮像して画像データを生成する。前段レンズ31から画像取得用センサ42までの光学距離は、前段レンズ31の焦点距離と略等しいか、その焦点距離に近いことが好ましい。なお、ビームスプリッタ41と画像取得用センサ42との間に、リレーレンズといった光学系や、フィルタなどの光学部品が設けられてもよい。
【0055】
画像取得用センサ42は、一次元センサ、二次元イメージセンサ、及び分光器のうちの何れであってもよく、或いはこれらを併用してもよい。画像取得用センサ42が一次元センサである場合には、前段レンズ31と画像取得用センサ42との間にピンホールを配置し、共焦点系を構成してもよい。なお、画像取得用センサ42は、光検出面の位置を可変にする位置調整機構を有することが好ましい。また、画像取得用センサ42の光検出面は、光像L4の集光面に位置することが好ましい。
【0056】
(第3の変形例)
図10は、上記実施形態の第3変形例として、光照射装置1Dの構成を示す図である。この光照射装置1Dは、上記実施形態の光照射装置1Aの構成に加えて、観察光学系40Bを備えている。この観察光学系40Bは、照射対象物Bを支持するステージ50に対して照射対象物Bと同じ側に配置されている。
【0057】
本変形例の観察光学系40Bは、第2変形例の観察光学系40Aの構成(ビームスプリッタ41及び画像取得用センサ42)に加えて、結像レンズ43を有する。結像レンズ43は、ビームスプリッタ41と画像取得用センサ42の光検出面との間に光学的に結合されている。結像レンズ43から画像取得用センサ42までの光学距離は、結像レンズ43の焦点距離と略等しいか、その焦点距離に近いことが好ましい。なお、ビームスプリッタ41と画像取得用センサ42との間に、リレーレンズといった光学系や、フィルタなどの光学部品が更に設けられてもよい。また、画像取得用センサ42の光検出面は、光像L4の集光面に位置することが好ましい。
【0058】
(第4の変形例)
図11は、上記実施形態の第4変形例として、光照射装置1Eの構成を示す図である。この光照射装置1Eは、上記実施形態の光照射装置1Aの構成に加えて、観察光学系40Cを備えている。この観察光学系40Cは、照射対象物Bを支持するステージ50に対して照射対象物Bとは反対側に配置されており、ステージ50を透過した光像L4を観察する。
【0059】
観察光学系40Cは、結像レンズ44と、対物レンズ45と、画像取得用センサ46とを有する。結像レンズ44は、画像取得用センサ46の光検出面と光学的に結合されている。また、対物レンズ45は、結像レンズ44と照射対象物Bとの間に配置され、一方の面が結像レンズ44と光学的に結合され、他方の面が照射対象物Bと光学的に結合されている。観察光学系40Cは、このような構成を有することにより、照射対象物Bに関する光像L4を撮像して画像データを生成する。
【0060】
結像レンズ44から画像取得用センサ46までの光学距離は、結像レンズ44の焦点距離と略等しいか、その焦点距離に近いことが好ましい。なお、結像レンズ44と画像取得用センサ46との間に、リレーレンズといった光学系や、フィルタなどの光学部品が設けられてもよい。
【0061】
画像取得用センサ46は、一次元センサ、二次元イメージセンサ、及び分光器のうちの何れであってもよく、或いはこれらを併用してもよい。画像取得用センサ46が一次元センサである場合には、結像レンズ44と画像取得用センサ46との間にピンホールを配置し、共焦点系を構成してもよい。なお、画像取得用センサ46は、光検出面の位置を可変にする位置調整機構を有することが好ましい。また、画像取得用センサ46の光検出面は、光像L4の集光面に位置することが好ましい。
【0062】
以上、本発明に係る光照射装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上記実施形態に限られず、レーザー加工装置などの光照明装置としても用いることができる。また、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。