特許第5951625号(P5951625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951625加齢性黄斑変性症およびシュタルガルト病の処置のための非レチノイドRBP4アンタゴニスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951625
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】加齢性黄斑変性症およびシュタルガルト病の処置のための非レチノイドRBP4アンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/451 20060101AFI20160630BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   A61K31/451
   A61P27/02
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-541006(P2013-541006)
(86)(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公表番号】特表2013-544825(P2013-544825A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011061763
(87)【国際公開番号】WO2012071369
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】61/416,961
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592104782
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コランビア・ユニバーシティー・イン・ザ・シティー・オブ・ニューヨーク
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】ペトルキーン、コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】アリークメッツ、ランド
(72)【発明者】
【氏名】スパロウ、ジャネット
【審査官】 田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/120741(WO,A1)
【文献】 J Biol Chem. 2009 Mar 20;284(12):7673-80
【文献】 Expert Opin Ther Targets. 2007 May;11(5):625-39
【文献】 J Lipid Res. 2010 Feb;51(2):247-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物におけるビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置用医薬品の製造のための、
【化1】
の構造を有する化合物またはそのエステルもしくは薬学的に許容できる塩の使用。
【請求項2】
哺乳動物におけるビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置用医薬品の製造のための、
【化2】
の構造を有する化合物または薬学的に許容できるその塩の使用。
【請求項3】
前記化合物が、前記哺乳動物においてRBP4の血清濃度を低下させるのに有効である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、前記哺乳動物においてリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための、
【化3】
の構造を有する化合物またはそのエステルもしくは薬学的に許容できる塩を含む薬学的組成物
【請求項6】
前記ビスレチノイドがA2Eである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ビスレチノイドがイソA2Eである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ビスレチノイドがA2−DHP−PEである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記ビスレチノイドがatRALジ−PEである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症が加齢性黄斑変性症である、請求項1〜4または6〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症がシュタルガルト病である、請求項1〜4または6〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症が網膜色素上皮へのリポフスチン沈着物の蓄積を含む、請求項1〜4または6〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
ビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための、
【化4】
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む薬学的組成物
【請求項14】
前記ビスレチノイドがA2Eである、請求項5または13に記載のビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための薬学的組成物。
【請求項15】
前記ビスレチノイドがイソA2Eである、請求項5または13に記載のビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための薬学的組成物。
【請求項16】
前記ビスレチノイドがA2−DHP−PEである、請求項5または13に記載のビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための薬学的組成物。
【請求項17】
前記ビスレチノイドがatRALジ−PEである、請求項5または13に記載のビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための薬学的組成物。
【請求項18】
前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症が加齢性黄斑変性症である、請求項5または13〜17のいずれか一項に記載のビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための薬学的組成物。
【請求項19】
前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症がシュタルガルト病である、請求項5または13〜17のいずれか一項に記載のビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための薬学的組成物。
【請求項20】
前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症が網膜色素上皮へのリポフスチン沈着物の蓄積を含む、請求項5または13〜17のいずれか一項に記載のビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置のための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2010年11月24日に出願された米国特許仮出願番号第61/416,961号の優先権を主張し、その内容は参考により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、National Institute of Neurological Disorders and Strokeによって与えられた助成金番号R21NS067594−01およびNational Institute of Healthによって与えられた助成金番号EY012951のもとで政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
本出願の全体を通して、特定の刊行物を括弧内に引用する。これらの刊行物の完全な引用は、特許請求の範囲の直前に見ることができる。本発明が関連する技術分野の現状をさらに十分に記載するために、これらの刊行物全体の開示は、参照により本出願に組み込まれる。
【発明の背景】
【0004】
先進国において、加齢性黄斑変性症(AMD)は失明の主因である。世界中で6290万人が最も広く認められる萎縮性(乾燥)型のAMDに罹患しており、そのうちの800万はアメリカ人であると推定されている。平均余命の延びと現在の人口統計から、この数は2020年までに3倍になると予想される。現在、乾性AMDに対するFDAで認可された治療薬はない。治療薬がないことおよび高い有病率を考慮すると、乾性AMDに対する薬物の開発は極めて重要である。臨床的には、萎縮性AMDは、黄班と呼ばれる網膜の中心部で分化した神経細胞(竿体および錐体光受容体)が死滅する、緩徐進行性神経変性障害を意味する(1)。病理組織学的および臨床的な画像診断は、乾性AMDにおける光受容体変性は、光受容体の下に位置しこれらの光感受性神経細胞に対して重要な代謝サポートをもたらす網膜色素上皮(RPE)の異常によって引き起こされることを示す。実験的および臨床的なデータは、RPEにおける細胞毒性の自己蛍光性脂質−タンパク質−レチノイド凝集体(リポフスチン)の過剰な蓄積が乾性AMDの主な誘発因子であることを示している(2〜9)。AMDに加えて、リポフスチンの著しい蓄積はシュタルガルト病(STGD)、すなわち遺伝性の若年発症型黄斑変性症の顕著な特徴である。RPEリポフスチンの主な細胞毒性成分は、ピリジニウムビスレチノイドA2Eである(図1)。さらなる細胞毒性ビスレチノイドは、イソA2E、atRALジ−PEおよびA2−DHP−PEである(40、41)。
【0005】
A2Eは、図4で説明するように非酵素的様式で網膜に生じ、適切に機能している視覚サイクルの副産物とみなすことができる、ホスファチジルエタノールアミンを有するオールトランスレチンアルデヒドの縮合産物である(10)。11−シスレチンアルデヒドがそのオールトランス型へ光誘導性異性化することは、光覚を伝達するシグナル伝達カスケードの第1段階である。視覚サイクルは、光に当たった後に視覚色素(オプシンにコンジュゲートした11−シスレチンアルデヒド)を再生する一連の生化学反応である。
【0006】
正常に機能している視覚サイクルの過程中に細胞毒性であるビスレチノイドが形成されるため、視覚サイクルの部分的な薬理学的阻害は、乾性AMDおよび過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする他の障害に対する治療戦略であることができる(25〜27、40、41)。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ビスレチノイド媒介性黄斑変性症に罹患している哺乳動物において、有効量の、
【化1】
【0008】
の構造を有する化合物、そのエステルまたは薬学的に許容できる塩を哺乳動物へ投与することを含む、ビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置方法に関する。
【0009】
本発明は、分子がレチノール誘導性RBP4−TTR相互作用のアンタゴニストであるかどうかを決定する方法にも関する。
【0010】
一態様では、この方法は以下を含む。
【0011】
i)ドナーまたはアクセプターフルオロフォアで標識されたRBP4を、ドナーまたはアクセプターフルオロフォアで標識されたTTRおよびレチノールとインキュベートすること。ここでは、RBP4がドナーフルオロフォアで標識される場合は、TTRはアクセプターフルオロフォアで標識され、RBP4がアクセプターフルオロフォアで標識される場合は、TTRはアクセプターフルオロフォアで標識される。
【0012】
ii)エネルギー供給源によってドナーフルオロフォアが励起された際に、i)の混合物中のドナーフルオロフォアについての蛍光波長とアクセプターフルオロフォアについての蛍光波長との比を決定すること。
【0013】
iii)分子を、i)のフルオロフォア標識されたRBP4、フルオロフォア標識されたTTRおよびレチノールとインキュベートすること。
【0014】
iv)エネルギー供給源によってドナーフルオロフォアが励起された際に、iii)の混合物中のドナーフルオロフォアについての蛍光波長とアクセプターフルオロフォアについての蛍光波長との比を決定すること。
【0015】
v)ステップiv)の蛍光比がステップii)の蛍光比未満であるかどうかを決定すること。
【0016】
本態様では、ステップii)未満であるステップiv)の蛍光比は、分子がレチノール誘導性RBP4−TTR相互作用のアンタゴニストであることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】網膜リポフスチンの細胞毒性成分である、ビスレチノイドA2Eの構造を示す図。
図2】網膜リポフスチンの細胞毒性成分である、ビスレチノイドatRALジ−PE(オールトランスレチナール二量体ホスファチジルエタノールアミン)の構造を示す図。R1およびR2は、様々な脂肪酸構成物を指す。
図3】網膜リポフスチンの細胞毒性成分である、ビスレチノイドA2−DHP−PEの構造を示す図。
図4】視覚サイクルおよびA2Eの生合成を示す図。オールトランスレチナールの一部が視覚サイクル(黄色のボックス)を逃れ、ホスファチジルエタノールアミンと非酵素的に反応してA2E前駆体、すなわちA2−PEが形成されるときに、A2E生合成が始まる。RPEへの血清レチノールの取り込み(灰色のボックス)はこのサイクルを刺激する。
図5】RBP4−TTR−レチノール複合体の三次元構造を示す図。四量体TTRを青、ライトブルー、緑および黄で示す。RBPを赤で示し、レチノールを灰色で示す(28)。
図6】レチノイドRBP4アンタゴニストであるフェンレチニド([N−(4−ヒドロキシ−フェニル)レチンアミド、4HRP]の構造を示す図。
図7】レチノール誘導性RBP4−TTR相互作用を乱すRBP4アンタゴニストの特性決定に関するHTRFベースのアッセイ形式の概略図を示す図。
図8】HTRFベースのRBP4−TTR相互作用アッセイにおける、オールトランスレチノール(パネルAおよびB、青)、化合物1(赤、A)およびフェンレチニド(赤、B)の用量滴定を示すグラフ。
図9】HTRFベースのRBP4−TTR相互作用アッセイにおける、オールトランスレチノールの存在下での化合物1およびフェンレチニドの用量滴定を表すグラフ。
図10】化合物1はフォトブリーチング後にERG b波を減少させないことを示すグラフ。
図11】化合物1処置に反応して、血清RBP4が減少することを示す図。
図12】化合物1による毒素ビスレチノイドの減少を示すグラフ。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明は、ビスレチノイド媒介性黄斑変性症に罹患している哺乳動物において、有効量の、本明細書で化合物1と名付けられた
【化2】
【0019】
の構造を有する化合物、そのエステルまたは薬学的に許容できる塩を哺乳動物へ投与することを含む、ビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置方法に関する。
【0020】
哺乳動物において、化合物1の量は、RBP4の血清濃度を低下させるのに有効でありうる。
【0021】
本発明のいくつかの態様では、哺乳動物において、化合物1の量は、リポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効でありうる。いくつかの態様では、ビスレチノイドはA2Eである。いくつかの態様では、ビスレチノイドはイソA2Eである。いくつかの態様では、ビスレチノイドはA2−DHP−PEである。いくつかの態様では、ビスレチノイドはatRALジ−PEである。
【0022】
好ましい態様では、ビスレチノイド媒介性黄斑変性症は加齢性黄斑変性症であってもよく、シュタルガルト病であってもよい。
【0023】
ビスレチノイド媒介性黄斑変性症は、網膜色素上皮へのリポフスチン沈着物の蓄積を含むことができる。
【0024】
本発明は、分子がレチノール誘導性RBP4−TTR相互作用のアンタゴニストかどうかを決定する方法にも関する。
【0025】
一態様では、この方法は以下を含む。
【0026】
i)ドナーまたはアクセプターフルオロフォアで標識されたRBP4を、ドナーまたはアクセプターフルオロフォアで標識されたTTRおよびレチノールとインキュベートすること。ここでは、RBP4がドナーフルオロフォアで標識される場合は、TTRはアクセプターフルオロフォアで標識され、RBP4がアクセプターフルオロフォアで標識される場合は、TTRはアクセプターフルオロフォアで標識される。
【0027】
ii)エネルギー供給源によってドナーフルオロフォアが励起された際に、i)の混合物中のドナーフルオロフォアについての蛍光波長とアクセプターフルオロフォアについての蛍光波長との比を決定すること。
【0028】
iii)分子を、i)のフルオロフォア標識されたRBP4、フルオロフォア標識されたTTRおよびレチノールとインキュベートすること。
【0029】
iv)エネルギー供給源によってドナーフルオロフォアが励起された際に、iii)の混合物中のドナーフルオロフォアについての蛍光波長とアクセプターフルオロフォアについての蛍光波長との比を決定すること。
【0030】
v)ステップiv)の蛍光比がステップii)の蛍光比未満であるかどうかを決定すること。
【0031】
本態様では、ステップii)未満であるステップiv)の蛍光比は、分子がレチノール誘導性RBP4−TTR相互作用のアンタゴニストであることを示す。さらなる態様では、この方法は、細胞のビスレチノイドリポフスチンレベルを分子が低下させるかどうかを決定するステップも含む。細胞は、網膜色素上皮細胞でもよい。
【0032】
化合物2(4−(2−(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン−1−カルボキサミド)安息香酸は、本明細書で「化合物1」と名付けられた
【化3】
【0033】
の構造を有し、Sigma(Sigma−Aldrich Corp.、St.Louise MO、USA、カタログ番号A3111)から入手した。化合物1は、A1120とも呼ばれており、以下のように、Motaniら、2009に記載されている以下の技術によって作製してもよい。
【0034】
2−イソシアナト安息香酸メチル(10.00g、56.4mmol)をテトラヒドロフラン(30ml)に入れた溶液を、4−(2−(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン塩酸塩(14.3g、53.8mmol、Sigma)およびトリエチルアミン99%(8.99ml、64.5mmol)をテトラヒドロフラン(120ml)に入れた溶液に、0℃でゆっくりと加えた。この混合液を冷却浴から取り出し、室温で15分間撹拌した。LC/MS分析によれば、この時点で反応が完了したことが示された。EtOH(75ml)および水性LiOH(2N、95ml)を次に加えて、6時間室温で溶液を撹拌した。続いて、水性HCl(2N、150ml)を加え、得られた混合液をEtOAc(2×600ml)で抽出した。EtOAc抽出物をMgSO4上で乾燥させ、濃縮して灰白色の固形物とした。EtOAcからの再結晶によって、14.0g(66%)の2−(4−(2−(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン−1−カルボキサミド)安息香酸が白色固形物として得られ、分析高速液体クロマトグラフィーによれば、この固形物は均一なものであった(>99%)。
【0035】
本明細書で使用する場合、「ビスレチノイドリポフスチン」とは、細胞毒性のビスレチノイドを含むリポフスチンである。細胞毒性のビスレチノイドには、必ずしもこれらに限定されるわけではないが、A2E、イソA2E、atRALジ−PEおよびA2−DHP−PEが含まれる(図1〜3)。
【0036】
本明細書で使用する場合、記述「薬学的に活性な」は、対象への投与に適する物質、化合物または組成物を特徴づけるのに使用され、疾患の処置、治癒、緩和、診断もしくは予防において生物活性もしくは他の直接効果を提供する、または対象の構造または任意の機能に影響を及ぼす。薬学的に活性な薬剤には、これらに限定されないが、Physicians’Desk Reference(PDR Network、LLC;第64版;November15、2009)および「Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations」(U.S.Department of Health and Human Services、第30版、2010)に記載されている物質および化合物が含まれ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
化合物1のエステル誘導体は、標準的なエステル化反応および容易に利用可能で化学合成分野の当業者に知られている方法を用いて、本発明に従って、そのカルボン酸基から作出されていてもよい。エステル誘導体は、血清エステラーゼによって化合物1へ転換され得るプロドラッグとして働いてもよい。
【0038】
化合物1は塩の形態をしていてもよい。本明細書で使用する場合、「塩」とは、化合物の酸または塩基塩を作製することによって修飾された、本化合物の塩である。ビスレチノイド媒介性黄斑変性症処置へ化合物1を使用する場合には、塩は薬学的に許容できるものである。薬学的に許容できる塩の例としては、これらに限定されないが、塩基性残基たとえばアミンの無機または有機酸塩が挙げられる。この点での用語「薬学的に許容できる塩」は、化合物1の比較的毒性のない無機および有機塩基付加塩を指す。こうした塩は、化合物1の最終的な分離および精製の間にin situで、または遊離酸形態の精製された化合物1を適切な有機または無機塩基と別々に反応させ、こうして生成した塩を分離することによって調製することができる。
【0039】
本明細書で使用する場合、「処置」は、疾患の進行を緩徐化、阻止または予防することを意味する。「ビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置」の一態様は、視力喪失の発症、進行を遅らせるもしくは予防する、または重症度を緩和することである。
【0040】
「フルオロフォア」は、ある波長で電磁エネルギー吸収し、別の波長でエネルギーを再放出する分子である。フルオロフォアは、蛍光色素およびタンパク質を含めた分子または分子の一部でもよい。さらに、フルオロフォアで「標識された」分子を生成するために、フルオロフォアは化学的に、遺伝子的に、または他の方法で別の分子に結合または縮合していてもよい。フルオロフォアの例としては、これらに限定されないが、ランタニド、ユーロピウム、テルビウム、XL665、d2、量子ドット、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、フルオレセイン、ローダミン、エオシン、テキサスレッド、シアニン、インドカルボシアニン、オカカルボシアニン(ocacarbocyanine)、チアカルボシアニン、メロシアニン、ピリジルオキサドール、ベンゾオキサジアゾール、カスケードブルー、ナイルレッド、オキサジン170、アクリジンオレンジ、プロフラビン、オーラミン、マラカイトグリーン クリスタルバイオレット、ポルフィリンフタロシアニンおよびビリルビンが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「ドナーフルオロフォア」とは、その発光スペクトルがアクセプターフルオロフォアの吸収スペクトル内であり、その結果、電磁エネルギー供給源で励起させられた際に、2つのフルオロフォアがお互いの90Å以内にある場合は、ドナーフルオロフォアの再放出エネルギーがアクセプターフルオロフォアによって吸収された後に再放出されるのに十分である、フルオロフォアである。ドナーフルオロフォアの例としては、これらに限定されないがユーロピウムクリプテート、緑色蛍光タンパク質および黄色蛍光タンパク質が挙げられる。
【0042】
本明細書で使用する場合、「アクセプターフルオロフォア」とは、その吸収スペクトルがドナーフルオロフォアの発光スペクトル内であり、その結果、2つのフルオロフォアがお互いの90Å以内にある場合は、電磁エネルギーで励起させられたドナーフルオロフォアの再放出エネルギーを吸収および再放出することができる、フルオロフォアである。アクセプターフルオロフォアの例としては、これらに限定されないが、XL665およびd2ユーロピウムクリプテートが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用する場合、「エネルギー供給源」とは、フルオロフォアを励起することができる電磁エネルギーの供給源である。エネルギー供給源の例としては、これらに限定されないが、閃光ランプ、蛍光灯および蛍光光度計レーザーが挙げられる。
【0044】
化合物1は様々な形態で投与されてもよく、それらには本明細書で詳述されるものが含まれる。この化合物による処置は、併用療法または補助療法(すなわち、薬物を必要としている哺乳動物が、化合物1と併せて、その疾患のための別の薬物を扱われるまたは与えられる)の一成分であってもよい。この併用療法は、哺乳動物が最初にある薬物で処置され次いで他の薬物が与えられる、または同時に2種の薬物が与えられる、逐次療法とすることもできる。これらは、用いる剤形に応じて、同一の投与経路または2つ以上の異なる投与経路で独立に投与することができる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容できる担体」とは、哺乳動物へ本化合物を送達するための薬学的に許容できる溶媒、懸濁化剤またはビヒクルである。担体は液体でも固形物でもよく、計画された投与方法を考慮して選択される。リポソームもまた薬学的に許容できる担体である。
【0046】
処置で投与される化合物1の投薬量は、要因、たとえば化合物1の薬力学的特性およびその投与様式および経路;受容者の年齢、性別、代謝速度、吸収効率、健康および体重;症状の性質および程度;施される同時療法の種類;処置の頻度;ならびに所望の治療効果によって変動する。
【0047】
化合物1の投薬単位は、化合物1だけを含んでいてもよく、または化合物1とリポフスチン媒介性黄斑変性症の処置に用いる追加の化合物との混合物を含んでいてもよい。化合物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ剤および乳剤として経口投与剤形で投与することができる。化合物は、すべて医薬分野の当業者に周知の剤形を用いて、静脈内(ボーラスまたは点滴)、腹腔内、皮下または筋肉内の形態で投与されてもよいし、またはたとえば注入または他の方法で直接的に眼に入れてもよい。
【0048】
化合物1は、意図する投与形態について適切におよび従来の医薬プラクティスと矛盾がないように選択される、適切な医薬的希釈剤、増量剤、賦形剤または担体(本明細書ではまとめて薬学的に許容できる担体と呼ぶ)との混合物で投与することができる。その単位は、経口、直腸、局所、静脈内もしくは直接注入または非経口投与に適した形態である。化合物は、単体で投与することができるが、薬学的に許容できる担体と一般に混合される。この担体は固体でも液体でもよく、担体の種類は用いられる投与形態に基づいて一般に選ばれる。一態様では、担体はモノクローナル抗体でもよい。活性薬剤は、凝集粉としてまたは液体形態で、錠剤またはカプセル剤、リポソームの形態で同時投与することができる。適切な固体担体の例としては、ラクトース、ショ糖、ゼラチンおよび寒天が挙げられる。カプセル剤または錠剤は簡単に製剤化することができ、嚥下または咀嚼を容易にすることができる。他の固体形態としては、顆粒剤およびバルク散剤が挙げられる。錠剤は、適切な結合剤、潤滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、流動誘発剤(flow-inducing agent)および溶融剤を含んでいてもよい。適切な液体剤形の例としては、水、薬学的に許容できる脂肪および油、アルコールまたは他の有機溶媒に入れた液剤または懸濁剤が挙げられ、それらには、エステル剤、乳剤、シロップ剤またはエリキシル剤、懸濁剤、非発泡顆粒剤から再構成された液剤および/または懸濁剤および発泡顆粒剤から再構成された発泡調製物が含まれる。こうした液体剤形は、たとえば適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味剤、増ちょう剤および溶融剤を含んでいてもよい。経口投与剤形は、風味剤および着色剤を任意で含む。非経口および静脈内形態は、選択された注入または送達システムの型にその形態を適合させるために、無機質および他の材料を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の経口投与剤形を製剤化するのに使用されてもよい薬学的に許容できる担体および賦形剤の特定例は、1975年9月2日に刊行された米国特許第3,903,297号に記載されている。本発明に有用な剤形を作製するための技術および組成物は、以下の参考文献に記載されている。7 Modern Pharmaceutics、9および10章(Banker&Rhodes編、1979);Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(Liebermanら、1981);Ansel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms第2版(1976);Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版(Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985);Advances in Pharmaceutical Sciences(David Ganderton、Trevor Jones編、1992);Advances in Pharmaceutical Sciences第7巻(David Ganderton、Trevor Jones、James McGinity編、1995);Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms(Drugs and the Pharmaceutical Sciences、シリーズ36(James McGinity編、1989);Pharmaceutical Particulate Carriers:Therapeutic Applications:Drugs and the Pharmaceutical Sciences、第61巻(Alain Rolland編、1993);Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract(Ellis Horwood Books in the Biological Sciences.Series in Pharmaceutical Technology、J.G.Hardy、S.S.Davis、Clive G.Wilson編);Modem Pharmaceutics Drugs and the Pharmaceutical Sciences、第40巻(Gilbert S.Banker、Christopher T.Rhodes編)。すべての前述の刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
錠剤は、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、流動誘発剤および溶融剤を含んでいてもよい。たとえば錠剤またはカプセル剤の投薬単位形態における経口投与に関しては、活性薬物成分は、経口的な、無毒の、薬学的に許容できる不活性な担体、たとえばラクトース、ゼラチン、寒天、デンプン、ショ糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどと組み合わせることができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖、たとえばグルコースまたはβ−ラクトース、コーン甘味剤、天然および合成のゴム、たとえばアラビアゴム、トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。こうした剤形で使用する潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、これらに限定はされないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。
【0051】
化合物1は、リポソーム送達システムの形態、たとえば小型単層ラメラ小胞、大型単層小胞および多重ラメラ小胞で投与することもできる。リポソームは、種々のリン脂質、たとえばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンから形成することができる。化合物は、組織標的性乳剤の成分として投与されてもよい。
【0052】
化合物1は、標的化可能な薬物担体またはプロドラッグとして、可溶性ポリマーに結合していてもよい。こうしたポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシルプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルタアミドフェノールまたはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンが含まれる。さらに、化合物1は、薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーのクラス、たとえばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびハイドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーと結合していてもよい。
【0053】
化合物1は、固体剤形、たとえばカプセル剤、錠剤および散剤で、または液体剤形、たとえばエリキシル剤、シロップ剤および懸濁剤で、経口的に投与することができる。化合物1は、無菌液体剤形で非経口的に投与することもできる。
【0054】
ゼラチンカプセル剤は、化合物1および粉末化された担体、たとえばラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含んでいてもよい。類似の希釈剤を、圧縮錠剤を作製するのに使用することができる。錠剤とカプセル剤の両方は、数時間にわたって持続的に医薬品を放出するために、即時放出性製品または徐放性製品として製造することができる。圧縮錠剤は、任意の不快な食味をマスクし、空気から錠剤を保護するために、糖コーティングまたはフイルムコーティングをすることができ、または消化管で選択的に分解されるように、腸溶性コーティングをすることができる。
【0055】
液体剤形の経口投与に関しては、化合物1は、任意の経口的な、無毒の、薬学的に許容できる不活性な担体、たとえばエタノール、グリセロール、水などと結合していてもよい。適切な液体剤形の例としては、水、薬学的に許容できる脂肪および油、アルコールまたは他の有機溶媒に入れた液剤または懸濁剤が挙げられ、それらには、エステル剤、乳剤、シロップ剤またはエリキシル剤、懸濁剤、非発泡顆粒剤から再構成された液剤および/または懸濁剤および発泡顆粒剤から再構成された発泡調製物が含まれる。こうした液体剤形は、たとえば適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味剤、増ちょう剤および溶融剤を含んでいてもよい。
【0056】
経口投与用の液体剤形は、患者の忍容性を増すために着色剤および着香料を含むことができる。一般に、水、適切な油、生理食塩水、水性デキストロース(グルコース)および関連する糖溶液ならびにグリコール、たとえばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが非経口溶液に関して適切な担体である。非経口投与用の溶液は、活性成分の水溶性塩、適切な安定化剤および必要ならば緩衝物質を好ましくは含む。抗酸化剤、たとえば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸は、単独または組み合わせのいずれかで、適切な安定化剤である。クエン酸およびその塩ならびにナトリウムEDTAも使用される。加えて、非経口溶液は、防腐剤、たとえば塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロピルパラベンおよびクロロブタノールを含むことができる。適切な医薬担体は、本分野の標準的な参考テキストである、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Companyに記載されている。
【0057】
化合物1は、適切な鼻腔内ビヒクルの使用を介して鼻腔内形態で、または当業者に周知の経皮性皮膚パッチの形態のものを用いて経皮経路を介して、投与されてもよい。経皮性送達システムの形態で投与するには、投薬量の投与は、一般に、投与計画の全体を通して断続的よりはむしろ持続的である。
【0058】
非経口および静脈内形態は、選択された注入または送達システムの型にその形態を適合させるために、無機質および他の材料を含んでいてもよい。
【0059】
本発明の化合物1およびその組成物は、一時的または永続的に対象の心血管系中に植え込みするためのステント上にコーティングすることができる。
【0060】
本発明の化合物および組成物は、リポフスチン媒介性黄斑変性症の予防および処置に有用である。
【0061】
本発明は、以下の例を参照することにより一層理解されるであろう。しかし、その後に続く特許請求の範囲でより十分に記載されているように、当業者は、詳述される特定の実験が本発明の例示にすぎないことをたやすく認識するであろう。
【0062】
[実施例]
例1
レチノール誘導性RBP4−TTR相互作用のアンタゴニストに対するTR−FRETアッセイ
TR−FRET(時間分解蛍光共鳴エネルギー転移)は、タンパク質−タンパク質相互作用に影響を及ぼす化合物の特徴づけに使用することができるアッセイ形式である(31〜33)。TR−FRETのHTRF(均一時間分解蛍光)変形型は、Eu3+クリプテートの使用により光捕獲が向上したため、最も進んだものである。レチノール存在下では、RBP4−TTR相互作用は、668/620蛍光シグナルの増大する比として記録され得るFRETを誘導する。所望のRBP4アンタゴニストの結合によって、レチノールが移動させられ、RBP4−TTR相互作用の妨害が誘導され、その結果FRETシグナルが減少する(図7)。
【0063】
発明者らは、E.coliで発現させたMBPで標識のRBP4およびEu3+クリプテートで直接標識された市販品として入手可能なTTRを用いるアッセイを開発した。MBP−RBP4およびEu3+(K)−TTRに加えて、検出用試薬の抗MBP−d2が混合物中に存在した。アッセイをアゴニストモードで最初に最適化した。アッセイの感度およびダイナミックレンジは、RBP4、TTRおよび検出試薬濃度について最高モードとした。RBP4−TTR相互作用を促進するオールトランスレチノールの最適濃度を決定するために、発明者らは、化合物1およびフェンレチニドの滴定に加えてレチノール滴定のエイトポイント滴定を行った(図8)。発明者らは、オールトランスレチノールが用量依存的様式でRBP4−TTR相互作用を促進することを示し(図8)、EC50は約1.2μMであった。予想通り、RBP4アンタゴニスト化合物1およびフェンレチニドは、RBP4−TTR相互作用を誘導しなかった(図8)。
【0064】
レチノールがマイクロモル濃度で血清中に存在することを考え、およびレチノール滴定の結果を考慮して、発明者らは、1〜10μM範囲内の固定濃度のレチノールを試験することによって、および40μMの飽和濃度のアンタゴニスト(フェンレチニドおよび化合物1)を用いて、アッセイをアンタゴニストモードに変えた。アッセイの感度およびダイナミックレンジに関する、アンタゴニストモードでの最適レチノール濃度は、4.5〜6.5μMの範囲にあることが判明した。発明者らは、化合物1およびフェンレチニドの滴定をレチノール存在下で行い、一次アッセイにおける本発明者らの出発化合物を特徴づけ、このアッセイがRBP4アンタゴニストの特徴づけに適することを証明した(図8)。
【0065】
2つの化合物、すなわち化合物1およびフェンレチニドは、μMの範囲内のEC50(化合物1については2.2μM、フェンレチニドについては17.3μM)で、レチノール誘導性RBP4−TTR相互作用を拮抗した。
【0066】
例2
哺乳動物モデルにおける化合物1の有効性
野生型およびAbca4−/−マウスで化合物1の有効性を試験した。Abca4−/−マウスモデルは、RPEにおいてリポフスチンの促進的な蓄積を呈し、リポフスチン蓄積を減少させる薬物のための前臨床での有効性のモデルと考えられる。化合物1を30mg/kgで3週間経口投与した。処置した動物において、約70%の血清RBP4レベルの低下があった(図11)。さらに発明者らは、処置したマウスにおいて、A2E/イソA2Eのレベルが約50%低下したことを発見した(図12)。A2−DHP−PEおよびatRALジ−PEのレベルも低下した。こうした前臨床有効性データは、化合物1が乾性AMDおよびシュタルガルト病に対する有望な低分子治療薬であることを示す。
【0067】
組織抽出およびビスレチノイドのHPLC分析
Rpe65−Leu450についてホモ接合型であるAbca4/Abcrヌル変異体マウス(アルビノ)を繁殖させ、遺伝子型を同定し、飼育した。マウスの後部眼杯(Posterior eyecup)およびヒトドナーの眼から回収されたRPE/脈絡膜(National Disease Research Interchange、Philadelphia PA)をガラスの組織グラインダーを用いてリン酸緩衝食塩水(PBS)中でホモジナイズし、クロロホルム/メタノール(2:1)中で抽出する。続いて、コットンを通して抽出物を濾過し、0.1%TFA(Aldrich Chemical Company、Milwaukee、WI)入りのメタノールを用いて逆相カートリッジ(C8Sep−Pak、Millipore)を通過させる。アルゴンガス下で溶媒を蒸発させた後、抽出物を0.1%TFA含有50%メタノール性クロロホルムに溶解する。2695セパレーションモジュール、2996フォトダイオードアレイ検出器、2475マルチλ蛍光検出器およびEmpower(登録商標)ソフトウェアによるオペレーティングを備えたAllianceシステム(Waters,Corp、Milford、MA)を用いてHPLC分析を行う。Atlantis(登録商標)dC18カラム(3μm、4.6×150mm、Waters、USA)およびDelta Pak(登録商標)C4カラム(5μm、3.9×150mm、Waters、USA)を用いる。0.1%TFAを有する水およびアセトニトリルのグラジエント(Fisher、Fair Lawn、NJ)を移動相に用いる。詳細を図の説明文に示す。HPLC定量化をEmpower(登録商標)ソフトウェアを用いて行い、ピーク面積を決定する。フォトダイオードアレイによる検出は、430および490nmにセットする。マウスの眼あたりのモル量を、既知の濃度の精製された外部標準から作製した検量線を用いて、およびHPLC注入量(10μL)対総抽出量の比に対して標準化することによって、決定する。
【0068】
考察
視覚サイクルの薬理学的阻害のための薬物標的としての血清RBP4
網膜における視覚サイクルおよびA2E産生の速度は、血清からRPEへのオールトランスレチノールの流入に依存するため(図4)、血清レチノールの部分的な薬理学的ダウンレギュレーションが乾性AMD処置の標的分野に相当してもよいことが示唆されている(11)。血清レチノールは、レチノール結合タンパク質(RBP4)に結合しており、RBP4とトランスチレチンとの三次複合体(TTR)として、循環において維持されている(図5)。TTRと相互作用しないと、RBP4−レチノール複合体は、糸球体濾過により循環から急速に除去される。さらに、RBP4−TTR−レチノール複合体の形成は、血清から網膜への、受容体媒介性のオールトランスレチノールの取り込みに必要とされる。
【0069】
RBP4は、視覚サイクルおよびA2E形成の間接的な薬理学的阻害のための魅力的な薬物標的に相当する。RBP4のレチノール結合部位は、RBP4−TTR相互作用を媒介する界面に対して立体的に近位である。RBP4への結合に関して血清レチノールと競合すると同時にRBP4−TTR相互作用をブロックするレチノールアンタゴニストは、血清RBP4およびレチノールレベルをおそらく低下させ、これは、網膜へのレチノールの取り込みを低下させることにつながるであろう。その結果が、それに続くA2E合成の低下をともなう視覚サイクルの抑制であろう。
【0070】
癌治療薬と以前には考えられていたフェンレチニドと呼ばれる合成レチノイド[N−(4−ヒドロキシ−フェニル)レチンアミド、4HRP](29)は、RBP4に結合し、RBP4からオールトランスレチノールを移動させ(13)、RBP4−TTR相互作用を乱す(13、14)ことが判明した。
【0071】
フェンレチニドは、血清RBP4およびレチノールを減少させる(15)、眼のオールトランスレチノールの取り込みを抑制し、視覚サイクルを減速する(11)ことが示された。重要なことに、フェンレチニドの投与は、過剰にビスレチノイドを蓄積する動物モデルであるAbca4−/−マウスにおいて、A2E産生を低下させた(11)。フェンレチニドを用いた前臨床実験によって、RBP4が乾性AMDの薬物標的として確証された。しかし、フェンレチニドは非選択的であり、有毒性である。RBP4へのレチノール結合のアンタゴニストとしてのその活性と無関係に、フェンレチニドは、網膜色素上皮細胞(20)を含めた多くの細胞型において、アポトーシスの極めて強い活性誘導物質である(16〜19)。フェンレチニドの有害作用は、核内受容体RARのリガンドとしてのその作用によって媒介されることが示唆されている(21〜24)。さらに他のレチノイドと類似して、フェンレチニドは催奇性である。
【0072】
眼用使用の低分子化合物1またはそのエステルもしくは塩が本明細書に開示される。化合物1、すなわち2(4−(2−(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン−1−カルボキサミド)安息香酸は、非レチノイドRBP4アンタゴニストである。化合物1は、もともと抗糖尿病剤として開発された(12)。しかし、マウス糖尿病モデルにおいて、その投与はインスリン感受性を改善しなかった。
【0073】
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以下に、本願発明の態様を付記する。
[1] ビスレチノイド媒介性黄斑変性症に罹患している哺乳動物におけるビスレチノイド媒介性黄斑変性症の処置方法であって、有効量の、
【化4】
の構造を有する化合物またはそのエステルもしくは薬学的に許容できる塩を前記哺乳動物へ投与することを含む方法。
[2] 前記量が、前記哺乳動物においてRBP4の血清濃度を低下させるのに有効である、[1]に記載の方法。
[3] 前記量が、前記哺乳動物においてリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記ビスレチノイドがA2Eである、[3]に記載の方法。
[5] 前記ビスレチノイドがイソA2Eである、[3]に記載の方法。
[6] 前記ビスレチノイドがA2−DHP−PEである、[3]に記載の方法。
[7] 前記ビスレチノイドがatRALジ−PEである、[3]に記載の方法。
[8] 前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症が加齢性黄斑変性症である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症がシュタルガルト病である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記ビスレチノイド媒介性黄斑変性症が網膜色素上皮へのリポフスチン沈着物の蓄積を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[11] 分子がレチノール誘導性RBP4−TTR相互作用のアンタゴニストであるかどうかを決定する方法であって、前記方法が、
i)ドナーまたはアクセプターフルオロフォアで標識されたRBP4を、ドナーまたはアクセプターフルオロフォアで標識されたTTRおよびレチノールとともにインキュベートすること、ここでRBP4がドナーフルオロフォアで標識される場合は、TTRはアクセプターフルオロフォアで標識され、RBP4がアクセプターフルオロフォアで標識される場合は、TTRはアクセプターフルオロフォアで標識される、
ii)エネルギー供給源によって前記ドナーフルオロフォアが励起された際に、i)の混合物中の前記ドナーフルオロフォアについての蛍光波長と前記アクセプターフルオロフォアについての蛍光波長との比を決定すること、
iii)前記分子を、i)の前記フルオロフォア標識されたRBP4、フルオロフォア標識されたTTRおよびレチノールと共にインキュベートすること、
iv)エネルギー供給源によって前記ドナーフルオロフォアが励起された際に、iii)の混合物中の前記ドナーフルオロフォアについての蛍光波長と前記アクセプターフルオロフォアについての蛍光波長との比を決定すること、
v)ステップiv)の蛍光比がステップii)の蛍光比未満であるかどうかを決定すること
を含み、ここでステップii)未満であるステップiv)の蛍光比が、前記分子がレチノール誘導性RBP4−TTR相互作用のアンタゴニストであることを示す、方法。
[12] 細胞のビスレチノイドリポフスチンレベルを前記分子が低下させるかどうかを決定することをさらに含む、[11]に記載の方法。
[13] 前記細胞が網膜色素上皮細胞である、[12]に記載の方法。
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