特許第5951475号(P5951475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951475空気調和装置及びそれに用いられる室外熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951475
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】空気調和装置及びそれに用いられる室外熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/00 20060101AFI20160630BHJP
   F24F 1/18 20110101ALI20160630BHJP
   F28D 1/047 20060101ALI20160630BHJP
   F28F 27/02 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   F25B41/00 C
   F24F1/18
   F28D1/047 B
   F28F27/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-284959(P2012-284959)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-126322(P2014-126322A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】浦田 和幹
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康孝
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−163739(JP,A)
【文献】 特開2001−304621(JP,A)
【文献】 特開2012−184866(JP,A)
【文献】 特開2009−287837(JP,A)
【文献】 特開2011−214759(JP,A)
【文献】 特開2007−278676(JP,A)
【文献】 特開2001−116396(JP,A)
【文献】 特開2011−144968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/00−39/04,41/00
F24F 1/14−1/18
F28D 1/047
F28F 9/00,27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室外熱交換器及び室外膨張弁を有する室外機と、室内熱交換器及び室内膨張弁を有する室内機を、液接続配管及びガス接続配管で接続して冷凍サイクルを構成すると共に、前記室外熱交換器は、複数枚の板状フィンと、該板状フィンに直交するように貫通し内部を冷媒が流通する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液分配器及びガス分配器を備えている空気調和装置であって、
前記室外熱交換器における前記ガス分配器側のパス数が、前記液分配器側のパス数に対して倍以上となるように構成されると共に、
記室外熱交換器は、伝熱管の段数が同じ複数の室外熱交換器で構成され、この複数各室外熱交換器には、それぞれ、複数枚の板状フィンと、該板状フィンに直交する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液分配器及びガス分配器が備えられるように構成し、
前記複数各室外熱交換器を合せた前記液分配器側のパス数が「前記室外熱交換器の伝熱管の段数/4」の値よりも多くなるように構成され、
前記室外機には前記液接続配管と接続される部分に液阻止弁が設けられ、
この液阻止弁と前記室外熱交換器を接続する冷媒配管に前記室外膨張弁が設けられ、この室外膨張弁と、前記複数の各室外熱交換器との間に、一方が1方向に、他方が2方向に分岐する冷媒分配器を設け、
この冷媒分配器の1方向側と前記室外膨張弁を配管接続すると共に、該冷媒分配器の2方向側と前記複数の各室外熱交換器の一端側とを配管接続している
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
圧縮機、室外熱交換器及び室外膨張弁を有する室外機と、室内熱交換器及び室内膨張弁を有する室内機を、液接続配管及びガス接続配管で接続して冷凍サイクルを構成すると共に、前記室外熱交換器は、複数枚の板状フィンと、該板状フィンに直交するように貫通し内部を冷媒が流通する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液分配器及びガス分配器を備えている空気調和装置であって、
前記室外熱交換器における前記ガス分配器側のパス数が、前記液分配器側のパス数に対して倍以上となるように構成されると共に、
記室外熱交換器は、伝熱管の段数が同じ複数の室外熱交換器で構成され、この複数各室外熱交換器には、それぞれ、複数枚の板状フィンと、該板状フィンに直交する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液分配器及びガス分配器が備えられるように構成し、
前記複数各室外熱交換器を合せた前記液分配器側のパス数が「前記室外熱交換器の伝熱管の段数/4」の値よりも多くなるように構成され、
前記室外機には前記液接続配管と接続される部分に液阻止弁が設けられ、
この液阻止弁と前記室外熱交換器を接続する冷媒配管に、一方が1方向に、他方が2方向に分岐する冷媒分配器を設け、
この冷媒分配器の1方向側と液阻止弁の一端側とを配管接続すると共に、該冷媒分配器の2方向側と、前記複数の各室外熱交換器の一端側とを配管接続し、
前記冷媒分配器と前記各室外熱交換器の一端側とを接続しているそれぞれの冷媒配管には、独立して弁開度の制御が可能な室外膨張弁がそれぞれ設けられている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気調和装置であって、
前記室外熱交換器に用いられる前記伝熱管は内径がφ7mm〜φ5mmの細径伝熱管であることを特徴とする空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置及びそれに用いられる室外熱交換器に関し、特に室外熱交換器に用いられる伝熱管としてより細径なものを使用するものに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和装置に用いられている室外熱交換器としては、図4に示すものがある。この図4に示す室外熱交換器5は、複数枚の板状フィン51と、該板状フィン51に直交するように貫通し、内部を冷媒(作動流体)が流通する複数の伝熱管52と、各伝熱管52を複数のパスに統合する液分配器22及びガス分配器23により構成されている。
【0003】
一般に、前記液分配器22側のパス数に対して、ガス分配器23側のパス数は倍となるように構成されている。
例えば、上記図4に示す従来の室外熱交換器の場合、該室外熱交換器の高さ方向における伝熱管52の段数(本数)は24段(24本)となっており、前記液分配器22側のパス数が6に対して前記ガス分配器23側のパス数は12パスに構成されている。
【0004】
なお、この種従来技術としては、特開平11−325775号公報(特許文献1)に記載のものなどがある。この特許文献1に記載の熱交換器も空気調和装置の室外機に使用されるものであり、上記図4に記載されたものと同様に、等間隔で平行に多数並べられた平板状の多数のフィンと、これに直交し内部を冷媒が通過する冷媒流路を構成する複数の伝熱管を備えており、該伝熱管のパス形態として、凝縮器として作用する場合には、流入側(ガス側)が4つのパスで構成されているのに対して、流出側(液側)は2つのパスで構成されている。
【0005】
上記のように構成された室外熱交換器を用いた空気調和装置において、冷房運転の場合には、前記伝熱管内部を流れるガス冷媒が凝縮して液冷媒となるため、流速が低下する。このため液冷媒が流れる伝熱管側は伝熱性能が低下し易くなる。そこで、伝熱性能が低下し易い液側のパス数を減らすことで、液側となる伝熱管内の冷媒流速を高くし、伝熱性能の低下を抑制するようにしている。
【0006】
また、このように構成することにより、暖房運転の場合には、ガス側となる伝熱管内を流れる冷媒流速を遅くして、圧力損失を低減することができる。即ち、暖房運転の場合、前記室外熱交換器の伝熱管には、液冷媒が流入して蒸発しガス冷媒となる。液冷媒が蒸発してガス冷媒になるとその体積が増大するため、ガス冷媒が流れる側の伝熱管内の圧力損失は大きくなる。しかし、ガス側のパス数が液側のパス数よりも多くなっているので、ガス側となる伝熱管内を流れる冷媒流速を遅くすることができ、その結果、圧力損失の低減を図ることができる。
【0007】
このように、液分配器22側のパス数に対してガス分配器23側のパス数が倍となるように構成することにより、冷房運転及び暖房運転共に、性能を高く維持することができるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−325775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した従来技術のものにおいて、細径伝熱管を採用する場合や、空気調和装置の容量を大きくする場合、以下の課題がある。
即ち、室外熱交換器に細径伝熱管を採用したり、空気調和装置の容量を増大すると、特に暖房運転の場合、室外熱交換器の伝熱管内を流れる冷媒の流速が大きくなる。このため、伝熱管での圧力損失が大きくなって、蒸発性能が低下し、暖房能力が低下する。
【0010】
このため、細径伝熱管を採用する場合や空気調和装置の容量が大きくなる場合には、蒸発器として作用する熱交換器のパス数を増やし、これにより伝熱管での圧力損失を低減するようにしているが、熱交換器の高さ方向における伝熱管の段数(本数)に応じて、熱交換器としてとれる最大パス数は制限される。
【0011】
このため、パス数を増加させるためには、熱交換器の高さを高くし、伝熱管の段数を増やすようにしなければならない。また、熱交換器の高さを高くできない場合には、伝熱管と伝熱管の高さ方向の間隔(段ピッチ)を小さくして、伝熱管の段数を増やすようにしなければならない。
【0012】
しかし、熱交換器の高さを高くすると、熱交換器が大きくなるだけでなく、空気調和装置を構成する室外機(室外ユニット)の高さ方向の寸法も大きくなる。また、伝熱管の段数を増加するので、その分も含めて、空気調和装置の製造コストが大幅アップするという課題がある。
【0013】
また、伝熱管と伝熱管の高さ方向の間隔(段ピッチ)を小さくする場合でも、伝熱管の段数が多くなると、その増加分により熱交換器の製造コストは増加し、更に前記段ピッチが小さくなることにより、前記板状フィン51間を流れる空気の流通抵抗も増大するため室外送風電力の増加による省エネルギー性能が低下するという課題がある。
【0014】
本発明の目的は、室外熱交換器のパス数を増加させても、製造コストの上昇を抑えることのできる空気調和装置及びそれに用いられる室外熱交換器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために本発明は、圧縮機、1つの室外熱交換器及び室外膨張弁を有する室外機と、室内熱交換器及び室内膨張弁を有する室内機を、液接続配管及びガス接続配管で接続して冷凍サイクルを構成すると共に、前記室外熱交換器は、複数枚の板状フィンと、該板状フィンに直交するように貫通し内部を冷媒が流通する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液分配器及びガス分配器を備えている空気調和装置であって、前記室外熱交換器における前記ガス分配器側のパス数が、前記液分配器側のパス数に対して倍以上となるように構成されると共に、前記1つの室外熱交換器は複数に分割され、この複数に分割された各室外熱交換器には、それぞれ、複数枚の板状フィンと、該板状フィンに直交する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液分配器及びガス分配器が備えられるように構成し、前記複数に分割された各室外熱交換器を合せた前記液分配器側のパス数が「分割前の前記室外熱交換器の伝熱管の段数/4」よりも多くなるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の特徴は、空気調和装置の室外機に用いられる室外熱交換器であって、前記室外熱交換器は、1つの室外熱交換器が左右複数に分割され、この複数に分割された左右の各室外熱交換器には、それぞれ、複数枚の板状フィンと、該板状フィンに直交するように貫通し内部を冷媒が流通する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液分配器及びガス分配器が備えられており、前記左右の室外熱交換器を合せた前記液分配器側のパス数が「分割前の前記室外熱交換器の伝熱管の段数/4」よりも多くなるように構成されていることにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、室外熱交換器のパス数を増加させても、製造コストの上昇を抑えることのできる空気調和装置及びそれに用いられる室外熱交換器を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の空気調和装置の実施例1を示す冷凍サイクル構成図である。
図2図1に示す室外熱交換器の斜視図である。
図3】本発明の空気調和装置の実施例2を示す冷凍サイクル構成図である。
図4】従来の空気調和装置に用いられている室外熱交換器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の空気調和装置の具体的実施例を図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
【実施例1】
【0020】
本発明の空気調和装置の実施例1を図1及び図2により説明する。図1は本発明の空気調和装置の実施例1を示す冷凍サイクル構成図、図2図1に示す室外熱交換器の斜視図である。
まず、図1に示す冷凍サイクル構成図(冷媒回路図)により、本発明の実施例1における空気調和装置の全体構成を説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施例の空気調和装置は、少なくとも1台の室外機1と、この室外機1に接続される少なくとも1台の室内機2から構成されている。
前記室外機1は、圧縮機3、四方弁4、室外熱交換器5、主室外膨張弁(室外膨張弁)8、アキュムレータ9、液阻止弁13、ガス阻止弁14などから構成され、図に示すように順次配管接続されている。前記室外機1に設けられている前記室外熱交換器5は、本実施例では、1つの室外熱交換器5が、左側室外熱交換器6と右側室外熱交換器7の左右二つに分割されている。また、前記左右の前記室外熱交換器6,7には、それぞれ液分配器24,25と、ガス分配器26,27が設けられている。
【0022】
前記主室外膨張弁8と前記室外熱交換器5との間には冷媒分配器10が設けられており、前記主室外膨張弁8から流入する冷媒を、前記冷媒分配器10により、前記左側室外熱交換器6と前記右側室外熱交換器7に分流するように構成されている。
【0023】
前記室内機2は、室内熱交換器15と室内膨張弁16などから構成され、この室内機2は、液接続配管17とガス接続配管18を介して、前記室外機1に付設する前記液阻止弁13と、前記ガス阻止弁14の部分で配管接続されている。
【0024】
次に、本実施例における冷媒の流れをこの図1により説明する。
冷房運転時には、室外機1の圧縮機3から吐出された高温、高圧のガス冷媒は、四方弁4を通過後、2つに分流されて室外熱交換器5の左側室外熱交換器6と右側室外熱交換器7に流入する。左右それぞれの室外熱交換器6,7では、伝熱管内を流れる高温、高圧の冷媒と、前記室外熱交換器6,7に導入される室外空気(外気)とが熱交換し、ガス冷媒は放熱して高圧の液冷媒となる。その後、前記左右の室外熱交換器6,7から流出して前記冷媒分配器10で合流し、主室外膨張弁8、液阻止弁13を通り、液接続配管17を介して前記室内機2に流入する。
【0025】
室内機2に流入した液冷媒は、室内膨張弁16で減圧されて低温、低圧となり、室内熱交換器15に導入される室内空気と熱交換して、前記室内空気を冷却すると共に自らは室内空気から吸熱して蒸発し、ガス冷媒となる。室内熱交換器15から流出したガス冷媒は、室内機2を出て、ガス接続配管18を通り前記室外機1に流入する。その後、ガス阻止弁14、四方弁4を通ってアキュムレータ9に流入し、このアキュムレータ9で所定の冷媒かわき度に調整されて、圧縮機3に吸入されるという冷凍サイクルを繰り返す。
【0026】
暖房運転時には、室外機1の圧縮機3から吐出された高温、高圧のガス冷媒は、四方弁4を通過後、ガス阻止弁14を通り、室外機1を出た後、前記ガス接続配管18を通って室内機2流入する。室内機2に流入したガス冷媒は、室内熱交換器15に流入し、室内熱交換器15に導入される室内空気と熱交換して、前記室内空気を加熱すると共に自らは放熱して液化する。この液冷媒は、室内膨張弁16を通過後、室内機2から流出して前記液接続配管17を通り、室外機1に流入される。
【0027】
室外機1に流入した液冷媒は、液阻止弁13を通過後、前記主室外膨張弁8で減圧されて低温、低圧となり、冷媒分配器10に流入して二つに分流され、前記左側室外熱交換器6と前記右側室外熱交換器7に流入する。これら左右の室外熱交換器6,7に流入した液冷媒は、これらの室外熱交換器6,7に導入される室外空気と熱交換して吸熱し、蒸発してガス化し、このガス冷媒は各室外熱交換器6,7を出た後再度合流し、その後前記四方弁4を通ってアキュムレータ9に流入し、ここで所定の冷媒かわき度に調整されて前記圧縮機3に吸入されるという冷凍サイクルを繰り返す。
【0028】
次に、図1の空気調和装置に使用されている前記室外熱交換器5の具体的構成を図2により説明する。図2図1に示す前記1つの室外熱交換器5の斜視図である。
本実施例においては、前記室外熱交換器5は、図2に示すように、中央部付近で、左側室外熱交換器6と右側室外熱交換器7とに二つに分割されている。これら左右の室外熱交換器6,7は、1つの筐体内(室外機内)に並設され、それぞれ複数枚の板状フィン61,71と、該板状フィン61,71を直交するように貫通し内部を冷媒が流通する複数の伝熱管62,72などにより構成されている。
【0029】
また、前記左側室外熱交換器6には、前記伝熱管62を複数のパスに統合する左側液分配器24と左側ガス分配器26が設けられている。前記右側室外熱交換器7にも同様に、右側液分配器25と右側ガス分配器27が設けられている。なお、本実施例では、前記室外熱交換器5(6,7)の伝熱管62,72は、高さ方向に24段(24本)、奥行き方向に3列重ねた構造となっている。
【0030】
即ち、本実施例では、分割前の前記室外熱交換器5におけるガス分配器側のパス数が、前記液分配器側のパス数に対して倍以上となるように構成されると共に、前記液分配器側のパス数が「分割前の室外熱交換器の伝熱管の段数(例えば24段)/4」の値よりも多くなる場合(例えば6パスを超えるパス数になる場合)に、前記1つの室外熱交換器5を複数に分割するものである。この複数に分割された各室外熱交換器6,7には、それぞれ、複数枚の板状フィン61,71と、該板状フィン61,71に直交する複数の伝熱管62,72と、各伝熱管62,72を複数のパスに統合する液分配器24,25及びガス分配器26,27を設けている。これにより、分割された各室外熱交換器6,7における前記液分配器24,25側のパス数を、「分割前の室外熱交換器の伝熱管の段数/4」の値以下となるように構成するものである。
【0031】
言い換えれば、前記複数に分割された各室外熱交換器6,7を合せた前記液分配器24,25側のパス数が「分割前の前記室外熱交換器の伝熱管の段数/4」の値よりも多くなるように構成しているものである。
【0032】
この室外熱交換器5における冷媒の流れについて説明する。
冷房運転時には、前記圧縮機3からの高温、高圧のガス冷媒が2つに分流されて左側ガス分配器26と右側ガス分配器27に流入する。前記ガス分配器26,27ではそれぞれ12のパスに分流して伝熱管62,72にガス冷媒が流入するように構成されている。図2に示す例では、最も内側の列(1列目)の伝熱管62,72にガス冷媒が流入し、中央の列(2列目)の伝熱管から最も外側の列(3列目)の伝熱管に流れる部分で2つのパスを1つのパスに統合している。即ち、各熱交換器6,7に流入したガス冷媒は、1列目、2列目と流れる間に室外空気と熱交換して凝縮し、液冷媒となってその体積が減少するので、最も外側の3列目の伝熱管62,72でのパス数を半分にすることで、液冷媒の流速を高め、熱交換性能を向上できるように構成している。
【0033】
従って、最も外側の3列目の伝熱管62,72においては12パスの半分の6パスとなるように構成され、各パスから流出した液冷媒は左側液分配器24または右側液分配器25に流入して合流し、ここから冷媒分配器10側に流れる。
【0034】
暖房運転時には、圧縮機3からのガス冷媒は、まず室内機2の室内熱交換器15に流れて凝縮し、液冷媒となる。この液冷媒は、室外機1側に流れて主室外膨張弁8で減圧されて低温、低圧となり、冷媒分配器10で二つに分流されて左側液分配器24と右側液分配器25に流入する。前記液分配器24,25ではそれぞれ6のパスに分流し、合せて12パスとなって前記伝熱管62,72に液冷媒(気液二相冷媒も含む)が流入するように構成されている。
【0035】
図2に示す例では、最も外側の列(3列目)の伝熱管62,72に液冷媒が流入し、最も外側の列の伝熱管から中央の列(2列目)の伝熱管に流れる部分で1つのパスを2つのパスに分流している。即ち、各熱交換器6,7に流入した液冷媒は、3列目、2列目と流れる間に室外空気と熱交換して蒸発し、ガス冷媒となってその体積が増加するので、最も内側の1列目の伝熱管62,72でのパス数を2倍に増やすことで、ガス冷媒流通時の圧力損失を低減し、熱交換性能が低下しないように構成している。
【0036】
従って、最も内側の1列目の伝熱管62,72においては6パスの倍の12パスとなるように構成され、各パスから流出したガス冷媒は左側ガス分配器26または右側ガス分配器27に流入して合流し、その後前記左右の室外熱交換器6,7からのガス冷媒は合流して四方弁4側に流れる。
【0037】
本実施例では、1つの室外熱交換器5を、左側室外熱交換器6と右側室外熱交換器7に2分割しているので、各室外熱交換器6,7における高さ方向の伝熱管62,72の段数をそれぞれ24段づつにすることができる。従って、室外熱交換器5の高さを変更することなく、また、伝熱管の段ピッチも変えずに、伝熱管の段数が24段の室外熱交換器を2つにすることができる。また、伝熱管は一般に銅パイプで構成されているが、この伝熱管の総長(即ち銅パイプの総量)もほとんど同じにでき、更に板状フィン61,71の高さも同じにできる。即ち、本実施例では、1つの室外熱交換器5を左右2つに分割する構成としているので、伝熱管の総長及び板状フィンの高さを従来の1つの室内熱交換器5のものとほとんど同じにできる。
【0038】
従って、図4に示す従来のもので、伝熱管の段数を上方に増加させていく場合と比較し、室外熱交換器5の高さ、伝熱管の総長及び板状フィンの高さを大幅に低減できるから、大幅なコスト低減を図ることができる。
【0039】
また、図4に示す従来のもので、伝熱管の段ピッチを小さくしてその段数を増加させた場合と比較しても、伝熱管の総長を大幅に低減してコスト低減を図れると共に、前記段ピッチが小さくならないので、前記板状フィン間を流れる空気の流通抵抗も増大せず、室外送風電力の増加も回避でき、空気調和機の省電力化を図ることができる。
【0040】
本実施例における室外熱交換器5の構成を更に詳しく説明する。
室外熱交換器5の伝熱管としては、通常直径が9〜10mm程度のものが使用されているが、このようなものでは図4で説明したように、液側のパス数は例えば6パスで、伝熱管の本数は24本(24段)に構成されている。
【0041】
これに対して、伝熱管として、直径が7〜5mmといった細径伝熱管を採用する場合、冷媒流通の圧力損失が増加するのを抑制するため、例えば、液側のパス数を12パスとし、伝熱管の本数は48段(48本)にする。このため、熱交換器の高さを2倍にして伝熱管の段数(伝熱管の高さ方向の本数)を48段にするか、或いは段ピッチを半分にする必要があった。
【0042】
このような場合本実施例では、前述したように、液分配器側のパス数に対してガス分配器側のパス数が倍以上となる室外熱交換器において、前記液側のパス数が、「分割前の室外熱交換器の伝熱管の段数/4」の値よりも多くなる場合、例えば分割前の室外熱交換器の伝熱管段数が24段の場合で、液側パス数が6パスを超える例えば12パスにしたい場合、1つの室外熱交換器の高さを更に大きくして伝熱管段数を例えば48段にするのではなく、前記室外熱交換器5を左右に2分割する。これにより、左右に2分割された各室外熱交換器6,7を合せた液側パス数を例えば12パスにでき、前記各室外熱交換器6,7を合せた伝熱管の段数も例えば48段にすることが容易に可能となる。
【0043】
従って、前記室外熱交換器5の伝熱管として細径伝熱管を用いたい場合などに、室外熱交換器5の高さを増加させたり、高さ方向の伝熱管の間隔(段ピッチ)を小さくすることなく、分割された室外熱交換器を合せた伝熱管の段数を例えば2倍に増加できるから、室外熱交換器5における冷媒パス数も2倍にすることが可能となる。
【0044】
また、本実施例によれば、液分配器側のパス数及びガス分配器側のパス数を増やすことができるから、特に暖房運転時における室外熱交換器5での圧力損失を低減して暖房運転時の性能向上を図ることができる。また、室外熱交換器5の高さは増加しないので、室外機1の大きさも大きくする必要がなく、伝熱管の総長や板状フィンの高さを増やす必要もないので、製造コストを抑えることができる。
【0045】
更に、本実施例は、液阻止弁13と室外熱交換器5を接続する冷媒配管に主室外膨張弁8を設け、該主室外膨張弁8と左右に分割した室外熱交換器6,7の間に、一方が1方向に他方が2方向に分岐する冷媒分配器10を設け、該冷媒分配器10の1方向側と前記主室外膨張弁8を配管接続すると共に、前記冷媒分配器10の2方向側と左右に分割したそれぞれの室外熱交換器6,7の一端側とを配管接続している。従って、左右に分割された室外熱交換器6,7のそれぞれに対して、所定の圧力に調整された冷媒を、前記主室外膨張弁8と前記冷媒分配器10のみの単純な構成で分配することができる。
【実施例2】
【0046】
図3は、本発明の実施例2における空気調和装置の冷媒回路図である。図3において、図1と同一符号を付した部分は、同一または相当する部分である。本実施例2の空気調和装置も、実施例1と同様に、少なくとも1台の室外機1と、この室外機1に接続される少なくとも1台の室内機2から構成されている。
【0047】
前記室外機1は、圧縮機3、四方弁4、室外熱交換器5、アキュムレータ9、冷媒分配器10、左側室外膨張弁11、右側室外膨張弁12、液阻止弁13、ガス阻止弁14などから構成され、図に示すように順次配管接続されている。前記室外熱交換器5は、1つの室外熱交換器が、左側室外熱交換器6と右側室外熱交換器7の左右二つに分割されており、それぞれの室外熱交換器6,7には液分配器24,25と、ガス分配器26,27が設けられている。
【0048】
本実施例では、前記左側室外熱交換器6と前記冷媒分配器10との間に、前記左側室外膨張弁11が設けられ、また前記右側室外熱交換器7と前記冷媒分配器10との間に、前記右側室外膨張弁12がそれぞれ設けられている。即ち、前記冷媒分配器10は前記液阻止弁13と前記室外熱交換器5を接続する冷媒配管に設けられるもので、その一方が1方向に他方が2方向に分岐する構成となっている。そして、この冷媒分配器10の1方向側と液阻止弁13の一端側とを配管接続すると共に、前記冷媒分配器10の2方向側と左右の前記室外熱交換器6,7とを、独立して弁開度を制御可能な室外膨張弁11,12を介してそれぞれ配管接続した構成としている。
【0049】
そして、液阻止弁13側から流入する液冷媒を前記冷媒分配器10により二つに分流した後で、前記左側室外膨張弁11と前記右側室外膨張弁12によりそれぞれ個別に減圧し、前記左側室外熱交換器6と前記右側室外熱交換器7に流入するように構成されている。
前記室内機2は、図1に示す室内機2と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
この図3に示すように構成された本実施例2によれば、暖房運転時には、冷媒分配器10に流入する冷媒を常に液冷媒(過冷却液冷媒)にすることができるため、冷媒分配器10での冷媒分配を50:50に正確に分流することができる。このため、左右の室外熱交換器6,7に流入する冷媒量を安定にして、冷凍サイクルの安定化を図ることができる。
【0051】
また、本実施例では、左右に2分割された前記左右の室外熱交換器6,7のそれぞれに、前記左右の室外膨張弁11,12を設けているので、前記左右の室外熱交換器6,7におけるそれぞれの出口側冷媒の状態を例えば温度センサなどにより検出して、その検出された冷媒状態に応じて、前記左右の室外膨張弁11,12を制御することができる。従って、各室外熱交換器6,7をそれぞれ最適な状態で使用可能となるため、空気調和装置が持っている最大の性能を引き出すことができ、空気調和装置の省電力化を図ることが可能となる。
【0052】
以上説明したように、本発明の各実施例によれば、1つの室外熱交換器は複数に分割され、この複数に分割された各室外熱交換器には、それぞれ、複数枚の板状フィンと、該板状フィンに直交するように貫通し内部を冷媒が流通する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液分配器及びガス分配器が備えられており、前記左右の室外熱交換器を合せた前記液分配器側のパス数が「分割前の前記室外熱交換器の伝熱管の段数/4」よりも多くなるように構成しているので、室外熱交換器のパス数を増加させても、製造コストの上昇を抑えることのできる空気調和装置及びそれに用いられる室外熱交換器を得ることができる効果がある。
【0053】
特に、細径伝熱管を採用する場合や空気調和装置の容量が大きくなる場合で、暖房運転するものでは、室外熱交換器のパス数を増加させて冷媒流通の圧力損失増加を抑制する必要がある。この課題に対し本実施例では、1つの室外熱交換器を複数(例えば、左右二つ)に分割してパス数を増加させるので、室外熱交換器の高さ、伝熱管の総長及び板状フィンの高さを、従来の伝熱管の段数を上方に増加させて同じパス数とするものに比べ、大幅に低減でき、特に暖房運転時の性能を向上できると共に、製造コストを安価に抑えることができる。
【0054】
また、伝熱管の高さ方向の間隔(段ピッチ)を短くして、伝熱管の段数を増やし、同じパス数とするものと比較しても、伝熱管の総長を必要最小限にできるため、室外熱交換器の製造コストの増加を抑制できる。また、本実施例では前記段ピッチが小さくならないので、板状フィン間を流れる空気の流通抵抗の増大も防止できるから、室外送風電力の増加も回避でき、空気調和機の省電力化を図ることができる。
【0055】
更に、液阻止弁と室外熱交換器を接続する冷媒配管に冷媒分配器を設け、該冷媒分配器の1方向側と前記液阻止弁の一端側とを配管接続すると共に、前記冷媒分配器10の2方向側と左右の前記室外熱交換器6,7とを、左右それぞれ独立して弁開度が制御可能な減圧装置(室外膨張弁11,12)を介して配管接続する構成としたものでは、前記冷媒分配器10において、液冷媒の状態で冷媒を分配できる。このため、左右に分割された前記室外熱交換器6,7のそれぞれに対して、精度良く同一の冷媒量に分配することが可能となり、所定の圧力に調整された冷媒を均等に分配することができる。
【0056】
また、左右に分割された室外熱交換器6,7のそれぞれに対し、それぞれ独立して制御可能な減圧装置を設けているため、左右それぞれの室外熱交換器6,7が最大性能となる所定の圧力となるように、左右の室外熱交換器6,7を独立に調整することができる。このため、空気調和装置の性能を更に向上することが可能となる。
【0057】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施例では室外熱交換器を左右に2分割した例を示したが、3分割以上としても良い。また、室外機と室内機が1台づつの空気調和装置について説明したが、室内機が複数台のもの、或いは更に室外機が複数台のものでも同様に適用できるものである。
更に、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
1:室外機、2:室内機、3:圧縮機、4:四方弁、
5:室外熱交換器、6:左側室外熱交換器、7:右側室外熱交換器、
8,11,12:室外膨張弁(8:主室外膨張弁、11:左側室外膨張弁、12:右側室外膨張弁)、
9:アキュムレータ、10:冷媒分配器、
13:液阻止弁、14:ガス阻止弁、
15:室内熱交換器、16:室内膨張弁、
22:液分配器、23:ガス分配器、
24:左側液分配器、25:右側液分配器、
26:左側ガス分配器、27:右側ガス分配器、
51,61,71:板状フィン、
52、62,72:伝熱管。
図1
図2
図3
図4