(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に述べたCRTパトロールには次の課題がある。つまり、業務引継ぎの後で行われるCRTパトロールの確認項目が多数あることから、管理要員の労力を要すると共に確認漏れや誤認が生じる懸念がある。
【0007】
また、先に述べた装置は、プラントに異常が発生したときに、手動で画面を選択する管理要員の負担を軽減するものであり、業務引継ぎの後で行われるCRTパトロールを支援するものではない。
【0008】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、プラントの管理に際して業務引継ぎの後で行われるCRTパトロールを支援することを可能にするプラント管理支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、補機および計器が設置されているプラントの系統図を表示する表示手段と、前記プラントの管理に関係する指示を入力するための入力手段と、前記プラントに関係するデータを記憶する記憶手段と、前記プラントの系統図を前記表示手段に表示し、前記補
機の動作状
態を保存する指示を前記入力手段から受け取ると、各負荷帯での正常時の補
機であって、前記表示手段に表示されている系統図上の補機の動作状
態を前記記憶手段に記憶し、前記補
機を巡視する指示を前記入力手段から受け取ると、前記記憶手段に蓄積されている
前記補機の動作状
態と現時点の動作状
態とを比較して、現時点
における前記補機の動作状
態が正常であるかを判断する制御手段と、を備えることを特徴とするプラント管理支援システムである。
【0010】
請求項1の発明では、プラント管理支援システムが表示手段と入力手段と記憶手段と制御手段とを備えている。表示手段は、補機および計器が設置されているプラントの系統図を表示する。入力手段は、プラントの管理に関係する指示を入力するためのものである。記憶手段は、プラントに関係するデータを記憶する。制御手段は、プラントの系統図を表示手段に表示し、補
機の動作状
態を保存する指示を入力手段から受け取ると、各負荷帯の正常時の補
機であって、表示手段に表示されている系統図上の補
機の動作状
態を記憶手段に記憶する。そして、制御手段は、補
機を巡視する指示を入力手段から受け取ると、記憶手段に蓄積されている動作状
態と現時点の動作状
態とを比較して、プラントの補
機が正常であるかを判断する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプラント管理支援システムにおいて、前記制御手段は、
前記計器の計器値を保存する指示を前記入力手段から受け取ると、各負荷帯での正常時の計器であって、前記表示手段に表示されている系統図上の計器の計器値を前記記憶手段に記憶し、前記記憶手段に蓄積されている計器値から各計器のしきい値を算出して前記記憶手段に記憶し、前
記計器を巡視する指示を前記入力手段から受け取ると、前記表示手段に表示されている系統図上の各計器値と前記記憶手段に記憶した各しきい値とを比較して、各計器が正常であるかどうかを判断する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、プラントの補
機に関して蓄積したデータを基に、表示手段の系統図上の補
機が正常であるかどうかを自動で判断するので、補
機を巡視する業務つまりCRTパトロールの業務を支援することが出来る。
【0013】
請求項2の発明によれば、蓄積されている計器値からしきい値を算出
し、算出したしきい値を
基に、表示手段の系統図上の計器が正常であるかどうかを自動で判断するので、計器に関するCRTパトロールの業務を支援することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0016】
(実施の形態1)
この実施の形態によるプラント管理支援システムを
図1に示す。
図1のプラント管理支援システムは、表示装置10
1〜10
4と、計算機20と、制御装置30と、記憶装置40とを備えている。そして、表示装置10
1〜10
4と計算機20と制御装置30と記憶装置40とは社内ネットワークNWにより相互にデータ通信が可能な状態にある。
【0017】
表示装置10
1は、
図2に示すように、CRT11と操作入力部12と表示制御部13とタッチパネル入力部14とを備えている。CRT11は表示制御部13の制御で画像等を表示する。また、CRT11はタッチパネルを備える。タッチパネル入力部14は、タッチパネルの操作による操作データを表示制御部13に送る。操作入力部12は、キーボードのような多数のキーを備える入力装置である。操作入力部12は、キーの操作データを表示制御部13に送る。操作データには、表示装置10
1に表示する系統図を指定する系統図指定データなどがある。
【0018】
表示制御部13は、CRT11の表示に関係する制御を行う。例えば、表示制御部13は、社内ネットワークNWから、系統図を表示するための系統図表示データを受信すると、CRT11を制御して系統図表示データによる画像をCRT11に表示する。系統図表示データは、例えば
図3の系統図に示すようなRH(再熱器)系統を表すためのものである。
図3の系統図には、「3号機」(発電機)の運転状態や、各種のドレン弁の動作状態、蒸気管の圧力や温度などの計器値が表示されている。なお、
図3では、発電機の運転状態として、「99年01月09日 土曜日 08:25」の「3号機 494MW」が表示されている。この他に発電機の運転状態として、給水流量や燃料流量などが表示されている。
【0019】
表示制御部13は、例えばドレン弁の動作状態、蒸気管の圧力や温度などの計器値を、次のようにして表示する。例えば、
図3の系統図上には、先に述べたように各種の補機の状態や計器が計測した計器値が表示されている。表示制御部13は、各補機の状態を表す補機状態データや、計器の計器値データを計算機20から受信する。この後、表示制御部13は、CRT11に表示している系統図中の該当する補機および計器値の表示位置に対して、受信したデータを基に補機の動作状態や計器の計器値を表示する。
【0020】
表示制御部13は、以上のような表示に関係する制御の他にも、次の制御を行う。表示制御部13は、操作入力部12から操作データを受け取ると、操作されたキー等を操作データによりCRT11に表示する。さらに、表示制御部13は、操作入力部12やタッチパネル入力部14から操作データを受け取ると、社内ネットワークNWを経て計算機20に操作データを送信する。
【0021】
表示装置10
1は以上の構成である。表示装置10
2〜10
4は表示装置10
1と同じであり、これらの説明を省略する。
【0022】
制御装置30は、火力発電プラントで使用されているポンプ、弁等の補機の動作を制御する。このとき、制御装置30は、自動的に、または、制御装置30に対して入力された指示で補機の制御を行う。制御装置30は、各補機の動作状態を表す補機状態データを、社内ネットワークNWを経て計算機20に送信する。また、制御装置30は、火力発電プラントに設置されている温度計や圧力計等の計器が示す計器値を定期的に収集する。制御装置30は、収集した各計器値を表す計器値データを、社内ネットワークNWを経て計算機20に定期的に送信する。
【0023】
記憶装置40は、火力発電プラントに関連する各種のデータを記憶している。例えば、記憶装置40は
図4に示すように、系統図データベース(DB)41と補機状態データベース(DB)42と計器値データベース(DB)43としきい値データベース(DB)44とを備えている。
【0024】
系統図データベース41は、火力発電プラントの各種の系統図を記憶している。例えば
図5に示すように、系統図データベース41は、先の
図3に示す系統図を表す系統図表示データを系統名と共に記憶している。
【0025】
補機状態データベース42は、火力発電プラントのポンプ等の動作状態を記憶している。例えば
図6に示すように、補機状態データベース42は、補機が設置されている系統の系統名と、データを記録した日時と、発電機の出力とを補機状態データとして記録している。また、補機状態データベース42は、補機を識別するための補機番号および種別と、補機の動作状態とを補機状態データとして記憶している。
【0026】
こうした補機状態データベース42の各補機状態を表す補機状態データは、日時毎に、系統名毎に、また発電機の出力毎に計算機20により蓄積される。この結果、発電機の出力については、出力が0MWを含む各負荷帯での補機状態データが補機状態データベース42に蓄積されている。
【0027】
計器値データベース43は、火力発電プラントに設置されている各計器の計器値を記憶している。例えば
図7に示すように、計器値データベース43は、計器が設置されている系統の系統名と、データを記録した日時と、発電機の出力とを計器値データとして記録している。また、計器値データベース43は、計器を識別するための計器番号および種別と、計器が計った計器値を計器値データとして記憶している。こうした計器値データベース43の各計器値データは、補機状態データと同様にして、日時毎に、系統名毎に、また発電機の出力毎に計算機20により蓄積される。このとき、発電機の出力については、出力が0MWを含む各負荷帯での計器値データが計器値データベース43に蓄積されている。
【0028】
しきい値データベース44は、各計器のしきい値を記憶している。しきい値は、火力発電プラントに設置されている各計器による計器値が正常の範囲かどうかを判定するための基準である。例えば
図8に示すように、しきい値データベース44は、しきい値の適用される計器が設置されている系統の系統名と、しきい値を記録した日時と、発電機の出力とをしきい値データとして記録している。また、しきい値データベース44は、計器番号および種別と、計器のしきい値とをしきい値データとして記憶している。しきい値データベース44の各しきい値データは計算機20により算出され、しきい値データベース44は、各計器のしきい値を、系統名毎に、また発電機の出力毎にしきい値データとして記憶している。
【0029】
こうしたデータベース41〜44の他にも、記憶装置40は、火力発電プラントに関連する各種のデータとして、図示を省略しているが、火力発電プラントの例えば3号機に対する定期点検の記録を表す定期点検データを記憶している。定期点検データには、定期点検を行った日時や作業内容等が記憶されている。
【0030】
計算機20は、火力発電プラントに関連するデータの一時記憶や各種の処理を行う。例えば、計算機20は、補機の動作状態を表す補機状態データや、各種の計器の計器値を表す計器値データを、社内ネットワークNWを経て制御装置30から受信すると、これらのデータを、一時的に記憶部(図示を省略)に記憶する。この記憶部は、データを一時的に記憶するバッファのようなものである。つまり、計算機20は定期的に計器値データを受信すると、記憶部のデータを書き替えて更新していく。
【0031】
計算機20は、表示装置10
1〜10
4、例えば表示装置10
1からデータを受信したとき、この受信データが操作データであり、かつ、系統図指定データであると、指定された系統図の系統名を基に系統図データベース41を調べて、該当する系統図の系統図表示データを読み出す。そして、計算機20は、この系統図表示データを表示装置10
1に送信する。この後、計算機20は、この系統図表示データが示す系統に設置されている補機の補機状態データや計器値データを、先の記憶部から定期的に読み出し、読み出したデータを表示装置10
1に送信する。これにより、各負荷帯の出力等に応じた系統図を表示装置10
1〜10
4に表示し、かつ、系統図上に補機および計器の動作状態および計器値を表示することが出来る。
【0032】
計算機20は、表示装置10
1〜10
4に各種のボタンを表示する。例えば
図9に示すように、計算機20は、表示装置10
1のCRT11の表示画面11Aに、先の
図3に示す系統
図11Bを表示する。このとき、計算機20は、系統
図11Bに隣接して、データを保存するときに操作される保存ボタン11Cと、CRTパトロールをするときに操作されるパトロールボタン11Dを表示する。そして、計算機20は、表示装置10
1から操作データを受信した場合に操作データが保存ボタン11Cの操作を表すときに、一時的に記憶部に記憶している補機状態データを補機状態データベース42に記憶する。同時に、計算機20は、一時的に記憶部に記憶している計器値データを計器値データベース43に記憶する。この後、計算機20はしきい値演算処理を行う。
【0033】
計算機20は、保存ボタン11Cが操作されたタイミングでしきい値演算処理を行う。このしきい値演算処理を
図10に示す。計算機20は、しきい値演算処理を開始すると、記憶装置40をアクセスして定期点検データを読み出す(ステップS1)。計算機20は、直近の定期点検の点検日を定期点検データから調べる(ステップS2)。計算機20は、定期点検の点検日から所定期間が経過した経過日を調べる(ステップS3)。
【0034】
ステップS3が終了すると、計算機20は、系統図データベース41から最初の系統図表示データを抽出し(ステップS4)、抽出した系統図表示データを利用して、系統図上の最初の計器を抽出する(ステップS5)。
【0035】
計算機20は、ステップS5で抽出した計器に関して、点検日から経過日までの間に蓄積された計器値データを、計器値データベース43から抽出する(ステップS6)。計算機20は、抽出した各計器値データが表す計器値から、しきい値を算出する(ステップS7)。例えば、計算機20は、各計器値の平均を算出し、算出した平均値をしきい値とする。この後、計算機20は、算出したしきい値を、しきい値データベース44のしきい値データに記憶する(ステップS8)。
【0036】
ステップS8の後、計算機20はステップS5で使用した系統図表示データを利用して、系統図上に未抽出の計器があるかを調べる(ステップS9)。ステップS9で未抽出の計器があると、計算機20は、ステップS5で使用した系統図表示データを利用して次の計器を抽出し(ステップS10)、ステップS6以降の処理を行う。ステップS9で未抽出の計器がないときに、計算機20は、系統図データベース41に未抽出の系統図表示データがあると(ステップS11)、系統図データベース41から系統図表示データを抽出する(ステップS12)。この後、計算機20は、ステップS5以降の処理を行う。ステップS11で未抽出の系統図データがなければ、計算機20はしきい値演算処理を終了する。
【0037】
こうしたしきい値演算処理により、点検直後の正常な計器の計器値を基にして、各負荷帯の系統図上の各計器の計器値を、しきい値データベース44に自動的に記憶することが出来る。
【0038】
計算機20は、表示装置10
1から操作データを受信した場合に、この操作データがパトロールボタン11Cの操作を表すときに、CRTパトロール処理を行う。このCRTパトロール処理を
図11に示す。計算機20は、CRTパトロール処理を開始すると、現時点で例えば表示装置10
1に表示されている系統図(以下、「パトロール対象系統図」という)の中で使用されている補機のためのCRTパトロール処理を行う(ステップS21)。次に、計算機20は、パトロール対象系統図の中で使用されている計器のためのCRTパトロール処理を行い(ステップS22)、CRTパトロール処理を終了する。
【0039】
ステップS21の処理、つまり補機のためのCRTパトロール処理を
図12に示す。計算機20は、補機のためのCRTパトロール処理を開始すると、記憶装置40をアクセスして定期点検データを読み出す(ステップS41)。計算機20は、直近の定期点検の点検日を定期点検データから調べる(ステップS42)。計算機20は、定期点検日後であって定期点検日に最も近い日の補機状態データを、補機状態データベース42から読み出す(ステップS43)。ステップS43で、計算機20は、現時点で例えば表示装置10
1に系統図として表示されている系統つまりパトロール対象系統図の系統名や発電機の出力等を基にして、定期点検後の正常な各補機の動作状態を表す補機状態データを得ることになる。
【0040】
ステップS43の後で、計算機20は、パトロール対象系統図を表示する系統図表示データを利用して、点検する最初の補機つまり弁などの機器を抽出し(ステップS44)、抽出した機器(以下、「パトロール対象補機」という)の現時点での動作状態を、記憶部が記憶している補機状態データを利用して調べる(ステップS45)。ステップS44とステップS45とにより、計算機20は、現時点で動作している系統の機器の状態、例えば弁であれば開閉状態を調べる。ステップS45が終了すると、計算機20は、ステップS43で読み出した補機状態データを利用して、ステップS44で抽出したパトロール対象補機に対応する正常な動作状態を読み出す(ステップS46)。
【0041】
この後、計算機20は、ステップS45で調べた動作状態つまりパトロール対象補機の現時点の動作状態と、ステップS46で調べた動作状態つまりパトロール対象補機の正常な動作状態とを比較する(ステップS47)。パトロール対象補機の二つの動作状態が一致すると(ステップS48)、つまり、現時点で動作している補機が正常であると、計算機20は、ステップS44で使用した系統図表示データを利用して、未抽出の補機があるかどうかを調べる(ステップS49)。ステップS49で未抽出の補機があると、計算機20は、系統図表示データを利用して、次のパトロール対象補機を抽出する(ステップS50)。この後、計算機20は、ステップS45以降の処理を繰り返す。
【0042】
一方、ステップS48でパトロール対象補機の二つの動作状態が不一致であると、計算機20は、表示装置10
1〜10
4を制御して、ステップS45で動作状態を調べたパトロール対象補機を強調する表示を行う(ステップS51)。ステップS51で、計算機20は、例えばパトロール対象補機が高温再熱蒸気管ドレイン弁であると、この弁を青表示にして注意喚起をする。パトロール対象補機の強調表示をするために、計算機20は、系統図表示データの該当する補機の部分を強調表示に変更し、強調表示した系統図表示データを表示装置10
1〜10
4に送信する。
【0043】
ステップS51が終了すると、計算機20は、ステップS49以降の処理を行う。ステップS49で未抽出の補機がなければ、計算機20は補機のためのCRTパトロール処理を終了する。
【0044】
補機のための、こうしたCRTパトロール処理により、各負荷帯での系統図上の各補機については、点検直後の正常な動作状態を基にして、動作が正常であるか否かを目視可能に自動的に表示することが出来る。
【0045】
こうして、ステップS21で補機のためのCRTパトロール処理が終了すると、計算機20はステップS22で計器のためのCRTパトロール処理を行う。計器のためのCRTパトロール処理を
図13に示す。計算機20は、計器のためのCRTパトロール処理を開始すると、記憶装置40をアクセスして定期点検データを読み出す(ステップS61)。計算機20は、直近の定期点検の点検日を定期点検データから調べる(ステップS62)。計算機20は、定期点検日後であって定期点検日に最も近い日のしきい値データを、しきい値データベース44から読み出す(ステップS63)。ステップS63で、計算機20は、現時点で例えば表示装置10
1に表示しているパトロール対象系統図の系統名や発電機の出力等を基にして、しきい値データを読み出す。しきい値データの各しきい値は、定期点検後の正常な各計器の計器値を基にしたものであり、計器値が正常かどうかを判定するための判定基準になる。
【0046】
ステップS63の後で、計算機20は、パトロール対象系統図を表示する系統図表示データを利用して、点検する最初の計器つまり温度計などの機器を抽出し(ステップS64)、抽出した機器(以下、「パトロール対象計器」という)の現時点で計測した計器値を、記憶部が記憶している計器値データを利用して調べる(ステップS65)。ステップS64とステップS65とにより、計算機20は、抽出した計器の現時点での計器値を調べる。ステップS65が終了すると、計算機20は、ステップS63で読み出したしきい値データを利用して、ステップS64で抽出したパトロール対象計器に対応するしきい値を読み出す(ステップS66)。
【0047】
この後、計算機20は、ステップS65で調べた計器値つまりパトロール対象計器が現時点で計測した計器値と、ステップS66で調べたパトロール対象計器のしきい値とを比較する(ステップS67)。パトロール対象計器のしきい値に対して計器値が正常の範囲にあると(ステップS68)、計算機20は、ステップS64で使用した系統図表示データを利用して、未抽出の計器があるかどうかを調べる(ステップS69)。ステップS69で未抽出の補機があると、計算機20は、系統図表示データを利用して、次のパトロール対象計器を抽出する(ステップS70)。この後、計算機20は、再度、ステップS65以降の処理を繰り返す。
【0048】
一方、ステップS68でパトロール対象計器の計器値が正常の範囲外にあると、計算機20は、表示装置10
1〜10
4を制御して、ステップS65で調べた計器値を強調する表示を行う(ステップS71)。ステップS71で、計算機20は、例えばパトロール対象機器の計器値を点滅する等の注意喚起をする。このようにパトロール対象計器の計器値の強調表示をするために、計算機20は、系統図表示データの該当する計器値の表示を強調表示に変更し、強調表示した系統図表示データを表示装置10
1〜10
4に送信する。
【0049】
ステップS71が終了すると、計算機20は、ステップS69以降の処理を行う。また、ステップS69で、計算機20は、未抽出の計器がないと判断すると、計器のためのCRTパトロール処理を終了する。
【0050】
計器のための、こうしたCRTパトロール処理により、各負荷帯の系統図上の各計器については、点検直後の正常な計器値を使用して算出したしきい値を基にして、計器値が正常であるか否かを目視可能に自動的に表示することが出来る。
【0051】
以上が計算機20の構成である。次に、この実施の形態によるプラント管理支援システムの作用について説明する。
【0052】
発電プラントの管理要員は、プラントの定期点検が終了した後で、例えば表示装置10
1のCRT11に表示されている保存ボタン11Cを操作する。これにより、計算機20は、一時的に記憶部に記憶している補機状態データを補機状態データベース42に記憶する。同時に、計算機20は一時的に記憶部に記憶している計器値データを計器値データベース43に記憶する。これらのデータは、定期点検が終了した後の正常な発電プラントから得られるデータであり、補機および計器値が正常かどうかを判断するために基となるデータである。
【0053】
管理要員は例えば負荷帯に応じて保存ボタン11Cの操作を繰り返し、発電機の出力に応じた補機状態データを蓄積することが可能である。また、同じ出力のときに保存ボタン11Cの操作を繰り返すと、同じ出力での複数の計器値データを蓄積することが可能である。データを都度プロットさせるのは、プラントの経年劣化等で計器値が変化する可能性がある。このために、都度、プロットデータを更新可能にしている。また、計器の点検や不調等があった場合でも、CRTパトロールの信頼性を向上させるために、プロットデータは手動で任意入力可能である。また、補機状態データおよび計器値データは、発電機の出力がゼロのとき、つまり休転時でも、保存ボタン11Cの操作により、補機状態データベース42および計器値データベース43に蓄積可能である。この場合には、各データにおいて出力が0MWになる。
【0054】
保存ボタン11Cが操作された時点で、計算機20はしきい値演算処理を行う。この処理により、計算機20は、発電プラントに設置されている各計器の計器値が正常かどうかを判断するための基準になるしきい値を算出して、しきい値データベース44に記憶する。
【0055】
こうした状態で、管理要員は、表示装置10
1〜10
4を用いて、通常、交替制で発電プラントの管理業務を行っている。管理要員は、管理業務を引き継いだときにCRTパトロールを行うために、例えば表示装置10
1のCRT11に表示されているパトロールボタン11Dを操作して、CRTパトロールを行う。この場合には、CRT11に表示されている系統図上の補機および計器値の巡視つまりCRTパトロールが行われる。なお、CRT11が別の負荷帯の系統図を表示していれば、この系統図上の補機および計器値についてCRTパトロールが行われる。
【0056】
表示装置10
1のパトロールボタン11Dが操作されると、計算機20は、補機のためのCRTパトロール処理を行う。このCRTパトロール処理により、計算機20はパトロール対象系統図の各補機が正常な動作状態であるかを調べる。もし、補機の動作状態が異常になっていると、計算機20は、表示装置10
1〜10
4を制御して、異常が発生している補機を強調表示して、管理要員に対して注意を喚起する。
【0057】
例えば、先の
図3では、高温再熱蒸気管ドレン弁B1、B2は、
運転時・・・閉止
停止時・・・開
になる。また、低温再熱蒸気管逆止弁B1、B2は、
運転時・・・閉止
停止時・・・開
になる。これらのデータは500MW運転時のため、各弁がこの状態で『開』となっていたら、弁の動作状態が通常と異なる。このため、計算機20は、通常と異なる弁については例えば青表示で注意喚起を行う。さらに、先の
図3では、IR弁B21およびIRSO弁22については、RHの温度制御を行っており、設定温度以上となった場合に、『開』となる。なお、通常、制御性が良好であれば『閉止』している。このデータは500MW運転時のため、この状態で『開』となっていたら通常と異なる。このため、計算機20は、弁の動作状態が通常と異なる場合に青表示で注意喚起を行う。
【0058】
補機のためのこうしたCRTパトロール処理が終了すると、計算機20は計器のためのCRTパトロール処理を行う。このCRTパトロール処理により、計算機20はパトロール対象系統図上の各計器の計器値が正常の範囲内にあるかどうかを調べる。もし、計器の計器値が正常の範囲外になっていると、計算機20は、表示装置10
1〜10
4を制御して、異常が発生している計器値を強調表示して、管理要員に対して注意を喚起する。
【0059】
このようにして、CRTパトロールが自動的に行われる。さらに、別の系統をCRTパトロールの対象とする場合には、管理要員が表示装置10
1〜10
4のCRT11のタッチパネルや操作入力部12により別の系統を選択する。これにより、表示装置10
1〜10
4は、系統図指定データを計算機20に送信する。計算機20は系統図指定データを受信すると、指定された系統図を、表示装置10
1〜10
4を制御して表示する。この後、管理要員が表示装置10
1〜10
4のパトロールボタン11Dを操作すると、自動的にCRTパトロールが行われる。
【0060】
以上、説明したように、この実施の形態によれば、蓄積したデータを基にCRTパトロールを自動的に行うので、CRTパトロールの業務を支援することが出来る。これにより、以下の効果を達成することが出来る。
a.CRTパトロールにおける業務の効率化を図ることが出来る。
b.プラントの状況把握が容易となり、不調箇所の早期発見が可能となり、トラブルの未然防止を図ることが出来る。
c.プロットデータを都度更新、手入力可能とすることから、プラントの状態に沿ったCRTパトロールを実施することが出来る。つまり、CRTパトロールの信頼性が向上する。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態1では、CRTパトロール処理で、補機のためのCRTパトロール処理をステップS21で行い、計器のためのCRTパトロール処理をステップS22で行った。この実施の形態では、逆にステップS21で計器のためのCRTパトロール処理を行い、ステップS22で補機のためのCRTパトロール処理を行う。
【0062】
この実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を達成することが出来る。