【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するための一つの様態として、本発明は、(a)支持層、および(b)リバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂および可塑剤を含むマトリックス層を含む経皮吸収製剤に関するものである。
【0023】
また一つの様態として、本発明は、有効性分としてリバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩を1.0mg/cm
2以上1.8mg/cm
2未満で含み、薬品の1日放出量は2〜10mgである経皮吸収製剤に関するものである。
【0024】
また一つの様態として、本発明は、有効性分としてリバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩を1.0mg/cm
2以上1.8mg/cm
2未満で含み、薬品の皮膚透過速度は18μg/cm
2/h超過である経皮吸収製剤に関するものである。
【0025】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0026】
本発明は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を基剤として使用したリバスティグミン経皮吸収製剤に関するものであることを特徴とする。
【0027】
リバスティグミンは、分子内アミン(amine)とカルボニル(carbonyl)作用基を有していて経皮製剤として使用される場合、皮膚刺激の原因になり得、これら作用基と粘着剤に存在する他の作用基間の相互作用が可能である。薬品と粘着剤間の相互作用は、結局粘着剤内の薬品が皮膚を通じて人体に伝達される拡散、透過過程に妨害要素として作用するようになるため、粘着基剤の選定時、薬品と粘着基剤の相互作用を最少化することができる粘着基剤の選定が必要である。
【0028】
本発明の具体的な実施形態では、アクリル系、合成ゴム系または天然ゴム系に属する多様な粘着基剤を使用してリバスティグミンを有効成分とするパッチ剤を製造した後、製剤の24時間後の累積透過量(μg/cm
2)、初期含量対比累積透過量(%)および皮膚透過速度(μg/cm
2/h)を評価した結果、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を基剤として使用した場合、比較製剤および市販製剤よりも顕著に優れた経皮透過効率を示すことを確認した。
【0029】
したがって、粘着基剤としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を使用する場合、従来の公知となったリバスティグミンパッチ剤に比べて少量のリバスティグミンを使用しても認知症の治療に必要な十分な量の薬品を経皮投与することができ、ひいては、薬品使用量を減少させることによって皮膚刺激を緩和することができる。
【0030】
また、本発明は、支持層および薬品含有マトリックス層以外に、別途の中間膜または接着層を有しないことを特徴とする。
【0031】
先行技術であるWO99/34782またはWO07/064407の場合、薬品含有層のみでは製剤を皮膚に粘着させるための十分な物性を提供することが困難であるため、皮膚への薬品伝達に影響を与えない付加の接着層をおく構成を有しているため、製造上別途の層で形成しなければならない不便と経済的に追加費用が発生する問題があった。本発明の場合、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および粘着付与樹脂を薬品含有マトリックス層に含ませることによって、薬品と粘着剤を単一の粘着層で構成しながらも、皮膚に付着するのに十分な粘着力を有するように構成して、先行技術が有する複雑な製造工程を単純化することができる。
【0032】
また、本発明の経皮吸収製剤は、薬品放出調節剤を含まないことが好ましい。より好ましくは、本発明の経皮吸収製剤は、有機酸またはその塩、無機酸またはその塩のような薬品放出調節剤を含まないことが好ましい。特に、本発明は酢酸塩を別途に含まない。
【0033】
先行技術であるヨーロッパ公開特許EP 1437130の場合、有機酸またはその塩、特に酢酸塩を含ませることによって薬品の皮膚透過を増強させることが可能であると記述しており、酢酸塩を含ませない場合には、薬品皮膚透過速度が0.1〜0.4μg/cm
2/hに顕著に低下する結果を示した。このように、従来の技術では、有機酸塩、特に酢酸塩の使用がリバスティグミン経皮製剤の皮膚透過度を高める必須的な構成要素として使用された。
【0034】
しかし、本発明の場合、粘着基剤としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を選択することによって、有機酸塩や無機酸塩などの別途の物質の追加なしに従来に報告されたより高い皮膚透過速度(18μg/cm
2/h超過)および高い累積透過量(例えば、24時間累積透過量が初期含量の30%以上)を達成することができる。
【0035】
本発明による経皮吸収製剤の(a)支持層は、皮膚に付着が容易であり、保管時に薬品安定性による薬品損失を防止することができ、皮膚との反応性がなくてアレルギー反応を生じさせないものであれば、従来の経皮吸収製剤で利用されている薬品保護用物質中の如何なるものを使用してもよい。
【0036】
具体的に、これに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアセテート共重合体、ビニロン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィンフィルム、レーヨン、不織布、アクリル、シルク、綿、アルミニウムシートまたはこれらを2種以上積層したラミネートフィルムなどを使用することができる。
【0037】
本発明による経皮吸収製剤の(b)薬品含有マトリックス層は、有効成分としてリバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩を含む。リバスティグミンは、遊離塩基(free base)形態であるリバスティグミンまたはリバスチグミン水素酒石酸塩を使用することが好ましい。
【0038】
本発明による経皮吸収製剤は、粘着基剤としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を使用することによって薬品の高い皮膚透過度を達成することができるため、従来の公示となったり市販中のリバスティグミン含有経皮吸収製剤のリバスティグミン含量である1.8mg/cm
2より少量を使用して、薬品による皮膚刺激の副作用を緩和させることができる。好ましくは、本発明の経皮吸収製剤内にリバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩の含量は、単位面積当たり1.0mg/cm
2以上1.8mg/cm
2未満であることが好ましい。薬品の含量が1.0mg/cm
2未満である場合、皮膚を通じた薬品の透過量が落ちて有効な薬効を得にくく、1.8mg/cm
2以上である場合、薬品によりマトリックス層基剤である高分子粘着剤の凝集力が落ちることがあり、薬品による皮膚刺激の副作用を起こすことがある。
【0039】
本発明による経皮吸収製剤の薬品含有マトリックス層は、基剤としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を使用する。スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のマトリックス層内の含量は、十分な透過性および付着製剤としての十分な凝集力の維持を考慮して、薬品含有マトリックスの全体重量に対して20〜50重量%であることが好ましい。
【0040】
本発明による粘着付与樹脂としては、当業界に使用される通常のものを単独または配合して使用することができ、例えば、天然樹脂、合成樹脂またはこれらの混合物、具体的には、指環族(alicyclic)炭化水素樹脂、例えばスチレンαメチルスチレン樹脂(例:クリスタレックスF85);脂肪族(aliphatic)炭化水素樹脂(例:エスコレッツ 1401;水添炭化水素樹脂(例:Regalite R1100);ロジン系樹脂、例えば、ロジン、水添ロジン(hydrogenated rosin)、またはこれらのエステル、例えばロジンのグリセリンエステル(glycerol ester)、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリトリトールエステル(pentaerythritol esters)など(例:KE311)のようなロジン誘導体(rosin derivatives);テルペン系樹脂、およびポリエステル樹脂、例えばマレイン酸樹脂からなる群より選択される一つ以上であってもよいが、これらに特に制限されるわけではない。好ましくは、指環族炭化水素樹脂または脂肪族炭化水素樹脂の中の一つまたはそれ以上を混合して使用することができる。
【0041】
また、可塑剤としては、石油系オイル(petroleum oil)(例えば、パラフィン系プロセス(paraffin process)オイル、ナフタレン系プロセスオイル(naphthenic process oil)、芳香族系(aromatic)プロセスオイルなど)、スクアラン(squalane)、スクアレン(squalene)、植物系(plant)オイル(例えば、オリーブ油(olive oil)、椿油(camellia oil)、ヒマシ油(castor oil)、トール油(tall oil)、ピーナッツ油(peanut oil)、合成オイル(シリコンオイル(silicone oil))、二塩基酸エステル(dibasic acid esters)(例えば、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)など)、液状ゴム(liquid rubber)(例えば、ポリブテン(polybutene)、液状イソプレンゴム(liquid isoprene rubber)など)、液状脂肪酸エステル(例えば、ミリスチル酸イソプロピル(isopropyl myristate)、ラウリン酸ヘキシル(hexyl laurate)、セバシン酸ジエチル(diethyl sebacate)、セバシン酸ジイソプロピル(diisopropyl sebacate)など)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール(glycol salicylate)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、トリアセチン(triacetin)、クエン酸トリエチル(triethyl citrate)およびクロタミトン(crotamiton)、およびこれらの混合物などを使用することができるが、これに制限されるわけではない。
【0042】
粘着付与樹脂および可塑剤の使用量は、パッチ製剤としての十分な粘着力と凝集力の維持を考慮して、薬品含有マトリックスの全体重量に対して粘着付与樹脂20〜50重量%、可塑剤1〜20%重量であることが好ましい。
【0043】
また、(b)薬品含有マトリックス層は、リバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂および可塑剤を1〜2:2〜5:2〜5:0.1〜2の重量比に含むことが好ましい。
【0044】
本発明の経皮吸収製剤は、薬品含有マトリックス層がリバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂および可塑剤のみからなる構成でも、本発明が意図する効果を十分に達成することができる。
【0045】
具体的に、本発明の経皮吸収製剤は、薬品含有マトリックス層にリバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂および可塑剤以外に他の添加剤を追加しなくても、市販製剤のリバスティグミン含量である1.8mg/cm
2より少量、好ましくは1.0mg/cm
2以上1.8mg/cm
2未満、より好ましくは1.0mg/cm
2以上1.5mg/cm
2以下、例えば1.2mg/cm
2含量でも十分な薬効を発揮することができ、薬品の1日放出量が2〜10mgであり、薬品の24時間累積透過量が初期含量の30重量%以上、例えば30重量%以上60重量%以下であり、薬品の皮膚透過速度が18μg/cm
2/h超過、特に20μg/cm
2/h以上、さらに特に20μg/cm
2/h以上30μg/cm
2/h以下である効果を達成することができる。
【0046】
一方、本発明による薬品含有マトリックス層は、必要に応じて薬品およびその他賦形剤との適合性、製剤安定性などをより向上させる目的で、選択的に経皮吸収製剤の分野で通常使用される皮膚透過増進剤、紫外線遮断剤および抗酸化剤からなる群より選択される一つ以上をさらに含むことができる。しかし、前記皮膚透過増進剤、紫外線遮断剤または抗酸化剤の追加が必須的ではなく、これらの追加なしにも本発明の経皮吸収製剤が十分な薬効および高い皮膚透過度を示すことができるいうことは先に言及したとおりである。
【0047】
皮膚透過増進剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸アルコール、脂肪酸エステル、イオン性または非イオン性界面活性剤、ミリスチル酸イソプロピル、トランスキュトール、トリアセチンおよびピロリドン系化合物などを使用することができるが、これに制限されるわけではなく、トリアセチンおよびピロリドン系誘導体およびトランスキュトールはマトリックス層重量に対して0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0048】
紫外線遮断剤としては、紫外線吸収効果がある液状の有機紫外線遮断剤を使用することができる。その具体的な例としては、エチルヘキシルメトキシシンナメート、イソアミルP−メトキシシンナメート、ビス−エチルヘキシロキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、C12−15アルキルベンゾエート、チタニウムオキシド、アルミニウムステアレート、ポリヒドロキシステアリン酸、アルミナおよびエチルヘキシルサリシレートなどが挙げられ、この他にも紫外線吸収効果がある有機紫外線吸収剤であるオキシベンゾン、オクトクリレン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、4−メチルベンジリデンカンファ、3−ベンジリデンカンファ、オクチルジメチルPABA、アニソトリアジン(Anisotriazine)およびポリシリコンなどを使用することができるが、これに制限されるわけではない。また、本発明に使用される紫外線遮断剤は、固体粉末の紫外線フィルター剤のような無機紫外線遮断剤が使用され得、その具体的な例としては二酸化チタンを使用することができ、この他にも酸化亜鉛などを使用することができる。紫外線遮断剤は、所望の紫外線遮断効果に応じてその含量を調節して使用することができる。
【0049】
抗酸化剤としては、抗酸化活性を有する化合物、誘導体、およびこれらの塩を使用することができる。例えば、フェノール系抗酸化剤(例えば、テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコールビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ビス−(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニルホスフェート)、オクタデシル3,5−ジ−(tert)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、2,4−ビス(ドデシルチオメチル)−6−メチルフェノールなど)、アスコルビルステアレート、α−リポ酸、グルタチオン、コエンザイムQ10、γ−リノレン酸およびリノレイック酸からなる群より選択される一つ以上を使用することができるが、これに制限されるわけではない。
【0050】
また、本発明による認知症治療用経皮吸収製剤は、c)剥離層をさらに有することができる。剥離層は、経皮吸収製剤に通常使用される離型フィルムやその積層物を使用することができる。例えば、シリコン樹脂またはフッ素樹脂を塗布したポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのフィルム、紙またはこれらの積層物を使用することができる。
【0051】
本発明による経皮吸収製剤は、リバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩の24時間累積透過量が初期含量の30重量%以上、例えば30重量%以上60重量%以下である特徴がある。
【0052】
また、本発明による経皮吸収製剤は、リバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩の1日放出量が2〜10mgである特徴がある。
【0053】
また、本発明による経皮吸収製剤は、リバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩の皮膚透過速度が18μg/cm
2/h超過、例えば20μg/cm
2/h以上(例えば、20μg/cm
2/h以上30μg/cm
2/h以下)である特徴がある。
【0054】
したがって、本発明はまた有効性分としてリバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩を1.0mg/cm
2以上1.8mg/cm
2未満、例えば1.0mg/cm
2以上1.5mg/cm
2以下、例えば1.2mg/cm
2で含み、薬品の1日放出量が2〜10mgである経皮吸収製剤を提供する。
【0055】
また、本発明は、有効性分としてリバスティグミン遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩を1.0mg/cm
2以上1.8mg/cm
2未満、例えば1.0mg/cm
2以上1.5mg/cm
2以下、例えば1.2mg/cm
2で含み、薬品の皮膚透過速度は18μg/cm
2/h超過、例えば20μg/cm
2/h以上、例えば20μg/cm
2/h以上30μg/cm
2/h以下である経皮吸収製剤を提供する。
【0056】
本発明による経皮吸収製剤は、従来の製剤が皮膚刺激を示す問題点を有していたことに比べて、皮膚刺激をほとんど示さないため、Draizeの皮膚反応評価表(Draizeの基準:1959)による1次皮膚刺激指数(P.I.I.)は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.2以下である。