特許第5951615号(P5951615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951615TLRアゴニストの治療用途および組み合わせ治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951615
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】TLRアゴニストの治療用途および組み合わせ治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/55 20060101AFI20160630BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   A61K31/55
   A61P35/00
   A61K31/704
   A61K47/40
   A61K9/08
【請求項の数】33
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2013-531959(P2013-531959)
(86)(22)【出願日】2011年10月3日
(65)【公表番号】特表2013-538860(P2013-538860A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】US2011054654
(87)【国際公開番号】WO2012045090
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】61/390,447
(32)【優先日】2010年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/388,967
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/388,953
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511027770
【氏名又は名称】ベンティアールエックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VentiRx Pharmaceuticals,Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ハーシュバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・クウコス
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ディーチ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ファッチャベーネ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティ・マンジャーレス
(72)【発明者】
【氏名】トレッサ・ディ・ランドール
【審査官】 砂原 一公
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−504763(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/014913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストおよび医薬的に許容される担体を含む製剤を含む、患者における癌を治療するための組み合わせ治療における使用のための医薬組成物であって、前記組み合わせ治療が、ドキソルビシンを投与することを含むものであり、前記TLR8アゴニストが、2−アミノ−N,N−ジプロピル−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキサミドまたはその医薬的に許容される塩である、医薬組成物。
【請求項2】
前記癌が、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、腎臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、リンパ腫およびこれらの組み合わせからなる群から選択される固形癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記癌が、卵巣癌である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記TLR8アゴニスト製剤およびドキソルビシンが、同時に、または連続して投与されるものである、請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記TLR8アゴニスト製剤およびドキソルビシンが、連続して投与されるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記TLR8アゴニスト製剤およびドキソルビシンが、別々に5日間隔で投与されるものである、請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記癌が、卵巣癌であり、ドキソルビシンが、ペグ化リポソーム形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ドキソルビシンが、静脈内に投与されるものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記患者が、哺乳類である、請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記TLR8アゴニスト製剤が、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路または経皮経路によって注入されるものである、請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記TLR8アゴニスト製剤が、皮下に投与されるものである、請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記TLR8アゴニスト製剤が、患者の体重の約0.02〜約10mg/kgまたは約0.04〜約5mg/kgの前記TLR8アゴニストの濃度を供するように投与されるものである、請求項1〜1のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記TLR8アゴニスト製剤が、患者の体重の約0.02mg/kg、約0.05mg/kg、約0.075mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kgまたは約5mg/kgの前記TLR8アゴニストの濃度を供するように投与されるものである、請求項1〜1のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記TLR8アゴニスト製剤が、患者の体表面積の約2.5〜3.5mg/m前記TLR8アゴニストの濃度を供するように投与されるものである、請求項1〜1のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記TLR8アゴニスト製剤が、1週間に1回または2週間に1回の頻度で患者に投与されるものである、請求項1〜1のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
ドキソルビシンが、患者の体重の約0.02〜10mg/kgまたは約0.04〜5mg/kgの用量で投与されるものである、請求項3〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記TLR8アゴニスト製剤が、約1重量/体積%〜約30重量/体積%、約5重量/体積%〜15重量/体積%または約5重量/体積%〜約10重量/体積%のシクロデキストリンをさらに含むものである、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記TLR8アゴニスト製剤が、約1重量/体積%、約5重量/体積%、約10重量/体積%、約15重量/体積%、約20重量/体積%、約25重量/体積%または約30重量/体積%のシクロデキストリンをさらに含むものである、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記TLR8アゴニスト製剤が、約15w/v%のシクロデキストリンをさらに含むものである、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記シクロデキストリンが、ベータ−シクロデキストリンである、請求項17〜19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記シクロデキストリンが、スルホブチルエーテル ベータ−シクロデキストリンである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ドキソルビシンが、ペグ化されたリポソーム形態である、請求項1〜21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記TLR8アゴニスト製剤が、TLR8アゴニスト約0.01〜50mg/ml有するものである、請求項1〜22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記TLR8アゴニスト製剤が、前記TLR8アゴニスト約0.5mg/ml〜約50mg/ml、約1mg/ml〜約40mg/mlまたは約2mg/ml〜約15mg/ml有するものである、請求項1〜22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記TLR8アゴニスト製剤が、TLR8アゴニスト約0.5mg/ml〜約10mg/ml、約0.5mg/ml〜約8mg/ml、約0.5mg/ml〜約15mg/ml、約0.5mg/ml〜約4mg/mlまたは約0.5mg/ml〜約2mg/ml有するものである、請求項1〜22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記TLR8アゴニスト製剤が、TLR8アゴニスト約0.01mg/ml、約0.5mg/ml、約1mg/ml、約2mg/ml、約4mg/ml、約15mg/ml、約8mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約40mg/mlまたは約50mg/ml有するものである、請求項1〜22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項27】
ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストの製剤を液体または凍結乾燥された形態で充填た1つまたはそれ以上の第1の容器、およびドキソルビシンを充填た1つまたはそれ以上の第2の容器を含む医薬パックまたはキットであって、前記TLR8アゴニストが、2−アミノ−N,N−ジプロピル−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキサミドまたはその医薬的に許容される塩である、医薬パックまたはキット
【請求項28】
前記TLR8アゴニスト製剤が、水溶液製剤である、請求項27に記載の医薬パックまたはキット。
【請求項29】
前記TLR8アゴニスト製剤が、TLR8アゴニストを約0.01〜50mg/ml含有するものである、請求項27または28に記載の医薬パックまたはキット。
【請求項30】
ドキソルビシンが、医薬的に許容される塩形態である、請求項27〜29のいずれかに記載の医薬パックまたはキット。
【請求項31】
ドキソルビシンが、ペグ化されたリポソーム形態である、請求項27〜30のいずれかに記載の医薬パックまたはキット。
【請求項32】
前記癌が、卵巣癌であり、ドキソルビシンが、ペグ化されたリポソーム形態である、請求項1〜26のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記癌が、頭頸部癌であり、ドキソルビシンが、ペグ化されたリポソーム形態である、請求項1、2、4〜6、および9〜26のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、出典明示によりそれらの全体が本明細書に取り込まれる、2010年10月1日に提出した米国仮出願第61/388,953号、2010年10月1日に提出した米国仮出願第61/388,967号、および2010年10月6日に提出した米国仮出願第61/390,447号の優先権および利益を請求するものである。
【0002】
本発明の技術分野
本発明は、癌の治療における使用のためのTLRアゴニスト(好ましくは、TLR8アゴニスト)の製剤、およびTLR8アゴニストおよび抗癌剤を投与することを特徴とする組み合わせ治療に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景技術
免疫系の活性化は、自然免疫および獲得免疫のいずれか、または両方の活性化を含み、宿主に対して保護または有害な生理的な結果を生じうる複雑な現象である。近年、獲得免疫を開始し、サポートすると考えられている自然免疫の根底にあるメカニズムに興味が注がれている。この興味は、一部に、病原体由来の構成分子のパターン(PAMP)に対する受容体として獲得免疫に関連すると考えられているToll様受容体(TLR)として知られる高度に保存されたパターン認識受容体タンパク質のファミリーの最近の知見によって助長されている。よって、獲得免疫を調節するのに有用である組成物および方法は、癌、感染症、自己免疫、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主疾患(GvHD)および免疫不全に関する疾患に対する治療上のアプローチに影響しうるため、非常に興味深い。
【0004】
Toll様受容体(TLR)は、インビボでの活性が、特定のサイトカイン、ケモカインおよび成長因子に関する先天性免疫反応を開始するものである、I型膜貫通型タンパク質の1つのファミリーである。全てのTLRが特定の細胞内シグナル伝達分子(例えば、核因子カッパベータ(NF−κB)および分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ))を活性化できる一方で、放出されるサイトカインおよびケモカインの特定のセットは、各TLRに独特であるようである。TLR7、8および9には、樹状細胞および単球などの免疫細胞のエンドソームまたはリソソーム構成物中に局在するTLRのサブファミリーが含まれる。形質細胞様樹状細胞(pDC)上で多く発現しているTLR7および9とは対照的に、TLR8は、骨髄性DC(mDC)および単球上で主に発現する。このサブファミリーは、一本鎖RNAなどの微生物核酸の認識を介在している。TLR8のアゴニストは、様々な炎症性サイトカイン(インターロイキン−6、インターロイキン−12、腫瘍壊死因子−アルファおよびインターフェロンガンマを含む)の産生を活性化する。このようなアゴニストはまた、共刺激分子、例えば、CD40、CD80、CD83およびCD86、主要組織適合複合分子およびケモカイン受容体などの発現の増加を促進する。I型インターフェロン、IFNαおよびIFNβはまた、TLR8アゴニストによる活性化によって細胞から産生される。
【0005】
小さな低分子量(400ダルトン以下)の合成イミダゾキノリン化合物は、プリンヌクレオチドであるアデノシンおよびグアノシンに類似しており、最初にTLR7およびTLR8アゴニストとして同定されている。これらの化合物の多くは、抗ウイルスおよび抗癌特性を示した。例えば、TLR7アゴニストであるイミキモド(ALDARA(登録商標))は、ヒトパピローマウイルスの特定株によって引き起こされる皮膚病変の治療のための局所薬として米国食品医薬品局に認可された。イミキモドはまた、原発性皮膚癌および皮膚腫瘍、例えば、基底細胞癌、角化棘細胞腫、光線角化症およびボーエン病の治療に有用でありうる。TLR7/8アゴニストのレシキモド(R−848)は、ヒト陰部ヘルペスの治療のための局所薬として評価されている。
【0006】
ドキソルビシンは、癌化学療法で用いられる薬である。これは、天然物のダウノマイシンに密接に関連するアントラサイクリン抗生物質であり、全てのアントラサイクリンと同様に、DNAに挿入されることによって機能する。ドキソルビシンは、一般に、広範囲の癌(血液悪性腫瘍、多くのタイプの癌および柔組織肉腫を含む)の治療で用いられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一般に、例えば、癌、好ましくは、固形腫瘍(例えば、肉腫、癌およびリンパ腫)の治療、軽減または予防における使用のための、ならびに白血病の治療、特定の皮膚病または疾患(例えば、アトピー性皮膚炎)の治療、感染症(好ましくは、ウイルス性疾患)の治療を含む他の使用のための、ならびに癌治療および感染症治療における使用のために製剤化されるワクチンにおけるアジュバントとしての使用のための、ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストの投与および1つまたはそれ以上のさらなる治療法(抗癌剤(例えば、ドキソルビシン))を含む組み合わせ治療に関する。具体的に、本発明は、ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニスト、VTX−2337およびドキソルビシンを含む方法および組成物に関する。好ましい実施態様において、VTX−2337およびドキソルビシンは、癌の治療に用いられ、前記癌は、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、腎臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、メラノーマおよびリンパ腫またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである。
【0008】
好ましくは、VTX−2337は、約0.001mg/ml〜約50mg/ml、約0.01mg/ml〜約50mg/ml、約0.5mg/ml〜約50mg/ml、約1mg/ml〜約40mg/mlまたは約2mg/ml〜約15mg/mlの濃度で製剤化される。ある実施態様において、VTX−2337は、約0.5mg/ml〜約10mg/ml、約0.5mg/ml〜約8mg/ml、約0.5mg/ml〜約6mg/ml、約0.5mg/ml〜約4mg/mlまたは約0.5mg/ml〜約2mg/mlの濃度で製剤化される。ある実施態様において、VTX−2337は、約0.5mg/ml、約1mg/ml、約2mg/ml、約4mg/ml、約6mg/ml、約8mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約40mg/mlまたは約50mg/mlの濃度で製剤化される。好ましくは、前記製剤には、約1〜30重量/体積(w/v)%、5〜15重量/体積(w/v)%または5〜10重量/体積(w/v)%のシクロデキストリン、好ましくは、β−シクロデキストリン、最も好ましくは、スルホブチルエーテル β−シクロデキストリンが含まれる。ある実施態様において、前記製剤には、1w/v%、5w/v%、10w/v%、15w/v%、20w/v%、25w/v%または30w/v%のシクロデキストリン、好ましくは、β−シクロデキストリン、最も好ましくは、スルホブチルエーテル β−シクロデキストリンが含まれる。ある実施態様において、前記製剤は、VTX−2337を少なくとも2mg/mlの濃度で含む水性溶剤である。さらなる実施態様において、前記製剤には、15w/v%のシクロデキストリン、好ましくは、β−シクロデキストリン、最も好ましくは、スルホブチルエーテル β−シクロデキストリンが含まれる。好ましい実施態様において、前記製剤は、哺乳類(好ましくは、ヒト)における注射に適する。ある実施態様において、注射は、皮下経路、筋肉内経路または経皮経路によるものである。ある実施態様において、前記製剤は、静脈内投与に適する。
【0009】
好ましくは、再構成された製剤は、哺乳類(好ましくは、ヒト)における注射に適する。ある実施態様において、注射は、皮下経路、筋肉内経路または経皮経路によるものである。ある実施態様において、前記製剤は、静脈内投与に適する。
【0010】
本発明は、患者(好ましくは、ヒト患者)に、ドキソルビシンおよびTLR8アゴニストであるVTX−2337(シクロデキストリンを含有)を投与することによる癌の治療方法をさらに提供する。好ましい態様において、VTX−2337は、1つまたはそれ以上の治療法と組み合わせて投与されるものであって、前記方法は、化学療法剤、サイトカイン、抗体、ホルモン療法または放射線治療から選択される。ある実施態様において、VTX−2337は、固形腫瘍の治療計画の一部として投与される。さらなる実施態様において、前記固形腫瘍は、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、腎臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌またはリンパ腫、あるいはこれらの組み合わせから選択される癌の形態である。ある実施態様において、VTX−2337は、リンパ腫の治療計画の一部として投与される。ある実施態様において、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫である。別の態様において、前記リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である。別の態様において、VTX−2337は、癌の治療のためのワクチンアジュバントとして用いられる。
【0011】
癌の治療方法のある実施態様において、VTX−2337は、注射または静脈内によって投与される。ある実施態様において、注射は、皮下経路、筋肉内経路または経皮経路によるものである。ある実施態様において、前記製剤は、皮下注射によって投与される。癌の治療方法のある実施態様において、VTX−2337は、患者の体重の約0.02〜10mg/kg(例えば、約0.05〜0.075mg/kgまたは約0.04〜5mg/kg)の用量で患者に投与される。ある実施態様において、VTX−2337は、約0.02mg/kg、約0.05mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kgまたは約5mg/kgの用量で投与される。例えば、患者が約70kgの体重である場合、VTX−2337は、約1.4mg〜700mg(例えば、3.5mg〜5.25mgまたは約2.8〜350mg)の用量で投与される。あるさらなる実施態様において、VTX−2337は、1週間に1回または2週間に1回の頻度で投与される。
【0012】
本発明はまた、癌またはその1つまたはそれ以上の症状の治療のための本発明の液体または凍結乾燥させたVTX−2337および抗癌剤(例えば、ドキソルビシン)を充填した1つまたはそれ以上の容器を含む、医薬パックまたはキットを提供する。前記液体または凍結乾燥させたVTX−2337および抗癌剤(例えば、ドキソルビシン)は、キットの同一または異なる容器に詰めることができる。好ましくは、VTX−2337の製剤には、約1〜30w/v%、5〜15w/v%または5〜10w/v%のシクロデキストリン、好ましくは、β−シクロデキストリン、最も好ましくは、スルホブチルエーテル β−シクロデキストリンが含まれる。ある実施態様において、製剤VTX−2337には、2w/v%、5w/v%、10w/v%、15w/v%、20w/v%、25w/v%または30w/v%のシクロデキストリン、好ましくは、β−シクロデキストリン、最も好ましくは、スルホブチルエーテル β−シクロデキストリンが含まれる。ある実施態様において、前記製剤は、VTX−2337の水性製剤である。好ましくは、VTX−2337は、少なくとも2mg/mlの濃度で製剤化され、前記製剤は、水性か再構成される凍結乾燥製剤のいずれかであり、哺乳類(好ましくは、ヒト)における皮下注射に適する。
【0013】
ある実施態様において、VTX−2337は、少なくとも2mg/mlの濃度で製剤化される。さらに、前記製剤は、注射であって、皮下、筋肉内または経皮注射による患者への投与に適するものであり、前記患者は、好ましくはヒトである。ある実施態様において、VTX−2337は、約0.02〜10mg/kgの用量、約0.04〜5mg/kgの用量または約0.05〜0.075mg/kgの用量で患者に投与される。あるさらなる実施態様において、VTX−2337は、1週間に1回または2週間に1回の頻度で投与される。
【0014】
好ましい態様において、VTX−2337は、1つまたはそれ以上のさらなる治療法と組み合わせて投与され、前記治療法は、化学療法剤、サイトカイン、抗体、ホルモン療法または放射線治療から選択されるものである。本発明はまた、ウイルスによって引き起こされる感染症の治療方法を提供するものであり、前記ウイルスは肝炎ウイルスである。
【0015】
好ましい態様において、ドキソルビシンは、注射(最も好ましくは、静脈内投与)用に製剤化される。ある実施態様において、本発明のVTX−2337は、皮内、経皮、皮下または筋肉内経路による投与用に製剤化される。
【0016】
癌の治療方法のある実施態様において、ドキソルビシンは、患者の体重の約0.02〜10mg/kgまたは約0.04〜5mg/kgの用量で患者に投与される。
【0017】
本発明はまた、ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストの低用量製剤による癌の治療方法を提供する。前記方法は、それを必要とする患者に、ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストを0.007mg/kg/週以下、例えば、0.002mg/kg/週〜0.006mg/kg/週の用量で投与することを特徴とする。ある実施態様において、前記ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストは、2−アミノ−N,N−ジプロピル−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキサミドである。前記方法は、ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストのみを活性成分として投与することを特徴としてもよく、あるいは第2の治療剤(例えば、抗癌剤)をベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストの低用量製剤と組み合わせて投与することをさらに特徴としていてもよい。第2の治療剤は、別のベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストまたは本明細書に記載の薬分子(例えば、ドキソルビシン、ゲムシタビンまたはシクロホスファミド)でありうる。前記方法はまた、癌の治療計画において、1つまたはそれ以上のさらなる治療法(例えば、放射線治療)と組み合わせて実施されうる。
【0018】
別の態様において、本発明はまた、患者における癌の治療のためのベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストを含む皮下製剤を提供するものであって、前記皮下製剤は、2〜4mg/mのアゴニストの用量でヒトに投与することによって、約55〜約90hng/mL、例えば、約60〜約80hng/mLのアゴニストのAUC0−infを提供する。
【0019】
さらに別の態様において、本発明はまた、患者における癌の治療のためのベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニストを含む皮下製剤を提供するものであって、前記皮下製剤は、2〜4mg/mのアゴニストの用量でヒトに投与することによって、約10〜約30ng/mL、例えば、約15〜約25ng/mLのアゴニストのCmaxを提供する。
【0020】
本発明はまた、ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニスト(例えば、VTX−2337)および抗癌剤(例えば、ドキソルビシン)の液体または凍結乾燥製剤を含む医薬組成物を提供する。前記アゴニストおよび抗癌剤の製剤は、同一の医薬組成物中であってもよく、あるいは異なる組成物中であってもよく、異なる組成物中の場合、前記アゴニストおよび抗癌剤の製剤は、同時に、または連続して投与することができる。
【0021】
上記記載は、以下の詳細な説明が理解され、当該技術分野への貢献がより理解されうるために、本発明のより重要な特徴を広く説明するものである。本発明の他の目的および特徴は、実施例と合わせて考慮すると下記の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A図1Aは、NSG−HISマウスに由来する血液リンパ系細胞について取得したFACS図の一組である。NSGマウスに、臍帯血で生じるヒト造血性CD34幹細胞を受容させた。ヒト細胞生着のレベル(CD45、CD45CD14、CD45CD33)を示す。マウスは、0.5または5mg/kgのVTX−2337で処理した。CD14細胞(CD83、CD86)の成熟を示す。
【0023】
図1B図1Bは、VTX−2337のNSG−HISマウスへのSC投与6時間後の単球(CD45CD14)、mDC(CD45CD11c)およびpDC(CD45CD123)における活性化マーカー(CD86、MHCクラスII)レベルの変化を示す棒グラフの一組である。
【0024】
図1C図1Cは、VTX−2337のNSG−HISへのSC投与6時間後の血漿サイトカインレベル(INF−g、TNF−アルファ、IL−12およびIL−10)の変化を示す棒グラフの一組である。
【0025】
図2図2は、治療なし(CTRL)、最大耐容用量のドキシル(MTD,50mg/m)またはドキシルによる治療5日後に5mg/kgのVTX−2337を受容したマウスにおける血漿サイトカインレベル(IFN−g、IL−10、TNF−アルファ)の変化を示す棒グラフの一組である。
【0026】
図3A図3Aは、ヒト卵巣癌細胞株OVCAR5を用いて腫瘍を発生させたヒト化マウス(NSG−HIS)の卵巣癌モデルにおいてドキシル、VTX−2337またはそれらの組み合わせでNSG−HISマウスを治療するためのプロトコールを示す模式図である。
【0027】
図3B図3Bは、OVCAR5細胞の接種後にドキシルを50mg/mで、VTX−2337を0.5mg/kgで、またはそれらの組み合わせで処理したNSG−HISマウスの腫瘍サイズの時間に対する変化を示す線グラフである。
【0028】
図3C図3Cは、ヒト化卵巣癌モデルにおいてドキシルを50mg/mで、VTX−2337を0.5mg/kgで、またはそれらの組み合わせで処理したマウスに由来するCD45細胞に浸潤した腫瘍を示すIHC図の一組である。
【0029】
図3D図3Dは、ヒト化卵巣癌モデルにおいてドキシルを50mg/mで、VTX−2337を0.5mg/kgで、またはそれらの組み合わせで処理したマウスにおける、腫瘍が浸潤したCD3、CD8、CD69活性化CD3CD8T細胞およびCD40活性化マクロファージ(CD45CD11b)、pDC(CD45CD123)およびmDC(CD45CD11c)のレベルの変化を示す棒グラフの一組である。
【0030】
図4A図4Aは、標的OVCAR5細胞に対する様々な比率のエフェクターTILに応答して、ドキシルまたはVTX−2337およびドキシルの組み合わせで処理したマウスから増殖させたTILで溶解させた溶解性51Cr標識OVCAR5細胞のカウント毎分(cpm)の変化を示す線グラフである。
【0031】
図4B図4Bは、図3に記載の実験において、OVCAR5細胞を接種し、マウスに由来する適合移植したTILSで処理したNSG−HISマウスの腫瘍サイズの時間に対する変化を示す線グラフである。
【0032】
図4C図4Cは、抗MHCクラスI(MHCI)中和抗体の非存在または存在中において、ドキシルまたはVTX−2337およびドキシルの組み合わせで処理したマウスに由来するTILによって溶解した溶解性51Cr標識OVCAR5細胞の数の変化を示す線グラフの一組である。
【0033】
図4D図4Dは、OVCAR5細胞またはメラノーマ細胞とインキュベートしたTILによって遊離されたIFNgレベルの変化を示す棒グラフの一組である。
【0034】
図5A図5Aは、緩衝液のみ、CD3/CD28ビーズまたは1μg/mLのVTX−2337でインキュベートしたヒトPBMCに由来する条件培地で処理したOVCAR5細胞において、アネキシン−Vおよび7AADによって染色したアポトーシス細胞の割合の変化を示す棒グラフである。
【0035】
図5B図5Bは、緩衝液のみ、CD3/CD28ビーズまたは1μg/mL VTX−2337でインキュベートしたヒトPBMCに由来する条件培地で処理したOVCAR5細胞における生存細胞数の変化を示す棒グラフである。
【0036】
図5C図5Cは、OVCAR5細胞におけるTNFアルファ−受容体1の発現を示すウェスタンブロット写真を示す図である。
【0037】
図5D図5Dは、TNFアルファ(10ng/ml)またはドキシル(1μg/ml)あるいはそれらの組み合わせで処理したOVCAR5細胞のFACS図およびアネキシン−Vおよび7AADによって染色したアポトーシス細胞の割合の生じた変化を示すグラフの一組である。
【0038】
図5E図5Eは、0.5または2.5μg/mLのドキシルで処理したOVCAR5細胞におけるFLIP発現のウェスタンブロット写真を示す図である。
【0039】
図5F図5Fは、10μg/ml シクロヘキシミド(cyclx)で24時間前もって培養し、続いて10または50ng/mlのTNFアルファで処理したOVCAR5細胞のFACS図、ならびにアネキシン−Vおよび7AADによって染色したアポトーシス細胞の割合の生じた変化を示すグラフの一組を示す。
【0040】
図6図6は、15人の健全なドナーに由来する末梢血単核細胞(PBMC)およびTLR8またはTLR7およびNF−κBで駆動するレポーター遺伝子でトランスフェクトしたHEK293細胞におけるVTX−2337の効力および選択性を示すグラフの一組である。
【0041】
図7図7は、VTX−2337が、ヒト全血中の様々なサイトカインおよびケモカインを活性化することを示すグラフの一組である。
【0042】
図8図8は、VTX−2337が、単球および骨髄性樹状細胞(mDC)を活性化するが、形質細胞様樹状細胞(pDC)を活性化しないことを示すグラフの一組である。
【0043】
図9図9は、皮下投与後のVTX−2337の薬物動態を示すグラフである。この図中の数値表記「1〜8」は、それぞれ、コホート1〜8に相当する。
【0044】
図10図10Aおよび10Bは、複数の治療周期について一貫した薬力学反応を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
本発明の1つまたはそれ以上の実施態様の詳細は、下記に記載の明細書で説明される。本明細書に記載の方法および材料と同様または同等のものが本発明の実施または試験で用いることができるが、好ましい方法および材料が記載される。本発明の他の特徴、目的および有利な点は、これらの記載から明らかである。本明細書において、単数形には、特に示されていない限り、複数形も含まれるものである。他で定義されていない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。矛盾する場合、本明細書が優先される。
【0046】
本発明は、ベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニスト(例えば、VTX−2337)および別の治療法(例えば、抗癌剤、例えば、ドキソルビシン)を使用して、本明細書に記載の癌または他の障害を治療し、軽減し、または予防する組成物および方法を提供する。VTX−2337は、新規の強力かつ選択的な低分子TLR8アゴニストである。VTX−2337の製剤は、PCT国際公開第WO10/014913に記載される。本発明の製剤は、本明細書に記載されるヒト癌の治療方法における使用に適する。
【0047】
特に断りがなければ、本明細書で用いられる用語は、特定の実施態様を説明するためのものであって、限定することが意図されるものではないことが理解されるべきである。本明細書および下記の特許請求の範囲において、下記に説明される定義を有するものとして、多くの用語が参照される。
【0048】
本発明の文脈において「患者」は、好ましくは、哺乳類である。前記哺乳類として、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシを挙げることができるが、これらの例に限定されるものではない。患者は、雄または雌でありうる。患者は、癌にかかっていると以前に診断されているか、または同定されているものであり得、適宜、ドキシル治療または放射線治療などの癌に対する治療介入をすでに受けていたか、または受けていてもよい。あるいは、患者はまた、癌にかかっていると以前に診断されていないが、かかる疾患を発症するリスクを有するものであってもよい。例えば、患者は、1種類またはそれ以上の癌の症状を示すものでありうる。
【0049】
用語「疾患」、「障害」および「病気」は、本明細書で相互に交換可能に用いられ、正常な体の機能の阻害またはいずれかのタイプの病変の出現を意味する。正常な生理機能の阻害を引き起こす病原因子は、公知であってもよく、または公知でなくてもよい。さらに、2人の患者が同一の疾患と診断されうるが、その特定の病状は、それぞれによって呈される特定の症状は、同一であってもよく、同一でなくてもよい。
【0050】
本明細書で用いられる用語「治療する」および「治療」は、症状の重症度および/または頻度の減少、症状および/または根本原因の排除、症状および/またはそれらの根本原因の発生の予防、ならびに損傷の改良または改善を意味する。例えば、本発明の抗癌剤の投与による患者の治療には、癌を発症しやすい(例えば、遺伝学的素因、環境因子などの結果として高いリスクを有する)患者および/または癌再発のリスクを有する癌を克服したヒトにおける化学予防、ならびに障害または疾患を抑制し、または障害または疾患の退縮を引き起こすことによる癌患者の治療が包含される。
【0051】
本明細書で用いられる用語「軽減する」または「改善する」は、疾患障害または病気の少なくとも1つの症状を軽減することを意味する。
【0052】
本明細書で用いられる用語「予防する」には、リスクを有する個体において、臨床的に明らかな疾患の進行を全体的に予防し、またはその発症を遅延させるか、あるいは疾患の前臨床的な明らかな段階を予防し、またはその発症を遅延させることが含まれる。これらには、疾患を進行するリスクを有する患者の予防的治療が含まれる。
【0053】
本発明の化合物を示す場合、出願人は、用語「化合物」には、特定の分子物質だけではなく、その医薬的に許容される薬理学的に活性な類似体(例えば、以下に限定されないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、抱合体、活性な代謝物および他のかかる誘導体、類似体および関連化合物が挙げられる)が含まれることを意図するものとする。
【0054】
本化合物の用語「有効量」および「治療上の有効量」は、所望する効果を供するために薬物または薬剤の毒性はないが十分な量を意味する。
【0055】
「医薬的に許容される」は、生物学的ではなく、または望ましくないものではない物質を意味し、すなわち、前記物質は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、または含有される組成物の他の構成成分のいずれとも有害な方法で相互作用することなく、患者に投与される医薬組成物に取り入れられる。用語「医薬的に許容される」が医薬担体または賦形剤を意味するように用いられる場合、この担体または賦形剤が毒物学的製造試験で必要とされる基準に適合し、あるいは米国食品医薬品局によって作成された不活性成分基準(Inactive Ingredient Guide)に含まれることを意味する。「薬理学的に活性な」(または単に「活性な」)は、「薬理学的に活性な」誘導体または類似体などのように、親化合物として同一タイプの薬理学的活性およびほぼ同程度の同等物を有する誘導体または類似体を意味する。
【0056】
「必要とする」は、「必要とする投与」または「それを必要とする」などのように、症状が観察される場合、または症状の出現が予想される場合、患者および/または医師が望ましくない症状(例えば、癌から生じる症状)を(治療的にまたは予防的に)治療することが適当とされる場合、製剤が患者に投与されることを意味する。
【0057】
本発明のTLRアゴニスト
製剤
VTX−2337製剤には、下記の構造
【化1】
を有する活性な化合物が含まれる。本発明の製剤は、患者、特に、ヒト患者への皮下投与に適するが、他の方法による投与に用いることができる。
【0058】
本発明のVTX−2337製剤には、1つまたはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤が含まれる。本明細書で用いられる用語「賦形剤」は、前記製剤の活性な薬剤と組み合わせて使用される生物学的に不活性な物質を広く意味する。賦形剤は、例えば、可溶化剤、安定化剤、希釈剤、不活担体、保存剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、香料または着色剤として用いることができる。好ましくは、少なくとも1つの賦形剤は、製剤に1つまたはそれ以上の有益な物理特性(例えば、活性薬剤の安定性および/または溶解性の増加)を供するように選択される。本明細書に記載されるVTX−2337は、本発明の製剤中の主要な活性薬剤である。しかしながら、VTX−2337は、他の活性薬剤(例えば、本明細書に記載される他のTLRアゴニスト、抗癌剤または抗ウイルス薬)と共に製剤化されていてもよい。
【0059】
「医薬的に許容される」賦形剤は、動物における使用、好ましくは、ヒトにおける使用のための州または連邦取締機関によって認可され、あるいは動物における使用、好ましくは、ヒトにおける使用のために米国薬局方、欧州薬局方または他の一般的に認められている薬局方に記載されるものである。
【0060】
賦形剤の例としては、一定の不活性タンパク質(例えば、アルブミン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、アスパラギン酸(または、アスパラテートとも呼ばれうる)、グルタミン酸(または、グルタメートとも呼ばれる)、リジン、アルギニン、グリシンおよびヒスチジン;脂肪酸およびリン脂質(例えば、スルホン酸およびカプリル酸アルキル;界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート);非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG));炭水化物(例えば、グルコース、ショ糖、マンノース、マルトース、トレハロースおよびデキストリン(シクロデキストリンを含む));ポリオール(例えば、マンニトールおよびソルビトール);キレート剤(例えば、EDTA);ならびに塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)が挙げられる。
【0061】
VTX−2337の製剤は、TLRアゴニストの水溶解度を増加させるシクロデキストリンを含有しうる。シクロデキストリンは、α−D−グルコピラノースの結晶性非吸湿性環状オリゴマーである。グルコピラノース単位を繋ぐ結合に関する回転の欠如の結果として、シクロデキストリンは円筒型ではなく、トロイダル型である。この回転の制限のため、これらは、分子中のグルコピラノース単位の数によってサイズが変動する中央の空洞を有する固定された構造である。3つの最も一般的なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンであり、それぞれ、6個、7個または8個のグルコピラノース単位からなる。シクロデキストリン分子内のヒドロキシル基の配置および分子の形のため、空洞の内部表面は疎水性であり、外部表面は親水性である。主要なヒドロキシル基は、トロイダル分子の狭い(内部)側面に局在し、次のヒドロキシル基は、広い(外部の)端に局在する。この配置は、シクロデキストリンが、包接錯体を形成することによって様々な小さい疎水性分子を疎水性の空洞内に受容することを可能にする。
【0062】
本発明の製剤における使用のための適当なシクロデキストリンは、当該技術分野で知られている。例えば、TRAPPSOL(登録商標)および他のシクロデキストリンは、CTD,Inc.(High Springs,FL)によって製造され、CAPTISOL(登録商標)(スルホブチルエーテル β−シクロデキストリン)は、市販品として入手可能な注射物質(例えば、ABILIFY IM(登録商標)、GEODONおよびVFEND IV)中に存在する。好ましくは、CAPTISOL(登録商標)は、本発明の製剤中で用いられる。
【0063】
他の水溶解性薬剤が用いられうる。他のこのような薬剤の例としては、ポロキサマー、ポビドンK17、ポビドンK12、Tween 80、エタノール、クレモホール/エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400およびプロピレングリコールが挙げられる。好ましい実施態様において、本発明の製剤は、かかる製剤の10v/v%以下を含有する。ある実施態様において、油を基質とした可溶化剤(例えば、リピオドールまたは落花生油)が用いられる。
【0064】
ある実施態様において、VTX−2337の製剤は、粉末、錠剤、丸剤またはカプセル剤などの液体または固形の形態として調製されうる。液体製剤は、油性または水性ベヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液のような形態であり得、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤化薬剤(formulatory agent)を含有しうる。ある実施態様において、前記製剤は、水溶液である。別の態様において、最終製剤は、凍結乾燥されている。他の実施態様において、前記製剤には、コロイド性薬物系が含まれる。このような薬物送達系には、例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル剤が含まれる。
【0065】
ある実施態様において、VTX−2337は、哺乳類、好ましくは、ヒトにおける注射に適する液体または凍結乾燥製剤である。ある実施態様において、前記製剤は、滅菌されている。別の態様において、前記製剤は、水性担体の量で再構成されることによって注射に適切である滅菌された凍結乾燥製剤である。ある実施態様において、前記液体または凍結乾燥製剤は、下記に記載される単位用量として調製される。前記製剤は、添加された保存剤を含有していてもよく、または含有していなくてもよい。
【0066】
ある実施態様において、VTX−2337は、1つまたはそれ以上のアジュバントをさらに含む。適当なアジュバントの例としては、免疫応答増強剤、例えば、微生物誘導体(例えば、細菌生成物、毒素(コレラ毒素およびE.coliに由来する易熱性毒素など)、脂質、リポタンパク質、核酸、ペプチドグリカン、炭水果物、ペプチド)、細胞、サイトカイン(例えば、樹状細胞、IL−12およびGM−CSF)、ホルモンおよび低分子が挙げられる。包含されるアジュバントとしては、以下に限定されないが、油を基質としたアジュバント(例えば、フロイントアジュバント)、CpGオリゴヌクレオチド、アルミニウム塩アジュバント、カルシウム塩アジュバント、乳濁液および界面活性剤を基質にした製剤(例えば、MF59、AS02、モンタナイド、ISA−51、ISA−720およびQA21)が挙げられる。
【0067】
ある実施態様によれば、VTX−2337は、約0.5〜約50mg/mlの濃度で製剤化される。ある実施態様において、ベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニストは、約1mg/ml〜約5mg/ml、約1mg/ml〜約10mg/ml、約1mg/ml〜約20mg/mlまたは約1mg/ml〜約30mg/mlの濃度で製剤化される。他の実施態様において、VTX−2337は、約0.5mg/ml〜約1mg/ml、約0.5mg/ml〜約2mg/mlまたは約0.5mg/ml〜約5mg/mlの濃度で製剤化される。ある実施態様において、VTX−2337は、0.5〜10mg/ml、0.5〜5mg/mlまたは1〜5mg/mlの濃度で製剤化される。他の実施態様において、VTX−2337は、10〜20mg/ml、20〜30mg/mlまたは30〜50mg/mlの濃度で製剤化される。特定の実施態様において、VTX−2337は、約1mg/ml、約2mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約8mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mgml、約25mg/ml、約30mg/mlまたは約40mg/mlの濃度で製剤化される。
【0068】
VTX−2337の製剤化は、適宜、単位製剤として調製することができる。「単位製剤」は、目的の用途に適する物理的に別個の単位、すなわち、治療される患者への単一投与として意味する。各単位は、適当な医薬的に許容される賦形剤と共に製剤化された所定量の活性薬剤を含有する。例えば、1バイアルあたりの単位用量には、活性薬剤の特定濃度を含有する、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mLまたは20mLのような一定量が含有されうる。製剤には、単一の活性薬剤、すなわち、本明細書に記載のVTX−2337、その誘導体および類似体、または組み合わせ治療における使用のための他の薬剤(例えば、ドキソルビシンなどの抗癌剤)とのその混合物が含まれうる。好ましい実施態様において、単位製剤には、約15mg/ml〜約40mg/mlのVTX−2337が含まれる。前記製剤は、適宜、単位用量または複数回用量容器中に、例えば、密封アンプルまたはバイアル中に含有されていてもよく、凍結乾燥条件であってもよい。即時注射溶剤および懸濁剤は、当該技術分野で公知の方法に従って、滅菌した散剤、顆粒剤および錠剤から調製されうる。単位製剤の例としては、以下に限定されないが、錠剤;カプレット;カプセル剤(例えば、軟ゼラチンカプセル剤);カシュ剤;トローチ;トローチ剤;分散剤;座剤;軟膏剤;パップ剤(湿布);ペースト剤;散剤;包帯剤;クリーム剤;膏薬;溶剤;貼付剤;エアロゾル(例えば、経鼻スプレーまたは吸入剤);ゲル剤;患者への経口または粘膜投与に適する液体製剤(懸濁剤(例えば、水性または非水性液体懸濁剤、水中油型乳濁液または油中水型液体乳濁剤)、溶剤およびエリキシル剤を含む);患者への皮下投与に適する液体製剤;ならびに再構成して患者への皮下投与に適する液体製剤を供することができる滅菌固形物(例えば、結晶またはアモルファス固形)が挙げられる。
【0069】
本発明による組成物および製剤ならびに組成物および製剤を含む構成成分の製造方法に関するさらなる情報は、当該分野で標準的な文献、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA.などの中で見出すことができる。
【0070】
使用方法
VTX−2337および1つまたはそれ以上のさらなる治療法(例えば、抗癌剤(ドキソルビシンなど))の組み合わせは、癌の治療方法で有用である。好ましくは、VTX−2337製剤は、癌の治療計画において1つまたはそれ以上のさらなる治療法と組み合わせて用いられる。ある実施態様において、前記癌は、固形腫瘍である。ある実施態様において、前記癌は、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、腎臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、メラノーマおよびリンパ腫、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施態様において、前記癌は、リンパ腫である。ある実施態様において、前記リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である。
【0071】
癌を治療するためのTLR8アゴニストまたは癌を治療するための抗癌剤およびTLR8アゴニストの組み合わせの有効性を試験する方法としては、以下に限定されないが、インビトロアッセイ(例えば、ヒトPBMC、HEK細胞またはIHCを使用する方法および浸潤細胞に対するFACSおよび腫瘍細胞の溶解)、ならびにインビボアッセイ(例えば、卵巣細胞株を注射したNSG−HISマウスまたはヒト化マウス(NSG−HIS)、あるいはヒト患者を用いる方法)が挙げられる。
【0072】
組み合わせ治療
組み合わせ治療には、VTX−2337の投与に加えて、癌の予防または治療に役に立つ1つまたはそれ以上の方法の補助的な使用が包含される。このような方法には、以下に限定されないが、化学療法剤、免疫治療剤、抗血管新生薬、サイトカイン、ホルモン、抗体、ポリヌクレオチド、放射線および光線力学療法薬が含まれる。具体的な実施態様において、組み合わせ治療は、癌の再発を予防し、転移を阻害し、または癌または転移の増殖および/または広がりを防ぐために用いることができる。本明細書で用いられるように、「と組み合わせて」は、本発明のVTX−2337製剤が、下記の項目でより詳細に説明されるように1つまたはそれ以上のさらなる治療法を含む治療計画の一部として投与されることを意味する。
【0073】
ある実施態様において、VTX−2337は、1つまたはそれ以上の他の治療剤の投与の前、同時または後に投与される。ある実施態様において、VTX−2337は、抗癌剤(例えば、ドキソルビシン)の投与前または投与後(例えば、5日後)に投与される。ある実施態様において、VTX−2337は、1つまたはそれ以上の方法で製剤化される。別の態様において、1つまたはそれ以上の他の方法は、別々の医薬組成物中で投与される。この実施態様によれば、1つまたはそれ以上の他の方法は、VTX−2337を投与するために用いられる投与経路と同一または異なる経路によって患者に投与されうる。
【0074】
ドキソルビシンとの組み合わせ
ある実施態様において、VTX−2337を含む前記製剤は、ドキソルビシンと組み合わせて投与される。好ましくは、ドキソルビシンは、ペグ化されたリポソーム形態中にある。ドキソルビシンの化学構造は、下記に示される:
【化2】
【0075】
他の抗癌剤との組み合わせ
ある実施態様において、本発明のVTX−2337を含む前記製剤は、1つまたはそれ以上の抗癌剤、好ましくは、化学療法剤と組み合わせて投与される。このような化学療法剤としては、以下に限定されないが、下記の化合物群:細胞毒性抗生物質、代謝拮抗物質、抗有糸分裂薬、アルキル化剤、白金化合物、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、タキサン、ヌクレオシド類似体、植物アルカロイドおよび毒素;ならびにこれらの合成誘導体が挙げられる。下記は、これらの群内の特定の化合物の非限定的な例である。アルキル化剤には、ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミドおよびクロランブシル);ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU));アルキルスルホネート(例えば、ブスルファンおよびトレオスルファン);ならびにトリアゼン(例えば、ダカルバジン)が含まれる。白金を含有する化合物には、シスプラチン、カルボプラチン、アロプラチン(aroplatin)およびオキサリプラチンが含まれる。植物アルカロイドには、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン);およびタキソイド系(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれる。DNAトポイソメラーゼ阻害剤としては、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、カンプトテシンおよびクリスナトール);ならびにマイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)が挙げられる。葉酸代謝拮抗剤としては、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキサートおよびトリメトレキサート);IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、ヒドロキシ尿素およびEICAR);ならびにリボヌクレオチド還元酵素阻害剤(例えば、デフェロキサミン)が挙げられる。ピリミジン類似体としては、ウラシル類似体(例えば、5−フルオロウラシル、フロキシウリジン、ドキシフルリジンおよびラルチトレキセド(ratitrexed));およびシトシン類似体(例えば、シタラビン(ara C)、シトシンアラビノシドおよびフルダラビン)が挙げられる。プリン類似体としては、メルカプトプリンおよびチオグアニンが挙げられる。DNA代謝拮抗剤としては、3−HP、2’−デオキシ−5−フルオロウリジン、5−HP、アルファ−TGDR、アフィジコリングリシネート、ara−C、5−アザ−2’−デオキシシチジン、ベータ−TGDR、シクロシチジン、グアナゾール、イノシングリコジアルデヒド(inosine glycodialdehyde)、マセベシン(macebecin)IIおよびピラゾロイミダゾールが挙げられる。有糸分裂阻害剤としては、アロコルヒチン、ハリコンドリンB、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、チオコルヒチンおよびトリチルシステインが挙げられる。
【0076】
本発明のベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニスト製剤と共に使用するための化学療法剤の他の例としては、イソプレニル化阻害剤;ドーパミン作動性神経毒(例えば、1−メチル−4−フェニルピリジニウムイオン);細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン);アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンDおよびダクチノマイシン);ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2およびペプロマイシン);アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシンおよびミトキサントロン);MDR阻害剤(例えば、ベラパミル);ならびにCa2+ATPアーゼ阻害剤(例えば、タプシガルジン)が挙げられる。
【0077】
1つまたはそれ以上の化学療法剤(例えば、FLAG、CHOP)を含む組成物はまた、本発明のVTX−2337と組み合わせて使用することが意図される。FLAGには、フルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara−C)およびG−CSFが含まれる。CHOPには、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびプレドニゾンが含まれる。前記記載の各々は、例示であって、限定することが意図されるものではない。
【0078】
ある実施態様において、VTX−2337は、下記のうちの1つまたはそれ以上と組み合わせて投与される:IFNα、IL−2、ダカルバジン(Bayer)、テモゾロマイド(Schering)、タモキシフェン(AZ)、カルムスチン(BMS)、メルファラン(GSK)、プロカルバジン(Sigma−Tau)、ビンブラスチン、カルボプラチン、シスプラチン、タキソール、シクロホスファミド、ドキソルビン(doxorubin)、リツキサン(Genentech/Roche)、ハーセプチン(Genentech/Roche)、グリベック、イレッサ(AZ)、アバスチン(Genentech/Roche)またはタルセバ(Genentech/Roche)。
【0079】
別の実施態様において、本発明のVTX−2337は、下記のうちの1つまたはそれ以上と組み合わせて投与される:エンジイン(例えば、カリチアマイシンおよびエスペラミシン);デュオカルマイシン、メトトレキサート、ドキソルビシン、メルファラン、クロランブシル、Ara−C、ビンデシン、マイトマイシンC、シス白金、エトポシド、ブレオマイシンおよび5−フルオロウラシル。
【0080】
本発明のベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニスト製剤と組み合わせて用いることができる適当な毒素および化学療法剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Ed.(Mack Publishing Co. 1995)およびGoodman and Gilman's the Pharmacological Basis of Therapeutics, 7th Ed.(MacMillan Publishing Co. 1985)に記載される。他の適当な毒素および/または化学療法剤は、当業者に公知である。
【0081】
本発明のVTX−2337と組み合わせて使用することができる抗癌剤のさらなる例としては、下記に限定されないが、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール(acodazole)塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アムボマイシン(ambomycin);酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビスアントレン塩酸塩;メシル酸ビスナフィド;ビセレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼルシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン(cirolemycin);シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;ドロモスタノロンプロピオン酸塩;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロールニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロキシウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルオシタビン;ホスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組み換え体インターロイキンIIまたはrIL2を含む)、インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンアルファ−2b;インターフェロンアルファ−n1;インターフェロンアルファ−n3;インターフェロンベータ−Ia;インターフェロンガンマ−Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメテレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロール酢酸塩;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン(metoprine);メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル(mitosper);ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパラガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;トレストロン酢酸塩;トリシビリンリン酸塩;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;ビングリシネート硫酸塩;ビンロイロシン硫酸塩;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジン硫酸塩;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩が挙げられる。
【0082】
使用することができる他の抗癌剤としては、以下に限定されないが、5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背側形成タンパク質1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1);抗アンドロゲン薬(前立腺癌);抗エストロゲン剤;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子修飾因子;アポトーシス調節因子;アプリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ−アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビスアントレン;ビサジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine);ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフラート(breflate);ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシイミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL−2;カペシタビン;カルボキサミド−アミノ−トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼルシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン類(chlorlns);クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス−ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタアントラキノン類;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ジヒドロタキソール、9−;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルビシン(fluorodaunorunicin)塩酸塩;フォルフェニメックス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様増殖因子−1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール,4−;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;三酢酸ラメラリン−N;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球インターフェロンα;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;細胞溶解性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテフォシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;ミトトキシン繊維芽細胞増殖因子−サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体,ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;複数腫瘍抑制因子1に基づく治療;マスタード抗癌剤;ミカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素修飾因子;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン;06−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導因子;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルフォスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金−トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス−アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAに基づく免疫調節因子;プロテインAに基づく免疫修飾因子;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤(微細藻類);プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン類;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン抱合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras−GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe186;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣剤;セムスチン;老化誘導阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達修飾因子;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン;過活性血管作動性腸ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロマイド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣剤;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン類;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子治療;ベラレソール;ベラミン;ベルジン類;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーが挙げられる。
【0083】
放射線治療との組み合わせ
別の態様において、本発明のVTX−2337は、癌の治療のための放射線治療の投薬計画と組み合わせて投与される。前記方法には、体外照射療法、放射性同位体(I−125、パラジウム、イリジウム)の壁内着床、放射性同位体(例えば、ストロンチウム−89)、胸部放射線治療、腹腔内P−32放射線治療および/または腹式子宮および骨盤放射線治療を含む投薬計画が包含される。適当な細胞毒性放射性核種または治療上の放射線同位体は、放射線治療の投薬計画で用いられうる。ある実施態様において、前記同位体は、アルファ粒子放出同位体、例えば、225Ac、224Ac、211At、212Bi、213Bi、212Pb、224Raまたは223Raである。他の実施態様において、細胞毒性放射性核種は、ベータ粒子放出同位体、例えば、186Re、188Re、90Y、131I、67Cu、177Lu、153Sm、166Hoまたは64Cuである。ある実施態様において、細胞毒性放射性核種は、オージェおよび低エネルギー電子を放出する同位体、例えば、125I、123Iまたは77Brである。他の実施態様において、前記同位体は、198Au、32Pなどである。
【0084】
ある実施態様において、患者に投与される放射性核種の量は、約0.001mCi/kg〜約10mCi/kgである。ある実施態様において、患者に投与される放射性核種の量は、約0.1mCi/kg〜約1.0mCi/kgである。他の実施態様において、患者に投与される放射性核種の量は、約0.005mCi/kg〜0.1mCi/kgである。
【0085】
治療抗体との組み合わせ
別の態様において、本発明のVTX−2337は、1つまたはそれ以上の免疫治療剤(例えば、抗体またはワクチン)と組み合わせて投与される。ある実施態様において、前記抗体は、癌に対するインビボでの治療上および/または予防上の用途を有する。
【0086】
本発明のベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニスト製剤と組み合わせて用いることができる治療および予防抗体の非限定的な例としては、MDX−010(Medarex,NJ)(前立腺癌の治療について現在臨床段階にあるヒト化抗CTLA4抗体);SYNAGIS(登録商標)(MedImmune,MD)(RSV感染の治療のためのヒト化抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)モノクローナル抗体である);ならびにハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)(Genentech,CA)(転移性乳癌の治療のためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体)が挙げられる。他の例は、ヒト化抗CD18F(ab’)(Genentech);CDP860(ヒト化抗CD18F(ab’)(Celltech,UK);PRO542(CD4と融合した抗HIV gp120抗体(Progenics/Genzyme遺伝子組み換え体);オスタビル(Ostavir)(ヒト抗B型肝炎ウイルス抗体)(Protein Design Lab/Novartis);PROTOVIR(登録商標)(ヒト化抗CMV IgG1抗体)(Protein Design Lab/Novartis);MAK−195(SEGARD)(マウス抗TNF−α F(ab’))(Knoll Pharma/BASF);IC14(抗CD14抗体(ICOS Pharm));ヒト化抗VEGF IgG1抗体(Genentech);OVAREX(登録商標)(マウス抗CA125抗体(Altarex));PANOREX(登録商標)(マウス抗17−IA細胞表面抗原IgG2a抗体(Glaxo Wellcome/Centocor));BEC2(マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体(ImClone System));IMC−C225(キメラ抗EGFR IgG抗体(ImClone System));VITAXIN(登録商標)(ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体(Applied Molecular Evolution/MedImmune));キャンパス1H/LDP−03(ヒト化抗CD52 IgG1抗体(Leukosite));Smart M195(ヒト化抗CD33 IgG抗体(Protein Design Lab/Kanebo));RITUXAN(登録商標)(キメラ抗CD20 IgG1抗体(IDEC Pharm/Genentech、 Roche/Zettyaku));LYMPHOCIDE(登録商標)(ヒト化抗CD22 IgG抗体(Immunomedics));Smart ID10(ヒト化抗HLA抗体(Protein Design Lab));ONCOLYM(登録商標)(Lym−1)(放射性標識化マウス抗HLA診断用試薬抗体(Techniclone));ABX−IL8(ヒト抗IL8抗体(Abgenix));抗CD11a(ヒト化IgG1抗体(Genentech/Xoma));ICM3(ヒト化抗ICAM3抗体(ICOS Pharm));IDEC−114(霊長類抗CD80抗体(IDEC Pharm/Mitsubishi));ZEVALIN(登録商標)(放射性標識化マウス抗CD20抗体(IDEC/Schering AG));IDEC−131(ヒト化抗CD40L抗体(IDEC/Eisai));IDEC−151(霊長類抗CD4抗体(IDEC));IDEC−152(霊長類抗CD23抗体(IDEC/Seikagaku));SMART 抗CD3(ヒト化抗CD3 IgG(Protein Design Lab));5G1.1(ヒト化抗補体因子5(C5)抗体(Alexion Pharm));D2E7(ヒト化抗TNF−α抗体(CAT/BASF));CDP870(ヒト化抗TNF−α Fabフラグメント(Celltech));IDEC−151(霊長類抗CD4 IgG1抗体(IDEC Pharm/SmithKline Beecham));MDX−CD4(ヒト抗CD4 IgG抗体(Medarex/Eisai/Genmab));CDP571(ヒト化抗TNF−α IgG4抗体(Celltech));LDP−02(ヒト化抗α4β7抗体(LeukoSite/Genentech));Orthoclone OKT4A(ヒト化抗CD4 IgG抗体(Ortho Biotech));ANTOVA(登録商標)(ヒト化抗CD40L IgG抗体(Biogen));ANTEGREN(登録商標)(ヒト化抗VLA−4 IgG抗体(Elan));MDX−33(ヒト抗CD64(FcγR)抗体(Medarex/Centeon));SCH55700(ヒト化抗IL−5 IgG4抗体(Celltech/Schering));SB−240563およびSB−240683(各々、ヒト化抗IL−5およびIL−4抗体(SmithKline Beecham));rhuMab−E25(ヒト化抗IgE IgG1抗体(Genentech/Norvartis/Tanox Biosystems));ABX−CBL(マウス抗CD−147 IgM抗体(Abgenix));BTI−322(ラット抗CD2 IgG抗体(Medimmune/Bio Transplant));Orthoclone/OKT3(マウス抗CD3 IgG2a抗体(ortho Biotech));SIMULECT(登録商標)(キメラ抗CD25 IgG1抗体(Novartis Pharm));LDP−01(ヒト化抗β−インテグリンIgG抗体(LeukoSite));抗LFA−1(マウス抗CD18F(ab’)(Pasteur−Merieux/Immunotech));CAT−152(ヒト抗TGF−β抗体(Cambridge Ab Tech));およびコルセビンM(キメラ抗因子VII抗体(Centocor))が挙げられる。上記に列挙した免疫活性化試薬、ならびに他の免疫活性化試薬は、免疫活性化試薬の供給者によって推奨される投薬計画を含む当業者に公知の投薬計画に従って投与されうる。
【0087】
他の治療剤との組み合わせ
抗癌剤および治療抗体に加えて、本発明のVTX−2337は、他の治療剤、例えば、抗血管新生薬(例えば、固形腫瘍の治療方法および転移の治療および予防方法において)および抗ホルモン剤(特に、乳癌および前立腺癌などのホルモン依存性癌の治療方法において)と組み合わせて投与することができる。
【0088】
ある実施態様において、本発明のVTX−2337は、1つまたはそれ以上の抗血管新生薬と組み合わせて投与される。このような薬剤としては、以下に限定されないが、アンジオスタチン、サリドマイド、クリングル5、エンドスタチン、セルピン(セリンプロテアーゼ阻害剤)抗トロンビン、フィブロネクチンの29kDaのN末端および40kDaのC末端タンパク質分解フラグメント、プロラクチンの16kDaのタンパク質分解フラグメント、血小板因子4の7.8kDaのタンパク質分解フラグメント、血小板因子4のフラグメントに相当する13アミノ酸ペプチド(Maione et al., 1990, Cancer Res. 51:2077-2083)、コラーゲンIのフラグメントに相当する14アミノ酸ペプチド(Tolma et al., 1993, J. Cell Biol. 122:497-511)、トロンボスポンジンIのフラグメントに相当する19アミノ酸ペプチド(Tolsma et al., 1993, J. Cell Biol. 122:497-511)、SPARCのフラグメントに相当する20アミノ酸ペプチド(Sage et al., 1995, J. Cell. Biochem. 57:1329-1334)、あるいはこれらのフラグメント、ファミリーまたは変異体(その医薬的に許容される塩を含む)が挙げられる。
【0089】
血管形成を阻害し、ラミニン、フィブロネクチン、プロコラーゲンおよびEGFのフラグメントに相当する他のペプチドもまた、記載されている(例えば、CaO, 1998, Prog Mol Subcell Biol. 20:161-176を参照のこと)。RGDタンパク質(すなわち、ペプチドモチーフArg−Gly−Aspを有する)に結合する一定のインテグリンを阻害するモノクローナル抗体および環状ペンタペプチドは、抗血管新生活性を有することが示されている(Brooks et al., 1994, Science 264:569-571; Hammes et al., 1996, Nature Medicine 2:529-533)。さらに、受容体アンタゴニストによるウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体の阻害は、血管形成、腫瘍増殖および転移を抑制する(Min et al., 1996, Cancer Res. 56: 2428-33; Crowley et al., 1993, Proc Natl Acad Sci. 90:5021-25)。
【0090】
別の態様において、本発明のVTX−2337は、ホルモン治療法と組み合わせて用いられる。このような治療法としては、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、ロイプロリド酢酸塩(LUPRON)、LH−RHアンタゴニスト)、ホルモン生合成およびプロセッシングの阻害剤、およびステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド(deltoid)、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、鉱質コルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、ビタミンA誘導体(例えば、オール・トランスレチノイン酸(ATRA));ビタミンD3類似体;抗ゲスターゲン(antigestagen)(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)、および抗アンドロゲン(例えば、シプロテロン酢酸塩)の投与が挙げられる。
【0091】
別の態様において、本発明のVTX−2337は、ポリヌクレオチド化合物(例えば、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチドなど)を利用する治療法と組み合わせて用いられる。
【0092】
免疫調節剤との組み合わせ
ある実施態様において、本発明のVTX−2337は、免疫調節剤と組み合わせて投与される。ある実施態様において、ベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニストは、免疫調節剤と共に製剤化される。「免疫調節剤」は、投与される患者の免疫系を抑制し、マスクし、または増強する物質である。典型的な薬剤は、サイトカインの産生を抑制し、自己抗原の発現を下流調節もしくは抑制し、あるいはMHC抗原をマスクするものである。かかる薬剤の例としては、2−アミノ−6−アリール−5−置換ピリミジン(米国特許第4,665,077号を参照)、アザチオプリン(またはアザチオプリンに対して有害反応が存在する場合、シクロホスファミド);ブロモクリプチン;グルタルアルデルヒド(MHC抗原をマスクする、米国特許第4,120,649号に記載);MHC抗原およびMHCフラグメントに対する抗イディオタイプ抗体;サイクロスポリンA;ステロイド系(例えば、糖質コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンおよびデキサメタゾンなど));サイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト(抗インターフェロン−γ、−β、または−α抗体を含む);抗腫瘍壊死因子−α抗体;抗腫瘍壊死因子−β抗体;抗インターロイキン−2抗体および抗IL−2受容体抗体;抗L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;パン−T抗体、好ましくは、抗CD3または抗CD4/CDa抗体;LFA−3結合ドメインを含有する可溶性ペプチド;ストレプトキナーゼ;TGF−β;ストレプトキナーゼ;FK506;RS−61443;デオキシスパガリン;およびラパマイシンが挙げられる。サイトカインの例としては、以下に限定されないが、リンホカイン、モノカインおよび伝統的なポリペプチドホルモンが挙げられる。前記サイトカインには、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体ホルモン(LH);肝細胞増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α;ミュラー管阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えば、NGF−α;血小板増殖因子;形質転換増殖因子(TGF)、例えば、TGF−αおよびTGF−α;インスリン様増殖因子−Iおよび−II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子(osteoinductive factor);インターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、マクロファージ−CSF(M−CSF);顆粒球マクロファージCgP(GM−CSP);および顆粒球CSF(G−CSF);インターロイキン(IL)、例えば、IL−1、IL−la、IL−2、1L−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−1I、IL−12、IL−15;腫瘍壊死因子、例えば、TNF−αまたはTNF−β;および他のポリペプチド因子(LIFおよびキットリガンド(KL)を含む)が含まれる。本明細書で用いられるように、用語サイトカインには、天然源由来または組み替え細胞培養由来のタンパク質および内因性配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0093】
ある実施態様において、前記方法は、患者に、1つまたはそれ以上の免疫調節剤、好ましくは、サイトカインを投与することをさらに特徴とする。好ましいサイトカインは、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−12、IL−15、IL−18、G−CSF、GM−CSF、トロンボポエチンおよびγインターフェロンからなる群から選択されるものである。
【0094】
単球またはマクロファージの機能を亢進する化合物との組み合わせ
ある実施態様において、単球またはマクロファージの機能を亢進する化合物(例えば、少なくとも約25%、50%、75%、85%、90%、9%またはそれ以上)は、本発明のベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニスト製剤と組み合わせて用いることができる。このような化合物は、当該技術分野で公知であり、以下に限定されないが、インターロイキン(例えば、IL−12)およびインターフェロン(例えば、アルファまたはガンマインターフェロン)などのサイトカインが含まれる。
【0095】
ある実施態様において、単球またはマクロファージの機能を亢進する化合物は、VTX−233と共に製剤化され、それによりVTX−2337と同時に投与される。
【0096】
他の実施態様において、単球またはマクロファージの機能を亢進する化合物は、VTX−2337とは別個に投与され、VTX−2337と同時に(相互に数時間以内)、治療の同一過程の間に、または連続して投与することができる。かかる実施態様において、単球またはマクロファージの機能を亢進する化合物は、好ましくは、ヒト患者に投与される。ある実施態様において、ヒト患者は、ヒトの正常の範囲内である白血球、単球、好中球、リンパ球および/または好塩基球の数を有する。ヒトの白血球の正常な範囲(総数)は、約3.5〜10.5(10/L)である。ヒト好中球の正常な範囲は、約1.7〜7.0(10/L)であり、単球は、約0.3〜0.9(10/L)であり、リンパ球は、約0.9〜2.9(10/L)であり、好塩基球は、約0〜0.3(10/L)であり、好酸球は、約0.05〜0.5(10/L)である。他の実施態様において、ヒト患者は、ヒトの正常な範囲、例えば、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8(10/L)以下の白血球である白血球の数を示す。
【0097】
標的の癌
本発明の方法によって治療される癌のタイプは、固形癌、例えば、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、腎臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌またはリンパ腫、あるいはこれらの組み合わせである。本発明の方法によって治療することができる癌の他のタイプとしては、以下に限定されないが、ヒト肉腫および癌、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫,横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球)白血病および慢性リンパ性白血病);および真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症および重鎖病が挙げられる。
【0098】
投与および用量
本発明のVTX−2337は、好ましくは、注射、最も好ましくは、皮下投与のために製剤化される。ある実施態様において、本発明のVTX−2337は、経皮、静脈内または筋肉内経路による投与のために製剤化される。
【0099】
本発明の製剤は、目的の用途に有効であるVTX−2337の量を含有する。特定の用量はまた、患者の年齢、性別、種および状態を含む他の因子の数に基づいて選択される。有効量はまた、インビトロ試験系または動物モデルに由来する用量応答曲線から推定することができる。
【0100】
ある実施態様において、VTX−2337の用量は、体重のmg/kgの単位で測定される。他の実施態様において、前記用量は、除脂肪体重のmg/kgの単位(すなわち、体重から体脂肪含有量を引いた単位)で測定される。他の実施態様において、前記用量は、体表面積のmg/mの単位で測定される。他の実施態様において、前記用量は、患者に投与される1用量あたりmgの単位で測定される。用量の測定は、本発明の組成物および方法と組み合わせて用いることができ、用量単位は、当該技術分野で標準的な方法によって変換することができる。
【0101】
本発明の方法で用いることができる投薬計画の例としては、以下に限定されないが、1日1回、1週間に3回(間欠的に)、2週間に1回、または14日に1回が挙げられる。ある実施態様において、投薬計画としては、以下に限定されないが、1月に1回の投与または6〜8週間に1回の投与が挙げられる。好ましい態様において、本発明のベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニスト製剤は、患者(好ましくは、ヒト患者)における癌の治療のための適当な治療法と組み合わせて、1週間に1回または2週間に1回で皮下注射によって投与される。
【0102】
VTX−2337の典型的な用量としては、患者のキログラムあたりミリグラム量が挙げられる。ある実施態様において、前記用量は、体重の約0.02〜10mg/kgまたは体重の約0.04〜5mg/kgである。具体的な実施態様において、前記用量は、患者の体重の約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgである。
【0103】
癌の治療方法のある実施態様において、VTX−2337は、患者の体重の約0.02〜10mg/kgまたは体重の約0.04〜5mg/kgの用量で患者に、単独で、または癌治療の組み合わせ治療において投与される。ある実施態様において、ベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニストは、患者の体重の約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgの用量で投与される。あるさらなる実施態様において、VTX−2337は、患者に1週間または2週間に1回の頻度で投与される。具体的な実施態様において、1日の用量は、少なくとも0.05mg、0.50mg、1.0mg、5.0mg、10mg、15mg、20mg、30mgまたは少なくとも50mgである。
【0104】
ある実施態様において、単独で、または癌治療の組み合わせ治療で投与されるベンゾ[b]アゼピンTLR8アゴニスト(例えば、VTX−2337)の用量は、0.1〜10mg/m(例えば、0.1〜0.3mg/m、0.1〜3.9mg/m、0.1〜1mg/m、0.1〜2mg/m、0.1〜4mg/m、2〜4mg/m、2.5〜3.5mg/m、2〜6mg/m、2〜8mg/m)である。これには、0.1mg/m、1mg/m、2mg/m、3mg/m、4mg/m、5mg/m、6mg/m、7mg/m、8mg/mおよびその間が含まれる。1.5mの体表面積が70kgの体重に相当すると仮定した場合、2.5〜3.5mg/mは、〜0.05〜0.075mg/kgに相当することに留意すべきである。投与頻度は、好ましくは、7〜21日ごとに1回(例えば、7、10、14、18、21日ごとに1回)である。ある実施態様において、投与頻度は、好ましくは、7〜21日ごとに1、2または3回(例えば、7、10、14、18、21日に1回)である。ベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニストは、疾患の進行を遅らせるか、または許容されない毒性が減少するまで付与されうる。ある実施態様において、2〜20回の投薬が付与される(例えば、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20回の投薬)。好ましい投与経路は皮下である。
【0105】
癌の治療方法のある実施態様において、ドキソルビシンは、患者の体重の約0.02〜10mg/kgまたは体重の約0.04〜5mg/kgの用量で、あるいは患者の体表面積の50mg/m以下の用量で患者に、単独でまたは本発明の組み合わせ治療において投与される。
【0106】
皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外または静脈内投与のための推奨される用量は、1日あたり体重の約0.02〜10mg/kgの範囲内である。局所投与に適当な用量は、投与部位に応じて、約0.001ミリグラム〜約50ミリグラムの範囲内である。当業者は、維持投薬計画と比較して初期治療に対して一般的に用量が高いか、および/または投与頻度が高いことを評価する。
【0107】
ドキソルビシンは、好ましくは、注射、最も好ましくは、静脈内投与のために製剤化される。ある実施態様において、ドキソルビシンは、皮内、経皮、皮下または筋肉内経路による投与のために製剤化される。
【0108】
ある実施態様において、ドキソルビシンの用量は、体重のmg/kgの単位で測定される。他の実施態様において、前記用量は、除脂肪体重のmg/kgの単位(すなわち、体重から体脂肪含有量を引いた単位)で測定される。他の実施態様において、前記用量は、体表面積のmg/mの単位で測定される。他の実施態様において、前記用量は、患者に投与される1回の投薬あたりmgの単位で測定される。用量の測定は、本発明の組成物および方法とともに用いることができ、用量単位は、当該分野で標準的な方法によって変換することができる。
【0109】
ある実施態様において、ドキソルビシンは、VTX−2337の投与の前、同時または後に投与される。
【0110】
癌の治療方法のある実施態様において、ドキソルビシンは、患者の体重の約0.02〜10mg/kgまたは約0.04〜5mg/kgの用量で患者に投与される。
【0111】
癌の治療のための典型的な投薬計画
特定の実施態様において、本発明のVTX−2337製剤は、患者(好ましくは、ヒト患者)における癌の治療のための既存の治療投薬計画と組み合わせて用いられる。本実施態様によれば、ベンゾ[b]アゼピンTLRアゴニスト製剤は、癌の治療に適する抗癌剤の前、後または同時に投与することができる。好ましくは、VTX−2337の投与は、癌のタイプ、患者の既往歴および状態、ならびに特定の選択された抗癌剤に応じて、抗癌剤の用量および時期に適合する。
【0112】
ある実施態様において、前記投薬計画には、乳癌の治療のための5−フルオロウラシル、シスプラチン、ドセタキセル、ハーセプチン(登録商標)、ゲムシタビン、IL−2、パクリタキセルおよび/またはVP−16(エトポシド)が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、前立腺癌の治療のためのパクリタキセル、ドセタキセル、ミトキサントロンおよび/またはアンドロゲン受容体アンタゴニスト(例えば、フルタミド)が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、白血病の治療のためのフルダラビン、シトシンアラビノシド、ゲムツズマブ(MYLOTARG)、ダウノルビシン、メトトレキサート、ビンクリスチン、6−メルカプトプリン、イダルビシン、ミトキサントロン、エトポシド、アスパラギナーゼ、プレドニゾンおよび/またはシクロホスファミドが含まれる。ある実施態様において、前記投薬計画には、ミエローマの治療のためのデキサメタゾンが含まれる。ある実施態様において、前記投薬計画には、メラノーマの治療のためのダカルバジンが含まれる。ある実施態様において、前記投薬計画には、結腸直腸癌の治療のためのイリノテカンが含まれる。ある実施態様において、前記投薬計画には、肺癌の治療のためのパクリタキセル、ドセタキセル、エトポシドおよび/またはシスプラチンが含まれる。ある実施態様において、前記投薬計画には、非ホジキンリンパ腫の治療のためのシクロホスファミド、CHOP、エトポシド、ブレオマイシン、ミトキサントロンおよび/またはシスプラチンが含まれる。ある実施態様において、前記投薬計画には、胃癌の治療のためのシスプラチンが含まれる。ある実施態様において、前記投薬計画には、膵臓癌の治療のためのゲムシタビンが含まれる。
【0113】
抗癌剤を用いた治療期間は、用いられる特定の治療剤によって変動しうる。ある実施態様において、前記投与は、不連続であり、すなわち、1日1回の投与は、数回の部分投与に分割される。ある実施態様によれば、治療方法には、単一治療剤または順次治療剤が投与される間に少なくとも1周期、好ましくは、1周期以上が含まれる。適当な1周期の期間は、当業者による通常の方法、ならびに合計の周期数および周期間の間隔によって決定することができる。
【0114】
具体的な実施態様において、前記投薬計画には、ゲムシタビンの100〜1000mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、ダカルバジンの200〜4000mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。好ましい態様において、ダカルバジンの700〜1000mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、フルダラビンの25〜50mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、シトシンアラビノシド(Ara−C)の200〜2000mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、ドセタキセルの1.5〜7.5mg/kg/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、パクリタキセルの5〜15mg/kg/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、シスプラチンの5〜20mg/kg/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、5−フルオロウラシルの5〜20mg/kg/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、ドキソルビシンの2〜8mg/kg/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、エピポドフィロトキシンの40〜160mg/kg/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、シクロホスファミドの50〜200mg/kg/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、イリノテカンの50〜75、75〜100、100〜125または125〜150mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、ビンブラスチンの3.7〜5.4、5.5〜7.4、7.5〜11または11〜18.5mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、ビンクリスチンの0.7〜1.4または1.5〜2mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。さらに別の実施態様において、前記投薬計画には、メトトレキサートの3.3〜5、5〜10、10〜100または100〜1000mg/m/周期の範囲の用量が含まれる。
【0115】
ある実施態様において、前記投薬計画には、化学療法剤の低用量の使用が含まれる。本実施態様によれば、本発明のVTX−2337による患者の最初の治療は、抗癌剤による後の誘発に対して腫瘍の感受性を増加させる。よって、前記抗癌剤は、単独で投与される薬剤について許容可能な用量のより低い範囲付近またはそれ以下の用量で患者に投与することができる。ある実施態様において、前記投薬計画には、ドセタキセルを6〜60mg/m/日またはそれ以下で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、パクリタキセルを10〜135mg/m/日またはそれ以下で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、フルダラビンを2.5〜25mg/m/日またはそれ以下で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、シトシンアラビノシド(Ara−C)を0.5〜1.5g/m/日またはそれ以下で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、ゲムシタビンを10〜100mg/m/周期で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、シスプラチン、例えば、PLATINOLまたはPLATINOL−AQ(Bristol Myers)を、5〜10、10〜20、20〜40または40〜75mg/m/周期の範囲の用量で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、シスプラチンを7.5〜75mg/m/周期の範囲で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、カルボプラチン、例えば、PARAPLATIN(Bristol Myers)を、2〜4、4〜8、8〜16、16〜35または35〜75mg/m/周期の範囲の用量で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、ドセタキセル、例えば、タキソテール(Rhone Poulenc Rorer)を、6〜10、10〜30または30〜60mg/m/周期の範囲の用量で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、パクリタキセル、例えば、タキソール(Bristol Myers Squibb)を、10〜20、20〜40、40〜70または70〜135mg/kg/周期の範囲の用量で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、5−フルオロウラシルを0.5〜5mg/kg/周期の範囲の用量で後に投与することが含まれる。別の態様において、前記投薬計画には、ドキソルビシン、例えば、アドリアマイシン(Pharmacia&Upjohn)、ドキシル(Alza)、RUBEX(Bristol Myers Squibb)を、2〜4、4〜8、8〜15、15〜30または30〜60mg/kg/周期の範囲の用量で後に投与することが含まれる。
【0116】
上記に記載の投与スケジュールは、例示のためのみに供されるものであって、限定するものと考慮されるべきではない。
【0117】
キット
本発明は、液体または凍結乾燥されたVTX−2337および/またはドキソルビシンで充填された1つまたはそれ以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。好ましい実施態様において、液体または凍結乾燥された製剤は、滅菌されている。ある実施態様において、前記キットには、1つまたはそれ以上の容器内の本発明の液体または凍結乾燥された製剤、および癌または感染症の治療に有用である1つまたはそれ以上の他の予防剤または治療剤が含まれる。1つまたはそれ以上の他の予防剤または治療剤は、VTX−2337と同じ容器中、または1つまたはそれ以上の他の容器中に存在しうる。好ましくは、VTX−2337は、約0.5mg/ml〜約50mg/ml、約1mg/ml〜約40mg/mlまたは約2mg/ml〜約15mg/mlの濃度で製剤化され、前記製剤は、注射、好ましくは、皮下注射に適する。好ましくは、前記キットは、単位製剤中でVTX−2337を含有しうる。最も好ましくは、前記単位製剤は、治療される患者の体重の約0.02〜10mg/kgまたは約0.04〜5mg/kgの単位用量を提供するために適する形態である。
【0118】
ある実施態様において、前記キットは、癌の治療の使用(例えば、本発明の液体製剤を単独で、または別の予防剤または治療剤と組み合わせての使用)ならびに副作用および1つまたはそれ以上の投与経路のための投与情報に関する説明書がさらに含まれる。かかる容器には、医薬品または生物薬品の製造、使用または販売を規制する行政機関によって定められた形式の書類(前記書類は、ヒト投与のための製造、使用または販売の機関による認可を反映する)が適宜添付されていてもよい。
【0119】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許文献は、各かかる刊行物および文献が出典明示により本明細書に取り込まれると特に個別に示されている場合、出典明示により本明細書に取り込まれるものである。刊行物および特許文献の引用は、適切な先行技術と認められるものとされるものではなく、その内容または日付として認められるものでもない。
【0120】
本発明は、本発明の範囲を限定するものとされるものではない下記の実施例を参照してさらに定義されるものである。材料および方法の両方に対する多くの改変が本発明の目的と利益から逸脱することなく行われうることは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0121】
実施例1:TLR8アゴニストおよびドキシルの化学療法は、ヒト免疫系マウスモデルにおいてヒト抗腫瘍免疫応答を高度に活性化する
【0122】
マウスとヒトの免疫系の相違により、免疫調節剤の効果の多くは、同系マウスモデルでは十分に研究することができない。ヒト免疫系を有する新規の腫瘍保有マウスモデル(HIS)を作成して化学療法と免疫調節治療との相互作用を研究した。ドキソルビシン(免疫原性腫瘍細胞死を誘発し、抗原提示細胞を活性化する薬)およびVTX−2337(強力な活性化とヒト骨髄性DCの1型極性化を誘発するTLR8アゴニスト)の各効果および相互作用を試験し、マウス白血球における活性の減少が示された。Nod/SCID/ILRγcノックアウト(NSG)マウスを、HLA−A2+ヒトドナーに由来するヒトCD34+臍帯血細胞で接種し;ヒトHLA−A2+OVCAR5卵巣癌腫瘍で皮下注射にて移植し;続いてペグ化リポソームドキソルビシン(ドキシルまたはPLD);VTX−2337;またはこれらの2つの薬剤の組み合わせで処理した。NSG−HISマウスは、完全なヒト造血系(ヒト単球、マクロファージおよび形質細胞様樹状DCおよび骨髄性DCならびにT細胞サブセットを含む)を示した。NSG−HISマウスにおいて、VTX−2337は、6時間以内にインビボでヒトCD14+およびCD11c+細胞の用量依存的活性化を誘導した。VTX−2337で処理したマウスの血漿において、ヒトTh1サイトカインに加えてIL−10の一時的な用量依存的な上方調節が観察され、これは、6時間以内にピークに達し、24時間以内に下がった。ドキシルのみはまた、インビボでCD11c+DCの弱い活性化およびTh1サイトカインの弱い上方調節を誘導した。2つの薬剤の組み合わせは、CD11c+DCおよび単球の強力な活性化を誘導し、Th1サイトカインで著しく増加したが、IL−10では増加しなかった。HLA−A2+OVCAR5腫瘍は移植に成功し、ヒト白血球による浸潤を示した。VTX−2337およびドキシル治療は、独立して、腫瘍浸潤ヒト白血球を誘発し、用量依存的にヒト卵巣腫瘍異種移植の増殖を制限する一方、2つの薬剤の組み合わせは、最も高い頻度で腫瘍浸潤ヒト白血球を誘発し、卵巣腫瘍の増殖を強く制限した。VTX−2337およびドキシルによる自然および獲得免疫の活性化の組み合わせ、ならびにドキシルによる腫瘍細胞の獲得および自然免疫エフェクター機構に対する感作は、腫瘍増殖を抑制する相互作用の観察に基づくものであった。NSG−HISは、TLR8アゴニストおよびドキシル化学療法時に相互作用を確立するための適当なツールを提供し、その結果で臨床試験が認可される。
【0123】
材料および方法
試薬:
【0124】
VTX−2337製剤:40mg/mLの2−アミノ−N,N−ジプロピル−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキサミド(10mM クエン酸緩衝液(pH=6.5)中で15w/v% Captisol(登録商標)(スルホブチルエーテル β−シクロデキストリン)と包接錯体として製剤化される)。前記製剤は、使用前に0.9%の滅菌した塩化ナトリウムで適当な濃度までさらに希釈した。
【0125】
PLD(すなわち、Ben Venue Laboratories Inc Bedford OH4414146によって製造されたドキシル)は、ペンシルバニア大学病院薬局から購入した。
【0126】
NSG−HISマウスの作成:
全てのインビボでのマウス実験は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の指針に従ってペンシルバニア大学動物実験委員会(University of Pennsylvania Institutional Animal Care and Use Committee)によって認可された。ペンシルバニア大学異種移植施設から得たNOD−scid IL2rγヌル(NSG)マウスを、前もって放射線で照射し(250Rad)、翌日、1〜2×10個のCD34(LONZA,2C−101)を含有するT細胞欠乏ヒト臍帯血細胞を静脈内(i.v.)に注射した。約3ヶ月後、ヒト造血系の移植および再構成のレベルは、出血およびhCD45染色(BD Pharmingen,クローン2D1 cat#557833 APC−CY7)によって調べた。
【0127】
サイトカインの測定:
ある実験において、NSG−HISは、0.5または5mg/kgのVTX−2337を単独で皮下(s.c.)に、またはPLDを最大耐容用量(MTD,50mg/m)で組み合わせて腹腔内(i.p.)に注射した。他の実験において、ヒトPBMCは、VTX−2337を用いてインビトロで活性化した。全ての実験において、血漿または培地の上澄み液は、VTX−2337投与6時間後に収集した。VTX−2337またはVTX−2337およびPLD投与によって誘導されたサイトカインのレベルは、処置した動物から収集した培養上澄み液または血漿サンプルのいずれかにおける96個のヒト検体レベルを測定するルミネックスに基づく技術を用いるRules Based Medicine(Austin,TX)によってインビトロおよびインビボの両方で測定した。
【0128】
OVCAR5腫瘍を保有するNSG−HISマウスの治療:
OVCAR5細胞は、HLA−A2CD34を移植したNSG−HISマウスに皮下で注射した(5x10細胞)。処置していない対照マウスでは、腫瘍が徐々に成長して、腫瘍誘発90日に動物は死んだ。腫瘍は、1週間に2回測定し、腫瘍体積は、以下のように算出した:(長さx長さ)x(幅)/2。腫瘍を保有するマウスは、平均腫瘍体積が約50mmまたは腫瘍細胞移植〜30日後に達したら、4つの処置群にランダムに分けた(n=8〜10/群)。処置群は、ベヒクル対照、PLD(2週間に1回腹腔内で50mg/m付与)、VTX−2337(各周期間に3回1日おきに皮下注射で0.5mg/kg付与)またはPLDおよびVTX−2337の組み合わせ(VTX−2337 処置はPLDの5日後に開始)からなった。処置周期は14日間であり、3回の処置周期で各群に投与した。各処置周期の過程について、PLDを付与した群は、1日目に当該化学療法剤を受容し、VTX−2337を単独で、またはPLDと組み合わせて付与した群は、周期の5、7および9日目にVTX−2337を受容した。
【0129】
フローサイトメトリー:
白血球のフローサイトメトリー解析について、腫瘍、骨髄または脾臓を6cmのペトリ皿に置いてすりつぶし、15mLのチューブに移し、RPMI(Cellgro #1640CV)中に2mg/mlのコラゲナーゼ(Sigma #C9407)およびDNアーゼ(Sigma #D5025−15KO)を含有する溶液中で持続回転下にて2時間インキュベートした。該懸濁液は、シリンジプランジャーを用いて70μmのセルストレイナーに通し、洗浄し、遠心分離し、続いて沈殿物を2%FBSのPBS(GIBCO #10437)中に再懸濁させた。溶解後、3〜5x10細胞を0.5μg/mlのAbで4℃にて30分間染色し、洗浄し、続いてフローサイトメトリーFACS−Canto(BD Pharmingen)により解析した。細胞は、ヒトhCD45(BD Pharmingen クローン2D1 カタログ#557833 APC−CY7)、hCD3(Biolegend クローンUCHT1 #300429 PerCP/Cy5.5)、hCD4(BD Pharmingen クローンRPA−T4 #555349A PC)、hCD8(eBioscience クローンRPA−T8 #11−0088 FITC)、hCD11b(BD Pharmingen クローンICRF44 #555388 PE)、hCD11c(Biolegend、クローン3.9 #301608 Pe−Cy7)、hCD123(BD Pharmingen クローン7G3 #558714 PerCP−Cy5.5)、hCD14(eBioscience クローン61D3 #25−0149 PE−Cy7)、hCD40(eBioscience クローン5C3 #11−0409 FITC)、hCD80(Biolegend クローン2D10 #305216 AF647)およびhCD86[BD Pharmingen クローン2331(FUN−1) #555658 PE]を用いて染色した。
【0130】
インビトロでのT細胞増殖、反応性選択および養子移入実験:
腫瘍浸潤白血球(TIL)は、他で報告されているように(例えば、Dudley, M.E., et al. 2003. J Immunother 26:332-342およびRiddell, S.R., and Greenberg, P.D. 1990. J Immunol Methods 128:189-201を参照のこと)、最初に、高濃度の組み換え体ヒトインターロイキン2(rhIL−2,600IU/ml)を用いて培養した異なる処置群に由来する腫瘍片から増殖させた。簡単に説明すると、異なる処置群に由来する腫瘍片(〜2x2mm)を、5%のヒト血清(Valley Biomedical Inc #1017)および600I.U./mlのhIL−2(PeproTech #AF−200−02)を補充したAIMV培地(GIBCO#12055)中に入れた。指数関数的に増殖するまで、培地の半分を3日ごとに交換し;培地は、細胞の濃度を1mLあたり〜5x10〜1x10細胞の範囲内に保ちながら必要に応じて分配した。十分な数の細胞を得たら、全ての培養物は、インビトロでOVCAR5反応性について測定した。続いて、OVCAR5特異的な反応性のTILを、以前に記載された技術(例えば、Dudley, M.E., et al. 2003. J Immunother 26:332-342を参照のこと)を用いて増殖させた。簡単に説明すると、2x10個の同種の照射したフィーダー細胞(HLA−A2ヒトPBMC)を、30μg/mL OKT3抗体(eBioscience クローンOKT3 #16−0037−85)、600IU/mL rhIL−2(PeproTech #AF−200−02)および1x10 TILを合わせ、混合し、続いて175cmの組織培養フラスコにアリコートした。次いで、フラスコを、5% CO中で37℃にて直立でインキュベートした。5日目、培地の半分を、600IU/mLのrhIL−2を含有するAIMの1:1混合物と交換した。細胞密度を約0.5〜1x10細胞/mLに保つように必要に応じて培地をこれらのフラスコに加えた。各最初のウェルは、依存していないTIL培養物と考えられ、他のウェルとは別個に維持した。養子移入実験では、非ヒトCD34移植NSGマウスを、1x10個に増殖させたT細胞の静脈内(i.v.)注射30〜40日後に、5x10個のOVCAR5細胞の皮下注射で誘発した。
【0131】
サイトカイン放出および細胞毒性アッセイ:
TIL活性および特異性は、サイトカイン分泌および直接のCTLの解析によって調べた。インターフェロン−γ(IFNγ)アッセイについては、TILおよびコントロールT細胞株を共培養アッセイ前に2回洗浄して、rhIL−2を取り除いた。1x10個のTILおよび1x10個の刺激細胞を、96ウェル平底プレートの各ウェルに入れた。TIL培養物は、一般的に、OVCAR5および2つのコントロールHLA−A2メラノーマ腫瘍細胞株(526melおよび624mel)で刺激した。いくつかのウェルにおいて、MHCの独立した活性を確かめるために、標的細胞を抗HLA−A、BおよびC中和抗体(eBioscience クローンw6/32 #16−9983−85)で前もって処理した。終夜共培養し、上澄み液を回収し、IFNγ分泌をELISA(Biolegend #430102)で定量した。CTLアッセイにおいて、OVCAR5をクロム−55でパルスし、異なる比率のTIL:標的細胞を96ウェルプレート中に入れ、4時間インキュベートした。いくつかのウェルにおいて、OVCAR5は、前もって抗HLA−A、BおよびC中和抗体とインキュベートした。インキュベーション後、共培養物からの30μlの培地をLumaPlate上にスポットし、終夜乾燥させた。液体シンチレーションカウンターWallac 1450 Microbeta Plusで放射能を検出した。
【0132】
細胞生存性アネキシンV/7AAD:
アポトーシスを検出するために、腫瘍細胞をアネキシンV/7AAD(BD Pharmingen #559763)で染色した。アポトーシス細胞は、製造業者のプロトコールに従ってフローサイトメトリーによって分析した。簡単に説明すると、増殖させ、異なる処置を施したOVCAR5細胞を収集し、1200rpmで沈殿させ、続いて氷冷PBSで2回洗浄し、1x10細胞/mLの濃度で結合緩衝液(Pharmingen #51−66121 E)中に再懸濁させ;100μLの溶液(1x10細胞)を2つの5mLの培地チューブに各々移した。5μlのアネキシンV−PE(Pharmingen #51−65875Y)を各100Lの溶液に加え、軽くボルテックスをし、暗中にて室温で15分間インキュベートし、PBSで洗浄し、5μLの7AAD(BD Pharmingen #51−68981E)で10分間インキュベートし、FACSにより1時間以内に分析した。
【0133】
タンパク質抽出およびウェスタンブロット解析:
総細胞タンパク質は、溶解緩衝液[M−PER哺乳類タンパク質抽出試薬 #78501 ThermoScientific]で氷上にて30分間で抽出した。続いて、各サンプルからの50μgのタンパク質を、2xローディング緩衝液中で100℃にて5分間変性させ、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)ゲル上で分離し、続いてニトロセルロース膜上にトランスファーした。続いて、該膜を5%脱脂乳中にて室温で2時間インキュベートし、一次抗体(Cell Signaling #3210 ラビット)と4℃で終夜インキュベートした。該膜を、0.5% Tween20(Sigma)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、二次抗体(BioRad 172−1019)と室温で2時間インキュベートした。タンパク質バンドをXフィルム(Bioexpress #F−9023)と共にECL(Amersham #RPN2132)を用いて可視化した。
【0134】
インビトロでヒトPBMCの抗腫瘍エフェクター機構を活性化するTLR8アゴニスト
VX−2337は、ヒトmDCおよび単球の両方を効果的に活性化する選択性の強力なTLR8アゴニストである。その活性は、主にこれらの集団に限られ、他のヒト白血球集団は、間接的な活性化により単球およびDCの活性化を生じうるが、直接的に活性化されることはない。ヒト白血球におけるTLR8活性の広範囲の効果を試験するために、健常なヒトボランティア(n=6)からの末梢血単核細胞(PBMC)を、広い濃度範囲でVTX−2337と24時間インキュベートした。VTX−2337によるTLR8活性化に用量依存的に応答して、高いレベルのTNFα、IFNγおよびIL−12p70が誘導された。よって、PBMCのTLR8活性化の優れた特徴は、細胞を介した癌に対する免疫反応において重要な役割を果たすことが知られているエフェクター介在因子を誘導することにある。その結果として、TLR8アゴニストはヒト免疫治療に有用である。
【0135】
TLR8アゴニストは、ヒトAPCを強く活性化し、NSG−HISマウスにおけるインビボでのTh1免疫活性化を促進する
VTX−2337の活性は、NSGマウスがヒトCD34臍帯血細胞で再構成される新たなマウスモデルで測定した。ヒト造血性幹細胞が骨髄を再構成し、造血が開始されると、前記動物では、ヒト免疫系(B細胞、CD3、CD4、CD8、NK、mDC、pDCおよび単球を含む)の完全な再構成が3〜4ヶ月以内に示される。VTX−2337刺激によりヒトPBMCにおいて見られる免疫刺激効果のため、NSG−HISマウスは、VTX−2337に対して高度に応答することが予想された。実際に、これらのマウスに対するVTX−2337の投与は、移植したヒトCD14+単球、CD11cのmDCおよびCD123のpDC上で多数の共刺激分子(CD83、CD86およびMHCクラスIIを含む)の表面発現で用量依存的に増加したヒトPBMCにてすでに示した免疫刺激効果を再現した。腫瘍に対する免疫応答で重要であり、TLR8の活性化にも伴うことが知られているヒトサイトカインの血液レベルの増加もまた示された。これらには、IFNγ、TNFαおよびIL−12p40が含まれる。
【0136】
TLR8タンパク質の構造は、種によって変化しており、VTX−2337がマウスにおいて活性を有するが、該分子は、ヒトTLR8に対して強力であり、選択的であるために最適であった。
【0137】
ヒトTLR8に対するVTX−2337の選択性のため、NSG−HISをヒト造血系で再構成されたマウス宿主モデルとして選択して、インビボでヒト白血球におけるVTX−2337の効果を調べた。様々な構成;血液中の総細胞の35〜75%、脾臓中の総細胞の40〜68%および骨髄中の総細胞の40〜70%を示すhCD45細胞においてヒト(h)CD45定量法によって測定されるように(図1A)、IV経路によって6週齢のNSGマウスに投与したヒト臍帯血CD34細胞の移行14〜22週間後に、高いレベルのヒト造血リンパ系細胞移植が観察された。
【0138】
インビボでVTX−2337の活性を示すために、VTX−2337は、移植後完全に再構成されたNSG−HISマウスに0.5または5mg/kgで皮下注射にて投与した。脾臓細胞を6時間後に収集して、活性化マーカーのレベルを測定した。0.5または5mg/kgのいずれかのVTX−2337で処理したマウスは、対照の未処理マウスと比較して、単球(CD45CD14)、骨髄性DC(mDC,CD45CD11c)および形質細胞様DC(pDC,CD45CD123)におけるCD83、CD86ならびにMHCクラスIIの発現の著しい増加を示した(図1B)。
【0139】
ヒトサイトカインプロファイルは、ルミネックスに基づくアッセイを用いて、VTX−2337の単一皮下注射投与(0.5または5mg/kg)後のマウス血漿において調べた(図1C)。Th1極性化サイトカイン(IFNγ、TNFαおよびIL−12p40を含む)の濃度における用量依存的な増加が6時間で観察された。IL−10血漿レベルの著しい増加もまた、対照と比較して、VTX−2337で処理した動物で検出された。よって、VTX−2337は、IL−10産生の増加も観察されたが、インビボにおいてヒト単球/DC構成物の直接的な活性、続いてヒト免疫系の強力なTh1活性を誘導した。
【0140】
PLD後のTLR8活性化は、Th1サイトカイン応答を生じる
「段階的」投与スケジュールを試し、最大耐容用量のPLD(MTD,50mg/m、腹腔内)を20〜28週齢のhCD34+移植NSGマウスに最初に投与して、腫瘍細胞の損傷および免疫原性抗原の放出を生じさせ;VTX−2337(0.5mg/kg)を5日後に投与して、APCを活性化させた。多数のサイトカインのレベルは、VTX−2337の注射6時間後に血漿中で測定した。未処理のNSG−HISは、血漿中でインターフェロンガンマ(IFNγ)を検出できないことを示した。同様に、PLD単独で処理したマウスでは、IFNγが誘導されなかったが;VTX−2337およびPLDの組み合わせで処理したマウスでは(図2)、有意レベルのIFNγが誘導され、VTX−2337単独で誘導されたIFNγレベルと同様であった(図1C)。さらに、VTX−2337およびPLDを組み合わせて処理すると、未処理の対照を超えたTNFαの上方調節を誘導し、PLDまたはVTX−2337を単独で処理した場合と同様であった。よって、PLD後の投与は、VTX−2337がTh1応答を誘導することを可能にする。重要なことに、PLDならびにVTX−2337は単独で付与された場合にIL−10の上方調節を生じるが(図2)、この効果は、当該2つの薬剤を組み合わせると弱まる(図2)。概して、これらのデータは、PLDとVTX−2337との投与の5日の間隔が、VTX−2337によって誘導されるTh1サイトカインプロファイルを維持し、さらにIL−10レベルを減少させることを示す。したがって、この組み合わせは、最適なサイトカイン応答を誘発した。PLDおよびVTX−2337の同時投与は、IFNγ応答が抑制されるように、負の相互作用を生じた。
【0141】
TNFαおよびIL−10の血漿レベルの増加は、PLDによるNSG−HISマウスの処理が免疫の活性化を誘発することを示した。この免疫活性化は、正常な細胞および腫瘍細胞の両方において「抗原細胞死」を誘導するドキソルビシンと一致し、VTX−2337によるTLR8活性が、抗腫瘍応答を高めることを支持する。VTX−2337およびPLD(登録商標)の投与は、抗炎症介在因子のIL−10の血漿レベルでの減少およびIFNγおよびTNFαレベルの増加を引き起こした。
【0142】
TLR8活性化は、インビボでPLDの抗腫瘍活性を亢進する
続いて、MTDのPLDおよび0.5mg/kg(臨床腫瘍学試験で評価できる用量に相当するマウス用量)のVTX−2337の組み合わせを用いて、腫瘍を保有するNSG−HISマウスを処置した。処置計画は、複数の14日処置周期を用いて、PLDおよびVTX−2337の薬力学的活性を利用するように設計した。腫瘍を保有するNSG−HISマウスにPLDを最初に付与して、腫瘍細胞死を誘導した。続いて、5日後に複数のVTX−2337で処置して、免疫スカベンジャー細胞(mDC、単球およびマクロファージを含む)を活性化し、死滅した腫瘍細胞を取り除いた。予想されるように、MTDのPLDは、ベヒクル対照と比較して腫瘍増殖速度の著しい減少を生じ、一方で、VTX2337単独では腫瘍増殖速度のわずか効果が見られたのみであった。当該2つの薬剤の組み合わせは、14日処置周期にわたり、PLDを単独で処置した場合より腫瘍増殖速度の著しい減少を生じた。
【0143】
ヒト卵巣癌に対するPLDとVTX−2337とを組み合わた効果の実験過程において、hCD34を移植したNSG−HIS−A2マウスに、HLA−A2適合ヒト卵巣癌細胞株OVCAR5(5x10)を接種した。腫瘍が十分に定着したら、マウス群(n=8〜9/群)をベヒクル、ドキシル単独、VTX−2337単独またはVTX−2337およびドキシルの組み合わせで処理した。興味深いことに、VTX−2337の免疫調節効果にもかかわらず、TLR8アゴニストのみで処理したマウスは、コントロール未処理マウスと同様の腫瘍増殖を示した。MTD(50mg/m,i.p.)のPLDで処理したマウスは、コントロール未処理マウスと比較して腫瘍増殖の減少を示した。重要なことに、2つの薬物間の強い正の相互作用が存在した;PLDの効果は、VTX−2337(P=0.04)と組み合わせることによって著しく高まり(図3B)、ほぼ完全に腫瘍増殖を抑制した。
【0144】
この薬の相互作用をさらに特徴づけるステップにおいて、実験終了後の各処置群から腫瘍を収集し、免疫組織化学およびフローサイトメトリーによって白血球の浸潤について評価した。相対的に少ないヒトCD45細胞は、コントロール群からの腫瘍中に存在するが(図3C)、全ての処置はCD45浸潤の増加を生じた。PLDおよびVTX−2337の組み合わせで処理したマウスからの腫瘍は、PLDまたはVTX−2337のいずれか単独のものと比較して浸潤ヒトCD45細胞の最も大きな増加を示した(図3C)。フローサイトメトリーを用いて、異なる群で腫瘍を浸潤するヒト白血球集団の組成および成熟状態をさらに特徴付けた。PLD単独では、基準線を超えた腫瘍浸潤白血球における顕著な変化は誘導されなかった。興味深いことに、TLR8アゴニストは、CD8T細胞の割合、ならびにCD69(活性化)CD3CD8T細胞の割合における総CD3T細胞の顕著な増加を誘導した。PLDおよびTLR8アゴニストの組み合わせは、同様の変化を生じた。さらに、VTX−2337、PLD単独またはそれらの組み合わせで処理したマウスにおいて、腫瘍浸潤CD40(活性化)マクロファージ(CD45CD11b)、pDC(CD45CD123)およびmDC(CD45CD11c)の増加が見られた(図3D)。興味深いことに、各薬物単独と比較して組み合わせで処理したマウスにおいて、腫瘍浸潤マクロファージのpDCに対する比率およびmDCのpDCに対する比率において相対的な増加が生じた。
【0145】
TLR8活性化はPLD後に腫瘍特異的なCTLの発生を促進する
上記の結果は、腫瘍に対するPLDおよびVTX−2337の強い正の相互作用を示す。CD8T細胞を介在する拒絶反応は、抗腫瘍免疫応答の重要な要素であり、上記相互作用を介在するメカニズムのうちの1つでありうる。重要なことに、VTX−2337およびPLDの組み合わせは、有効な腫瘍抑制を生じた。
【0146】
この相互作用を調べる過程において、T細胞浸潤の特性は、PLD、VTX−2337またはそれらの組み合わせに応じて解析した。薬物単独、PLDおよびVTX−2337の組み合わせまたはコントロール/ベヒクルで処理したNSG−HIS−A2マウスから収集した腫瘍からのTILを単離し、rhIL−2(600IU/mL)を用いて増殖させた。T細胞は、コントロールとして腫瘍を保有していないNSG−HIS−A2マウスの脾臓から単離した。
【0147】
エクスビボで増殖させたTILは、OVCAR5腫瘍を保有するNSGマウスに養子導入した(腫瘍撒種30および40日後)。ベヒクルコントロールまたはPLD処理ドナーのいずれかから単離したTIL、ならびに腫瘍を保有するレシピエントに養子導入した腫瘍を保有していないマウスの脾臓からのT細胞は、レシピエントマウスにおいて腫瘍増殖を制御できなかった(図4B)。しかしながら、PLDおよびVTX−2337の組み合わせ(「PLD/VTX−2337」または「VTX−2337/ドキシル」)で処理したマウスに由来するTILは、レシピエントマウスにおいてOVCAR5腫瘍の増殖を効率的に制御することができた(図4B)。これらの結果は、PLDおよびTLR8アゴニストは、インビボで組み合わされて効果的にT細胞抗腫瘍免疫応答を誘導することを確認する。
【0148】
TILは、インビボで腫瘍特異的CTLの存在について試験した。PLDおよびVTX−2337の組み合わせで処理したドナーマウスに由来するTILは、51Cr標識OVCAR5標的細胞を効果的に溶解し(図4A)、PLD単独で処理したドナーマウスに由来するTILは、溶解活性がより低かった。標的細胞を溶解するそれらの能力は、コントロール/ベヒクルで処理した群に由来するTILより非常に高かった。全ての処理群において、TILによる標的細胞の溶解は、抗MHCクラスI中和抗体の付加がCTLによる傷害を減少させるため、MHC−I拘束性抗原に応答するCTLによるものであった(図4C)。TILは、OVCAR5細胞またはメラノーマ細胞株のいずれかと共培養した。PLDおよびPLD/VTX−2337で処理したドナーの両方に由来するTILは、メラノーマ細胞よりOVCAR5細胞に応じて非常に多くのIFNγを放出した(図4D)。コントロール未処理マウスに由来するTILは、OVCAR5刺激に応答して最小量の特異的なIFNγを生じた。腫瘍を有していないマウスの脾臓から増殖させたリンパ球は、OVCAR5細胞に応答してIFNγ産生の細胞溶解活性を示さなかった。
【0149】
PLD/VTX−2337で処理したマウスに由来するCTL(細胞傷害性T細胞または細胞傷害性リンパ球)は、PLD単独で処理したマウスに由来するCTLより非常に高いレベルの細胞毒性活性を有し、このことは、APCのTLR8活性化が抗腫瘍特異的T細胞の発生を亢進することを確認する。CTL活性は、mAbのMHCクラスIへの付加および無関係のHLA−A2標的細胞に対する活性の欠如によって示されるように、MHCクラスI拘束性であり、OVCAR5特異的である。養子導入実験を用いて、PLD/VTX−2337処置から生じる腫瘍特異的なCTL活性の増加は、インビボで抗腫瘍活性を付与することが示された。OVCAR5で誘発30日および40日後に1x10個のT細胞を養子導入した非拘束性NSG腫瘍を保有するマウスにおいて、VTX−2337/PLD(登録商標)を投与したマウスに由来する増殖させた腫瘍浸潤細胞は、有効に腫瘍増殖を制御することができた。興味深いことに、PLD(登録商標)単独で処理したマウスの腫瘍に由来する細胞は、コントロールで処理したマウスに由来する細胞より有効ではなかった。
【0150】
結果から、VTX−2337によるAPC活性化がアントラサイクリンによって誘導される適応免疫応答の発生を高めることがさらに示される。腫瘍特異的CTLの発生がPLDを付与した場合にVTX−2337の治療効果の重要な構成成分であるが、抗腫瘍活性を有するメディエーターの放出は、補完的でありうる。高いレベルのIFNγの放出は、NK細胞を活性化し、腫瘍細胞の溶解を増加することができる。VTX−2337によるIL−12の放出はまた、腫瘍に対する免疫応答の発生の成功に重要な意味を持つ。このメディエーターは、NK細胞を活性化し、抗血管形成経路を増強し、Th1およびCTL応答を増加させることが報告されており、TNFαによって亢進される直接的な抗腫瘍活性を有する。よって、VTX−2337によるTLR8の選択的な活性化によって誘導されるメディエーターは、OVCAR5腫瘍細胞に対する直接的な活性について測定した。
【0151】
TNFαは、TLR8活性化およびPLDの間の相互作用を部分的に介在する
ドキシル/VTX−2337の組み合わせで観察される抗腫瘍活性を高めることに関連することを示すために実験を行った。新たに調製したヒトPBMCをVTX−2337(1μg/ml)または抗CD3/28ビーズで活性化させ、培地を6時間後に収集した。OVCAR5細胞を培地に暴露し、アポトーシスを24時間で測定し、細胞生存率を48時間で測定した。
【0152】
腫瘍特異的CTL以外に、TLR8活性化はまた、腫瘍細胞に直接作用してアポトーシスを誘導することができる自然抗腫瘍応答(TNFファミリーのメンバーなどの可溶性メディエーターの放出を含む)にも関連しうる。TLR8活性化は、図1に示すように、高いレベルのTNFαの産生に関連するため、TNFαは、VTX−2337の効果のメディエーターである可能性がある。OVCAR5細胞におけるTNFα受容体1(TNFR1)の発現は、ウェスタンブロットによって試験し、実証した(図5C)。OVCAR5細胞のTNFαに対する感受性試験の間、細胞は20ng/mlのTNFα(細胞毒性効果を直接発揮する用量)で24時間インキュベートした。TNFR1を発現しているにもかかわらず、OVCAR5細胞は、アネキシン−Vおよび7AAD染色によって測定されるように(図5D)、TNFα介在アポトーシスに耐性を示した。
【0153】
腫瘍細胞は、FADD様IL−1h変換酵素(FLICE)様抑制タンパク質またはFLIPPの過剰発現を介してTNFα介在アポトーシスに耐性を有しうる。FLIPは、長い型(FLIP,55KDa)および短い型(FLIP,28KDa)の両方で存在することができ、異なる細胞タイプにおいてTNFαファミリーメンバー(TNFαおよびTRAILを含む)によって誘導されたアポトーシスを阻害することができる。OVCAR5細胞は、FLIPの55Kd型であるFLIPを発現した(図5E,CTRLレーン:コントロール未処理細胞)。
【0154】
ドキソルビシンは細胞死を誘発し、インビボでのその活性はVTX−2337によって高められるため、ドキソルビシンがOVCAR5細胞をTNFαで誘発されたアポトーシスに対してより感受性にすることを試験した。OVCAR5細胞は、コントロール培地またはPLDを1μg/mLで含有する培地で前もって24時間インキュベートし、続いてコントロール培地またはTNFα(20ng/ml)を含有する培地で12時間インキュベートした。TNFαおよびドキシル単独では、最小のアポトーシスが誘導され、細胞がこれらの2つの薬剤の組み合わせで処理された場合、アポトーシスの顕著な増加が検出された(図5D)。OVCAR5細胞をPLDで処理することにより、ウェスタンブロットで示されるように(図5E)、FLIP発現が抑制されることが見出された。
【0155】
TNFαは、図1Cおよび図2に示されるように、VTX−2337または組み合わせ処理によってインビボで顕著に上方調節された。腫瘍細胞におけるTNFα受容体のファミリーの活性化は、カスパーゼ8の活性化を生じ、これによってアポトーシスを誘導することができる。OVCAR5細胞は、TNFα受容体1を発現することが見出されたが、TNFαのみにほぼ完全に耐性を有した。しかしながら、OVCAR5細胞を単一薬剤と比較して組み合わせ薬剤で処理した場合、アポトーシスの増加が検出された。ドキソルビシンは、DNAに挿入されてDNA複製を妨げ、翻訳を阻害して高分子の生合成を阻害し、ROSの産生によりDNAを損傷させることによって細胞を死滅させる。PLDで前処理したOVCAR5細胞によるFLIP発現の阻害も示し、このことにより、新たなタンパク質合成の妨げがこれらの腫瘍細胞をTNFファミリーメンバーによって介在されるアポトーシスに対してより感受性を与えることが示される。
【0156】
要するに、ドキソルビシンによって介在される腫瘍の細胞死は、免疫学的にサイレントではなく、免疫系の活性化および腫瘍細胞の制御に関与する適応免疫応答の発生が介在する。しかしながら、ドキソルビシンの活性はまた、免疫系細胞傷害による防御免疫応答の発生をも損ないうる。予想外なことに、TLR8アゴニストVTX−2337を治療計画に加えると、腫瘍を保有するNSG−HISマウスを用いた新規な卵巣癌マウスモデルにおいて、PLD(登録商標)の抗腫瘍効果を高めることがわかった。VTX−2337で処理すると、免疫細胞の腫瘍への遊走を増加させ、OVCAR5細胞をインビトロで溶解し、インビボで腫瘍増殖を制御できる腫瘍特異的CTLの発生を高めることがわかった。TLR8の活性はまた、抗腫瘍活性を有する複数のメディエーター(TNFα、IL−12およびIFNγを含む)の放出を生じ、抗腫瘍応答をさらに高めることができる。TLR8活性を生じる高レベルのTNFαは、OVCAR5細胞に直接作用して、アポトーシスを誘導できるが、前記細胞は、タンパク質合成におけるドキソルビシンの効果のため、このアポトーシス経路により感受性を有するようになる。よって、これらの結果は、免疫療法が卵巣癌における現在の癌治療の効果を増加させることができることを示す。進行性の再発した卵巣癌を有する患者のための二次治療としてPLD(登録商標)と組み合わせたVTX−2337の実験は、現在継続中である。
【0157】
実施例2:VTX−2337の効力および選択性
【0158】
TLR8およびTLR7のVTX−2337活性の半数効果濃度(EC50)は、15人の健常なドナーに由来する末梢血単核細胞(PBMC)およびTLR8またはTLR7およびNF−κB駆動レポーター遺伝子でトランスフェクトしたHEK293細胞中でも測定した。図6に示されるように、PBMCにおいて、VTX−2337で刺激したTNFα産生(74nMのEC50を有するTLR8活性のマーカー)およびIFNα産生(EC50>3,333nMを有するTLR7活性のマーカー)は、VTX−2337がTLR7と比較してTLR8に対して>45倍の選択性を有することを示す。TLR7およびTLR8のHEK293形質転換体からのデータは、TLR8について70nMおよびTLR7について2,005nMのEC50を有するPBMCを用いて得たデータに密接に相関した。VTX−2337は、25μMまでの濃度でTLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6またはTLR9に対して活性を有さないことが観察された。
【0159】
実施例3:VTX−2337は、ヒト全血中の様々なサイトカインおよびケモカインを活性化する
【0160】
VTX−2337の免疫刺激特性は、炎症プロセスに関連する98個の異なる分析物(サイトカイン、ケモカインおよびTLR7/8活性に応じて白血球によって作り出される他のタンパク質を含む)のレベルを定量するために、human multiple analyte panel(MAP),version 1.8(Rules Based Medicine)を用いて特徴付けした。全血は、6人の正常なヒトボランティアから収集し、Instant Leukocyte Culture Systemを用いて、VTX−2337を0.1、0.3、1.0および3.0μMの濃度でインビトロにて活性化した。VTX−2337と共培養して、図7に示されるように、多くの免疫メディエーター(TNFα、IL−12p40、IL−1βおよび MIP−1βを含む)で用量依存的な増加を生じた。
【0161】
実施例4:VTX−2337は、単球および骨髄性樹状細胞(mDC)を活性化するが、形質細胞様樹状細胞(pDC)を活性化しない
【0162】
VTX−2337の細胞特異性を評価するために、健常なドナーに由来するヒトPBMCを0.8μM VTX−2337で刺激し、PBMC中に存在する特異的な細胞サブセットの産生細胞内サイトカインをフローサイトメトリーで測定した。図8に示されるように、データは、単球(CD14+)、pDC(CD123+)およびmDC(CD11c+)中のIL−12、TNFαおよびIFNαに陽性である細胞の割合として表す。各データポイントは、各ドナー(n=10)からの応答を表す。水平バーは、その群の平均を表す。IL−12およびTNFαの細胞内レベルは、TLR8の細胞発現パターンと一致して、VTX−2337で処理した単球およびmDCで上昇したが、pDCでは上昇しなかった。
【0163】
実施例5:VTX−2337の第I相臨床試験
【0164】
用量漸増試験は、進行性の固形腫瘍またはリンパ腫にかかっている成人患者に投与した場合、VTX−2337の安全性、忍容性および薬理を評価するために実施した。この試験の主な目的は、VTX−2337の安全性および薬物動態を測定し、用量制限毒性を同定することであった。前記試験の第2の目的は、VTX−2337に対する薬力学的応答を測定し、VTX−2337を用いた単一治療周期のための最大耐容用量(MTD)を調べることであった。
【0165】
試験方法:
VTX−2337は、2周期の28日投薬周期のうちの1、8および15日目に皮下注射により1週間に1回投与した。フィボナッチ漸増スケジュールを改変して用いて、連続するコホートは、VTX−2337の0.1mg/mから3.9mg/mの範囲である用量を受容した。血漿サンプルは、最初の治療周期の最初の投薬後の薬物動態解析のために、および最初と2回目の治療周期の最初の投薬後に薬力学的解析のために収集した。
【0166】
臨床反応は、RECISTによって測定し、CR(すなわち、完全な応答)、PR(すなわち、部分的な応答)またはSD(すなわち、安定な疾患)を示す患者は、さらなる治療周期を受けた。
【0167】
患者の人口統計:
様々な後期固形腫瘍にかかっている33人の患者は、8つの連続コホートで評価した。。評価した癌の分布は以下のとおりであった:結腸直腸(n=9、または登録される患者の27%)、膵臓(n=6/18%)、メラノーマ(n=5/15%)、胆管癌(n=2/6%)、腎臓細胞(n=2/6%)、ならびに肝細胞、乳房、子宮内膜、前立腺、卵巣、舌の腺様嚢胞癌、転移性基底細胞、十二指腸および肝臓の神経内分泌癌、起源不明の腫瘍をそれぞれ有する1人の患者(3%)。VTX−2337の最初の用量の皮下投与0.5、1、1.5、2、4、8および24時間後にサンプルを収集し、VTX−2337の血漿レベルをLC−MS/MSによって定量した。VTX−2337は、投薬0.5〜0.8時間の間に平均Tmaxを生じつつ全身循環血流に急速に吸収された。VTX−2337は、1.7〜6.7時間の間の平均半減期(t1/2)で循環血流から急速に消失した。ピーク血漿レベル(Cmax)および総全身暴露量の両方は、用量の増加に伴って増加した。CmaxおよびAUC(0−∞)についての用量標準化(DN)値を算出した。一般に、評価される用量範囲に関して、VTX−2337の薬物動態は、直線であるように見える。薬物動態的結果は、下記の図9および表1に示す。
表1
【化3】
【0168】
VTX−2337に対する薬力学的(PD)応答を評価するために、血液は、VTX−2337の最初の周期の最初の投薬の皮下投与0、4、8、24時間後に収集した。免疫メディエーターの血漿レベルは、human multiple analyte panel(MAP),version 1.8(Rules Based Medicine)を用いて定量した。多くのバイオマーカー(G−CSF、MCP−1、MIP−1βおよびTNFαを含む)での用量依存的な増加が、投薬4〜8時間後に、一般的に24時間までに基底線に戻るレベルで観察された。9人の健常なボランティアから収集した血漿中のメディエーターのレベルは、腫瘍集団との比較のために示す。VTX−2337の皮下投与後の薬力学的応答は、下記の表2に示す。
表2
【0169】
VTX−2337に対する薬力学的応答は、繰り返し投与が同等の効果を生じるかどうかを評価するために、VTX−2337による一次および二次治療周期の両方の最初の投与後に測定した(1日目および29日目)。図10Aおよび10Bにおけるバーは、複数の周期のVTX−2337を受容した各コホートにおける各患者からのG−CSFおよびMIP−1βの血漿レベルを表す。VTX−2337による治療周期後の免疫応答の増強または脱感作を生じた。すなわち、薬力学的応答は、複数の治療周期について一致する。
【0170】
有害事象プロファイル:
VTX−2337は、一般に、安全であり、十分に耐容性を示した。最も一般的な薬物関連有害事象は、注射部位の反応、微熱およびインフルエンザ様症状であった。これらの観察は、免疫調節剤の投与後に予想されなかったわけではなかった。薬物に関連する血液または胃腸の有害事象は観察されなかった。
【0171】
要するに、新規のTLR8アゴニストであるVTX−2337の1週間に1回の皮下投与は、一般に安全であり、十分に忍容性を有することが観察された。すなわち、VTX−2337の血漿レベルおよびVTX−2337に対するPD応答は、用量依存的に増加し、VTX−2337の皮下投与は、自然免疫応答の活性と一致する複数の炎症メディエーター(サイトカインおよびケモカインを含む)を刺激する。
【0172】
参照による引用
本明細書で引用する特許文献および科学論文の各々の全体の開示は、出典明示により本明細書に取り込まれる。
【0173】
同等物
本発明は、その精神または必須な特性から逸脱することなく他の具体的な形態で実施することができる。よって、前記の実施態様は、本明細書に記載の発明として限定されるものではなく、むしろ例示されるものと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の明細書によるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の同等の意味と範囲内にあるあらゆる変形は、本発明に含まれるものとされる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B