特許第5951680号(P5951680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951680サンプル触媒抜き取り補助具およびサンプル触媒抜き取り方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951680
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】サンプル触媒抜き取り補助具およびサンプル触媒抜き取り方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20160630BHJP
   B01D 53/88 20060101ALI20160630BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   B01D53/86 222
   B01D53/88
   G01N1/04 WZAB
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-105381(P2014-105381)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-217380(P2015-217380A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】清永 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】島田 裕
(72)【発明者】
【氏名】河野 重彦
(72)【発明者】
【氏名】沢田 健
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏也
(72)【発明者】
【氏名】森下 啓司
(72)【発明者】
【氏名】福原 洋地
(72)【発明者】
【氏名】盛田 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】垰田 敦司
(72)【発明者】
【氏名】大平 一騎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴文
(72)【発明者】
【氏名】大野 忠雄
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−292244(JP,A)
【文献】 特開平04−027419(JP,A)
【文献】 実開平02−037726(JP,U)
【文献】 特開昭62−225230(JP,A)
【文献】 実開昭62−103428(JP,U)
【文献】 特開平11−333283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86−53/90
53/94,53/96
B01J 8/00− 8/46
G01N 1/00− 1/30
1/32− 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のサンプルホルダ内にサンプル触媒が収容され、脱硝装置の触媒層に設けられた配設穴に、前記サンプルホルダが正面を露出して挿入された状態において、前記サンプル触媒を抜き取るためのサンプル触媒抜き取り補助具であって、
上辺部と、前記上辺部から垂直に延びる複数の垂直部とを備える略門型で、前記触媒層の表面側に所定の間隔で配設されたビーム上に前記垂直部を設置することにより、前記上辺部が前記サンプルホルダの正面と対向して配置される基台と、
前記サンプルホルダの正面側に接続される連結部材と、
前記上辺部に配設され、前記連結部材を介して前記サンプルホルダを前記基台の上辺部側に引き寄せる固着解除手段と、
を備え、
前記固着解除手段による引き寄せ長さは、前記サンプルホルダを前記配設穴から引き抜くのに要する長さよりも短く、前記サンプルホルダの前記配設穴への固着を解除するのに要する長さに設定されている、
ことを特徴とするサンプル触媒抜き取り補助具。
【請求項2】
前記固着解除手段によって前記連結部材が引き寄せられて固着が解除された前記サンプルホルダを保持し、前記基台の撤去を可能にする保持手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンプル触媒抜き取り補助具。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載のサンプル触媒抜き取り補助具を用いて、前記サンプル触媒を抜き取るサンプル触媒抜き取り方法であって、
前記上辺部が前記サンプルホルダの正面と対向するように前記基台を配置し、
前記連結部材を前記サンプルホルダの正面側に接続し、
前記固着解除手段によって前記連結部材および前記サンプルホルダを引き寄せて、前記サンプルホルダの前記配設穴への固着を解除し、
その後、前記サンプルホルダを前記配設穴から引き抜く、
ことを特徴とするサンプル触媒抜き取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱硝装置におけるサンプル触媒を抜き取るための、サンプル触媒抜き取り補助具およびサンプル触媒抜き取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントでの脱硝装置には、使用している触媒の性能を監視、追跡するために、性能試験用のサンプル触媒がセットされている。このサンプル触媒は、例えば、角筒状のサンプルホルダ内に収容され、サンプルホルダと一体となって触媒層の配設穴に挿入され、サンプル触媒を抜き取る際には、サンプルホルダの上端部または側壁部などに設けられた取手を持って引き抜く。このようにして、周りの他の触媒に影響・損傷を与えることなく、サンプル触媒の配設や抜き取りが行えるようになっている。
【0003】
また、発電プラントの運転中にサンプル触媒を抜き取れるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、脱硝装置の内部にケース挿入部を備え、サンプル触媒を充填したサンプル触媒ケースがケース挿入部に出し入れ可能に収納されて、サンプル触媒にも排煙が流通可能になっているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−027419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サンプルホルダは、例えば350℃以上の高温で、ダストや酸性ガスを含む排ガスに長時間接触するため、金属部の腐食や細かなダストが隙間へ入り込むことで、配設穴あるいは周りの触媒と固着したりするケースが多く発生する。そして、サンプルホルダが配設穴に固着すると、サンプルホルダを人力で引き抜くことが困難となり、このような場合には、例えば、触媒層の上方の梁などを利用してチェーンブロックなどを仮設し、チェーンブロックなどを使用してサンプルホルダを引き抜いている。
【0006】
しかしながら、チェーンブロックなどを使用するには大掛かりな作業となり、脱硝装置内部には、人ひとり入れる程度のマンホールからしか入所できず、大きな作業治具の持込が困難なため、抜き取り治具の大きさなどに制限があることや、多大な労力、時間および費用を要する。また、脱硝装置内部は触媒反応器であるため、触媒と処理する排ガスが効果的に混合接触できるように、ガスの流れをできるだけ乱さないような構造をとっているため、触媒上部へ触媒抜き出し用の適切な梁などは事前に設置されていない場合が多く、すべての場所・場合でチェーンブロックなどを使用できるとは限らず、チェーンブロックなどを使用できない場合には、サンプルホルダを引き抜くことができないことになる。しかも、サンプル触媒を抜き取る脱硝装置内は、作業環境としては、高温でしかも粉塵・ダストなどが浮遊している閉所内の劣悪環境であるため、チェーンブロックなどを使用できたとしても、作業効率が悪く、安全性の確保が困難である。一方、特許文献1の技術では、サンプル触媒ケースがケース挿入部に固着した場合には、サンプル触媒ケースを取り出すことができない。
【0007】
さらに、脱硝装置内部へ設置されている脱硝触媒は、長さが最長1,300mm程度あることから、抜き取るための触媒上部空間が必要で、チェーンブロックなどを使用する場合は、チェーンブロックを吊りこむ空間、チェーンブロック自体の大きさ長さ、吊り上げるためのワイヤなどの空間的な余裕が余分に必要で、サンプルを吊れたとしても、一度もとの配設穴へ戻し、その後、人力で抜き出すと言うケースが多くある。
【0008】
そこでこの発明は、これまでの抜き取り実績に基づき、効率的な作業を進めるべく、サンプル触媒あるいはホルダと配設穴の固着に着目し、サンプルホルダが配設穴などに固着した場合であっても、触媒を配置している触媒モジュール(あるいは触媒バスケット、または触媒パック)を利用して容易かつ確実にサンプル触媒を抜き取ることを可能にする、サンプル触媒抜き取り補助具およびサンプル触媒抜き取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、筒状のサンプルホルダ内にサンプル触媒が収容され、脱硝装置の触媒層に設けられた配設穴などに、前記サンプルホルダが正面を露出して挿入された状態において、前記サンプル触媒を抜き取るためのサンプル触媒抜き取り補助具であって、上辺部と、前記上辺部から垂直に延びる複数の垂直部とを備える略門型で、前記触媒層の表面側に所定の間隔で配設されたビーム上に前記垂直部を設置することにより、前記上辺部が前記サンプルホルダの正面と対向して配置される基台と、前記サンプルホルダの正面側に接続される連結部材と、前記上辺部に配設され、前記連結部材を介して前記サンプルホルダを前記基台の上辺部側に引き寄せる固着解除手段と、を備え、前記固着解除手段による引き寄せ長さは、前記サンプルホルダを前記配設穴から引き抜くのに要する長さよりも短く、前記サンプルホルダの前記配設穴への固着を解除するのに要する長さに設定されている、ことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、上辺部がサンプルホルダの正面と対向するように基台を配置し、連結部材をサンプルホルダの正面側に接続する。この状態で固着解除手段を作動させて連結部材およびサンプルホルダを引き寄せると、サンプルホルダの配設穴への固着が解除される。その後、サンプルホルダを配設穴から引き抜くことで、サンプル触媒が抜き取られる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のサンプル触媒抜き取り補助具において、前記固着解除手段によって前記連結部材が引き寄せられて固着が解除された前記サンプルホルダを保持し、前記基台の撤去を可能にする保持手段を備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載のサンプル触媒抜き取り補助具を用いて、前記サンプル触媒を抜き取るサンプル触媒抜き取り方法であって、前記上辺部が前記サンプルホルダの正面と対向するように前記基台を配置し、前記連結部材を前記サンプルホルダの正面側に接続し、前記固着解除手段によって前記連結部材および前記サンプルホルダを引き寄せて、前記サンプルホルダの前記配設穴への固着を解除し、その後、前記サンプルホルダを前記配設穴から引き抜く、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、3の発明によれば、サンプルホルダが配設穴に固着した場合であっても、固着解除手段で連結部材およびサンプルホルダを引き寄せることで、サンプルホルダの固着が解除されるため、その後は、容易にサンプルホルダを配設穴から引き抜くことが可能となる。また、チェーンブロックのように梁などを利用しないため、本サンプル触媒抜き取り補助具をどのサンプルホルダに対しても使用することができる。しかも、チェーンブロックなどのような大掛かりな作業が不要で、基台を配置して連結部材をサンプルホルダに接続し、固着解除手段を作動させるだけでよい。これらの結果、容易、安全かつ確実にサンプル触媒を抜き取ることが可能となる。
【0014】
また、固着解除手段による引き寄せ長さ(ストローク)が、サンプルホルダを配設穴から引き抜くのに要する長さよりも短く、サンプルホルダの配設穴への固着を解除するのに要する長さに設定されている。つまり、固着解除手段のストロークが、サンプルホルダの固着を解除するのに要するだけの短い長さに設定されているため、基台や連結部材、固着解除手段を小型化、軽量化することが可能となる。このため、作業環境・作業空間が制限された脱硝装置内においても、より確実かつ容易にサンプル触媒を抜き取ることが可能となる。さらに、小型軽量化によって持ち運びや保管が容易になるとともに、マンホールを介して脱硝装置内に容易に搬入、搬出することが可能となる。
【0015】
請求項2の発明によれば、保持手段によって基台の撤去が可能になるため、基台を撤去して作業空間を確保した後に、容易かつ安全にサンプルホルダを配設穴から引き抜くことが可能となる。しかも、サンプルホルダの固着が解除された状態が保持されるため、容易にサンプルホルダを引き抜くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施の形態に係るサンプル触媒抜き取り補助具を示す正面図である。
図2】この発明の実施の形態に係るサンプルホルダを示す正面図(a)と側面図(b)である。
図3】この発明の実施の形態に係る脱硝装置内の触媒層を示す平面図である。
図4図1のサンプル触媒抜き取り補助具の基台の分解斜視図である。
図5図1のサンプル触媒抜き取り補助具の第1の連結部材の斜視図である。
図6図1のサンプル触媒抜き取り補助具の第2の連結部材の斜視図である。
図7図1のサンプル触媒抜き取り補助具の連結棒と保持バーの斜視図である。
図8図1のサンプル触媒抜き取り補助具でサンプルホルダを引き上げた状態を示す正面図である。
図9図1のサンプル触媒抜き取り補助具の保持ユニットでサンプルホルダを保持した状態を示す正面図(a)と、保持ユニットの側面図(b)である。
図10図9の後に、サンプルホルダを人力等で引き抜く状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係るサンプル触媒抜き取り補助具1を示す正面図である。このサンプル触媒抜き取り補助具1は、サンプルホルダ101内に収容されたサンプル触媒100を触媒層103から抜き取るための補助具であって、主として、基台2と、連結部材3、4と、油圧ジャッキ(固着解除手段)5と、保持ユニット(保持手段、図9)6とを備えている。
【0019】
ここで、サンプルホルダ101は、金属製の収容ケースで、図2に示すように、上板と底板とを有する縦長の四角い筒状で、上面(表面または正面)101aの側縁に板状の取手102が設けられ、この取手102には挿入孔102aが形成されている。このようなサンプルホルダ101内にサンプル触媒100が収容され、脱硝装置の触媒層103に設けられた配設穴103aに、サンプルホルダ101がその正面101aを露出した状態で挿入されている。
【0020】
すなわち、この実施の形態では、縦型脱硝装置で、図3に示すように、触媒層103は、多数の触媒104が積層、配置されて構成され、その一部に触媒104が配置されないことで、四角い長穴状の配設穴103aが形成されている。この配設穴103aにサンプルホルダ101が圧入されるように挿入され、この状態で、サンプルホルダ101の正面101aが露出するようになっている。そして、サンプルホルダ101の正面101aを含めた触媒104の表面・上面が床面を構成し、床面上には、所定の間隔で(この実施の形態では、縦方向に2つのサンプルホルダ101ごとに)ビーム(梁)105が、床面から立ち上がるように配設されている。
【0021】
サンプル触媒抜き取り補助具1は、このような触媒層103内に配置されたサンプルホルダ101を引き抜くことで、サンプル触媒100を抜き取るものである。
【0022】
基台2は、略門型で、第2の基台22(上辺部)がサンプルホルダ101の正面101aと対向して配置されるものである。すなわち、図4に示すように、2つの第1の基台21と1つ第2の基台22とから構成されている。第1の基台21は、金属製のアングル材で構成され、水平に延びる水平部(上辺部)211の両端に垂直に延びる垂直部212が取り付けられて、コ字状(門型状)に形成されている。垂直部212の下面には、平板状のベース部213が取り付けられ、このベース部213が触媒層103のビーム105に当接するように(第1の基台21が2つのサンプルホルダ101をまたぐように)水平部211の長さが設定され、垂直部212が取り付けられている。
【0023】
また、水平部211の上面には、垂直に延びるように2つの第1の取付ボルト214が取り付けられている。この第1の取付ボルト214は、第2の基台22を取り付けるためのボルトであり、第1の基台21が2つのサンプルホルダ101をまたぐようにビーム105上に配置された際に、第2の基台22が一方のサンプルホルダ101の正面101aに対向するように位置されている。また、第1の基台21を逆向きに(180度回転させて)配置することで、第2の基台22が他方のサンプルホルダ101の正面101aに対向するようになっている。このような第1の基台21を2つ備えるものである。
【0024】
第2の基台22は、断面がコ字状の長尺体で、水平部22aの両端部に、それぞれ2つの取付孔22bが形成されている。そして、各取付孔22bに第1の取付ボルト214を挿入して、第1の取付ボルト214にナット(図示せず)を締め付けることで、第1の基台21と1つ第2の基台22とが連結され、基台2が構成されるものである。このような組付状態では、基台2は、正面方向および側面方向において略門型となる。また、第2の基台22の水平部22aの幅は、後述する油圧ジャッキ5を安定して(隙間なく)設置できるように設定されている。
【0025】
連結部材3、4は、サンプルホルダ101の取手102(正面側)に接続される部材である。すなわち、第1の連結部材3は、図5に示すように、水平に延びる当接部31の両端に、垂直に延びる長板状の連結部32が取り付けられている。当接部31は、断面がコ字状で、後述する油圧ジャッキ5のピストン部51が当接し、その長さは、後述するようにしてサンプルホルダ101の取手102に接続された第2の連結部材4と、連結できるように設定されている。また、連結部32には、後述する連結棒33を挿入するための第1の挿入孔32aが、連結部32の長手方向に沿って複数形成されている。
【0026】
第2の連結部材4は、図6に示すように、長板状で、後述する連結棒33を挿入するための第2の挿入孔4aが、長手方向に沿って複数形成されている。ここで、第1の挿入孔32aの孔ピッチと第2の挿入孔4aの孔ピッチとは同ピットに設定され、挿入孔32a、4aがそれぞれ複数形成されているのは、サンプルホルダ101の位置や油圧ジャッキ5の高さなどに応じて、連結部材3、4の連結長さを調整できるようにするためである。また、第2の連結部材4の下端部には、板面から垂直に延びる第2の取付ボルト41が取り付けられている。このような第2の連結部材4を2つ備えるものである。
【0027】
そして、2つの第2の連結部材4の第2の取付ボルト41をサンプルホルダ101の取手102の挿入孔102aに挿入し、第2の取付ボルト41にナット(図示せず)を締め付ける。次に、サンプルホルダ101の位置や油圧ジャッキ5の高さなどに応じて、第1の連結部材3の連結部32と第2の連結部材4との重ね合わせ位置を調整し、第1の挿入孔32aと第2の挿入孔4aとを貫通させるように連結棒33を挿入する。これにより、連結部材3、4がサンプルホルダ101の取手102に接続されるものである。
【0028】
ここで、連結棒33は、図7に示すような丸棒体で、その長さL1は、第1の連結部材3の連結部32、32間を貫通し、抜けないように設定されている。また、第2の取付ボルト41によってサンプルホルダ101の取手102に接続しているが、他の手法で接続してもよい。例えば、第2の取付ボルト41に代わって、先端に突起部を有するピンを設け、取手102の挿入孔102aにピンを挿入することで、突起部で第2の連結部材4が取手102に仮止めされるようにしてもよい。
【0029】
油圧ジャッキ5は、基台2に配設され、連結部材3、4およびサンプルホルダ101を基台2の第2の基台22(上辺部)側に引き寄せるものである。すなわち、油圧によってピストン部51が往復動するジャッキであり、第2の基台22の水平部22a内に設置され、ピストン部51の先端部が第1の連結部材3の当接部31の下面に当接するように配置される。そして、油圧ジャッキ5を作動させてピストン部51を前進させる(伸ばす)ことで、図8に示すように、連結部材3、4およびサンプルホルダ101を第2の基台22側(上方)に引き寄せるものである。
【0030】
このような油圧ジャッキ5による引き寄せ長さは、サンプルホルダ101を配設穴103aから引き抜くのに要する長さよりも短く、サンプルホルダ101の配設穴103aへの固着を解除するのに要する長さに設定されている。すなわち、サンプルホルダ101を配設穴103aから完全に引き出すのに要する長さ、つまり、サンプルホルダ101の高さH(例えば、数十cm〜百数十cm)、よりも短い長さであって、サンプルホルダ101の固着を解除するのに要するだけの短い長さに設定されている。
【0031】
ここで、本願発明者は、サンプルホルダ101の固着が解除されれば、その後は、人力などで容易にサンプルホルダ101を引き抜くことができることを確認している。さらに、ごく短い距離(例えば、1〜2cm)だけ引き抜けば、サンプルホルダ101の固着を解除できることを確認しており、そのようなごく短い距離に、油圧ジャッキ5による引き寄せ長さが設定されている。つまり、油圧ジャッキ5でサンプルホルダ101を少しだけ引き上げるようになっている。
【0032】
そして、油圧ジャッキ5は、このような短い引き寄せ長さ(ストローク)を有する小型の油圧ジャッキで構成されている。さらに、油圧ジャッキ5によるストロークが短いため、基台2の垂直部212や連結部材3、4の長さも、ストロークに合わせて短く(小さく)設定されている。
【0033】
保持ユニット6は、油圧ジャッキ5によって連結部材3、4が引き寄せられて固着が解除されたサンプルホルダ101を保持し、基台2の撤去を可能にするものである。すなわち、図9に示すように、2つの保持ブロック61と1つの保持バー62とを備えている。保持ブロック61は、平板状の基部61aの上面に、垂直に延びる保持部61bが取り付けられ、この保持部61bの上端部には、U字状に切り欠いた挿入部61cが形成され、この挿入部61cに保持バー62が挿入・嵌合されるようになっている。この保持ブロック61はそれぞれ、対向するビーム105上に設置されるものである。
【0034】
保持バー62は、図7に示すような丸棒体で、その長さL2は、ビーム105上に設置された保持ブロック61に渡せるように設定されている。そして、サンプルホルダ101を保持するには、油圧ジャッキ5によってサンプルホルダ101を引き寄せて固着を解除した状態で、保持ブロック61をビーム105上に設置し、保持ブロック61の直上あたりに位置する第2の連結部材4の第2の挿入孔4aに保持バー62を挿入、貫通させる。次に、油圧ジャッキ5のピストン部51を後退させると、サンプルホルダ101の自重で連結部材3、4が触媒層103側(反第2の基台22側)に戻って、保持バー62が保持ブロック61の挿入部61cに挿入される。
【0035】
これにより、保持ユニット6のみでサンプルホルダ101が持ち上げられ、固着が解除された状態が保持されるとともに、サンプルホルダ101が基台2、第1の連結部材3および油圧ジャッキ5から切り離され(連結が解除され)、基台2の撤去が可能となる。すなわち、連結棒33を抜き取り、第1の連結部材3および油圧ジャッキ5を取り外して、基台2を撤去するものある。
【0036】
以上のような基台2や連結部材3、4、油圧ジャッキ5、保持ユニット6などは、脱硝装置のマンホールを介して脱硝装置内に搬入可能となっている。さらに、基台2を第1の基台21と第2の基台22とに分解することで、より容易かつ確実に脱硝装置内に搬入可能となる。
【0037】
次に、このような構成のサンプル触媒抜き取り補助具1の作用および、サンプル触媒抜き取り補助具1を用いてサンプル触媒100(サンプルホルダ101)を抜き取るサンプル触媒抜き取り方法について説明する。
【0038】
まず、サンプル触媒抜き取り補助具1を脱硝装置内に搬入し、基台配置ステップとして、図1に示すように、第2の基台22が抜き取り対象のサンプルホルダ101の正面101aと対向するように、基台2をビーム105上に配置する。次に、第2の基台22の水平部22aに油圧ジャッキ5を設置するとともに、接続ステップとして、連結部材3、4をサンプルホルダ101の取手102に接続する。例えば、上記のようにして第2の連結部材4をそれぞれサンプルホルダ101の取手102に接続し、ピストン部51を後退させた状態でピストン部51の先端部に、第1の連結部材3の当接部31の下面を当接させて第1の連結部材3を配置する。そして、第1の連結部材3の連結部32と第2の連結部材4とを重ね合わせて、第1の挿入孔32aと第2の挿入孔4aとを貫通させるように連結棒33を挿入する。
【0039】
次に、固着解除ステップとして、油圧ジャッキ5によって連結部材3、4およびサンプルホルダ101を引き寄せて、サンプルホルダ101の配設穴103aへの固着を解除する。すなわち、図8に示すように、油圧ジャッキ5を作動させてピストン部51を前進させ、上記のように、サンプルホルダ101を少しだけ引き上げることで、サンプルホルダ101の固着を解除する。
【0040】
続いて、保持ステップとして、サンプルホルダ101を少しだけ引き上げた状態を保持する。すなわち、上記のようにして保持ユニット6の保持ブロック61をビーム105上に設置し、図9に示すように、第2の連結部材4の第2の挿入孔4aに保持バー62を挿入させて、油圧ジャッキ5のピストン部51を後退させる。これにより、保持ブロック61の挿入部61cに保持バー62が挿入さて、保持ユニット6のみでサンプルホルダ101が持ち上げられ、この状態が保持される。
【0041】
次に、引き抜きステップとして、サンプルホルダ101を配設穴103aから完全に引き抜く。すなわち、上記のようにして基台2を撤去して、作業空間を広く確保した後に、図10に示すように、保持バー62を保持して人力等でサンプルホルダ101を引き上げる。このようにしてサンプルホルダ101を配設穴103aから引き抜くことで、サンプル触媒100を抜き取るものある。
【0042】
以上のように、本サンプル触媒抜き取り補助具1および本サンプル触媒抜き取り方法によれば、サンプルホルダ101が配設穴103aに固着した場合であっても、油圧ジャッキ5で連結部材3、4およびサンプルホルダ101を引き寄せることで、サンプルホルダ101の固着が解除されるため、その後は、人力等で容易にサンプルホルダ101を配設穴103aから引き抜くことが可能となる。また、チェーンブロックのように梁などを利用しないため、本サンプル触媒抜き取り補助具1をどのサンプルホルダ101に対しても使用することができる。つまり、サンプルホルダ101の位置などに制限されることなく、すべてのサンプルホルダ101を引き抜くことが可能となる。
【0043】
しかも、チェーンブロックなどのような大掛かりな作業が不要で、基台2を配置して連結部材3、4をサンプルホルダ101に接続し、油圧ジャッキ5を作動させるだけでよい。これらの結果、サンプル触媒100に損傷を与えることなく、容易、安全かつ確実にサンプル触媒100を抜き取ることが可能となり、劣悪な環境である脱硝装置内での作業時間を短縮化することが可能となる。
【0044】
また、油圧ジャッキ5による引き寄せ長さ(ストローク)が、サンプルホルダ101を配設穴103aから引き抜くのに要する長さよりも短く、サンプルホルダ101の配設穴103aへの固着を解除するのに要する長さに設定されている。つまり、油圧ジャッキ5のストロークが、サンプルホルダ101を少しだけ引き出してサンプルホルダ101の固着を解除するだけの、短い長さに設定されているため、上記のように、基台2や連結部材3、4、油圧ジャッキ5を小型化、軽量化することが可能となる。このため、作業環境・作業空間が制限された脱硝装置内においても、より確実かつ容易にサンプル触媒100を抜き取ることが可能となる。さらに、小型軽量化によって持ち運びや保管が容易になるとともに、マンホールを介して脱硝装置内に容易に搬入、搬出することが可能となる。
【0045】
すなわち、油圧ジャッキ5によってサンプルホルダ101を配設穴103aから完全に引き抜く場合、油圧ジャッキ5のストロークをサンプルホルダ101の長さ・高さHよりも長くしなければならず、大型の油圧ジャッキ5を要するばかりでなく、基台2や連結部材3、4も大型化、重量化する。この結果、脱硝装置内での作業が困難になったり、脱硝装置内への搬入、搬出が困難になったりするが、本サンプル触媒抜き取り補助具1によれば、このような問題が生じない。
【0046】
一方、保持ユニット6によって基台2や油圧ジャッキ5の撤去が可能になるため、基台2などを撤去して作業空間を確保した後に、容易かつ安全にサンプルホルダ101を配設穴103aから引き抜くことが可能となる。しかも、サンプルホルダ101の固着が解除された状態が保持されるため、人力等でも容易にサンプルホルダ101を引き抜くことが可能となる。
【0047】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、2つの連結部材3、4を備えているが、連結部材3、4を一体にしてもよく、同様に、基台2を第1の基台21と第2の基台22とで構成しているが、一体で構成してもよい。また、縦型脱硝装置の場合について説明したが、横型脱硝装置にも適用することができ、この場合、サンプルホルダ101を水平方向に引き抜く(引き寄せる)ことになる。
【0048】
一方、固着解除手段が油圧ジャッキ5で構成されているが、その他の構成であってもよい。例えば、ネジを回すことでサンプルホルダ101を引き寄せたり、リンク機構や歯車機構、カム機構で固着解除手段を構成したりしてもよい。さらに、サンプルホルダ101を引き寄せるだけではなく、固着解除手段を往復動自在とし、配設穴103aに対してサンプルホルダ101を短い距離で出し入れできるようにしてもよい。これにより、サンプルホルダ101と配設穴103aとの摩擦を軽減して、サンプルホルダ101をより容易に引き抜くことが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 サンプル触媒抜き取り補助具
2 基台
21 第1の基台
22 第2の基台(上辺部)
3 第1の連結部材(連結部材)
33 連結棒
4 第2の連結部材(連結部材)
5 油圧ジャッキ(固着解除手段)
51 ピストン部
6 保持ユニット(保持手段)
61 保持ブロック
62 保持バー
100 サンプル触媒
101 サンプルホルダ
101a 表面(上面)
102 取手(正面側)
103 触媒層
103a 配設穴
104 触媒
105 ビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10