特許第5951543号(P5951543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951543
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】金属発熱体および発熱構造体
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20160630BHJP
   H05B 3/76 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H05B3/20 396
   H05B3/76
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-68726(P2013-68726)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-192115(P2014-192115A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100071663
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 保夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】藏野 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】米澤 昭一
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−193479(JP,A)
【文献】 特開昭61−179082(JP,A)
【文献】 特開平08−292674(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3016154(JP,U)
【文献】 特開2001−273973(JP,A)
【文献】 特開2011−181258(JP,A)
【文献】 特開2010−153164(JP,A)
【文献】 特開平01−211887(JP,A)
【文献】 特表2003−513817(JP,A)
【文献】 特開平11−282297(JP,A)
【文献】 特開平05−215473(JP,A)
【文献】 特開2012−225409(JP,A)
【文献】 特開2006−086054(JP,A)
【文献】 特開2004−006194(JP,A)
【文献】 特公平07−039908(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
H05B 3/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体の製造工程において、被処理物を加熱するための金属発熱体であって、
長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回することにより全体が中空線条化されてなり、
長手方向に対する垂直断面直径が、前記金属製平板の横幅の0.5〜5倍であるとともに前記金属製平板の厚みの8〜27倍であり、かつ4〜35mmである
ことを特徴とする金属発熱体。
【請求項2】
前記垂直断面直径が5〜35mmであり、 前記金属製平板の横幅が5〜30mmであり、前記金属製平板の厚みが0.3〜3.0mmである請求項1に記載の金属発熱体。
【請求項3】
前記螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅が、前記金属製平板の横幅の0.2〜4倍である請求項1または請求項2に記載の金属発熱体。
【請求項4】
断熱材からなる基体と、該基体に固定された請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属発熱体とを有することを特徴とする発熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属発熱体および発熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体等の製造工程において、電子部品を焼成するための発熱構造体として、パネルヒータ(例えば、引用文献1(特開2001−273973号公報)参照)や、円筒状のヒータ(例えば、特許文献2(特開平5−215473号公報)参照)が使用されている。
【0003】
上記パネルヒータや円筒状のヒータにおいては、金属発熱体である金属線(電熱線)として、ニッケルクロム合金等の金属からなる断面が円形の丸線が多用されており、上記丸線としては、断面直径が0.1〜4mm程度の細線と断面直径が5mm〜10mm程度の太線とが知られている。
【0004】
上記細線は、容易に折り曲げ加工できることから、設置対象となる基体の形状にあわせて密に配置することができ、例えば、図8に示すように、丸線11をコイル状に成形した上で、断熱材からなる基体12の壁面に設けられたスリットSに嵌め込み固定したり、あるいは図9に示すように、丸線11を波形に成形した上で、断熱材からなる基体12の壁面にステープル13で固定することにより、被処理物の加熱処理に供されている。
【0005】
一方、上記太線は、細線に比較すると成形の自由度に劣ることから、例えば、円筒状ヒータの内壁面を螺旋状に周回させた状態で壁面に固定する等して被処理物の加熱処理に供されている。
【0006】
上記金属製の細線や太線は、断面が円形であることから単位重量当たりの表面積を最大化して被処理物を効率的に加熱し得るとされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−215473号公報
【特許文献2】特開2001−273973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、半導体産業の成長に伴い、より高温でかつ短時間に被処理物を加熱可能な発熱構造体が求められるようになっている。
【0009】
被処理物を短時間で加熱するために、図8に示すように細線をコイル状に成形する際に巻回数を増加させたり、図9に示すように上記細線を波形に成形する際に丸線(細線)間に設けられる隙間(ギャップ)の幅を狭めることにより、細線の設置密度を向上させ、その表面積を増大させる方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、細線をコイル状に成形する際に巻回数を増加させたり、細線を波形に成形する際にギャップの幅を狭めた場合には、細線の長さが増加してしまう。細線の電気抵抗R[Ω]は、同細線の電気抵抗率をρ[Ω・m]、長さをL[m]、断面積をA[m]とした場合に、R=ρ(L/A)で表されることから、細線の長さLが増加すると細線の電気抵抗Rも増加することになる。通電時の電力P(W)は、通電時の電圧をV(V)としたときに、上記電気抵抗R[Ω]との関係で、P=V/Rで表わされることから、細線の電気抵抗Rが増加することは、電力P(W)が低減すること、すなわち通電した電気エネルギーによりなされる単位時間当たりの仕事量(発熱量)が低減することを意味するため、高温かつ短時間での加熱を行い難くなる。
【0011】
一方、上記太線は、上述したように、その成形の自由度が低く、基体形状に対応した自由な変形加工が困難であり(形状追従性が低く)、設置形態の変更による加熱性の向上を図り難い。
【0012】
また、上記金属線としては、長尺状の金属製平板(帯線)も提案されてはいるものの、上記帯線は、丸線に比較すると単位重量当たりの表面積が小さいことから、加熱性等を考慮した場合に、金属線として採用し難い状況にあった。
【0013】
加えて、上記帯線は、上記太線と同様に、細線に比較すると一般に成形の自由度が低いことから、図10に示すように、断熱材からなる基体12の壁面への固定方法としては、平板Fを波形に切り出し加工して得た波形平板11を、ステープル13で固定する方法等が提案されるに止まっていたが、本発明者等の検討によれば、上記波形平板11は、加熱−冷却処理を繰り返す度に長さ方向に熱膨張および熱収縮を生じ、特に高温で加熱した場合には、波形平板の長さ方向に永久膨張および該永久膨張に由来する撓みを生じ易くなることが判明した。
このため、上記波形平板は、例えば、永久膨張によって壁面から外れ易くなったり、波形平板の隣接する山部同士または谷部同士が接触し過熱状態を生じて切断し易くなり、波形平板の寿命が低下するとともに均一な加熱が困難になってしまう。
【0014】
このような状況下、本発明は、より高温でかつ短時間に被処理物を加熱し得るとともに、永久膨張を抑制し、長寿命で成形の自由度の高い金属発熱体および発熱構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を行った結果、全く意外なことに、従来成形の自由度が低いとされてきた金属製平板であっても、長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回して中空線条化することが可能であることを見出し、この長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回して中空線条化してなる金属発熱体によれば、細線製または太線製の金属発熱体が有する技術課題を解決し得ることを見出した。
一方、本発明者等の検討によれば、上記長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回して中空線条化してなる金属発熱体においても、加熱−冷却処理を繰り返す度に熱膨張および熱収縮を生じ、この熱膨張および熱収縮の程度は螺旋状に巻回された金属製平板の内周側と外周側で異なることから、熱膨張および熱収縮に伴って金属製平板に亀裂を生じることが判明した。
そこで、本発明者等がさらに検討を加えたところ、長手方向に対する垂直断面直径(垂直断面外径)が、金属製平板の横幅や厚みとの関係で所定の関係で規定されてなるものであることにより、金属製平板の内周側と外周側の熱膨張および熱収縮の差によって生じる亀裂の発生を抑制し得ることを見出し、本知見に基づいて本初発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、
(1)半導体の製造工程において、被処理物を加熱するための金属発熱体であって、
長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回することにより全体が中空線条化されてなり、
長手方向に対する垂直断面直径が、前記金属製平板の横幅の0.5〜5倍であるとともに前記金属製平板の厚みの8〜27倍であり、かつ4〜35mmであることを特徴とする金属発熱体、
(2)前記垂直断面直径が5〜35mmであり、前記金属製平板の横幅が5〜30mmであり、前記金属製平板の厚みが0.3〜3.0mmである上記(1)に記載の金属発熱体、
(3)前記螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅が、前記金属製平板の横幅の0.2〜4倍である上記(1)または(2)に記載の金属発熱体、
(4)断熱材からなる基体と、該基体に固定された(1)〜(3)のいずれかに記載の金属発熱体とを有することを特徴とする発熱構造体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属発熱体が長尺状の金属製平板(帯線)を螺旋状に巻回して中空線条化してなるものであることから、帯線の長さが長くなっても、帯線の長手方向に沿って生じる熱膨張力を、螺旋状の金属発熱体の中心軸方向や当該金属発熱体の長手方向に対する垂直断面方向(断面直径方向)に分散させることにより、高温で加熱しても永久膨張を効果的に抑制することができる。
また、本発明によれば、金属発熱体の長手方向に対する垂直断面直径が、金属製平板の横幅や厚みとの関係で規定されてなるものであることから、金属製平板の内周側と外周側の熱膨張および熱収縮の差によって生じる亀裂の発生を効果的に抑制することができる。
さらに、本発明によれば、金属発熱体が長尺状の金属製平板(帯線)を螺旋状に巻回して中空線条化してなるものであることから、同一の断面直径を有する太線に比較して折り曲げ加工時の加工性が高くなり、このために加工の自由度を効果的に向上させることができる。
加えて、本発明によれば、金属発熱体を細線ではなく幅広な金属製平板(帯線)により構成するものであることから、単位長さあたりの表面積が増加するばかりか、断面積Aが増加するために、細線の巻回物と同じ巻回数であっても(長さLが同じであっても)、式R=ρ(L/A)に基づいて抵抗Rが低減し、このために、式P=V/Rに基づいて電力P(単位時間あたりの仕事量)が増加して、短時間かつ高温で加熱することが可能になる。
従って、本発明によれば、より高温でかつ短時間に被処理物を加熱し得るとともに、永久膨張を抑制し、長寿命で成形の自由度の高い金属発熱体および発熱構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の金属発熱体の一例を示す図である。
図2】本発明の金属発熱体の一例を示す(a)正面図および(b)正面図のx−x’線垂直断面の模式図(金属発熱体1の長手方向に対する垂直断面の模式図)である。
図3】本発明の発熱構造体の一例を示す、(a)基体に設けられたU字状の溝内に固定された金属発熱体の断面の模式図、(b)基体に設けられたV字状の溝内に固定された金属発熱体の断面の模式図および(c)基体内に埋設固定された金属発熱体の断面の模式図である。
図4】本発明の発熱構造体の一例を示す図である。
図5】本発明の発熱構造体の一例を示す、斜視図である。
図6図5に示す発熱構造体の断面の模式図である。
図7】本発明の発熱構造体の一例を示す図である。
図8】従来の細線の基体への設置方法を説明するための図である。
図9】従来の細線の基体への設置方法を説明するための図である。
図10】従来の金属製平板の基体への設置方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、本発明の金属発熱体について説明する。
本発明の金属発熱体は、長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回することにより全体が中空線条化されてなり、長手方向に対する垂直断面直径が、前記金属製平板の横幅の0.5〜10倍であるとともに前記金属製平板の厚みの5倍以上であり、かつ35mm以下であることを特徴とするものである。
【0020】
図1は、本発明の金属発熱体の一例を示すものであり、図1に例示するように、本発明に係る金属発熱体1は、長尺状の金属製平板Fを螺旋状に巻回して中空線条化してなるものである。
【0021】
図2は、本発明に係る金属発熱体1の(a)正面図および(b)正面図のx−x’線断面の模式図(金属発熱体1の長手方向に対する垂直断面の模式図)である。
本発明の金属発熱体においては、図2(a)に示すように、長尺状の金属製平板Fの横幅Wが、5〜30mmであることが好ましく、5〜25mmであることがより好ましい。
【0022】
本発明の金属発熱体においては、図2(b)に示すように、長尺状の金属製平板Fの厚みTが、0.3〜3.0mmであることが好ましく、0.4〜2.0mmであることがより好ましく、0.5〜1.0mmであることがさらに好ましい。
【0023】
なお、本発明の金属発熱体において、長尺状の金属製平板の横幅および厚みは、
ノギスにより測定した値を意味するものとする。
【0024】
本発明の金属発熱体において、長尺状の金属製平板の横幅および厚みが上記範囲内にあることにより、螺旋形状への加工が容易になるとともに、ハンドリング性(持ち回し)を容易に向上させることができ、加熱用途に使用したときに、高温でかつ短時間での加熱を容易に行うことができる。
【0025】
本発明の金属発熱体において、長尺状の金属製平板の長手方向の長さは、金属発熱体の長さ、金属発熱体の垂直断面直径、金属製平板の巻回数および隣接する金属平板間に形成される隙間の幅等に応じて適宜規定される。
【0026】
本発明の金属発熱体において、長尺状の金属製平板の構成材料としては、電熱線の構成材料として通常使用されているものであれば特に制限されないが、NiおよびCrを必須成分として含むもの、Ni、CrおよびFeを必須成分として含むもの、Fe、CrおよびAlを必須成分として含むもの、Ptを必須成分として含むもの、Wを必須成分として含むものを挙げることができる。
【0027】
NiおよびCrを必須成分として含む構成材料としては、Niを70〜90質量%、Crを10〜30質量%含むものを挙げることができ、上記含有範囲内において、NiおよびCrの合計含有量が100質量%であるものが好ましい。
【0028】
Ni、CrおよびFeを必須成分として含む構成材料としては、Niを30〜65質量%、Crを10〜25質量%、Feを20〜50質量%含むものを挙げることができ、上記含有範囲内において、Ni、CrおよびFeの合計含有量が100質量%であるものが好ましい。
【0029】
Fe、CrおよびAlを必須成分として含む構成材料としては、Feを65〜85質量%、Crを12〜25質量%、Alを3〜7質量%含むものを挙げることができ、上記含有範囲内においてFe、CrおよびAlの合計含有量が100質量%であるものが好ましい。
【0030】
Ptを必須成分として含む構成材料としては、Ptを80〜100質量%含むものを挙げることができる。
【0031】
Wを必須成分として含む構成材料としては、Wを90〜100質量%含むものを挙げることができ、Wのみからなるものが好ましい。
【0032】
本発明の金属発熱体は、図2(b)において符号Dで示される、長手方向に対する垂直断面直径(垂直断面外径)が、35mm以下であるものであり、4〜35mmであるものが好ましく、5〜25mmであるものがより好ましく、6〜25mmであることがさらに好ましい。
【0033】
本発明の金属発熱体は、図2(b)において符号Dで示される、長手方向に対する垂直断面直径(垂直断面外径)が、金属製平板の横幅の0.5〜10倍であるものであり、金属製平板の横幅の0.5〜5倍であるものであることが好ましい。
【0034】
本発明の金属発熱体は、図2(b)において符号Dで示される、長手方向に対する垂直断面直径(垂直断面外径)が、金属製平板の厚みの5倍以上であるものであり、金属製平板の厚みの5〜50倍であるものであることが好ましく、金属製平板の厚みの8〜27倍であるものであることより好ましい。
【0035】
本発明の金属発熱体は、長手方向に対する垂直断面直径が上記範囲内にあることにより、電熱線として使用したときに、永久膨張を抑制しつつ、高温かつ短時間での加熱を長期に亘って容易に行うことができる。
また、本発明によれば、金属発熱体の長手方向に対する垂直断面直径が、金属製平板の横幅や厚みとの関係で規定されてなるものであることから、金属製平板の内周側と外周側の熱膨張および熱収縮の差によって生じる亀裂の発生を効果的に抑制することができる。
【0036】
本発明の金属発熱体においては、図2(a)に符号Gで示される、螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅は、金属製平板Fの幅の0.2〜4倍であることが好ましく、0.5〜2倍であることがより好ましく、0.8〜1.2倍であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の金属発熱体においては、図2(a)に符号Pで示される、螺旋状に巻回された金属製平板間の距離は、金属製平板の幅の0.2〜4倍であることが好ましく、0.5〜2倍であることがより好ましい。
【0038】
なお、本出願書類において、長手方向に対する垂直断面直径や、螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅や、螺旋状に巻回された金属製平板間の距離は、ノギスにより測定した値を意味するものとする。
【0039】
本発明の金属発熱体は、螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅または螺旋状に巻回された金属製平板間の距離が上記範囲内にあることにより、電熱線として使用したときに、永久膨張を抑制しつつ、高温かつ短時間での加熱を長期に亘って容易に行うことができる。
【0040】
本発明の金属発熱体を製造する方法としては、例えば、所望の金属材料からなり、所望の横幅および厚みを有する長尺状の金属製平板を、所望の断面直径を有する金属製の丸棒に所望の間隔で所望数巻き付けることにより作製することができる。
【0041】
本発明の金属発熱体は、長尺状の金属製平板(帯線)を螺旋状に巻回して中空線条化してなるものであることから、帯線の長さが長くなっても、帯線の長手方向に生じる熱膨張力を、金属発熱体の断面直径方向にも分散させることができ、高温で加熱しても永久膨張を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、本発明の金属発熱体は、長尺状の金属製平板(帯線)を螺旋状に巻回して中空線条化してなるものであることから、同一の断面直径を有する太線に比較して折り曲げ加工時の加工性が高くなり、このために加工の自由度を効果的に向上させることができる。
【0043】
さらに、本発明の金属発熱体は、細線ではなく幅広な金属製平板(帯線)を使用することから、単位長さあたりの表面積が増加するばかりか、断面積Aが増加するために、細線の巻回物と同じ巻回数であっても(長さLが同じであっても)、式R=ρ(L/A)に基づいて抵抗Rが低減し、このために、式P=V/Rに基づいて電力P(単位時間あたりの仕事量)が増加して、短時間かつ高温で加熱することが可能になる。
【0044】
本発明の金属発熱体は、電熱線として好適に使用することができ、発熱構造体に使用される電熱線としてより好適に使用することができる。
【0045】
次に、本発明の発熱構造体について説明する。
本発明の発熱構造体は、断熱材からなる基体と、該基体に固定された長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回することにより全体が中空線条化されてなる金属発熱体とを有することを特徴とするものである。
【0046】
本発明の発熱構造体としては、加熱装置が好ましく、加熱装置としては、パネルヒータや円筒状のヒータを挙げることができ、パネルヒータであることが好ましい。
【0047】
本発明の発熱構造体において、断熱材からなる基体としては、特に制限されず、所望の断熱材を目的形状に加工してなるものを適宜採用することができる。
【0048】
上記断熱材からなる基体としては、例えば、無機繊維を主材料として含有し、さらに所望により無機粒子および無機バインダーを含有してなるものを挙げることができ、無機繊維および無機バインダーを含有してなるものが好ましい。
【0049】
上記無機繊維としては、例えば、アルミノシリケート繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維等から選ばれる一種以上を挙げることができ、このうち、アルミノシリケート繊維は、1200℃における耐熱性に優れ、低コストであるために好適に使用することができる。
【0050】
上記無機粒子としては、例えば、CaO粉末、SiO粉末、ワラストナイト粉末、アルミナ粉末、ムライト粉末、ジルコニア粉末等から選ばれる一種以上を挙げることができ、このうち、アルミナ粉末は、高耐熱性であり、また低コストであるため好適に使用することができる。
【0051】
上記無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0052】
上記断熱材からなる基体が、無機繊維および無機バインダーを含有するものである場合、上記断熱材は、無機バインダー100質量部に対して無機繊維を100〜300質量部含むものであることがより好ましい。
【0053】
上記基体を構成する断熱材としては、例えば、無機繊維50〜95質量%、好ましくは50〜90質量%と、無機バインダー5〜30質量%と、粒子状の耐熱性無機質材料(無機粉末)0〜30質量%、好ましくは5〜30質量部とを含むものが挙げられる。
【0054】
本発明の発熱構造体において、基体を構成する断熱材は、空隙率が、50%以上であるものが好ましく、70〜98%であるものがより好ましく、80〜95%であるものがさらに好ましい。
【0055】
本出願書類において、上記空隙率は、断熱材中に存在する空隙の全体積の、断熱材の体積に対する比率であって、次式で算出される値を意味する。
空隙率(%)=〔1−断熱材の嵩比重/断熱材の真比重〕×100
断熱材の空隙率が上記範囲内にあることにより、熱容量が小さく、熱伝導率が低く、軽量で熱衝撃に強い発熱構造体を容易に得ることができる。
【0056】
本発明の発熱構造体において、基体を構成する断熱材は、嵩密度が、1.5g/cm以下であるものが好ましく、0.1〜1.2g/cmであるものがより好ましく、0.15〜0.7g/cmであるものがさらに好ましい。
嵩密度が1.5g/cmを超えると、熱伝導率及び熱容量が大きくなるため断熱材として好適に使用し難くなる。
【0057】
本発明の発熱構造体において、基体を構成する断熱材は、熱膨張係数が、10×10−6/℃以下であるものが好ましく、8×10−6/℃以下であるものがより好ましい。熱膨張係数が10×10−6/℃を超えると熱衝撃に弱くなり易くなる。
なお、本出願書類において、熱膨張係数は、JIS−R1618「ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法」により測定した値を意味するものとする。
【0058】
本発明の発熱構造体において、基体を構成する断熱材は、曲げ強度が、0.7MPa以上であることが好ましく、1.0MPa以上であることがより好ましい。
なお、本出願書類において、曲げ強度は、JIS A 9510に準じて測定した値を意味する。
【0059】
本発明の発熱構造体は、本発明の金属発熱体が基体に固定されてなるものであることが好ましい。
本発明の金属発熱体の詳細は、上述したとおりである。
【0060】
本発明の発熱構造体は、断熱材からなる基体の壁面に金属発熱体が固定されてなるものであり、具体的には、断熱材からなる基体の壁面に設けられた溝部に金属発熱体が嵌め込みないし埋設されてなるものや、断熱材からなる基体の壁面表面に金属発熱体が固定具等により固定されてなるものを挙げることができる。
本発明の発熱構造体としては、金属発熱体の脱落を抑制する上で、断熱材からなる基体の壁面に設けられた溝部に金属発熱体が嵌め込みないし埋設されてなるものが好ましい。
【0061】
本発明の発熱構造体が、断熱材からなる基体の壁面に設けられた溝部に金属発熱体が嵌め込まれてなるものである場合、溝部の形状としては特に制限されず、例えば図3(a)に断面の模式図で示すように、金属発熱体1が断熱材からなる基体2の壁面に設けられた断面がU字状の溝に固定されたもの等を挙げることができる。
この場合、発熱構造体は、金属発熱体1が単に溝内に嵌め込まれて固定されてなるものであってもよいし、金属発熱体1が溝内に嵌め込まれるとともにピン等の固定具により固定されてなるものであってもよい。
【0062】
本発明の発熱構造体が、断熱材からなる基体の壁面に設けられた溝部に金属発熱体が固定されてなるものである場合、本発明の発熱構造体は、金属発熱体が、基体の壁面に設けられた内部から表面に向かって拡幅する溝内に固定されてなるものであることが好ましい。内部から表面に向かって拡幅する溝としては、例えば図3(b)に断面の模式図で示すように、金属発熱体1が断熱材からなる基体2の壁面に設けられた断面がV字状の溝に嵌め込まれたもの等を挙げることができる。
この場合においても、発熱構造体は、金属発熱体1が単に溝内に嵌め込まれてなるものであってもよいし、金属発熱体1が溝内に嵌め込まれるとともにピン等の固定具により固定されてなるものであってもよい。
本発明の発熱構造体において、金属発熱体が、基体の壁面に設けられた内部から表面に向かって拡幅する溝内に固定されてなるものであることにより、金属発熱体から基体の外部へ効果的に放熱することができる。
【0063】
また、本発明の発熱構造体が、断熱材からなる基体の壁面に設けられた溝部に金属発熱体が固定されてなるものである場合、本発明の発熱構造体は、例えば図3(c)に断面の模式図で示すように、基体2の壁面内部に設けられ、天井部に開口部が設けられた略トンネル状の溝の内部に金属発熱体1が埋め込まれてなるものであってもよい。
この場合、発熱構造体は、金属発熱体1が単に溝内に埋め込まれて固定されてなるものであってもよいし、金属発熱体1が溝内に埋め込まれるとともにピン等の固定具により固定されてなるものであってもよいが、ピン等の固定具を使用することなく、埋め込みのみでも壁面に十分に固定することができる。
【0064】
本発明の発熱構造体が、断熱材からなる基体の壁面表面に金属発熱体が固定具等により固定されてなるものである場合、金属発熱体が、ピン等により断熱材からなる基体の壁面表面に固定されてなるものであることが好ましい。
【0065】
本発明の発熱構造体としては、円筒状のヒータやパネルヒータ等を挙げることができる。
【0066】
図4は、本発明の発熱構造体が円筒状ヒータである場合の構造例を示す外観図(斜視図)である。
図4に示す円筒状ヒータhは、拡散炉の加熱装置等として用いられるものであり、同図において、円筒状ヒータhは、断熱材からなる基体2と、本発明に係る金属発熱体からなるコイル状の電熱線1とを有し、断熱材からなる基体2が、電熱コイル1を被覆しつつ内部に収容する保持部材(支持部材)として機能している。
【0067】
図4の左下の円内に拡大図で示すように、本態様においては、断熱材からなる基体2の内部表面に本発明に係る金属発熱体からなるコイル状の電熱線1が螺旋状に巻回されつつ固定されており、図4に示すように、断熱材からなる基体2は、電熱線1を被覆しつつ内部に収容する保持部材(支持部材)として機能している。
図4に示す態様において、電熱線1は、断熱材からなる基体2に被覆されることによって保持されている(支持されている)が、円筒状ヒータとしては、電熱線1が(図示しない)ステープルにより断熱材からなる基体2の内側表面に固定され保持されているものであってもよい。
【0068】
また、図5および図6は、本発明の発熱構造体がパネルヒータである場合の構造例を示すものである。
図5は電熱線開放型パネルヒータの外観図(斜視図)であり、図6は同パネルヒータの製造工程における組み付け方法を一部を破断して示す側面図である。
また、図7は電熱線埋設型パネルヒータの側面の断面の模式図である。
【0069】
図5および図6に示す電熱線開放型パネルヒータhは、使用する電熱線が長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回することにより全体が中空線条化されてなる金属発熱体からなるものである点を除けば、例えば特開2001−273973号公報記載の電熱ヒータと同様の構造を有するものであり、断熱材からなる基体2a、2bと、断熱材2aの表面部4近傍に形成される溝孔5と、溝孔5内に配設される金属発熱体からなる電熱線とを備えてなる。
図5および図6に示すように、溝孔5は、適宜のピッチで平行して多数併設されてなることにより、断熱材からなる基体2aの表面部4に、熱を外部に放出する放熱溝部(開口部)を形成してなる開放溝を成す。
【0070】
また、図7は、電熱線埋設型パネルヒータの側面の断面の模式図であり、図7において、図5および図6に対応する要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について説明する。
【0071】
すなわち、図7に示す電熱線埋設型パネルヒータは、図5および図6に示す電熱線開放型パネルヒータと比較すると、断熱材からなる基体2cにより形成される溝孔5の形状が相違しており、図7に示すように、溝孔5は放熱開口部を有さないものである。図7に示す電熱線埋設型パネルヒータにおいて、表面部4の厚みtは薄いほど放熱効率が高くなる。また、図7に示す電熱線埋設型パネルヒータにおいて、表面部4が面状発熱体となるため、図5および図6に示す電熱線開放型パネルヒータに比べて昇温特性は低下するものの、昇温後の輻射効率は高くなる。
【0072】
図5および図6に示す電熱線開放型パネルヒータや図7に示す電熱線埋設型パネルヒータにおいて、溝部の形成位置である耐熱基材の表面部近傍とは、パネルヒータなどの発熱構造体としての機能を奏する位置であれば特に限定されず、従来の電熱線開放型パネルヒータや電熱線埋設型パネルヒータにおける電熱コイルの設置位置と同様にすることができる。
【0073】
図5および図6に示す電熱線開放型パネルヒータにおいて、断熱材からなる基体2aおよび2bは同一の材質からなるものであってもよいし異なる材質からなるものであってもよい。また、図7に示す電熱線埋設型パネルヒータにおいて、断熱材からなる基体2cおよび2bは同一の材質からなるものであってもよいし異なる材質からなるものであってもよい。
【0074】
また、図5および図6に示す電熱線開放型パネルヒータや図7に示す電熱線埋設型パネルヒータにおいて、発熱体を断熱材からなる基体に固定する形態は特に制限されず、後述するように、溝部を有する基体を作製した後、上記溝部に金属発熱体を嵌めこむことによって固定してもよいし、溝部を有する基体を作製した後、ステープル等の固定具で固定してもよいし、基体形成用のスラリーを成形する際に成形型内で基体形成用のスラリーと金属発熱体とを一体に成形して一体化物として固定してもよい。
【0075】
次に、本発明の発熱構造体を作製する方法について説明する。
本発明の発熱構造体を製造する方法としては、無機繊維を含むスラリーを脱水成形して成形体を作製した後、得られた成形体を乾燥処理して断熱材からなる基体を作製し、次いで金属発熱体を固定する方法を挙げることができる。
【0076】
無機繊維を含むスラリーは、上述しように、無機繊維以外に、無機粒子、無機バインダー等を含んでもよいし、さらに所望により凝集剤や凝集補助材等を適宜含んでもよい。
【0077】
スラリーを形成する液体媒体としては、特に制限されないが、水及び極性有機溶媒が挙げられ、極性有機溶媒としては、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール等の2価のアルコール類が挙げられる。これ等の液体媒体うち、作業環境や環境負荷を考慮すると、水が好ましい。また、水としては特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水、工業用水等が挙げられる。
【0078】
スラリー中における各原料の配合量は、適宜決定されるが、スラリー濃度、すなわち、スラリー中の成形体原料全体の含有量が0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。スラリー濃度が上記範囲内にあることにより、容易に成形することができる。
【0079】
本出願書類において、スラリーは液体媒体として水以外の媒体を含む場合もあるが、本出願書類においては、水以外の液体媒体を除去する場合も脱水成形と称することとする。
【0080】
脱水成形方法として、特に制限されないが、例えば、底部に網が設置された成形型中に該スラリーを流し込み、上記水等の液体媒体を吸引する吸引脱水成形法や、加圧脱水成形法、吸引加圧脱水法等を挙げることができる。
【0081】
上記脱水成形法により得られる脱水成形物は、得ようとする基材に対応する形状を有するものが適当であり、例えば、円筒状、有底筒状、平板状のものを挙げることができる。
【0082】
得られた脱水成形物は、適宜乾燥機等を用いて乾燥する。乾燥温度は、40〜180℃が好ましく、60〜150℃がより好ましく、80〜120℃がさらに好ましい。また、乾燥時間は、6〜48時間が好ましく、8〜40時間がより好ましく、10〜36時がさらに好ましい。また、乾燥時の雰囲気は、空気雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができる。
【0083】
上記乾燥処理した脱水成形物は、そのまま基体として供してもよいし、適宜金属発熱体等を固定するための溝部等を切断や切削などの機械加工により設けた上で基体として供してもよい。
【0084】
また、上記乾燥後または機械加工後に成形体に焼成処理を施した上で基体として供することもできる。
焼成時の焼成温度は、600〜1300℃であることが好ましく、700〜900℃であることがより好ましい。また、焼成時の雰囲気は、特に制限されないが、空気雰囲気、酸素雰囲気または窒素雰囲気であることが好ましい。焼成時間は、0.5〜4時間が好ましい。
焼成処理を施すことによって、成形物の脱脂及び実使用時の収縮を防止することができる。
【0085】
上記方法で得られた断熱材からなる基体の壁面に金属発熱体を固定する方法は、特に制限されず、断熱材からなる基体の壁面に嵌め込み固定したり、固定具により適宜固定することができる。
【0086】
具体的には、例えば、図5および図6に示すように、断熱材からなる基体2a、2bを別部材としてそれぞれ作製した後、断熱材からなる基体2aの裏面から溝孔5に金属発熱体からなる電熱線1を装着し、次いで断熱材からなる基体2bを組み付けることにより固定化し、一体化することができる。
また、(図示しない)ステープル等の固定具を用いて断熱材からなる基体の壁面に金属発熱体を固定することもできる。
【0087】
本発明の発熱構造体を製造する方法としては、断熱材の形成材料を含むスラリーを調製した後、金属発熱体を固定した成形型内に上記スラリーを注入し、脱水成形、乾燥処理することによって、金属発熱体を固定しつつ断熱材からなる基体を形成する方法を挙げることもでき、発熱構造体の製造過程で断熱材からなる基体も形成することができる。
本方法においては、断熱材からなる基体の作製時に金属発熱体を共存させることを除けば、上述した方法と同様にスラリーを調製し、脱水成形し、乾燥処理することにより、目的とする発熱構造体を得ることができる。
【0088】
本発明の発熱構造体は、長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回することにより全体が中空線条化されてなる金属発熱体を用いてなるものであることから、金属発熱体の永久膨張を抑制しつつ、長期に亘って、より高温でかつ短時間に被処理物を加熱することができる。
【0089】
以下、以下、本発明を実施例により説明するが、これらは例示であって、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0090】
(実施例1)
(1)金属発熱体の作製
図2に示される形態を有する金属発熱体を作製した。
すなわち、図2(a)に示される横幅Wが10mm、図2(b)に示される厚さTが0.5mmの鉄−クロム−アルミニウム合金製の長尺状の金属製平板Fを螺旋状に巻回することにより、図2(b)に示される長手方向に対する垂直断面直径D(垂直断面外径)が10mmであり、図2(b)に示される螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅Gが10mmであり、図2(b)に示される上記螺旋状に巻回された金属製平板間の距離Pが20mmである、全体が中空線条化されてなる金属発熱体1を得た。
このとき、金属発熱体1の長手方向に対する垂直断面直径D(10mm)は、金属製平板の横幅W(10mm)の1.0倍に相当するとともに金属製平板の厚みT(0.5mm)の20倍に相当するものであった。また、金属発熱体1を構成する螺旋状に巻回された金属製平板F間に形成される隙間の幅G(10mm)は、上記金属製平板Fの横幅W(10mm)の1.0倍に相当するものであった。
【0091】
(2)発熱構造体の作製および放熱試験
図4に示す円筒状の形態を有する、アルミノシリケート繊維80質量%と、無機バインダーであるコロイダルシリカを5質量%と、アルミナ粒子15質量%とを含む断熱材からなり、内径400mm、外径500mm、長さ600mmの寸法形状を有する基体2の内側表面に、(1)で得られた金属発熱体1を螺旋状に巻回しつつ、ステープルにより固定することにより、発熱構造体(円筒状ヒータh)を作製した。
次いで、金属発熱体の両端から通電して放熱したところ、基体2の内部の温度を1000℃迄20分間で昇温することができた。
上記発熱構造体(円筒状ヒータh)を構成する螺旋状に巻回した金属発熱体の両端から通電し、1200℃迄昇温して加熱した後、室温迄自然放冷する加熱−冷却処理を一サイクルとして、500サイクルの加熱−冷却処理を行った後の各金属発熱体の表面状態を観察したところ、異常は観察されなかった。
【0092】
(実施例2)
(1)金属発熱体の作製
図2に示される形態を有する金属発熱体を作製した。
図2(a)に示される横幅Wが6mm、図2(b)に示される厚さTが0.5mmの鉄−クロム−アルミニウム合金製の長尺状の金属製平板Fを螺旋状に巻回することにより、図2(b)に示される長手方向に対する垂直断面直径D(垂直断面外径)が5mmであり、図2(b)に示される螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅Gが10mmであり、図2(b)に示される上記螺旋状に巻回された金属製平板間の距離Pが20mmである、全体が中空線条化されてなる金属発熱体1を得た。
このとき、金属発熱体1の長手方向に対する垂直断面直径D(5mm)は、金属製平板の横幅W(6mm)の0.8倍に相当するとともに金属製平板の厚みT(0.5mm)の10倍に相当するものであった。また、金属発熱体1を構成する螺旋状に巻回された金属製平板F間に形成される隙間の幅G(10mm)は、上記金属製平板Fの横幅W(6mm)の1.67倍に相当するものであった。
【0093】
(2)発熱構造体の作製および放熱試験
上記(1)で得られた金属発熱体1を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして発熱構造体(円筒状ヒータh)を作製し、次いで、金属発熱体の両端にから通電して放熱したところ、基体2の内部の温度を1000℃迄30分間で昇温することができた。
上記発熱構造体(円筒状ヒータh)を構成する螺旋状に巻回した金属発熱体の両端から通電し、1200℃迄昇温して加熱した後、室温迄自然放冷する加熱−冷却処理を一サイクルとして、500サイクルの加熱−冷却処理を行った後の各金属発熱体の表面状態を観察したところ、異常は観察されなかった。
【0094】
(実施例3)
(1)金属発熱体の作製
図2に示される形態を有する金属発熱体を作製した。
図2(a)に示される横幅Wが20mm、図2(b)に示される厚さTが1.0mmの鉄−クロム−アルミニウム合金製の長尺状の金属製平板Fを螺旋状に巻回することにより、図2(b)に示される長手方向に対する垂直断面直径D(垂直断面外径)が20mmであり、図2(b)に示される螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅Gが15mmであり、図2(b)に示される上記螺旋状に巻回された金属製平板間の距離Pが30mmである、全体が中空線条化されてなる金属発熱体1を得た。
このとき、金属発熱体1の長手方向に対する垂直断面直径D(20mm)は、金属製平板の横幅W(20mm)の1.0倍に相当するとともに金属製平板の厚みT(1.0mm)の20倍に相当するものであった。また、金属発熱体1を構成する螺旋状に巻回された金属製平板F間に形成される隙間の幅G(15mm)は、上記金属製平板Fの横幅W(20mm)の0.75倍に相当するものであった。
【0095】
(2)発熱構造体の作製および放熱試験
上記(1)で得られた金属発熱体1を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして発熱構造体(円筒状ヒータh)を作製し、次いで、金属発熱体の両端から通電して放熱したところ、基体2の内部の温度を1000℃迄15分間で昇温することができた。
上記発熱構造体(円筒状ヒータh)を構成する螺旋状に巻回した金属発熱体の両端から通電し、1200℃迄昇温して加熱した後、室温迄自然放冷する加熱−冷却処理を一サイクルとして、500サイクルの加熱−冷却処理を行った後の各金属発熱体の表面状態を観察したところ、異常は観察されなかった。
【0096】
(参考例1)
(1)金属発熱体の作製
図2に示される形態を有する金属発熱体を作製した。
図2(a)に示される横幅Wが20mm、図2(b)に示される厚さTが2.5mmの鉄−クロム−アルミニウム合金製の長尺状の金属製平板Fを螺旋状に巻回することにより、図2(b)に示される長手方向に対する垂直断面直径D(垂直断面外径)が10mmであり、図2(b)に示される螺旋状に巻回された金属製平板間に形成される隙間の幅Gが15mmであり、図2(b)に示される上記螺旋状に巻回された金属製平板間の距離Pが30mmである、全体が中空線条化されてなる金属発熱体1を得た。
このとき、金属発熱体1の長手方向に対する垂直断面直径D(10mm)は、金属製平板の横幅W(20mm)の0.5倍に相当するとともに金属製平板の厚みT(2.5mm)の4倍に相当するものであった。また、金属発熱体1を構成する螺旋状に巻回された金属製平板F間に形成される隙間の幅G(15mm)は、上記金属製平板Fの横幅W(20mm)の0.75倍に相当するものであった。
【0097】
(2)発熱構造体の作製および放熱試験
上記(1)で得られた金属発熱体1を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして発熱構造体(円筒状ヒータh)を作製し、次いで、金属発熱体の両端から通電して放熱したところ、基体2の内部の温度を1000℃迄20分間で昇温することができた。
上記発熱構造体(円筒状ヒータh)を構成する螺旋状に巻回した金属発熱体の両端から通電し、1200℃迄昇温して加熱した後、室温迄自然放冷する加熱−冷却処理を一サイクルとして、500サイクルの加熱−冷却処理を行ったところ、金属発熱体の表面に亀裂が生じていた。
【0098】
(比較例1)
外径2mmの鉄−クロム−アルミニウム合金製の長尺状の丸線(細線)を金属発熱体とした。
上記金属発熱体1を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして発熱構造体(円筒状ヒータh)を作製し、次いで、金属発熱体の両端から通電して放熱したところ、基体2の内部の温度を1000℃迄昇温する迄45分間を要した。
上記発熱構造体(円筒状ヒータh)を構成する螺旋状に巻回した金属発熱体の両端から通電し、1200℃迄昇温して加熱した後、室温迄自然放冷する加熱−冷却処理を一サイクルとして、500サイクルの加熱−冷却処理を行おうとしたところ、100サイクル目の加熱−冷却処理により金属発熱体が破断してしまい、それ以降の加熱を行うことができなかった。
【0099】
上記各実施例および比較例における、金属発熱体を構成する金属製平板の横幅W(mm)および厚さT(mm)と、金属発熱体の垂直断面直径D(mm)、金属製平板間の距離P(mm)、金属製平板間に形成される隙間の幅G(mm)と、金属発熱体の垂直断面直径D(mm)/金属発熱体を構成する金属製平板の横幅W(mm)(D/W)および金属発熱体の垂直断面直径D(mm)/金属製平板の厚さT(mm)(D/T)と、各金属発熱体を用いた発熱構造体(円筒状ヒータh)の内部温度を1000℃迄昇温するまでに要した時間(分間)と、500サイクルの放熱試験結果を、表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例1〜実施例3においては、長尺状の金属製平板を螺旋状に巻回して全体を中空線条化することにより、高い成形性の下で金属発熱体を作製することができた。
また、表1より、実施例1〜実施例3で得られた金属発熱体は、長手方向に対する垂直断面直径Dが、金属製平板の横幅Wの0.5〜10倍であるとともに金属製平板の厚みTの5倍以上であり、かつ35mm以下であることにより、短時間に被処理物を高温加熱し得るとともに、500サイクルの加熱−冷却処理を繰り返しても、表面に異常が認められないことから、永久膨張を抑制し、長寿命なものであることが分かる。
【0102】
一方、表1より、参考例1で得られた金属発熱体は、短時間で昇温することができるものであるが、長手方向に対する垂直断面直径Dが、金属製平板の厚みTの5倍未満であることにより、500サイクルの加熱−冷却処理を繰り返した場合に、表面に亀裂を生じるものであることが分かる。
【0103】
また、表1より、比較例2で得られた金属発熱体は、外径2mmの細線からなるものであることから、1000℃まで昇温する際に長時間を要し、また、500サイクルの加熱−冷却処理を行おうとした場合に、100サイクル目の加熱−冷却処理で破断してしまう寿命の短いものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、より高温でかつ短時間に被処理物を加熱し得るとともに、永久膨張を抑制し、長寿命で成形の自由度の高い金属発熱体および発熱構造体を提供することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 金属発熱体
2 断熱材からなる基体
4 基材表面
5 溝孔
11 電熱線
12 断熱材からなる基体
13 ステープル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10