【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はその基礎になっている技術的課題を、回転変位継手、特に二つの自由度を有する回転変位継手により相互に連結された少なくとも二つの壁要素を含む、生物及び物がバラ荷から埋まることから保護するための装置を提供することによって解決し、これらの壁要素は、好ましい実施形態では同一であり、それぞれの壁要素は、円形状の増厚部の形で形成された第1の縁と、第1の縁の向かい側で円弧状の保持部の形で形成された第2の縁とを備えた長方形で好ましくは平坦な基体を有しており、それぞれ壁要素の二つが、隣接する壁要素の相互に押し込まれて相互に噛み合っている第1及び第2の縁によって形成された回転変位継手により、これらの壁要素が互いに対して垂直方向に変位可能で、互いに対して水平方向に少なくとも60°の角度まで回転可能であるように、相互に連結されている。
【0007】
本発明によれば、本発明による装置を作製するため、第1の縁を備えた第1の壁要素が、第2の壁要素の第2の縁によって形成された保持部の端部にある開口部に、この第2の縁の長手軸に沿って押し込まれ、こうして回転変位継手と少なくとも二つの壁要素とを有する本発明の装置が作製される。このように作製された装置には、同じやり方でさらなる壁要素を付け加えることができる。本発明によれば好ましくは、第2の壁要素の円弧状の保持部に上または下から、つまり第2の縁の両方の縁端部の一方から、第2の縁の長手軸に沿って第1の壁要素の継手ボルト縁を押し込み、両方の壁要素を連結する回転変位継手を形成し、そして同じやり方で複数のさらなる壁要素を連結することによって壁要素から成るリンクベルトを形成することができることが提供される。
【0008】
したがって本発明による装置は、継手により相互に連結された少なくとも二つの壁要素を特色とし、これらの壁要素は、その互いに隣接する縁によって形成された回転変位継手により相互に連結されている。本発明による装置を形成している好ましい壁要素は同じものであり、好ましくは長方形の基本形状、さらに例えば正方形の基本形状を特色とする。この壁要素の第1の縁は、好ましくは壁要素の縁の全長にわたって、断面で見ると円形状の増厚部として形成されており、ここでは継手ボルト縁(枢動ボルト縁)とも呼ぶ。したがって、継手ボルト縁は、好ましくは、壁要素の長方形で好ましくは平坦な基体に直に継ぎ足された回転シリンダまたは真っ直ぐの円形シリンダとして、さらなる一実施形態では真っ直ぐの中空シリンダとして実施されている。本発明の好ましい一実施形態では、この円形シリンダまたは中空シリンダの中心軸は、基体の平坦な面により規定される平面内にある。さらなる好ましい一実施形態では、円形シリンダまたは中空シリンダの中心軸は、基体の平坦な面により規定される平面を含む平面内にあるのではなく、この平面に対して平行な平面内にあり、特に中心軸は基体の平面に対して好ましくは1〜179°、好ましくは30〜170°、好ましくは40〜160°、特に50〜150°、特に60〜30°、好ましくは90°の角度にあることが提供される。同じ壁要素の向かい側にあり、壁要素の第2の縁と呼ばれる縁は、断面で見ると円弧状の保持部として、しかも同様に好ましくは第2の縁の全長にわたって実施されており、ここでは継手レール縁(ヒンジレール縁)とも呼ぶ。円弧状の保持部は、壁要素の基体に継ぎ足された二つの半円形の分岐部分によって形成されており、これらの分岐部分は、断面で見ると円形の中空空間の一部を取り囲んでおり、こうして長手軸に平行な押込みが可能な、したがってもう一つの壁要素のより断面の小さい継手ボルト縁を収容し得るレールを形成している。円弧状の保持部は、好ましくは第2の縁の全長にわたって隙間を有しており、押し込まれた壁要素の基体はこの隙間を通り抜ける。隙間の広さは、押し込まれた壁要素の通り抜ける基体の厚さより大きく、好ましくは二倍、三倍、または四倍の幅があるので、壁要素は水平方向に旋回することができる。好ましい実施形態では、隙間の広さ、つまり隙間の開口寸法は0.5〜7cm、1〜6cm、1〜4cm、特に2〜2.9cm、特に2.5〜2.9cmであることができる。
【0009】
好ましい実施形態では、隙間の幾何的中心は、基体がある平面内にはない。本発明の好ましい実施形態では、隙間の幾何的中心は壁要素の基体に対して70〜170°、80〜160°、特に85〜150°、好ましくは120°の角度にある。断面で見ると第1の縁の円形状の増厚部及び第2の縁の円弧状の保持部の直径は、円形状の増厚部が円弧状の保持部の内径より小さく、例えば0.05倍、0.1倍、または0.15倍となるように相互に調整されている。好ましい実施形態では、円形状の増厚部の直径は0.9〜4.5cm、好ましくは1.8〜4.0cm、特に2.5〜3.5cm、特に3cmであることができる。隙間は、壁要素の基体の厚さより広く、ただし継手ボルト縁の直径より狭い。つまり、第2の縁によって形成された円弧状の保持部の隙間の隙間広さは、第1の縁の円形状の増厚部、つまり継手ボルト縁が、円弧状の保持部から水平方向には引っ張り出せないように決定されている。したがって本発明によれば、一方の壁要素の継手レール縁に挿入されたもう一方の壁要素の継手ボルト縁が相互に噛み合っている。したがって少なくとも二つの壁要素の連結またはその分離は、壁要素が、継手レール縁の縁端部にある開口部を通って、壁要素の第1及び第2の縁に沿って押し込まれるまたは引っ張り出されることによってのみ可能である。これは本発明によれば、円弧状の保持部のa)上側またはb)下側またはc)上側及び下側で、円弧状の保持部の縁端部の少なくとも一方が開いていることにより可能である。本発明によれば特に好ましくは、継手レール縁はa)上側またはb)下側またはc)上側及び下側で、つまりそれぞれ第2の縁の両端部で開いており、さらに円弧状の保持部及び円形状の増厚部の直径は遊びがたっぷり存在するよう決定されているので、バラ荷内で壁要素を取り扱う際に、壁要素が引っ掛かるのを回避することができる。
【0010】
本発明による装置は、円形状の増厚部及びこの増厚部を部分的に取り囲む円弧状の保持部によって形成された回転変位継手により連結された少なくとも二つの壁要素を有しており、したがって幾何的及び面積的に柔軟性が高い。例えば二つの壁要素を相互に連結しただけの場合、これらの壁要素は連結式の壁の形で用いることができ、この壁の個々の部分、つまり壁要素は、個別に水平方向に回転可能で垂直方向に変位可能である。本発明のさらなる一実施形態では、連結式の壁は、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十、またはそれ以上の壁要素から構成することもできる。さらなる一実施形態では、少なくとも三つ、しかし好ましくは四つ、五つ、六つ、七つ、またはそれ以上の壁要素を本発明による装置へと連結し、その際、壁要素が管状の装置を形成し、つまり空間を水平方向に管状に取り囲むこともできる。この実施形態では、最初と最後の壁要素も、本発明に基づくやり方で相互に、回転変位継手により相互に連結される。この本発明に基づく好ましい実施形態では、人または物を水平方向のすべての側で取り囲み、バラ荷から保護することができる。これにより本発明に従い好ましい実施形態では、本発明に基づく装置によりすべての側を取り囲まれた、人または物を保護しているゾーンから、バラ荷を、絶え間なく後から滑り落ちてくる危険なく吸い取ることもできる。したがって本発明による装置は、後から流れてくるバラ荷量を直線状に仕切ることを可能にするだけでなく、リング状に、局所的に限定された空間が埋まるのを防ぐことも可能にする。
【0011】
回転変位継手により最初と最後の壁要素を連結することによって空間を水平方向のすべての側で取り囲む場合、壁要素の互いに対する水平方向の回転はできないかまたは限定的にしかできない。
【0012】
壁要素は、バラ荷内でも互いに対して水平方向に回転させ得ることが有利である。これに加えて本発明による装置は、バラ荷内でも利用可能な垂直方向の柔軟性、つまり壁要素を互いに対して垂直方向に変位できることにより、バラ荷内の様々な高度に適合させることができ、且つバラ荷内の硬いブロック、構造上の条件、伸ばされた腕、または挟み込まれた脚を考慮することができる。個々の壁要素が互いに対して垂直方向に変位することも、壁要素が互いに対して水平方向に回転することも可能な、本発明に基づいて提供された装置により、埋まった人または物を、具体的な空間的状況において最適にバラ荷から保護し得ることが有利である。本発明によれば好ましい実施形態では、時間と共に変化していく状況に適応させ得るよう、本発明に基づいて提供された装置に、特に救助活動中にさらなる壁要素を後からはめ込むことができることが提供される。
【0013】
本発明による装置は、ほぼ任意の面積及び/又は幾何形状を取り得ることを特徴とし、例えば、本発明に基づいて提供される回転変位連結メカニズムにより、水平方向の広がりだけでなく垂直方向の向きでも一つの壁要素より大きな装置を提供することもできる。好ましい実施形態では、一つの壁要素の一つの継手レール縁が、重ねて押し込まれた二つの壁要素の二つの第1の縁、つまり継手ボルト縁を収容して固定することができる。これら押し込まれた両方の壁要素の継手レール縁は、例えば二つまたは三つのさらなる壁要素と回転及び変位可能に連結することができる。特に有利なのは、大きさ及び幾何形状に制限のないこの保護装置の作製に必要な個々の要素が、むしろ比較的小さく、非常に取り扱い易いということである。というのも個々の要素は実質的に長方形の壁要素であり、この壁要素はバラ荷の領域内で、したがって使用場所の近くで非常に良好に、差込装置、差込ピン上で、またはさらに平面的に相並べて若しくは重ねてストックできるのである。
【0014】
特に好ましい実施形態では、保持部の隙間は80〜150°、好ましくは90〜145°、特に90〜120°、好ましくは100°の角度寸法を有している。
【0015】
特に好ましい一実施形態では、壁要素は金属またはプラスチックから構成されており、特にそれらから成り、または実質的にそれらを含んでいる。特に好ましい実施形態では、壁要素は金属板であり、例えばアルミニウム板またはスチール板である。
【0016】
特に好ましい実施形態では、壁要素、特に金属板の厚さは0.1〜2cm、特に0.2〜1.5cm、0.3〜1cm、好ましくは0.4〜0.8cm、特に0.5〜0.6cmである。特に好ましい実施形態では、壁要素の基体は、特に二つの短い縁及び二つの長い縁を備えた長方形であり、この長い縁が、好ましくはそれぞれ円形状の増厚部及び円弧状の保持部を形成している第1及び第2の縁である。特に好ましい実施形態では壁要素の大きさは、短い縁の長さが20〜70cm、30〜65cm、好ましくは35〜60cm、特に35〜50cm、好ましくは37〜38cmである。好ましい実施形態では壁要素の大きさは、第1及び第2の縁の長さが60〜140cm、特に70〜130cm、好ましくは80〜120cm、特に90〜110cm、好ましくは100cmである。
【0017】
特に好ましい実施形態ではそれぞれの壁要素が、特に好ましい実施形態では管として、特に中空管として形成された第1の縁を備えており、且つ向かい側の第2の縁では円弧状の保持部、特にC字形の保持部、特に3/4円弧状の保持部を、例えばスリットのついた中空管の形で有していることが提供される。
【0018】
特に好ましい実施形態では、円弧状の保持部の隙間の開口寸法は、押し込まれた壁要素の回転が90〜145°、特に95〜140°の角度で可能であるように形成されていることが提供される。
【0019】
特に好ましい実施形態では、五つの壁要素から、断面で見ると五角形の管を形成している本発明に基づく装置が提供される。さらなる好ましい一実施形態では本発明による装置が六つの壁要素から形成されており、これらの壁要素は断面で見ると六角形の管を形成している。
【0020】
特に好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも二つの壁要素から成り、さらに長さ調節可能なテレスコピックバー(入れ子式の伸縮自在なバー)を有する前述の種類の装置も提供する。このようなテレスコピックバーは、救助状況に応じて本発明による装置の壁要素の少なくとも二つと連結することにより、例えばテレスコピックバーが追加的に壁要素上に差し込まれるか、またはテレスコピックバーが壁要素の一つ若しくは複数を代替することにより、壁要素、つまり装置を安定化することができる。
【0021】
したがって特に好ましい実施形態では、本発明は、回転変位継手によって相互に連結された少なくとも二つの壁要素を含み、この壁要素の二つがそれぞれ回転変位継手により少なくとも一本のテレスコピックバーと、少なくとも二つの壁要素が少なくとも一本のテレスコピックバーに対し、互いに対して垂直方向に変位可能で、互いに対して水平方向に少なくとも60°の角度で回転可能であるように連結されている、特に前述の種類の装置にも関している。
【0022】
つまり本発明によればこの好ましい実施形態では、テレスコピックバーが本発明による装置の少なくとも二つの壁要素を、互いに対して垂直方向に変位可能で、互いに対して水平方向に回転可能に連結しており、それも好ましくは着脱自在な方式で連結している。本発明に基づいて用いられたテレスコピックバーは特に好ましくは、その端部に断面で見ると円弧状の保持部及び断面で見ると円形状の増厚部を有している。特に好ましい実施形態では、テレスコピックバーはその端部に、壁要素の継手ボルト縁の断面で見ると円形状の増厚部を収容するのに適した断面で見ると円弧状の保持部を有している。テレスコピックバーのもう一方の端部は、特に好ましい実施形態では本発明による壁要素の円弧状の保持部を形成する継手レール縁に押し込み得る断面で見ると円形状の増厚部を有している。したがって本発明に基づく好ましいテレスコピックバーは本発明の壁要素と、一方の壁要素の縁と第1の回転変位継手が形成され、もう一方の壁要素の縁と第2の回転変位継手が形成され、こうして一つまたは複数の壁要素がテレスコピックバーに対し垂直方向に変位可能で水平方向に回転可能であるように、連結することができる。
【0023】
特に好ましい実施形態では、本発明は、本発明による装置の本質的な、特に唯一の構成要素である壁要素も提供する。好ましい実施形態では、このような壁要素は第1の縁及びその向かい側の第2の縁を備えており、この第1の縁は円形状の増厚部の形で形成されており、第2の縁は第2の縁の全長にわたって延びる隙間を有する円弧状の保持部の形で形成されている。特に好ましい実施形態では、円弧状の保持部が長手隙間を有する管として形成されている。さらなる好ましい一実施形態では、円形状の増厚部が管として形成されている。
【0024】
特に好ましい実施形態では、本発明は、本発明による装置の作製方法も提供し、これに関しては本発明の壁要素が、一つの壁要素の継手ボルト縁がさらなる壁要素の継手レール縁の開いた縁端部を通ってこの継手レール縁の長手軸に沿って継手レール縁に押し込まれることにより相互に連結され、こうして両方の壁要素が垂直方向及び水平方向に可動にするように着脱自在に相互に連結され、場合によっては前述のプロセスステップを繰り返すことによって一つまたは複数のさらなる壁要素が付け加えられて連結される。
【0025】
特に好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも一本のテレスコピックバーが少なくとも二つの壁要素と、特に第1の壁要素との第1の回転変位継手の形成及び第2の壁要素との第2の回転変位要素の形成により垂直方向及び水平方向に可動するように着脱自在に連結される本発明による装置の作製方法を提供する。
【0026】
本発明は、バラ荷によって埋まることにより危機に瀕した生物または物を保護するための方法も提供し、これに関し、第1のプロセスステップa)では少なくとも二つの本発明の壁要素が準備され、第2のプロセスステップb)では少なくとも二つの壁要素、特に三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、または八つの壁要素が本発明による装置へと相互に連結され、特に互いに対して垂直方向に変位可能で水平方向に回転可能に、特に二つの壁要素の間にそれぞれ構築される回転変位継手を形成しながら相互に連結され、第3のプロセスステップc)では本発明による装置のうち、特に少なくとも二つの相互に連結した壁要素が、バラ荷と生物または物の間に配置される。
【0027】
特に好ましい実施形態では、本発明は、さらなるプロセスステップで、少なくとも二つの壁要素をテレスコピックバーと垂直方向に変位可能で水平方向に回転可能に連結する、バラ荷によって埋まることにより危機に瀕した生物または物を保護するための前述の種類の方法も提供する。
【0028】
本発明は、生物または物がバラ荷によって埋まるのを防ぐための、本発明の壁要素または本発明の装置の使用にも関している。
【0029】
本発明のさらなる有利な形態は従属請求項から明らかである。
【0030】
以下の例及びそれに属する図に基づいて本発明を詳しく説明するが、本発明の保護範囲を制限するものではない。