(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951683
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】小荷物専用昇降機
(51)【国際特許分類】
B66B 5/14 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
B66B5/14 A
B66B5/14 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-116675(P2014-116675)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-229565(P2015-229565A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2014年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 良太
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−071165(JP,U)
【文献】
特開2013−241229(JP,A)
【文献】
実開昭55−058571(JP,U)
【文献】
実開昭55−082278(JP,U)
【文献】
特開平10−167595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物運搬専用に用いられ、予め最大積載荷重量が設定された小荷物専用昇降機において、
積載物を搬入するかごのかご枠に設置され、前記かごの位置が着床階の床面から上下いずれかに所定値以上ずれたときにこれを検知する光電式センサと、
前記かごに積載物が勢いよく搬入され振動したことにより前記光電式センサにより前記かごの位置のずれが検知されたときには、その後前記光電式センサによりずれが検知されなくなり振動が収まったと判定されてから、前記かご内の荷重量を検知する荷重検知装置と、
前記かごに設置され、前記荷重検知装置で検知された荷重量が前記最大積載荷重量を超えると動作信号を出力し、前記荷重検知装置で検知された荷重量が前記最大積載荷重量以下になったことを検知すると動作解除信号を出力する安全装置と、
前記荷重検知装置で検知された荷重量が前記最大積載荷重量を超えると判定し、且つ、前記安全装置から出力された動作信号を受信したときには、かご内が積載超過状態であると判定して運転を停止させるとともに積載超過を利用者に通知するための超過通知情報を出力し、前記荷重検知装置で検知された荷重量が前記最大積載荷重量以下になったと判定し、且つ、前記安全装置から出力された動作解除信号を受信したときには、かご内の積載超過状態が解消されたと判定して通常運転に戻すとともに前記超過通知情報の出力を停止させるための出力停止情報を出力する制御盤と
を備えることを特徴とする小荷物専用昇降機。
【請求項2】
前記かごの床のいずれかの位置に偏るように荷重がかかったときにこれを検知する偏荷重検知装置をさらに備え、
前記制御盤は、通常運転中に、前記偏荷重検知装置でかごの床のいずれかの位置に偏るように荷重がかかったことを検知したときには、積載位置に関する注意を促す情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の小荷物専用昇降機。
【請求項3】
前記制御盤は、前記荷重検知装置で検出された荷重量がかかったときに要するモータトルク値が、前記最大積載荷重量がかかったときに要するモータトルク値に達したときに、前記荷重量が前記最大積載荷重量を超えたと判定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の小荷物専用昇降機。
【請求項4】
前記制御盤は、前記荷重検知装置で検知された荷重量が、前記最大積載荷重量以下であり、前記最大積載荷重量に対する所定割合以上であると判定したときには、通常運転を継続しつつ、積載注意を利用者に促すための注意通知情報を出力する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の小荷物専用昇降機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、小荷物専用昇降機に関する。
【背景技術】
【0002】
建物に設置される昇降機の中には、面積、高さが所定値以下の荷物のみを載せることが可能な小荷物専用昇降機がある。
【0003】
小荷物専用昇降機を利用することにより、異なる階床間での荷物の運搬作業をスムーズに行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−12216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、小荷物専用昇降機にも、一般的な昇降機と同様に最大積載荷重量が定められ表記されている。
【0006】
しかし小荷物専用昇降機には、荷重を検出する機能が搭載されていないため、定められた最大積載荷重量を超過する荷物を乗せても利用者には通知されず、故障の原因となるおそれがあるという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、予め設定された最大積載荷重量以内で安全に運転させることが可能な、小荷物専用昇降機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための実施形態によれば小荷物専用昇降機は、
光電式センサと、荷重検知装置と安全装置と制御盤とを備える。
光電式センサは、積載物を搬入するかごのかご枠に設置され、かごの位置が着床階の床面から上下いずれかに所定値以上ずれたときにこれを検知する。荷重検知装置は
、かごに積載物が勢いよく搬入され振動したことにより光電式センサによりかごの位置のずれが検知されたときには、その後光電式センサによりずれが検知されなくなり振動が収まったと判定されてからかご内の荷重量を検知する。安全装置はかごに設置され、検知された荷重量が最大積載荷重量を超えると動作信号を出力し、その後最大積載荷重量以下になったことを検知すると動作解除信号を出力する。制御盤は、検知された荷重量が最大積載荷重量を超え、且つ安全装置から出力された動作信号を受信したときには、運転を停止させるとともに超過通知情報を出力し、その後検知された荷重量が最大積載荷重量以下になり、且つ安全装置から出力された動作解除信号を受信したときには、通常運転に戻すとともに超過通知情報の出力を停止させるための出力停止情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による小荷物専用昇降機の構成を示す全体図。
【
図2】一実施形態による小荷物専用昇降機の制御盤の構成を示すブロック図。
【
図3】一実施形態による小荷物専用昇降機の制御盤の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈一実施形態による小荷物専用昇降機の構成〉
本発明の一実施形態による小荷物専用昇降機の構成について、
図1を参照して説明する。
【0011】
本実施形態による小荷物専用昇降機1は荷物運搬専用の昇降機であり、昇降路2上部の機械室3に設置された巻上げ機4にメインロープ5が掛け渡され、メインロープ5の一端にはかご6が吊り下げられ、他端には釣り合い錘7が吊り下げられている。かご6および釣り合い錘7は、巻上げ機4のモータ(図示せず)が駆動することにより昇降路2を昇降する。当該小荷物専用昇降機1には、かご6に積載可能な荷重量の上限値として最大積載荷重量Xが設定されている。
【0012】
かご6の内壁面(かごドアの対極面)にはかご表示装置61および警報器62が設置され、床面には荷重検知装置63が設置されている。荷重検知装置63は、所定時間間隔でかご6にかかる荷重量を検知し、検知した荷重量を示す荷重信号を生成して制御盤8に出力する。
【0013】
また荷重検知装置63内には、安全装置631が組み込まれている。安全装置631は、荷重検知装置63において検知された荷重量が、最大積載荷重量Xを超えたと判定すると安全装置動作信号を制御盤8に出力し、その後、検知された荷重量が最大積載荷重量以下になったと判定すると動作解除信号を制御盤8に出力する。
【0014】
また、機械室3には制御盤8が設置され、巻上げ機4に信号線9で接続されるとともに、かご6にテールコード10で接続され、また、荷重検知装置63の安全装置631に安全装置専用ケーブル11で接続されている。
【0015】
また、かご表示装置61および警報器62は、出力装置専用ケーブル64でテールコード10に接続され、荷重検知装置63は、荷重検知装置専用ケーブル65でテールコード10に接続されている。
【0016】
制御盤8の詳細な構成について、
図2を参照して説明する。制御盤8は、動作制御部81と、安全回路82と、荷重信号受信部83と、安全装置動作信号受信部84と、判定部85と、通知情報生成部86とを有する。
【0017】
動作制御部81は、巻上げ機4や、かご6のかごドア(図示せず)等の動作を制御する。安全回路82は、当該小荷物専用昇降機1内の各種機器の動作に関して異常が発生すると、小荷物専用昇降機1の動力を遮断して運転を停止させる。荷重信号受信部83は、荷重検知装置63から出力された荷重信号を受信する。安全装置動作信号受信部84は、荷重検知装置63内の安全装置631から出力された安全装置動作信号および動作解除信号を受信する。判定部85は、荷重信号受信部83で受信された荷重信号で示される荷重量が最大積載荷重量Xを超え、且つ安全装置動作信号受信部84において安全装置動作信号が受信されたときには、かご6内が積載超過状態であると判定し、安全回路82により動力を遮断させる。また判定部85は、動力を遮断させた後、荷重信号で示される荷重量が最大積載荷重量X以下なり、且つ動作解除信号が受信されたときには、かご6内の積載超過状態が解消されたと判定し、動作制御部81による運転制御を通常運転に戻すように安全回路82を制御する。通知情報生成部86は、判定部85においてかご6内が積載超過状態であると判定されると、積載超過を利用者に通知するための超過通知情報を生成してかご表示装置61および警報器62から出力させるために送信する。また通知情報生成部86は、判定部85においてかご6内の積載超過状態が解消されたと判定されると、出力停止情報を生成してかご表示装置61および警報器62に送信し、超過通知情報の出力を停止させる。
【0018】
〈一実施形態による小荷物専用昇降機の動作〉
次に、本実施形態による小荷物専用昇降機1の動作について説明する。
図3は、小荷物専用昇降機1内の制御盤8で実行される処理を示すフローチャートである。
【0019】
まず、小荷物専用昇降機1において通常運転が行われているときに(S1)、いずれかの階床に停止しているかご6内に利用者により積載物が搬入されると、荷重検知装置63においてかご6にかかる荷重量が検知される。そして検知された荷重量を示す荷重信号が生成され、テールコード10を介して制御盤8に送信される。
【0020】
制御盤8では、荷重信号が荷重信号受信部83で受信されると(S2)、当該荷重信号で示される荷重量が最大積載荷重量Xを超えているか否かが判定部85において判定される(S3)。
【0021】
また、かご6の安全装置631においても、荷重検知装置63で検知された荷重量が最大積載荷重量Xを超えたか否かが判定され、超えていると判定されたときには安全装置631が作動し、安全装置動作信号が生成されて安全装置専用ケーブル11を介して制御盤8に送信される。制御盤8では、安全装置631から送信された安全装置動作信号が、安全装置動作信号受信部84で受信される。
【0022】
判定部85で荷重量が最大積載荷重量Xを超えていると判定され(S3の「YES」)、且つ、安全装置動作信号受信部84において安全装置動作信号が受信されたとき(S4の「YES」)には、かご6内が積載超過状態であると判定され、安全回路82により動作制御部81に対し、小荷物専用昇降機1の動力が遮断されて運転が停止されるとともに、通知情報生成部86により、積載超過を利用者に通知するための超過通知情報が生成される。積載超過を通知するための超過通知情報としては、「積載量超過」等のテキスト情報による表示情報およびブザー信号が生成され、生成された情報はテールコード10、出力装置専用ケーブル64を介してかご表示装置61および警報器62に送信される(S5)。送信された表示情報はかご表示装置61に表示され、また、送信されたブザー信号により警報器62が鳴動される。
【0023】
その後、かご表示装置61の表示や警報器62からのブザーにより積載超過を認識した利用者が積載物を減らしたことにより、荷重信号受信部83で受信された荷重信号が最大積載荷重量X以下になったことが判定部85で判定され(S6の「YES」)、且つ安全装置動作信号受信部84において動作解除信号が受信されたとき(S7の「YES」)には、かご6内の積載超過状態が解消されたと判定され、動作制御部81による運転制御を通常運転に戻すように安全回路82が制御されるとともに、超過通知情報の出力を停止するための出力停止情報が生成される(S8)。
【0024】
生成された出力停止情報はテールコード10、出力装置専用ケーブル64を介してかご表示装置61および警報器62に送信され、超過通知情報による情報の表示およびブザーの鳴動が停止される。
【0025】
ステップS8により通常運転に戻すように制御されたとき、またはステップS3において荷重量が最大積載荷重量X以下であると判定されたとき(S3bの「NO」)には、判定部85において、荷重信号受信部83で受信された荷重量が最大積載荷重量Xの80%未満であるか否かが判定される(S9)。
【0026】
ここで、荷重量が最大積載荷重量Xの80%以上であると判定されたとき(S9の「NO」)には、通常運転を継続しつつ、通知情報生成部86において積載量注意を利用者に促すための注意通知情報が生成される。注意通知情報としては、「積載量注意」等のテキスト情報による表示情報が生成され、テールコード10、出力装置専用ケーブル64を介してかご表示装置61に送信される(S10)。送信された表示情報はかご表示装置61に点滅表示される。
【0027】
その後、荷重信号受信部83で受信された荷重信号が最大積載荷重量Xの80%未満になったことが判定部85で判定されたとき(S11の「YES」)には、積載量注意状態が解消されたと判定され、注意通知情報の出力を停止するための出力停止情報が生成される(S12)。
【0028】
生成された出力停止情報はテールコード10、出力装置専用ケーブル64を介してかご表示装置61および警報器62に送信され、注意通知情報による情報の表示が停止される。
【0029】
以上の本実施形態によれば、小荷物専用昇降機を、予め設定された最大積載荷重量以内で安全に運転させることができる。
【0030】
上述した実施形態において、かご6の四隅の床下にそれぞれ防振スプリングを設け、当該防振スプリングの縮小量をセンサで検知し、通常運転中にいずれかの防振スプリングに偏るように荷重がかかった場合にこれを検知する偏荷重検知装置をさらに設け、当該偏荷重検知装置でかご6のいずれかの位置に偏るように荷重がかかったことが検知されると、かご表示装置61から積載位置に関する注意を促すメッセージを表示させたり警報器62からブザーを鳴動させるようにしてもよい。また、正常な搬入位置を利用者に認識させて偏りなく積載物を載せるように促すため、かご6内の床面の中心位置にテープ等で枠を付しておいてもよい。
【0031】
また上述した実施形態において、最大積載荷重量Xがかかったときに巻上げ機4で要する最大モータトルク値を記憶しておき、荷重信号受信部83で受信した荷重信号で示される荷重量がかかったときに要する現在モータトルク値が、記憶した最大モータトルク値に達したときに「荷重量が最大積載荷重量Xを超えた」と判定するようにしてもよい。
【0032】
また上述した実施形態において、かご6の位置が着床階の床面から上下いずれかに所定値以上ずれたときにこれを検知する光電式センサをかご枠に設置しておき、利用者が勢いよく積載物をかご6に搬入して振動したことなどにより当該光電式センサによりかご6の位置のずれが検知されたときには、その後光電式センサでずれが検知されなくなり振動が収まったと判定されてから、荷重検知装置63でかご6の荷重量が検知されるようにしてもよい。
【0033】
また上述した実施形態において、利用者が最大積載荷重量Xよりも遥かに重い積載物をかご6に乗せてロープが滑ったことにより安全装置631の作動限界を超えたような場合に、当該小荷物専用昇降機1の運転をロックするロック装置を機械室3に設置してもよい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1…小荷物専用昇降機、2…昇降路、3…機械室、4…巻上げ機、5…メインロープ、6…かご、7…釣り合い錘、8…制御盤、9…信号線、10…テールコード、11…安全装置専用ケーブル、61…かご表示装置、62…警報器、63…荷重検知装置、64…出力装置専用ケーブル、65…荷重検知装置専用ケーブル、81…動作制御部、82…安全回路、83…荷重信号受信部、84…安全装置動作信号受信部、85…判定部、86…通知情報生成部、631…安全装置