(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニット構成要素は、一体ニット構造から形成されて、前記アッパーの外側側部に沿って、前記アッパーの内側側部に沿って、前記アッパーの足先領域の上に、かつ前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の履物製品。
前記インレイストランドのある部分は、前記下側区域から上方に前記開口の1つの第1側まで延び、部分的に当該1つの開口を周って前記第1側に対向する第2側まで延びており、さらに、前記1つの開口の前記第2側から下方に前記下側区域まで延びている、請求項15または請求項16に記載の履物製品。
前記インレイストランドの一部は、前記スロート区域から前記履物のかかと領域まで前記ニット要素を通って延びている、請求項15〜請求項17のいずれか一項に記載の履物製品。
前記ニット要素は、一体ニット構造から形成されており、前記アッパーの外側側部に沿って、前記アッパーの内側側部に沿って、前記アッパーの足先領域の上、かつ前記アッパーのかかと領域の周りに延びている、請求項15〜請求項19のいずれか一項に記載の履物製品。
前記インレイストランドは、外側側部および内側側部において前記スロート区域から前記下側区域まで延びている、請求項15〜請求項20のいずれか一項に記載の履物製品。
前記外面を形成する前記ニット要素の一部は、前記スロート区域と前記下側区域との間の前記インレイストランドの複数の部分を露出させる、請求項15〜請求項21のいずれか一項に記載の履物製品。
前記インレイストランドは、前記スロート区域の前記開口の周りに少なくとも部分的に延びており、前記スロート区域の前記外面と前記内面との間に配置されている、請求項25に記載の履物製品。
前記インレイストランドは、前記下側区域から前記開口の第1側まで延び、部分的に当該開口を周って前記第1側に対向する第2側まで延びており、さらに、前記開口の前記第2側から前記下側区域まで延びている、請求項25または請求項26に記載の履物製品。
前記外面を形成する前記ニット要素の一部は、前記スロート区域と前記下側区域との間に前記インレイストランドの複数の部分を露出させる、請求項29に記載の履物製品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明および添付の図面は、ニット構成要素およびニット構成要素の製造に関するさまざまな概念を開示する。ニット構成要素はさまざまな製品において利用してもよいが、一実施例としてニット構成要素の1つを組み込んでいる履物製品を以下に開示する。履物の他に、ニット構成要素は他の種類の衣料品(例、シャツ、ズボン、靴下、上着、下着)、運動用品(例、ゴルフバッグ、野球およびフットボール用のグローブ、サッカーボールの規制構造体)、入れ物(例、バックパック、バッグ)、および家具の装飾用品(例、椅子、ソファ、カーシート)に利用してもよい。ニット構成要素はベッドカバーリング(例、シーツ、毛布)、テーブルカバーリング、タオル、旗、テント、帆およびパラシュートに利用してもよい。ニット構成要素は、自動車および航空宇宙産業用の構造物、フィルタ材料、医療用の布(例、包帯、綿棒、移植組織片)、堤防を補強するためのジオテキスタイル、作物を保護するためのアグロテキスタイル、ならびに熱および放射から保護または絶縁する工業用衣料品を含め、産業用の技術的テキスタイルとして利用してもよい。したがって、本明細書で開示するニット構成要素および他の概念は、個人用および産業用の両方の目的のためのさまざまな製品に組み込んでもよい。
【0012】
履物の構成
図1〜
図4Cにソール構造110とアッパー120とを含む履物製品100が図示されている。履物100はランニングに適した一般的な構成を有するように描かれているが、履物100に関連する概念は、例えば野球靴、バスケットボールシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズ、トレーニングシューズ、ウォーキングシューズ、およびハイキングブーツを含め、さまざまな他の運動用の履物の種類にも適用してもよい。この概念は、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴を含め、一般に非運動用と考えられる履物の種類にも適用してもよい。したがって、履物100に関して開示する概念は、多様な履物の種類に適用される。
【0013】
参照のために、履物100は足先領域101と中足領域102とかかと領域103との大略的に3つの領域に分割してもよい。足先領域101は、大略的に、つま先、および中足骨と指骨とを接続する関節に対応する履物100の部分を含んでいる。中足領域102は、大略的に、足のアーチ区域に対応する履物100の部分を含んでいる。かかと領域103は、大略的に、踵骨を含めて足の後部に対応している。履物100は外側側部104および内側側部105も含んでおり、領域101〜103のそれぞれを通って延びており、履物100の両側に対応する。より具体的には、外側側部104は足の外側部位に対応し(つまり、反対の足から遠ざかる方を向く面)、内側側部105は足の内側部位に対応する(つまり、反対の足の方を向く面)。領域101〜103および側部104〜105は履物100の厳密な区域を区切ることを意図していない。むしろ、領域101〜103および側部104〜105は、以下の説明の助けになるように、履物100の大略的な区域を表すことを意図している。履物100に加えて、領域101〜103および側部104〜105はソール構造110、アッパー120およびそれらの個々の要素に適用してもよい。
【0014】
ソール構造110はアッパー120に固定されていて、履物100を履いたときに足と地面との間に延びる。ソール構造110の主要な要素はミッドソール111、アウトソール112、および中敷き113である。ミッドソール111はアッパー120の下面に固定されて、歩いているとき、走っているとき、または他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮されると、地面の反力を弱める(つまり、クッション材となる)圧縮可能なポリマー発泡体要素(例、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート発泡体)から形成してもよい。さらなる構成では、ミッドソール111は、さらに力を弱め、安定性を高め、足の動きに影響を与えるプレート、モデレータ、液体充填チャンバ、ラスティング要素、もしくはモーションコントロール部材を組み込んでもよく、またはミッドソール111は主に液体充填チャンバから形成してもよい。アウトソール112はミッドソール111の下面に固定されて、牽引力を付与するように織られた耐摩耗性のゴム材料から形成してもよい。中敷き113はアッパー120内に配置されていて、足の下面の下に延びて履物100の快適性を高めるように位置付けられている。ソール構造110のこの構成はアッパー120と接続して使用してもよいソール構造の一実施例を提供しているが、ソール構造110のさまざまな他の従来の構成または従来にない構成も利用してもよい。したがって、ソール構造110またはアッパー120とともに利用されるソール構造の特徴は大幅に変わってもよい。
【0015】
アッパー120は、ソール構造110に対して足を受け入れて固定するための空洞を履物100内に画定する。空洞は足を収容するような形状にされており、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上、かかとの周り、さらに足の下に延びている。空洞へのアクセスは、少なくともかかと領域103に配置されている足首開口部121により提供される。締めひも122がアッパー120のさまざまな開口123を通って延びており、着用者がアッパー120の寸法を調整してさまざまなプロポーションの足を収容できるようにする。さらに具体的には、締めひも122は着用者が足の周りにアッパー120を締めつけることができるようにし、締めひも122は着用者の空洞からの(つまり、足首開口部121を通して)足の出し入れを容易にするために、アッパー120を緩めることができる。さらに、アッパー120は締めひも122および開口123の下に延びて履物100の快適性を高めるベロ124を含んでいる。さらなる構成では、アッパー120は、(a)かかと領域103に安定性を高めるヒールカウンタ、(b)足先領域101に耐摩耗性材料で形成されているつま先ガード、ならびに(c)ロゴ、商標、および注意書きおよび材料情報を記載した札などの追加要素を含んでいてもよい。
【0016】
従来の履物のアッパーの多くは、例えば縫製または接着により接合されている多数の材料要素(例、織物、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)から形成されている。対して、アッパー120の大部分はニット構成要素130から形成されており、領域101〜103のそれぞれを通って、外側側部104および内側側部105の両方に沿い、足先領域101の上、さらにかかと領域103の周りに延びている。くわえて、ニット構成要素130はアッパー120の外面および対向する内面の両方の部分を形成している。このように、ニット構成要素130はアッパー120内に空洞の少なくとも一部を画成している。いくつかの構成では、ニット構成要素130は足の下にも延びていてもよい。しかし、
図4A〜
図4Cを参照すると、ストローベル式中敷き125がニット構成要素130およびミッドソール111の上面に固定されており、それにより中敷き113の下に延びているアッパー120の一部を形成している。
【0017】
ニット構成要素の構成
図5および
図6では、ニット構成要素130は履物100の残りの部分とは別に図示されている。ニット構成要素130は一体ニット構造から形成されている。本明細書で利用するように、ニット構成要素(例、ニット構成要素130)は、編みプロセスでワンピース要素として形成されると、「一体ニット構造」から形成されていると定義される。すなわち、編みプロセスは、大幅な追加の製造工程またはプロセスの必要なく、ニット構成要素130のさまざまな特徴および構造を実質的に形成する。ニット構成要素130の部分は編みプロセス後に互いに接合してもよいが(例、ニット構成要素130の縁部を互いに接合する)、ニット構成要素130はワンピースニット要素として形成されているため、依然として一体ニット構造から形成されたままである。また、ニット構成要素130は、編みプロセス後に他の要素(例、締めひも122、ベロ124、ロゴ、商標、注意書きおよび材料情報を記載した札)を追加しても、依然として一体ニット構造から形成されたままである。
【0018】
ニット構成要素130の主要な要素はニット要素131およびインレイストランド132である。ニット要素131は、さまざまなコースおよびウェールを画成する複数の互いにかみ合うループを形成するように操作される(例、編み機を用いて)少なくとも1本のヤーンから形成されている。すなわち、ニット要素131はニット布地の構造を有する。インレイストランド132はニット要素131を通って延びており、ニット要素131内のさまざまなループの間を通っている。インレイストランド132は一般にニット要素131内のコースに沿って延びているが、インレイストランド132はニット要素131のウェールに沿って延びていてもよい。インレイストランド132の利点は、支持、安定性および構造を提供することが含まれる。例えば、インレイストランド132はアッパー120を足の周りに固定するのを助け、アッパー120の区域での変形を制限し(例、耐伸張性を付与する)、締めひも122と連動して履物100のフィット性を高める。
【0019】
ニット要素131は、周縁部133、1対のかかと縁部134および内側縁部135により輪郭が描かれる略U字形の構成を有する。履物100に組み込まれるとき、周縁部133はミッドソール111の上面に載せて、ストローベル式中敷き125に接合される。かかと縁部134は互いに接合されており、かかと領域103に垂直に延びている。履物100のいくつかの構成では、材料要素はかかと縁部134間の縫い目を覆って、縫い目を補強するとともに、履物100の美観的な魅力を高めてもよい。内側縁部135は足首開口部121を形成して、締めひも122、開口123およびベロ124が配置される区域まで前方に延びている。くわえて、ニット要素131は第1面136と対向する第2面137とを有する。第1面136はアッパー120の外面の一部を形成するのに対し、第2面137はアッパー120の内面の一部を形成するので、アッパー120内に空洞の少なくとも一部を画成する。
【0020】
前述したように、インレイストランド132はニット要素131を通って延びており、ニット要素131内のさまざまなループの間を通過している。より具体的には、インレイストランド132はニット要素131のニット構造内に配置されており、これは
図7A〜
図7Dに図示するように、インレイストランド132の区域で、面136および面137との間に単一の布地層の構成を有していてもよい。そのため、ニット構成要素130が履物100に組み込まれるとき、インレイストランド132はアッパー120の外面と内面との間に配置される。いくつかの構成では、インレイストランド132の部分は可視でき、または面136および137の一方もしくは両方に露出していてもよい。例えば、インレイストランド132は面136および137の一方に載せてもよく、またはニット要素131はインレイストランドが通過する凹みもしくは開口を形成していてもよい。インレイストランド132を面136と面137との間に配置させる利点は、ニット要素131がインレイストランド132の擦過およびスナッギングを保護することである。
【0021】
図5および
図6を参照すると、インレイストランド132は周縁部133から内側縁部135に向かって、1つの開口123の側部に隣接して、開口123の少なくとも一部を周って、反対側まで、さらに周縁部133に戻るように繰り返し延びている。ニット構成要素130が履物100に組み込まれるとき、ニット要素131はアッパー120のスロート区域(つまり、締めひも122、開口123およびベロ124が配置されている場所)から、アッパー120の下側区域(つまり、ニット要素131がソール構造110と合わさる場所)まで延びている。この構成では、インレイストランド132もスロート区域から下側区域まで延びている。より具体的には、インレイストランドはスロート区域から下側区域までニット要素131を繰り返し通過している。
【0022】
ニット要素131はさまざまな方法で形成してもよいが、ニット構造のコースはインレイストランド132と略同じ方向に延びている。すなわち、コースはスロート区域と下側区域との間に延びる方向に延びていてもよい。このように、インレイストランド132の大部分はニット要素131内のコースに沿って延びている。しかし、開口123に隣接する区域では、インレイストランド132はニット要素131内のウェールに沿って延びていてもよい。より具体的には、内側縁部135に平行なインレイストランド132の区間はウェールに沿って延びていてもよい。
【0023】
前述したように、インレイストランド132はニット要素131を繰り返し通過している。
図5および
図6を参照すると、インレイストランド132は周縁部133でもニット要素131を出てから、周縁部133の別の場所でニット要素131に再進入することを繰り返しており、それによって周縁部133に沿ってループを形成している。この構成の利点は、スロート区域と下側区域との間に延びているインレイストランド132の各区間を、履物100の製造プロセス中に独立して緊張、弛緩またはその他調整してもよいことである。すなわち、ソール構造110をアッパー120に固定する前に、インレイストランド132の区間を適切な張力になるように独立して調整してもよい。
【0024】
ニット要素131と比べて、インレイストランド132はより大きな耐伸張性を呈してもよい。すなわち、インレイストランド132はニット要素131よりも伸張しなくてもよい。インレイストランド132の多数の区間がアッパー120のスロート区域からアッパー120の下側区域まで延びていることを考えると、インレイストランド132はスロート区域と下側区域との間のアッパー120の部分に耐伸張性を付与する。また、締めひも122に張力を加えることでインレイストランド132に張力を付与し、それによりスロート区域と下側区域との間のアッパー120の部分を足に当てるように誘導してもよい。このように、インレイストランド132は締めひも122と連動して、履物100のフィット性を高める。
【0025】
ニット要素131は、アッパー120の個別区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のヤーンと組み込んでもよい。すなわち、ニット要素131のある区域を、第1特性セットを付与する第1種のヤーンから形成してもよく、ニット要素131の別の区域を、第2特性セットを付与する第2種のヤーンから形成してもよい。この構成では、ニット要素131の異なる区域に特定のヤーンを選択することにより、アッパー120全体で特性を変えてもよい。特定の種類のヤーンがニット要素131の一区域に付与することになる特性は、ヤーン内のさまざまなフィラメントおよびファイバを形成している材料に部分的に依存する。例えば、綿は柔らかな手触り、自然な美観、および生物分解性を提供する。エラステインおよび伸縮性ポリエステルは、それぞれ実質的な伸縮性および復元力を提供し、伸縮性ポリエステルはリサイクル可能性も提供する。レーヨンは光沢に優れ、吸湿性を提供する。ウールも断熱性および生物分解性に加えて、高い吸湿性を提供する。ナイロンは耐久性があり耐擦過性材料で、比較的強度が高い。ポリエステルは疎水性の材料で、比較的高い耐久性も提供する。材料に加えて、ニット要素131のために選択される他の側面がアッパー120の特性に影響することもある。例えば、ニット要素131を形成するヤーンは単繊維または多繊維ヤーンであってもよい。ヤーンはそれぞれ異なる材料から形成される個別のフィラメントを含んでいてもよい。くわえて、ヤーンは、鞘芯構成を有するフィラメントまたは異なる材料から形成される2種類のフィラメントを用いた複合ヤーンなど、それぞれ2以上の異なる材料から形成される個別のフィラメントを含んでいてもよい。撚りおよび捲縮の程度を異ならせること、ならびにデニールを異ならせることでもアッパー120の特性に影響を与えてもよい。したがって、ヤーンを形成する材料およびヤーンの他の側面の両方を、アッパー120の個別区域にさまざまな特性を付与するために選択してもよい。
【0026】
ニット要素131を形成するヤーンと同様、インレイストランド132も大幅に変化させてもよい。ヤーンに加えて、インレイストランド132は、例えば、フィラメント(例、単繊維)、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、または鎖の構成を有していてもよい。ニット要素131を形成するヤーンと比べて、インレイストランド132の厚みは厚くてもよい。いくつかの構成では、インレイストランド132はニット要素131のヤーンよりも大幅に厚い厚みを有してもよい。インレイストランド132の断面形状は丸形でもよいが、三角形、正方形、長方形、楕円形または不規則な形状を利用してもよい。また、インレイストランド132を形成する材料は、綿、エラステイン、ポリエステル、レーヨン、ウールおよびナイロンなど、ニット要素131内のヤーンの材料のいずれを含んでいてもよい。前述したように、インレイストランド132はニット要素131よりも大きい耐伸縮性を示してもよい。このように、インレイストランド132に適した材料は、ガラス、アラミド(例、パラアラミドおよびメタアラミド)、超高分子量ポリエチレン、ならびに液晶ポリマーを含め、高引張り強さの用途で利用されるさまざまな工学的フィラメントを含んでいてもよい。別の例として、インレイストランド132としてポリエステル製組糸を利用してもよい。
【0027】
ニット構成要素130の一部に適した構成の実施例を
図8Aに図示している。この構成では、ニット要素131は複数の水平コースおよび垂直ウェールを画定する複数の互いにかみ合うループを形成するヤーン138を含んでいる。インレイストランド132はコースの1つに沿って延びており、(a)ヤーン138から形成されるループの背後と(b)ヤーン138から形成されるループの前とに交互に配置されている。実際には、インレイストランド132はニット要素131によって形成される構造を縫うように通っている。この構成ではヤーン138はコースのそれぞれを形成するが、追加のヤーンがコースの1以上を形成してもよく、またはコースの1以上の一部を形成してもよい。
【0028】
ニット構成要素130の一部に適した構成の別の実施例を
図8Bに図示している。この構成では、ニット要素131はヤーン138と別のヤーン139とを含んでいる。ヤーン138および139は添え糸編みされて、複数の水平コースおよび垂直ウェールを画定する複数の互いにかみ合うループを共同で形成している。すなわち、ヤーン138および139は互いに平行に走行している。
図8Aの構成と同様に、インレイストランド132はコースのうちの1つに沿って延びており、(a)ヤーン138および139から形成されるループの背後と、(b)ヤーン138および139から形成されるループの前との間に交互に配置されている。この構成の利点は、ヤーン138および139のそれぞれの特性がニット構成要素130のこの区域に存在してもよいことである。例えば、ヤーン138の色が主にニット要素131のさまざまな編み目の表面に現れ、ヤーン139の色が主にニット要素131のさまざまな編み目の裏面に現れるとすれば、ヤーン138および139は異なる色を有していてもよい。別の実施例として、ヤーン138が主に第1面136に現れ、ヤーン139が主に第2面137に現れるとすれば、ヤーン139はヤーン138よりも柔らかく、足に対してより快適なヤーンから形成してもよい。
【0029】
図8Bの構成に続くと、ヤーン138は熱硬化性ポリマーおよび天然繊維(例、綿、ウール、絹)のうちの少なくとも1つから形成してもよく、一方ヤーン139は熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。一般に、熱可塑性ポリマー材料は加熱すると溶け、冷却すると固体状態に戻る。より具体的には、熱可塑性ポリマー材料は十分な熱を受けると固体状態から軟化した状態または液体状態に遷移し、さらに熱可塑性ポリマー材料は十分に冷却すると軟化した状態または液体状態から固体状態に遷移する。このように、熱可塑性ポリマー材料は2つの物体または要素を接合するためにしばしば使用される。この場合、ヤーン139は、例えば、(a)ヤーン138のある部分をヤーン138の別の部分に、(b)ヤーン138とインレイストランド132とを互いに、または(c)別の要素(例、ロゴ、商標、ならびに注意書きおよび材料情報を記載した札)をニット構成要素130に接合するために利用してもよい。このように、ヤーン139は、ニット構成要素130の部分を互いに融着またはその他接合するために使用してもよいのであれば、融着性ヤーンと考えてもよい。また、ヤーン138は、一般にニット構成要素130の部分を互いに融着またはその他接合できる材料から形成されていないのであれば、非融着性ヤーンと考えてもよい。すなわち、ヤーン138は非融着性ヤーンとしてもよく、一方ヤーン139は融着性ヤーンとしてもよい。ニット構成要素130のいくつかの構成では、ヤーン138(つまり、非融着性ヤーン)は実質的に熱硬化性ポリエステル材料から形成してもよく、ヤーン139(つまり、融着性ヤーン)は少なくとも部分的に熱可塑性ポリエステル材料から形成してもよい。
【0030】
添え糸編みしたヤーンの使用はニット構成要素130に利点を付与することがある。ヤーン139を加熱して、ヤーン138およびインレイストランド132に融着する場合、このプロセスはニット構成要素130の構造を剛くまたは堅くする効果を有することがある。また、(a)ヤーン138のある部分をヤーン138の別の部分に、または(b)ヤーン138とインレイストランド132を互いに接合すると、ヤーン138およびインレイストランド132の相対的な位置を固定またはロックする効果を有し、それにより耐伸張性および剛性を付与する。すなわち、ヤーン138の部分はヤーン139と融着しても互いに対して滑らず、それによりニット構造の相対的な動きによるニット要素131のねじれまたは永久的な伸びを防止する。別の利点は、ニット構成要素130の一部が傷んできた、またはヤーン138の1つが切れる場合にほつれを制限することに関わる。また、インレイストランド132はニット要素131に対して滑ることがなく、それによりインレイストランド132の部分がニット要素131から外側に引っ張られるのを防止する。したがって、ニット構成要素130の区域は、ニット要素131内に融着性ヤーンおよび非融着性ヤーンを両方使用することで利益が生まれるであろう。
【0031】
ニット構成要素130の別の側面は、足首開口部121に隣接し、足首開口部121の周りに少なくとも部分的に延びているパッド入り区域に関わる。
図7Eを参照すると、パッド入り区域は、一体ニット構造から形成してもよい、重複して少なくとも部分的に同一の広がりをもつ2つのニット層140と、ニット層140間に延びている複数のフローティングヤーン141によって形成されている。ニット層140の側部および縁部は互いに固定されているが、中央区域は一般に固定されていない。このように、ニット層140はチューブまたは筒状構造を効果的に形成し、フローティングヤーン141は筒状構造を貫通するようにニット層140間に配置され、または挿入されてもよい。すなわち、フローティングヤーン141はニット層140間に延びており、ニット層140の表面に略平行で、さらにニット層140間を貫通してその内部空間を埋める。ニット要素131の大部分は機械操作されるヤーンから形成して、互いにかみ合うループを形成するが、フローティングヤーン141は一般にニット層140間の内部空間内で自由であり、またはその他挿入されている。追加事項として、ニット層140は少なくとも部分的にストレッチヤーンから形成してもよい。この構成の利点は、ニット層がフローティングヤーン141を効果的に圧縮し、足首開口部121に隣接するパッド入り区域に弾性性質を提供することである。すなわち、ニット層140内のストレッチヤーンはニット構成要素130を形成する編みプロセス中に緊張状態で配置され、それによりニット層140を、フローティングヤーン141を圧縮するように誘導してもよい。ストレッチヤーンの伸縮性の程度は大幅に変えてもよいが、ニット構成要素130の多くの構成においてストレッチヤーンは少なくとも百パーセント
伸張してもよい。
【0032】
フローティングヤーン141の存在は足首開口部121に隣接するパッド入り区域に圧縮可能な性質を付与し、それにより履物100の足首開口部121の区域の快適性を高める。多くの従来の履物製品はポリマー発泡体要素または他の圧縮可能な材料を足首開口部に隣接する区域に組み込んでいる。従来の履物製品に対し、一体ニット構造から形成するニット構成要素130の部分はニット構成要素130の残りの部分とともに、足首開口部121に隣接するパッド入り区域を形成してもよい。履物100のさらなる構成において、ニット構成要素130の他の区域に同様なパッド入り区域を配置してもよい。例えば、関節にパッドを付与するために、中足骨と近位指骨との間の関節に対応する区域として同様なパッド入り区域を配置してもよい。あるいは、アッパー120の区域にある程度のパッドを付与するために、テリーループ構造を利用してもよい。
【0033】
上記の説明に基づき、ニット構成要素130はアッパー120にさまざまな特徴を付与する。また、ニット構成要素130はいくつかの従来のアッパー構成より優れたさまざまな利点を提供する。前述したように、従来の履物のアッパーは、例えば縫製または接着により接合される複数の材料要素(例、布地、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)から形成されている。アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増えるほど、材料要素を輸送、保管、切断および接合することに関連する時間および費用も増大するであろう。切断および縫製プロセスから出る廃材も、アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増えるほど、より多く蓄積する。また、材料要素の数が多いアッパーは、種類および数が少ない材料要素から形成されているアッパーよりもリサイクルが難しくなるであろう。そのため、アッパーに利用される材料要素の数を減らすことにより、アッパーの製造効率およびリサイクル性を高めながら廃棄物が減少するであろう。このために、ニット構成要素130は、製造効率を高め、廃棄物を減少し、リサイクル性を簡単にしながら、アッパー120の実質的な部分を形成する。
【0034】
さらなるニット構成要素の構成
ニット構成要素150が
図9および
図10に図示されており、履物100のニット構成要素130の代わりに利用してもよい。ニット構成要素150の主要な要素は、ニット要素151およびインレイストランド152である。ニット要素151は操作される(例、編み機を用いて)少なくとも1本のヤーンから形成され、さまざまなコースおよびウェールを画定する複数の互いにかみ合うループを形成する。すなわち、ニット要素151はニット布地の構造を有する。インレイストランド152はニット要素151を通って延びており、ニット要素151内のさまざまなループの間を通過している。インレイストランド152は大略的にニット要素151内のコースに沿って延びているが、インレイストランド152はニット要素151内のウェールに沿って延びていてもよい。インレイストランド132と同様、インレイストランド152は耐伸張性を付与し、履物100に組み込まれると、締めひも122と連動して履物100のフィット性を高める。
【0035】
ニット要素151は、周縁部153、1対のかかと縁部154および内側縁部155によって輪郭が描かれる略U字形の構成を有する。くわえて、ニット要素151は第1面156および対向する第2面157を有する。第1面156はアッパー120の外面の一部を形成してもよく、一方、第2面157はアッパー120の内面の一部を形成してもよいため、アッパー120内に空洞の少なくとも一部を画定する。多くの構成では、ニット要素151はインレイストランド152の区域で単一の布地層の構成を有していてもよい。すなわち、ニット要素151は面156と面157との間の単一の布地層であってもよい。くわえて、ニット要素151は複数の開口158を画定する。
【0036】
インレイストランド132と同様に、インレイストランド152は周縁部153から内側縁部155に向かって、少なくとも部分的に開口158の1つを周って、さらに周縁部153に戻るように繰り返し延びている。しかし、インレイストランド132と対照的に、インレイストランド152のある部分は後方に角度をつけて曲がり、かかと縁部154まで延びている。より具体的には、最後方の開口158に関連するインレイストランド152の部分は、かかと縁部154の1つから内側縁部155に向かって、少なくとも部分的に最後方の開口158を周って、さらにかかと縁部154の1つに戻るように延びている。さらに、インレイストランド152のいくつかの部分は開口158の1つの周りに延びていない。さらに具体的には、インレイストランド152のいくつかの区画は内側縁部155に向かって延びており、開口158の1つに隣接する区域で方向転換して、周縁部153またはかかと縁部154の1つに向かって戻るように延びている。
【0037】
ニット要素151はさまざまな方法で形成してもよいが、ニット構造のコースは大略的にインレイストランド152と同じ方向に延びている。しかし、開口158に隣接する区域では、インレイストランド152はニット要素151内のウェールに沿って延びていてもよい。より具体的には、内側縁部155に平行なインレイストランド152の区画はウェールに沿って延びていてもよい。
【0038】
ニット要素151と比べ、インレイストランド152はより大きな耐伸張性を示してもよい。すなわち、インレイストランド152はニット要素151よりも伸張しなくてもよい。インレイストランド152の多数の区画がニット要素151を通って延びているのであれば、インレイストランド152はスロート区域と下側区域との間のアッパー120の部分に耐伸張性を付与してもよい。また、締めひも122に張力をかけることでインレイストランド152に張力を付与し、それによってスロート区域と下側区域との間のアッパー120の部分を足に当てるように誘導してもよい。さらに、インレイストランド152の多数の区画がかかと縁部154に向かって延びているのであれば、インレイストランド152はアッパー120のかかと領域103の部分に耐伸張性を付与してもよい。また、締めひも122に張力をかけることで、かかと領域103のアッパー120の部分が足に当たるように誘導してもよい。このように、インレイストランド152は締めひも122と連動して、履物100のフィット性を高める。
【0039】
ニット要素151は、ニット要素131について上記説明したさまざまな種類のヤーンのいずれを組み込んでもよい。インレイストランド152も、インレイストランド132について上記説明した構成および材料のいずれから形成してもよい。さらに、
図8Aおよび
図8Bに関して説明したさまざまなニット構成も、ニット構成要素150で利用してもよい。より具体的には、ニット要素151は単一のヤーン、2種類を添え糸編みしたヤーン、または融着性ヤーンおよび非融着性ヤーンから形成される区域を有していてもよく、融着性ヤーンが、(a)非融着性ヤーンのある部分を非融着性ヤーンの別の部分に、または(b)非融着性ヤーンとインレイストランド152を互いに接合する。
【0040】
ニット要素131の大部分は、比較的テクスチャード加工していない布地、共通または単一ニット構造(例、筒状ニット構造)から形成されているように図示されている。対して、ニット要素151はニット構成要素150の異なる区域に特定の特性および利点を付与するさまざまなニット構造を組み込んでいる。また、さまざまなヤーンの種類をニット構造と組み合わせることにより、ニット構成要素150はアッパー120の異なる区域に幅広い特性を付与してもよい。
図11を参照すると、ニット構成要素150の模式図は異なるニット構造を有するさまざまなゾーン160〜169を示しており、そのそれぞれをここで詳細に説明していく。参照のために、
図11では、領域101〜103および側部104および105のそれぞれは、ニット構成要素150が履物100に組み込まれたときに、ニットゾーン160〜169の位置の参照となるように示している。
【0041】
筒状ニットゾーン160は、周縁部153の大部分に沿って、側部104および105の両方の領域101〜103のそれぞれを通って延びている。筒状ニットゾーン160は、境界領域101および102にほぼ配置されている区域で側部104および105のそれぞれから内側にも延びて、内側縁部155の前方部分を形成している。筒状ニットゾーン160は比較的テクスチャード加工していないニット構成を形成している。
図12Aを参照すると、筒状ニットゾーン160の区域を通る断面が図示されており、面156および157は互いに実質的に平行である。筒状ニットゾーン160は履物100にさまざまな利点を付与する。例えば、筒状ニットゾーン160は、特に筒状ニットゾーン160のヤーンを融着性ヤーンで添え糸編みすると、他のいくつかのニット構造よりも耐久性および耐摩耗性がある。さらに、筒状ニットゾーン160の比較的テクスチャード加工していない性質はストローベル式中敷き125を周縁部153に接合するプロセスを簡単にする。すなわち、周縁部153に沿って配置されている筒状ニットゾーン160の部分は、履物100のラスティングプロセスを容易にする。参照のために、
図13Aは筒状ニットゾーン160を編みプロセスで形成する態様のループ図を図示している。
【0042】
2つのストレッチニットゾーン161が周縁部153から延びており、足の中足骨と近位指骨との間の関節の位置に対応するように配置されている。すなわち、ストレッチゾーンは、境界領域101および102にほぼ配置されている区域で周縁部から内側に延びている。筒状ニットゾーン160と同様に、ストレッチニットゾーン161のニット構成は筒状ニット構造にしてもよい。しかし、筒状ニットゾーン160と対照的に、ストレッチニットゾーン161はニット構成要素150に伸縮性および復元性を付与するストレッチヤーンから形成されている。ストレッチヤーンの伸縮性の程度は大幅に変わってもよいが、ニット構成要素150の多くの構成においてストレッチヤーンは少なくとも百パーセント
伸張してもよい。
【0043】
筒状の両面タックニットゾーン162が、少なくとも中足領域102の内側縁部155の部分に沿って延びている。筒状の両面タックニットゾーン162も比較的テクスチャード加工していないニット構成を形成してもよいが、筒状ニットゾーン160よりも厚い厚みを有する。断面では、筒状の両面タックニットゾーン162は
図12Aと類似しており、面156および157は互いに実質的に平行である。筒状の両面タックニットゾーン162は履物100にさまざまな利点を付与する。例えば、筒状の両面タックニットゾーン162は他のいくつかのニット構造よりも耐伸張性があり、締めひも122が筒状の両面タックニットゾーン162およびインレイストランド152に張力をかけるとき有利である。参照のために、
図13Bは、筒状の両面タックニットゾーン162を編みプロセスで形成する態様のループ図を図示している。
【0044】
1×1メッシュのニットゾーン163が足先領域101に配置されて、周縁部153から内側に離れている。1×1メッシュのニットゾーンは、
図12Bに図示するように、C字形の構成を有し、ニット要素151を通って、第1面156から第2面157まで延びている複数の開口を形成している。開口はニット構成要素150の通気性を高め、空気をアッパー120に進入させ、水分をアッパー120から逃がすことができる。参照のために、
図13Cは、1×1メッシュのニットゾーン163を編みプロセスで形成する態様のループ図を図示している。
【0045】
2×2メッシュのニットゾーン164が1×1メッシュのニットゾーン163に隣接して延びている。1×1メッシュのニットゾーン163と比べて、2×2メッシュのニットゾーン164はより大きな開口を形成し、ニット構成要素150の通気性をさらに高めるであろう。参照のために、
図13Dは、2×2メッシュのニットゾーン164を編みプロセスで形成する態様のループ図を図示している。
【0046】
3×2メッシュのニットゾーン165が2×2メッシュのニットゾーン164内に配置されており、別の3×2メッシュのニットゾーン165がストレッチゾーン161の1つに隣接して配置されている。1×1メッシュのニットゾーン163および2×2メッシュのニットゾーン164と比べて、3×2メッシュのニットゾーン165はさらに大きな開口を形成し、ニット構成要素150の通気性をさらに高めるであろう。参照のために、
図13Eは、3×2メッシュのニットゾーン165を編みプロセスで形成する態様のループ図を図示している。
【0047】
1×1モックメッシュのニットゾーン166が足先領域101に配置されており、1×1メッシュのニットゾーン163の周りに延びている。ニット要素151を通る開口を形成するメッシュのニットゾーン163〜165と対照的に、
図12Cに図示するように、1×1モックメッシュのニットゾーン166は第1面156に凹みを形成する。履物100の美観を向上させることに加えて、1×1モックメッシュのニットゾーン166はニット構成要素150の柔軟性を高めるとともに、全体の質量を減少させる。参照のために、
図13Fは、1×1モックメッシュのニットゾーン166を編みプロセスで形成する態様のループ図を図示している。
【0048】
2つの2×2モックメッシュのニットゾーン167がかかと領域に、かかと縁部154に隣接して配置されている。1×1モックメッシュのニットゾーン166と比べて、2×2モックメッシュのニットゾーン167は第1面156により大きな凹みを形成する。
図12Dに図示するように、インレイストランド152が2×2モックメッシュのニットゾーン167の凹みを通って延びている区域では、インレイストランド152は見えて、凹みの下側区域に露出されるであろう。参照のために、
図13Gは、2×2モックメッシュのニットゾーン167を編みプロセスで形成する態様のループ図を図示している。
【0049】
2つの2×2ハイブリッドニットゾーン168が中足領域102に、2×2モックメッシュのニットゾーン167の前方に配置されている。2×2ハイブリッドニットゾーン168は2×2メッシュのニットゾーン164および2×2モックメッシュのニットゾーン167の特徴を共有する。より具体的には、2×2ハイブリッドニットゾーン168は2×2メッシュのニットゾーン164のサイズおよび構成を有する開口を形成するとともに、2×2ハイブリッドニットゾーン168は2×2モックメッシュのニットゾーン167のサイズおよび構成を有する凹みを形成する。
図12Eに図示するように、インレイストランド152が2×2ハイブリッドニットゾーン168の凹みを通って延びている区域では、インレイストランド152は見えて露出している。参照のために、
図13Hは、2×2ハイブリッドニットゾーン168を編みプロセスで形成する態様のループ図を図示している。
【0050】
ニット構成要素150は、ニット構成要素130について上記説明した足首開口部121に隣接して、少なくとも部分的に足首開口部121の周りに延びているパッド入り区域の一般構成を有する2つのパッド入りゾーン169を含んでいてもよい。このように、パッド入りゾーン169は、重複して少なくとも部分的に同一の広がりをもつ一体ニット構造から形成してもよい2つのニット層と、ニット層の間に延びている複数のフローティングヤーンとによって形成されている。
【0051】
図9および
図10との比較から、ニット要素151のテクスチャリングの大部分は、第2面157ではなく、第1面156に配置されていることが明らかになる。すなわち、モックメッシュのニットゾーン166および167により形成される凹み、ならびに2×2ハイブリッドニットゾーン168の凹みは、第1面156に形成される。この構成は履物100の快適性を高めるという利点を有する。より具体的には、この構成は第2面157の比較的テクスチャード加工していない構成を足に当てる。
図9と
図10とのさらなる比較から、インレイストランド152の部分は第1面156で露出しているが、第2面157では露出していないことが明らかになる。この構成も履物100の快適性を高めるという利点を有する。さらに具体的には、インレイストランド152をニット要素151の一部により足から離すことにより、インレイストランド152が足に接触することはない。
【0052】
ニット構成要素130の追加構成を
図14A〜
図14Cに図示している。ニット構成要素130に関係して説明するが、これらの構成のそれぞれに関連する概念はニット構成要素150にも利用してもよい。
図14Aを参照すると、インレイストランド132はニット構成要素130にはない。インレイストランド132はニット構成要素130の区域に耐伸張性を付与するが、いくつかの構成ではインレイストランド132からの耐伸張性を必要としなくてもよい。また、いくつかの構成はアッパー120の伸縮性が大きいことから利益を得ることがある。
図14Bを参照すると、ニット要素131はニット要素131の残りの部分と合わせて一体ニット構造から形成されて、周縁部133でニット構成要素130の長さに沿って延びている2つのフラップを含んでいる。履物100に組み込む場合、フラップ142がストローベル式中敷き125に置き換わってもよい。すなわち、フラップ142は、中敷き113の下に延びて、ミッドソール111の上面に固定されているアッパー120の一部を共同で形成してもよい。
図14Cを参照すると、ニット構成要素130は中足領域102に制限されている構成を有する。この構成では、他の材料要素(例、布地、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)を、例えば縫製または接着によりニット構成要素130に接合して、アッパー120を形成してもよい。
【0053】
上記の説明に基づき、ニット構成要素130および150のそれぞれは、アッパー120に特徴および利点を付与するさまざまな構成を有していてもよい。より具体的には、ニット要素131および151はアッパー120の異なる区域に特定の特性を付与するさまざまなニット構造およびヤーンの種類を組み込んでもよく、インレイストランド132および152はアッパー120の区域に耐伸張性を付与し、締めひも122と連動して履物100のフィット性を高めるように、ニット構造を通って延びていてもよい。
【0054】
編み機およびフィーダーの構成
編みは手で行ってもよいが、ニット構成要素の商業的な製造は一般に編み機で行われる。ニット構成要素130および150のいずれの生産にも適した編み機200の一実施例を
図15に図示している。編み機200は例示のためにVベッド型横編み機の構成を有しているが、ニット構成要素130および150またはニット構成要素130および150の側面のいずれも他の種類の編み機で生産してもよい。
【0055】
編み機200は互いに対して角度を成すことによりVベッドを形成している2つの針床201を含んでいる。針床201のそれぞれは共通平面上にある複数の個々の針202を含んでいる。すなわち、一方の針床201からの針202は第1平面にあり、他方の針床201からの針202は第2平面にある。第1平面および第2平面(つまり、2つの針床201)は互いに対して角度を成しており、相交わって編み機200の幅の大部分に沿って延びている交差部を形成する。以下さらに詳細に説明するように、針202はそれぞれ後退する第1位置と、延伸する第2位置とを有する。第1位置では、針202は第1平面と第2平面とが相交わる交差部から離れている。しかし、第2位置では、針202は第1平面と第2平面とが相交わる交差部を通過する。
【0056】
1対のレール203が針床201の交差部の上にかつ平行に延びており、複数の標準フィーダー204およびコンビネーションフィーダー220の装着ポイントを提供する。各レール203は2つの側部を有し、そのそれぞれが1つの標準フィーダー204または1つのコンビネーションフィーダー220のいずれかを収容する。このように、編み機200は合計で4つのフィーダー204および220を含んでもよい。図示するように、最前列のレール203は対向する側部に1つのコンビネーションフィーダー220および1つの標準フィーダー204を含み、最後列のレール203は対向する側部に2つの標準フィーダー204を含んでいる。2本のレール203を図示しているが、編み機200のさらなる構成は追加のレール203を組み込んで、より多くのフィーダー204および220の装着ポイントを提供してもよい。
【0057】
キャリッジ205の作用により、フィーダー204および220はレール203および針床201に沿って移動し、それによって針202にヤーンを供給する。
図15では、ヤーン206はスプール207によってコンビネーションフィーダー220に供給されている。より具体的には、ヤーン206はスプール207からさまざまなヤーンガイド208、ヤーン引きばね209およびヤーンテンショナー210に延びてから、コンビネーションフィーダー220に進入する。図示していないが、ヤーンをフィーダー204に供給するために、追加スプール207を利用してもよい。
【0058】
標準フィーダー204は、編み機200などのVベッド型横編み機で従来から利用されている。すなわち、既存の編み機は標準フィーダー204を組み込んでいる。各標準フィーダー204は、針202によって編み、タック編みおよび浮き編みされるヤーンを供給する能力を有する。比較として、コンビネーションフィーダー220は、針202によって編み、タック編みおよび浮き編みされるヤーン(例、ヤーン206)を供給する能力を有すると共に、ヤーンを挿入する能力を有する。また、コンビネーションフィーダー220はさまざまな異なるステップ(例、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、鎖またはヤーン)を挿入する能力を有する。したがって、コンビネーションフィーダー220は各標準フィーダー204よりも優れた汎用性を示す。
【0059】
前述したように、コンビネーションフィーダー220は、ヤーンを編み、タック編みおよび浮き編みすることに加えて、ヤーンまたは他のストランドを挿入するときに利用してもよい。コンビネーションフィーダー220を組み込んでいない従来の編み機もヤーンを挿入してもよい。より具体的には、インレイフィーダーが供給されている従来の編み機もヤーンを挿入してもよい。Vベッド型横編み機の従来のインレイフィーダーは、ヤーンを挿入するために連動する2つの構成要素を含んでいる。インレイフィーダーの構成要素のそれぞれが、2つの隣接するレール上の個別の装着ポイントに固定されており、それによって2つの装着ポイントを占めている。個々の標準フィーダー204は1つの装着ポイントしか占めないが、インレイフィーダーを利用してヤーンをニット構成要素に挿入するときには一般に2つの装着ポイントが占められる。また、コンビネーションフィーダー220は1つの装着ポイントしか占めないが、従来のインレイフィーダーは2つの装着ポイントを占める。
【0060】
編み機200が2本のレール203を含んでいるのであれば、編み機200には4つの装着ポイントが利用できる。従来のインレイフィーダーを編み機200に利用した場合、標準フィーダー204には2つの装着ポイントしか利用できないであろう。しかし、編み機200にコンビネーションフィーダー220を使用すると、標準フィーダー204に3つの装着ポイントが利用できる。したがって、ヤーンまたは他のストランドを挿入するときにコンビネーションフィーダー220を利用してもよく、コンビネーションフィーダー220は1つの装着ポイントしか占めないという利点を有する。
【0061】
キャリア230、フィーダーアーム240および1対の作動部材250を含むコンビネーションフィーダー220を
図16〜
図19に個別に図示している。コンビネーションフィーダー220の大半は金属材料(例、スチール、アルミニウム、チタン)から形成してもよいが、キャリア230、フィーダーアーム240および作動部材250の部分は、例えば、ポリマー、セラミックまたは複合材料から形成してもよい。前述したように、コンビネーションフィーダー220は、ヤーンを編み、タック編みおよび浮き編みするときに加えて、ヤーンまたは他のストランドを挿入するときに利用してもよい。特に
図16を参照すると、ストランドがコンビネーションフィーダー220に界接する態様を例示するために、ヤーン206の一部が図示されている。
【0062】
キャリア230は略方形構成を有しており、4本のボルト233で接合されている第1カバー部材231および第2カバー部材232を含んでいる。カバー部材231および232は、フィーダーアーム240および作動部材250の部分が配置されている内部空洞を画定している。キャリア230はフィーダー220をレール230のうちの1本に固定するために、第1カバー部材231から外側に延びている装着要素234も含んでいる。装着要素234の構成は変わることがあるが、
図17に図示するように、装着要素234は鳩尾形状を形成する2つの離間した張出区域を含むように図示されている。レール203のうちの1本の逆鳩尾構成が装着要素234の鳩尾形状まで延びて、コンビネーションフィーダー220を編み機200に効果的に接合してもよい。
図18に図示するように、第2カバー部材232は中心に位置して細長いスロット235を形成することにも留意するべきである。
【0063】
フィーダーアーム240は、キャリア230(つまり、カバー部材231と232との間の空洞)を通って、キャリア230の下側から外側に延びている略細長い構成を有する。他の要素に加えて、フィーダーアーム240は作動ボルト241と、ばね242と、プーリ243と、ループ244と、給糸区域245とを含んでいる。作動ボルト241はフィーダーアーム240から外側に延びており、カバー部材231と232との間の空洞内に位置している。
図18に図示するように、作動ボルト241の片側は第2カバー部材232のスロット235内にも配置されている。ばね242はキャリア230およびフィーダーアーム240に固定されている、より具体的には、ばね242の一端がキャリア230に固定されており、ばね242の他端がフィーダーアーム240に固定されている。プーリ243、ループ244および給糸区域245がフィーダーアーム240に存在して、ヤーン206または別のストランドと界接する。また、プーリ243、ループ244および給糸区域245は、ヤーン206または別のストランドがコンビネーションフィーダー220をスムーズに通過することを確実にし、それによって針202に確実に供給されるように構成されている。再び
図16を参照すると、ヤーン206はプーリ243を周り、ループ244を通って、給糸区域245に延びている。くわえて、ヤーン206は、フィーダーアーム240の末端領域である給糸先端部246から延びて、さらに針202に供給される。
【0064】
作動部材250のそれぞれはアーム251およびプレート252を含んでいる。作動部材250の多くの構成では、各アーム251はプレート252の1枚とともにワンピース要素として形成されている。アーム251はキャリア230の外側かつキャリア230の上側に配置されているが、プレート252はキャリア230内に配置されている。アーム251のそれぞれは外側端253および反対の内側端254を画成する細長い構成を有し、アーム251は両内側端254の間の空間を画成するように位置付けられている。すなわち、アーム251は互いに離間している。プレート252は略平面構成を有する。
図19を参照すると、プレート252のそれぞれは傾斜縁部257を備える開口256を画定する。また、フィーダーアーム240の作動ボルト241が各開口256に延びている。
【0065】
前述したコンビネーションフィーダー220の構成は、フィーダーアーム240の並進運動を容易にする構造を提供する。以下さらに詳細に述べるように、フィーダーアーム240の並進運動は給糸先端部246を針床201の交差部の上または下の位置に選択的に位置付ける。すなわち、給糸先端部246は針床201の交差部を通って往復運動する能力を有する。フィーダーアーム240の並進運動の利点は、コンビネーションフィーダー220が、(a)給糸先端部246が針床201の交差部の上に位置付けられるとき、編み、タック編みおよび浮き編みをするためにヤーン206を供給する、ならびに(b)給糸先端部246が針床201の交差部の下に位置付けられるとき、挿入するためにヤーン206または別のストランドを供給することである。また、フィーダーアーム240はコンビネーションフィーダー220が利用されている態様によって2つの位置の間を往復運動する。
【0066】
針床201の交差部を往復運動する際、フィーダーアーム240は後退位置から延伸位置まで並進する。後退位置にあるとき、給糸先端部246は針床201の交差部の上に位置付けられる。延伸位置にあるとき、給糸先端部246は針床201の交差部の下に位置付けられる。フィーダーアーム240が延伸位置にあるときよりもフィーダーアーム240が後退位置にあるときの方が、給糸先端部246はキャリア230に近い。同様に、フィーダーアーム240が後退位置にあるときよりもフィーダーアーム240が延伸位置にあるときの方が、給糸先端部246はキャリア230から遠い。言い換えると、給糸先端部246は延伸位置ではキャリア230から離れるように移動し、給糸先端部246は後退位置にあるときはキャリア230に近づくように移動する。
【0067】
図16〜20Cおよび後で説明するさらなる図面において参照のために、矢印221を給糸区域245に隣接して位置付けている。矢印221が上向きまたはキャリア230に向かう方向を指している場合、フィーダーアーム240は後退位置にある。矢印221が下向きまたはキャリア230から遠ざかる方向を指している場合、フィーダーアーム240は延伸位置にある。したがって、矢印221の位置を参照することにより、フィーダーアーム240の位置は容易に確認されるであろう。
【0068】
フィーダーアーム240の自然な状態は後退位置である。すなわち、コンビネーションフィーダー220の区域に一切有意な力を加えなければ、フィーダーアーム240は後退位置にとどまる。例えば、
図16〜
図19を参照すると、コンビネーションフィーダー220と相互作用する力または他の影響は示されておらず、フィーダーアーム240は後退位置にある。しかし、アーム251の1つに十分な力が加わると、フィーダーアーム240の並進運動が生じる。より具体的には、外側端253の1つに十分な力が加わり、空間255に向けられると、フィーダーアーム240の並進運動が起こる。
図20Aおよび
図20Bを参照すると、力222は外側端253の1つに作用して空間255に向けられ、フィーダーアーム240が延伸位置に並進したところが示されている。しかし、力222を取り除くと、フィーダーアーム240は後退位置に戻る。
図20Cは、内側端254に作用し外側に向いているときの力222を図示しており、フィーダーアーム240は後退位置にとどまっていることにも留意するべきである。
【0069】
前述したように、フィーダー204および220は、キャリッジ205の作用のためにレール203および針床201に沿って移動する。より具体的には、キャリッジ205内の駆動ボルトがフィーダー204および220と接触して、フィーダー204および220を針床201に沿って押す。コンビネーションフィーダー220に関して、駆動ボルトは外側端253の1つまたは内側端254の1つのいずれかに接触して、コンビネーションフィーダー220を針床201に沿って押す。駆動ボルトが外側端253の1つに接触すると、フィーダーアーム240は延伸位置に並進して、給糸先端部246が針床201の交差部の下を通る。駆動ボルトが内側端254の1つに接触して空間255内に配置されると、フィーダーアーム240は後退位置にとどまり、給糸先端部246は針床201の交差部の上になる。したがって、キャリッジ205がコンビネーションフィーダー220に接触する区域が、フィーダーアーム240が後退位置にあるか、または延伸位置にあるかを決定する。
【0070】
ここでコンビネーションフィーダー220の機械的作用を説明する。
図19〜
図20Bは、第1カバー部材231を取り除いて、キャリア230の空洞内の要素を露出した状態のコンビネーションフィーダー220を図示している。
図19と
図20Aおよび
図20Bを比較することにより、力222がフィーダーアーム240を並進するように誘導する様子が明らかであろう。力222が外側端253の1つに作用すると、作動部材250の1つがフィーダーアーム240の長さに垂直な方向に滑動する。すなわち、作動部材250は
図19〜
図20Bにおいて水平に滑動する。作動部材250の1つの運動が作動ボルト241を傾斜縁部257の1つに係合させる。作動部材250の運動がフィーダーアーム240の長さに垂直な方向に規制されるのであれば、作動ボルト241は傾斜縁部257に対して回転または滑動し、フィーダーアーム240を延伸位置に並進するように誘導する。力222を取り除くと、ばね242がフィーダーアーム240を延伸位置から後退位置に引く。
【0071】
上記説明に基づくと、コンビネーションフィーダー220は、ヤーンまたは他のストランドが編み、タック編みもしくは浮き編みのために利用されているか、または挿入のために利用されているかに応じて、後退位置と延伸位置とを往復運動する。コンビネーションフィーダー220は、力222の印加がフィーダーアーム240を後退位置から延伸位置に並進させるように誘導し、力222の排除がフィーダーアーム240を延伸位置から後退位置に並進するように誘導する構成を有する。すなわち、コンビネーションフィーダー220は、力222の印加および排除がフィーダーアーム240を針床201の対向する側部の間を往復運動させる構成を有する。一般に、外側端253は作動区域と考えてもよく、フィーダーアーム240の運動を誘導する。コンビネーションフィーダー220のさらなる構成では、作動区域は他の位置にあってもよく、または他の刺激に応答してフィーダーアーム240の運動を誘導してもよい。例えば、作動区域は、フィーダーアーム240の運動を制御するサーボ機構に連結されている電気入力であってもよい。したがって、コンビネーションフィーダー220は、前述した構成と同じ一般的な態様で動作するさまざまな構造を有していてもよい。
【0072】
編みプロセス
ここで、編み機200がニット構成要素を製造するために動作する態様を詳しく説明していく。また、以下の説明は編みプロセス中のコンビネーションフィーダー220の動作を実証する。
図21Aを参照すると、さまざまな針202と、レール203と、標準フィーダー204と、コンビネーションフィーダー220とを含んでいる編み機200の一部が図示されている。コンビネーションフィーダー220はレール203の前側に固定されているが、標準フィーダー204はレール203の後側に固定されている。ヤーン206はコンビネーションフィーダー220を通過し、ヤーン206の一端が給糸先端部246から外側に延びている。ヤーン206が図示されているが、他のあらゆるストランド(例、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、鎖またはヤーン)がコンビネーションフィーダー220を通過してもよい。別のヤーン211が標準フィーダー204を通過してニット構成要素260の一部を形成し、ニット構成要素260の最上コースを形成するヤーン211のループが針202の末端に配置されているフックによって保持されている。
【0073】
本明細書で説明する編みプロセスはニット構成要素260の形成に関係するが、これはニット構成要素130および150と同様なニット構成要素を含め、あらゆるニット構成要素であってもよい。説明のために、図面では、ニット構造を例示できるように、ニット構成要素260の比較的小さな区画しか示していない。また、編み機200およびニット構成要素260のさまざまな要素の縮尺または比率は、編みプロセスをよりよく例証するために拡大している。
【0074】
標準フィーダー204は給糸先端部213を備えるフィーダーアーム212を含んでいる。フィーダーアーム212は給糸先端部213を、(a)針202間の中心になる、および(b)針床201の交差部の上になる位置に位置付ける角度を成している。
図22Aはこの構成の模式的な断面図を図示している。針202は異なる平面上にあり、互いに対して角度を成していることに留意する。すなわち、針床201からの針202は異なる平面上にある。針202はそれぞれ第1位置および第2位置を有する。実線で示される第1位置では、針202は後退している。点線で示される第2位置では、針202は延伸している。第1位置で、針202は針床201のある平面が相交わる交差部から離れている。しかし、第2位置では、針は延びて、針床201のある平面が相交わる交差部を通過している。すなわち、針202は第2位置に延伸すると互いに交差する。給糸先端部213は平面の交差部の上に配置されていることに留意するべきである。この位置で、給糸先端部213は編み、タック編みおよび浮き編みのためにヤーン211を針202に供給する。
【0075】
コンビネーションフィーダー220は、矢印221の向きで明確に示されるように、後退位置にある。フィーダーアーム240はキャリア230から下側に延びて、給糸先端部246を、(a)針202の間の中心になる、および(b)針床201の交差部の上になる位置に位置付ける。
図22Bはこの構成の模式的な断面図を図示している。給糸先端部246は
図22Aの給糸先端部213と同じ相対的な位置に位置付けられていることに留意する。
【0076】
ここで
図21Bを参照すると、標準フィーダー204はレール203に沿って移動し、ヤーン211からニット構成要素260に新たなコースが形成されている。より具体的には、針202は前のコースのループを通してヤーン211の区画を引き、それによって新たなコースを形成する。したがって、標準フィーダー204を針202に沿って移動し、それによって針202がヤーン211を操作して、ヤーン211から追加のループを形成できるようにすることで、ニット構成要素260にコースを追加してもよい。
【0077】
編みプロセスを続けると、
図21Cに図示するように、フィーダーアーム240は、今度は後退位置から延伸位置に並進する。延伸位置では、フィーダーアーム240はキャリア230から下側に延びて、給糸先端部246を、(a)針202の間の中心になる、および(b)針床201の交差部の下になる位置に位置付ける。
図22Cはこの構成の模式的な断面図を図示している。給糸先端部246は、フィーダーアーム240の並進運動のために、
図22Bの給糸先端部246の位置の下に位置付けられていることに留意する。
【0078】
ここで
図21Dを参照すると、コンビネーションフィーダー220はレール203に沿って移動し、ヤーン206はニット構成要素260のループ間に配置されている。すなわち、ヤーン206はいくつかのループの前かつ他のループの背後に交互パターンで配置されている。また、ヤーン206はある針床201からの針202によって保持されているループの前に配置されるとともに、ヤーン206は他方の針床201からの針202によって保持されているループの背後に配置されている。フィーダーアーム240は、ヤーン206を針床201の交差部の下の区域に置くために、延伸位置にとどまっていることに留意する。こうしてヤーン206を
図21Bの標準フィーダー204によって直前に形成されたコース内に効果的に配置する。
【0079】
ヤーン206をニット構成要素260に完全に挿入するために、
図21Eに図示するように、標準フィーダー204はレール203に沿って移動して、ヤーン211から新たなコースを形成する。新たなコースを形成することによって、ヤーン206はニット構成要素260の構造内に効果的に編み込まれ、またはその他の形で統合される。この段階で、フィーダーアーム240も延伸位置から後退位置に並進してもよい。
【0080】
図21Dおよび
図21Eは、レール203に沿ったフィーダー204および220の個別の移動を示している。すなわち、
図21Dはレール203に沿ったコンビネーションフィーダー220の第1移動を示し、
図21Eはレール203に沿った標準フィーダー204の第2のその後の移動を示している。多くの編みプロセスでは、フィーダー204および220は同時にヤーン206を挿入しながらヤーン211から新たなコースを形成するために効果的に移動してもよい。しかし、ヤーン211から新たなコースを形成する前にヤーン206を位置付けるために、コンビネーションフィーダー220は標準フィーダー204に先立って、または前に移動する。
【0081】
上記説明で概説した一般的な編みプロセスは、インレイストランド132および152をニット要素131および151に配置してもよい態様の実施例を提供する。より具体的には、ニット構成要素130および150は、コンビネーションフィーダー220を利用して、インレイストランド132および152をニット要素131に効果的に挿入することによって形成してもよい。フィーダーアーム240の往復運動を考えると、インレイストランドは新たなコースを形成する前に以前に形成されたコース内に配置してもよい。
【0082】
編みプロセスを続けると、
図21Fに図示するように、フィーダーアーム240は、今度は後退位置から延伸位置に並進する。
図21Gに図示するように、次にコンビネーションフィーダー220がレール203に沿って移動して、ヤーン206がニット構成要素260のループ間に配置される。これによりヤーン206は
図21Eの標準フィーダー204で形成されたコース内に効果的に配置する。ヤーン206をニット構成要素260に完全に挿入するために、
図21Hに図示するように、標準フィーダー204はレール203に沿って移動して、ヤーン211から新たなコースを形成する。新たなコースを形成することにより、ヤーン206はニット構成要素260の構造内に効果的に編み込まれ、またはその他の形で統合される。この段階で、フィーダーアーム240も延伸位置から後退位置に並進してもよい。
【0083】
図21Hを参照すると、ヤーン206は2つのインレイ区画の間にループ214を形成している。上記ニット構成要素130の説明において、インレイストランド132は周縁部133でニット要素131を出てから、周縁部133の別の位置でニット要素131に再進入するのを繰り返し、それによって
図5および
図6で分かるように、周縁部133に沿ってループを形成することに留意した。ループ214は同様に形成される。すなわち、ループ214はヤーン206がニット構成要素260のニット構造を出てから、ニット構造に再進入するところに形成される。
【0084】
上記説明したように、標準フィーダー204は、針202によって編み、タック編みおよび浮き編みされるヤーン(例、ヤーン211)を供給する能力を有する。しかし、コンビネーションフィーダー220はヤーンを挿入するとともに、針202によって編み、タック編みまたは浮き編みされるヤーン(例、ヤーン206)を供給する能力を有する。編みプロセスの上記の説明は、コンビネーションフィーダー220が延伸位置にあるときにヤーンを挿入する態様を説明している。コンビネーションフィーダー220は後退位置にあるときに、編み、タック編みおよび浮き編みするためのヤーンを供給してもよい。
図21Iを参照すると、例えば、コンビネーションフィーダー220は後退位置にあるときにレール203に沿って移動し、後退位置にあるときにニット構成要素260のコースを形成する。したがって、フィーダーアーム240を後退位置と延伸位置との間で往復運動させることにより、コンビネーションフィーダー220は編み、タック編み、浮き編みおよび挿入するためにヤーン206を供給してもよい。そのため、コンビネーションフィーダー220の利点は、標準フィーダー204よりも多くの機能のために利用してもよいヤーンを供給する点においてその汎用性に関係する。
【0085】
編み、タック編み、浮き編みおよび挿入するためにヤーンを供給するコンビネーションフィーダー220の能力は、フィーダーアーム240の往復運動に基づいている。
図22Aおよび
図22Bを参照すると、給糸先端部213および246は針220に対して同一の位置にある。このように、フィーダー204および220はともに編み、タック編みおよび浮き編みするためのヤーンを供給してもよい。
図22Cを参照すると、給糸先端部246は異なる位置にある。このように、コンビネーションフィーダー220は挿入するためにヤーンまたは他のストランドを供給してもよい。そのため、コンビネーションフィーダー220の利点は、編み、タック編み、浮き編みおよび挿入するために利用してもよいヤーンを供給する点においてその汎用性に関係する。
【0086】
さらなる編みプロセスの考察
ここで、編みプロセスに関係する追加の側面を説明していく。
図23を参照すると、ニット構成要素260の上コースはヤーン206および211の両方から形成されている。より具体的には、コースの左側はヤーン211で形成されているが、コースの右側はヤーン206から形成されている。さらに、ヤーン206はコースの左側に挿入されている。この構成を形成するために、標準フィーダー204は最初にヤーン211からコースの左側を形成してもよい。次に、フィーダーアーム240が延伸位置にあるときに、コンビネーションフィーダー220はコースの右側にヤーン206を置く。その後、フィーダーアーム240は延伸位置から後退位置に移動して、コースの右側を形成する。したがって、コンビネーションフィーダー220はコースのある部分にヤーンを挿入してから、コースの残りの部分を編むためにヤーンを供給してもよい。
【0087】
図24は、4つのコンビネーションフィーダー220を含んでいる編み機200の構成を図示している。上記説明したように、コンビネーションフィーダー220は、編み、タック編み、浮き編みおよび挿入するためにヤーン(例、ヤーン206)を供給する能力を有する。この汎用性を考えると、標準フィーダー204は編み機200またはさまざまな従来の編み機において複数のコンビネーションフィーダー220に取り替えてもよい。
【0088】
図8Bは、2本のヤーン138および139を添え糸編みしてニット要素131を形成し、インレイストランド132がニット要素131を通って延びているニット構成要素130の構成を図示している。この構成を形成するために、上記説明した一般的な編みプロセスも利用してもよい。
図15に図示するように、編み機200は複数の標準フィーダー204を含んでおり、標準フィーダー204のうちの2つはニット要素131を形成するために利用してもよく、コンビネーションフィーダー220がインレイストランド132を置く。したがって、
図21A〜
図21Iで上記説明した編みプロセスは、追加ヤーンを供給するために別の標準フィーダー204を追加して変更してもよい。ヤーン138が非融着性ヤーンで、ヤーン139が融着性ヤーンの構成では、編みプロセス後にニット構成要素130を加熱して、ニット構成要素130を融着してもよい。
【0089】
図21A〜
図21Iに図示するニット構成要素260の部分は、規則的で途切れのないコースおよびウェールを備えるリブニット布地の構成を有する。すなわち、ニット構成要素260の部分は、例えば、メッシュのニットゾーン163〜165と同様なメッシュ区域またはモックメッシュのニットゾーン166および167と同様なモックメッシュ区域を有していない。ニット構成要素150および260のいずれかにメッシュのニットゾーン163〜165を形成するためには、針床201を振ることと、異なる振り位置で前から後の針床201および後から前への針床201の目移しとの組み合わせを利用する。モックメッシュのニットゾーン166および167と同様なモックメッシュ区域を形成するためには、針床を振ることと、前から後への針床201の目移しとの組み合わせを利用する。
【0090】
ニット構成要素内のコースは互いに略平行である。インレイストランド152の大部分がニット要素151内のコースに追従することを考えると、インレイストランド152のさまざまな区画は互いに平行になると思うかもしれない。例えば、
図9を参照すると、インレイストランド152のいくつかの区画は縁部153と155との間に延びており、他の区画は縁部153と154との間に延びている。そのため、インレイストランド152のさまざまな区画は平行ではない。ダーツを形成する概念が、インレイストランド152にこの非平行の構成を付与するために利用されてもよい。より具体的には、長さが異なるコースを形成して、インレイストランド152の区画間に楔形構造を効果的に挿入してもよい。そのため、ニット構成要素150に形成される構造は、インレイストランド152のさまざまな区画が平行ではない場合、ダーツ形成プロセスから達成してもよい。
【0091】
インレイストランド152の大部分はニット要素151内のコースに追従しているが、インレイストランド152のいくつかの区画はウェールに追従している。例えば、内側縁部155に隣接しかつ平行なインレイストランド152の区画はウェールに追従する。これは、まずインレイストランド152のある区画をコースの一部に沿って、インレイストランド152をウェールに追従させようとする地点に挿入することによって達成してもよい。次に、インレイストランド152を逆向きに進めて、インレイストランド152を軌道の外に移動して、コースを終了する。その後コースが形成されていくときに、インレイストランド152を再び逆向きに進め、インレイストランド152を軌道から外して、インレイストランド152をウェールに追従させようとする地点に移動して、コースを終了する。このプロセスを、インレイストランド152がウェールに沿って所望の距離に延びるまで繰り返す。ニット構成要素130のインレイストランド132の部分に同様な概念を利用してもよい。
【0092】
(a)ニット要素131とインレイストランド132、または(b)ニット要素151とインレイストランド152との相対的な動きを減らすために、さまざまな手順を使用してもよい。すなわち、インレイストランド132および152がニット要素131および151を滑り、移動し、脱落し、またはその他変位しないようにさまざまな手順を利用してもよい。例えば、熱可塑性ポリマー材料から形成されている1以上のヤーンをインレイストランド132に融着して、インレイストランド132および152とニット要素131および151との動きを防止してもよい。さらに、インレイストランド132および152が、タック要素として編み針に規則的に送られるときにニット要素131および151に定着させてもよい。すなわち、インレイストランド132および152をニット要素131および151に固定して、インレイストランド132および152の動きを防止するために、インレイストランド132および152をその長さに沿った地点でタック編みに編み込んでもよい(例、1センチごとに1回)。
【0093】
上記説明した編みプロセスの後、ニット構成要素130および150のいずれかの特性を向上させるためにさまざまな操作を行ってもよい。例えば、ニット構造が水分を吸収して保持する能力を制限するために、撥水コーティングまたは他の耐水処理を施してもよい。別の実施例として、ニット構成要素130および150にスチームを当てて、弾性力を改善し、ヤーンの融着を誘導してもよい。
図8Bに関して上記説明したように、ヤーン138は非融着性ヤーンでもよく、ヤーン139は融着性ヤーンでもよい。スチームを当てると、ヤーン139は溶融しまたはその他の形で柔軟になるので、固体状態から軟化した状態または液体状態に遷移し、さらに十分に冷却すると軟化した状態または液体状態から固体状態に遷移するようにしてもよい。このように、ヤーン139は、例えば、(a)ヤーン138のある部分をヤーン138の別の部分に、(b)ヤーン138とインレイストランド132を互いに、または(c)別の要素(例、ロゴ、商標、ならびに注意書きおよび材料情報を記載した札)をニット構成要素130に接合するために利用してもよい。したがって、スチームを当てるプロセスは、ニット構成要素130および150にヤーンの融着を誘導するために利用してもよい。
【0094】
スチームを当てるプロセスに関連した手順は大幅に変わってもよいが、ある方法はスチームを当てている間にニット構成要素130および150の1つをジグにピン止めすることに関わる。ニット構成要素130および150の1つをジグにピン止めする利点は、ニット構成要素130および150の特定の区域の仕上がり寸法を制御できることである。例えば、ジグ上のピンをニット構成要素130の周縁部133に対応する区域に保持するように配置してもよい。周縁部133の特定の寸法を保持することにより、周縁部133は、アッパー120をソール構造110に接合するラスティングプロセスの一部のために正確な長さを有することになる。したがって、ニット構成要素130および150の印刷区域を利用して、スチームを当てるプロセス後のニット構成要素130および150の仕上がり寸法を制御してもよい。
【0095】
ニット構成要素260を形成するために上記説明した編みプロセスは、履物100のニット構成要素130および150の製造に適用してもよい。編みプロセスはさまざまな他のニット構成要素の製造にも適用してもよい。すなわち、1以上のコンビネーションフィーダーまたは往復運動する他のフィーダーを利用する編みプロセスを利用して、さまざまなニット構成要素を形成してもよい。このように、上記説明した編みプロセスまたは同様なプロセスで形成されるニット構成要素は、他の種類の衣料品(例、シャツ、パンツ、靴下、上着、下着)、運動用品(例、ゴルフバッグ、野球およびフットボール用グローブ、サッカーボールの規制構造体)、入れ物(例、パックパック、バッグ)、ならびに家具用の装飾用品(例、椅子、ソファ、カーシート)にも利用してもよい。ニット構成要素はベッドカバーリング(例、シーツ、毛布)、テーブルカバーリング、タオル、旗、テント、帆およびパラシュートにも使用してもよい。ニット構成要素は、自動車および航空宇宙産業用の構造物、フィルタ材料、医療用の布(例、包帯、綿棒、移植組織片)、堤防を補強するためのジオテキスタイル、作物を保護するためのアグロテキスタイル、ならびに熱および放射から保護または絶縁する工業用衣料品を含め、産業用の技術的テキスタイルとして利用してもよい。したがって、上記説明した編みプロセスまたは同様なプロセスから形成されるニット構成要素は、個人用および産業用の両方の目的のためのさまざまな製品に組み込んでもよい。
【0096】
本発明をさまざまな構成を参照して上記および添付の図面で開示している。しかし、開示が果たす目的は、本発明に関係するさまざまな特徴および概念の実施例を提供することであり、本発明の範囲を制限することではない。当業者は、添付の請求項で定義される本発明の範囲を逸脱することなく、上記説明した構成に多数の変型および変更を行えることは認識するであろう。