特許第5951517号(P5951517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951517炭化珪素半導体装置の製造方法及び炭化珪素半導体装置の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951517
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法及び炭化珪素半導体装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20160630BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160630BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20160630BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01L21/302 201A
   H01L29/78 301V
   H01L29/78 301B
   H01L21/302 105A
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-23630(P2013-23630)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-154725(P2014-154725A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100179338
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】菅井 昭彦
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−177538(JP,A)
【文献】 特開2010−265126(JP,A)
【文献】 特開2009−188117(JP,A)
【文献】 特表2011−507247(JP,A)
【文献】 特開平09−268099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/336
H01L 21/461
H01L 21/76
H01L 21/8229
H01L 21/8234
H01L 21/8242−21/8247
H01L 27/04
H01L 27/088
H01L 27/10−27/115
H01L 27/28
H01L 29/00−29/38
H01L 29/739
H01L 29/76
H01L 29/772
H01L 29/78
H01L 29/788−29/792
H01L 51/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチを有する炭化珪素半導体基板を前記トレンチが下方を向くように非密閉容器内に配置する工程と、
前記非密閉容器内であって前記炭化珪素半導体基板の下方に、前記炭化珪素半導体基板と対向するように珪素材を配置する工程と、
前記非密閉容器内に不活性ガスを流入させる工程と、
前記非密閉容器内の前記珪素材を加熱して溶融させる工程と、
を備えたことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記珪素材は珪素片であり、
複数の前記珪素片が配置され、
各珪素片は水平方向において離隔して配置されることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記不活性ガスは、前記非密閉容器の底面から流入し前記非密閉容器の頂面から流出することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記珪素材を加熱して溶融させる工程において、前記珪素材は1600℃〜1800℃で加熱されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記不活性ガスを流入させる工程において、前記不活性ガスは、前記非密閉容器内における圧力が3333Pa〜86660Paとなるようにして流入されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記トレンチを有する前記炭化珪素半導体基板は、前記非密閉容器内において、前記トレンチが下方を向くようにして上下方向で複数配置され、
各炭化珪素半導体基板の下方に、各炭化珪素半導体基板と対向するように前記珪素材が配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記炭化珪素半導体基板と、当該炭化珪素半導体基板の上方に位置する前記珪素材との間に、当該炭化珪素半導体基板を水平方向で覆う蓋部材が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記蓋部材の材料はグラファイトであることを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
非密閉容器と、
前記非密閉容器内に設けられ、トレンチを有する炭化珪素半導体基板を前記トレンチが下方を向くように支持する基板支持部と、
前記非密閉容器内であって前記基板支持部の下方側に設けられ、前記炭化珪素半導体基板と対向するように珪素材を支持する珪素材支持部と、
前記非密閉容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、
前記珪素材支持部で支持された前記珪素材を加熱して溶融させる加熱部と、
を備えたことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造装置。
【請求項10】
前記珪素材は珪素片であり、
複数の前記珪素片が配置され、
前記珪素材支持部の表面には、水平方向において離隔して配置され、前記複数の珪素材を保持する複数の凹部が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の炭化珪素半導体装置の製造装置。
【請求項11】
前記非密閉容器の底面に前記不活性ガスが流入する流入口が設けられ、
前記非密閉容器の頂面に前記不活性ガスが流出する流出口が設けられていることを特徴とする請求項9又は10のいずれかに記載の炭化珪素半導体装置の製造装置。
【請求項12】
前記基板支持部は、前記非密閉容器内において上下方向で複数配置され、
前記珪素材支持部は、前記非密閉容器内において上下方向で複数配置され、
各基板支持部の下方側に、各珪素材支持部が配置され、
各基板支持部は、前記トレンチが下方を向くように前記炭化珪素半導体基板を支持することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造装置。
【請求項13】
前記基板支持部と、当該基板支持部の上方に位置する前記珪素材支持部との間に、当該基板支持部で支持された炭化珪素半導体基板を水平方向で覆う蓋部材が設けられていることを特徴とする請求項12に記載の炭化珪素半導体装置の製造装置。
【請求項14】
前記蓋部材の材料はグラファイトであることを特徴とする請求項13に記載の炭化珪素半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチを有する炭化珪素半導体基板を備えた炭化珪素半導体装置の製造方法と、当該炭化珪素半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からトレンチを有するトレンチ型MOSFET等の半導体装置が知られている。このようなトレンチ型MOSFET等の半導体装置においてトレンチ底部のコーナー部が丸みを帯びていないと、当該トレンチ底部のコーナー部に電界が集中してしまう。そして、このようにトレンチ底部のコーナー部に電界が集中してしまうとゲート絶縁耐圧の低下が起こり、半導体装置の信頼性が著しく低下することが懸念される。
【0003】
このため、トレンチ底部のコーナー部の曲率をできるだけ大きくすることで、トレンチ底部のコーナー部における電界集中を緩和する必要がある。しかしながら、炭化珪素を用いたトレンチ型MOSFET等の半導体装置において、トレンチエッチングによってトレンチ底部のコーナー部の曲率を大きくすることは困難である。
【0004】
この点、トレンチの側壁角度を90度にする方法として、シランガスを流して、シランガス雰囲気で高温熱処理する方法が提案されている(特許文献1参照)。より具体的には、特許文献1では、炭化珪素単結晶基板表面に炭化珪素エピタキシャル膜が成膜された基板又は炭化珪素単結晶基板を例えばドライエッチングしてトレンチを形成し、トレンチを形成した後で1600℃以上1700℃以下の温度範囲で90分以上又は1700℃以上1800℃以下の温度範囲で60分以上、シランとアルゴンの混合減圧雰囲気中で熱処理することが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されている方法は、あくまでもトレンチの側壁角度を90度にする方法であり、トレンチ底部のコーナー部の曲率を大きくするものではない。また、特許文献1で用いられるシランガスは可燃性のガスであることから、その取り扱いには十分な注意が必要であり、排ガス処理装置やガス警報システム等の高価な付帯設備が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−289987号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような点に鑑み、本発明は、トレンチを有する炭化珪素半導体基板において、高価な付帯設備を用いることなく安全性を確保したうえで、トレンチ底部のコーナー部の曲率を大きくすることができる炭化珪素半導体装置の製造方法及び炭化珪素半導体装置の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造方法は、
トレンチを有する炭化珪素半導体基板を前記トレンチが下方を向くように非密閉容器内に配置する工程と、
前記非密閉容器内であって前記炭化珪素半導体基板の下方に、前記炭化珪素半導体基板と対向するように珪素材を配置する工程と、
前記非密閉容器内に不活性ガスを流入させる工程と、
前記非密閉容器内の前記珪素材を加熱して溶融させる工程と、
を備える。
【0009】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造方法において、
前記珪素材は珪素片であり、
複数の前記珪素片が配置され、
各珪素片は水平方向において離隔して配置されてもよい。
【0010】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造方法において、
前記不活性ガスは、前記非密閉容器の底面から流入し前記非密閉容器の頂面から流出してもよい。
【0011】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造方法において、
前記珪素材を加熱して溶融させる工程において、前記珪素材は1600℃〜1800℃で加熱されてもよい。
【0012】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造方法において、
前記不活性ガスを流入させる工程において、前記不活性ガスは、前記非密閉容器内における圧力が3333Pa〜86660Paとなるようにして流入されてもよい。
【0013】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造方法において、
前記トレンチを有する前記炭化珪素半導体基板は、前記非密閉容器内において、前記トレンチが下方を向くようにして上下方向で複数配置され、
各炭化珪素半導体基板の下方に、各炭化珪素半導体基板と対向するように前記珪素材が配置されてもよい。
【0014】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造方法において、
前記炭化珪素半導体基板と、当該炭化珪素半導体基板の上方に位置する前記珪素材との間に、当該炭化珪素半導体基板を水平方向で覆う蓋部材が設けられてもよい。
【0015】
本発明による炭化珪素半導体基板のトレンチ加工方法において、
前記蓋部材の材料はグラファイトであってもよい。
【0016】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造装置は、
非密閉容器と、
前記非密閉容器内に設けられ、トレンチを有する炭化珪素半導体基板を前記トレンチが下方を向くように支持する基板支持部と、
前記非密閉容器内であって前記基板支持部の下方側に設けられ、前記炭化珪素半導体基板と対向するように珪素材を支持する珪素材支持部と、
前記非密閉容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、
前記珪素材支持部で支持された前記珪素材を加熱して溶融させる加熱部と、
を備える。
【0017】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造装置において、
前記珪素材は珪素片であり、
複数の前記珪素片が配置され、
前記珪素材支持部の表面には、水平方向において離隔して配置され、前記複数の珪素材を保持する複数の凹部が設けられてもよい。
【0018】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造装置において、
前記非密閉容器の底面に前記不活性ガスが流入する流入口が設けられ、
前記非密閉容器の頂面に前記不活性ガスが流出する流出口が設けられてもよい。
【0019】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造装置において、
前記基板支持部は、前記非密閉容器内において上下方向で複数配置され、
前記珪素材支持部は、前記非密閉容器内において上下方向で複数配置され、
各基板支持部の下方側に、各珪素材支持部が配置され、
各基板支持部は、前記トレンチが下方を向くように前記炭化珪素半導体基板を支持してもよい。
【0020】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造装置において、
前記基板支持部と、当該基板支持部の上方に位置する前記珪素材支持部との間に、当該基板支持部で支持された炭化珪素半導体基板を水平方向で覆う蓋部材が設けられてもよい。
【0021】
本発明による炭化珪素半導体装置の製造装置において、
前記蓋部材の材料はグラファイトであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、非密閉容器内に炭化珪素半導体基板のトレンチが下方を向くように配置されるとともに当該炭化珪素半導体基板の下方に珪素材が配置され、炭化珪素半導体基板のトレンチと珪素材とが対向して配置される。また、非密閉容器内に不活性ガスが流入され、炭化珪素半導体基板と珪素材を取り囲む不活性ガスの雰囲気を作る。このため、本発明によれば、炭化珪素半導体基板のトレンチ底部のコーナー部の曲率を効率よく大きくすることができる。
【0023】
また、本発明では不活性ガスを用いており、シランガス等の危険なガスを用いていない。このため、排ガス処理装置やガス検知・警報システム等の高価な付帯設備を用いることなく安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による炭化珪素半導体装置の製造装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態による炭化珪素半導体装置の製造装置で用いられる珪素材支持部の上方平面図である。
図3図3(a)は、本発明の第1の実施の形態による炭化珪素半導体装置の製造方法で処理される前のトレンチを撮影した写真であり、図3(b)は、当該炭化珪素半導体装置の製造方法で処理された後のトレンチを撮影した写真である。
図4図4は、本発明の第2の実施の形態による炭化珪素半導体装置の製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法及び炭化珪素半導体装置の製造装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図3は本発明の第1の実施の形態を説明するための図である。なお、本実施の形態の炭化珪素半導体装置の製造方法及び製造装置は、炭化珪素半導体装置で用いられる炭化珪素半導体基板Wのトレンチを加工するためのものである。
【0026】
《装置の構成》
最初に、本実施の形態による炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工装置の構成について説明する。
【0027】
本実施の形態の炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工装置は、例えばトレンチ型MOSFET等の半導体装置を製造するために用いられる炭化珪素半導体基板WのトレンチTを加工するために用いられる。より具体的には、本実施の形態の炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工装置は、とりわけ、ドライエッチングにより形成したトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を大きくするために用いられる(図3(a)(b)参照)。なお、図3(a)は、本実施の形態による炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工方法で処理される前のトレンチTを撮影した写真であり、図3(b)は、当該炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工方法で処理された後のトレンチTを撮影した写真である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態の炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工装置は、非密閉容器10と、非密閉容器10内に設けられ、ドライエッチングにより形成したトレンチTを有する炭化珪素(SiC)半導体基板WをトレンチTが下方を向くように支持する基板支持部26と、非密閉容器10内であって基板支持部26の下方側に設けられ、炭化珪素半導体基板Wと対向するように珪素材(Si)である珪素片を支持して保持する珪素材保持部22(特許請求の範囲の「珪素材支持部」に該当する。)と、を備えている。なお、本実施の形態では、以下、珪素材として珪素片を用いて説明するが、これに限られることはない。
【0029】
非密閉容器10の材料の一例としてはグラファイト等のカーボンを挙げることができる。また、珪素材保持部22及び基板支持部26の材料の一例としてもグラファイト等のカーボンを挙げることができる。また、炭化珪素半導体基板Wの一例としては炭化珪素からなる半導体ウエハを挙げることができる。また、半導体ウエハの形状と大きさの一例としては、直径が4インチ(約10cm)からなる円形の半導体ウエハを挙げることができる。また、基板支持部26で支持された炭化珪素半導体基板Wと珪素材保持部22で支持された珪素片との間の上下方向における距離は、一例としては2〜3cm程になっている。
【0030】
本実施の形態では、炭化珪素半導体基板Wの周縁部と非密閉容器10の内壁との間に間隙が設けられ、かつ、珪素材保持部22の周縁部と非密閉容器10の内壁との間に間隙が設けられており(図2参照)、当該間隙を後述する不活性ガスが通過できるようになっている。なお、珪素材保持部22は非密閉容器10の内壁に設けられた支持体21(図2に示した態様では4つの支持体21)によって支持されている。なお、この支持体21の材料としてもグラファイト等のカーボンを用いることができる。
【0031】
図1に示すように、非密閉容器10には、非密閉容器10内にAr等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給部35が連結されている。また、珪素材保持部22で保持された珪素片の加熱は、例えば、非密閉容器10の周りに設けられた高周波誘導コイルや加熱用抵抗等の外部加熱部(特許請求の範囲の「加熱部」に相当する。)41からの高周波誘導加熱によって非密閉容器10が加熱され、この非密閉容器10の輻射熱で珪素材保持部22が加熱されることで行われる。そして、高周波誘導加熱による加熱温度は適宜調整することができるようになっており、温度測定部47によって測定された温度に基づいて、加熱温度を自動又は手動で調整することができる。なお、この温度測定部47としては例えばパイロメーターを用いることができる。このようにパイロメーターを用いた場合には、例えば非接触で珪素材保持部22を測定することで、珪素片の温度を間接的に測定することができる(図1参照)。
【0032】
図1に示した態様では、密閉容器10の底面に珪素材保持部22から放出される赤外線を検出するための検出用窓44aが設けられ、当該検出用窓44aを介して珪素材保持部22から放出される赤外線を温度測定部47で測定することができるようになっている。また、図1に示した態様では、珪素材保持部22の中心部に開口部22bが設けられており、この開口部22bを介して、炭化珪素半導体基板Wから放出される赤外線を温度測定部47で測定することができるようになっている。
【0033】
上述した珪素材保持部22は、複数の珪素片を複数の凹部23で保持するようになっている(図1参照)。より具体的には、図2に示すように、珪素材保持部22の表面には、水平方向において均一な距離で離隔して配置された複数の凹部23が設けられている。そして、各凹部23内に珪素片が配置されることで、各珪素片を水平方向において均一に離隔して配置させることができる。
【0034】
本実施の形態では、例えば、凹部23内の珪素片及び炭化珪素基板が1600℃〜1800℃で加熱されるよう、加熱温度が調整される。珪素の融点が約1414℃であることから、珪素片をこのように1600℃〜1800℃で加熱することで、珪素片を溶融させることができる。ちなみに、炭化珪素の融点は約2730℃である。用いられる珪素片の大きさ及び形状としては、様々なものを用いることができるが、その一例としては、市販のシリコンウェハを約5mm角程度に切り出したものを用いることができる。
【0035】
図1に示すように、非密閉容器10は、不活性ガス供給部35から送られる不活性ガスを内部に取り込むための流入口31と、内部から不活性ガスを流出させるための流出口39とを有している。なお、流出口39から流出されるガスには、珪素片から蒸発した少量の珪素ガスも含まれているが、ほとんどは不活性ガスである。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態では、非密閉容器10の底面の「略中心」に流入口31が設けられ、非密閉容器10の頂面の「略中心」に流出口39が設けられている。また、本実施の形態では、流出口39に連結された流出管79に、不活性ガス及び少量の珪素ガスを外部に排出させるロータリーポンプ等のポンプ59が設けられている。
【0037】
ところで、本実施の形態では、非密閉容器10の底面の略中心に流入口31が設けられ、非密閉容器10の頂面の略中心に流出口39が設けられている態様を用いて説明しているが、これに限られることはない。例えば、非密閉容器10の底面の略中心以外の箇所に流入口が設けられてもよいし、非密閉容器10の頂面の略中心以外の箇所に流出口が設けられてもよい。また、非密閉容器10の側壁の下方に流入口が設けられ、側壁の上方に流出口が設けられてもよい。
【0038】
また、図1に示すように、流出管79には、流出管79内の圧力を測定することで、非密閉容器10の内部の圧力を測定する圧力測定部51が設けられている。また、流入口31に連結された流入管71には、非密閉容器10の内部の圧力を調整する圧力調整部56が設けられている。そして、圧力測定部51によって測定された圧力に基づいて圧力調整部56を手動又は自動で操作することで、非密閉容器10の内部の圧力を調整することができる。なお、圧力調整部56の一例としては圧力調整弁等を挙げることができる。本実施の形態では、圧力測定部51が流出管79に設けられている態様を用いて説明しているが、これはあくまでも一例であり、圧力測定部51は非密閉容器10内に設けられてもよいし、一箇所ではなく数箇所に設けられてもよい。
【0039】
本実施の形態では、例えば、非密閉容器10内における圧力が3333Pa(約25Torr)〜86660Pa(約650Torr)となるよう、圧力調整部56によって非密閉容器10内に流入される不活性ガスの圧力が調整される。
【0040】
《加工方法の説明》
次に、上述した炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工装置を用いて、炭化珪素半導体基板WのトレンチTを加工する工程について説明する。
【0041】
トレンチTを有する炭化珪素半導体基板Wが、当該トレンチTが下方を向くように非密閉容器10内の基板支持部26上に配置される。
【0042】
炭化珪素半導体基板Wを基板支持部26上に配置する前又は配置した後に、非密閉容器10内であって基板支持部26の下方側に設けられた珪素材保持部22の複数の凹部23内の各々に珪素片が配置される。このことによって、炭化珪素半導体基板Wに対向して複数の珪素片が配置されることとなる。なお、今から行おうとしている加工より前に行われた加工時に使用した珪素片が残っている場合には、当該珪素片をそのまま用いてもよい。
【0043】
以上のようにして、炭化珪素半導体基板Wに対向して複数の珪素片が配置されると、流入口31から非密閉容器10内に不活性ガスが流入される。非密閉容器10内に流入された不活性ガスは、珪素材保持部22及び炭化珪素半導体基板Wの周縁部と非密閉容器10の内壁との間に設けられた間隙(図2参照)を経た後で、流出口39から流出される。なお、非密閉容器10内の圧力は、上述したように3333Pa(約25Torr)〜86660Pa(約650Torr)となるように調整される。
【0044】
このように不活性ガスが非密閉容器10内を流れている状況において、炭化珪素半導体基板W及び珪素材保持部22の複数の凹部23内の珪素片が加熱され始める。一例としては、約10分かけて室温から1600℃〜1800℃の所定の温度にまで温度が上げられる。そして、当該所定の温度(1600℃〜1800℃)で10分間維持された後、数時間かけて、当該所定の温度から室温まで下げられる。
【0045】
このようにして所定の温度(1600℃〜1800℃)になっている間に、炭化珪素半導体基板Wのトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率が徐々に大きくなり、当該トレンチ底部のコーナー部Tcを丸めることができる(図3(a)(b)参照)。
【0046】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による効果について説明する。
【0047】
図1に示すように、本実施の形態では、非密閉容器10内において、炭化珪素半導体基板Wが、そのトレンチTが下方を向くように配置されるとともに当該炭化珪素半導体基板Wの下方に複数の珪素片が配置され、炭化珪素半導体基板WのトレンチTと珪素片とが対向して配置される。そのうえで、珪素片が1600℃〜1800℃で加熱されて溶融される。また、非密閉容器10内に不活性ガスが流入され、炭化珪素半導体基板Wと珪素片を取り囲む不活性ガスの雰囲気を作る。これらのことから、本実施の形態によれば、炭化珪素半導体基板Wのトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を効率よく大きくすることができる。この結果、例えばトレンチ型MOSFET等の半導体装置において、ゲート絶縁耐圧の低下が起こることを防止することができる。
【0048】
この点について、具体的に説明する。
【0049】
図1に示すように、本実施の形態では、炭化珪素半導体基板Wが、そのトレンチTが下方を向くように配置されるとともに当該炭化珪素半導体基板Wの下方に珪素片が配置され、炭化珪素半導体基板WのトレンチTと珪素片とが対向して配置される。また、炭化珪素半導体基板Wと珪素片との距離は近距離(例えば2〜3cm程の距離)になっている。このような条件の下で、珪素片が加熱されて溶融される。
【0050】
このため、溶融された珪素片から蒸発した珪素(珪素ガス)を近距離で直接トレンチTに接触させることができ、効率よくトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を大きくすることができる。
【0051】
仮にトレンチTと珪素片とを対向して配置していない場合(例えばトレンチTが上方を向くように炭化珪素半導体基板Wを配置した場合)には、珪素ガスが炭化珪素半導体基板Wを回り込んでトレンチTに接触することとなるが、炭化珪素半導体基板Wの中心側に向かうにつれて珪素ガスの濃度が薄くなってしまい、各トレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を均一に大きくすることができなくなる。
【0052】
なお、トレンチTの表面に珪素が接触する際、トレンチ表面における表面エネルギーが小さくなるようにトレンチTの表面が変形する。このため、珪素ガスを炭化珪素半導体基板WのトレンチTに接触させるだけで、自然にトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を大きくすることができる。
【0053】
上述したように、図3(a)は、本実施の形態による炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工方法で処理される前のトレンチTを撮影した写真であり、図3(b)は、当該炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工方法で処理された後のトレンチTを撮影した写真であるが、これらの写真から明白なように、本実施の形態による炭化珪素半導体基板Wのトレンチ加工方法を用いることで、トレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を大きくすることができた。
【0054】
なお、炭化珪素半導体基板Wと珪素片との距離を近づけすぎると(例えば1cm程にすると)、炭化珪素半導体基板Wと珪素材保持部上で盛り上がった珪素とが直接接触する場合があることから好ましくない。
【0055】
本実施の形態では、流入口31から非密閉容器10内に不活性ガスが流入され、当該不活性ガスは、珪素材保持部22及び炭化珪素半導体基板Wの周縁部と非密閉容器10の内壁との間に設けられた間隙(図2参照)を経た後で、流出口39から流出される。このため、不活性ガスによって炭化珪素半導体基板Wと珪素材保持部22を取り囲むことができ、不活性ガスによる壁を作ることができる。この結果、珪素材保持部22上の珪素片から蒸発した珪素が炭化珪素半導体基板WのトレンチTの表面に接触しながら、炭化珪素半導体基板Wの周辺に向かって流れ、流出口39から流出される。このとき、炭化珪素半導体基板WのトレンチTに珪素ガスを接触させることができ、より効率よく、炭化珪素半導体基板Wのトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を大きくすることができる。
【0056】
なお、非密閉容器10内における圧力が3333Pa(約25Torr)〜86660Pa(約650Torr)となるよう、圧力調整部56によって非密閉容器10内に流入される不活性ガスの圧力が調整されるが、この点には、以下のような意義がある。
【0057】
非密閉容器10内における圧力が3333Pa未満の場合には、炭化珪素半導体基板Wからも珪素が多く蒸発してしまうことから好ましくない。他方、非密閉容器10内における圧力が86660Paよりも高い場合には、珪素片からの蒸発が少なくなってしまい、効率よくトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を大きくすることができない。また、非密閉容器10内における圧力が86660Paよりも高い場合には、その圧力が、常圧(101325Pa)に近づくことから圧力の制御が困難になるという不都合もある。
【0058】
このため、非密閉容器10内における圧力を3333Pa(約25Torr)〜86660Pa(約650Torr)とすることには、炭化珪素半導体基板Wから珪素が多く蒸発してしまうことを防止しつつ、珪素材保持部22上の珪素片からの蒸発が少なくなることを防止することができ、さらには、非密閉容器10内の圧力を容易に制御することもできるという、技術的意義及び臨界的意義が存在する。
【0059】
また、珪素片が1600℃〜1800℃で加熱されるよう、外部加熱部41による加熱温度が調整されるが、この点には、以下のような意義がある。
【0060】
珪素片を加熱する温度が1600℃未満の場合には、溶融した珪素片から珪素の蒸気を十分に飛ばすことができず、トレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を十分に大きくすることができない。他方、珪素片を加熱する温度が1800℃以上になると、溶融した珪素片から活発に珪素が蒸発しすぎてしまい、トレンチ底部のコーナー部Tcの加工を適切に制御しつつ行うことが難しくなってしまう。
【0061】
このため、珪素片が1600℃〜1800℃で加熱することには、炭化珪素半導体基板Wのトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を十分に大きくし、かつ、トレンチ底部のコーナー部Tcの加工を適切に制御することもできるという、技術的意義及び臨界的意義が存在する。
【0062】
また、本実施の形態では、非密閉容器10の底面に流入口31が設けられ、非密閉容器10の頂面に流出口39が設けられているので、底面から頂面に向かった不活性ガスの流れを作ることができる。このため、炭化珪素半導体基板Wと珪素材保持部22を取り囲む不活性ガスの壁を水平方向でバランスよく形成することができる。この結果、炭化珪素半導体基板Wの各トレンチTにおけるトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を、バランスよく大きくすることができる。
【0063】
さらに、本実施の形態では、流入口31が非密閉容器10の底面の「略中心」に設けられ、かつ、流出口39が非密閉容器10の頂面の「略中心」に設けられる。このため、炭化珪素半導体基板Wと珪素材保持部22を取り囲む不活性ガスの壁を水平方向でさらにバランスよく形成することができる。この結果、炭化珪素半導体基板Wの各トレンチTにおけるトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を、さらにバランスよく大きくすることができる。
【0064】
また、図2に示すように、本実施の形態では、珪素材保持部22の表面に水平方向において均一な距離で離隔して配置された凹部23が設けられていることから、各珪素片を水平方向において均一に離隔して配置させることができる。このため、炭化珪素半導体基板Wの表面に形成された各トレンチTに対して、バランスよく珪素ガスを供給することができる。この結果、このことによっても、炭化珪素半導体基板Wの各トレンチTにおけるトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を、バランスよく大きくすることができる。
【0065】
なお、仮に本実施の形態の態様と異なり大きな珪素片を一つだけ用いた場合には、溶けた珪素が凝集し、均一に分布した珪素の溶融領域は形成されず、珪素の溶融領域の偏りを生じるため、当該珪素から局所的に珪素ガスが発生してしまう。このため、珪素の溶融領域から距離が離れるにつれて珪素ガスの濃度が薄くなってしまい、各トレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を均一に大きくすることができなくなってしまう可能性がある。
【0066】
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0067】
第1の実施の形態では、一つの炭化珪素半導体基板Wが処理対象となっていた。これに対して、第2の実施の形態では、図4に示すように、複数(図4では3つ)の炭化珪素半導体基板Wが処理対象となっている。そして、各炭化珪素半導体基板Wの下方に珪素材保持部22が設けられ、当該珪素材保持部22の表面に設けられた複数の凹部23で複数の珪素片が保持される態様となっている。
【0068】
第2の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となっている。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
図4に示すように、本実施の形態では、基板支持部26が非密閉容器10内において上下方向で複数(図4では3つ)配置され、珪素材保持部22も非密閉容器10内において上下方向で複数(図4では3つ)配置されている。そして、各基板支持部26の下方側に各珪素材保持部22が配置されている。また、各基板支持部26は、トレンチTが下方を向くように炭化珪素半導体基板Wを支持している。
【0070】
また、本実施の形態では、(最も上方に位置する基板支持部26以外の)基板支持部26と、当該基板支持部26の上方に位置する支持体21との上下方向における間に、上記基板支持部26で支持された炭化珪素半導体基板Wを水平方向で覆う略円形状の蓋部材60が支持体27を介して設けられている。このため、(最も上方に位置する炭化珪素半導体基板W以外の)炭化珪素半導体基板Wと、当該炭化珪素半導体基板Wの上方に位置する珪素片との間に、炭化珪素半導体基板Wを水平方向で覆う蓋部材60を設けることができる。なお、この蓋部材60の材料としては様々なものを用いることができるが、一例としては、グラファイトを用いることができる。
【0071】
また、図4に示した態様では、密閉容器10の底面に珪素材保持部22から放出される赤外線を検出するための検出用窓44aが設けられ、当該検出用窓44aを介して珪素材保持部22から放出される赤外線をパイロメーター等の温度測定部47で測定することができるようになっている。また、密閉容器10の底面に別の検出用窓44bが設けられるとともに、当該検出用窓44bの上方に位置する支持体21に検出用窓(又は検出用穴)21aが設けられ、基板支持部26に検出用窓(又は検出用穴)26aが設けられ、支持体27に検出用窓(又は検出用穴)27aが設けられている。そして、これらの検出用窓44b、検出用窓(又は検出用穴)21a、検出用窓(又は検出用穴)26a及び検出用窓(又は検出用穴)27aを介して、基板支持部26’から放出される赤外線をパイロメーター等の温度測定部47で測定することができるようになっている。
【0072】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態で述べた効果を達成しつつ、複数の炭化珪素半導体基板Wを同時に加工することができる。なお、第1の実施の形態で既に述べた効果については簡潔に記載する。
【0073】
本実施の形態によれば、トレンチTを有する炭化珪素半導体基板Wが非密閉容器10内においてトレンチTが下方を向くようにして上下方向で複数配置され、各炭化珪素半導体基板Wの下方に各炭化珪素半導体基板Wと対向するように珪素片が配置されているので、複数の炭化珪素半導体基板Wのトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を同時に効率よく大きくすることができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、不活性ガスによって複数の炭化珪素半導体基板Wと複数の珪素材保持部22を取り囲む不活性ガスの壁を作ることができる。このため、より効率よく、複数の炭化珪素半導体基板Wのトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を大きくすることができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、非密閉容器10内における圧力が3333Pa(約25Torr)〜86660Pa(約650Torr)となるよう圧力調整部56によって非密閉容器10内に流入される不活性ガスの圧力が調整される。このため、各炭化珪素半導体基板Wから珪素が蒸発してしまうことを防止しつつ、各珪素材保持部22上の珪素片からの蒸発が少なくなることを防止することができる。また、非密閉容器10内の圧力を容易に制御することもできる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、各珪素材保持部22上の珪素片が1600℃〜1800℃で加熱されるよう外部加熱部41によって加熱温度が調整される。このため、各炭化珪素半導体基板Wのトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を十分に大きくすることができ、かつ、トレンチ底部のコーナー部Tcの加工を適切に制御することもできる。
【0077】
また、本実施の形態でも、非密閉容器10の底面の流入口31が設けられ、非密閉容器10の頂面に流出口39が設けられているので、底面から頂面に向かった不活性ガスの流れを作ることができる。このため、各炭化珪素半導体基板Wと各珪素材保持部22を取り囲む不活性ガスの壁を水平方向でバランスよく形成することができる。この結果、各炭化珪素半導体基板Wの各トレンチTにおけるトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を、バランスよく大きくすることができる。
【0078】
さらに、本実施の形態では、流入口31が非密閉容器10の底面の「略中心」に設けられ、かつ、流出口39が非密閉容器10の頂面の「略中心」に設けられる。このため、炭化珪素半導体基板Wと珪素材保持部22を取り囲む不活性ガスの壁を水平方向でさらにバランスよく形成することができる。この結果、各炭化珪素半導体基板Wの各トレンチTにおけるトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を、さらにバランスよく大きくすることができる。
【0079】
また、本実施の形態では、各珪素材保持部22の表面に水平方向において均一な距離で離隔して配置された凹部23が設けられており、各珪素片を水平方向において均一に離隔して配置させることができる。このため、各炭化珪素半導体基板Wの表面に形成されたトレンチTに対して、対応する珪素材保持部22の凹部23内の珪素片からバランスよく珪素ガスを供給することができる。この結果、このことによっても、各炭化珪素半導体基板Wの各トレンチTにおけるトレンチ底部のコーナー部Tcの曲率を、バランスよく大きくすることができる。
【0080】
さらに、本実施の形態では、(最も上方に位置する炭化珪素半導体基板W以外の)炭化珪素半導体基板Wの上方に位置する珪素片と当該炭化珪素半導体基板Wとの間に蓋部材60を設けることができる。この結果、珪素片から蒸発した珪素が、当該珪素片の下方に位置する炭化珪素半導体基板Wに接触してしまうことを防止することができる。したがって、予期せぬ箇所で炭化珪素半導体基板Wの表面に珪素が接触してしまうことを防止することができる。
【0081】
なお、蓋部材60の材料としてグラファイトを用いた場合には、高温に耐えることができるため好ましい。
【0082】
最後になったが、上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。
【符号の説明】
【0083】
10 非密閉容器
22 珪素材保持部(珪素材支持部)
23 凹部
26 基板支持部
31 流入口
35 不活性ガス供給部
39 流出口
41 外部加熱部
47 温度測定部
51 圧力測定部
56 圧力調整部
60 蓋部材
71 流入管
79 流出管
T トレンチ
Tc トレンチ底部のコーナー部
W 炭化珪素半導体基板
図1
図2
図4
図3