(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951745
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】縦長部材吊下げ具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/62 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
B66C1/62 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-252189(P2014-252189)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-113243(P2016-113243A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】山口 大輔
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−124983(JP,U)
【文献】
実開昭60−085620(JP,U)
【文献】
実開昭58−025805(JP,U)
【文献】
特開平09−077458(JP,A)
【文献】
米国特許第5141276(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00−3/20
F16B 2/00−2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に装着するための縦長部材を保持する複数のホルダーと、該複数のホルダーを連結する連結部材とを備え、前記各ホルダーは、一端側から入り込ませて縦長部材を挟持して保持する一対の挟持部を備え、前記一対の挟持部は、前記縦長部材を径方向で移動させて一端側から挟持部間に入り込ませることで挟持して該縦長部材を保持し、保持された該縦長部材を一端側への移動により挟持を解除可能に構成され、
前記複数のホルダーが前記連結部材に回動可能に連結されており、前記各ホルダーが、前記縦長部材を保持していない状態では前記連結部材に対して一端が下方を向いた垂下姿勢となり、かつ、一端が水平方向を向くように回動した前記ホルダーの一対の挟持部に該ホルダーの一端側から入り込ませた縦長部材をそれの長さ方向中央部よりも上側で保持させることを特徴とする縦長部材吊下げ具。
【請求項2】
前記連結部材は、前記複数のホルダーが連結される環状部材と、環状部材の周方向2箇所で連結される紐状体とを有している請求項1に記載の縦長部材吊下げ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の縦長部材を吊下げた状態で所定の場所まで移動するための縦長部材吊下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記縦長部材としては、例えば電線を保護するための防護管が挙げられ、この防護管の複数をまとめて収容して運ぶことができる防護管用収容袋が従来から提案されている。この防護管用収容袋は、円筒状の上側部と、有底筒状の下側部と、上側部の下端部と下側部の上端部とを上下方向で連結する複数のロープと、上側部の上端部に連結された吊下げ用のロープとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記防護管用収容袋の使用方法について説明すれば、まず複数の防護管を防護管用収容袋内に縦向きに収容し、高所作業車のブームの先端に連結された作業台(作業員が乗り込んで上昇させて高所で作業することができるバスケット)に備えるフックに吊下げ用のロープを引っ掛けておく。続いて、作業台を上昇させて電線の近傍まで移動させる。この後において、防護管用収容袋に収容されている防護管を上方へ持ち上げて、防護管の下端が下側部の上端よりも上方へ位置させる。この状態から防護管の下端部が下側部の外側に外れるように防護管を傾ける。この傾けた状態から防護管を下方へ下げて防護管を上側部から抜き取ることで、収容袋から取り出すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−84031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記防護管が、高所に位置している作業台の外部に吊り下げられているため、その状況で防護管を取り出す作業としては煩雑となる。そのため、防護管の取り出し作業中に、防護管から手が滑ってしまい、防護管を地上へ落下させることもある。従って、防護管の取り出し作業を慎重に行わなければならず、非常に手間のかかる作業になり、改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、縦長部材の取り出しが容易迅速に行える縦長部材吊下げ具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る縦長部材吊下げ具は、
電線に装着するための縦長部材を保持する複数のホルダーと、該複数のホルダーを連結する連結部材とを備え、前記各ホルダーは、一端側から入り込ませて縦長部材を挟持して保持する一対の挟持部を備え、前記一対の挟持部は、前記縦長部材を径方向で移動させて一端側から挟持部間に入り込ませることで挟持して該縦長部材を保持し、保持された該縦長部材を一端側への移動により挟持を解除可能に構成され
、前記複数のホルダーが前記連結部材に回動可能に連結されており、前記各ホルダーが、前記縦長部材を保持していない状態では前記連結部材に対して一端が下方を向いた垂下姿勢となり、かつ、一端が水平方向を向くように回動した前記ホルダーの一対の挟持部に該ホルダーの一端側から入り込ませた縦長部材をそれの長さ方向中央部よりも上側で保持させることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、縦長部材を一端側から挟持部間に入り込ませるだけで、一対の挟持部で縦長部材を挟持して保持することができる。また、保持されている縦長部材を一端側へ移動させるだけで、挟持が解除されて縦長部材を迅速に取り出すことができる。前記縦長部材が特に長尺な防護管である場合には、取り出すときに防護管を持ち上げることがないから、電線に防護管を接触させることがなく、容易迅速に取り出すことができる。
また、ホルダーが、縦長部材を保持していない状態では環状部材に対して一端が下方を向いた垂下姿勢に自重で自ずとなるから、縦長部材吊下げ具がコンパクトになり、縦長部材吊下げ具の運搬面及び保管面において有利になる。また、一端が水平方向を向くように回動したホルダーの一対の挟持部に一端側から入り込ませた縦長部材をそれの長さ方向中央部よりも上側で保持させることによって、縦長部材の重心を下側に位置させることができる。これにより、下向きの重力が縦長部材に作用して、縦長部材が略上下方向に沿う姿勢を維持できる。これに対して、縦長部材をそれの長さ方向中央部よりも少し下側で保持させた場合には、縦長部材が倒れこんで横方向に広がった状態になるため、縦長部材吊下げ具の移動がし難いといった不具合が発生する。
【0011】
また、本発明に係る縦長部材吊下げ具は、前記連結部材は、前記複数のホルダーが連結される環状部材と、環状部材の周方向2箇所で連結される紐状体とを有している構成であってもよい。
【0012】
かかる構成によれば、紐状体を有しているので、紐状体をフックに引っ掛けるだけで、縦長部材吊下げ具を吊り下げた状態にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、一端側から入り込んで挟持して保持されている縦長部材を一端側への移動によって挟持を解除可能な複数のホルダーを備えることによって、縦長部材の取り出しが容易迅速に行える縦長部材吊下げ具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る縦長部材吊下げ具に防護管を保持した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2において防護管を保持していない状態を示す断面図である。
【
図4】同縦長部材吊下げ具に一本の防護管のみを装着して吊り下げた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図2において防護管に代えて針状体を備えた鳥害防止管を保持した状態を示す断面図である。
【
図6】針状体を備えた鳥害防止管を電線に装着した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る縦長部材吊下げ具を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2には、電線に装着される防護管4を保持した状態の縦長部材吊下げ具1を示し、
図3には、前記防護管4を保持していない状態の縦長部材吊下げ具1を示し、
図4には、一本の防護管4のみを保持した状態の縦長部材吊下げ具1を示している。
図5は、
図1及び
図2に示す防護管4の外面に針状体6を備えて構成される鳥害防止管7を装着した状態の縦長部材吊下げ具1を示している。防護管4及び鳥害防止管7は、本発明でいう縦長部材である。ここでは、防護管4及び鳥害防止管7を挙げて説明するが、本発明は、これら管に限定されるものではなく、縦長状の棒部材や板部材等も含むものである。
【0016】
図1〜
図3に示すように、縦長部材吊下げ具1は、紐状体2(
図1にのみ図示している)とこの紐状体2に連結されて吊下げられる環状部材3とを有する連結部材と、環状部材3に周方向に間隔を置いて取り付けられて防護管4を保持する複数(ここでは5個)のホルダー5とを備えている。
【0017】
紐状体2としては、絶縁被覆ケーブルの他、紐、帯、ロープ、ワイヤ等を用いることができる。また、紐状体2の材料としては、伸縮性を有する材料を用いてもよいし、伸縮性を有しない材料を用いてもよい。この紐状体2の両端が、環状部材3の周方向2箇所でそれぞれ括り付けられて環状部材3に連結されている。尚、紐状体2は、高所作業車のブームの先端に連結された作業台(作業員が乗り込んで上昇させて高所で作業するバスケット)に備えるフックF(
図1参照)に引っ掛けるためのものである。
【0018】
環状部材3は、断面形状が円形でリング状(輪っか状)に構成され、例えば弾性変形可能な合成樹脂(変形不能な硬質の合成樹脂や金属材料等で構成されていてもよい)で構成されている。
【0019】
防護管4は、図示していない間接活線工具により拡開操作されて
図6に示す電線(例えば高圧電線)Kが挿入される。また、防護管4は、プラスチック等の絶縁材料で構成され、長手方向に全長に亘って形成されるスリット4M(
図1及び
図2参照)により拡開可能に構成されている。尚、防護管1は、1.5m、2m、2.5m等の長さのものの他、3m以上の長さ、例えば4mの長さのものもある。
【0020】
ホルダー5は、可撓性を有する合成樹脂材料で略Uの字状に構成され、環状部材3に回動可能となるように一端部5Tが貫通して取り付けられている。また、ホルダー5の他端側には、ホルダー5の他端から防護管4を入り込ませることにより挟んで保持する一対の円弧状の挟持部5A,5Aを備えている。
【0021】
挟持部5A,5Aは、防護管4の挿入により拡径され元の状態に戻ろうとする復元力で防護管4を挟持する。この挟持された防護管4を挟持力に抗して他端側へ移動させることにより、挟持部5A,5Aによる挟持を解除することができる。また、挟持部5A,5Aからホルダー5の長さ方向外側ほど間隔が広がるように斜めに突出する突出部5B,5Bが延出されている。これら突出部5B,5Bに防護管4を当接して突出部5B,5Bを押し広げることによって、防護管4が挟持部5A,5Aまで移動することができる。尚、これら挟持部5A,5Aを手で押し広げた後、防護管4を挟持部5A,5Aへ移動させてもよい。
【0022】
ホルダー5の一端部が回動可能になり、他端がフリーになっていることから、防護管4を保持していない状態では、環状部材3に対して他端が自重で自ずと下方を向く垂下姿勢となる(
図3参照)。これにより、縦長部材吊下げ具1がコンパクトになり、縦長部材吊下げ具1の運搬面及び保管面において有利になる。これに対して、防護管4をホルダー5へ保持させる場合には、他端が水平方向を向くように回動したホルダー5の一対の挟持部5A,5Aに他端から挿入した防護管4をそれの長さ方向中央部よりも上側(ここでは、防護管4の上端部)で保持させる。このようにすることによって、防護管4を略上下方向に沿う姿勢に維持する(
図1及び
図2参照、
図2では、防護管4が上下方向に沿った垂直姿勢になっている)。これとは反対に、防護管4をそれの長さ方向中央部よりも下側で保持させた場合には(図示せず)、防護管4が倒れこんでしまい、防護管4が横方向に広がって縦長部材吊下げ具1の移動がし難いといった不具合が発生する。
【0023】
図4では、一本の防護管4のみをホルダー5に保持させて、フックFに紐状体2を引っ掛けた状態を示している。このように、一本の防護管4のみをホルダー5に保持させた場合でも、防護管4は、横向きになることがなく、下側ほど環状部材3側に近付く傾斜姿勢を維持する。
【0024】
図5では、防護管4の外面から径方向外側に突出して防護管4に鳥がとまることを防止するための針状体6を長さ方向に沿って多数備えた鳥害防止管7をホルダー5に保持させている場合を示している。各針状体6は、十字状に構成された多数の針6Aを防護管4の外面に外嵌固定される円弧状の嵌合部材6Bに径方向外方に向かって突出するように設けて構成されている。
【0025】
上記針状体6を備えた鳥害防止管7の複数を、例えば袋に収容した場合には、隣り合う鳥害防止管7の針状体6に取り出す側の鳥害防止管7の針状体6がぶつかりながら上方から移動しなければならない。そのため移動抵抗が大きく、取り出し時間が多くかかる不都合がある。これに対して、本発明では、縦長部材吊下げ具1のホルダー5に針状体6を備えた鳥害防止管7を保持しているので、上方ではなく、横から(環状体の径方向)外側へ移動することによって、針状体6がぶつかるようなことがなく、針状体6を備えた鳥害防止管7を径方向から容易に取り出すことができる。取り出した鳥害防止管7は、
図6に示すように電線Kに装着される。
【0026】
縦長部材吊下げ具1に防護管4を保持させてから、防護管4を電線Kに装着するまでの手順について説明する。縦長部材吊下げ具1は、
図3に示すように、全て(ここでは5個)のホルダー5が、自重により他端が下方を向く垂下姿勢になっている。この状態から紐状体2を
図1に示すフックFに引っ掛ける。続いて、ホルダー5の他端が水平を向くように回動させてから防護管4をホルダー5の他端から押し込むことでホルダー5の一対の挟持部5A.5Aに保持させる。全ての防護管4をホルダー5へ保持させた後は、作業台を昇降させながら保護管4を装着したい電線Kの近傍まで移動させる。移動後において、ホルダー5に保持されている防護管4を径方向外方側へ移動させることによって取り外し、取り外した防護管4を電線Kに装着する。引き続き、ホルダー5に保持されている防護管4を径方向外側へ移動させることによって取り外し、全ての防護管4を電線Kに装着して作業が終了する。
【0027】
なお、本発明に係る縦長部材吊下げ具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更することができる。
【0028】
例えば、ホルダー5を、U字状の一つの部材から構成したが、例えば一対の部材の長手方向略中央位置を回動支点部とし、回動支点部より一方側に挟持部を有し、他方側に把持部を有するクリップから構成してもよい。そして、回動支点部を中心として一対の部材の挟持部を回動させることにより開閉自在とし、挟持部が閉じる方向に付勢する弾性部材を備えている。従って、弾性部材により閉じられている挟持部が、弾性部材の付勢力に抗して把持部を手で接近側に操作することによって、開放状態に切り替えられる。この開放状態の挟持部間に縦長部材を挟み込んで手を離すことによって、縦長部材が挟持部間に保持される。
【0029】
上記実施形態では、ホルダー5を連結部材である環状部材3に回動可能に連結したが、回動不能にホルダー5を環状部材3に固定して実施してもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、連結部材を、環状部材3と、紐状体2とから構成したが、ホルダー5を連結することができる紐状の部材のみから構成してもよい。この場合、縦長部材をフックに吊り下げる場合には、紐状の部材の両端をフックに結び付けることになる。
【0031】
また、上記実施形態では、紐状体2の両端が、環状部材3の周方向2箇所でそれぞれ括り付けられて環状部材3に連結されているが、例えば円筒状の連結金具を介して紐状体2を環状部材3に連結してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…縦長部材吊下げ具、2…紐状体、3…環状部材、4…防護管(縦長部材)、4M…スリット、5…ホルダー、5A…挟持部、5B…突出部、6…針状体、6A…針、6B…嵌合部材、7…鳥害防止管(縦長部材)、F…フック、K…電線