(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の流体が流通する流路内部に配置され、当該流路内部の情報を光学的に取り込む集光部、及び、当該集光部の周囲において第二の流体が流出するような流路を形成する流通管と、を有するプローブ部と、
前記流通管に前記第二の流体を所定の流速で供給する流体供給部と、
前記第一の流体の運動量に対する前記流通管から流出する前記第二の流体の運動量の比である運動量比が所定の閾値以上となるように、前記流通管に供給する前記第二の流体の流速を制御する流速制御部と、
を備えることを特徴とするプローブシステム。
第一の流体が流通する流路内部に配置され当該流路内部の情報を光学的に取り込む集光部の周囲に設けられた流通管が、当該集光部の周囲において第二の流体が流出する流路を形成し、
流速制御部が、前記流通管に供給する前記第二の流体の流速を、前記第一の流体の運動量に対する前記流通管から流出する前記第二の流体の運動量の比である運動量比が所定の閾値以上となるように制御し、
流体供給部が、前記流速制御部による制御に基づいて、前記第二の流体を前記流通管に供給する
ことを特徴とする検査方法。
第一の流体が流通する流路内部に配置され、当該流路内部の情報を光学的に取り込む集光部、及び、当該集光部の周囲において第二の流体が流出するような流路を形成する流通管と、を有するプローブ部と、
前記流通管に前記第二の流体を所定の流速で供給する流体供給部と、
を備えるプローブシステムのコンピュータを、
前記第一の流体の運動量に対する前記流通管から流出する前記第二の流体の運動量の比である運動量比が所定の閾値以上となるように、前記流通管に供給する前記第二の流体の流速を制御する流速制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一の実施形態>
以下、本発明の第一の実施形態によるプローブシステムを、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態によるプローブシステムの機能構成を示す図である。この図において、符号1はプローブシステムである。
【0019】
図1に示すように、本実施形態によるプローブシステム1は、プローブ部10、流体供給部12及び流速制御部13を備えている。プローブ部10はさらに、集光部100、光路101、流通管102及び計測器103で構成されている。
【0020】
本実施形態によるプローブシステム1は、例えばエンジン等のガスタービン装置に備えられている高温配管等(以下、「流路2」(
図1)と記載する)の内部状況の検査に用いられる計測システムである。本実施形態によるプローブシステム1は、プローブ部10を介して流路2内部の情報を光学的に取得する。より具体的に説明すると、プローブ部10は例えば赤外線カメラであって、その光学レンズ(以下、「集光部100」と記載する)から入力した赤外線に基づいて撮像領域の温度分布情報を取得する。当該ガスタービン装置のオペレータは、本実施形態によるプローブシステム1を用いることで、プローブ部10を介して取得した温度分布情報に基づいて高温配管である流路2内部に異常がないかどうかを検査することができる。なお本実施形態においては、流路2には「第一の流体」の一態様である「高温燃焼ガス」が流通しているものとする。
【0021】
次に、本実施形態によるプローブシステム1における各構成の機能について簡単に説明する。プローブ部10は、撮像領域における赤外光を取り込んで、当該撮像領域の温度分布を取得する機能部である。プローブ部10は、例えば上述した赤外線カメラであってよい。また
図1に示すように、本実施形態によるプローブ部10は、その一部が流路2内部に配置されており、当該一部は高温燃焼ガスに曝される状態となっている。以下、プローブ部10について具体的に説明する。
【0022】
プローブ部10の集光部100は、上述した通り所定の光学レンズであり、特定の領域から入射する光(本実施形態においては赤外光)を集約して光路101に送出する機能部である。なお光路101は、集光部100を介して取り込まれた赤外光を後述する計測器103に伝搬するための管路である。
【0023】
計測器103は、集光部100及び光路101を経由して入力した赤外光の強度分布に基づいて、撮像領域における温度分布を算出するための演算を行う機能部である。計測器103で算出された演算データ(温度分布データ)は、図示しない計測モニタ等に出力される。ここで計測器103は、算出した温度分布データを、例えば、高温の領域ほど赤く、低温の領域ほど青くして上記計測モニタに表示する。このようにすることで、オペレータはその撮像領域において温度の高い部分、低い部分を直感的に見分けることができる。
【0024】
また本実施形態によるプローブ部10は、集光部100及び光路101の周囲に流通管102を有することを特徴としている。
図1に示すように、流通管102は、集光部100の周囲において第二の流体が流出するような流路を形成する。なお本実施形態においては、「第二の流体」とは「冷却ガス」のことである。流通管102及び冷却ガスの機能の詳細については後述する。
【0025】
次に、プローブシステム1を構成する流体供給部12及び流速制御部13について簡単に説明する。流体供給部12は、上記冷却ガスを所定の流速でプローブ部10の流通管102に供給する機能部である。
図1に示すように、流体供給部12が供給する冷却ガスは、上記流通管102を巡りながら、光路101に沿って流路2の内部に流れた後、集光部100の周囲から流出して高温燃焼ガスに合流する仕組みとなっている。
【0026】
流速制御部13は、上記流体供給部12が流通管102に供給する冷却ガスの流速を制御する機能部である。そして本実施形態による流速制御部13は、「運動量比」が所定の閾値“rth”以上となるように、流通管102に供給する冷却ガスの流速を制御することを特徴としている。ここで「運動量比」とは、高温燃焼ガスの運動量Pgに対する流通管102から流出する冷却ガスの運動量Pcの比(Pc/Pg)である。すなわち流速制御部13は、rth≦Pc/Pgが常に成立するように流体供給部12の制御を行う。
【0027】
次に、上述した流通管102及び当該流通管102から流出する冷却ガスの機能について詳細に説明する。まず本実施形態によるプローブ部10は、上述した通りその一部(集光部100を有する先端部分)が流路2内部に配置され、高温燃焼ガスに曝される状態となっている。そのためプローブ部10の当該高温燃焼ガスに曝される部分が高温化し、プローブ部10が劣化・故障する事態が懸念される。本実施形態によるプローブシステム1はこのような事態を防ぐため、高温燃焼ガスよりも低温な冷却ガスを、当該高温燃焼ガスに曝される部分の周囲に流通させることで、プローブ部10における温度の上昇を抑制している。
【0028】
また本実施形態においては、流路2内部の温度分布情報を取得するという目的上、少なくとも集光部100は必ず流路2内部に配置されている必要がある。ここで一般的なガスタービン装置における高温配管(流路2)を流れる高温燃焼ガスは、粒塵、粉塵等(以下、「ダスト」と記載する)を多く含みながら流通している場合が多い。そうすると、プローブシステム1の運用経過に伴い、徐々に集光部100にダストが付着、堆積していき、計測器103に入力される赤外光の強度が低下するという問題が生じる。このような集光部100におけるダストの堆積はプローブ部10の計測精度の低下を招くこととなる。
【0029】
そこで本実施形態によるプローブシステム1は、
図1に示す通りプローブ部10において集光部100の周囲から冷却ガスが流出するように流通管102を形成している。このようにすれば、冷却ガスが集光部100を取り囲むような形で流出するので、集光部100付近へ流入しようとする高温燃焼ガスをその直前で押しのける作用が働いて、集光部100へのダスト付着を抑止する効果(ブロック効果)が得られる。
【0030】
しかしながら、本実施形態によるプローブシステム1は、流通管102から流出した冷却ガスが流路2を流れる高温燃焼ガスと合流するような態様となっている。ここで上述したダスト付着効果を得る目的で冷却ガスを必要以上に流出し続けるのは、ガスタービン装置としての電力生成効率の低下を招くこととなる。またプローブシステム1自身においても、冷却ガス送出のために必要以上に電力を消費してしまう。以上より、プローブシステム1は、上述したようなダストのブロック効果を得る目的で、無尽蔵に冷却ガスを送出し続けるような制御を行うのは効率の面で好ましくないといえる。
【0031】
ここで、高温燃焼ガスの流速が高い場合において、冷却ガスの流速が極端に低いと、ダストを運ぶ高温燃焼ガスの流れを冷却ガスの流れで変えることができず、高温燃焼ガスの集光部100付近への流入及びこれに伴うダストの付着を抑制することはできない。一方、高温燃焼ガスの流速がさほど高くない場合には、冷却ガスの流速を必要以上に高めずとも高温燃焼ガスの集光部100付近への流入を抑制することができる。つまり、高温燃焼ガスの流れの方向を冷却ガスの流れでダストが付着しない方向に変えるためには、当該冷却ガスの運動量(流体密度×流速)が、高温燃焼ガスの運動量に対して一定以上の値を有している必要がある。したがって、効率よく高温燃焼ガスにより運ばれるダストのブロック効果を得るためには、高温燃焼ガスの運動量の増減に合わせて、集光部100の周囲において流出する冷却ガスの運動量を調節する制御を行えばよい。以下、このような制御を実現するための具体的な処理フローについて説明する。
【0032】
図2は、本発明の第一の実施形態によるプローブシステムの処理フローを示すフローチャート図である。
以下、上述した本実施形態によるプローブシステム1における各機能部の処理フローを、
図2を参照しながら順を追って説明する。まずプローブシステム1の流速制御部13は、温度分布測定の運用にあたり、予めガスタービン装置の運転スケジュール(例えば、出力電力と時刻の関係を定義したデータ)を入力しておく(ステップS11)。
【0033】
次に流速制御部13は、上記運転スケジュールに基づいて実際に運転が開始されたガスタービン装置において、現時刻にて流路2を流通する高温燃焼ガスの運動量Pgを算出する(ステップS12)。ここで流速制御部13は、ガスタービン装置の運転スケジュールに基づく出力電力に応じて流路2における高温燃焼ガスの流速がどの程度となるかを予め求めておくことで、ステップS11で入力した運転スケジュールに基づいて現時刻における流路2の高温燃焼ガスの流速を予測して逐次取得することができる。なお流速制御部13は、上記運転スケジュールに基づく出力電力から高温燃焼ガスの流速を予測して取得する代わりに、運転スケジュールに直接定義された高温燃焼ガスの流速を、所定の経過時間ごとに直接的に参照する態様としてもよい。
【0034】
次に流速制御部13は、ガスタービン装置の運転開始に伴い、流体供給部12に対し流通管102へ供給する冷却ガスの流速を所定量だけ上昇させる制御を行う(ステップS13)。そうすると流体供給部12は当該制御に応じた流速で冷却ガスを流通管102に送出する。続いて流速制御部13は、流通管102から流出する冷却ガスの運動量Pcを算出する(ステップS14)。ここで流速制御部13が送出する冷却ガスの流速と、その結果、流通管102(集光部100の周囲)から流出する冷却ガスの流速の対応関係は予め求められているものとする。次に流速制御部13は、ステップS12で算出した高温燃焼ガスの運動量Pcを参照して運動量比Pc/Pgを算出する(ステップS15)。そして流速制御部13は、ステップS15で運動量比Pc/Pgを算出すると、当該運動量比Pc/Pgが所定の閾値rth以上か否かを判定する(ステップS16)。ここで運動量比Pc/Pgが閾値rth以上でなかった場合は、ステップS13に戻って上記処理を繰り返す(ステップS16→NO)。一方、運動量比Pc/Pgが閾値rth以上となっていた場合は、流速制御部13は処理を終了する(ステップS16→YES)。本実施形態による流速制御部13は、上述したステップS13〜ステップS16の処理を繰り返すことで、運動量比Pc/Pgが閾値rth以上となるような制御を実現する。
【0035】
なお本実施形態においては、閾値rthは予め指定された所定の定数であってよい。ここで集光部100にダストが堆積していく速さ(堆積速度)は、概ね単位時間当たりに集光部100の付近に流入する高温燃焼ガスの量、すなわち運動量比Pc/Pgに比例する(ただし、高温燃焼ガスにおけるダスト濃度は一定であるとする)。したがってオペレータは、運動量比Pc/Pgと集光部100におけるダストの堆積速度の対応関係を予め実験等で求めておき、適切に堆積速度が抑制される効果が得られる運動量比Pc/Pgの下限値を閾値rthとして設定しておけばよい。
【0036】
またステップS16の処理の結果、YESで処理を終了した流速制御部13は、一定時間経過後、再度ステップS11から同様の処理を繰り返してもよい。このようにすれば流速制御部13は、運転スケジュールに応じて時々刻々と変化する高温燃焼ガスの運動量Pgについて、常にPc/Pg≧rthを満たすような制御を行うことができる。
【0037】
また本実施形態による流速制御部13は、ステップS16(YES)の後、一端処理を終了する前に、現時点におけるPc/Pgが閾値rth以上であった場合には、閾値rthを下回らない範囲において冷却ガスの流速を低下させる制御を行ってもよい。このようにすれば、流速制御部13は、運動量比Pc/Pgが常に閾値rth近傍で安定するように制御することとなるので、集光部100へのダスト付着を抑止するという効果を維持しつつも、ガスタービン装置全体としての効率低下を最小限に留めることが可能となる。なお流速制御部13は、上記冷却ガスの流速を低下させる制御において、さらに、プローブ部10の冷却効果が十分に維持できる流速の範囲内で冷却ガスの流速を低下させるような制御を行ってもよい。
【0038】
また本実施形態による流速制御部13は、高温燃焼ガスの運動量Pg及び冷却ガスの運動量Pcの算出を行うにあたり、高温燃焼ガス及び冷却ガスの流体密度[kg/m3]を予め記憶されている記憶部(図示せず)から読みとって算出を行ってもよい。このようにすることで流速制御部13は、所定の流速計等で高温燃焼ガス及び冷却ガスそれぞれの流速を取得することで運動量Pg、Pcを算出することができる。
【0039】
以上、本実施形態によるプローブシステム1によれば、ガスタービン装置の運転中において、流速制御部13が常に運動量比Pc/Pgを所定の閾値rth以上に維持する制御を行うため、集光部100におけるダストの堆積を抑制する効果が得られる。その結果、プローブ部10をダストが多く含まれる流体の中に配置した場合においても、その計測感度の低下を抑制できる。
【0040】
<第二の実施形態>
以下、本発明の第二の実施形態によるプローブシステムを、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の第二の実施形態によるプローブシステムの機能構成を示す図である。なお第二の実施形態によるプローブシステムにおいて、第一の実施形態によるプローブシステムと同一の機能構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図3に示すように、本実施形態によるプローブシステム1は第一の実施形態によるプローブシステム1と同様、プローブ部10、流体供給部12及び流速制御部13を備えている。ここでプローブ部10及び流体供給部12は、第一の実施形態によるプローブシステム1と同等の機能を有している。一方、本実施形態による流速制御部13は、流路2に取り付けられたダスト濃度計14から所定の信号を入力する態様となっている。
【0042】
ダスト濃度計14は、
図3に示すように流路2に配置された計測器であって、流路2内部に取り付けられた所定の光学センサを介して、当該流路2を流通する高温燃焼ガスの単位体積当たりに含有されるダストの量(ダスト濃度[g/m3])を計測する機能部である。なお本実施形態によるダスト濃度計14は、取得した高温燃焼ガスのダスト濃度情報を電気信号により流速制御部13に伝達する機能を有している。
【0043】
また本実施形態による流速制御部13は、ダスト濃度計14から上記ダスト濃度情報を入力する。そして流速制御部13は、ダスト濃度計14から入力したダスト濃度情報に基づいて閾値rthの値を決定する。
【0044】
図4は、本発明の第二の実施形態による流速制御部の処理を説明するグラフである。
図4に示すように、本実施形態による流速制御部13は、入力したダスト濃度情報で示されるダスト濃度dに比例するように閾値rthを増減させることを特徴とする。
【0045】
ここで、高温燃焼ガスに含まれるダスト量は、ガスタービン装置の運転状況に応じて時々刻々と変化し得るものである。第一の実施形態による流速制御部13のように、運動量比Pc/Pgが所定の閾値rth以上となるように冷却ガスの流速を制御していたとしても、集光部100におけるダストの堆積速度は高温燃焼ガスに含まれるダスト量によって変化する。なお一般的には、ダストの堆積速度はダスト濃度dに比例して増減する。よって本実施形態による流速制御部13は、ダスト濃度計14を介して取得したダスト濃度dに比例するように閾値rthを決定する。このようにすれば流速制御部13は、高温燃焼ガスのダスト濃度dが高い場合には、それに応じて高い流速で冷却ガスを流出させる制御を行い、一方、ダスト濃度dが低い場合には、低い流速で冷却ガスを流出させる制御を行う。
【0046】
なお
図4に示すダスト濃度dと閾値rthの対応関係については、オペレータが、運動量比Pc/Pgと集光部100におけるダストの堆積速度、並びに、ダスト濃度dとダストの堆積速度の対応関係を実験等で求め、適切に堆積速度が抑制される効果が得られる閾値rthをダスト濃度dごとにプロットして求めることができる。
【0047】
図5は、本発明の第二の実施形態によるプローブシステムの処理フローを示すフローチャート図である。
図5に示す第二の実施形態によるプローブシステム1の処理フローのうち、ステップS21、S22の処理については、第一の実施形態によるプローブシステム1の処理フロー(
図2)のステップS11、S12の処理と同等であるため説明を省略する。また
図5に示す処理フローのうち、ステップS24〜S27の処理フローは、第一の実施形態によるプローブシステム1の処理フロー(
図2)におけるステップS13〜S16の処理フローに対応している。すなわち本実施形態によるプローブシステム1は、ステップS24〜S27において、運動量比Pc/Pgが閾値rth以上となる条件を満たすまで冷却ガスの流速を上昇させる制御を行う。ここで本実施形態による流速制御部13は、上記閾値rthをステップS23において以下の手順で取得する。
【0048】
流速制御部13は、ダスト濃度計14からダスト濃度情報を入力することで、高温燃焼ガスのダスト濃度dを取得する。そして流速制御部13は、取得したダスト濃度dとの比例関係(
図4)に基づいて閾値rthを決定する(ステップS23)。
【0049】
続いて流速制御部13は、上述したステップS24〜ステップS27の処理を繰り返すことで、運動量比Pc/Pgが常にダスト濃度dに基づいて決定された閾値rth以上となるような制御を実現する。
【0050】
以上、本実施形態によるプローブシステム1によれば、第一の実施形態と同様に、運動量比Pc/Pgが所定の閾値rth以上に保たれるので、集光部100におけるダストの付着を抑制する効果が得られる。また本実施形態による流速制御部13は、高温燃焼ガスに含まれるダスト濃度dに応じて適切な閾値rthが定められることを特徴としている。このようにすることでプローブシステム1は、例えば高温燃焼ガスにおけるダスト濃度が低い場合にはこれに応じて流速を低下させる制御を行うので、ダストの付着をより効率的に抑制することが可能となる。
【0051】
<第三の実施形態>
以下、本発明の第三の実施形態によるプローブシステムを、図面を参照して説明する。
図6は、本発明の第三の実施形態によるプローブシステムの機能構成を示す図である。なお第三の実施形態によるプローブシステムにおいて、第一の実施形態及び第二の実施形態によるプローブシステムと同一の機能構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、本実施形態によるプローブシステム1は第一の実施形態及び第二の実施形態によるプローブシステム1と同様、プローブ部10、流体供給部12及び流速制御部13を備えている。ここでプローブ部10、流体供給部12及びダスト濃度計14は、他の実施形態によるプローブシステム1と同等の機能を有している。一方、本実施形態による流速制御部13は、ダスト濃度計14及び計測器103から所定の信号を入力する態様となっている。
【0053】
本実施形態による流速制御部13は、ダスト濃度計14から高温燃焼ガスにおけるダスト濃度情報を入力する。さらに流速制御部13は、プローブ部10の計測器103による信号強度情報を入力する。そして流速制御部13は、入力した温度情報及び信号強度情報に基づいて集光部100におけるダストの付着量pを算出し、当該算出された付着量pに基づいて閾値rthを決定することを特徴とする。
【0054】
図7は、本発明の第三の実施形態による流速制御部の処理を説明するグラフである。
本実施形態による流速制御部13は、上述した通り、集光部100におけるダストの付着量pを算出する。ここで、流速制御部13によるダストの付着量pの算出手法について説明する。まず
図7に示すように、流速制御部13は、集光部100にダストが付着していない状態としたときのダスト濃度dに対する計測器103に入力される赤外線の信号強度Iを予め計測して求めておく。計測器103に入力される赤外線の信号強度Iは、理想的には
図6に示す撮像領域における温度に基づいて一意に定まるものである。しかしながら、実際には、撮像領域から放射する赤外光が高温燃焼ガスに含まれるダストによって赤外光が遮られるため、ダスト濃度dが高くなるに連れて入射強度Iは低下する。本実施形態によるプローブシステム1のオペレータは、この入射強度Iとダスト濃度dの対応関係を実験等で予め取得しておく(
図7)。なおプローブ部10の計測器103が赤外線の入射強度分布から撮像領域の温度分布を計測するものである場合、流速制御部13は、当該撮像領域の温度分布の平均値(平均温度)を上記入射強度Iとして算出してもよい。
【0055】
次に流速制御部13は、ガスタービン装置の実際の運転中において、ダスト濃度計14から高温燃焼ガスのダスト濃度dを取得する。同時に流速制御部13は、計測器103から現時点における信号強度(実測信号強度Ir)を取得する。そして、予め求めていた入射強度Iとダスト濃度dの対応関係から導かれる予測信号強度Iiと、現時点において実際に計測された実測信号強度Irの差分ΔIを算出する。
【0056】
ここで信号強度Iの差分ΔI分の低下は、集光部100に付着したダストに起因して発生したものと推定される。すなわち差分ΔIとダストの付着量pには相関関係があり、流速制御部13はこの相関関係に基づいて付着量pを算出することができる。ただし上述した例として、各入射強度Iを計測器103で計測される撮像領域の平均温度として求める場合は、当該撮像領域における計測時の平均温度が、入射強度Iとダスト濃度dの対応関係を予め求めた際における平均温度と一致している必要がある。そこで流速制御部13は、ガスタービン装置の運転スケジュール等を参照し、その運転状況から撮像領域の温度が所望の温度に到達していると推測されるタイミングで付着量pの算出処理を行うようにしてもよい。また流速制御部13は、別途撮像領域付近に設置された熱電対等の温度センサから観測される温度が、定められた所定の温度となっているタイミングで付着量pの算出処理を行うようにしてもよい。
【0057】
図8、
図9は、本発明の第三の実施形態によるプローブシステムの処理フローを示す第一、第二のフローチャート図である。
図8に示す第三の実施形態によるプローブシステム1の処理フローのうち、ステップS31、S32の処理については、第一の実施形態によるプローブシステム1の処理フロー(
図2)のステップS11、S12の処理と同等であるため説明を省略する。また
図8に示す処理フローのうち、ステップS34〜S37の処理フローは、第一の実施形態によるプローブシステム1の処理フロー(
図2)におけるステップS13〜S16の処理フローに対応している。すなわち本実施形態によるプローブシステム1は、ステップS34〜S37において、運動量比Pc/Pgが閾値rth以上となる条件を満たすまで冷却ガスの流速を上昇させる制御を行う。ここで本実施形態による流速制御部13は、上記閾値rthをステップS33において以下の手順で取得する。
【0058】
流速制御部13は、ダスト濃度計14から入力したダスト濃度情報、及び、計測器103から入力した信号強度情報に基づいて、集光部100におけるダストの付着量pを算出する。そして流速制御部13は、算出された付着量pに基づいて閾値rthを決定する処理を行う(ステップS33)。ここで、付着量pに基づいて閾値rthを決定するステップS33の具体的な手順を、
図9を参照しながら以下に説明する。
【0059】
まず流速制御部13は、上述した手法により、入力したダスト濃度情報及び信号強度情報から付着量pを算出する(ステップS331)。次に流速制御部13は、ガスタービン装置の運転中において前回に取得した付着量pとの差分、すなわちダスト付着量pの時間変化Δpを算出する(ステップS332)。ここで求められた時間変化Δpは集光部100におけるダストの堆積速度と考えることができる(以下、時間変化Δpを堆積速度Δpと記載する)。そして流速制御部13は、堆積速度Δpが所定値Δpth以上であるか否かを判定する(ステップS333)。ここで流速制御部13は、堆積速度Δpが所定値Δpth以上であった場合(ステップS333→YES)、閾値rthを現在設定されている値よりも高い値に設定する処理を行う(ステップS334)。一方、流速制御部13は、堆積速度Δpが所定値Δpth未満であった場合(ステップS333→NO)、閾値rthを現在設定されている値よりも低い値に設定する処理を行う(ステップS335)。
【0060】
上述した処理フローによれば、プローブシステム1は、集光部100におけるダストの付着(堆積)が想定よりも速いペースで進行していると判断される場合には、ステップS334の処理により閾値rthを引き上げ、集光部100の周囲から流出する冷却ガスの流速を上昇させる制御を行うこととなる。一方、プローブシステム1は、集光部100におけるダストの付着(堆積)が想定よりも遅いペースで進行していると判断できる場合には、ステップS335の処理により閾値rthを引き下げ、冷却ガスの流速を低下させる制御を行う。
【0061】
続いて流速制御部13は、上述したステップS34〜ステップS37の処理を繰り返すことで、運動量比Pc/Pgが常にダストの付着量pに基づいて決定された閾値rth以上となるような制御を実現する。
【0062】
なお本実施形態によるプローブシステム1は、上述した閾値rthの増減の判断(ステップS333)において、集光部100におけるダストの堆積速度Δpをその判定条件としたが、本実施形態においてはこの態様に限定されることはない。例えば、本実施形態によるプローブシステム1は、堆積速度Δpではなく付着量pそのものに基づいて閾値rthの増減を決定しても構わない。
【0063】
以上、本実施形態によるプローブシステム1によれば、第一の実施形態と同様に、運動量比Pc/Pgが所定の閾値rth以上に保たれるので、集光部100におけるダストの付着を抑制する効果が得られる。また本実施形態による流速制御部13は、集光部100に付着するダストの堆積速度Δpに応じて適切な閾値rthが定められることを特徴としている。このようにすることでプローブシステム1は、集光部100におけるダストの堆積状態に応じた直接的な制御を行うので、ダストの付着をより的確かつ効率的に抑制することが可能となる。
【0064】
<第四の実施形態>
以下、本発明の第四の実施形態によるプローブシステムを、図面を参照して説明する。
図10は、本発明の第四の実施形態によるプローブシステムの機能構成を示す図である。なお第四の実施形態によるプローブシステムにおいて、第一〜第三の実施形態によるプローブシステムと同一の機能構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図10に示すように、本実施形態によるプローブシステム1は第一〜第三の実施形態によるプローブシステム1と同様、プローブ部10、流体供給部12及び流速制御部13を備えている。ここでプローブ部10及び流体供給部12は、他の実施形態によるプローブシステム1と同等の機能を有している。一方、本実施形態による流速制御部13は、角度センサ104から所定の信号を入力する態様となっている。
【0066】
角度センサ104は、流路2に対するプローブ部10の角度θを検出し、当該検出した角度θを電気信号により流速制御部13に伝達する機能を有している。ここで、角度θは、
図10に示すように、流路2における高温燃焼ガスの方向に対する流通管102から流出する冷却ガスの方向の角度を表している。
【0067】
本実施形態による流速制御部13は、角度センサ104から上記角度情報を入力する。そして流速制御部13は、入力した角度情報より取得した角度θに基づいて閾値rthを決定することを特徴とする。
【0068】
なお本実施形態によるプローブシステム1は、流路2に対するプローブ部10の角度θをオペレータの操作によって適宜変更可能とする可動部(図示せず)を備えていてもよい。このようにすることでプローブシステム1は流路2内部におけるより広い範囲を撮像領域として取得することができる。
【0069】
図11は、本発明の第四の実施形態による流速制御部の処理を説明するグラフである。
図11に示すように、本実施形態による流速制御部13は、入力した角度情報で示される角度θに応じて閾値rthを増減させることを特徴とする。
【0070】
ここで高温燃焼ガスが単位時間当たりに集光部100の近傍に流入する量は、当該集光部100が高温燃焼ガスの流れに対していずれの方向を向いているかに大きく依存する。例えば、集光部100が高温燃焼ガスの流れの方向と同じ方向を向いていた場合(θ=0°)、集光部100に流入しようとする高温燃焼ガスの流量は最小となるが、集光部100が高温燃焼ガスの流れの方向と逆の方向を向いていた場合(θ=180°)、集光部100に流入しようとする高温燃焼ガスの流量は最大となる。したがって第一の実施形態による流速制御部13のように、運動量比Pc/Pgが所定の閾値rth以上となるように冷却ガスの流速を制御していたとしても、集光部100におけるダストの堆積速度は高温燃焼ガスの方向に対する冷却ガスの方向の角度θによって変化する。
【0071】
よって本実施形態による流速制御部13は、角度センサ104を介して取得した角度θに伴って閾値rthを決定する。より具体的には
図4に示すように、流速制御部13は、角度θが0°の時に閾値rthを最小値とし、角度θが増加するにつれて閾値rthの値も増加させ、角度θが180°のとき最大値となるように閾値rthを決定する。このようにすれば流速制御部13は、高温燃焼ガスの集光部100への流入量が多い場合には、それに応じて高い流速で冷却ガスを流出させる制御を行い、一方、高温燃焼ガスの流入量が少ない場合には、低い流速で冷却ガスを流出させる制御を行うことができる。
【0072】
なお
図11に示す角度θと閾値rthの対応関係については、オペレータが、運動量比Pc/Pgと集光部100におけるダストの堆積速度、並びに、角度θとダストの堆積速度の対応関係を実験等で求め、適切に堆積速度が抑制される効果が得られる閾値rthを角度θごとに計測して求めることができる。
【0073】
図12は、本発明の第四の実施形態によるプローブシステムの処理フローを示すフローチャート図である。
図12に示す第四の実施形態によるプローブシステム1の処理フローのうち、ステップS41、S42の処理については、第一の実施形態によるプローブシステム1の処理フロー(
図2)のステップS11、S12の処理と同等であるため説明を省略する。また
図12に示す処理フローのうち、ステップS44〜S47の処理フローは、第一の実施形態によるプローブシステム1の処理フロー(
図2)におけるステップS13〜S16の処理フローに対応している。すなわち本実施形態によるプローブシステム1は、ステップS44〜S47において、運動量比Pc/Pgが閾値rth以上となる条件を満たすまで冷却ガスの流速を上昇させる制御を行う。ここで本実施形態による流速制御部13は、上記閾値rthをステップS43において以下の手順で取得する。
【0074】
流速制御部13は、角度センサ104から角度情報を入力することで、流路2に対するプローブ部10の角度θ(すなわち高温燃焼ガスの方向に対する冷却ガスの方向の角度θ)を取得する。そして流速制御部13は、取得した角度θとの関係(
図11)に基づいて閾値rthを決定する(ステップS43)。
【0075】
続いて流速制御部13は上述したステップS44〜ステップS47の処理を繰り返すことで、運動量比Pc/Pgが常に角度θに基づいて決定された閾値rth以上となるような制御を実現する。
【0076】
以上、本実施形態によるプローブシステム1によれば、第一の実施形態と同様に、運動量比Pc/Pgが所定の閾値rth以上に保たれるので、集光部100におけるダストの付着を抑制する効果が得られる。また本実施形態による流速制御部13は、高温燃焼ガスの方向に対する冷却ガスの方向の角度θに応じて適切な閾値rthが定められることを特徴としている。このようにすることでプローブシステム1は、例えば角度θが小さく、集光部100に流入しようとする高温燃焼ガスの流量が少ない場合にはこれに応じて流速を低下させる制御を行うので、ダストの付着をより効率的に抑制することが可能となる。
【0077】
なお、本発明の他の実施形態によるプローブシステム1によっては、上述した第二〜第四の実施形態による各流速制御部13の機能のうち二つ以上を有する態様であってもよい。例えば、当該他の実施形態によるプローブシステム1の流速制御部13は、高温燃焼ガスのダスト濃度dと、高温燃焼ガスの方向に対する冷却ガスの方向の角度θの両方のパラメータに基づいて閾値rthを決定する機能を有していてもよい。この場合、流速制御部13は、ダスト濃度dに基づいて決定された閾値rthを一時的に係数rth_dとして記憶し、一方、角度θに基づいて決定された閾値rthを一時的に係数rth_θとして記憶しておく。そして流速制御部13は、閾値rthを、上記係数rth_dと係数rth_θを乗算して得た値として決定してもよい。なお他の実施形態による組み合わせも同様の手段を適用することができる。
【0078】
<第五の実施形態>
以下、本発明の第五の実施形態によるガスタービン装置を、図面を参照して説明する。
図13〜
図15は、本発明の第五の実施形態によるガスタービン装置の構成を示す第一〜第三の系統図である。これらの図において符号3は、ガスタービン装置である。なお第五の実施形態によるガスタービン装置3において、第一〜第四の実施形態によるプローブシステムと同一の機能構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
本実施形態によるガスタービン装置3は、熱機関を有して原動力を与えるエンジンの一態様である。
図13〜
図15に示すように、ガスタービン装置3は、空気等のガスを圧縮する圧縮器31、当該圧縮されたガスを燃焼させる燃焼器32、燃焼器32から流入する高温燃焼ガスにより動力を生みだすタービン33等で構成される。なおガスタービン装置3を構成するこれらの機能構成は従来のガスタービン装置と同等のものであるため、詳細な説明は省略する。オリフィス34は、ガスの流路(配管)に設けられ、当該流路を流通するガスの流速等を制御する機能部である。
【0080】
本実施形態によるガスタービン装置3は、上述した各実施形態によるプローブシステム1を有している(
図13〜
図15にはプローブ部10及び流速制御部13のみを図示)。本実施形態によるガスタービン装置3は、例えば
図13に示すように、圧縮器31から送出された圧縮ガスを燃焼器32に流入する前段階で分岐させ、冷却ガスとしてプローブ部10に送出する態様としている。なおこの場合において、オリフィス34は上述した流体供給部12の一態様である。すなわち、
図13に示すガスタービン装置3においては、流速制御部13がオリフィス34を制御することで冷却ガスの流速を制御する。
【0081】
また本実施形態によるガスタービン装置3は、
図14に示すような態様であってもよい。ここで
図14に示すガスタービン装置3は、燃焼器32等の冷却に用いられる冷却ガスであって熱交換器及びコンプレッサ(
図14)を介して生成されたものを分岐させ、オリフィス34を介してプローブ部10に流入させる態様となっている。
【0082】
また本実施形態によるガスタービン装置3は、
図15に示すような態様であってもよい。ここで
図15に示すガスタービン装置3は、プローブ部10の上流に位置し、タービン33における動翼等(
図15)の冷却に用いられる冷却ガスを分岐させ、オリフィス34を介してプローブ部10に流入させる態様となっている。
【0083】
以上、上述したような本実施形態によるガスタービン装置3によれば、ガスタービン装置3の各所を巡る冷却ガスを流用してプローブシステム1を運用する態様となっている。このようにすることで、ガスタービン装置3にプローブシステム1を適用するにあたり、プローブシステム1のために新たに冷却ガス用のコンプレッサ等を設置する必要性を排することができる。
【0084】
なお上述した各実施形態において、プローブシステム1は、ガスタービン装置に適用される検査システムであるとして説明したが、他の実施形態によるプローブシステム1によってはこのような態様に限定されない。例えば、当該他の実施形態によるプローブシステム1は、第一の流体または第二の流体として「液体」を流通させる配管の内部を検査するものであってもよい。また上述した実施形態においては、第二の流体は「冷却ガス」であるとし、プローブ部10の冷却を主目的としたガスを、当該プローブ部10に対するダスト付着の抑止効果を得るために流用する態様として説明したが、他の実施形態においては、第二の流体が「冷却ガス」に限定されることはない。すなわち、他の実施形態によるプローブシステム1は、第二の流体が、単にダスト付着の抑止効果を得ることを主目的として用いられる態様であっても構わない。
【0085】
なお、上述のプローブシステム1は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述したプローブシステム1における流速制御部13の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)または半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。