特許第5951468号(P5951468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951468
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】防振ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/387 20060101AFI20160630BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   F16F1/387 C
   F16F1/38 U
   F16F1/38 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-278435(P2012-278435)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-122661(P2014-122661A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】方村 知行
(72)【発明者】
【氏名】北野 利幸
(72)【発明者】
【氏名】前川 普
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−322187(JP,A)
【文献】 特開平05−126185(JP,A)
【文献】 特開2002−227896(JP,A)
【文献】 特開2001−336575(JP,A)
【文献】 特開平05−302637(JP,A)
【文献】 特開2011−226532(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201487109(CN,U)
【文献】 米国特許第5472226(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/38 − 1/393
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、前記内筒を軸平行に取り囲む外筒と、前記内筒と前記外筒との間に設けられたゴム状弾性体とを備え、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とが前記ゴム状弾性体の加硫成形により一体に加硫接着された後に前記外筒が絞り加工されてなる防振ブッシュにおいて、
前記ゴム状弾性体は、前記内筒を挟んだ両側に軸方向に貫通する一対の空洞部と、一対の前記空洞部に周方向に挟まれ前記内筒と前記外筒とを連結する連結部と、前記連結部を軸方向に貫通し前記内筒から前記外筒へ向けて延びる穴部とを備え、
前記穴部は、前記絞り加工により前記内筒側に空隙を残して周方向に対向する穴壁が当接していることを特徴とする防振ブッシュ。
【請求項2】
前記穴部は、前記絞り加工により前記内筒側及び前記外筒側に空隙を残して周方向に対向する前記穴壁が当接していることを特徴とする請求項1に記載の防振ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車のエンジンマウントやサスペンションブッシュなどとして使
用される防振ブッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防振ブッシュは、内筒と、これを軸平行に取り囲む外筒と、内筒と外筒との間に設けられたゴム状弾性体を備え、ゴム状弾性体が、内筒の外周面と外筒の内周面とを連結するように両者に加硫接着されたものが知られている。
【0003】
この種の防振ブッシュでは、内筒を挟んだ両側に軸方向に貫通する一対の空洞部をゴム状弾性体に設けることで、各方向に入力される荷重の大きさや周波数等に応じて、ばね定数等を調節することがある(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−162907号公報
【特許文献2】特開2001−336575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した一対の空洞部が設けられた従来の防振ブッシュでは、空洞部を挟んで内筒と外筒が相互に接近離隔する第1軸直方向の振動荷重が入力されると、ゴム状弾性体において内筒と外筒とを連結する連結部に歪みが集中しやすく、充分な耐久性を得ることが困難であるという問題がある。
【0006】
これに対して、連結部に穴部を設けることで連結部に集中する歪みを緩和することができるが、前記の第1軸直方向のバネ定数が低下してしまい、所望の特性が得られない可能性がある。
【0007】
本発明は上記問題を考慮してなされたものであり、バネ定数の低下を抑えつつ耐久性を向上させることができる防振ブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る防振ブッシュは、内筒と、前記内筒を軸平行に取り囲む外筒と、前記内筒と前記外筒との間に設けられたゴム状弾性体とを備え、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とが前記ゴム状弾性体の加硫成形により一体に加硫接着された後に前記外筒が絞り加工されてなる防振ブッシュにおいて、前記ゴム状弾性体は、前記内筒を挟んだ両側に軸方向に貫通する一対の空洞部と、一対の前記空洞部に周方向に挟まれ前記内筒と前記外筒とを連結する連結部と、前記連結部を軸方向に貫通し前記内筒から前記外筒へ向けて延びる穴部とを備え、前記穴部は、前記絞り加工により前記内筒側に空隙を残して周方向に対向する穴壁が当接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防振ブッシュであると、バネ定数の低下を抑えつつ耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1実施形態に係る防振ブッシュの平面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】本発明の1実施形態に係る防振ブッシュの絞り加工前の平面図である。
図4】本発明の変更例1に係る防振ブッシュの平面図であって、(a)が絞り加工前、(b)が絞り加工後を示す。
図5】本発明の変更例2に係る防振ブッシュの平面図であって、(a)が絞り加工前、(b)が絞り加工後を示す。
図6】本発明の変更例3に係る防振ブッシュの平面図であって、(a)が絞り加工前、(b)が絞り加工後を示す。
図7】本発明の変更例4に係る防振ブッシュの平面図であって、(a)が絞り加工前、(b)が絞り加工後を示す。
図8】(a)(b)は比較例に係る防振ブッシュの平面図である。
図9】本発明の1実施形態に係る防振ブッシュの特性を示すグラフであって、(a)が歪み−変位(撓み)特性、(b)が荷重−変位(撓み)特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態の防振ブッシュ10は、例えば、自動車のエンジンをその後部側にて支承するエンジンマウントとして用いられるものである。
【0013】
この防振ブッシュ10は、図1及び図2に示すように、内筒12と、その周りを軸平行に取り囲む外筒14と、内筒12と外筒14との間に設けられたゴム状弾性体16とを備え、内筒12を例えばエンジン側に、外筒14を不図示のブラケットを介して車体などの支持側に、それぞれ固定して、内筒12の軸芯Oが水平になるように車両に搭載される、横置きブッシュタイプの防振装置である。
【0014】
内筒12は、図1に示す軸方向視において軸方向Xに垂直な第1軸直方向Y1に沿った長さが、これに垂直な第2軸直方向Y2に沿った長さより長い長円状の金属製の筒部材である。外筒14は、薄肉円筒状の金属製部材であり、図2に示すように、内筒12よりも軸方向Xにおける寸法が短く設定されている。
【0015】
ゴム状弾性体16は、軸方向Xに垂直な第1軸直方向Y1に内筒12を挟んで対向する位置に、軸方向Xに貫通する一対の空洞部20が設けられており、これにより、内筒12と外筒14との間に一対の連結部22とストッパ部24とが区画形成されている。
【0016】
空洞部20は、図1に示すような軸方向視において、第1軸直方向Y1に比べて第2軸直方向Y2に沿って長く延びる形状をなしている。空洞部20を区画する周壁には、内筒側の周壁及び外筒側の周壁の少なくとも一方の周壁から第1軸直方向Y1に向けてストッパ部24が突出形成されている。
【0017】
一対の連結部22は、一対の空洞部20に周方向Cに挟まれた位置において、内筒12の外周面と外筒14の内周面とを第2軸直方向Y2に連結することで、空洞部20が設けられた第1軸直方向Y1に比べて第2軸直方向Y2のバネ定数を高く設定する。
【0018】
一対の連結部22には、軸方向Xに貫通する穴部26がそれぞれ1つずつ設けられている。穴部26は、軸方向視において内筒12から外筒14へ向けて径方向(この実施形態では第2軸直方向Y2)に沿って細長く延設しており、内筒12側の端部及び外筒14側の端部にそれぞれ空隙28a、28bを残して周方向Cに対向する穴部26の穴壁30が当接している。内筒12側の空隙28aは、外筒14側の空隙28bに比べて軸方向Xに開口する面積が大きくなっている。
【0019】
上記のような防振ブッシュ10は、内筒12の外周面と外筒14の内周面とがゴム状弾性体16の加硫成形により一体に加硫接着された後、不図示のダイスを用いて外筒14が縮径方向に絞り加工され得られる。
【0020】
より具体的には、図3に示すように、絞り加工前の内筒12と外筒14とをゴム状弾性体16で加硫接着した状態の防振ブッシュ10’では、空洞部20と連結部22とストッパ部24と穴部26を備えたゴム状弾性体16が、内筒12と外筒14との間に加硫成形されている。絞り加工前のゴム状弾性体16に設けられた穴部26は、内筒12側の端部が周方向Cの両側に延設するとともに、周方向Cに対向する穴壁30が離間しており、軸方向Xに略T字状に開口している。
【0021】
そして、内筒12及び外筒14にゴム状弾性体16が加硫接着された防振ブッシュ10’の外筒14に対して絞り加工が施されて縮径されることによりゴム状弾性体16が予圧縮され、略T字状に開口する穴部26は、内筒12側の端部及び外筒14側の端部に空隙28a,28bを残しつつ周方向Cに対向する穴壁30が当接する。
【0022】
以上のような構成の防振ブッシュ10では、内筒12と外筒14とを連結する連結部22を軸方向Xに貫通する穴部26が、外筒14に対する絞り加工により内筒12側の端部に空隙28aを残して周方向Cに対向する穴壁30が当接している。このように内筒12と外筒14とを連結する連結部22に軸方向Xに貫通する穴部26が設けられているとともに、特に歪みが集中しやすい連結部22の内筒12側に空隙28aが残されているため、連結部22に集中する歪みを効果的に緩和することができ、防振ブッシュ10の耐久性を向上させることができる。
【0023】
しかも、連結部22に設けられた穴部26は、絞り加工により周方向Cに対向する穴壁30が当接しているため、防振ブッシュ10に対して第1軸直方向Y1に入力された荷重を穴壁30で受けることができ、第1軸直方向のバネ定数の低下を抑えることができる。
【0024】
更に、本実施形態では、穴部26の外筒14側の端部にも空隙28bが残されているため、防振ブッシュ10に対して荷重が入力されても穴部26の外筒14側の先端を起点としてゴム状弾性体16に亀裂が生じにくくなり、防振ブッシュ10の耐久性を更に向上させることができる。
【0025】
また、内筒12と外筒14との間にゴム状弾性体16を加硫成形するには、通常、中子型を用いて連結部22に穴部26を成形するが、穴部26の外筒14側の端部に空隙28bを残す場合であると、絞り加工前の穴部26の形状として、穴部26の外筒14側の端部において周方向Cの間隔を確保することができるため、ゴム状弾性体16の加硫成形後に穴部26を成形するための中子型を脱型する際に穴部26の外筒14側の端部から亀裂が生じにくく、製造が容易となる。
【0026】
(変更例)
上記した実施形態では、連結部22に設けられた穴部26を第2軸直方向Y2に沿って細長く延設し、軸方向Xに略T字状に開口する形状にする場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図4(a)のように第1軸直方向Y2に寄った位置に内筒12から外筒14へ向けて径方向へ穴部26を延設し、絞り加工によって図4(b)のように当該穴部26の周方向Cに対向する穴壁30を当接させたり、あるいは、図5(a)のように穴部26の内筒12側の端部を周方向Cの一方側に延設させて穴部26を軸方向Xに略L字状に開口する形状に設け、絞り加工によって図5(b)のように当該穴部26の周方向Cに対向する穴壁30を当接させてもよい。
【0027】
また、上記した実施形態では、内筒12から外筒14へ向けて細長く穴部26を延設し、絞り加工によって周方向Cに対向する穴部26の穴壁30を広範囲にわたって当接させる場合について説明したが、図6(a)や図7(a)に示すように、穴部26において周方向Cに対向する穴壁30から対向する穴壁30へ向けて突出する突起31を設け、絞り加工によって図6(b)や図7(b)のように突起31を対向する穴壁30に当接させてもよい。
【0028】
その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。
【0030】
実施例は、図1に示す防振ブッシュ10であり、連結部22に設けられた穴部26が、絞り加工により内筒12側の端部及び外筒14側の端部に空隙28a、28bを残して周方向Cに対向する穴壁30が当接している。比較例1は図8(a)に示す連結部22に穴部26が無い防振ブッシュ100であり、比較例2は図8(b)に示す連結部22を貫通する穴部26を備えるが周方向Cに対向する穴壁30が当接していない防振ブッシュ110である。
【0031】
実施例の防振ブッシュ10は、図9(a)に示すように、歪み−撓み曲線の傾きが、連結部22に穴部26の無い比較例1の防振ブッシュ100に比べて小さく、連結部22を貫通する穴部26を備える比較例2の防振ブッシュ110と同程度まで連結部22の歪みが低減された。
【0032】
また、実施例の防振ブッシュ10は、図9(b)に示すように、荷重−撓み曲線の傾きが、比較例2の防振ブッシュ110より大きく、連結部22に穴部26を設けてもバネ定数の低下を抑えることができた。
【符号の説明】
【0033】
10…防振ブッシュ
12…内筒
14…外筒
16…ゴム状弾性体
20…空洞部
22…連結部
24…ストッパ部
26…穴部
28a…空隙
28b…空隙
30…穴壁
31…突起
C…周方向
X 軸方向
Y1 第1軸直方向
Y2 第2軸直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9