特許第5951657号(P5951657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951657
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】海苔製造システム
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20160630BHJP
【FI】
   A23L17/60 103Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-8271(P2014-8271)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-136306(P2015-136306A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2014年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社大坪鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100083699
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 利行
(72)【発明者】
【氏名】加賀田 祐次
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−104402(JP,A)
【文献】 特開2004−016082(JP,A)
【文献】 特開平02−060570(JP,A)
【文献】 特開昭61−271967(JP,A)
【文献】 特開平04−004861(JP,A)
【文献】 特開2005−348752(JP,A)
【文献】 特開昭62−065667(JP,A)
【文献】 特開昭58−156180(JP,A)
【文献】 特開2003−180306(JP,A)
【文献】 特開2008−271807(JP,A)
【文献】 特開昭61−185172(JP,A)
【文献】 特開昭61−268161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小屋と、この小屋の内部に設置される海苔製造装置とから構成され、
海苔製造装置は複数枚の簀を張設した簀ホルダーを、コンベアにより搬送しながら抄部において簀上に生海苔をシート状に薄く抄き上げ、次いで簀ホルダーを脱水部へ移動させて抄き上げられた生海苔を脱水し、次いで簀ホルダーを乾燥室内に搬入し、乾燥室内を簀ホルダーをコンベアにより搬送しながら簀に展着する生海苔を乾燥させた後、乾海苔を剥部において簀から剥ぎ取り、また乾燥室の側部に設けられた空気加熱装置によって加熱された空気を乾燥室の下部へ送り込んで乾燥室の内部を吹き上げるものであり、
また小屋は、その天井部に設けられた第1のファンにより乾燥室から吹き上げられた排ガスを小屋の外部へ排出するようにした海苔製造システムであって、
小屋の外である外部の乾燥した外気を小屋内に導入する第2のファンと、乾燥室内の湿度を測定する湿度測定手段又は温度を測定する温度測定手段と、この湿度測定手段又は温度測定手段から送信される湿度データ又は温度データに基づいて前記第1のファンと前記第2のファンの風量を制御する制御部とを備え、
制御部は、乾燥室内の湿度が高いとき又は温度が高いときには第1のファンによる排ガスの排出風量を増大させるとともに第2のファンによる外気の導入風量を増大させ、また乾燥室内の湿度が低いとき又は温度が低いときには第1のファンによる排出風量を減少させるとともに第2のファンによる外気の導入風量も減少させることにより、乾燥室内の湿度と温度を適正に保つようにしたことを特徴とする海苔製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小屋と、この小屋の内部に設置される海苔製装置とから構成される海苔製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海苔製造装置は、抄部や脱水部を含む前段部と、前段部の後部に隣設された乾燥室から成っている。簀を保持する簀ホルダーをコンベアにより前段部を移動させながら、抄部において生海苔を簀上に薄く抄き上げ、次いで簀ホルダーを脱水部へ移動させ、そこで簀上の生海苔をプレス脱水して乾燥室へ送り込む。そして簀ホルダーを乾燥室内を搬送しながら生海苔を乾燥させ、生成されたシート状の海苔(乾海苔)を剥ぎ部において簀から剥ぎ取るようになっている。
【0003】
海苔製造装置は小屋に設置される。小屋の天井部には海苔製造装置の乾燥室から吹き上げられた温い湿風を排ガスとして小屋外へ排出するための排気用のファンが設置されている。また小屋の側部には、乾燥した冷たい外気を小屋内に導入するためのダンパー等の開口部が設けられている。海苔生産シーズンは11月末〜3月始めの冬期である(引用文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−45981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾海苔の仕上りの良否(乾海苔の品質、すなわち市場価格)は、乾燥室における乾燥の良・不良に大きく左右される。したがって高品質の乾海苔を製造するためには、乾燥室の湿度や温度の管理がきわめて重要である。一方、近年、海苔製造装置は益々大型化しており、これにともない乾燥室も長大化し、小屋も大形化している。したがって長大な乾燥室全体の湿度や温度を適切に管理・調整するためには、小屋内の湿度管理にも十分な配慮をすることが重要になってきている。
【0006】
乾燥室内の湿度と温度は一般に相関関係にあり、温度が高いと湿度は下がり、また温度が低いと湿度は上がる。したがって、乾燥室の温度や湿度の管理は、温度および湿度を測定しながら行われる。このように温度と湿度は互いに相関するパラメータ関係にあり、一般的には温度管理と並行して湿度管理が行われる。
【0007】
そこで本発明は、小屋の湿度管理を適切に行って、乾燥室における海苔乾燥の仕上がりをより向上できる海苔製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、小屋と、この小屋の内部に設置される海苔製造装置とから構成され、海苔製造装置は複数枚の簀を張設した簀ホルダーを、コンベアにより搬送しながら抄部において簀上に生海苔をシート状に薄く抄き上げ、次いで簀ホルダーを脱水部へ移動させて抄き上げられた生海苔を脱水し、次いで簀ホルダーを乾燥室内に搬入し、乾燥室内を簀ホルダーをコンベアにより搬送しながら簀に展着する生海苔を乾燥させた後、乾海苔を剥部において簀から剥ぎ取り、また乾燥室の側部に設けられた空気加熱装置によって加熱された空気を乾燥室の下部へ送り込んで乾燥室の内部を吹き上げるものであり、また小屋は、その天井部に設けられた第1のファンにより乾燥室から吹き上げられた排ガスを小屋の外部へ排出するようにした海苔製造システムであって、小屋の外である外部の乾燥した外気を小屋内に導入する第2のファンと、乾燥室内の湿度を測定する湿度測定手段又は温度を測定する温度測定手段と、この湿度測定手段又は温度測定手段から送信される湿度データ又は温度データに基づいて前記第1のファンと前記第2のファンの風量を制御する制御部とを備え、制御部は、乾燥室内の湿度が高いとき又は温度が高いときには第1のファンによる排ガスの排出風量を増大させるとともに第2のファンによる外気の導入風量を増大させ、また乾燥室内の湿度が低いとき又は温度が低いときには第1のファンによる排出風量を減少させるとともに第2のファンによる外気の導入風量も減少させることにより、乾燥室内の湿度と温度を適正に保つようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湿度測定手段又は温度測定手段によって測定された湿度又は温度に応じて、小屋の天井部に設けられた排ガス排出用の第1のファンと、小屋の側部に設けられた外気導入用の第2のファンの回転速度(風量)を適切に制御することにより、乾燥室内の湿度を適正に保ち、仕上り(品質)のよい乾海苔を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態における海苔製造装置の側面図
図2】本発明の一実施の形態における海苔製造装置が設置された小屋の正断面図
図3】本発明の一実施の形態における制御系のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、小屋の内部に設置される海苔製造装置について説明する。図1において、海苔製造装置は前段部1とその後方の乾燥室10から成っている。前段部1にはチェンコンベア等のコンベア2が設けられており、複数枚の簀3を張設した簀ホルダー4(図2を参照)を、コンベア2により搬送しながら抄部5において簀3上に生海苔m(図2を参照)をシート状に薄く抄き上げ、次いで簀ホルダー4を脱水部6へ移動させて抄き上げられた生海苔mをプレス脱水し、次いで簀ホルダー4を乾燥室10内を回動するコンベア11に立設された支骨13の間に搬入する(矢印N1)。そして乾燥室10内を簀ホルダー4を上下2段のコンベア11により搬送しながら(矢印N2〜N5)、簀3に展着する生海苔mを乾燥させた後、前段部1の下部もしくは乾燥室10の出口付近に設けられた剥ぎ部7において乾燥済みのシート状の乾海苔mを簀から剥ぎ取り、次いで乾海苔mが剥ぎ取られた簀3を洗浄部8で洗浄し、再び簀ホルダー4を抄部5へ向って搬送し(矢印N6)、上記抄き、脱水動作等が繰り返される。
【0013】
次に、図2を参照して海苔製造装置とともに海苔製造システムを構成する小屋20の構造を説明する。小屋20の天井部には、乾燥室10から吹き上げられた排ガスを小屋の外部へ排出する排気用の第1のファンF1が設けられている。また小屋20の側部には加温機21が設けられている。加温機21はバーナ等の加熱手段22および低湿度の外気を小屋20内に導入するための外気導入用の第2のファンF2を有している。加温機21はダクト23を通して小屋20の内部に連通している。したがって第2のファンF2により加温機21に導入された湿度の低い乾いた冷たい外気は、加熱手段22により加熱されて温風となり、小屋20の内部に導入される(矢印A)。
【0014】
図2において、乾燥室10の側部には空気加熱装置30が設けられている。空気加熱装置30にはバーナ31、熱交換ダクト32、空気導入用の第3のファンF3等が配設されている。熱交換ダクト32は、排ガスを外部へ排出するための煙突33に連通している。空気加熱装置30によって加熱された空気は乾燥室10の下部に開口された連通口12(図1も参照)から乾燥室10の下部へ送り込まれ(矢印B)、乾燥室10の内部を上方へ吹き上がり(矢印C)、第1のファンF1によって小屋の外部へ排ガスとして排出される(矢印D)。空気加熱装置30によって加熱された空気は、乾燥室10の内部を吹き上げる際に、簀3に展着する生海苔mの水分を奪い、高湿度の排ガスとなって小屋20の外部へ排出される(矢印D)。またその一部は、空気加熱装置30の上方へ向い(矢印E)、空気加熱装置30に再び導入されて再度加熱されて連通口12から乾燥室10の下部へ送り込まれる(矢印B)。
【0015】
乾燥室10の適所(本実施の形態では、下部側方)には、湿度測定手段としての湿度センサSが設けられている。図3において、制御部40には湿度測定手段としての湿度センサSと第1のファンF1と第2のファンF2のドライバ41、42が接続されている。乾燥室10の内部の湿度は湿度センサSによって測定され、測定結果は制御部40に送信される。第1のファンF1と第2のファンF2は、共通のドライバを共有することも可能である。制御部40は、第1のファンF1と第2のファンF2の風量がパラメータ関係になるようにドライバ41、42を制御する。すなわち、第1のファンF1による小屋20外への排出風量が多いときは、第2のファンF2による小屋20内への外気導入風量も増大させる。また第1のファンF1による小屋20外への排出風量が少ないときは、第2のファンF2による小屋20内への外気導入風量も減少させる。
【0016】
小屋および海苔製造装置から成る海苔製造システムは上記のような構造から成り、次に運転方法について説明する。図2において、空気加熱装置30から乾燥室10の下部へ送り込まれた温風(矢印B)は、乾燥室10内を吹き上がり(矢印C)、生海苔mに含まれる水分を奪って排ガスとなり、第1のファンF1により小屋20の外部へ排出される。乾燥室10の内部の湿度は湿度センサSによって測定されており、乾燥室10内の湿度が上がりすぎて過湿状態になったときは、第1のファンF1の回転速度を速くして湿風を小屋20外へ排出させる排出風量を増大させるとともに、第2のファンF2の回転速度も速くして、第2のファンF2により小屋20内へ導入する風量も増大させる。これにより、過湿状態の乾燥室10内の湿度を速かに正常湿度まで低下させる。
【0017】
これと反対に、湿度センサSにより測定される湿度が低すぎる場合には、第1のファンF1の回転速度を低下させて小屋20外へ排出させる排ガスの排出風量を減少させるとともに、第2のファンF2の回転速度も低下させて小屋20内に導入される外気の風量も減少させる。これにより、低下しすぎた乾燥室10内の湿度を速かに正常湿度に復帰させる。
【0018】
以上のように、湿度センサSにより乾燥室10内の湿度を測定しながら、湿度センサSから送信されてくる測定結果である湿度データに基づいて制御部40により第1のファンF1と第2のファンF2の回転速度(風量)を制御することにより、乾燥室10の湿度を適正に保持し、生海苔mの乾燥をより適切に行って仕上りのよい高品質の乾海苔を生産することができる。
【0019】
なお、上述したように、乾燥室の湿度と温度は互いに相関するパラメータ関係にあり、湿度が低いときは温度は高く、また湿度が高いときは温度は低い。したがって、本実施の形態では湿度センサの測定結果(湿度データ)に基づいて乾燥室の湿度管理を行っているが、湿度センサに替えて温度測定手段としての温度センサを設け、温度センサの測定結果(温度データ)に基づいて第1のファンF1と第2のファンF2による風量調整を行ってもよい。
【0020】
すなわち、温度センサによる測定温度が高いときは、乾燥室10は高温状態であるから、第1のファンF1と第2のファンF2の風量を上げて外気を多く導入することで乾燥室10内の温度を下げる。また温度センサによる測定温度が低いときは乾燥室10は低温状態であるから、第1のファンF1と第2のファンF2の風量を低下させて乾燥室10内の温度を上げる。
【0021】
本実施の形態では、外気導入用の第2のファンF2は加熱手段22を備えた加温機21に設置しているが、加熱手段22を備えた加温機21は必ずしも必要ではなく、冷たい外気を加温することなく第2のファンF2によって小屋20に導入するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
小屋の内部に設置された海苔製造装置によって、簀ホルダーを乾燥室内を搬送しながら生海苔を乾燥させてシート状の乾海苔を製造する海苔製造システムにとって特に有用である。
【符号の説明】
【0023】
1 前段部
2 コンベア
3 簀
4 簀ホルダー
5 抄部
6 脱水部
7 剥ぎ部
10 乾燥室
20 小屋
30 空気加熱装置
40 制御部
F1 第1のファン
F2 第2のファン
S 湿度センサ(湿度測定手段)
図1
図2
図3