特許第5951593号(P5951593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許5951593排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法
<>
  • 特許5951593-排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法 図000002
  • 特許5951593-排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法 図000003
  • 特許5951593-排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法 図000004
  • 特許5951593-排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法 図000005
  • 特許5951593-排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法 図000006
  • 特許5951593-排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法 図000007
  • 特許5951593-排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法 図000008
  • 特許5951593-排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951593
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法
(51)【国際特許分類】
   F02G 5/00 20060101AFI20160630BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20160630BHJP
   F01P 11/16 20060101ALI20160630BHJP
   F01K 23/06 20060101ALI20160630BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20160630BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20160630BHJP
   F02G 5/04 20060101ALI20160630BHJP
   F01K 23/02 20060101ALI20160630BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   F02G5/00 E
   F01P3/20 E
   F01P11/16 D
   F01K23/06 P
   F01K23/10 P
   F01K25/10 R
   F01K25/10 W
   F02G5/04 Q
   F02G5/04 R
   F02G5/00 C
   F02G5/00 B
   F01K23/02 P
   F01K27/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-273202(P2013-273202)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-127519(P2015-127519A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】川見 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】市来 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】森 匡史
(72)【発明者】
【氏名】川波 晃
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−180625(JP,A)
【文献】 特開2012−149541(JP,A)
【文献】 特開2012−215124(JP,A)
【文献】 特開2008−255959(JP,A)
【文献】 特開2011−231636(JP,A)
【文献】 特開2012−102619(JP,A)
【文献】 特開2011−231703(JP,A)
【文献】 特開2013−217340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00−69/00
B63H 1/00−20/32
20/36−25/52
B63J 1/00−99/00
F01K 23/00−27/02
F01P 1/00−11/20
F02G 1/00− 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関から排出される排出ガスにより駆動され、空気を圧縮して前記内燃機関に燃焼用空気として供給する過給機と、
前記過給機から前記内燃機関に供給される前記燃焼用空気を冷却する空気冷却器と、
前記内燃機関を冷却する冷却水を循環させる冷却水流路と、
前記冷却水流路を循環する前記冷却水と作動流体の熱交換をする熱交換器と、を備え、
前記冷却水流路は、
前記空気冷却器を通過させずに前記内燃機関から排出される前記冷却水を前記熱交換器に導く第1流路と、
前記空気冷却器を通過させて前記内燃機関から排出される前記冷却水を前記熱交換器に導く第2流路と、をさらに備え、
前記第1流路を介して前記熱交換器に導かれる前記冷却水の第1流量と、前記第2流路を介して前記熱交換器に導かれる前記冷却水の第2流量とを調整する第1流量調整弁を備える排熱回収装置。
【請求項2】
前記第1流量調整弁の下流側に設けられ、該第1流量調整弁から前記熱交換器に導かれる前記冷却水の温度を検出する温度検出部を備え、
前記第1流量調整弁は、前記温度検出部が検出する前記冷却水の温度が所定温度以上となるように前記第1流量と前記第2流量とを調整する請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項3】
前記過給機を通過した前記排出ガスの熱を回収する排熱回収システムと、
前記排熱回収システムにより回収された熱と前記熱交換器に導かれる前記冷却水との熱交換を行う補助熱交換器とを備える請求項2に記載の排熱回収装置。
【請求項4】
前記補助熱交換器に導かれる蒸気の流量を調整する第2流量調整弁を備え、
前記第2流量調整弁は、前記温度検出部が検出する前記冷却水の温度が所定温度以上となるように前記蒸気の流量を調整する請求項3に記載の排熱回収装置。
【請求項5】
前記内燃機関が、船舶の推進力を発生させる主機関であり、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の排熱回収装置を備えた排熱回収型船舶推進装置。
【請求項6】
排出ガスを排出する工程と、
前記排出ガスにより空気を圧縮して燃焼用空気を生成する工程と、
前記燃焼用空気を燃焼用空気冷却水により冷却する工程と
記燃焼用空気冷却水の流量と、前記燃焼用空気を冷却させない冷却水の流量とを調整し、前記燃焼用空気冷却水と前記燃焼用空気を冷却させない冷却水とを混合する工程と、
前記混合する工程により混合された冷却水を作動流体と熱交換させる工程と、を備える排熱回収方法。
【請求項7】
前記作流体と熱交換する前の前記混合された冷却水の温度を検出する工程を備え、
前記混合する工程は、前記温度を検出する工程が検出する前記混合された冷却水の温度が所定温度以上となるように前記燃焼用空気冷却水の流量と前燃焼用空気を冷却させない冷却水の流量とを調整する請求項6に記載の排熱回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶のディーゼルエンジンの排熱を回収して発電を行う排熱回収装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に開示された排熱回収装置は、ディーゼルエンジンの冷却水を蒸発器に導き、蒸発器で蒸発した作動流体をパワータービンに導く。そして、作動流体によってパワータービンが回転し、それに伴ってパワータービンの回転動力が発電機に伝達される。
【0003】
特許文献1に開示された排熱回収装置において、ディーゼルエンジンの冷却水は、ディーゼルエンジンから排出された後は他の熱交換器により熱せられることなく排熱回収装置が備える蒸発器に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−215124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された排熱回収装置においては、排熱回収装置が回収可能な熱量は、蒸発器に導かれる冷却水の温度に依存することとなる。
したがって、船舶の主機関であるディーゼルエンジンの負荷(出力)が低下すると、それに伴って冷却水の温度が低下する。そして、冷却水の温度の低下に伴って、排熱回収装置が回収する熱量が低下してしまい、十分な熱量を回収できなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、内燃機関から排出される冷却水の温度が低下する場合であっても冷却水を加熱して回収される熱量を維持することが可能な排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る排熱回収装置は、内燃機関と、前記内燃機関から排出される排出ガスにより駆動され、空気を圧縮して前記内燃機関に燃焼用空気として供給する過給機と、前記過給機から前記内燃機関に供給される前記燃焼用空気を冷却する空気冷却器と、前記内燃機関を冷却する冷却水を循環させる冷却水流路と、前記冷却水流路を循環する前記冷却水と作動流体の熱交換をする熱交換器と、を備え、前記冷却水流路は、前記空気冷却器を通過させずに前記内燃機関から排出される前記冷却水を前記熱交換器に導く第1流路と、前記空気冷却器を通過させて前記内燃機関から排出される前記冷却水を前記熱交換器に導く第2流路と、をさらに備え、前記第1流路を介して前記熱交換器に導かれる前記冷却水の第1流量と、前記第2流路を介して前記熱交換器に導かれる前記冷却水の第2流量とを調整する第1流量調整弁を備える。
【0008】
本発明に係る排熱回収装置によれば、第1流路に導かれる冷却水は空気冷却器によって加熱されることなく熱交換器に導かれ、第2流路に導かれる冷却水は空気冷却器によって加熱されてから熱交換器に導かれる。第1流路に導かれる冷却水の第1流量を減少させ、第2流路に導かれる冷却水の第2流量を増加させることにより熱交換器に導かれる冷却水の温度が上昇する。したがって、内燃機関から排出される冷却水の温度が低下する場合であっても、第1流量と第2流量とを第1流量調整弁により適切に調整することにより、熱交換器に導かれる冷却水の温度が適切な温度に調整される。
このようにすることで、内燃機関から排出される冷却水の温度が低下する場合であっても冷却水を加熱して回収される熱量を維持することが可能な排熱回収装置を提供することができる。
【0009】
本発明の第1態様の排熱回収装置は、前記第1流量調整弁の下流側に設けられ、該第1流量調整弁から前記熱交換器に導かれる前記冷却水の温度を検出する温度検出部を備え、前記第1流量調整弁は、前記温度検出部が検出する前記冷却水の温度が所定温度以上となるように前記第1流量と前記第2流量とを調整する。
このようにすることで、第1流量調整弁は、第1流量調整弁の下流側から発電システムの熱交換器に導かれる冷却水の温度が所定温度以上となるように調整し、回収される熱量を維持することができる。
【0010】
本発明の第1態様の排熱回収装置においては、前記過給機から排出される前記排出ガスの熱を回収する排熱回収システムと、前記排熱回収システムにより回収された熱と前記熱交換器に導かれる前記冷却水との熱交換を行う補助熱交換器とを備える構成にしてもよい。
このようにすることで、内燃機関から排出される冷却水の温度が低く、空気冷却器による加熱では冷却水の温度を十分に維持できない場合であっても、排熱回収システムにより回収される排出ガスを熱源とする補助熱交換器により冷却水の温度を維持することが可能となる。
【0011】
上記構成においては、前記補助熱交換器に導かれる蒸気の流量を調整する第2流量調整弁を備え、前記第2流量調整弁は、前記温度検出部が検出する前記冷却水の温度が所定温度以上となるように前記蒸気の流量を調整するようにしてもよい。
このようにすることで、補助熱交換器に導かれる蒸気の流量を冷却水の温度が所定温度以上となるように適切に調整することができる。
【0012】
本発明に係る排熱回収型船舶推進装置は、前記内燃機関が、船舶の推進力を発生させる主機関であり、上述したいずれかに記載の排熱回収装置を備える。
このようにすることで、内燃機関から排出される冷却水の温度が低下する場合であっても冷却水を加熱して回収される熱量を維持することが可能な排熱回収型船舶推進装置を提供することができる。
【0013】
本発明に係る排熱回収方法は、排出ガスを排出する工程と、前記排出ガスにより空気を圧縮して燃焼用空気を生成する工程と、前記燃焼用空気を燃焼用空気冷却水により冷却する工程と、前記燃焼用空気冷却水の流量と、前記燃焼用空気を冷却させない冷却水の流量とを調整し、前記燃焼用空気冷却水と前記燃焼用空気を冷却させない冷却水とを混合する工程と、前記混合する工程により混合された冷却水を作動流体と熱交換させる工程と、を備える。
【0014】
本発明に係る排熱回収方法によれば、燃焼用空気を冷却する燃焼用空気冷却水の流量を多くし、燃焼用空気を冷却させない冷却水の流量を少なくすることにより作動流体と熱交換される冷却水の温度が上昇する。したがって、冷却水の温度が低下する場合であっても、燃焼用空気を冷却する燃焼用空気冷却水の流量と燃焼用空気を冷却させない冷却水の流量とを適切に調整することにより、作動流体と熱交換される冷却水の温度が適切な温度に調整される。
このようにすることで、冷却水の温度が低下する場合であっても冷却水を加熱して回収される熱量を維持することが可能な排熱回収方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内燃機関から排出される冷却水の温度が低下する場合であっても冷却水を加熱して回収される熱量を維持することが可能な排熱回収装置、排熱回収型船舶推進装置および排熱回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置の概略構成図である。
図2】冷却水の温度調整動作を示すフローチャートである。
図3図1に示す排熱回収型船舶推進装置における主機負荷に対する掃気空気温度を示すグラフである。
図4図1に示す排熱回収型船舶推進装置における主機負荷に対する掃気空気およびジャケット冷却水の熱量を示すグラフである。
図5】本発明の第2実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置の概略構成図である。
図6】冷却水の温度調整動作を示すフローチャートである。
図7図5に示す排熱回収型船舶推進装置における主機負荷に対する主機排ガス温度を示すグラフである。
図8図5に示す排熱回収型船舶推進装置における主機負荷に対するコンポジットボイラにおける蒸気発生量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置1について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置1(排熱回収装置)は、ディーゼルエンジン(内燃機関)3と、ターボチャージャ(過給機)4と、空気冷却器5と、冷却水流路7と、三方弁(第1流量調整弁)8と、ORCシステム(発電システム)2と、排熱回収システム10とを備える。
【0018】
本実施形態の排熱回収型船舶推進装置1は、船舶の推進力を発生させる主機関(主機)であるディーゼルエンジン3の冷却水の排熱を、熱交換によってORCシステム2の有機流体(作動流体)に伝達し、有機流体によって発電を行う装置である。本実施形態の排熱回収型船舶推進装置1は、ディーゼルエンジン3の冷却水の排熱を発電に利用することで、排熱を有効に回収して再利用することを可能にする。
以下、本実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置1の各部について図面を参照して説明する。
【0019】
ディーゼルエンジン3は、船舶の推進力を発生させる主機関(主機)であり、燃料油および燃料ガスの少なくともいずれか一方を主燃料として掃気空気とともに燃焼させる内燃機関である。
ターボチャージャ4は、ディーゼルエンジン3が主燃料を燃焼させることにより排出される排出ガスにより駆動されるタービン4aと、タービンの回転動力によって外気を圧縮する圧縮機4bとを備える。ターボチャージャ4により圧縮された外気は、燃焼用の掃気空気としてディーゼルエンジン3に供給される。
【0020】
空気冷却器5は、ターボチャージャ4の圧縮機4bからディーゼルエンジン3に供給される掃気空気を冷却する装置である。空気冷却器5の入口における掃気空気の温度は、図3に実線で一例を示すように、主機負荷(主機であるディーゼルエンジン3の負荷)に応じて約50℃〜約200℃の範囲となる。空気冷却器5により掃気空気を冷却することにより、空気冷却器5の出口における掃気空気の温度は、主機負荷にかかわらず約40℃に維持される。このように、掃気空気の温度を低くすることにより、ディーゼルエンジン3に供給される掃気空気の単位体積あたりの重量を増加させることができる。
【0021】
空気冷却器5は、燃焼用空気の流通方向の上流側に配置される第1空気冷却部5aと、その下流側に配置される第2空気冷却部5bとを備えている。第1空気冷却部5aは、冷却水流路7から供給されるディーゼルエンジン3の冷却水と圧縮機4bから供給される掃気空気との熱交換を行うことで、掃気空気を冷却する。第2空気冷却部5bは、セントラル冷却器(不図示)により海水にて冷却された清水と第1空気冷却部5aにより冷却された掃気空気との熱交換を行うことで、掃気空気を更に冷却する。
【0022】
冷却水流路7は、図1に示すように、流路71,流路72,流路73,流路74,流路75,流路76,流路77の順に冷却水を循環させる流路である。冷却水流路7は、流路73と流路74とが接続される分岐点Dに接続される流路78を更に備えている。
流路74(第1流路)は、空気冷却器5を通過させずにディーゼルエンジン3から排出される冷却水をORCシステム2の蒸発器21に導く流路である。流路78(第2流路)は、空気冷却器5を通過させてディーゼルエンジン3から排出される冷却水をORCシステム2の蒸発器21に導く流路である。
【0023】
三方弁8は、流路74(第1流路)を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第1流量)と、流路78(第2流路)を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第2流量)とを調整する弁である。三方弁8は、流路74から流路75に流入する冷却水の流量を0とし、流路73を流通する冷却水の全量を流路78から流路75に流入させることができる。また、三方弁8は、流路78から流路75に流入する冷却水の流量を0とし、流路73を流通する冷却水の全量を流路74から流路75に流入させることができる。
【0024】
ORCシステム(Organic Rankine Cycle System)2は、冷却水流路7を循環する冷却水と有機流体の熱交換をする蒸発器21を有し、蒸発器21により冷却水と熱交換した有機流体により発電を行うシステムである。ORCシステム2は、ディーゼルエンジン3の燃焼により発生する熱が伝達される冷却水を熱源として利用することにより、ディーゼルエンジン3の排熱を有効に回収することができる。
【0025】
ORCシステム2は、有機流体を循環させる有機流体流路20を備えている。有機流体経路を流れる有機流体としては、イソペンタン、ブタン、プロパン等の低分子炭化水素や、冷媒として用いられるR134a、R245fa等を用いることができる。ORCシステム2は、蒸発器21と、パワータービン22と、エコノマイザ23と、凝縮器24と、循環ポンプ25とを備えており、これらは図1に示すように有機流体流路20によって接続されている。
【0026】
ORCシステム2において、蒸発器21は、流路75を流通する冷却水と有機流体との熱交換を行って有機流体を蒸発させる。蒸発器21で蒸発した有機流体は、有機流体流路20によってパワータービン22に導かれる。パワータービン22は、気相の有機流体によって回転動力が与えられて回転する。パワータービン22の出力軸には減速機26を介して発電機27が接続されている。したがって、パワータービン22の回転動力によって発電機27による発電が行われる。
【0027】
パワータービン22に回転動力を与えた気相の有機流体は凝縮器24に導かれ、海水によって冷却されることにより気相の有機流体が凝縮して液相の有機流体となる。液相の有機流体は、循環ポンプ25によってエコノマイザ23に導かれる。エコノマイザ23は、循環ポンプ25から導かれる液相の有機流体とパワータービン22から排出された気相の有機流体との熱交換を行い、液相の有機流体を加熱してから蒸発器21に導く。このように、ORCシステム2の有機流体は、蒸発器21,パワータービン22,凝縮器24,循環ポンプ25,エコノマイザ23の順に、有機流体流路20内を循環する。
【0028】
次に、冷却水流路7を循環する冷却水の流量の調整機構について説明する。
排熱回収型船舶推進装置1は、図1に示す制御部9を備えている。制御部9が流量調整弁81,82,83,三方弁84,8,87の開度を調整することにより、冷却水流路7を循環する冷却水の流量の調整が行われる。
【0029】
流量調整弁81,82,83は、流路71から排出されるディーゼルエンジン3の冷却水の一定量を造水装置(不図示)に導くように冷却粋の流量を調整する弁である。ここで、造水装置は、バイパス流路91を介して導かれたディーゼルエンジン3の冷却水の排熱を利用して、船外から取り入れられた海水を加熱し、加熱された海水を蒸発させて清水を造り出す蒸発式(フラッシュ式)の造水装置である。常に一定量の清水を造り出すことを可能とするために、造水装置には、一定量(例えば、流路71を流通する140t/hの流量の内の70t/hの流量)の冷却水が導かれる。
【0030】
造水装置に導かれた冷却水は、海水を蒸発させるのに利用された後にバイパス流路92を介して流路72に導かれる。このように、ディーゼルエンジン3の冷却水の排熱のうちの一定量は、造水装置の熱源として利用される。一方、ディーゼルエンジン3の冷却水の排熱のうちの他の一定量(造水装置に導かれない冷却水の流量)は、流量調整弁81を介して流路72に導かれる。
【0031】
三方弁84は、流路72に導かれた冷却水のうち一部の流量を流路73に導き、他の一部の流量を三方弁87および循環ポンプ88が設けられる流路77に導く弁である。三方弁84は、流路72に導かれる冷却水の全量を流路73に導くことや、流路72に導かれる冷却水の全量を流路77に導くことができる。
制御部9は、流路73上に設けられる流量計85によって流路73を流通する冷却水の流量を検知し、三方弁84の開度を調整する。
【0032】
流路73に導かれた冷却水は、分岐点Dにおいて、流路74と流路78とに分岐する。流路74および流路78それぞれの下流端は、三方弁8に接続されている。三方弁8は、制御部9の指示に応じて、流路73を流通する冷却水のうち、流路74(第1流路)を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第1流量)と、流路78(第2流路)を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第2流量)との比率を調整する。
【0033】
三方弁8の下流側の流路75には温度センサ86(温度検出部)が設けられており、流路74および流路78から流入する冷却水が混合した状態で、冷却水の温度を検出する。制御部9は、後述するように、温度センサ86が検出する温度が所定温度以上となるように、三方弁8を制御する。
【0034】
所定温度以上となるように調整された冷却水は、ORCシステム2の蒸発器21を通過した後、流路76に導かれる。流路76の下流端は三方弁87に接続されている。三方弁87は、流路76を流通する冷却水を流路77に設けられた循環ポンプ88に導くものである。三方弁87は、制御部9の指示に応じて、流路76からセントラル冷却器を介して流路77に導かれる冷却水の流量と、セントラル冷却器を介さずに流路77に導かれる冷却水の流量とを調整することが可能となっている。
【0035】
循環ポンプ88は、冷却水流路7内で冷却水が循環するように冷却水に流速を与える装置である。循環ポンプ88に導かれた冷却水は、流路77から再びディーゼルエンジン3に導かれ、ディーゼルエンジン3の冷却水として用いられる。
【0036】
次に、ディーゼルエンジン3から排出され、ターボチャージャ4の動力として用いられた排ガス(燃焼ガス)の排熱を回収して利用する排熱回収システム10について説明する。
排熱回収システム10は、コンポジットボイラ101を備えている。
【0037】
コンポジットボイラ101は、ターボチャージャ4から流路102を介して高温の排ガスが導かれる。コンポジットボイラ101に送り込まれた水は、排ガスとの熱交換によって蒸発し、発生した蒸気はヒータ103に送出され、各種の機器(油加熱器、タンク加熱器等)の熱源として用いられる。ヒータ103にて熱源として用いられた蒸気は、大気圧ドレンタンク104に回収される。
【0038】
大気圧ドレンタンク104内の水は、給水ポンプ105によって送出され、コンポジットボイラ101に導かれる。大気圧ドレンタンク104に回収されたコンポジットボイラ101内の水の水位は、図示しないフロートスイッチによって、一定の水位を保つように調整される。
このように、排熱回収システム10は、ターボチャージャ4の動力として用いられた排ガス(燃焼ガス)の排熱を回収して蒸気を発生させ、各種の機器(油加熱器、タンク加熱器等)の熱源として用いることができる。
【0039】
次に、図2を参照して、制御部9が三方弁8を調整することにより行われる冷却水の温度調整動作について説明する。図2に示す各工程は、制御部9が記憶部(不図示)から制御プラグラムを読み出して実行することにより行われる。
図2の説明にあたっては、図3および図4を参照する。図3は、主機負荷に対する掃気空気温度を示すグラフであり、実線が空気冷却器5の入口における掃気空気温度を示し、鎖線が空気冷却器5の出口における掃気空気温度を示す。図4は、主機負荷に対する熱量を示すグラフであり、実線がターボチャージャ4から排出される掃気空気が備える熱量を示し、鎖線がディーゼルエンジン3から排出される冷却水が備える熱量を示す。
【0040】
ステップS201で、制御部9は、主機(ディーゼルエンジン3)の負荷が所定負荷より低いかを判定し、所定負荷より低い場合にはステップS202に処理を進め、そうでなければステップS204に処理を進める。
ここで、所定負荷より低い場合とは、例えば、主機負荷が60%となる場合をいう。主機負荷が100%となる場合、その出力は例えば13000kW(回転数102.6rpm)となる。図4に一例を示すように、主機負荷が60%となる場合、ディーゼルエンジン3から排出される冷却水の熱量はQ2kW(約1400kW)となる。前述したように、冷却水の熱量に含まれる一定熱量(約600kW)は、造水装置の熱源として消費される。図4に示すように、(Q2−Q1)に相当する熱量が造水装置用熱量として消費される。従って、ORCシステム2の熱源として利用可能な熱量は、主機負荷が60%の場合、Q1kW(約800kW)となる。
【0041】
ORCシステム2の熱源として利用可能な熱量が800kWを下回る場合、ORCシステム2に供給される冷水の温度が85℃を下回り、ORCシステム2が所望の発電電力(約100kW)を発生させることができなくなる。そこで、主機の負荷が所定負荷より低い場合、制御部9は、以下に説明するように三方弁8を調整して、ORCシステム2に供給される冷却水の温度を上昇させる。
図3および図4に示すように、主機負荷が60%以下となる場合であっても、掃気空気の温度および熱量は十分であるので(例えば、主機負荷50%では、約130℃で約1200kW)、掃気空気を熱源とすることにより、冷却水の温度を上昇させることができる。
【0042】
ステップS202(温度検出工程)で、制御部9は、温度センサ86の検出値を参照し、流路75を流通する冷却水の温度が所定温度(例えば、85℃)より低いかどうかを判定する。冷却水の温度が所定温度より低いと判定される場合は、冷水の温度を上昇させる必要があるので、ステップS203に処理を進める。冷却水の温度が所定温度より低いと判定されない場合、冷却水の温度が十分な温度となっていることから、ステップS204に処理を進める。
【0043】
ステップS203で、制御部9は、三方弁8を調整することにより、流路74を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第1流量)を減少させ、流路78を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第2流量)を増加させる。流量の調整量は、予め固定された流量を調整してもよいし、温度センサ86の検出値と所定温度(例えば、85℃)との差分に基づいて流量を調整してもよい。
制御部9は、ステップS203の後に再びステップS201に処理を戻すので、冷却水の温度が所定温度以上となるまで、ステップS201、ステップS202およびステップS203の処理が繰り返される。
【0044】
冷却水の温度が所定温度以上となり、さらにステップS201で主機の負荷が所定負荷以上となったことが判定された場合、制御部9は、ステップS204に処理を進める。
ステップS204で、制御部9は、主機であるディーゼルエンジン3の負荷が所定負荷以上となり、ORCシステム2に供給される冷却水の温度が所定温度以上となることから、流路74を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第1流量)を100%とし、流路78を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第2流量)を0%とする。第2流量を0%とすることにより、空気冷却器5による冷却水の加熱が行われないようにする。
【0045】
以上の図2にて説明したように、制御部9は、主機であるディーゼルエンジン3の負荷が所定負荷より低くなってORCシステム2に供給される冷却水の温度が所定温度以上とならない場合、三方弁8を調整して冷却水の温度を上昇させる。これにより、ディーゼルエンジン3の負荷が低く、ディーゼルエンジン3から排出される冷却水の温度が低くなる場合であっても、ORCシステム2に供給される冷却水の温度を所定温度以上に維持することができる。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置1(排熱回収発電装置)によれば、流路74(第1流路)に導かれる冷却水は空気冷却器5によって加熱されることなく蒸発器21(熱交換器)に導かれ、流路78(第2流路)に導かれる冷却水は空気冷却器5によって加熱されてから蒸発器21に導かれる。流路74に導かれる冷却水の流量(第1流量)を減少させ、流路78に導かれる冷却水の流量(第2流量)を増加することにより蒸発器21に導かれる冷却水の温度が上昇する。したがって、ディーゼルエンジン3(内燃機関)から排出される冷却水の温度が低下する場合であっても、流路74に導かれる冷却水の流量と流路78に導かれる冷却水の流量とを三方弁8(第1流量調整弁)により適切に調整することにより、蒸発器21に導かれる冷却水の温度が適切な温度に調整される。
このようにすることで、ディーゼルエンジン3から排出される冷却水の温度が低下する場合であっても冷却水を加熱してORCシステム2(発電システム)が回収する熱量(発電量)を維持することが可能な排熱回収型船舶推進装置1を提供することができる。
【0047】
本実施形態の排熱回収型船舶推進装置1は、三方弁8の下流側に設けられ、三方弁8から蒸発器21に導かれる冷却水の温度を検出する温度センサ86(温度検出部)を備え、三方弁8は、温度センサ86が検出する冷却水の温度が所定温度以上となるように流路74に導かれる冷却水の流量と流路78に導かれる冷却水の流量とを調整する。
このようにすることで、三方弁8は、三方弁8の下流側からORCシステム2の蒸発器21に導かれる冷却水の温度が所定温度以上となるように調整し、ORCシステム2が回収する熱量(発電量)を維持することができる。
【0048】
本実施形態の排熱回収型船舶推進装置1は、ORCシステム2が、蒸発器21により蒸発した有機流体(作動流体)により駆動されるパワータービン22と、パワータービン22の回転に応じて電力を発生する発電機27とを有する。
このようにすることで、ディーゼルエンジン3から排出される冷却水の排熱を有機流体に伝達して蒸発させ、蒸発した有機流体によって発電を行うことができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置200について、図面を参照して説明する。
第2実施形態は第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとする。以下では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0050】
第1実施形態の排熱回収型船舶推進装置200は、コンポジットボイラ101が発生させる蒸気をヒータ103のみで用いるものであった。それに対して、第2実施形態の排熱回収型船舶推進装置200は、コンポジットボイラ101により発生する蒸気をヒータ103と、ヒータ203(補助熱交換器)の双方で用いるものである。ヒータ203に供給される蒸気は、冷却水流路7の流路78を流通する冷却水を加熱する熱源として用いられる。
【0051】
以下、冷却水流路7の流路78を流通する冷却水を加熱する機構について説明する。
図5に示すように、コンポジットボイラ101内の蒸気は、ヒータ103およびヒータ203の双方に供給可能となっている。制御部9は、制御弁202の開度を調整することにより、ヒータ103およびヒータ203のそれぞれに供給される蒸気量を調整する。
【0052】
ヒータ203は、その内部に制御弁202から供給される蒸気が流通するものであり、蒸気と流路78を流通する冷却水との間で熱交換を行うことにより、冷却水を加熱する。ヒータ203を通過して冷却水を加熱する熱源として用いられた蒸気は、大気圧ドレンタンク104に回収される。
このように、制御部9は、コンポジットボイラ101内の蒸気をヒータ203に供給するとともに、供給される蒸気量を制御弁202により調整することにより、冷却水流路7の流路78を流通する冷却水を適温まで加熱する。
【0053】
次に、図6を参照して、制御部9が三方弁8,制御弁202を調整することにより行われる冷却水の温度調整動作について説明する。図6に示す各工程は、制御部9が記憶部(不図示)から制御プラグラムを読み出して実行することにより行われる。
図6の説明にあたっては、図7および図8を参照する。図7は、主機負荷に対する主機排ガス温度(ディーゼルエンジン3から排出される燃焼ガスの温度)を示す。図8は、主機負荷に対するコンポジットボイラ101における蒸気発生量を示すグラフである。
【0054】
ステップS601で、制御部9は、主機(ディーゼルエンジン3)の負荷が所定負荷より低いかを判定し、所定負荷より低い場合にはステップS602に処理を進め、そうでなければステップS606に処理を進める。
ここで、所定負荷より低い場合とは、例えば、主機負荷が60%となる場合をいう。第1実施形態で図4を参照して説明したように、ORCシステム2の熱源として利用可能な熱量は、主機負荷が60%の場合、Q1kW(約800kW)となる。
【0055】
ORCシステム2の熱源として利用可能な熱量が800kWを下回る場合、ORCシステム2に供給される冷水の温度が85℃を下回り、ORCシステム2が所望の発電電力(約100kW)を発生させることができなくなる。そこで、主機の負荷が所定負荷より低い場合、制御部9は、以下に説明するように三方弁8,制御弁202を調整して、ORCシステム2に供給される冷却水の温度を上昇させる。
【0056】
第1実施形態の図3および図4に示すように、主機負荷が60%以下となる場合であっても、掃気空気の温度および熱量は十分であるので(例えば、主機負荷50%では、約130℃で約1200kW)、掃気空気を熱源とすることにより、冷却水の温度を上昇させることができる。また、本実施形態の図7および図8に示すように、約60%から約35%に至るまで主機負荷が低くなるにつれて、主機であるディーゼルエンジン3から排出される排出ガスの温度は上昇する。
【0057】
これは、燃焼効率を考慮して予め設定した負荷よりも低くなって燃焼効率が悪化し、その結果として多くの熱量を持った排出ガスが排出されるからである。そして、排出ガスの熱量の増加に伴って、図8に示すように、約60%から約35%に至るまで主機負荷が低くなるにつれて、コンポジットボイラ101が発生する蒸気発生量が増加する。以下に説明するように制御弁202を調整して、コンポジットボイラ101が発生する蒸気を冷却水の熱源として用い、ORCシステム2に供給される冷却水の温度を上昇させる。
【0058】
ステップS602で、制御部9は、温度センサ86の検出値を参照し、流路75を流通する冷却水の温度が所定温度(例えば、85℃)より低いかどうかを判定する。冷却水の温度が所定温度より低いと判定される場合は、冷水の温度を上昇させる必要があるので、ステップS603に処理を進める。冷却水の温度が所定温度より低いと判定されない場合、冷却水の温度が十分な温度となっていることから、ステップS606に処理を進める。
【0059】
ステップS603で、制御部9は、流路78を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第2流量)が、流路73を流通する冷却水に対する流量の比率が100%未満であるかを判定し、100%未満であればステップS604によりを進め、そうでなければステップS605に処理を進める。
ステップS603で制御部がNOと判定する場合とは、流路73を流通する冷却水の全量が空気冷却器5を経由して流路78を流通する場合をいう。この場合、流路78を流通する冷却水の流量をこれ以上増加させることができない。
【0060】
ステップS604で、制御部9は、三方弁8を調整することにより、流路74を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第1流量)を減少させ、流路78を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第2流量)を増加させる。流量の調整量は、予め固定された流量を調整してもよいし、温度センサ86の検出値と所定温度(例えば、85℃)との差分に基づいて流量を調整してもよい。
制御部9は、ステップS604の後に再びステップS601に処理を進めるので、冷却水の温度が所定温度以上となるまで、ステップS601からステップS604の処理が繰り返される。
【0061】
ステップS605で、制御部9は、空気冷却器5を熱源として冷却水を更に加熱することができないことから、蒸発ドラム101aからヒータ203に供給される蒸気の流量(第3流量)を増加させるように、制御弁202を調整する。蒸気の流量の調整量は、予め固定された流量を調整してもよいし、温度センサ86の検出値と所定温度(例えば、85℃)との差分に基づいて流量を調整してもよい。
制御部9は、ステップS605の後に再びステップS601に処理を進めるので、冷却水の温度が所定温度以上となるまで、ステップS601からステップS603およびステップS605の処理が繰り返される。
【0062】
冷却水の温度が所定温度以上となり、さらにステップS601で主機の負荷が所定負荷以上となったことが判定された場合、制御部9は、ステップS606に処理を進める。
ステップS604で、制御部9は、主機であるディーゼルエンジン3の負荷が所定負荷以上となり、ORCシステム2に供給される冷却水の温度が所定温度以上となることから、流路74を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第1流量)を100%とし、流路78を介して蒸発器21に導かれる冷却水の流量(第2流量)を0%とする。第2流量を0%とすることにより、空気冷却器5による冷却水の加熱が行われないようにする。また、制御部9は、蒸発ドラム101aからヒータ203に供給される蒸気の流量(第3流量)を0%とすることにより、ヒータ203による冷却水の加熱が行われないようにする。
【0063】
以上の図6にて説明したように、制御部9は、主機であるディーゼルエンジン3の負荷が所定負荷より低くなってORCシステム2に供給される冷却水の温度が所定温度以上とならない場合、三方弁3を調整して冷却水の温度を上昇させる。更に、三方弁3を調整しても冷却水の温度を上昇させることができなくなる場合、制御弁107および制御弁202を調整して冷却水の温度を上昇させる。これにより、ディーゼルエンジン3の負荷が低く、ディーゼルエンジン3から排出される冷却水の温度が低くなる場合であっても、ORCシステム2に供給される冷却水の温度を所定温度以上に維持することができる。
【0064】
以上説明した本実施形態に係る排熱回収型船舶推進装置が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態の排熱回収型船舶推進装置200は、第1実施形態の排熱回収型船舶推進装置1に対して、ターボチャージャ4から排出される排出ガスを熱源として蒸気を発生させるコンポジットボイラ101と、コンポジットボイラ101が発生させる蒸気と蒸発器21に導かれる冷却水との熱交換を行うヒータ203(補助熱交換器)とを備える。
このようにすることで、ディーゼルエンジン3(内燃機関)から排出される冷却水の温度が低く、空気冷却器5による加熱では冷却水の温度を十分に維持できない場合であっても、ヒータ203により冷却水の温度を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1,200 排熱回収型船舶推進装置(排熱回収装置)
2 ORCシステム(発電システム)
3 ディーゼルエンジン(内燃機関)
4 ターボチャージャ(過給機)
4a タービン
4b 圧縮機
5 空気冷却器
5a 第1空気冷却部
5b 第2空気冷却部
7 冷却水流路
8 三方弁(第1流量調整弁)
9 制御部
10 排熱回収システム
21 蒸発器(熱交換器)
22 パワータービン(タービン)
27 発電機
74 流路(第1流路)
78 流路(第2流路)
86 温度センサ(温度検出部)
101 コンポジットボイラ
202 制御弁
D 分岐点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8