(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951618
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】気相水素化からアニリンを精製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/84 20060101AFI20160630BHJP
C07C 211/46 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
C07C209/84
C07C211/46
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-534280(P2013-534280)
(86)(22)【出願日】2011年10月17日
(65)【公表番号】特表2013-543517(P2013-543517A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】EP2011068122
(87)【国際公開番号】WO2012052407
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年10月16日
(31)【優先権主張番号】102010042731.4
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・レーナー
(72)【発明者】
【氏名】クヌート・ゾンマー
(72)【発明者】
【氏名】アムガト・サラー・ムウサ
【審査官】
石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−059569(JP,A)
【文献】
特開2007−217416(JP,A)
【文献】
特開2007−217417(JP,A)
【文献】
特開2005−343898(JP,A)
【文献】
特開2008−184409(JP,A)
【文献】
特開2001−226320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C209/00−209/90
C07C211/00−211/65
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロベンゼンの気相水素化および引き続きのアニリンの精製によるアニリンの製造方法であって、
気体粗製反応生成物(11/21/31/41)を得、これを分別凝縮して少なくとも1つの部分凝縮物(PK)(12/22/32/42)および全凝縮物(TK)(111/211/311/411)、を得、
PK(12/22/32/42)の形成を生じさせる凝縮を、TK(111/211/311/411)の形成を生じさせる凝縮より高い温度において行い、
PK由来の生成物流およびTK由来の生成物流を、少なくとも2つの区域、すなわち少なくとも1つのストリッピング区域および少なくとも1つの精留区域を含む蒸留塔(T2)中へ通過させ、
PK由来の生成物流を、蒸留塔の下部区域中へ最下部ストリッピング区域および前記最下部ストリッピング区域に続く精留区域の間で導入し、およびTK由来の生成物流を、最上部精留区域より上にある蒸留塔の上部へ導入し、および
蒸留アニリン(122/222/322/422)を、蒸留塔の最下部ストリッピング区域および最上部精留区域の間での側留中において取り出すことを特徴とする、方法。
【請求項2】
PK由来の生成物流は、分別凝縮において得られる部分凝縮物(42)であり、および
TK由来の生成物流は、TK(411)またはTKを含むプロセス生成物(4111/41111)の水性相および有機相への相分離により得られる有機相(414)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PK由来の生成物流は、PK(12/22/32)またはPKを含むプロセス生成物(161/261/361)と塩基水溶液(17/27/37)との混合および引き続きの水性相および有機相への相分離後に得られる有機相(117/217/317)であり、および
TK由来の生成物流は、TK(111/211/311)またはTKを含むプロセス生成物(2111/3111)と水性相(112/212/312)との混合および引き続きの水性相および有機相への相分離後に得られる有機相(116/214/316)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
蒸留塔(T2)から側留において取出したアニリン(422)を、塩基水溶液(432)と混合し、および酸性不純物を除去したアニリン(434)を、相分離により得る、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトロベンゼンの気相水素化により製造されたアニリンを、気体形態で得られる粗製反応生成物の分別凝縮により、少なくとも2つの液体プロセス生成物、部分凝縮物(PK)および全凝縮物(TK)が得られるように精製するための方法であって、PKの形成を生じさせる凝縮を、TKの形成をもたらす温度より高い凝縮において行い、PK由来の生成物流およびTK由来の生成物流をそれぞれ、少なくとも1つのストリップ区域および少なくとも1つの精留区域から構成される蒸留塔中へ通過させ、PK由来の生成物流を、最下部のストリップ区域および
該最下部ストリッピング区域に続く精留区域の間で蒸留塔のより低い区域中へ誘導し、TK由来の生成物流を、最上部の精留部より上にある蒸留塔の上部中へ導入し、所望の精製アニリンを、蒸留塔の最下部の蒸留区域および最上部の精留区域の間での
側留中において取出す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族アミンは、安価におよび多量に利用可能でなければならない重要な中間体である。アニリン、特に工業的に重要である芳香族アミンは、本発明による方法により優れた方法で精製することができる。アニリンは、ジフェニルメタン系列のジ−およびポリ−イソシアネート(MDI)の製造において重要な中間体であり、一般にニトロベンゼンの触媒水素化により工業規模で製造される。極めて大きい生産量を有する装置は、その目的のためにカバーできるように構築されなければならない。ニトロベンゼンの水素化は好ましくは、気相中で、固定された不均一担持触媒、例えば酸化アルミニウムまたは炭素担体上のPd等上で、固定床反応器中で、2〜50バールの絶対圧および250〜500℃の範囲の温度においてガス再生モードにおける断熱条件下で行う(EP−A−0696573、EP−A−0696574およびEP−A−1882681参照)。「ガス再生モード」は、必要に応じて再生ガスの更なる気体成分(例えば脱アミノ化反応により触媒上に形成されたアンモニア等)を一定に保つために流用した少量を除いて粗製反応生成物中に含まれる非凝集性ガス(すなわち、水素化の間に反応しない実質的水素および任意の添加不活性ガス)を反応中へフィードバックすることを意味する。
【0003】
アニリンの製造では、水および有機副生成物もまた目標生成物に加えて形成される。未反応ニトロベンゼンの量が製造プロセスに応じて更に存在し得る。このような有機2次成分ならびに未反応ニトロベンゼンは、アニリンが更に使用される前に分離されなければならない。有機副成分および任意の未反応ニトロベンゼンは、次の2つの群へ分けられる:a)「低ボイラー」、すなわちアニリンの沸点(b.p.=184℃)未満の沸点を有する個々の成分の化合物または共沸性混合物の群、およびb)「高ボイラー」、すなわち、アニリンの沸点より高い沸点を有する個々の成分の化合物または共沸性混合物の群。従ってニトロベンゼン(b.p.=211℃)は高ボイラーの群に属する。
【0004】
従って、ニトロベンゼンの気相水素化設備の粗製生成物流は、以下を含む:
・アニリン、
・プロセス水(すなわち、反応に形成された水および出発ガス流へ必要に応じて添加した水に合計)、
・非凝集性ガス(過剰の水素(任意に、ガス状不純物、例えばメタン、酸化炭素等を含有)、および任意に、例えば添加窒素の選択性を向上させるための添加不活性ガス、EP−A−1882681参照、および任意にガス状副生成物、例えば脱アミノ化反応からのアンモニアを含有))
・低ボイラー、および
・高ボイラー(任意に未反応ニトロベンゼンの量を含有してもよい)
【0005】
低ボイラーの群の例は、ベンゼン(b.p.=80℃)であり、および高ボイラーの群の例は、ジフェニルアミン(b.p.=302℃)である。アニリンは、例として記載の2つの不純物から容易に分離することができるが、2つの不純物の沸点は、アニリンの沸点(ΔT
s=104Kおよび118K)とは極めて異なっているからである。他方では、生成物の凝縮後に、アニリンを再び蒸発および凝縮することを必要とさせるのは、まさに高ボイラーであり、その存在は、特に問題である。
【0006】
さらに、特定の困難性は、沸点がアニリンの沸点と極めて類似している副生成物の分離であるが、ここでは蒸留の間の支出が多量であるからである。ここで、フェノール(b.p.=182℃)の分離は、蒸留技術にとって大きな課題を示すが、これは、投資およびエネルギーについて対応して高い出費を伴う多くのプレートおよび高い還流比を有する長い蒸留塔の使用に反映される。
【0007】
フェノールヒドロキシ基を有する化合物、すなわち、少なくとも1つのヒドロキシ基(−OH)を芳香族環上に直接有する化合物は、一般に、アニリンの仕上げにおいて問題となることがある。既に記載したフェノールに加えて、特定の記載は、種々のアミノフェノールから構成され得る。
【0008】
従って、アニリンの精製は、些細な事項ではなく、重要な工業重要性を有する。特に、多くの試みが、フェノールヒドロキシ基を有する化合物と関連した記載の問題に取り組まれる。この解決策は、フェノールヒドロキシ基を有する化合物を、適当な塩との反応により対応する塩に変換することであり、該塩は、不揮発性化合物として、実質的に、容易に分離される。
【0009】
従って、JP−A−49−035341、US−A−2005080294、EP−A−1845079およびEP−A−2−028176は、芳香族アミンを、塩基の存在下で蒸留する方法を開示する。この手順では、固体析出、汚染および/または顕著な粘度の上昇の問題が、複雑および/または費用のかかる手段により防止されなければならない。
【0010】
蒸留の間のアニリンからのフェノールヒドロキシ基を有する化合物の除去に代わる手段として、JP−A−08−295654は、希釈アルカリ性水酸化物水溶液での抽出を記載する。この方法の欠点は、高いNaOH消費およびアルカリフェノラートを含有する極めて多量の排水の形成(アルカリ水酸化物溶液の低濃度による)である。
【0011】
EP−A−1845080は、濃度および温度が、水性相が引き続きの相分離においてより低い相を常に示すように調節される、濃度>0.7質量%を有するアルカリ金属水酸化物水溶液での抽出によるアニリンの精製方法を記載する。
【0012】
JP−A−2007217405は、フェノール含有アニリンを、水性相中のアルカリ金属水酸化物の濃度が0.1質量%〜0.7質量%となるような量で少なくとも2回、アルカリ金属水酸化物水溶液と接触させる方法を記載する。
【0013】
JP−A−2005350388は、極めて一般的にアニリン仕上げの改良に関する。アニリン蒸留塔の底部生成物の一部を、そこから取出し、すなわち、塔の実際の蒸発器とは異なる第2蒸発器中において別個にガス相へ変換する方法を記載する。こうして得られた気相は、純粋アニリンカラム中へフィードバックされ、蒸発することができなかった高ボイラー画分は分離される。この方法の欠点は、低ボイラーおよび水が、装置について複雑な方法において更なる蒸留により脱水カラム中で実際のアニリン蒸留塔の上流で分離されなければならないことである。
【0014】
記載の出版物は、再び蒸留法により蒸発および凝縮されなければならないアニリンの割合を低減させる方法を議論しない。精製すべきアニリンが気相法に由来する場合には、これは、次の先行技術に従い2つの凝縮物を更に通過する:まず、ガス状形態で得られた反応生成物をできるだけ完全に凝縮し、水性相を分離し、得られる有機相を蒸留し、すなわち、所望の生成物を(i)凝縮し、(ii)蒸発し、および(iii)再び濃縮し、これは、エネルギーおよび装置について極めて効果であり、かなりの熱応力をアニリンについてもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0696573号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0696574号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1882681号明細書
【特許文献4】特開昭49−035341号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2005080294号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1845079号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第2−028176号明細書
【特許文献8】特開平08−295654号公報
【特許文献9】欧州特許出願公開第1845080号明細書
【特許文献10】特開2007217405号公報
【特許文献11】特開2005350388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、アニリンそれ自体の最小割合だけが蒸発および再び凝縮されなければならず、およびフェノールヒドロキシ基を有する化合物の分離が、有益なアニリンの最小損失で可能な限り効率的に行われる、気相水素化からのアニリンを精製するための方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、アニリン、プロセス水、非凝縮性ガス、低ボイラーおよび高ボイラーからなる気体粗製反応生成物を得、反応生成物を、分別凝縮して少なくとも2つの、好ましくは2つだけの液体プロセス生成物、すなわち、少なくとも1つの、好ましくは1つの部分凝縮物(PK)および合計凝縮物(TK)を得る、ニトロベンゼンの気相水素化、および引き続きのアニリンの精製によるアニリンの製造方法であって、
PKの形成を生じさせる凝縮を、TKの形成を生じさせる凝縮より高い温度において行い、PKは、高ボイラーの大部分を含むが、TKは、低ボイラーの大部分およびアニリンの大部分およびプロセス水の大部分を含み、
PK由来の生成物流およびTK由来の生成物流を、少なくとも2つの区域、すなわち、1つのストリッピング区域(AT)および少なくとも1つの精留区域(VT)を含む蒸留塔中へ通過させ、
PK由来の生成物流を、蒸留塔のより低い区域中へ最下部のストリッピング区域および
該最下部ストリッピング区域に続く精留区域の間で導入し、TK由来の生成物流を、最上部の精留区域の上にある蒸留塔の上部中へ導入し、
蒸留アニリンを、蒸留塔の最下部区域の蒸留区域および最上部の精留区域の間の
側留において取出すこと
を特徴とする方法により達成された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0019】
該方法は、以下の好ましい実施態様により説明され、2つだけの凝縮物流(PKおよびTK)の形成に関する。当業者が、本発明の方法が、2以上の凝縮物流を、例えば複数の部分凝縮段階PK1、PK2等を、可能な限り完全に最後の凝縮段階(TK)の上流に与えることによって含むように本発明の方法を変更することは簡単である。
【0020】
本発明の方法の最も簡単な実施態様では、PK由来の生成物流は、分別凝縮において得られ、すなわち、これはPKそれ自体と同一であり、およびTK由来の生成物流は、TKまたはTKを更なる生成物流と組み合わせることにより得られるTKを含むプロセス生成物(
図4および関連する説明を参照)の、水性相および有機相への相分離により得られることにより得られる有機相である。
【0021】
正確な分離タスクに応じて(すなわち、最終的には、製造方法により変化する2次生成物スペクトルに応じて)、酸性不純物、特にフェノールヒドロキシル基を有する化合物を他に可能である場合より完全に除去するために、アニリンを塩基で処理することは有利であり得る。このような場合には、PK由来の生成物流は、好ましくは、PKまたはPKと更なる生成物流とを組み合わせることにより得られるPKを含むプロセス生成物(
図1〜3および関連する説明を参照)と、塩基水溶液との混合、および引き続きの水性相および有機相への相分離後に得られる有機相である。同様に、TK由来の生成物流は、このような場合には、TKまたはTKを含むプロセス生成物(
図2〜3および関連する説明を参照)と、塩基水溶液との混合および引き続きの水性相および有機相への相分離後に得られる有機相である。
【0022】
特に好ましくは、この実施態様では、PKまたはPKを含むプロセス生成物は、塩基水溶液との混合前、混合中または混合後に、単一段階法または多段階法において、水と、または流れAの全質量を基準として少なくとも50質量%の水、好ましくは少なくとも80質量%の水、特に好ましくは少なくとも90質量%の水を含む流れAと、PK由来の生成物流の食塩負荷を可能な限り減少させるために更に混合する。最も特に好ましくは、流れAは、TKまたはTKを含むプロセス生成物と塩基水溶液とを混合し、次いで水性相および有機相中へ相分離した後に得られる水性相である。
【0023】
同様に、TKまたはTKを含むプロセス生成物と、塩基水溶液との混合前、混合中または混合後に(相分離前であるが)、単一段階法または多段階法において、水と、または流れBの全質量を基準として少なくとも50質量%の水、好ましくは少なくとも80質量%の水、特に好ましくは少なくとも90質量%の水を含む流れBとを更に混合することが好ましい。または、TKまたはTKを含むプロセス生成物と塩基水溶液との混合および引き続きの相分離後に得られる有機相を、単一段階法または多段階法において、水で、または少なくとも50質量%の水、好ましくは少なくとも80質量%の水、特に好ましくは少なくとも90質量%の水を含む流れBで洗浄することも可能である。いずれの場合にも、流れBとして、好ましくは蒸留塔の頂上にて除去した気体相の液体凝縮物流または蒸留塔の頂上にて除去した気体相の液体凝縮物流を含むプロセス生成物を用いる。「蒸留塔の頂上にて除去した気体相の液体凝縮物流を含むプロセス流」は、最も特に好ましくは、アニリン−水共沸性混合物(これは、水ストリッパー中へ、PKまたはPKを含むプロセス生成物と塩基水溶液とを混合した後の相分離により得られる水性相を導入することにより得られる)を蒸留塔の頂上にて除去した気体相の全凝縮物へ添加することにより得られるプロセス生成物である。
【0024】
あるいは、アニリンの塩基水溶液での処理は、蒸留後に行うこともできる。この実施態様では、PK由来の生成物流は、好ましくは、PKそれ自体と同一であり、およびTK由来の生成物流は、好ましくは、TKを含むプロセス生成物(
図4および関連する説明を参照)の水性相および有機相への相分離により得られる有機相である。蒸留塔から
側留において取出したアニリンを、塩基水溶液と混合し、酸性不純物が激減したアニリンを相分離により得る。
【0025】
本発明による蒸留塔は、少なくとも2つの区域、ストリッピング区域および精留区域を含んでなる。従って、最も単純な場合には、PK由来の生成物流を2つの区域の間に導入し、TK由来の生成物流を、精留区域より上にある塔の上部へ通過させる。蒸留塔が2以上の区域を含む場合には、PK由来の生成物流を、好ましくは、最下部のストリッピング区域および一般に精留区域であるその後の区域の間に導入する。これらの区域(図参照)、AT(=最下部のストリッピング区域、この実施態様ではストリッピング区域のみ)、VT1(=ATに続く精留区域)およびVT2(最上部精留区域)の場合には、TK由来の生成物流をATおよびVT1の間に導入し、TK由来の生成物流を、VT2より上にある塔の上部に導入する。区域の数は、3より多くてもよい。
【0026】
本発明の方法の可能な実施態様を、より詳細に、以下、
図1により説明する。
【0027】
図において:
(本明細書では、物質流の参照数の最初の番号は、関連する図を示す。本発明の異なった実施態様からの同じまたは同等の物質流の場合には、当該参照数の最初の番号に続く数が同じである。)
【0029】
まず、アニリン、プロセス水、非凝縮性ガス、低ボイラーおよび高ボイラーからなる気体反応生成物、流れ11をワッシャーT1中へ通過させる。流れ13は、T1の上部において回収し、および凝縮器CC1中において60℃〜160℃、好ましくは80℃〜140℃、特に好ましくは100℃〜120℃の温度へ冷却する(PKの形成をもたらす凝縮)。絶対圧は、1バール〜50バール、好ましくは2バール〜20バール、特に好ましくは2バール〜10バールである。
【0030】
こうして得られた流れ14は、分離器V1において気相および液体相へ分離する。T1の上部中へフィードバックされた流れ15は、この実施態様では、V1の底部において除去した液体相である。こうして、T1において高ボイラーを多く含む液体プロセス生成物(PK)が形成され、これは底部にて取出される(流れ12)。高ボイラー(好ましくは90質量%〜100質量%の流れ11に含まれる高ボイラー)を含むのと同様に、流れ12(PK)はまた、アニリン(好ましくは0.1質量%〜35質量%の流れ11に含まれるアニリン)、低ボイラー(好ましくは<1質量%の流れ11に含まれる低ボイラー)およびプロセス水(好ましくは<5質量%の流れ11に含まれるプロセス水)の画分を含む。流れ12は、好ましくは冷却器C1を通過した後(この場合、流れ16)を、単一段階法または多段階法において、塩基水溶液17および水(示されていない)または少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも80質量%、特に好ましくは少なくとも90質量%の水を含む流れA(好ましくは流れ113)と混合し、デカンターD1へ供給する。水または少なくとも50質量%の水を含む流れとの混合は、塩基溶液との混合前、混合と同時に、または混合後に、好ましくは混合後に行うことができる。
【0031】
全ての水溶性塩基化合物、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩等は、原則として、本発明の塩基水溶液の製造に適している。水中での水酸化ナトリウムの溶液は、塩基溶液として好ましく用い、水酸化ナトリウムの質量含有量は、水酸化ナトリウム溶液の全質量を基準に少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも20%、最も特に好ましくは少なくとも30%である。極めて特に好ましくは、市販の32%水酸化ナトリウム溶液を用いる。塩基と全てのフェノールヒドロキシ基の合計とのモル比は、少なくとも1:1であるが、モル過剰の塩基を好ましく用いる。20:1以下、好ましくは15:1以下、特に好ましくは10:1以下のモル過剰の塩基と全てのフェノールヒドロキシ基の合計とを維持する。多段階塩基処理の場合には、モル比は、好ましくはいずれの段階においても維持する。所望の塩基とフェノールヒドロキシ基の合計との比を確立させ得るために、処理すべきプロセス流の組成は、知られていなければならない。従来使用される分析法により、好ましくはガスクロマトグラフィにより決定する。用いるべき塩基の性質および量に関する上記の詳細は、本発明の方法の全ての実施態様に当てはまる。塩基処理および水で洗浄することにより得られた2相プロセス生成物は、デカンターD1において、当業者に既知の相分離に付し、塩(フェノールヒドロキシ基を有する化合物の過剰の塩基および塩)を、ほとんど乃至完全に水性相中に残す。水性相(流れ126)は、好ましくは、排水処理、特に好ましくは排水ストリッパーへ供給する。
【0032】
V1の上部から取出したガス流18を凝縮器CC2において凝縮して液体プロセス生成物(TKの形成を生じさせる凝縮)を残存気相に加えて形成させる。凝縮温度は、経済的境界条件により影響される:余りに高い温度は、望ましくない生成物損失を生じさせ、余りに低い温度は、許容できないエネルギー出費を凝縮のために生じさせる。従って、実際に選択される凝縮温度は、妥協を表し、好ましくは25℃〜90℃、特に好ましくは30℃〜80℃、極めて特に好ましくは40℃〜70℃である。このプロセス工程では、アニリンが凝縮するだけではなく、水および低ボイラーも凝縮し、場合により同伴高ボイラーの少量も凝縮する。絶対圧は、1バール〜50バール、好ましくは2バール〜20バール、特に好ましくは2バール〜10バールである。
【0033】
CC2から出る流れ19は、分離器V2へ液体相および気相を分離するために通過させる。気相は、反応からの過剰の水素を含有し、好ましくは、芳香族ニトロ化合物還元中へ再生ガス(流れ110)としてフィードバックする。流れ111として取出した液体プロセス生成物(TK)は、好ましくは更なる冷却器C3を通過させた後、単一段階法または多段階法において塩基溶液(流れ112)と混合し、好ましくは、流れ17と同じ型の塩基溶液を用い、および好ましくは、モル過剰の塩基は、流れ12または流れ16(好ましい実施態様では)の塩基処理におけるものと同じである。好ましくは、塩基で処理すべき流れの分析を、流れ12または流れ16(好ましい実施態様では)の場合と同じ方法により行う。多量のアニリン(好ましくは65質量%〜99.9質量%の流れ11に含まれるアニリン)、多量の低ボイラー(好ましくは99質量%〜100質量%の流れ11に含まれる低ボイラー)および多量のプロセス水(好ましくは95質量%〜100質量%の流れ11に含まれるプロセス水)に加えて、流れ111(TK)は、少量の同伴高ボイラー(好ましくは<10質量%の流れ11に含まれる高ボイラー)を含有してもよい。次いで2相プロセス生成物を、デカンターD2において当業者に既知の相分離に付す。これにより得られた水性相は、フェノールヒドロキシ基を有する化合物の塩および過剰の塩基を部分的乃至完全に含む。水性相は、D2から取出す(流れ113)。本発明の方法の特に好ましい実施態様では、流れ113は、少なくとも50質量の水を、流れ16を流れ16の塩基処理前、塩基処理中または塩基処理後に洗浄するために含む流れAとして好ましく用いる。
【0034】
アルカリ処理は、デカンターD2において、塩基水溶液112での単一段階処理または多段階処理として行うことができる。D2における相分離により得られる有機相は、D2から取出し(流れ114)、好ましくは塩の最終残渣をも除去するために、単一段階法または多段階法において水(
図1に示されていない)または少なくとも50質量%の水、好ましくは少なくとも80質量%の水、特に好ましくは少なくとも90質量%の水を含む流れB(=120)中で洗浄する。この方法により得られた2相プロセス生成物は、デカンターD3において、当業者に既知の相分離へ付す。デカンターD3における洗浄は、単一段階洗浄または多段階洗浄として行うことができる。洗浄からの水性相(流れ115)は、この実施態様において取出し、次いで好ましくは流れ115を更に精製しおよび該流れに含まれるアニリンを回収する更なるプロセス段階(示されれていない)へ供給することができる。残存する水性画分を排水処理へ供給する。
【0035】
蒸留塔T2は、好ましくは、上部精留区域、中部精留区域および下部ストリッピング区域ならびに蒸発器Hv1からなる。
【0036】
最下部ストリッピング区域および
該最下部ストリッピング区域に続く精留区域の間の蒸留塔T2の下部区域中へ導入したPK由来の生成物流は、この実施態様では、D1において得られる有機相である。好ましくは、予熱器H1において100℃〜180℃へ加熱し、次いでT2(流れ117)へ導入する。
【0037】
最上部の精留区域より上の蒸留塔T2の上部へ導入したTK由来の生成物流は、この実施態様では、D3(流れ116)において得られる有機相である。流れ116は、好ましくは、30℃〜60℃の温度を有する。
【0038】
アニリンは、
側留(122)として蒸留塔から回収する。アニリンの一部(好ましくは10質量%〜80質量%、特に好ましくは20質量%〜50質量%の流れ122)は、好ましくは、蒸留塔へ、ガス流をそこで低ボイラーを十分に分離させる水準において維持するためにフィードバックする。フィードバックされないアニリンの一部は、好ましくは、冷却器C4において更に冷却し、純粋アニリン流123として取出す。
【0039】
上部において取り出した流れ18は、アニリンの画分に加えて、低ボイラーおよび残存水を含んでなるが、水は、デカンターにおいて有機相における一定の溶解度により完全に分離することができないからである。凝縮器CC3を通過した後、流れ119を、V3中へ供給し、ここで、水を多く含む凝縮物(流れ120)を底部において除去する。特に好ましい本発明の方法の実施態様では、水を多く含む流れ120を、流れ114を洗浄するために好ましく用いる。従って、本実施態様では、TK由来の生成物流と塩基水溶液とを混合し、次いで相分離した後に得られた有機相を、単一段階法または多段階法において、水または少なくとも50質量%の水を含む流れで洗浄する。V3の上部にて除去したガス流(121)を排水ガス処理、好ましくは燃焼へ供給する。
【0040】
蒸留塔T2の底部生成物は、好ましくは、部分的乃至完全に取出し、蒸発器Hv1(流れ124)中へ部分的乃至完全に供給し、ここで可能な限り、再び塔の下部区域中へフィードバックする。蒸発することができない画分は、好ましくは、流れ125中において除去する。流れ125は、廃棄、好ましくは燃焼、または更なる処理(例えばアニリン製造中に2次成分として得られるジフェニルアミンのような更なる価値のある生成物を得るために)のいずれかへ供給する。
【0041】
本発明の方法の更なる好ましい実施態様を
図2に示す:
【0043】
図1に示される実施態様とは異なって、分離器V1の底部にて除去した流れをここではスプリッターS1において分け、一部(好ましくは流れ9の5〜99質量%)だけをT1の上部中へ供給する(流れ25)。残存部(流れ251)を、好ましくはC2を通過した後に、V2からの流れ211として取出した液体プロセス生成物と混合し、こうして得られた混合物(流れ2111)を、好ましくは冷却器C3を通過した後に、塩基水溶液(212)で処理する。
【0044】
D1において得られた水を多く含む流れ226は、
図1におけるような排水処理へ供給しないが、好ましくは予熱器H2を通過した後に、水ストリッパーT3(流れ227)の上部中へ通過させる。この方法では、アニリン−水共沸性混合物が得られ、これは上部にて取出し(流れ228)、凝縮器CC4において凝縮し、流れ219と混合する。T3からの底部ランニングは、流れ229より蒸発器Hv2へ部分的に供給し、ここで、これらをT3の底部区域中へ再びフィードバックする。残存する排水(流れ230)を、冷却器C5を通過した後、例えば燃焼によりまたは浄化設備により廃棄する(流れ231)。エネルギーを水ストリッパーT3について入力し、好ましくは、蒸留塔T2を蒸気により供給し、T3に用いる蒸気は、好ましくは、T2に用いる蒸気より低圧を有する。
【0045】
最上部精留区域より上にある蒸留塔T2の上部へ通過させるTKから生じる生成物流は、本実施態様では、D2において得られる有機相である(流れ214)。デカンターD3は、本実施態様では、必要ではなく、流れ220はD2中へ通過させる。流れ214は、本実施態様では、好ましくは、30℃〜60℃の温度を有する(
図1における流れ216に類似)。
【0046】
本発明の更なる好ましい実施態様を
図3に示す:
【0048】
この変法は、
図1および2に記載の方法の組み合わせであり、流れ314を、分離器V3(流れ320)から伸びるデカンターD3において洗浄する。流れ320は、この変法では、V3において組み合わせたCC3およびCC4から由来する。流れ314の洗浄は、塩基を添加するかまたは添加せずに、好ましくは添加せずに行うことができる。塩基の添加(
図3に示されていない)により洗浄する場合には、流れ32または流れ36(好ましい実施態様では)の塩基処理における塩基と同じ塩基を好ましく用いるが、好ましくはかなり少ない量および低い濃度で用いる。
【0049】
図4は、塩基処理を蒸留後に行う本発明の方法の実施態様を示す:
【0051】
最下部のストリッピング区域および
該最下部ストリッピング区域に続く精留区域の間の蒸留塔T2の下部区域へ導入したPK由来の生成物流は、この実施態様では、PK自体と同じであり、すなわち、流れ42としてT1から取出した液体プロセス生成物である。最上部の精留区域より上にある蒸留塔T2の上部へ通過させるTK由来の生成物流は、この実施態様では、
図2と同様に、D2において得られる有機相である(流れ414)。本発明のこの変法では、D2からの水性相(流れ413)を、アニリン−水共沸性混合物(ここでは428)を得るために水ストリッパー(T3)へ部分的乃至完全に通過させる。アニリン水共沸性混合物428は、凝縮器CC4を通過させた後、デカンターD2において全凝縮物を洗浄するために使用する。
【0052】
V3の底部ランニング(流れ420)は、この実施態様では、好ましくは、流れ4111と混合する。こうして得られた混合物(流れ4111)は、上記D2中へ通過させる。
【0053】
塩基水溶液432は、蒸留アニリン422へ添加する。こうして得られたプロセス生成物は、D2(流れ413)からの水性相と必要に応じて混合し、次いで、冷却器C5を通過させた後、デカンターD4中へ通過させ、酸性不純物を、80℃〜160℃の温度にて中和した。D4からの水性相(流れ437)を、T3の上部へフィードバックする。多量の水を未だ含有するD4からの有機相(流れ433)は、冷却器C7より更なるデカンターD5中へ通過させ、精製アニリン(流れ434)の含水量を可能な限り低下させるために20℃〜40℃にて相分離する。精製アニリン434は、デカンターD5において該温度でのアニリンの水の溶解度に対応して水のみを実質的に含有する。フェノールヒドロキシ基を有する化合物および他の2次成分は、僅かな量(流れ434の有機画分の質量を基準に合計<100ppm、好ましくは<50ppm、特に好ましくは<25ppm)のみ存在する。アニリンの所望の使用に応じて、そのままの状態で、または乾燥、好ましくはストリッピング(
図4に示していない)により乾燥させることができる。
【0054】
D5からの水性相(流れ436)は、T3の上部へフィードバックする。
【0055】
本発明の方法は、精製アニリンの一部のみを工程(i)凝縮−(ii)蒸発−(iii)再凝縮へ通過させるが、先行技術における従来法では、精製アニリン全体である点で先行技術と異なる。本発明の方法では、PK由来の精製アニリンの画分のみを工程(i)〜(iii)へ完全に通過させる。しかしながら、TK由来の精製アニリンの画分の一部のみを工程(i)〜(iii)へ通過させた。TK由来の生成物流に含まれ、および最上部の精留区域より上にある塔の上部へ導入するアニリンの画分は、純粋アニリン流れ中へ直接通過させ、すなわち、流れ118/218/318−119/219/319−120/220/320または418/420/4111からではなく、凝縮(i)後に再び蒸発させない。再び蒸発しなかったアニリンの画分は、好ましくは、正確な境界条件により、純粋アニリン流(123/223/323または乾燥後434)の全質量の65質量%〜99.9質量%である。その結果、エネルギーおよび装置についての出費および価値のあるアニリンへの熱応力を著しく減少させる。
【0056】
さらに、当該特定の分離タスクにより必要であれば、効果的な還元を、精製アニリン中のフェノールヒドロキシ基を有する化合物の含有量において、記載の蒸留と組み合わせた記載の塩基処理により簡単に行うことができる。
【実施例】
【0057】
以下の例は、製造設備から35000kg/時の質量流および147℃の温度にて流れ、および以下の組成を有する純粋アニリンの精製を記載する:
【0058】
【表5】
【0059】
全ての場合において、32%水酸化物溶液を、フェノールを基準として化学両論量において塩基水溶液として用いた。蒸留は、いずれの場合にも、3つの区域(底部〜上部: 下部ストリップ区域(AT)、中部精留区域(VT1)、上部精留区域(VT2))からなる、蒸発器Hv2を有する塔を用いて行う。
【0060】
実施例1(比較例:1つの凝縮工程、塩基を蒸留中に存在させる。ASPENシミュレーション)
【0061】
図5は、この実施例において用いた方法を示す。この図において:
【0062】
【表6】
【0063】
以下の条件を適用した:
CC6の下流のガス(流れ538)の温度: 60℃
T2の上部精留区域の理論プレートの数: 10
T2の中部精留区域の理論プレートの数: 9
T2の下部精留区域の理論プレートの数: 12
【0064】
この手順では、粗製アニリン流51を分別凝縮しないが、一工程において凝縮器CC2において可能な限り完全に(アニリンの95%以上)凝縮する。こうして得られたプロセス生成物(511−この方法の「全凝縮物」)を、非凝縮画分を水素化プロセスへ再生するために(流れ510より)分離器V2へ通過させる。凝縮粗製生成物全体を、C3において更に冷却し、次いでデカンター2において相分離する。こうして得られた有機相514へ水酸化ナトリウム溶液(539)を供給する。こうして得られたNaOH含有プロセス生成物540を、予熱器H3へ通過させた後に、蒸留塔T2中へATおよびVT1の間で通過させる(流れ541)。アニリン(流れ522)を、支流としてVT2およびVT2の間で取出し、およびその一部を再び塔へフィードバックする。フィードバックしない画分を、蒸気の形成を伴ってC4において冷却し、純粋アニリン流523として取出す。底部生成物の質量流、流れ524を、フェノラート塩がT2の底部において沈殿しないように調節する。T2において持ち去られる気相、流れ518を、55℃へ冷却し、気体および液体を分離するための装置(V3)へ通過させる。排出ガス(流れ521)を燃焼へ供給する。V3の液体相を、デカンターD3においてアニリンを多く含む相および水を多く含む相へ分離する。アニリンを多く含む相を、塔T2の上部へ導入する(516)。D2(流れ13)およびD3(流れ15)からの水を多く含む相を、水ストリッパー(T3)へ通過し、これを100ppm未満のアニリンを含有する水(529)および水−アニリン共沸性混合物(528)へ分離する。水−アニリン共沸性混合物(528)をCC4’(V)中で凝縮し、D3(V)へ供給する。結果を表7に集約する:
【0065】
【表7】
【0066】
示す通り、この手順は、アニリンの全体を再び高ボイラーから分離するために蒸発させる工程を含む。また、流れ525より著しいアニリンの損失をHv1におけるフェノラート塩の沈殿を防止するために受け入れなければならない。T2におけるエネルギー入力は、D3におけるエネルギー入力より高い。これは、T3の操作のために必要な蒸気より高圧の蒸気がT2の操作のために必要となるので特に不利である。T2およびT3に必要な全エネルギー入力は、8228kWにおいて極めて高い。
【0067】
実施例2(本発明による: 2つの凝縮工程、いずれの場合にも、蒸留前に塩基抽出。ASPENシミュレーション
このシミュレーションは、より詳細に
図2において上で既に説明した変法に基づいて行った。CC1において凝縮した液体の45%を、流れ5としてワッシャーT1へ通過させた。以下の条件を適用した:
CC1(流れ24)の下流のガスの温度: 118℃
T1における理論プレートの数: 6
T2の上部精留区域の理論プレートの数: 10
T2の中部精留区域の理論プレートの数: 10
T2の下部精留区域の理論プレートの数: 12
CC2における温度: 60℃
【0068】
結果を表8に集約する。
【0069】
【表8】
【0070】
示す通り、本発明による方法の使用は、T2におけるエネルギー消費および流れ225よりのアニリン損失のいずれにおいても著しい低下をもたらす。T2およびT3における全エネルギー消費は、比較例における8228kWと比べて、4924kWのみである。生成物品質は、フェノラート塩の痕跡が生成物中で生じ得る点でのみ異なるが、なお受け入れられる量である。以下の実施例は、どのようにしてこのような痕跡を僅かな値へ低減させることができるかを示す。
【0071】
実施例3(本発明による: 2つの凝縮工程、いずれの場合にも塩基抽出物および蒸留前の中性洗浄。ASPENシミュレーション
このシミュレーションは、
図3において上で既に説明した変法に基づいて行った。他の条件は、実施例2と同じである。結果を表9に集約する。
【0072】
【表9】
【0073】
示す通り、純粋アニリン流323は、フェノールおよびフェノラート不純物を実質的に含まない。T2およびT3における全エネルギー消費は、比較例における8228kWと比べて、4991kWのみである。
【0074】
実施例4(本発明による: 2つの凝縮工程、いずれの場合にも塩基抽出物および蒸留前の中性洗浄、より小さい蒸留塔。ASPENシミュレーション
このシミュレーションは、
図3において記載の方法に基づいて行った。この実施例では、塔T2は、より少ないプレートを有する。
T2の上部精留区域の理論プレートの数: 9
T2の中部精留区域の理論プレートの数: 6
T2の下部精留区域の理論プレートの数: 2
残りのパラメーターは、実施例3と同じである。
【0075】
この実施例についての背景は、T2におけるプレートの数が、最適化することができる変数であることを示すことである。本発明の方法は、プレートの数を特に減少させ、従って、生成物および固定費もまた低下させる。
【0076】
結果を表10に集約する。
【0077】
【表10】
【0078】
示す通り、プレートのより少ない数は、完全に十分である。純粋アニリン流323における高ボイラーの含有量は、実施例3と比べて更に減少する。T2およびT3における全エネルギー消費は、比較例における8228kWと比べて、4992kWのみである。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1]ニトロベンゼンの気相水素化および引き続きのアニリンの精製によるアニリンの製造方法であって、
気体粗製反応生成物(11/21/31/41)を得、これを分別凝縮して少なくとも2つの液体プロセス生成物、少なくとも1つの部分凝縮物(PK)(12/22/32/42)および全凝縮物(TK)(111/211/311/411)、を得、
PK(12/22/32/42)の形成を生じさせる凝縮を、TK(111/211/311/411)の形成を生じさせる凝縮より高い温度において行い、
PK由来の生成物流およびTK由来の生成物流を、少なくとも2つの区域、すなわち少なくとも1つのストリッピング区域および少なくとも1つの精留区域を含む蒸留塔(T2)中へ通過させ、
PK由来の生成物流を、蒸留塔の下部区域中へ最下部ストリッピング区域および引き続きの区域の間で導入し、およびTK由来の生成物流を、最上部精留区域より上にある蒸留塔の上部へ導入し、および
蒸留アニリン(122/222/322/422)を、蒸留塔の最下部ストリッピング区域および最上部精留区域の間での側流中において取り出す
ことを特徴とする、方法。
[2]PK(12/22/32/42)の形成を生じさせる凝縮を、60℃〜160℃の温度にて行い、および
TK(111/211/311/411)の形成を生じさせる凝縮を、25℃〜90℃の温度にて行う、[1]に記載の方法。
[3]PK由来の生成物流は、分別凝縮において得られる部分凝縮物(42)であり、および
TK由来の生成物流は、TK(411)またはTKを含むプロセス生成物(4111/41111)の水性相および有機相への相分離により得られる有機相(414)である、
[1]または[2]に記載の方法。
[4]PK由来の生成物流は、PK(12/22/32)またはPKを含むプロセス生成物(161/261/361)と塩基水溶液(17/27/37)との混合および引き続きの水性相および有機相への相分離後に得られる有機相(117/217/317)であり、および
TK由来の生成物流は、TK(111/211/311)またはTKを含むプロセス生成物(2111/3111)と水性相(112/212/312)との混合および引き続きの水性相および有機相への相分離後に得られる有機相(116/214/316)である、
[1]または[2]に記載の方法。
[5]PK(12/22/32)またはPKを含むプロセス生成物(161/261/361)を、塩基水溶液(17/27/37)との混合前、混合中または混合後に、単一段階法または多段階法において、水または流れAの全質量を基準として少なくとも50質量%の水を含む流れAと混合する、
[4]に記載の方法。
[6]少なくとも50質量%の水を含む流れAは、TK(111/211/311)またはTKを含むプロセス生成物(2111/3111)と塩基水溶液(112/212/312)との混合および引き続きの水性相および有機相への相分離後に得られる水性相(113/213/313)である、
[5]に記載の方法。
[7]TK(111/311)またはTK(3111)を含むプロセス生成物と塩基水溶液(112/312)との混合および引き続きの相分離後に得られる有機相(114/314)を、単一段階法または多段階法において、水または流れBの全質量を基準として少なくとも50質量%の水を含む流れBで洗浄する、
[4]〜[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8]少なくとも50質量%の水を含む流れBは、蒸留塔(T2)の上部において取出した気相(118)の液体凝縮物流(120)または蒸留塔(T2)の上部において取出した気相(318)の液体凝縮物流を含むプロセス生成物(320)である、
[7]に記載の方法。
[9]TK(211)またはTKを含むプロセス生成物(2111)を、塩基水溶液(212)との混合前、混合中または混合後に、単一段階法または多段階法において、水または流れBの全質量を基準として少なくとも50質量%の水を含む流れBと混合する、
[4]〜[6]のいずれか1つに記載の方法。
[10]少なくとも50質量%の水を含む流れBは、蒸留塔(T2)の上部において取出した気相(218)の液体凝縮物流を含むプロセス生成物(220)である、
[9]に記載の方法。
[11]蒸留塔(T2)の上部において取出した気相の液体凝縮物流を含むプロセス生成物(320)を、
水ストリッパー(T3)中へ、PK(32)またはPKを含むプロセス生成物(313)と塩基水溶液(37)との混合後に相分離により得られる水性相(326)を導入することにより得られるアニリン−水共沸性混合物(328)を、蒸留塔(T2)の上部において取出した気相(318)の全凝縮物(319)へ添加することにより得る、
[8]に記載の方法。
[12]蒸留塔(T2)の上部において取出した気相の液体凝縮物流を含むプロセス生成物(220)を、
水ストリッパー(T3)中へ、PK(22)またはPKを含むプロセス生成物(213)と塩基水溶液(27)との混合後に相分離により得られる水性相(226)を導入することにより得られるアニリン−水共沸性混合物(228)を、蒸留塔(T2)の上部において取出した気相(218)の全凝縮物(219)へ添加することにより得る、
[10]に記載の方法。
[13]蒸留塔(T2)から側流において取出したアニリン(422)を、塩基水溶液(432)と混合し、および酸性不純物を除去したアニリン(434)を、相分離により得る、[3]に記載の方法。
[14]アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の溶液を、塩基水溶液(17/27/37−112/212/312−432)として用いる、[4]〜[11]のいずれか1つに記載の方法。