(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記NPPFが、5’末端および3’末端にフランキング配列を含み、ここで、5’末端における該フランキング配列は、3’末端における該フランキング配列とは異なる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
前記少なくとも1つの増幅プライマーが、前記増幅工程中に前記NPPFアンプリコンと実験用タグまたはシーケンシングアダプターとの付着を可能にする配列をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
前記NPPFが、DNAであり、前記ヌクレアーゼが、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
前記方法が、少なくとも2つの標的核酸分子を配列決定するかまたは検出し、前記サンプルが、少なくとも2つの異なるNPPFと接触され、各NPPFは、異なる標的核酸分子に特異的である、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
前記方法が、複数のサンプルにおいて行われ、少なくとも2つの標的核酸分子が、該複数のサンプルの各々において検出される、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
少なくとも1つのNPPFが、miRNA標的核酸分子に特異的であり、少なくとも1つのNPPFが、mRNA標的核酸分子に特異的である、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
前記NPPFアンプリコンを検出する工程が、各領域が二機能性リンカーと会合した少なくとも1つのアンカーを含む複数の空間的に不連続の領域を含む表面と該NPPFアンプリコンを、該NPPFアンプリコンが該二機能性リンカーの第2の部分に特異的に結合するのに十分な条件下において接触させる工程を包含し、ここで、該二機能性リンカーは、該アンカーに特異的に結合する第1の部分および該NPPFアンプリコンのうちの1つの少なくとも一部に特異的に結合する第2の部分を含む、請求項2〜21のいずれか1項に記載の方法。
前記NPPFアンプリコンを検出する工程が、各領域が該NPPFアンプリコンのうちの1つの少なくとも一部に相補的な領域を有する少なくとも1つの核酸アンカーを含む複数の空間的に不連続の領域を含む表面と該NPPFアンプリコンを、該NPPFアンプリコンが該核酸アンカーに特異的に結合するのに十分な条件下において接触させる工程を包含する、請求項2〜21のいずれか1項に記載の方法。
前記NPPFアンプリコンを検出する工程が、該NPPFアンプリコンを表面の集団と、該NPPFアンプリコンが前記二機能性リンカーの第2の部分に特異的に結合するのに十分な条件下において接触させる工程を包含し、ここで、該表面の集団は、表面の部分集団を含み、表面の各部分集団は、該NPPFアンプリコンのうちの1つの少なくとも一部に特異的に結合する第1の部分を含む二機能性リンカーと会合した少なくとも1つのアンカーを含む、請求項2〜21のいずれか1項に記載の方法。
前記NPPFアンプリコンを検出する工程が、該NPPFアンプリコンを表面の集団と、該NPPFアンプリコンが前記核酸アンカーに特異的に結合するのに十分な条件下において接触させる工程を包含し、ここで、該表面の集団は、表面の部分集団を含み、表面の各部分集団は、該NPPFアンプリコンのうちの1つの少なくとも一部に相補的な領域を有する少なくとも1つの核酸アンカーを含む、請求項2〜21のいずれか1項に記載の方法。
前記二機能性リンカーの第2の部分が、前記標的核酸分子の領域に相補的なNPPF領域に相補的であることによって、前記NPPFアンプリコンと該二機能性リンカーとの特異的結合を可能にする、請求項2〜21または25または27のいずれかに記載の方法。
前記NPPFアンプリコンを検出する工程が、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼに結合体化されたアビジンまたはストレプトアビジンと該NPPFアンプリコンを接触させる工程を包含する、請求項33に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
配列表
本明細書中に列挙される核酸配列は、37C.F.R.1.822に定義されているようなヌクレオチド塩基に対する標準的な文字の省略形を使用して示される。各核酸配列の一方の鎖だけが示されるが、その相補鎖は、表示されている鎖に対する任意の参照によって含められると理解される。提供される配列において:
配列番号1〜16は、開示される方法とともに使用され得る例示的なアンカー核酸配列を提供する。
【0015】
配列番号17および18は、NPPFとともに使用され得る、それぞれ例示的な5’および3’フランキング配列を提供する。
【0016】
配列番号19および20は、例示的なPCRプライマーを提供する。
【0017】
配列番号21〜44は、ヌクレオチド25〜30に存在するバーコード配列を含む例示的なプライマーを提供する。
【0018】
詳細な説明
I.概要
本開示は、多重化を可能にする、標的核酸分子を検出するかまたは配列決定する改善された方法を提供する。開示される方法は、現在利用可能な配列決定方法および検出方法にまさるいくつかの改善を提供する。例えば、それらの方法は、標的核酸分子の処理をより必要としないので、そのような処理によって導入されるバイアスを減少させるかまたは排除することができる。例えば、現行の方法では、例えば標的がRNAであるとき、方法は、代表的には、サンプルからRNAを単離するかもしくは抽出する工程、それをRT−PCRに供する工程、そのRNAをライゲートする工程、またはそれらの組み合わせを使用する。開示される方法では、そのような工程は必要ない。結果として、本方法は、別段、検出配列決定の影響を受けやすくない、一連のサンプルタイプの解析を可能にする。さらに、これにより、サンプルからのRNAの損失が少なくなり、より正確な結果が提供される。それにより、酵素のバイアスも減少する。開示される方法は、所望の核酸分子の標的化された検出および配列決定も提供する。これは、データ解析を大幅に簡単にする。現行の全ゲノム配列決定法は、生成される大量のデータ、および複雑なバイオインフォマティクスの必要性という難題に見舞われている。配列決定のコストは減少してきたが、配列を決定する能力は、研究者がデータを保存する、伝送するおよび解析する能力を越えている。結果として、通常、妥当な長さの時間で解析され得るよりも多くのデータが生成されている。開示される方法は、標的化されているので、これらの障害を克服し得る。例えば、標的の一部しか検出されるまたは配列決定される必要がないので、生成されるデータの量が、簡素化される。ヌクレオチドの長いリードは、必要ないし、配列のフラグメントも、参照配列に対して適切にアラインメントされる必要がない。さらに、それらの結果は、複雑なバイオインフォマティクス解析の必要なく、容易にカウントされ得る。
【0019】
例えば、本方法は、DNAまたはRNA、変異(例えば、遺伝子の融合、挿入または欠失)、タンデム反復、単一ヌクレオチド多型(SNP)およびDNAメチル化を検出するために使用され得る。本方法は、本明細書中でヌクレアーゼ保護プローブと称される、フランキング配列を含むプローブ(NPPF)を使用する。そのプローブ上のフランキング配列が、化学量論を損なわずに、増幅のための普遍的なプライマー結合部位をもたらし、シーケンシングアダプターおよび実験用タグの付加(3’もしくは5’末端のいずれか、または両端における付加、例えば、多重化を増加させるため)を可能にするので、NPPFの使用は、多重化を可能にし、かつ、検出されるかまたは配列決定される標的核酸分子の化学量論を保存する。フランキング部位は、普遍的であり得るので、任意の標的配列に対する任意のNPPFを増幅するために同じプライマーを使用することができ、ゆえに、多重化および化学量論の保存が可能になる。1つの例において、NPPFの両端から増幅することによって、開示される方法は、以前のqNPA法およびqNPS法よりも高い特異性を提供する。インタクトな3’および5’フランキング配列を有するNPPFだけが、指数関数的に増幅され、ヌクレアーゼによって切断されたNPPFは、配列決定されるかまたは検出されるのに十分には増幅されない。
【0020】
さらに、上記プライマーは、タグ(例えば、NPPF自体全体の配列決定を必要とせずに標的の識別を可能にする実験タグ、あるいは、3’もしくは5’末端のいずれかまたは両端において、異なる患者由来のサンプルを単一のランに組み合わせる(例えば、多重化を増加させる)ことを可能にする実験タグ、ならびに特定のシーケンシングプラットフォームに対して必要とされる配列の付着およびいくつかのシーケンシングプラットフォームのためのコロニーの形成を可能にするシーケンシングアダプター)の付加を可能にする。NPPFの使用は、例えば全遺伝子を含むサンプルをNPPF(またはNPPFもしくは標的アンプリコン)に減少させるので、解析される(例えば、配列決定される)サンプルの複雑さも簡素化する。NPPF(またはNPPFにハイブリダイズした標的)の配列決定は、他の配列決定法に必要とされるデータ解析と比べてデータ解析を簡素化し、配列をゲノムとマッチさせ、標準的な配列決定法から得られた複数の配列/遺伝子をデコンボリュート(deconvolute)しなければならないのではなく、サンプルに加えられたNPPFとのマッチを単純にカウントするようにアルゴリズムを単純化させる。いくつかの例において、開示される方法は、以前のqNPA法およびqNPS法と比べて、得られるシグナルを増加させる(例えば、増幅を行う前にNPPF生成物を実質的に希釈せずに、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも125倍、少なくとも150倍または少なくとも200倍の増加)。
【0021】
1つの例において、本開示は、サンプル中の少なくとも1つの標的核酸分子(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50または少なくとも100個の標的核酸分子)を検出するためまたはサンプル中の少なくとも1つの標的核酸分子の配列を決定するための方法を提供する。いくつかの例において、そのサンプルは、サンプル中の核酸分子を変性させるために、例えば、NPPFとサンプル中の標的核酸分子とのその後のハイブリダイゼーションを可能にするために、加熱される。いくつかの例において、そのサンプルは、溶解されたサンプルである。いくつかの例において、そのサンプルは、固定されたサンプル(例えば、パラフィン包埋ホルマリン固定(FFPE)サンプル、ヘマトキシリンおよびエオシン染色組織またはグルタルアルデヒド固定組織)である。例えば、標的核酸分子は、固定され得るか、架橋され得るか、または不溶性であり得る。
【0022】
本方法は、フランキング配列を含む少なくとも1つのヌクレアーゼ保護プローブ(NPPF)とサンプルを、NPPFが標的核酸分子に特異的に結合するのに十分な条件下において接触させる工程を包含し得る。いくつかの例において、開示される方法は、複数のサンプル中の少なくとも1つの標的核酸分子を同時または同時発生的に配列決定するかまたは検出する。いくつかの例において、開示される方法は、サンプル中の2つ以上の標的核酸分子を配列決定するかまたは検出する(例えば、同時または同時発生的に)。そのような例では、サンプルを複数のNPPFと接触させる(ここで、各NPPFは、特定の標的核酸分子に特異的に結合する)。例えば、10個の標的核酸分子が存在する場合、サンプルを異なる10個のNPPF(各々がその10個の標的のうちの1つに特異的である)と接触させ得る。いくつかの例において、少なくとも10個の異なるNPPFが、サンプルとインキュベートされる。しかしながら、いくつかの例では、単一の標的核酸分子に特異的な2つ以上のNPPF(例えば、2、3、4、5、10、20個またはそれ以上)(例えば、標的の異なる領域に特異的なNPPFの集団、または標的およびそのバリエーション(例えば、変異または多型を有するもの)に結合し得るNPPFの集団)が使用され得ると認識される。
【0023】
NPPF分子は、5’末端および3’末端、ならびにその中間に標的核酸分子の全部または一部に相補的な配列を含む。これにより、NPPFと標的核酸分子との特異的結合またはハイブリダイゼーションが可能になる。例えば、標的核酸分子の領域に相補的なNPPFの領域は、その標的核酸分子の領域に高特異性で結合するかまたはハイブリダイズする。NPPFは、標的核酸配列の全部または一部に相補的であり得る。NPPF分子はさらに、NPPFの5’末端および/または3’末端に存在する1つ以上のフランキング配列を含む。したがって、その1つ以上のフランキング配列は、標的核酸分子に相補的な配列に対して5’、3’またはその両方に位置する。各フランキング配列は、いくつかの連続したヌクレオチドを含み、サンプル中に存在する核酸分子に見られない配列(例えば、少なくとも12個連続したヌクレオチドの配列)を生成する。NPPFが、5’末端と3’末端の両方にフランキング配列を含む場合、いくつかの例では、各NPPFの配列は、異なり、かつ互いに相補的でない。
【0024】
フランキング配列は、増幅プライマーの少なくとも一部に相補的な普遍的なハイブリダイゼーション配列/増幅配列を提供する。いくつかの例において、フランキング配列は、実験用タグ、シーケンシングアダプターまたはそれらの組み合わせを含み得る(またはその付加を可能にし得る)。例えば、実験用タグは、例えば、表面上への(例えば、その表面上の特定のスポットにおけるまたは特定のビーズへの)NPPFの捕捉を可能にする、捕捉プローブに相補的な配列であり得る。いくつかの例において、実験用タグは、NPPFを識別する配列(例えば、特定の患者または標的配列に特異的なタグ、例えば、そのようなタグ化されたNPPFの区別または分類を可能にするもの)であり得る。いくつかの例において、シーケンシングアダプターは、NPPF NPPFアンプリコンを特定のシーケンシングプラットフォームとともに使用するのを可能にする配列。
【0025】
NPPFは、任意の核酸分子(例えば、DNAまたはRNA分子)であり得、非天然塩基を含み得る。いくつかの例において、NPPFは、少なくとも35ヌクレオチド(例えば、40〜80または50〜150ヌクレオチド)である。標的核酸分子の領域に相補的なNPPFの一部は、少なくとも6ヌクレオチド長(例えば、少なくとも10、少なくとも25または少なくとも60、例えば、6〜60ヌクレオチド長)であり得る。NPPFのフランキング配列は、少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチドまたは少なくとも25ヌクレオチド、例えば、12〜50ヌクレオチド長であり得る。いくつかの例において、NPPFは、2つのフランキング配列:一方を5’末端に、他方を3’末端に含む。いくつかの例において、5’末端のフランキング配列は、3’末端のフランキング配列と異なる。さらに、NPPFが、2つのフランキング配列を含む場合、理想的には、その2つのフランキング配列は、類似の融解温度(Tm)(例えば、+/−5℃のTm)を有する。
【0026】
本方法はさらに、フランキング配列に相補的な配列を有する核酸分子(そのような分子は、本明細書中でCFSと称される)とサンプルを、フランキング配列がCFSに特異的に結合するかまたはハイブリダイズするのに十分な条件下において接触させる工程を包含する。当業者は、フランキング配列を保護するために単一のCFSを使用する代わりに、フランキング配列を保護するために複数のCFSが使用され得ることを認識するだろう。これにより、標的核酸分子ならびにCFSに結合したNPPF分子が生成され、それにより、少なくとも3個の連続したオリゴヌクレオチド配列(すべての塩基が相補的な塩基とのハイブリダイゼーションに関わっており、NPPFおよびCFSの塩基は非天然塩基を含み得る)を含む二本鎖分子が生成される。CFSは、その対応するフランキング配列にハイブリダイズし、ゆえに、その後の工程におけるヌクレアーゼによる消化から保護する。いくつかの例において、各CFSは、その対応するフランキング配列と全く同じ長さである。いくつかの例において、CFSは、その対応するフランキング配列に完全に相補的である。しかしながら、当業者は、5’末端フランキング配列を保護するCFSの3’末端または3’末端フランキング配列を保護するCFSの5’末端が、差異(例えば、これらの各位置に存在する1つのヌクレオチド)を有し得ることを認識するだろう。
【0027】
標的核酸分子ならびにCFSをNPPFに結合させた後、本方法はさらに、一本鎖(ss)核酸分子または核酸分子のss領域に特異的なヌクレアーゼ(例えば、S1ヌクレアーゼ)とサンプルを、相補的な塩基にハイブリダイズしていない核酸塩基を除去するのに十分な条件下において接触させる工程を包含し得る。したがって、例えば、標的核酸分子またはCFSに結合していないNPPFならびに未結合の標的核酸分子、サンプル中の他のss核酸分子および未結合のCFSが、分解され得る。これにより、CFSおよび標的核酸にハイブリダイズした二本鎖付加物として存在するインタクトなNPPFを含む消化されたサンプルが生成される。いくつかの例において、例えば、NPPFがDNAから構成される場合、ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼまたはそれらの組み合わせを含み得る。
【0028】
いくつかの例において、本方法はさらに、サンプルのpHを上昇させ、かつ/または加熱して、例えば、ヌクレアーゼを不活性化させるか、NPPFに結合した標的核酸分子およびCFSを除去するか、もしくはそれらの組み合わせを行う工程を包含する。いくつかの例において、本方法は、NPPFから標的核酸(例えば、DNA)を放出する工程、および次いでさらに、放出された標的を解析する工程(例えば、標的を検出するかまたは配列決定する工程)を包含する。いくつかの例において、標的核酸は、DNAであり、そのDNAは、その検出または配列決定の前に増幅される。
【0029】
標的核酸分子およびCFSに結合し、ゆえにヌクレアーゼによる処理を乗り越えたNPPFは、例えば、PCR増幅を使用して、増幅され得る。消化されたサンプル中のNPPFは、1つ以上の増幅プライマーを使用して増幅され、それにより、NPPFアンプリコンが生成され得る。少なくとも1つの増幅プライマーは、NPPFフランキング配列に相補的な領域を含む。いくつかの例において、NPPFは、5’末端と3’末端の両方にフランキング配列を含み、2つの増幅プライマーが使用され、ここで、一方の増幅プライマーは、5’末端フランキング配列に相補的な領域を有し、他方の増幅プライマーは、3’末端フランキング配列に相補的な領域を有する。その増幅プライマーの一方または両方が、増幅中にNPPFアンプリコンと実験用タグまたはシーケンシングアダプターとの付着を可能にする配列を含み得、一方または両方のプライマーが、NPPFアンプリコンの標識を可能にするために標識され得る。いくつかの例において、実験用タグとシーケンシングアダプターの両方が、例えば、NPPFアンプリコンの反対端に、付加される。例えば、そのようなプライマーの使用によって、NPPFアンプリコンの5’末端もしくは3’末端からまたは3’末端と5’末端の両方から伸長する実験用タグまたは配列タグが生成され、それにより、可能な多重化の程度が高まり得る。実験用タグは、サンプル、被験体または標的核酸配列の識別を可能にするユニークな核酸配列を含み得る。いくつかの例において、増幅プライマーは、基材上へのNPPFアンプリコンの捕捉を可能にする(例えば、NPPFアンプリコン上の捕捉配列に相補的な配列を有する基材上のプローブへのハイブリダイゼーションによって)実験用タグを含む。シーケンシングアダプターは、得られたNPPFをシーケンシングプラットフォーム上に捕捉することを可能にする核酸配列を含み得る。例えば、増幅プライマーは、いったん配列決定チップ上に捕捉されたら増幅を促進し得る、ポリAまたはポリT配列タグの付着を可能にする配列を含み得る。いくつかの例において、増幅プライマーは、NPPFアンプリコンを標識するために使用される。他の例において、一方または両方のフランキング領域が、標識されたプローブを用いるなどして(例えば、増幅なしで)検出可能な標識をNPPFにハイブリダイズさせるために使用される。
【0030】
次いで、得られたNPPF(または標的)アンプリコン(またはその一部、例えば、3’部分)が、配列決定されるかまたは検出されることにより、サンプル中の少なくとも1つの標的核酸分子の配列が決定され得るか、または検出され得る。
【0031】
1つの例において、NPPFアンプリコン(またはその一部)は、配列決定される。NPPFアンプリコンを配列決定する任意の方法を使用することができ、本開示は、特定の配列決定方法に限定されない。いくつかの例において、使用される配列決定方法は、Solexa(登録商標)シーケンシング、454(登録商標)シーケンシング、鎖停止シーケンシング(chain termination sequencing)、色素停止シーケンシング(dye termination sequencing)またはパイロシーケンシングである。いくつかの例において、一分子シーケンシングが使用される。NPPFアンプリコンが配列決定されるいくつかの例において、本方法は、得られたNPPF配列を参照配列データベースと比較する工程;および同定された各NPPF配列の数を測定する工程も包含する。
【0032】
いくつかの例において、NPPFアンプリコンは、検出される。そのような例において、本方法は、NPPFアンプリコンを表面(例えば、複数の空間的に不連続の領域を有する表面)と接触させる工程を包含し得る。1つの例において、NPPFアンプリコンは、表面上の1つ以上の核酸捕捉分子によって捕捉され、ここで、その表面上の核酸捕捉分子の配列は、NPPFアンプリコン上のフランキング配列の少なくとも一部に相補的である。この相補性のおかげで、NPPFアンプリコンと表面上の捕捉分子とのハイブリダイゼーションおよび結合が可能になる。そのような捕捉分子は、表面に直接結合体化され得る。NPPFアンプリコンは、そのNPPFアンプリコンが表面上の捕捉分子に特異的に結合するのに十分な条件下において、その表面とともにインキュベートされるかまたは接触される。いくつかの例において、NPPFアンプリコンは、表面の集団と接触され、ここで、その表面の集団は、表面の部分集団(例えば、ビーズの集団)を含み、表面の各部分集団は、NPPFアンプリコン上のフランキング配列の少なくとも一部に相補的な少なくとも1つの核酸捕捉分子を含む。したがって、このおかげで、NPPFによって標的化される配列に関係なく、表面上の捕捉分子に相補的な配列を有するすべてのNPPFの捕捉が可能になる。次いで、結合したNPPFアンプリコンは、検出され得る。いくつかの例において、この工程は、NPPFアンプリコンを(例えば、プライマーを含む混合物から)精製するためまたは濃縮するために使用され、続いて、NPPFアンプリコンは、例えば、リバースハイブリダイゼーション(reversing hybridization)によって(例えば、温度を上昇させて、捕捉されたNPPFを融解除去することによるか、またはpHおよび温度を変化させることによって)表面から放出され得、そのNPPFアンプリコンが、解析され得る。
【0033】
別の例において、NPPFアンプリコンは、アンカーおよび二機能性リンカーを使用することによって、表面上に捕捉される。その表面は、複数の領域(各領域は、二機能性リンカーと会合した少なくとも1つのアンカーを含む)を含み得る。その二機能性リンカーは、アンカーに特異的に結合する第1の部分およびNPPFアンプリコンのうちの1つの少なくとも一部に特異的に結合するかまたはハイブリダイズする第2の部分を含む。NPPFアンプリコンは、そのNPPFアンプリコンが二機能性リンカーの第2の部分に特異的に結合するのに十分な条件下において表面とともにインキュベートされるかまたは接触される。いくつかの例において、NPPFアンプリコンは、表面の集団と接触され、ここで、その表面の集団は、表面の部分集団(例えば、ビーズの集団)を含み、表面の各部分集団は、二機能性リンカーと会合した少なくとも1つのアンカーを含む。次いで、結合したNPPFアンプリコンが、検出され得る。
【0034】
さらに、NPPFアンプリコンは、検出可能な標識を含むことにより、その検出が可能になり得る。いくつかの例において、そのような標識は、増幅中に導入される。特定の例において、検出可能な標識は、ハプテン、蛍光分子、酵素または放射性同位体である。例えば、NPPFアンプリコン上に存在するビオチンは、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼに結合体化されたアビジンまたはストレプトアビジンとNPPFアンプリコンを接触させることによって、検出され得る。
【0035】
II.用語
別段述べられない限り、専門用語は、従来の使用法に従って使用される。分子生物学における通常の用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes VII,Oxford University Pressから出版,2000(ISBN 019879276X);Kendrewら(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,Blackwell Publishersから出版,1994(ISBN 0632021829);Robert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,Wiley,John & Sons,Inc.から出版,1995(ISBN 0471186341);およびGeorge P.Redei,Encyclopedic Dictionary of Genetics,Genomics,and Proteomics,2nd Edition,2003(ISBN:0−471−26821−6)に見られ得る。
【0036】
以下の用語および方法の説明は、本開示をより良く説明するためおよび本開示を実施する当業者を導くために提供される。単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のことを指示しない限り、1つまたは1つより多いことを指す。例えば、用語「細胞(a cell)を含む」は、単一または複数の細胞を含み、句「少なくとも1つの細胞を含む」と等価であると考えられる。用語「または」は、文脈が明らかに別のことを示していない限り、述べられている二者択一のエレメントまたは2つ以上のエレメントの組み合わせのうちの単一エレメントのことを指す。本明細書中で使用されるとき、「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprising)」は、追加のエレメントを排除することなく、「A、BまたはAおよびBを含む(including)」を意味する。
【0037】
本開示の様々な実施形態の概説を容易にするために、以下の特定の用語の説明が提供される:
3’末端:末端残基の3’にヌクレオチドが結合していない、核酸分子の末端。
【0038】
5’末端:末端残基の5’位がヌクレオチドと結合していない、核酸配列の末端。
【0039】
核酸分子を増幅する:核酸分子(例えば、NPPFまたはその一部)のコピー数を増加させること。得られた生成物は、増幅産物またはアンプリコンと呼ばれる。インビトロ増幅の例は、サンプル(例えば、NPPFを含むサンプル)をオリゴヌクレオチドプライマーの対と、それらのプライマーとサンプル中の核酸分子とのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で接触させるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。それらのプライマーは、好適な条件下で伸長され、鋳型から解離され、次いで、再度アニールし、伸長され、解離されることにより、核酸分子のコピー数が増幅する。
【0040】
(核酸の)結合または安定的な結合:十分量の第1の核酸分子が、他方の核酸分子と塩基対を形成するかまたはハイブリダイズする場合、第1の核酸分子(例えば、NPPF)は、別の核酸分子(例えば、標的核酸分子)に結合するかまたは安定的に結合する(例えば、NPPFとその相補的な標的核酸配列との結合)。
【0041】
結合は、物理的または機能的な特性によって検出され得る。核酸分子間の結合は、機能的結合アッセイ(例えば、発現および/または活性の減少)と物理的結合アッセイの両方を含む、当業者に公知の任意の手順によって検出され得る。
【0042】
相補的:核酸間で塩基対を形成する(from)能力。オリゴヌクレオチドおよびそれらのアナログは、相補的な塩基間の水素結合(ワトソン−クリック、フーグスティーンまたは逆フーグスティーン水素結合を含む)によってハイブリダイズする。一般に、核酸分子は、ピリミジン(シトシン(C)、ウラシル(U)およびチミン(T))またはプリン(アデニン(A)およびグアニン(G))である窒素塩基からなる。これらの窒素塩基は、ピリミジンとプリンとの間で水素結合を形成し、ピリミジンとプリンとの結合は、「塩基対形成」と称される。より詳細には、Aは、TまたはUと水素結合し、Gは、Cと結合する。「相補的」は、異なる核酸間または同じ核酸の2つの異なる領域間において生じる塩基対形成のことを指す。
【0043】
「特異的にハイブリダイズ可能」および「特異的に相補的」は、安定的かつ特異的な結合が、プローブ(例えば、NPPF)またはそのアナログと核酸標的(例えば、DNAまたはRNA標的)との間に生じるような十分な程度の相補性を示す用語である。そのプローブまたはアナログは、特異的にハイブリダイズ可能であるためにその標的配列に100%相補的である必要はない。プローブまたはアナログは、特異的結合が望まれる条件下で、例えば、本明細書中に開示される方法において、プローブまたはアナログと非標的配列との非特異的結合が回避されるのに十分な程度の相補性が存在するとき、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0044】
〜に十分な条件:所望の活性を可能にする、例えば、2つの核酸分子(例えば、NPPFと標的核酸、NPPFとCFSまたはNPPFと二機能性リンカーとの)間の特異的結合またはハイブリダイゼーションを可能にするか、またはヌクレアーゼが未結合の核酸を除去する(または消化する)のを可能にする、任意の環境。
【0045】
接触:直接的な物理的会合の配置;固体と液体の両方の形態におけるものを含む。例えば、接触は、溶液中の核酸プローブ(例えば、NPPF)および生物学的サンプルを用いてインビトロにおいて生じ得る。
【0046】
検出:ある物質(例えば、シグナル、特定のヌクレオチド、アミノ酸、核酸分子および/または生物)が、存在するかまたは存在しないことを判定すること。いくつかの例において、これはさらに、定量も含み得る。例えば、開示される方法を使用することによって、サンプル中の標的核酸分子の検出が可能になる。
【0047】
検出可能な標識:その分子の検出を容易にする別の分子(例えば、核酸分子、例えば、NPPFまたは増幅プライマー/プローブ)に直接または間接的に結合体化される化合物または組成物。標識の具体的な非限定的な例としては、蛍光および蛍光発生部分、色素生産性部分、ハプテン、親和性タグならびに放射性同位体が挙げられる。その標識は、直接検出可能(例えば、光学的に検出可能)であり得るか、または間接的に検出可能(例えば、さらに検出可能な1つ以上のさらなる分子との相互作用を介して)であり得る。本明細書中に開示されるプローブの文脈における例示的な標識は、下に記載される。核酸を標識するための方法および様々な目的にとって有用な標識の選択における指針は、例えば、Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3
rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley−Intersciences(1987および改訂版を含む)で述べられている。
【0048】
ハイブリダイゼーション:相補的な一本鎖DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドが二重鎖分子(ハイブリダイゼーション複合体とも称される)を形成する能力。核酸ハイブリダイゼーションの手法は、核酸プローブと、標的にするようにデザインされた遺伝子との間でハイブリダイゼーション複合体を形成するために使用され得る。
【0049】
「特異的にハイブリダイズ可能」および「特異的に相補的」は、安定的かつ特異的な結合が、第1の核酸分子(またはそのアナログ)と第2の核酸分子(例えば、核酸標的、例えば、DNAまたはRNA標的)との間に生じるような、十分な相補性の程度を示す用語である。その第1および第2の核酸分子は、特異的にハイブリダイズ可能であるために100%相補的である必要はない。特異的なハイブリダイゼーションは、本明細書中で「特異的結合」とも称される。
【0050】
特定の程度のストリンジェンシーをもたらすハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション方法の性質ならびにハイブリダイズする核酸配列の組成および長さに応じて変化し得る。一般に、ハイブリダイゼーションの温度およびハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(例えば、Na
+濃度)は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する。特定の程度のストリンジェンシーを達成するためのハイブリダイゼーション条件に関する計算は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning,second edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY(chapter 9および11)に述べられている。
【0051】
ヌクレアーゼ:ホスホジエステル結合を切断する酵素。エンドヌクレアーゼは、ヌクレオチド鎖の中の内部のホスホジエステル結合を切断する酵素である(ヌクレオチド鎖の末端におけるホスホジエステル結合を切断するエキソヌクレアーゼとは対照的に)。エンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼまたは他の部位特異的エンドヌクレアーゼ(配列特異的部位でDNAを切断する)、DNase I、Bal31ヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼT1、RNase I、RNase PhyM、RNase U2、RNase CLB、小球菌ヌクレアーゼおよび脱プリン/脱ピリミジン部位エンドヌクレアーゼが含まれる。エキソヌクレアーゼには、エキソヌクレアーゼIIIおよびエキソヌクレアーゼVIIが含まれる。特定の例において、ヌクレアーゼは、一本鎖核酸に特異的である(例えば、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼAまたはリボヌクレアーゼT1)。
【0052】
核酸:別段限定されない限り、天然に存在するヌクレオチドと類似の様式で核酸にハイブリダイズする、天然ヌクレオチドのアナログを含む、一本鎖または二本鎖の形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマー。用語「ヌクレオチド」は、糖(例えば、リボース、デオキシリボースまたはそれらの合成アナログ)に連結された塩基(例えば、ピリミジン、プリンまたはそれらの合成アナログ)、またはペプチド核酸(PNA)におけるようなアミノ酸に連結された塩基を含むモノマーを含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、ポリヌクレオチド中の1つのモノマーである。ヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチドにおける塩基の配列のことを指す。
【0053】
標的核酸(例えば、標的DNAまたはRNA)は、その検出、量または配列を測定すること(例えば、定量的または定性的な様式で)が意図されている核酸分子である。1つの例において、標的は、目的の核酸分子、例えば、DNAまたはRNAの規定の領域または特定の部分である。標的核酸配列が標的DNAまたは標的RNAである例において、そのような標的は、その特定の配列もしくは機能によって;その遺伝子もしくはタンパク質の名称によって;または他の核酸の中からそれをユニークに識別する他の任意の手段によって、定義され得る。
【0054】
いくつかの例において、標的核酸配列(例えば、DNAまたはRNA)の変化は、疾患または状態「に伴う」。つまり、標的核酸配列の検出は、疾患または状態に関してサンプルの状態を推測するために使用され得る。例えば、標的核酸配列は、第1の形態が、疾患または状態が存在しないことに相関し、第2の(または異なる)形態が、疾患または状態が存在することに相関するような、2つ(またはそれ以上)の区別可能な形態で存在し得る。その2つの異なる形態は、ヌクレオチド多型もしくは変異などによって定性的に区別可能であり得、かつ/またはその2つの異なる形態は、サンプル中に存在する標的核酸配列のコピー数などによって定量的に区別可能であり得る。
【0055】
ヌクレオチド:核酸分子の基本単位。ヌクレオチドは、糖部分にエステル結合によって付着された1つ、2つまたは3つのリン酸基を有するペントース単糖に付着された窒素含有塩基を含む。
【0056】
DNAの主要なヌクレオチドは、デオキシアデノシン5’−三リン酸(dATPまたはA)、デオキシグアノシン5’−三リン酸(dGTPまたはG)、デオキシシチジン5’−三リン酸(dCTPまたはC)およびデオキシチミジン5’−三リン酸(dTTPまたはT)である。RNAの主要なヌクレオチドは、アデノシン5’−三リン酸(ATPまたはA)、グアノシン5’−三リン酸(GTPまたはG)、シチジン5’−三リン酸(CTPまたはC)およびウリジン5’−三リン酸(UTPまたはU)である。
【0057】
ヌクレオチドには、例えば、Nazarenkoらに対する米国特許第5,866,336号(参考として本明細書中に援用される)に記載されているような、改変された塩基、改変された糖部分および改変されたリン酸骨格を含むヌクレオチドが含まれる。ロックト(locked)核酸(LNA)に見られるような他の改変を含むヌクレオチドを含む。したがって、本明細書中に開示されるNPPF、プライマー、CFS、二機能性リンカーおよびアンカーは、天然塩基および非天然塩基を含み得る。
【0058】
その構造上の任意の位置のヌクレオチドを改変するために使用され得る改変された塩基部分の例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N〜6−イソペンテニルアデニン(sopentenyladenine)、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、メトキシアミノメチル(methoxyarninomethyl)−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−S−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシルおよび2,6−ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
その構造上の任意の位置のヌクレオチドを改変するために使用され得る改変された糖部分の例としては、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシロースおよびヘキソースまたはリン酸骨格の改変された構成要素(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステルもしくはホルムアセタールまたはそれらのアナログ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
プライマー:いくつかの例において、より長い核酸配列の合成を開始するために使用される、9ヌクレオチド長またはそれ以上のDNAオリゴヌクレオチドなどの短い核酸分子。より長いプライマーは、約10、12、15、20、25、30または50ヌクレオチド長またはそれ以上であり得る。プライマーは、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的な核酸鎖にアニールしてプライマーと相補鎖とのハイブリッドを形成し得、次いで、そのプライマーは、ポリメラーゼ酵素によってその相補鎖に沿って伸長する。例えば、PCRまたは他の核酸増幅方法による、核酸配列の増幅のためのプライマー対が使用され得る。
【0061】
1つの例において、プライマーは、標識を含み、それは、プローブと称され得る。
【0062】
プローブ:標的核酸分子(例えば、標的DNAまたはRNA)とハイブリダイズすることができ、かつその標的にハイブリダイズしたとき、直接または間接的に検出されることが可能である、核酸分子。したがって、プローブは、DNAまたはRNAなどの標的核酸分子の検出、およびいくつかの例では、定量を可能にする。いくつかの例において、プローブは、検出可能な標識を含む。
【0063】
ヌクレアーゼ保護プローブ(NPP):標的DNAまたはRNAに相補的な配列を有し、かつその標的DNAまたはRNAにハイブリダイズすることができる、核酸分子。NPPは、相補的な標的DNAまたはRNA核酸分子を、ヌクレアーゼ(例えば、一本鎖核酸に特異的なヌクレアーゼ)による切断から保護する。フランキング配列を含むヌクレアーゼ保護プローブ(NPPF)は、5’末端、3’末端またはその両方に1つ以上のフランキング配列をさらに含むNPPであり、ここで、そのフランキング配列は、サンプル中に存在する核酸分子に見られない、かつ増幅プライマーに対する付着点として使用され得る普遍的な増幅配列点を提供し得る、連続したヌクレオチドの配列を含む。1つの例において、フランキング配列は、NPPFを基材に捕捉するために使用され、ここで、その基材上の核酸捕捉配列とフランキング配列の少なくとも一部とが互いに相補的であることによって、その基材上へのNPPFの捕捉が可能になる。
【0064】
サンプル:被験体(例えば、ヒトまたは他の哺乳動物の被験体)から得られる、DNA(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)、RNA(mRNAまたはmiRNAを含む)、タンパク質またはそれらの組み合わせを含む生物学的検体。例としては、細胞、細胞溶解産物、染色体調製物、末梢血またはその画分、尿、唾液、組織生検材料(例えば、腫瘍生検材料またはリンパ節生検材料)、外科検体、骨髄、羊水穿刺サンプル、細針吸引材料、循環腫瘍細胞および剖検材料が挙げられるが、これらに限定されない。1つの例において、サンプルには、RNAまたはDNAが含まれる。特定の例において、サンプルは、直接使用されるか(例えば、新鮮または凍結)、または例えば、固定(例えば、ホルマリンを使用する固定)および/もしくはワックスに包埋すること(例えば、FFPE組織サンプル)によって、使用前に操作され得る。
【0065】
配列同一性/類似性:2つ以上の核酸配列間または2つ以上のアミノ酸配列間の同一性/類似性は、それらの配列間の同一性または類似性に関して表現される。配列同一性は、パーセンテージ同一性に関して測定され得る;そのパーセンテージが高いほど、それらの配列はより同一である。
【0066】
比較するために配列をアラインメントする方法は、当該分野で周知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;Higgins & Sharp,Gene,73:237−44,1988;Higgins & Sharp,Comput.Appl.Biosci.5:151−3,1989;Corpetら、Nucl.Acids Res.16:10881−90,1988;Huangら、Comput.Appl.Biosci.8,155−65,1992;およびPearsonら、Meth.Mol.Bio.24:307−31,1994に記載されている。Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−10,1990は、配列アラインメント方法および相同性計算の詳細な考慮すべき事項を提示している。
【0067】
NCBIベーシックローカルアラインメントサーチツール(BLAST)(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−10,1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと関連して使用するために、National Center for Biological Information(NCBI,National Library of Medicine,Building 38A,Room 8N805,Bethesda,MD 20894)を含むいくつかの供給源から、インターネット上で入手可能である。Blastnは、核酸配列を比較するために使用され、blastpは、アミノ酸配列を比較するために使用される。さらなる情報は、NCBIのウェブサイトに見られ得る。
【0068】
いったんアラインメントされると、両方の配列に同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が存在する位置の数を数えることによって、マッチ数が測定される。パーセント配列同一性は、そのマッチ数を、同定された配列に示される配列の長さまたは明確に区切られた長さ(例えば、同定される配列に示される配列からの100個の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基)で除した後、得られた値に100を乗じることによって決定される。
【0069】
2つの核酸分子が密接な関係があるという1つの示唆は、その2つの分子がストリンジェントな条件下において互いにハイブリダイズすることである。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、種々の環境パラメータによって異なる。配列に対して変更が行われ得ること、およびプローブが所望のとおり機能する能力にその変更が実質的に影響しないことを当業者が認識するように、本明細書中に開示される核酸プローブは、示される正確な配列に限定されない。例えば、開示されるプローブに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%、例えば、100%の配列同一性を有する配列が、本明細書中に提供される(例えば、配列番号1〜16)。当業者は、これらの配列同一性の範囲が、指針のためだけに提供されること;これらの範囲に入らないプローブも使用することができることを認識するだろう。
【0070】
配列決定:枝分かれしていない生体高分子の1次構造(または1次配列)を決定すること。配列決定によって、配列決定される分子、例えば、ポリヌクレオチドの原子レベルの構造の多くを簡潔に要約する配列として公知の、符号による線形の記述がもたらされる。その分子が、ポリヌクレオチド(例えば、RNAまたはDNA)であるとき、配列決定は、ヌクレオチドレベルでその分子に関する情報を得るために使用され得、次いで、その情報は、その分子自体および/またはそれによってコードされるポリペプチドについての様々な二次情報を解読する際に使用され得る。DNAの配列決定は、所与のDNA分子のヌクレオチドの順序を決定するプロセスであり、RNAの配列決定は、所与のRNA分子のヌクレオチドの順序を決定するプロセスである。いくつかの例において、核酸分子の配列決定は、間接的に、例えば、標的核酸分子に結合した、フランキング配列を含むヌクレアーゼ保護プローブ(NPPF)の少なくとも一部の配列を決定することによって、行われる。
【0071】
同時:同じ時点もしくは実質的に同じ時点において生じること、および/または同じサンプルもしくは同じ反応において生じること(例えば、同時発生)。いくつかの例において、事象は、互いの1マイクロ秒〜120秒以内(例えば、0.5〜120秒以内、1〜60秒以内または1〜30秒以内または1〜10秒以内)に生じる。
【0072】
被験体:ヒトおよび非ヒト哺乳動物(例えば、獣医学の被験体)などの任意の多細胞脊椎動物。1つの例において、被験体は、腫瘍または感染を有すると判明しているかまたは疑われている。
【0073】
表面(または基材):不溶性であるか、またはその後の反応によって不溶性にされ得る、任意の固体の支持体または材料。数多くの様々な固体支持体が、当業者に公知であり、それらとしては、ニトロセルロース、反応トレイのウェルの壁、マルチウェルプレート、試験管、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、膜および微小粒子(例えば、ラテックス粒子)が挙げられるがこれらに限定されない。検出試薬が到達可能であるのに十分な多孔度および捕捉試薬(例えば、オリゴヌクレオチド)を固定化するのに適した表面親和性を有する任意の好適な多孔性材料も、この用語によって企図される。例えば、ニトロセルロースの多孔性構造は、多種多様の試薬、例えば、捕捉試薬に対して優れた吸収および吸着の品質を有する。ナイロンは、同様の特徴を有し、好適でもある。微孔性構造が有用であり、水和状態においてゲル構造を有する材料も同様に有用である。
【0074】
有用な固体支持体のさらなる例としては、天然の高分子炭水化物およびそれらの合成的に改変された、架橋されたまたは置換された誘導体(例えば、寒天、アガロース、架橋されたアルギン酸、置換されたおよび架橋されたグアーゴム、セルロースエステル、特に、硝酸およびカルボン酸を有するもの、混合されたセルロースエステルおよびセルロースエーテル;窒素を含む天然のポリマー(例えば、タンパク質、および架橋されたまたは改変されたゼラチンを含む誘導体);天然の炭化水素ポリマー(例えば、ラテックスおよびゴム);好適に多孔性の構造で調製され得る合成ポリマー(例えば、ビニルポリマー)(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよびその部分的に加水分解された誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、上記の重縮合体(polycondensates)の共重合体およびターポリマー、例えば、ポリエステル、ポリアミドおよび他のポリマー(例えば、ポリウレタンまたはポリエポキシド)を含む);多孔性無機材料(例えば、アルカリ土類金属およびマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩(硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、アルミニウムおよびマグネシウムのケイ酸塩を含む);およびアルミニウムまたは酸化ケイ素または水和物(例えば、粘土、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲルまたはガラス(これらの材料は、上記多量体材料とともにフィルターとして使用され得る));および上記のクラスの混合物または共重合体(例えば、既存の天然ポリマーに対する合成ポリマーの重合を開始する(initializing)ことによって得られるグラフト共重合体)が挙げられる。
【0075】
本明細書中で述べられる刊行物、特許出願、特許および他の参考文献のすべてが、すべての目的のためにそれらの全体が参考として援用される。本明細書中で述べられるGenBankアクセッション番号を伴うすべての配列が、適用可能な規則および/または法律によって容認できる程度まで、2011年12月15日に提出されたものとして、それらの全体が参考として援用される。矛盾する場合、用語の説明を含む本明細書が、支配するものとする。
【0076】
本明細書中に記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料が、開示される技術を実施するためまたは試験するために使用され得るが、好適な方法および材料が、下に記載される。それらの材料、方法および例は、単に例証的であって、限定することを目的としていない。
【0077】
III.核酸分子を検出するかまたは配列決定する方法
サンプル中に存在する核酸分子を検出するおよび/または配列決定する方法が、本明細書中に開示される。いくつかの例において、少なくとも2つの異なる核酸分子が、同じサンプルまたは同じアッセイ(例えば、アッセイプレートまたはアレイの同じウェル)において検出される。いくつかの例において、同じ核酸分子が、少なくとも2つの異なるサンプルまたはアッセイ(例えば、異なる患者由来のサンプル)において検出される。
【0078】
開示される方法は、例えば、国際特許公報WO99/032663;WO00/037683;WO00/037684;WO00/079008;WO03/002750;およびWO08/121927;ならびに米国特許第6,232,066号、同第6,238,869号;同第6,458,533号;および同第7,659,063号(これらのすべての全体が参照により援用される)に記載されているような定量的ヌクレアーゼプロテクションアッセイ(qNPA)に対する改善を提供する。Martelら、Assay and Drug Development Technologies.2002,1(1−1):61−71;Martelら、Progress in Biomedical Optics and Imaging,2002,3:35−43;Martelら、Gene Cloning and Expression Technologies,Q.Lu and M.Weiner,Eds.,Eaton Publishing,Natick(2002);Seligmann PharmacoGenomics,2003,3:36−43;“Microarray Technologies and Applications,”の中のMartelら、“Array Formats”U.R.Muller and D.Nicolau,Eds,Springer−Verlag,Heidelberg(2005);Sawadaら、Toxicology in Vitro,20:1506−1513,2006;Bakirら、Bioorg.& Med.Chem Lett,17:3473−3479,2007;Krisら、Plant Physiol.144:1256−1266,2007;Robertsら、Laboratory Investigation,87:979−997,2007;Rimszaら、Blood,2008 Oct 15,112(8):3425−3433;Pechholdら、Nature Biotechnology,27:1038−1042,2009もまた参照のこと。例えば、開示されるqNPA法は、以前のqNPA法と比べて高い感度(例えば、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも100倍、少なくとも125倍、少なくとも150倍、少なくとも170倍または少なくとも200倍の検出可能なシグナルの増強)を有する。つまり、少なくとも10倍または200倍もの少ないサンプルしか必要でないか、または逆に、現在利用可能な方法の感度より10倍低いかまたはその感度よりも最大20倍も低い稀な遺伝子が、開示される方法を用いて検出可能である。その結果として、開示される方法を用いて、非常に少量のFFPEを提供する細針吸引材料または循環腫瘍細胞(10、50または100個の細胞しか患者から取り出されない場合)などのサンプルタイプを試験することができ、稀な遺伝子を検出することができる。
【0079】
さらに、開示される方法は、例えば、米国特許公開番号US−2011−0104693に記載されているような、定量的ヌクレアーゼプロテクション配列決定(qNPS)法に対する改善を提供する。qNPSは、qNPAを使用してサンプル中に存在する標的核酸分子(架橋されているときでさえ)を安定的な一本鎖核酸標的(ヌクレアーゼ保護プローブ,NPP)に変換する配列決定方法であり、その一本鎖核酸標的は、ヌクレアーゼ保護工程を使用すること、ならびに(必要に応じて)塩基による処理によって、保護している標的分子からヌクレアーゼ保護プローブを解離させ、RNAの場合はRNA標的を加水分解することによって、捕捉または分離なしに溶液中に回収され得る。次いで、ヌクレアーゼ加水分解の後に残っているNPPの量が、それらのプローブ自体の配列決定を含み得る配列決定によって測定される。本明細書中に開示される改善された方法は、フランキング配列を含むヌクレアーゼ保護プローブ(NPPF)であるNPPのバリエーションを使用する。そのプローブ上のフランキング配列のおかげで、増幅用の普遍的なプライマー結合部位がもたらされるので、NPPFの使用によって、多重化ならびに検出されるかまたは配列決定される標的核酸分子の化学量論の保存が可能になる。そのプライマー結合部位は、普遍的であるので、任意の標的配列に対する任意のNPPFを増幅するために同じプライマーを使用することができ、ゆえに、多重化および化学量論の保存が可能になる。1つの例において、NPPFの両端におけるフランキング配列からの増幅は、以前のqNPA法およびqNPS法よりも高い予想外の特異性を提供する。インタクトな3’および5’フランキング配列を有するNPPFは、指数関数的に増幅される;ヌクレアーゼによって切断されたNPPFは、配列決定されるかまたは検出されるのに十分には増幅されない。対照的に、以前のqNPA法を用いて処理されたNPPは、不正確な標的核酸との不十分または不正確なハイブリダイゼーションに起因して、アレイ上への捕捉に関わる配列の末端もしくはアレイ上での検出に関わる配列の末端、またはその両方において部分的切断され得、さらになおも捕捉され得、検出され得ることにより、正確な標的核酸に対する特異性が失われる。これは、開示されるNPPFプローブを用いたときには生じない。開示される方法は、検出されるかまたは配列決定される核酸分子が、試験サンプル中と同じ相対量の核酸分子を保持するように元の核酸分子の化学量論を保存する(例えば、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下または0.1%以下(例えば、0.001%〜5%、0.01%〜5%、0.1%〜5%または0.1%〜1%)のバリエーション)。
【0080】
開示される方法は、実験の多重化(例えば、同じアッセイ内での複数の反応(例えば、同じ反応ウェル内での異なる患者由来の複数のサンプル)および配列分析装置の同じラン/チャネル内で解析される複数の反応)も可能にする。
【0081】
詳細には、以前のqNPA法およびqNPS法とは対照的に、開示される方法は、改変された核酸保護プローブ(NPP)(これは、そのNPPの一方または両方の末端にフランキング配列を含む)を使用する。5’末端および/または3’末端フランキング配列を有するこれらの改変されたNPPは、本明細書中で、フランキング配列を有する核酸保護プローブ(NPPF)と称される。そのフランキング配列は、NPPFの一部であるので、ハイブリダイゼーション用および/または増幅用の普遍的なプライマー点として役立つ(かつNPPFの捕捉またはタグ化を含む他の目的のために使用され得る)一方または両方のフランキング配列が存在することによって、サンプル中の元の核酸の化学量論が保存される。さらに、これは、プライミング部位、タグなどをNPPFに付加するライゲーション(サンプル中の核酸の化学量論を歪め、ばらつきのさらなる供給源を提供する、人工産物を組み込み得る)の必要性を排除する。ライゲーションの必要性の排除は、化学量論を歪めかつ再現性を低下させる潜在的な人工産物を排除する。
【0082】
図1は、例示的なNPPFを示している模式図である。少なくとも1つのフランキング配列を有するヌクレアーゼ保護プローブ(NPPF)100は、標的核酸配列に特異的に結合する(および二機能性リンカーにも特異的に結合し得る)配列を含む領域102を含む。その標的核酸配列は、DNA(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)もしくはRNA(例えば、mRNA、miRNA、tRNA、siRNA)またはその両方であり得る。NPPFは、1つ以上のフランキング配列104および106を含む。
図1は、5’−フランキング配列104と3’−フランキング配列106の両方を有するNPPF100を示している。しかしながら、NPPFは、いくつかの例において、ただ1つのフランキング配列しか有しない場合がある。
【0083】
図2は、開示される方法を用いて核酸分子を検出するためまたは配列決定するためにNPPFを使用する例示的な方法の最初の工程を示している模式図である。工程1に示されるように、サンプル破壊緩衝液で処理された(例えば、溶解されたか、または核酸を利用できるように別途処理された)サンプル(例えば、標的核酸を含むと判明しているかまたは疑われるサンプル,200)を、第1の標的核酸(例えば、標的DNAまたはRNA)に特異的に結合する少なくとも1つのNPPFを含む、1つ以上のフランキング配列を有する複数のヌクレアーゼ保護プローブ(NPPF)202と接触させるかまたはインキュベートする。この反応物は、第2の標的核酸などに特異的に結合する他のNPPFも含み得る。例えば、この方法は、ユニークな各標的核酸分子に特異的であるようにデザインされた1つ以上の異なるNPPFを使用し得る。したがって、100個の遺伝子の測定には、少なくとも100個の異なるNPPFの使用が必要である(ここで、1遺伝子あたり少なくとも1つのNPPFが特異的である(例えば、いくつかの異なるNPPF/遺伝子))。したがって、例えば、この方法は、少なくとも2つの異なるNPPF、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個またはなおも少なくとも200個の異なるNPPF(例えば、2〜500個、2〜100個、5〜10個、2〜10個または2〜20個の異なるNPPF)を使用し得る。しかしながら、いくつかの例において、複数のNPPFが、単一の標的核酸分子に特異的な2つ以上の(例えば、2、3、4、5、10、20、50個またはそれ以上の)NPPFを含み得ることが認識されるだろう。
図2における破線バーは、第1の標的に特異的なNPPFを表しており、灰色の実線バーは、第2の標的に特異的なNPPFを表している。いくつかの例において、NPPFは、ビオチン(B)などの検出可能な標識を含むが、当業者は、増幅中などの他の工程において標識が付加され得ることを認識するだろう。したがって、
図2に示されるビオチンは、任意であり、他の標識を使用することができる。この反応は、NPPF202のフランキング配列に特異的な、フランキング配列に相補的な核酸分子(CFS)204も含む。
図2は、NPPのフランキング配列に特異的なCFSとして、緑色の点線バー204を示している。当業者は、そのCFSの配列が、存在するフランキング配列に応じて変化し得ることを認識するだろう。さらに、フランキング領域が保護されるのを確実にするために、2つ以上のCFSが使用され得る(例えば、単一のフランキング配列の異なる領域に結合する少なくとも2つのCFSが使用され得る)。そのCFSは、天然または非天然塩基を含み得る。
図2は、NPPFの両端にフランキング配列を有するNPPFを示しているが;当業者は、単一のフランキング配列を使用することができることを認識するだろう。サンプル、NPPFおよびCFSを、NPPFがそれらのそれぞれの標的核酸分子に特異的に結合するのに十分かつCFSがNPPFフランキング配列上のその相補的な配列に結合するのに十分な条件下において、インキュベートする。いくつかの例において、CFS204は、NPPF202より過剰に加えられる(例えば、NPPFよりも少なくとも5倍多いCFS(過剰モル濃度)、例えば、NPPFよりも少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍または少なくとも100倍多いCFS)。いくつかの例において、NPPF202は、サンプル中の全核酸分子より過剰に加えられる(例えば、サンプル中の全核酸分子よりも少なくとも50倍多いNPPF(過剰モル濃度)、例えば、サンプル中の全核酸分子よりも少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍または少なくとも1000倍多いNPPF)。実験の便宜上、測定される最も豊富な核酸標的について、その核酸標的に対して少なくとも50倍多い(例えば、少なくとも100倍過剰の)NPPFが存在し得るように、同様の濃度の各NPPFが含められることにより、カクテルが調製され得る。使用されるすべてのNPPFの実際の過剰量および総量は、ヌクレアーゼ(例えば、S1ヌクレアーゼ)が、標的核酸標的にハイブリダイズしないすべてのNPPFを破壊する能力によってのみ限定される。いくつかの例において、その反応物は、加熱される(例えば、50℃で一晩インキュベートされる)。
【0084】
図2の工程2に示されるように、結合/ハイブリダイゼーション反応を生じさせた後、一本鎖(ss)核酸分子に特異的なヌクレアーゼとサンプルを、ss核酸分子(例えば、未結合の核酸分子(例えば、未結合のNPPF、CFSおよび標的核酸分子または一本鎖のままのそのような分子の一部))を除去する(または消化する)のに十分な条件下において接触させる。
図2に示されるように、ss核酸分子に特異的なヌクレアーゼとサンプルのインキュベーションによって、任意のss核酸分子が分解され、結合したNPPFならびにCFSおよび標的核酸分子を含むインタクトな二本鎖核酸分子が残る。例えば、その反応物は、50℃で1.5時間、S1ヌクレアーゼとインキュベートされ得る(加水分解は、他の温度でも生じ得、他の時間にわたって行われ得るが、必要とされる時間および温度は、部分的に、ヌクレアーゼの量および加水分解されるのに必要とされる核酸の量、ならびに保護されている二本鎖領域のTmに応じ得る)。
【0085】
この反応の後、サンプルは必要に応じて、ハイブリダイズしていない材料を別途除去するかもしくは分離するために、および/または残留酵素を不活性化するかもしくは除去するために(例えば、加熱、フェノール抽出、沈殿、カラム濾過などによって)、処理され得る。例えば、工程3に示されるように、その反応物のpHを上げることによって、ヌクレアーゼが不活性化され得、その反応物を加熱することによって、ヌクレアーゼが破壊され得る。さらに、反応物の加熱は、標的核酸(例えば、標的DNAまたは標的RNA)およびCFSをNPPF上の相補的な領域から解離させ得る。これにより、事前に標的核酸分子およびCFSに結合していたインタクトなNPPFが残る(ここで、そのインタクトなNPPFは、どれだけのNPPFが標的にハイブリダイズしていたかに正比例する)。いくつかの例において、ハイブリダイズした標的核酸およびCFSは、例えば、ヌクレアーゼまたは化学的処理によって、分解され得る。あるいは、サンプルは、標的核酸分子の(一本鎖の)ハイブリダイズされる部分、またはNPPFに対してハイブリダイズした標的核酸分子およびCPSによって形成される二重鎖が残るように処理されることにより、さらに解析され得る(例えば、NPPFにハイブリダイズした標的が、配列決定され得る)。1つの例において、pHを約pH8に上げ、その反応物を、95℃で10分間インキュベートし、標的核酸およびCFSが解離する(および標的核酸がRNAである場合、前記標的核酸は加水分解される)。
【0086】
図2の工程4に示されるように、工程2または工程3の後、NPPFは、例えば、PCRを使用して、増幅される。
図2は、PCRプライマーまたはプローブ208を矢印として示している。それらのPCRプライマーまたはプローブは、ビオチンなどの標識を含み得、それによって、標識されたアンプリコンが生成される。そのPCRプライマー/プローブ208の少なくとも一部は、NPPF202のフランキング配列に特異的である。次いで、得られたアンプリコン210は、例えば、アレイに結合することによって(
図3を参照のこと)または配列決定されることによって(
図4を参照のこと)検出され得る。いくつかの例において、プライマー208の濃度は、CPS204より過剰であり、例えば、少なくとも10,000倍、少なくとも50,000倍、少なくとも100,000倍、少なくとも150,000倍、少なくとも200,000倍または少なくとも400,000倍過剰である。いくつかの例において、その反応物中のプライマー208の濃度は、少なくとも200nM(例えば、少なくとも400nM、少なくとも500nMまたは少なくとも1000nM)であり、その反応物中のCPS204の濃度は、1pM未満、0.5pM未満、または0.1pM未満である。
【0087】
図3の工程5に示されるように、増幅されたNPPFであるアンプリコン210を、複数の空間的に不連続の領域を含む表面212と接触させ得る。2つの異なるバージョンが示されている。1つの例(上)において、その表面は、二機能性リンカー216と会合した少なくとも1つのアンカー214を含む。いくつかの例において、アンプリコン210は、表面212との接触の前に2×緩衝液に加えられる。二機能性リンカー216は、アンカーに特異的に結合する第1の部分および複数のNPPFアンプリコン210のうちの1つに特異的に結合する第2の部分を含む。アンプリコン210を表面212とともに、複数のNPPFアンプリコン210の各々が二機能性リンカー216の第2の部分に特異的に結合するのに十分な条件下においてインキュベートする。
図1に示されるように、二機能性リンカーに特異的に結合するNPPFの領域102は、配列として二機能性リンカーに相補的である(かつ標的核酸配列にも相補的である)。二機能性リンカー216の第2の部分に結合したNPPFアンプリコン210は、NPPFアンプリコン210に含められた検出可能な標識を使用して検出され、それにより、サンプル中の標的核酸が検出される。
【0088】
他の例(下)において、表面は、共有結合によってその表面に直接付着され得る少なくとも1つの核酸捕捉分子220を含む。いくつかの例において、アンプリコン210は、表面212との接触の前に2×緩衝液に加えられる。核酸捕捉分子220は、複数のNPPFアンプリコン210のうちの1つの少なくとも(a least)一部(例えば、NPPFのフランキング配列領域の少なくとも一部(または、例えば、増幅中にフランキング配列に付加される領域))に相補的な配列を含む。アンプリコン210を表面212とともに、複数のNPPFアンプリコン210の各々が核酸捕捉分子220に特異的に結合するのに十分な条件下においてインキュベートする。
【0089】
核酸捕捉分子220に結合したNPPFアンプリコン210は、NPPFアンプリコン210に含められた検出可能な標識を使用して検出され、それによって、サンプル中の標的核酸が検出される。例えば、NPPFアンプリコンは、50℃で一晩、表面とともにインキュベートされることにより、NPPFアンプリコンと核酸捕捉分子220との結合が可能になり得る。1つの例において、NPPFアンプリコンは、ビオチンで標識される。
図3の工程6に示されるように、そのビオチンは、アビジン−HRP218を使用して(例えば、37℃で1時間、アビジン−HRPとともにインキュベートして)検出され得る。
図3の工程7に示されるように、過剰の未結合のアビジン−HRP218を除去し、適切な基質を加え、表面を撮像することにより、結合したNPPFが検出される。ビオチンが例として示されているが、当業者は、例えば、NPPFアンプリコン上のフルオロフォアまたは抗体を検出することによる、他の検出方法を使用することができることを認識するだろう。
【0090】
いくつかの例において、NPPFアンプリコン210が、標識されない場合(例えば、
図2の工程4において標識が増幅中に加えられない場合)、NPPFアンプリコン210は、標識されたプローブの配列に相補的な領域(例えば、フランキング配列またはその一部)を含み得る(ここで、この領域は、二機能性リンカー216に相補的でない)。次いで、この相補的なプローブは、
図3の工程5に示されるようにそれらを基材に付着する前に、NPPFアンプリコン210にハイブリダイズされ得る。
【0091】
いくつかの例において、NPPFアンプリコンを、複数の表面(例えば、ビーズまたは他の粒子の集団)と接触させる。1つの例において、各表面(例えば、混合されたビーズ集団内の各ビーズまたはビーズの部分集団)は、複数のNPPFアンプリコンの各々が二機能性リンカーの第2の部分に特異的に結合するのに十分な条件下において、アンカーに特異的に結合する第1の部分および複数のNPPFアンプリコンのうちの1つに特異的に結合する第2の部分を含む二機能性リンカーと会合した少なくとも1つのアンカーを含む。二機能性リンカーの第2の部分に結合したNPPFアンプリコンは、NPPFアンプリコンと会合している検出可能な標識を使用して検出され、それにより、サンプル中の標的核酸分子が検出され得る。別の例において、各表面(例えば、混合されたビーズ集団内の各ビーズまたはビーズの部分集団)は、複数のNPPFアンプリコンの各々が核酸捕捉分子に特異的に結合するのに十分な条件下において、NPPFアンプリコンの少なくとも(a least)一部(例えば、フランキング配列またはその一部)に相補的な配列を有する少なくとも1つの核酸捕捉分子を含む。その核酸捕捉分子に結合したNPPFアンプリコンは、NPPFアンプリコンと会合している検出可能な標識を使用して検出され、それにより、サンプル中の標的核酸分子が検出され得る。
【0092】
図4の工程5に示されるように、増幅されたNPPFであるアンプリコン210は、配列決定され得る。例えば、増幅されたNPPFのフランキング配列の一方または両方が、配列アダプターを含み得る(またはそれに付加されている)か、またはフランキング配列に相補的かつそれにハイブリダイズするプライマーが、配列決定チップ上の捕捉配列に相補的な配列アダプター配列を含み得、特定のシーケンシングプラットフォームを使用してNPPFの配列決定を可能にする。いくつかの例において、複数のNPPFが、並行して、例えば、同時または同時発生的に、配列決定される。したがって、この方法は、複数のNPPF配列を配列決定するために使用され得る。
【0093】
図5Aおよび5Bは、上記方法のさらなる要旨を、核酸分子をより詳細にして、提供している模式図である。
図5Aの左のパネルに示されるように、サンプル(例えば、サンプル破壊緩衝液で処理されたサンプル)中の標的核酸400を、1つ以上のフランキング配列を有する複数のヌクレアーゼ保護プローブ(NPPF)402(ここで、各NPPFは、特定の標的核酸400に特異的である)、およびNPPFの末端のフランキング配列404に特異的な、フランキング配列に相補的な核酸分子(CFS)406と、接触させるかまたはインキュベートする。3つの異なる標的核酸400が示されている:1コピーの標的1(緑色)、2コピーの標的2(赤色)および3コピーの標的3(青色)。この例は、等量の各NPPF402が加えられていることを示している。
図5Aは、NPPの両端にフランキング配列を有するNPPFを示しているが;当業者は、単一のフランキング配列を使用することができることを認識するだろう。
図5Aの中央のパネルは、標的核酸400とNPPF402とCFS406との間に結合/ハイブリダイゼーション反応を生じさせた後の反応産物を示している。標的核酸400は、NPPFの中央の領域にハイブリダイズし、CFS406は、3’−および5’−フランキング配列404にハイブリダイズする。
図5Aの右のパネルは、一本鎖(ss)核酸分子に特異的なヌクレアーゼとサンプルを、ss核酸分子を除去する(または消化する)のに十分な条件下において接触させた後の反応産物を示している。示されているように、NPPFにハイブリダイズしなかった標的核酸の領域408は消化され、同様に、標的核酸またはCFSに結合しなかったNPPF(例えば、410)のss領域も消化される。これにより、結合したNPPFならびにCFSおよび標的核酸分子を含むインタクトな二本鎖核酸分子(例えば、412)、ならびに標的のみにハイブリダイズした(がCFSにはハイブリダイズしなかった)NPPFまたはCFSのみにハイブリダイズした(が標的にはハイブリダイズしなかった)NPPFの領域(例えば、414)が残る。
【0094】
図5Bの左のパネルは、二本鎖核酸分子を分離した(例えば、加熱を用いて、およびpHを上昇させて)後の反応産物を示している。次いで、乗り越え得られたNPPF(これらは、ヌクレアーゼ工程中に保護した標的核酸分子に正比例する)が、増幅され得る。
図5Bの中央のパネルは、増幅された後の反応産物を示している。
図5Bの右のパネルは、増幅後、得られたNPPFアンプリコンが検出され得るかまたは配列決定され得ることを示している(例えば、
図2〜4を参照のこと)。
【0095】
いくつかの実施形態において、本方法は、第1の標的(例えば、第1のRNA)に特異的に結合する少なくとも1つのNPPF、および必要に応じて、第2の標的(例えば、第2のRNA)に特異的に結合する少なくとも1つのNPPFを含む複数のNPPFと、被験体由来のサンプル(例えば、核酸、例えば、DNAまたはRNAを含むサンプル)を接触させる工程を包含し得る。いくつかの例において、その複数のNPPFは、単一の標的核酸分子に特異的な2つ以上の(例えば、2、3、4、5個またはそれ以上の)NPPFを含む。例えば、その複数のNPPFは、少なくとも1つのNPPF(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、200、300、500、1000、2000、3000個またはそれ以上)を含み得、ここで、各NPPFは、単一の標的核酸分子に特異的に結合する。別のまたはさらなる例において、その複数のNPPFは、少なくとも2つの異なるNPPF集団(例えば、2、3、4、5、10、20または50個の異なるNPPF配列)を含み、ここで、各NPPF集団(または配列)は、異なる標的核酸分子に特異的に結合する。
【0096】
いくつかの例において、いくつかのNPPFは、同じ標的核酸の異なる部分にハイブリダイズし、各標的核酸の異なる部分にハイブリダイズするNPPFの数は、同じであり得るか、または異なり得る。例えば、低発現の核酸標的は、より高レベルで発現される核酸標的と比べて、それにハイブリダイズするより多いNPPFを有し得る(例えば、4つのNPPFが、低発現の核酸標的にハイブリダイズし、1つのNPPFが、高発現の核酸標的にハイブリダイズする)。いくつかの例において、いくつかの標的核酸に特異的なNPPFのいくつかは、フランキング配列を有しない場合があり(例えば、NPP)、ゆえに、増幅されないかもしくは標識されないか、または接着された適切なアダプターを有しない場合があり、ゆえに、このNPPFの部分は、検出されないかまたは配列決定されない。フランキング配列を有するNPPFとフランキング配列を有しないNPPとが約1対5または約1対10または約1対100または約1対1,000であり得るような混合物を使用するとき、測定されるシグナルまたは配列決定されるNPPFの数は「減少」し得、10,000コピーの標的核酸が存在し、1対5という比が使用される場合、フランキング配列を含むすべてのNPPFが配列決定され得るとき、増幅後、1/5の数のNPPFしか、配列決定されない。
【0097】
いくつかの例において、上記複数のNPPFは、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも100または少なくとも1000(例えば、2〜5000、2〜3000、10〜1000、50〜500、25〜300、50〜300、10〜100または50〜100)個のユニークなNPPF配列を含む。その複数のNPPは、1つ以上の標的核酸分子に特異的なNPPFの任意の組み合わせを含み得る。CFSとともに、その複数のNPPFは、それらのNPPFがそれぞれの標的核酸およびそれぞれのCFSに特異的にハイブリダイズするのに十分な条件下においてサンプルとインキュベートされる。いくつかの例において、CFSは、NPPFより過剰に加えられる(例えば、NPPFに対して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍または少なくとも10倍モル濃度過剰のCFS)。いくつかの例において、NPPFは、サンプル中の核酸分子よりも過剰に加えられる(例えば、サンプル中の核酸分子に対して少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも250倍、少なくとも1,000倍、少なくとも10,000倍または少なくとも100,000倍またはそれ以上、モル濃度過剰のNPPF)。非常に豊富な核酸標的に対するNPPFが1,000倍過剰で存在し、かつ同じ濃度の異なる各NPPFが同様である場合、存在量の少ない遺伝子に対して過剰のNPPFは、より大きい倍数量である可能性があること(例えば、存在量が1,000倍少ない遺伝子については、存在量の多い核酸標的よりも1,000倍多い)が認識されるだろう。
【0098】
次いで、ハイブリダイズしたサンプルを、一本鎖核酸に特異的なヌクレアーゼ(例えば、S1ヌクレアーゼ)と接触させ得る。次いで、乗り越え得られたNPPF(これは、ヌクレアーゼ工程中に保護した標的核酸分子に正比例する)が、増幅され得る。例えば、NPPFのフランキング配列に相補的な配列を含む増幅プライマーが使用され得る。次いで、得られたNPPFアンプリコンが、当該分野で公知の方法によって、例えば、それらをアレイもしくは他の基材に結合することによって、検出され得るか、または配列決定され得る。その標的核酸分子は、それらのそれぞれのNPPFが検出されるかまたは配列決定されると、サンプル中に存在すると識別される。
【0099】
A.例示的なハイブリダイゼーション条件
複数のNPPFが、標的核酸分子(例えば、被験体由来のサンプル中に存在するDNAおよびRNA)に特異的にハイブリダイズするのに十分な条件ならびにフランキング配列に相補的なCFSに特異的にハイブリダイズするのに十分な条件が本明細書中に開示される。例えば、他の物質または分子との非特異的なハイブリダイゼーションを最小限にしつつ、選択されたストリンジェンシーの条件下において、核酸(例えば、NPPF)が別の核酸(例えば、標的DNAもしくは標的RNAまたはCFS)にハイブリダイズするのを可能にし得る特徴(例えば、長さ、塩基組成および相補性の程度)が、本開示に基づいて決定され得る。NPPFの特徴は、下記のIV項で詳細に述べられる。代表的には、NPPFの領域は、選択されたストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下においてある核酸配列がハイブリダイズするのを可能にする、その対応する標的核酸分子と十分に相補的な核酸配列(例えば、
図1,102)、ならびに選択されたストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下においてある領域がハイブリダイズするのを可能にする、その対応するCFSと十分に相補的な領域(例えば、
図1,104、106)を有し得る。例示的なハイブリダイゼーション条件としては、約37℃またはそれ以上(例えば、約37℃、42℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃またはそれ以上)でのハイブリダイゼーションが挙げられる。変動し得るハイブリダイゼーション反応パラメータは、塩濃度、緩衝液、pH、温度、インキュベーション時間、ホルムアミドなどの変性剤の量およびタイプである。例えば、核酸(例えば、複数のNPPF)は、溶解緩衝液などの緩衝液(例えば、NaCl、KCl、H
2PO
4、EDTA、0.05%Triton X−100またはそれらの組み合わせを含む緩衝液)において、約10pM〜約10nM(例えば、約30pM〜5nM、約100pM〜約1nM)の範囲の濃度でサンプルに加えられ得る。
【0100】
1つの例において、各NPPFは、少なくとも10pM(例えば、少なくとも20pM、少なくとも30pM、少なくとも50pM、少なくとも100pM、少なくとも150pM、少なくとも200pM、少なくとも500pM、少なくとも1nMまたは少なくとも10nM)の最終濃度でサンプルに加えられる。1つの例において、各NPPFは、約30pMの最終濃度でサンプルに加えられる。別の例において、各NPPFは、約167pMの最終濃度でサンプルに加えられる。さらなる例において、各NPPFは、約1nMの最終濃度でサンプルに加えられる。1つの例において、各CFSは、プローブの量の少なくとも約6倍(例えば、プローブの量の少なくとも10倍または少なくとも20倍(例えば、プローブの量の6〜20倍))の最終濃度でサンプルに加えられる。1つの例において、各CFSは、少なくとも1nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも50nM、少なくとも100nMまたは少なくとも200nm(例えば、1〜100、5〜100または5〜50nM)加えられる。例えば、6つのプローブ(各々166pM)が存在する場合、各CFSは、5〜50nMで加えられ得る。
【0101】
サンプル中の核酸は、変性されて、ハイブリダイゼーションにとって利用可能な一本鎖にされる(例えば、約95℃〜約105℃において約5〜15分間)。温度と緩衝液の組成との組み合わせが、一本鎖の標的DNAもしくはRNAまたはその両方を形成する限り、種々の変性溶液を使用することによって、この変性温度を改変することができる。次いで、サンプル中の核酸およびCFSは、約10分〜約72時間(例えば、少なくとも約1時間〜48時間、約6時間〜24時間、約12時間〜18時間または一晩)にわたって、約4℃〜約70℃(例えば、約37℃〜約65℃、約42℃〜約60℃または約50℃〜約60℃)の範囲の温度において、複数のNPPFにハイブリダイズされる。当然のことながら、そのハイブリダイゼーション条件は、使用される特定のNPPFおよびCFSに応じて変動し得るが、NPPFと標的分子およびCFSとのハイブリダイゼーションを確実にするように設定される。いくつかの例において、複数のNPPFおよびCFSは、少なくとも約37℃、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃または少なくとも約70℃の温度においてサンプルとともにインキュベートされる。1つの例において、複数のNPPFおよびCFSは、約37℃、約42℃または約50℃においてサンプルとともにインキュベートされる。
【0102】
いくつかの実施形態において、本方法は、核酸の精製を含まない(例えば、核酸の精製は、サンプルをNPPFと接触させる前に行われず、かつ/または核酸の精製は、サンプルをNPPFと接触させた後に行われない)。いくつかの例において、サンプルの前処理は、細胞溶解以外、必要ない。いくつかの例において、細胞溶解ならびにサンプルと複数のNPPFおよびCFSとの接触は、連続的に行われる。他の例において、細胞溶解ならびにサンプルと複数のNPPFおよびCFSとの接触は、いくつかの非限定的な例では、いかなる介在工程もなしに、同時に行われる。
【0103】
続いて、NPPFがPCR(例えば、普遍的な増幅、またはリアルタイムPCRなどのためのNPPF特異的増幅)に供されるとき、溶解、NPPFとそれらの標的核酸とのハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ消化および塩基の加水分解のために使用される緩衝液および試薬は、増幅のために使用されるポリメラーゼと適合性であり得る。
【0104】
B.ヌクレアーゼによる処理
NPPFとサンプル中の標的核酸およびCFSとのハイブリダイゼーションの後、サンプルは、ヌクレアーゼ保護手順に供される。標的核酸分子および(使用されるとき)CFS(NPPF上に5’と3’の両方のフランキング配列が存在することもしくは一方だけが存在することに応じて、1つまたは2つのCFS、あるいはフランキング配列が増幅または測定のために必要でない場合は0個のCFS)にハイブリダイズしたNPPFは、ヌクレアーゼによって加水分解されず、続いて、増幅され得、次いで、検出され得るかまたは配列決定され得る(またはその両方)。
【0105】
1つ以上のヌクレアーゼによる処理は、すべてのss核酸分子(NPPFにハイブリダイズしていない(したがってNPPFによって保護されていない)サンプル中のRNAおよびDNA、標的核酸にハイブリダイズしていないNPPF、ならびにNPPFにハイブリダイズしていないCFS(使用されているとき)を含む)を破壊するが、ds核酸分子(例えば、CFSおよびサンプル中に存在する標的核酸分子にハイブリダイズしたNPPF)を破壊しない。例えば、サンプルが、細胞の抽出物または溶解産物を含む場合、望まれない核酸(例えば、非標的ゲノムDNA、tRNA、rRNA、mRNA、miRNA、および相補的なNPPF配列にハイブリダイズしていない標的核酸分子の一部(例えば、オーバーハング)(これは、mRNAまたはDNA核酸標的の場合、核酸(nucleic)標的配列の大部分を構成する))が、この工程において実質的に破壊され得る。これにより、化学量論的量の標的核酸/CFS/NPPF二重鎖が残される。標的分子が、固定から生じる組織に架橋されている場合、そのNPPFは、架橋を逆転させるかまたは標的核酸をそれが架橋されている組織から別途放出させる必要なく、架橋されている標的分子にハイブリダイズする。
【0106】
不対塩基をもたらす単一ヌクレオチドの差異が切断されないように、またはハイブリダイズしたヌクレアーゼ保護プローブの末端まで不対塩基を切断するヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼ)が使用できるように、条件が選択され得る。単一の不対塩基の点においてNPPF配列を加水分解する条件および同様にその位置で標的核酸を加水分解する条件も選択され得る。
【0107】
ヌクレアーゼの例としては、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼおよびそれらの組み合わせが挙げられる。ハイブリダイズされた複合体ならびにサンプル中に存在する残りの核酸および非標的核酸配列の性質に応じて、DNAase、膵臓RNAse、マングビーンヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、RNAse A、リボヌクレアーゼT1、エキソヌクレアーゼIII、エキソヌクレアーゼVII、RNAse CLB、RNAse PhyM、RNAse U2などを含む任意の種々のヌクレアーゼが使用され得る。当業者は、適切なヌクレアーゼを選択することができる。特定の例において、ヌクレアーゼは、一本鎖(ss)核酸に特異的であり、例えば、S1ヌクレアーゼである。ss核酸に特異的なヌクレアーゼを使用する1つの利点は、過剰なNPPFが加水分解される点および化学量論の標的核酸がNPPFに与えられる点に加えて、そのような一本鎖(「粘着性」)分子が望ましくないバックグラウンドまたは交差反応性をもたらし得るその後の反応工程からそれらが除去される点である。しかしながら、標的核酸が配列決定される場合、適切なシーケンシングアダプターを有するNPPFだけが配列決定チップにハイブリダイズするので(この時点において、サンプル由来のss分子は洗浄され得る)、これは必要ないことを当業者は認識するだろう。S1ヌクレアーゼは、例えば、Promega,Madison,WI(cat.no.M5761);Life Technologies/Invitrogen,Carlsbad,CA(cat.no.18001−016);Fermentas,Glen Burnie,MD(cat.no.EN0321)およびその他から商業的に入手可能である。これらの酵素に対する反応条件は、当該分野で周知であり、経験的に最適化され得る。
【0108】
いくつかの例において、緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム、NaCl、KCl、ZnSO
4、KATHONまたはそれらの組み合わせを含む緩衝液)に希釈されたS1ヌクレアーゼが、ハイブリダイズされたプローブ/サンプル混合物に加えられ、約37℃〜約60℃(例えば、約50℃)において10〜120分間(例えば、10〜30分間、30〜60分間、60〜90分間または120分間)インキュベートされることにより、サンプル由来のハイブリダイズしていない核酸およびハイブリダイズしていないNPPFを消化する。
【0109】
サンプルは必要に応じて、ハイブリダイズしていない材料を別途除去するために、および/または残留酵素を不活性化するためもしくは除去するために(例えば、加熱、フェノール抽出、沈殿、カラム濾過、プロテイナーゼkの添加、ヌクレアーゼインヒビターの添加、活性のためにヌクレアーゼが要求する二価カチオンのキレート化またはそれらの組み合わせによって)処理され得る。いくつかの例において、サンプルは必要に応じて、標的核酸およびCFSをその相補的なNPPFから解離させる(例えば、塩基の加水分解および加熱を用いて)ために処理される。いくつかの例において、ハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ処理の後、NPPFにハイブリダイズした標的RNA分子は、例えば、塩基におけるNPPFとの二重鎖を解離させ、次いで、そのRNAをヌクレアーゼまたは化学的/物理的処理(例えば、高温での塩基の加水分解)によって破壊することによって、分解され、それにより、どれだけ標的核酸にハイブリダイズしたかに正比例してNPPFが残り得る。あるいは、サンプルは、標的核酸のハイブリダイズした(一本鎖)部分またはハイブリダイズした標的核酸およびプローブによって形成された二重鎖を残すように処理されて、さらに解析され得る。
【0110】
いくつかの例において、ヌクレアーゼとのインキュベーションの後、塩基(例えば、NaOHまたはKOH)を加えてpHを約9〜12に上げ、サンプルを加熱する(例えば、95℃に10分間)。これにより、標的分子/CFS/NPPF二量体が解離され、NPPFが一本鎖の状態で残り、RNAの場合は、RNA標的分子が加水分解される。この工程はまた、pHを約6超に上昇させることなどによって、ヌクレアーゼを中和し得るかまたは非活性化し得る。
【0111】
いくつかの例において、例えば、酸(例えば、HCl)を加えることによって、pHを約7〜約8に調整するように、サンプルが処理される。いくつかの例において、pHは、Tris緩衝液中で約7〜約8に上昇される。pHを上昇させることにより、DNAの脱プリンが妨げられ得、また、多くのss特異的ヌクレアーゼ(例えば、S1)が完全に機能するのが妨げられ得る。
【0112】
いくつかの例において、望まれない核酸または他の分子を除去するために、サンプルは、例えば、ゲル精製または他の分離方法によって、増幅前に精製されるかまたは分離される。
【0113】
C.増幅
試験されるサンプル中にどれだけ標的核酸分子が存在したかに正比例する、得られたNPPF分子(またはNPPFから分離された、得られた標的核酸分子)が、例えば、通例の方法(例えば、PCRまたは他の形態の酵素的増幅もしくはライゲーションベースの増幅方法)を用いて、増幅され得る。
【0114】
使用され得るインビトロ増幅法の例としては、定量的リアルタイムPCR、鎖置換増幅(米国特許第5,744,311号を参照のこと);転写なし等温増幅(米国特許第6,033,881号を参照のこと);修復連鎖反応増幅(repair chain reaction amplification)(WO90/01069を参照のこと);リガーゼ連鎖反応増幅(EP−A−320308を参照のこと);ギャップフィリングリガーゼ連鎖反応増幅(gap filling ligase chain reaction amplification)(米国特許第5,427,930号を参照のこと);リガーゼ検出とPCRの連結法(coupled ligase detection and PCR)(米国特許第6,027,889号を参照のこと);およびNASBA
TMRNA転写なし増幅(米国特許第6,025,134号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。1つの例において、ライゲーションベースの増幅方法が使用され、ここで、プライマーは、NPPF特異的であり、かつそれらが互いにライゲートされ得るように共に平滑末端にされ(butt−up)、融解され、次いで、一連のサイクルにわたって新しいプライマーが互いにライゲートされる。ライゲーションは、酵素的であり得るか、または非酵素的であり得る。NPPFフランキング配列が、プライマーのハイブリダイゼーションのために使用される場合、増幅は、普遍的であり得る。
【0115】
定量的リアルタイムPCRは、Applied Biosystemsによって可能にされる、核酸分子をインビトロにおいて増幅する別の形態である(TaqMan PCR)。この5’ヌクレアーゼアッセイは、特異的な増幅産物だけを検出するためのリアルタイム法を提供する。増幅中に、プローブがその標的配列にアニーリングすることにより、Taq DNAポリメラーゼが上流のプライマーからプローブの領域まで伸長させるとき、その酵素の5’ヌクレアーゼ活性によって切断された基質が生成される。この重合への依存のおかげで、標的配列が増幅されている場合にだけ、プローブの切断が生じることが確実になる。蛍光発生プローブを使用することにより、プローブ分解を解析するための、PCR後の処理を省くことが可能になる。プローブは、レポーター蛍光色素とクエンチャー色素の両方が付着されたオリゴヌクレオチドである。そのプローブは、インタクトである場合、クエンチャーが近接していることにより、空間を通過するFoerster共鳴エネルギー転移(FRET)によってレポーター色素が放射する蛍光は大幅に減少する。リアルタイムPCRの場合、NPPFのサンプルは、別個のウェルまたは反応位置に分けられ得、異なるNPPF特異的プライマーセットが、各ウェルまたは反応位置に加えられる。プローブ(各々が、異なる標識を有する)を使用することによって、リアルタイムPCRの多重化が可能になり、単一のウェルまたは反応位置において複数の異なるNPPFが測定される。
【0116】
NPPFの増幅中、実験タグおよび/またはシーケンシングアダプターは、例えば、プライマーおよび伸長構築物の一部として、例えば、3’もしくは5’末端または両端に、組み込まれ得る。例えば、NPPFフランキング配列の全部または一部に相補的な第1の部分を含む増幅プライマーは、所望の実験タグおよび/またはシーケンシングアダプターに相補的な第2の部分を含み得る。当業者は、実験タグおよび/またはシーケンシングアダプターの種々の組み合わせが、NPPFのいずれかの末端に付加され得ることを認識するだろう。1つの例において、NPPFは、3’−NPPFフランキング配列の全部または一部に相補的な第1の部分および所望のシーケンシングアダプターに相補的な(またはそれを含む)第2の部分を含む第1の増幅プライマーを使用して増幅され、第2の増幅プライマーは、5’−NPPFフランキング配列の全部または一部に相補的な第1の部分および所望の実験タグに相補的な(またはそれを含む)第2の部分を含む。別の例において、NPPFは、3’−NPPFフランキング配列に相補的な第1の部分ならびに所望のシーケンシングアダプターおよび所望の実験タグに相補的な(またはそれを含む)第2の部分の全部または一部を含む第1の増幅プライマーと、5’−NPPFフランキング配列の全部または一部に相補的な第1の部分および所望の実験タグに相補的な(またはそれを含む)第2の部分を含む第2の増幅プライマーとを使用して増幅される。
【0117】
シーケンシングアダプター、実験タグ(基材によるNPPFの捕捉を可能にするタグを含む)およびNPPFタグを付加するためにNPPF特異的プライマーが使用され得ることが認識されるだろう。NPPFのサンプルは、1つ以上の異なるNPPF特異的プライマーを含む別個のウェルまたは位置に分離され、増幅され、次いで、別々に配列決定され得るか、または配列決定のために組み合わされ得る(または検出され得る)。
【0118】
増幅は、生成されたNPPFアンプリコンに検出可能な標識を導入するため(例えば、NPPFが最初は標識されていない場合または追加の標識が望まれる場合)または検出もしくはクエンチングを可能にする他の分子を導入するためにも使用され得る。例えば、増幅プライマーは、増幅中にNPPFに組み込まれる、検出可能な標識、ハプテン(haptan)またはクエンチャーを含み得る。そのような標識、ハプテンまたはクエンチャーは、NPPFアンプリコンのいずれかの末端(または両端)またはそれらの間のいずれかの箇所に導入され得る。
【0119】
いくつかの例において、得られたNPPFアンプリコンは、検出または配列決定の前に浄化される(cleaned up)。例えば、増幅反応混合物は、当該分野で周知の方法(例えば、ゲル精製、ビオチン/アビジン捕捉および放出、キャピラリー電気泳動)を用いて、検出または配列決定の前に浄化され得る。1つの例において、NPPFアンプリコンは、ビオチン化され(るか、または別のハプテンを含み)、アビジンまたは抗ハプテンでコーティングされたビーズまたは表面上に捕捉され、洗浄され、次いで、検出または配列決定のために放出される。同様に、NPPFアンプリコンは、相補的な(complimentary)オリゴヌクレオチド(例えば、表面に結合したもの)上に捕捉され、洗浄され、次いで、検出または配列決定のために放出され得る。開示される方法は、ゲノムまたはトランスクリプトームの大部分を排除して、標的核酸分子にハイブリダイズしたNPPFを残すので、アンプリコンの捕捉は、特に特異的である必要はない。所望であれば、増幅産物を浄化する他の方法を使用することができる。
【0120】
増幅産物は、一本鎖オリゴヌクレオチドを加水分解するヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼI)を使用する方法によって、増幅の最後の工程の後にも二本鎖のままで浄化され得る(そのヌクレアーゼは、その後、表面へのハイブリダイゼーションなどの次の工程を続ける前に不活性化され得る)。
【0121】
D.NPPFアンプリコンの検出
いくつかの例において、得られたアンプリコンは、任意の好適な手段によって、例えば、NPPFアンプリコン上に存在する検出可能な標識に基づいて、検出される。特定の非限定的な例において、NPPFアンプリコンは、ビオチン標識を含む。この例において、NPPFアンプリコンは、そのアンプリコン(例えば、そのNPPFアンプリコンを含む支持体、例えば、アレイまたはビーズ上のもの)を、アビジン−HRP、ストレプトアビジン(strepavidin)−HRP、またはアルカリホスファターゼなどの別の好適な酵素との結合体とともにインキュベートし、次いで、その支持体を色素生産性、化学発光または蛍光発生の基質と接触させることによって検出され得る。1つの非限定的な例において、その基質は、TMA−3(Lumigen,Southfield,MI)である。さらなる化学発光基質(例えば、LumiGlo(登録商標)(KPL,Gaithersburg,MD)、SuperSignal(登録商標)(Pierce,Rockford,IL)およびECL
TM(Amersham/GE Healthcare,Piscataway,NJ))が、商業的に入手可能である。その基質によって生成されるシグナルは、例えば、マイクロアレイ撮像装置(例えば、OMIX、OMIX HD、CAPELLAまたはSUPERCAPELLA撮像装置,HTG Molecular Diagnostics,Tucson,Arizona)走査装置を使用して、または例えばラテラルフロー(lateral flow)デバイスにおいて視覚的に、検出される。ユウロピウム系ルミネセンス、ならびにエレクトロルミネセンスもしくは光散乱または電気的なもの(例えば、導電率または抵抗)が使用され得る。別の例において、NPPFは、Cy−3またはCy−5などの蛍光標識を含む。NPPFアンプリコンは、標準的なマイクロアレイ撮像装置(例えば、Typhoon
TM撮像装置(GE Life Sciences,Piscataway,NJ)、GenePix(登録商標)マイクロアレイ走査装置(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)、GeneChip(登録商標)走査装置(Affymetrix,Santa Clara,CA)、フローサイトメトリー法または蛍光顕微鏡法を使用して検出され得る。当業者は、これらのまたは他の検出可能な標識に適した検出方法および試薬を選択することができる。
【0122】
E.捕捉分子を使用したNPPFの検出
いくつかの実施形態において、ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ処理および増幅の後、NPPFアンプリコンを含むサンプルを、複数の空間的に不連続の領域(各々が捕捉分子を含む)を含む表面と接触させるか、または複数の表面(各々が捕捉分子を含む)と接触させる。例えば、その表面は、ビーズの集団であり得、ここで、それらのビーズの部分集団の各々が、少なくとも1つの捕捉分子を含む。例えば、第1の部分集団は、少なくとも1つの捕捉分子を含み得、第2の部分集団は、第1のものとは異なる配列を有する少なくとも1つの捕捉分子を含み得るなど。いくつかの例において、その捕捉分子は、二機能性リンカー(「プログラミングリンカー」とも称される)と会合した少なくとも1つのアンカーを含む。あるいは、その捕捉分子は、NPPFアンプリコンの少なくとも一部に相補的な配列(例えば、NPPFアンプリコンのフランキング領域の全部または一部に相補的な配列)を有する核酸捕捉プローブを含む。
【0123】
捕捉分子が、二機能性リンカーに会合した少なくとも1つのアンカーを含む例において、そのアンカーと二機能性リンカーとは、ハイブリダイゼーション、アニーリング、共有結合または他の結合によって会合される。その二機能性リンカーは、アンカーに特異的に結合する(例えば、それに相補的な)第1の部分、および複数のNPPFアンプリコンのうちの1つに特異的に結合する(例えば、それに相補的な)第2の部分を含む(例えば、
図1に示されているNPPF100の領域102の全部または一部に相補的な)。
【0124】
いくつかの実施形態において、開示される方法は、増幅工程の後にNPPFアンプリコンを捕捉するように使用される二機能性リンカーと会合した表面上(例えば、アレイ上)にアンカーを含む。いくつかの例において、アンカーは、約8〜150ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド(例えば、約8〜100、15〜100、20〜80、25〜75または25〜50、例えば、約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140または150ヌクレオチド)である。1つの非限定的な例において、アンカーは、約25ヌクレオチド長である。いくつかの例において、アンカーは、二機能性リンカーの第1の部分に特異的に結合する第1の部分および表面とアンカーの第1の部分との間のスペーサーとして作用する第2の部分を含む。いくつかの例において、アンカーの第2の部分は、約6〜60個の炭素原子またはヌクレオチド長(例えば、約6、12、24、30、36、42、48、54または60個の炭素原子またはヌクレオチド)である。他の例において、アンカーの第2の部分は、約5〜100個の炭素原子またはヌクレオチド長(例えば、約10〜50、15〜40、20〜30または約25個の炭素原子またはヌクレオチド)である。
【0125】
開示される方法のためのアンカーの塩基組成は、アンカーと二機能性リンカーとの対形成の熱力学的安定性が高くなるような組成である。いくつかの例において、アンカーのパーセンテージ塩基組成は、約30〜40%のG、30〜40%のC、10〜20%のAおよび10〜20%のTである。いくつかの例において、アンカーにおける隣接頻度(nearest neighbor frequency)が、G−GまたはC−Cの隣接を最小にすることにより、G−カルテット形成によって媒介される副反応が減少する。他の例において、非天然塩基すなわちペプチド核酸がアンカーまたは二機能性リンカーに組み込まれることにより、その特性が改変され得る。
【0126】
開示される方法において有用なアンカーをデザインするおよび合成する方法は、例えば、参照により本明細書中に援用されるPCT公開番号WO98/24098に記載されている。いくつかの例において、実質的に互いに似ていないアンカーセットが、望ましい。似ていないアンカーセットを得るための例示的なアルゴリズムは、以下のとおりである:
1)そのセットのサイズを定義する。いくつかの実施形態において、16、24、36、48、49、64、81、96および100が、有用なサイズを構成する。
【0127】
2)アンカーセットの配列構造全体を定義する。上に記載されたような長さおよび塩基組成を使用して、そのようなパラメータを定義する。一般に、G塩基とC塩基の数は等しく、同様にA塩基とT塩基の数も等しい。この等しいことから、最終的なセットの立体配置多様性が最適化される。したがって、そのようなセットは、式G
nC
nA
mT
mによって記載され得る。
【0128】
3)mおよびnによって定義されるセット構造の場合、乱数発生器を使用して、ランダムな配列異性体セットを生成する。
【0129】
4)そのランダムな配列セットのエレメント#1として使用するために、そのセットの1つのメンバーを選択する。
【0130】
5)セットメンバーの間で許容できる最大類似性を定義する。類似性は、ローカルペアワイズ塩基比較に関して定義される。例えば、同一長nの2つのオリゴマー鎖を、5’末端と3’末端とが適正に並ぶ(in register)ようにアラインメントするとき、ミスマッチが無いことは、すべての位置l〜nにおいて、その2つの鎖における塩基が同一である状況を指す。完全なミスマッチは、すべての位置l〜nにおいて、その2つの鎖における塩基が異なる状況を指す。例えば、有用な最大類似性は、16merの捕捉プローブである16のセットにおける、10またはそれ以上のミスマッチであり得る。
【0131】
6)ランダムな配列セットの第2のメンバーを選択し、エレメント#1に対するその類似性を測定する。エレメント#2が、エレメント#1に対する許容できる最大類似性未満の類似性を有する場合、それは、そのセットに維持され得る。エレメント#2が、許容できる最大類似性より高い類似性を有する場合、それは棄却され、新しい配列が比較のために選択される。第2のエレメントが決定されるまで、このプロセスを繰り返す。
【0132】
7)連続した様式において、先に選択されたすべてのエレメントに関して非類似性の制約を満たす、ランダムな配列セットのさらなるメンバーを選択する。
【0133】
開示される方法において使用され得る16個のアンカーセットの1つの非限定的な例を表1に示す。
【0134】
【表1】
他の例において、捕捉分子は、NPPFアンプリコンの少なくとも一部に相補的な配列(例えば、NPPFアンプリコンのフランキング領域の全部または一部に相補的な配列)を有する少なくとも1つの核酸捕捉プローブを含む。例えば、核酸捕捉プローブは、NPPFアンプリコンに相補的な領域を含み得、かつそれに相補的でない領域(例えば、表面へのプローブの付着を可能にする領域)を含んでよい。その核酸捕捉プローブは、表面に直接付着され得る。例えば、核酸捕捉プローブは、表面に対する共有結合のためにアミンを含み得る。いくつかの例において、核酸捕捉プローブは、少なくとも8ヌクレオチド長(例えば、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも(at lest)50または少なくとも100ヌクレオチド長(例えば、約8〜100、15〜100、20〜80、25〜75または25〜50、例えば、約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140または150ヌクレオチド))のオリゴヌクレオチドである。当業者は、核酸捕捉プローブと適切なNPPFアンプリコンとの間にハイブリダイゼーションが生じ得る限り、NPPFアンプリコンの領域に相補的な核酸捕捉プローブの領域が100%相補的である必要はないことを認識するだろう。いくつかの例において、NPPFアンプリコンの領域に相補的な核酸捕捉プローブの領域は、少なくとも8ヌクレオチド長(例えば、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも(at lest)50または少なくとも100ヌクレオチド長(例えば、約8〜100、15〜100、20〜80、25〜75または25〜50、例えば、約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140または150ヌクレオチド長))である。
【0135】
いくつかの例において、NPPFアンプリコンを含むサンプルは、アレイの表面と接触させる前に変性される(例えば、サンプルを5分間95℃に加熱し、氷上で急速に冷却することによって)。いくつかの例において、NPPFを含むサンプルは、表面と接触させる前に調整される(例えば、塩またはホルムアミドの濃度が調整される)。NPPFアンプリコンを含むサンプルは、NPPFアンプリコンが捕捉分子に特異的に結合する(例えば、ハイブリダイズする)のに十分な時間にわたって、表面(例えば、アレイまたはビーズ)とともにインキュベートされる。いくつかの例において、NPPFアンプリコンが捕捉分子にハイブリダイズするのを可能にするような、約37℃〜約65℃(例えば、約45℃〜約60℃または約50℃〜約60℃、例えば、50℃)における少なくとも1時間(例えば、1〜8時間、1〜36時間、12〜24時間または16〜24時間または一晩)にわたる、そのサンプルとその表面とのインキュベーション(「NPPF捕捉」)。例えば、マイクロ流体デバイスもしくはマクロ流体デバイス、ラテラルフローデバイスを使用するか、あるいは拡散を減少させ、アクティブフロー(active flow)または混合を使用することによる場合、捕捉時間は、短縮され得る。
【0136】
開示される方法において使用され得る表面(または基材)のいくつかは、商業的供給業者から容易に入手可能である。いくつかの実施形態において、その表面は、96、384または1536ウェルマイクロタイタープレート(例えば、Corning Costarが販売する修飾プレート)である。他の実施形態において、基材には、1つ以上のビーズ(例えば、サイズまたは色によって、例えば、フローサイトメトリーによって、区別され得るビーズの集団)が含まれる。あるいは、ウェルを含み、そしてさらにへこみまたは「くぼみ」を含む表面は、アルミニウムまたは鋼などの物質をミクロ機械加工して型を作製し、次いで、プラスチックまたは類似の材料をその型に微量注入して、構造を形成することによって、形成され得る。あるいは、ガラス、プラスチック、セラミックなどを含む構造が、組み立てられ得る。その分離器は、例えば、全体にわたって一定間隔で配置された穴を有する材料、例えば、シリコーン片であり得、その3つの片が連結されると、各穴が試験ウェルの壁を形成する。サブディバイダー(subdivider)は、スクリーンまたは微細な網目構造の形態で形づくられた、例えば、薄片材料、例えば、シリコーンであり得る。種々の反応物を分離する表面上のディバイダー(divider)は、溶液が付着しないコーティングされた表面、またはナノ構造、または単に個別の液滴、またはキャピラリーまたはマイクロ流体チャネルまたは位置でもあり得る。いくつかの例において、底部は、例えば、生化学的アッセイに使用される代表的なマイクロプレートの下部の形状における、平らな材料片(例えば、ガラスまたはプラスチック)である。その底部の上面は、平らであり得るか、または完全な細分を提供するサブディバイダーの形状と整列し得るへこみ、すなわちウェルを各サンプルウェル内に有するように形成され得る。それらの3つの片は、標準的な手順、例えば、シリコンウエハの組立において使用される手順によって、連結され得る。
【0137】
表面に適した材料としては、ガラス、シリカ、金、銀、ゲルもしくはポリマー、ニトロセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピロリジン、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluroethylene)、二フッ化ポリビニリデン(polyvinylidene difluroide)、ポリフルオロエチレン−プロピレン、ポリエチレンビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリクロロトリフルオロエチレン(polycholorotrifluoroethylene)、ポリスルホン(polysulfornes)、ヒドロキシル化された二軸延伸ポリプロピレン、アミノ化された二軸延伸ポリプロピレン、チオール化された(thiolated)二軸延伸ポリプロピレン、エチレンアクリル酸、エチレン(thylene)メタクリル酸、およびそれらの共重合体の混合物(米国特許第5,985,567号を参照のこと)、または炭素を含むナノ材料を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
一般に、表面を形成するために使用され得る材料の好適な特徴としては、支持体の表面が、活性化されると、それにオリゴヌクレオチド(例えば、アンカー)などの生体分子を共有結合的に付着することができるように、表面の活性化に適していること;生体分子の「インサイチュ」合成に適していること;オリゴヌクレオチドまたはタンパク質によって占有されていない支持体上の区域が非特異的結合の影響を受けないように、化学的に不活性であること、または非特異的結合が生じるとき、オリゴヌクレオチドもしくはタンパク質を除去することなく、そのような材料が表面から容易に除去され得ることが挙げられる。それらの表面は、透過性、部分的に透過性または不透過性であり得る。
【0139】
アンカーを配置するための多種多様のアレイ形式が、本開示に従って使用され得る。1つの好適な形式としては、個別のセルの2次元パターン(例えば、64×64アレイの4096個の正方形)が挙げられる。当業者が認識するように、他のアレイ形式(スロット(長方形)および円形アレイを含むがこれらに限定されない)も、使用するのに等しく適している(米国特許第5,981,185号を参照のこと)。いくつかの例において、アレイは、マルチウェルプレートである。
【0140】
オリゴヌクレオチドアンカー、二機能性リンカーおよび他の捕捉分子(ならびにNPPF、CFSおよびPCRプローブ/プライマー)は、従来の技術によって(例えば、市販のオリゴヌクレオチド合成装置を用いて)および/またはそのように合成されたサブフラグメントを共にライゲートすることによって、合成され得る。そのような方法によって確実に合成されるのには長すぎる核酸は、従来の手順を用いる増幅手順によって生成され得る。
【0141】
1つの実施形態において、事前に形成された核酸アンカー(例えば、オリゴヌクレオチドアンカー)またはNPPFアンプリコンの少なくとも一部に相補的な配列を有する核酸捕捉プローブ(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)が、種々の従来の手法(フォトリソグラフィックまたはシルクスクリーン化学的付着、インクジェット技術による配置、キャピラリー、スクリーンまたは流路チップ、電極アレイを使用する電気化学的パターニング、ピンもしくはクイルとの接触、または変性の後のベーキングもしくはフィルター上へのUV照射を含む)のいずれかによる試験領域の表面上または表面内部に位置され得る(例えば、Ravaら(1996).米国特許第5,545,531号;Fodorら(1996).米国特許第5,510,270号;Zanzucchiら(1997).米国特許第5,643,738号;Brennan(1995).米国特許第5,474,796号;PCT WO92/10092;PCT WO90/15070を参照のこと)。オリゴヌクレオチドアンカーまたはプローブは、試験領域の表面の上に配置され得るか、または例えば、ポリアクリルアミドゲルパッドの場合、アンカーまたはプローブの一部が、そのゲル構造からゲル内およびゲル表面内の水性部分に突出するような様式でその表面内に包埋され得、リンカーまたはNPPFとの相互作用のために利用可能である。これは、透過性の表面および部分的に透過性の表面(例えば、第1の部分(例えば、二機能性リンカーまたはNPPFを含む溶液と接触する表面の領域)は透過性であるが第2の部分(例えば、表面から少し離れた部分)は透過性でない表面)に対しては真である。1つの実施形態において、予め形成されたオリゴヌクレオチドアンカーまたはプローブは、5’末端において遊離アミノ基で誘導体化され;緩衝液(例えば、50mMリン酸緩衝液,pH8.5および1mM EDTA)に、日常的に経験的に決定される濃度(例えば、約1μM)で溶解し;そしてPixusナノジェットディスペンサー(Cartesian Technologies)を用いて約10.4ナノリットルの液滴として、上面が新しい乾燥DNA Bindプレート(Corning Costar)の上面である試験ウェル内の特定の位置に分配される。オリゴヌクレオチドの付着および蒸発の相対的速度に応じて、調製中のウェル内の湿度を制御する必要がある場合がある。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドアンカーまたはプローブは、従来の方法(例えば、成長中のオリゴヌクレオチド鎖の光活性化脱保護を用いるか(例えば、部位特異的「マスク」の使用とともに))、またはナノジェットディスペンサーを使用して非活性化化合物のナノリットル液滴のパターン化された分配によって、試験領域の表面上で直接合成され得る。単一ヌクレオチドを受け入れるすべての成長中のオリゴヌクレオチドの脱保護を行うことができ、例えば、次いでそのヌクレオチドを表面全域に付加する。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドアンカーまたはプローブは、従来の方法を用いてオリゴヌクレオチドの3’末端を介して表面に付着される。
【0142】
F.代替方法を用いたNPPの検出
いくつかの実施形態において、ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ処理および増幅の後、NPPFアンプリコンは、ハイスループットプラットフォームなどの代替方法を用いて検出される。いくつかの例において、NPPFアンプリコンは、ゲル電気泳動、クロマトグラフィ、質量分析、配列決定、従来のマイクロアレイ解析を用いて検出されるか、PCR増幅工程中に検出されるか、またはハイブリッド捕捉によって検出される。いくつかの実施形態において、NPPFアンプリコンは、検出可能な標識を含まず、間接的な検出方法が使用される。そのような方法は、当業者に公知であり、それらとしては、本明細書中に記載される方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
1つの例において、NPPFアンプリコンは、ビーズアレイなどのビーズに基づくアッセイを用いて検出される。ビーズに基づくアッセイの1つの例は、X−MAP(登録商標)ビーズ(Luminex,Austin,TX)を使用する(例えば、QBEADアッセイ)。いくつかの例において、NPPは、ビーズと会合したオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーション(例えば、約50℃における約1時間)によってX−MAP(登録商標)ビーズまたは他のビーズ上に捕捉される。NPPFアンプリコンに含められる検出可能な標識は、例えば、フローサイトメトリーによって(例えば、Luminex200、Flexmap3Dまたは他の好適な機器を使用して)検出され得る。
【0144】
別の例において、NPPFアンプリコンは、標準的なマイクロアレイを使用して検出される。そのようなアレイの1つの例は、Nimblegenマイクロアレイ(Nimblegen,Madison,WI)である。いくつかの例において、NPPFアンプリコンは、NPPFアンプリコンに特異的に結合するオリゴヌクレオチドを備えるアレイにハイブリダイズする。NPPFアンプリコンに含められる検出可能な標識が検出され得る。
【0145】
いくつかの例において、NPPFアンプリコンは、「バーコード」アッセイを用いて検出される。そのようなアッセイの1つの例は、nCounter(登録商標)Analysis System(Nanostring Technologies,Seattle,WA)である。いくつかの例において、NPPFアンプリコンは、1つ以上の色分けされたタグ(「バーコード」)を含むプローブにハイブリダイズする。その色分けされたタグの検出によって、NPPFアンプリコンが識別される。例えば、WO07/0761282;WO07/076129;WO07/139766を参照のこと。
【0146】
F.アンプリコンの配列決定
いくつかの例において、得られたNPPFアンプリコンは、例えば、NPPFアンプリコン全体またはその一部(例えば、標的核酸分子の識別を可能にするのに十分な量)を配列決定することによって、配列決定される。本開示は、特定の配列決定方法に限定されない。いくつかの例において、複数の異なるNPPFアンプリコンが、単一の反応において配列決定される。1つの例において、特定の標的配列に対応するようにデザインされ得るNPPFアンプリコンの実験タグが、配列決定され得る。したがって、NPPFアンプリコンの3’末端が、測定される各標的に対してユニークな配列である配列を、末端の2〜25ヌクレオチド(例えば、末端の2〜5または2〜7、例えば、末端の2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチド)に有する場合、これは、標的を識別するために配列決定される必要があるNPPFアンプリコンのすべてであり、配列決定されたそのような実験タグの数を数えることによって、サンプル中の各標的の量が測定され得る。
【0147】
1つの例において、得られたNPPFアンプリコン(例えば、DNAから構成されるもの)は、チェーンターミネーション法を用いて配列決定される。この手法は、改変されたヌクレオチド基質を用いる、DNA合成反応の配列特異的な終結を利用する。チェーンターミネーター配列決定法では、NPPFアンプリコンの一部に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用することによって、NPPFアンプリコン上の特定の部位において伸長が開始される。そのオリゴヌクレオチドプライマーは、RNAまたはDNAポリメラーゼなどのポリメラーゼを用いて伸長される。低濃度の鎖停止ヌクレオチド(通常、ジデオキシヌクレオチド)とともに、4種のデオキシヌクレオチド塩基(またはリボヌクレオチド)が、そのプライマーおよびポリメラーゼに含められる。そのポリメラーゼによる鎖停止ヌクレオチドの限定的な組み込みによって、特定のヌクレオチドが使用された位置でだけ終結された一連の関係する核酸フラグメントがもたらされる。次いで、それらのフラグメントを、例えば、スラブポリアクリルアミドゲルまたは粘稠性ポリマーで満たされた細いガラス管(キャピラリー)における電気泳動によって、サイズ分離する。
【0148】
代替方法は、ダイターミネーター配列決定法である。このアプローチを用いることにより、チェーンターミネーション法の場合に必要とされた4つの反応ではなく、単一の反応において完全な配列決定が可能になる。これは、ジデオキシヌクレオチド鎖ターミネーターの各々を、異なる波長で蛍光を発する別個の蛍光色素で標識することによって達成される。
【0149】
別の例では、パイロシーケンシング(例えば、Biotageが商業化した方法(ロースループットの配列決定の場合)および454 Life Sciencesが商業化した方法(ハイスループットの配列決定の場合))が使用される。アレイに基づく方法(例えば、454 Life Sciences)では、一本鎖核酸(例えば、DNA)を、ビーズにアニールさせ、EmPCRによって増幅する。次いで、これらの核酸が結合したビーズを、光ファイバーチップ上のウェルに、ATPの存在下において光を発生する酵素とともに入れる。遊離ヌクレオチドをこのチップの上に流すと、ヌクレオチドがその相補的な塩基対と接着するときにATPが生成されるので、光が発生する。1つ(またはそれ以上)のヌクレオチドが付加されることにより、光シグナルを生成する反応が生じ、それを、例えばCCDカメラによって記録する。シグナル強度は、単一のヌクレオチドフローにおいて組み込まれるヌクレオチドの数、例えば、ホモポリマーのストレッチに比例する。
【0150】
別の例において、NPPFアンプリコンは、Illumina(登録商標)(例えば、HiSeq)またはIon Torrent(登録商標)、454(登録商標)、Helicos、PacBio(登録商標)、Solid(登録商標)(Applied Vioasystems)または任意の数の他の商業的配列決定システムを用いて配列決定される。シーケンシングアダプター(例えば、NPPFアンプリコン上に存在する、例えば、PCRを用いて導入される、ポリAまたはポリTテイル)が、捕捉のために使用される。454(登録商標)またはIllumina(登録商標)による配列決定は、代表的には、DNAのランダムな断片化によって達成されるライブラリー調製、それに続く、共通のアダプター配列のインビトロライゲーションを含む。開示される方法の場合、配列決定される核酸のランダムな断片化の工程は省くことができ、NPPFアンプリコンに存在する実験タグなどのアダプター配列のインビトロライゲーションが、NPPFアンプリコンに対して行われ得るが、これらは、フランキング領域およびPCRを使用することによっても組み込まれ得、それにより、ライゲーションの必要が回避される。いったんシーケンシングアダプターによって配列決定チップ/ビーズに捕捉されると、ブリッジ増幅を行うことにより、配列決定のための各プローブのコロニーが形成される。これらの方法では、NPPFアンプリコンは、最後には、平面の基材上の単一位置に(Illumina(登録商標)、インサイチュコロニー、ブリッジPCR)、またはミクロンスケールのビーズの表面に(454(登録商標)、エマルジョンPCR)(それが回収されて整列され得る(エマルジョンPCR))、空間的にクラスター形成する。その配列決定方法は、酵素によって駆動される生化学反応とイメージングに基づくデータ取得との交互のサイクルを含む。これらのプラットフォームは、合成、すなわち、プライミングされた鋳型の連続的な伸長による配列決定に依存している。酵素的インターロゲーション(enzymatic interrogation)およびイメージングの継続的な繰り返しを用いることにより、各アレイの特徴に対して、連続したシーケンシングリードが構築される。各サイクル(例えば、ポリメラーゼによって組み込まれる蛍光標識ヌクレオチドの)各サイクル(例えば、ポリメラーゼによって組み込まれる蛍光標識ヌクレオチドの)において全アレイのイメージングによってデータが取得される。2つ以上の配列決定プライマーが、フローセル上に形成されたコロニーにおいて使用され得、それにより、二重末端(dual−end)配列決定、またはアンプリコンの1つ以上の他の部分(例えば、バーコードもしくはインデックスタグまたは実験用タグ)の配列決定が可能になる。
【0151】
454(登録商標)の場合、配列決定プライマーは、配列決定チップ/ビーズアンプリコン上での増幅後にNPPFにハイブリダイズする。配列決定は、パイロシーケンシングによって行われる。アンプリコンを有するビーズを、Bacillus stearothermophilus(Bst)ポリメラーゼおよび一本鎖結合タンパク質とプレインキュベートし、次いで、微細加工アレイのピコリットルスケールのウェルに1ウェルあたり1ビーズで沈着させ、それによって、この生化学反応を、アレイに基づく配列決定に適合性にさせる。パイロシーケンシングに必要な固定化された酵素(ATPスルフリラーゼおよびルシフェラーゼ)を有するより小さいビーズも加えられる。この配列決定では、セミオーダー(semi−ordered)アレイの片側が、配列決定試薬を導入するためおよび除去するためのフローセルとして機能する。他方の側は、CCDに基づくシグナル検出のために光ファイバー束に固着されている。各サイクルでは、単一種の未標識ヌクレオチドが導入される。この導入が組み込みをもたらす配列の場合、ピロホスフェートが放出され、ATPスルフリラーゼおよびルシフェラーゼによって特定のアレイ座標に対してCCDによって検出される光のバーストが生成される。複数のサイクルにわたって、検出される組み込み事象のパターンから、個別のビーズによって表される鋳型の配列が明らかになる。
【0152】
ブリッジPCRを使用する方法(例えば、Illumina(登録商標))の場合、増幅される配列の特徴は、ブリッジPCRによって生成される。増幅中に任意の単一鋳型分子から生じるすべてのアンプリコンがアレイ上の単一の物理的位置に固定化され、クラスター形成したままになるように、順方向と逆方向の両方のPCRプライマーを、可撓性リンカーによって固体の基材に繋留する。いくつかの例において、ブリッジPCRは、Bstポリメラーゼによる伸長と変性(例えば、ホルムアミドによる変性)との交互のサイクルを使用する。得られた「クラスター」の各々は、約1,000個のクローナルアンプリコンからなる。数百万個のクラスターが、単一のフローセル上に存在する8つの独立した「レーン」の各々の中の区別可能な位置に増幅され得る(その結果、8つの独立した実験が、同じ機器のランにおいて平行して配列決定され得る)。クラスターが生成された後、アンプリコンは、直線化され、配列決定プライマーは、目的の領域に隣接する普遍的なアダプター配列にハイブリダイズされる。配列インターロゲーションの各サイクルは、改変されたDNAポリメラーゼおよび4種のヌクレオチドの混合物を用いた単一塩基の伸長からなる。これらのヌクレオチドは、3’ヒドロキシル位における化学的に切断可能な部分が、各サイクルにおいて生じる単一塩基だけの組み込みを可能にする点、および4つの蛍光標識のうちの1つ(これも化学的に切断可能である)が、各ヌクレオチドのアイデンティティ(identity)に対応する点において「可逆性のターミネーター」である。単一塩基の伸長、および4つのチャネルにおけるイメージの取得の後、両方の基の化学的切断が、次のサイクルのために行われる。36bpまでのリード長が、現在、日常的に行われている。
【0153】
1つの例において、Helicos(登録商標)またはPacBio(登録商標)一分子シーケンシング法が使用される。
【0154】
NPPFは、現在開発されているまたは将来開発される任意の配列分析装置における任意の方法による配列決定のためにデザインされ得ることが認識されるだろう。NPPF自体は、使用される配列決定の方法を限定しないし、使用される酵素も限定しない。他の配列決定方法が、開発されているかまたは開発されるだろうし、当業者は、生成されるNPPFアンプリコン(またはNPPFにハイブリダイズしたDNA)が、これらのシステムにおける配列決定に適し得ることを認識し得る。
【0155】
G.コントロール
いくつかの実施形態において、本方法は、実際の実験NPPFと同じ反応条件に供する1つ以上のポジティブおよび/またはネガティブコントロールの使用を包含する。タグ化の使用によって、試験サンプルと同じ配列決定レーンにおける配列決定およびランのために処理されることを除いては、実際の種々のサンプルをコントロールとして使用することが可能になる。標的RNAを測定するときの細胞数に対するコントロールとしてDNAが測定され得る。
【0156】
いくつかの例において、「ポジティブコントロール」は、変数(例えば、各サンプルに対する溶解された細胞の数、DNAもしくはRNAの回収率、またはハイブリダイゼーション効率)に対する内部正規化コントロール(例えば、1つ以上の基礎レベルまたは構成的ハウスキーピング遺伝子(例えば、構造遺伝子(例えば、アクチン、チューブリンまたはその他))またはDNA結合タンパク質(例えば、転写制御因子またはその他)に特異的な1つ以上のNPPF、CFS、対応するリンカーなど)を含む。いくつかの例において、ポジティブコントロールには、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)、ペプチジルプロリル(peptidylproylyl)イソメラーゼA(PPIA)、大リボソームタンパク質(RPLP0)、リボソームタンパク質L19(RPL19)または下で述べられる他のハウスキーピング遺伝子が含まれる。サンプルとは無関係の、アッセイプロセスに対するコントロールのために、他のポジティブコントロールがサンプルに加えられ得る。
【0157】
他の例において、ポジティブコントロールには、サンプル中に存在すると判明しているDNAまたはRNA(例えば、試験されている種におそらく存在する核酸配列、例えば、ハウスキーピング遺伝子)に特異的なNPPFが含まれる。例えば、対応するポジティブコントロールNPPFは、複数の試験NPPFとのハイブリダイゼーションの前またはハイブリダイゼーション中にサンプルに加えられ得る。あるいは、ポジティブコントロールNPPFは、ヌクレアーゼ処理の後にサンプルに加えられる。
【0158】
いくつかの例において、ポジティブコントロールには、サンプル中に存在すると判明している核酸分子(例えば、試験されている種におそらく存在する核酸配列、例えば、ハウスキーピング遺伝子)が含まれる。対応するポジティブコントロール核酸分子(例えば、インビトロで転写された核酸または無関係なサンプルから単離された核酸)が、複数のNPPFとのハイブリダイゼーションの前またはハイブリダイゼーション中にサンプルに加えられ得る。
【0159】
いくつかの例において、「ネガティブコントロール」は、その相補鎖がサンプル中に存在しないと判明している1つ以上のNPPF、CFS、対応するリンカーなどを、例えば、ハイブリダイゼーション特異性に対するコントロールとして含む(例えば、試験されている種以外の種由来の核酸配列、例えば、ヒトの核酸が解析されているときは植物の核酸配列(例えば、Arabidopsis thaliana AP2様エチレン応答性転写因子(ANT))、または天然には見られない核酸配列)。
【0160】
いくつかの実施形態において、各NPPFアンプリコンからのシグナルは、例えば、サンプル間の細胞性(cellularity)の差異を説明するために、少なくとも1つのハウスキーピング核酸分子のシグナルに対して正規化される。例示的なハウスキーピング遺伝子としては、GAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ)、SDHA(コハク酸デヒドロゲナーゼ)、HPRT1(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1)、HBS1L(HBS1様タンパク質)、β−アクチン(ACTB)、β−2ミクログロブリン(B2m)およびAHSP(アルファヘモグロビン安定化タンパク質)のうちの1つ以上が挙げられる。当業者は、開示される方法におけるシグナルの正規化において使用するためのさらなるハウスキーピング遺伝子(リボソームタンパク質S13(RPS13)、リボソームタンパク質S20(RPS20)、リボソームタンパク質L27(RPL27)、リボソームタンパク質L37(RPL37)、リボソームタンパク質38(RPL38)、オルニチンデカルボキシラーゼアンチザイム1(OAZ1)、ポリメラーゼ(RNA)II(DNA依存性)ポリペプチドA、220kDa(POLR2A)、yes会合タンパク質1(YAP1)、エステラーゼD(ESD)、プロテアソーム(プロソーム(prosome)、マクロペイン(macropain))26Sサブユニット、ATPアーゼ、1(PSMC1)、真核生物翻訳開始因子3、サブユニットA(EIF3A)または18S rRNAを含むがこれらに限定されない)を選択することができる(例えば、de Jongeら、PLoS One 2:e898,2007;Saviozziら、BMC Cancer 6:200,2006;Kouadjoら、BMC Genomics 8:127,2007を参照のこと;これらの各々は、参照により本明細書中に援用される)。正規化された値は、サンプル間またはアッセイ間で直接比較され得る(例えば、単一アッセイにおける2つの異なるサンプル間、または2つの別個のアッセイにおいて試験された同じサンプル間)。
【0161】
IV.フランキング配列を有するヌクレアーゼ保護プローブ(NPPF)
開示される方法は、1つ以上の標的核酸分子の検出および/または配列決定を、例えば、同時または同時発生的に、可能にする。標的核酸に基づいて、NPPFは、本明細書中に示される基準を当業者の知識と組み合わせて使用して、開示される方法において使用するためにデザインされ得る。いくつかの例において、開示される方法は、特定の標的核酸分子を検出するための1つ以上の適切なNPPFの生成を含む。NPPFは、種々の条件(公知であるかまたは経験的に決定される条件)下においてそのような標的がサンプル中に存在する場合、標的核酸またはその一部に特異的に結合する(またはそれに特異的に結合することができる)。
【0162】
NPPFは、特定の各標的核酸配列に対して、その標的核酸配列に特異的な反応において少なくとも1つのNPPFが存在するように、標的核酸分子に相補的な領域を含む。例えば、検出されるかまたは配列決定される2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なる標的核酸配列が存在する場合、本方法は、それに対応して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なるNPPFを使用し得る(ここで、各NPPFは、特定の標的に対応する)。したがって、いくつかの例において、本方法は、少なくとも2つのNPPFを使用し、ここで、各NPPFは、異なる標的核酸分子に特異的である。しかしながら、いくつかの異なるNPPFが、特定の標的核酸分子(例えば、単一の標的核酸配列の多くの異なる領域)に対して生成され得ることが認識されるだろう。1つの例において、NPPFは、そのトランスクリプトームにおける単一遺伝子だけに見られる配列に相補的な領域を含む。NPPFは、標的核酸分子に特異的であるように、および類似のTmを有するように(同じ反応において使用される場合)デザインされる。
【0163】
したがって、単一のサンプルを、1つ以上のNPPFと接触させ得る。NPPFのセットは、2つ以上のNPPF(各々が、異なる標的および/または同じ標的の異なる部分に特異的である)の集合である。NPPFのセットは、少なくとも、最大、またはちょうど、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、50、100、500、1000、2000、3000、5000または10,000個の異なるNPPFを含み得る。いくつかの例において、サンプルを、そのようなNPPFに対する標的より過剰(例えば、100倍、500倍、1000倍、10,000倍、100,000倍または10
6倍過剰)であるのに十分量のNPPFと接触させる。いくつかの例において、NPPFのセットが使用される場合、そのセットの各NPPFは、サンプル中のそれぞれの標的(または標的の一部)に対して過剰に提供され得る。過剰なNPPFは、特定の標的に結合するNPPFの量の定量を促進し得る。いくつかの方法の実施形態は、同じNPPFまたはNPPFのセットと接触する複数のサンプル(例えば、少なくとも、最大、またはちょうど、10、25、50、75、100、500、1000、2000、3000、5000または10,000個の異なるサンプル)を同時または同時発生的に含む。
【0164】
図1は、標的核酸配列に特異的に結合するかまたはハイブリダイズする配列を含む領域102、ならびにそのNPPFの5’および3’末端におけるフランキング配列104、106(ここで、そのフランキング配列は、それらの相補的な配列(本明細書中でCFSと称される)に結合するかまたはハイブリダイズする)を有する例示的なNPPF100を示している。NPPF(ならびにそのNPPFに結合するCFS)は、天然ヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA))または非天然ヌクレオチド(例えば、ロックト核酸(LNA,例えば、米国特許第6,794,499号を参照のこと)、ペプチド核酸(PNA))などから構成され得る。NPPFは、一本鎖または二本鎖であり得る。いくつかの例において、NPPFは、1つ以上の合成塩基または代替塩基(例えば、イノシン)を含む。改変されたヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、合成または代替ヌクレオチドが、NPPFにおいて1つ以上の位置(例えば、1、2、3、4、5個またはそれ以上の位置)において使用され得る。いくつかの例において、NPPFにおける1つ以上の改変されたヌクレオチドまたは非天然ヌクレオチドの使用は、改変された核酸を含まない同じ長さおよび組成のNPPFのT
mと比べて、NPPFのT
mを上昇させ得る。当業者は、所望のT
mを有するプローブを得るためにそのような改変されたヌクレオチドを含むプローブをデザインすることができる。1つの例において、NPPFは、一本鎖DNA(ssDNA)または分岐DNA(bDNA)などのDNAまたはRNAから構成される。1つの例において、NPPFは、アプタマーである。
【0165】
特定の標的またはサンプル(例えば、固定されているかまたは架橋されているサンプル)とともに使用するのに適切なNPPFのサイズを経験的に決定する方法は、通例の方法である。特定の実施形態において、NPPFは、最大500ヌクレオチド長(例えば、最大400、最大250、最大100または最大75ヌクレオチド長(例えば、20〜500、20〜250、25〜200、25〜100、25〜75または25〜50ヌクレオチド長の範囲を含む))であり得る。1つの非限定的な例において、NPPFは、少なくとも35ヌクレオチド長(例えば、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150もしくは少なくとも200ヌクレオチド長、例えば、50〜200、50〜100もしくは75〜200、または36、72もしくは100ヌクレオチド長)である。特定のNPPFの実施形態は、所望の機能性に応じて、より長くてもよいし、より短くてもよい。いくつかの例において、NPPFは、固定されているおよび/または架橋されているサンプルに浸透するために、適切なサイズにされる(例えば、十分小さい)。固定されているまたは架橋されているサンプルは、固定または架橋の程度が異なり得る;したがって、通常の当業者は、例えば、既知の濃度の固定された標的を有するサンプルを使用する一連の実験を行い、標的のシグナル強度とNPPFサイズを比較することによって、特定のサンプル条件またはサンプルタイプに対して適切なNPPFサイズを決定し得る。NPPFの長さが長くなるにつれて、そのような実験では、ある時点において、標的シグナル強度が低下し始めるはずである。いくつかの例において、サンプル(およびゆえに、標的の少なくとも一部)は、固定されているかまたは架橋されており、NPPFは、シグナル強度が高いままでありかつNPPFのサイズに応じて実質的に変動しないように十分に小さい。
【0166】
標的核酸配列に特異的に結合する配列102は、検出されるかまたは配列決定される標的核酸配列と、順序通り相補的である。当業者は、配列102が、標的核酸全体に相補的である必要はないことを認識するだろう(例えば、標的が、100,000ヌクレオチドの遺伝子である場合、配列102は、その一部(例えば、特定の標的核酸分子に相補的な、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100またはそれ以上連続したヌクレオチド)であり得る。プローブの特異性は、長さとともに高まる。したがって、例えば、25個連続したヌクレオチドを含む標的核酸配列に特異的に結合する配列102は、たった15ヌクレオチドの対応する配列よりも高い特異性で、標的配列にアニールする。したがって、本明細書中に開示されるNPPFは、特定の標的核酸分子に相補的な少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100またはそれ以上連続したヌクレオチド(例えば、標的DNAまたは標的RNAに相補的な約6〜50、10〜40、10〜60、15〜30、18〜23、19〜22または20〜25個連続したヌクレオチド)を含む標的核酸配列に特異的に結合する配列102を有し得る。本開示の方法を実施するために使用されるNPPFの一部であり得る標的核酸配列に特異的に結合する配列102の特定の長さとしては、標的核酸分子に相補的な6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個連続したヌクレオチドが挙げられる。標的核酸分子がmiRNA(またはsiRNA)であるいくつかの例において、標的核酸配列に特異的に結合する配列102の長さは、miRNA(またはsiRNA)の長さにマッチするために、より短い場合がある(例えば、20〜30ヌクレオチド長(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド))。しかしながら、当業者は、標的に特異的に結合する配列102が標的核酸分子に100%相補的である必要はないことを認識するだろう。反応条件、および使用されるヌクレアーゼの対応する選択性に応じて、ヌクレアーゼ消化を起こすために、2つ以上のミスマッチが必要になる場合もある(例えば、少なくとも2つの隣接するミスマッチ)。いくつかの例において、NPPFは、1つ以上の位置(例えば、1、2、3、4、5個またはそれ以上の位置)において縮重している(例えば、標的に特異的に結合する配列104の特定の位置におけるヌクレオチドの混合物(例えば、2、3または4つのヌクレオチド))。
【0167】
配列102は、プログラミングリンカーまたは二機能性リンカーにも特異的に結合する(ここで、二機能性リンカーの領域は、配列102に相補的である)。いくつかの実施形態において、ハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ処理の後に、少なくとも捕捉分子(例えば、プログラミングリンカーと会合したアンカーまたはNPPFアンプリコンの一部(例えば、フランキング配列またはその一部)に相補的な配列を含む核酸捕捉プローブ))を含む表面(例えば、複数の空間的に不連続の領域を含む表面)とサンプルを接触させる。
図3に示されるように、二機能性リンカー216は、アンカー214に特異的に結合する(例えば、相補的である)第1の部分、およびNPPFアンプリコン210の領域に特異的に結合する(例えば、相補的である)第2の部分を含む。いくつかの例において、NPPFアンプリコンは、二機能性リンカーに相補的な少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個連続したヌクレオチドを有する。
【0168】
フランキング配列104、106の配列は、増幅プライマーの少なくとも一部に相補的な普遍的な増幅点を提供し得る。したがって、異なる標的核酸分子に特異的なNPPFを増幅するために同じ増幅プライマーを使用することができるので、フランキング配列は、多重化を可能にする。そのフランキング配列は、標的ゲノムに見られる配列と似ていない。例えば、標的核酸が、ヒトの配列である場合、フランキング配列の配列は、その標的ゲノムに見られる配列と似ていない。これは、NPPFとの結合から、標的ゲノムに存在し得る非標的配列の結合を減少させるのを助ける。ゲノムとの類似性について配列を解析する方法は、当該分野で周知である。
【0169】
フランキング配列104、106は、NPPFアンプリコンの捕捉、例えば、基材への捕捉を可能にするためにも使用することができる。例えば、表面(例えば、ある表面に直接結合体化される表面)上に存在する核酸捕捉プローブに相補的な配列を含むフランキング配列を含むNPPFは、表面へのNPPFアンプリコンの捕捉または結合を可能にする核酸捕捉プローブにハイブリダイズし得る。したがって、いくつかの例において、フランキング配列は、実験用タグ(例えば、NPPFアンプリコンの捕捉を可能にするタグ)を含む(または例えば、増幅中に、そのタグの付加を可能にする)。他の実験用タグ(例えば、NPPFまたはNPPFの集団をユニークに識別するために使用されるタグ)も使用され得ること、およびそのような実験用タグが、NPPFの一部であり得るか、または例えば、フランキング配列に相補的であり、かつ得られたアンプリコンに付加されるタグに相補的な配列も含む、プライマーを使用することによって、後で付加され得ることが認識されるだろう。フランキング配列は、例えば、NPPFの増幅中の、またはフランキング配列に相補的な標識されたプローブを使用し、そのプローブがNPPFに結合することを可能にすることによって、NPPFの標識も可能にする。いくつかの例において、フランキング配列は、シーケンシングアダプター(adapater)(例えば、いくつかのシーケンシングプラットフォームに必要とされるポリAまたはポリT配列)を含む(または例えば、増幅中に、その付加を可能にする)。
【0170】
NPPFが、1つまたは2つのフランキング配列(例えば、5’末端に存在するもの、3’末端に存在するものまたはその両方)を含み得ること、およびフランキング配列が、同じであり得るかまたは異なり得ることが認識されるだろう。
図6AおよびBに図示されるように、NPPFは、単一のフランキング配列を含み得る。
図6Aおよび6Bは、5’末端におけるフランキング配列を示しているが、その代わりに3’末端に存在し得ることも認識されるだろう。
図6Aは、反応物中のNPPFのすべてが同じフランキング配列F1を有する例を示している。F1特異的プライマー(例えば、標識されたプライマー)を用いる増幅は、同じ5’または3’タグ(例えば、シーケンシングアダプターまたは実験用タグ)を各NPPFに付加するために使用され得る。例えば、同じシーケンシングアダプターが、すべてのNPPFに付加され得、同じシーケンシングプラットフォームにおいてNPPFの配列決定が可能になる。
図6Bは、反応物中の各NPPF(またはNPPFの各部分集団)が異なるフランキング配列F1〜F3を有する例を示している。例えば、F1、F2およびF3は、それぞれ、表面上の捕捉核酸プローブ1、2および3に相補的であり得る。これにより、二機能性リンカーの必要はなくなる(例えば、
図3の下を参照のこと)。別の例において、T1−F1特異的、T2−F2特異的およびT3−F3特異的プライマーを用いる増幅は、異なる実験用タグを異なる各NPPF(またはNPPFの集団)に付加するために使用され得る。
【0171】
図6C〜6Fに図示されているように、NPPFは、いくつかの例において、2つのフランキング配列を含み得る(一方はNPPFの5’末端に存在し、他方は3’末端に存在する)。
図6Cは、反応物中のNPPFのすべてが、両端に同じフランキング配列F1を有する例を示している。
図6Dは、5’末端におけるフランキング配列のすべてが同じ(例えば、F1)であり、3’末端におけるフランキング配列のすべてが同じ(例えば、F(a))であるが、5’末端フランキング配列と3’末端フランキング配列とは異なる例を示している。そのような例において、これは、例えば、NPPFの一方の末端に同じ実験用タグを含めること、および例えば、NPPFの他方の末端に同じシーケンシングアダプターを含めることを可能にする。プライマーハイブリダイゼーションの偏りが存在しないので、各NPPFは、同じ忠実度でタグ化されるはずである。
図6Eは、一方の末端におけるフランキング配列のすべてが同じ(例えば、5’末端においてF1)であるが、他方の末端におけるフランキング配列のすべてが互いに異なる(例えば、F(a)、F(b)およびF(c))例を示している。そのような例において、これは、NPPFのすべてを捕捉するために単一の捕捉プローブを使用することを可能にする(例えば、F1に相補的な配列の少なくとも一部を有する捕捉プローブを使用して)。他方の末端におけるフランキング配列F(a)、F(b)およびF(c)は、例えば、各NPPFを異なって標識するために使用され得る(例えば、異なる実験タグを使用して)。あるいは、F(a)、F(b)およびF(c)は、それぞれ捕捉プローブ1、2および3に相補的であり得、F1が、NPPFのすべてを同じ方法で標識するために使用され得る。
図6Fは、フランキング配列のすべてが、それらの位置に関係なく異なる例を示している(例えば、F(a)、F(b)、F(c)、F1、F2およびF3)。この例では、各フランキング配列は、異なる実験タグまたは異なる実験タグと異なるシーケンシングアダプターとの組み合わせに対して使用され得る。
【0172】
したがって、NPPF配列は、1−2−3によって表すことができ、ここで、1および3は、配列2(標的核酸に相補的である)のいずれかの側におけるフランキング配列である。これらの領域の各々は、その方法におけるある時点においてその相補的な配列にハイブリダイズし得る。例えば、Aは、NPPFのフランキング配列1に相補的であり得(例えば、Aは、配列1に相補的なCFSであり得)、Bは、NPPFの配列2に相補的であり得(例えば、配列2に相補的な標的配列)、Cは、NPPFのフランキング配列3に相補的であり得る(例えば、Cは、配列3に相補的なCFSであり得る)。これは、標的核酸分子およびCFSと、それらの対応するNPPFとのハイブリダイゼーション中に生じるものである。例えば:
1−2−3
A−B−C
いくつかの例において、実験用タグ(例えば、実験または患者を互いに区別するタグ)およびシーケンシングアダプター(それぞれDおよびEで表される)は、例えば、増幅中に、フランキング配列を使用して付加される(増幅プライマーは、フランキング配列に相補的であり、得られるNPPFアンプリコンに付加されるタグまたはアダプターに相補的な配列を含む)。例えば、そのようなプライマーを用いたNPPFの増幅は、以下のとおりの配列を生じ得る:E−1−2−3−DまたはD−1−2−3−E。
【0173】
下記の表は、5’−タグ(例えば、実験用タグまたはシーケンシングアダプター(adpaters))、5’−フランキング配列、標的特異的配列、3’−フランキング配列および3’−タグの5つの例示的な組み合わせも示している。これらの5’−タグおよび3’−タグは、増幅中に付加される。5’−フランキング配列および3’−フランキング配列は、元のNPPFの一部(およびゆえに、フランキング配列自体の一部)である配列である。
【0174】
【表2-1】
特定の例において、各フランキング配列は、他の任意のNPPF配列(例えば、配列102または他のフランキング配列)またはサンプルの任意の成分に特異的に結合しない。いくつかの例において、2つのフランキング配列が存在する場合、フランキング配列104、106の各々の配列は、異なる。理想的には、2つの異なるフランキング配列(例えば、同じNPPF上の2つの異なるフランキング配列および/またはNPPFセットにおける他のNPPFのフランキング配列)が存在する場合、フランキング配列104、106の各々は、類似の融解温度(T
m)(例えば、互いの+/−約10℃または+/−5℃、例えば、+/−4℃、3℃、2℃または1℃のT
m)を有する。
【0175】
特定の例において、フランキング配列104、106は、少なくとも12ヌクレオチド長(例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40または少なくとも50ヌクレオチド長、例えば、12〜50または12〜30ヌクレオチド、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長)であり、ここで、その連続したヌクレオチドは、試験されるサンプル中に存在する核酸分子に見られない。それらのフランキング配列は、フランキング配列に相補的な配列(CFS)を有する分子をフランキング配列にハイブリダイズすることによって、ヌクレアーゼによる分解から保護される。
【0176】
NPPF−標的およびNPPF−CFSのハイブリダイゼーションの特異性に影響する因子としては、NPPFおよびCFSの長さ、融解温度、自己相補性ならびに反復配列またはユニークでない配列の存在が挙げられる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Press,2001;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1992(および2000までの補遺);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,4th ed.,Wiley & Sons,1999を参照のこと。特定の程度のハイブリダイゼーション(ストリンジェンシー)をもたらす条件は、ハイブリダイゼーション方法の性質ならびにハイブリダイズする核酸配列の組成および長さに応じて変動し得る。一般に、ハイブリダイゼーションの温度およびハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(例えば、Na
+濃度)が、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定し得る。いくつかの例において、開示される方法において使用されるNPPFは、少なくとも約37℃、少なくとも約42℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃、少なくとも約70℃、少なくとも約75℃、少なくとも約80℃、例えば、約42℃〜80℃(例えば、約37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79または80℃)のT
mを有する。1つの非限定的な例において、開示される方法において使用されるNPPFは、約42℃のT
mを有する。プローブのT
mを計算する方法は、当業者に公知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Press,2001,Chapter 10を参照のこと)。いくつかの例において、特定の反応のためのNPPFの各々は、サンプル中の複数の標的核酸分子の同時の検出または配列決定を促進するために、同じまたは類似のT
m(例えば、互いの+/−約10℃、例えば、互いの+/−10℃、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、4℃、3℃、2℃または1℃のT
m)を有するように選択される。
【0177】
A.フランキング配列
NPPのフランキング配列の一方または両方(例えば、
図1の104または106)は、普遍的な増幅点を提供する配列を含む。そのような配列は、増幅プライマーの少なくとも一部に相補的である。これにより、プライマーがNPPFにハイブリダイズすることおよびNPPFを増幅することが可能になる。フランキング配列は、種々の標的核酸分子に特異的なNPPF間で同一であり得るので、これにより、任意の数の異なるNPPFを増幅するために同じプライマーを使用することが可能になる。例えば、NPPFは、5’−フランキング配列および3’−フランキング配列を含み得、ここで、その5’−および3’−フランキング配列は、互いに異なるが、種々の標的に対する複数のNPPFにとって同じである。したがって、複数のNPPFが、異なる標的配列に特異的であったとしても、5’−フランキング配列に相補的な配列を含む増幅プライマーと、3’−フランキング配列に相補的な配列を含む増幅プライマーとの両方が、それらのNPPFを増幅するために、単一の反応において使用され得る。
【0178】
いくつかの例において、フランキング配列は、実験タグ配列および/またはシーケンシングアダプター配列を含まない。いくつかの例において、フランキング配列は、実験タグ配列および/もしくはシーケンシングアダプター配列を含むかまたは実験タグ配列および/もしくはシーケンシングアダプター配列からなる。他の例において、NPPFを増幅するために使用されるプライマーは、実験タグ配列および/またはシーケンシングアダプター配列を含み、ゆえに、NPPFの増幅中に実験タグおよび/またはシーケンシングアダプターをNPPFアンプリコンに組み込むことが可能になる。
【0179】
1つの例において、フランキング配列は、その配列がそれ自体においてループを形成するようにデザインされる。したがって、フランキング配列の1つの領域は、同じフランキング配列の第2の領域に相補的であり、第1の領域と第2の領域とが互いにハイブリダイズすることにより、ループまたはヘアピンが形成される。これにより、第2の領域がヌクレアーゼ工程中に第1の領域を保護し得るので、CFSが必要でなくなり得る。
【0180】
B.フランキング配列に結合するプライマー
フランキング配列に特異的に結合するかまたはハイブリダイズする増幅プライマーは、PCR増幅などの増幅を開始するために使用され得る。さらに、それらの増幅プライマーは、核酸タグ(例えば、実験タグまたはシーケンシングアダプター)および/または検出可能な標識をNPPFに導入するために使用され得る。例えば、フランキング配列に相補的な領域を有する増幅プライマーに加えて、その増幅プライマーは、得られるNPPFアンプリコンに実験タグ、シーケンシングアダプター、検出可能な標識またはそれらの組み合わせを付加する核酸配列を有する第2の領域も含み得る。実験タグまたはシーケンシングアダプターは、NPPFの5’および/または3’末端に導入され得る。いくつかの例において、2つ以上の実験タグおよび/またはシーケンシングアダプターは、例えば、2つ以上の実験タグおよび/またはシーケンシングアダプターを付加する核酸配列を有する単一のプライマーを使用して、NPPFアンプリコンの単一の末端または両端に付加される。例えば、1つのサンプルもしくは配列を別のものと区別するため、または基材によるNPPFアンプリコンの捕捉を可能にするために、実験タグが使用され得る。配列タグは、特定のシーケンシングプラットフォームによる得られたNPPFアンプリコンの捕捉を可能にする。
【0181】
検出可能な標識は、5’および/または3’末端を含むNPPFの任意の点に導入され得る。1つの例において、その標識は、NPPFアンプリコンに相補的な標識されたプローブのハイブリダイゼーションによって、NPPFアンプリコンに導入される。1つの例において、その標識は、標識されたプライマーを使用することによって、NPPFの増幅中にNPPFアンプリコンに導入され、それにより、標識されたNPPFアンプリコンが生成される。検出可能な標識は、NPPFアンプリコンの検出を可能にする。
【0182】
いくつかの例において、そのようなプライマーは、少なくとも12ヌクレオチド長(例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40または少なくとも50ヌクレオチド(例えば、25ヌクレオチド))である。いくつかの例において、それらのプライマーは、NPPFアンプリコンに組み込まれる、ビオチンなどの検出可能な標識を含む(そしてそのようなプライマーは、プローブと称され得る)。
【0183】
C.実験タグの付加
実験用タグは、生成されたとき、NPPFの一部であり得る(例えば、フランキング配列の一部であり得る)。別の例において、実験タグは、後で、例えば、NPPFの増幅中に、付加されて、実験用タグを含むNPPFアンプリコンをもたらす。NPPF上に普遍的なフランキング配列が存在するおかげで、例えば増幅中に、NPPF上に他の配列を導入し得る普遍的なプライマーを使用することが可能になる。
【0184】
実験タグ(例えば、1つのサンプルを別のサンプルと区別するタグ)は、NPPFと会合した特定の標的配列を識別するため、または基材によるNPPFアンプリコンの捕捉を可能にするために使用され得る(ここで、その実験タグは、その基材上の捕捉プローブに相補的であり、それにより、それらの2つのハイブリダイゼーションが可能になる)。1つの例において、実験タグは、NPPFまたはNPPFアンプリコンの5’および/または3’末端の最初の3、5、10、20または30ヌクレオチドである。
【0185】
1つの例において、実験タグは、1つのサンプルを別のサンプルと区別するために使用される。例えば、そのような配列は、検出される特定の配列を特定のサンプル、患者または実験(例えば、特定の反応ウェル、日または反応条件セット)と相関させるバーコードとして機能し得る。これにより、検出されるかまたは配列決定される特定のNPPFを、例えば、特定の患者またはサンプルまたは実験と関連付けることが可能になる。複数のNPPFアンプリコンが、タグ化され得、次いで、例えば、単一の配列決定ランまたは検出アレイにおいて、組み合され得るので(例えば、種々の実験または患者から)、そのようなタグを使用することにより、1サンプルあたりのコストを低下させる方法およびサンプル処理量を増加させる方法が提供される。これにより、種々の実験サンプルまたは患者サンプルを同じ機器チャネル内での単一のランに組み合わせることが可能になる。例えば、そのようなタグは、100または1,000個の異なる実験を単一のチャネル内での単一のランにおいて配列決定するのを可能にする。例えば、1チャネルあたり100個のサンプルをプールする場合、8,000個のサンプルが、8チャネル配列分析装置の単一のランにおいて試験され得る。さらに、本方法が、完了した増幅反応物をゲル精製する工程を包含する(または実際の分離を必要としない精製または浄化の他の方法)場合、検出または配列決定の1ランあたりただ1つのゲル(または浄化もしくは精製の反応もしくはプロセス)が実行される必要があるだけである。次いで、配列決定されるNPPFアンプリコンは、例えば、実験タグによって、選別され得る。
【0186】
1つの例において、実験タグは、NPPFと会合した特定の標的配列を識別するために使用される。NPPF全体の代わりにNPPFの末端を配列決定することで十分であり得るので、この場合、特定の標的配列に対応する実験用タグを使用することは、必要とされる配列決定の時間を短縮し得るか、またはその配列決定の量を減少させ得る。例えば、そのような実験タグが、NPPFアンプリコンの3’末端上に存在する場合、NPPFにハイブリダイズした標的配列を識別するために、NPPFアンプリコン配列自体の全体を配列決定しなくてよい。その代わり、実験タグを含むNPPFアンプリコンの3’末端だけを配列決定する必要がある。これは、配列決定するためにより少ない材料しか必要とされないので、配列決定の時間および資源を有意に減少させ得る。
【0187】
1つの例において、実験タグは、NPPFの捕捉を可能にするため(例えば、サンプルからのNPPFまたはNPPFアンプリコンを濃縮するため)に使用される。例えば、実験タグは、基材表面上の捕捉プローブの少なくとも一部の配列に相補的な配列を有し、それにより、NPPFと捕捉プローブとのハイブリダイゼーションが可能になり得る。例えば、増幅後、実験用タグを含むNPPFアンプリコン(例えば、同じ実験用タグを含むNPPFアンプリコンの集団)は、実験用タグに相補的な配列を有する複数の捕捉プローブを含む基材(例えば、磁気ビーズ)とサンプルをインキュベートすることによって、他の材料から単離され得る。それらを捕捉した後、NPPFアンプリコンは、検出され得るか、もしくは配列決定され得るか、またはさらなる解析のためにその基材から放出され得る。1つの例において、その基材は、磁気ビーズであり、NPPFアンプリコンを含むPCR反応物が、ビーズとともにインキュベートされる。次いで、それらのビーズは磁場に保持されるが、サンプル溶液(望まれない核酸分子および他の材料を含む)は除去される。捕捉されたNPPFは、リバースハイブリダイゼーションによって(例えば、塩基の添加および加熱によって)より少量に溶出され得る。同様の方法(例えば、固体基材およびフロースルーデバイスを使用することによる方法)が、他のNPPFおよび他の基材とともに使用され得、それにより、捕捉されたNPPFが、より少量に溶出されることが認識されるだろう。ハプテンが、増幅中に付加される場合、それは、捕捉のために使用され得る。そのような方法の1つの利点は、NPPFまたはNPPFアンプリコンが、大量のサンプル(例えば、1mlの血漿)から単離され、アッセイのために使用されるより少量(例えば、20μl)に溶出され得る点である。
【0188】
実験用タグは、増幅(例えば、ネステッド(nested)増幅または2段階増幅)のためにも使用され得る。
【0189】
特定の例において、実験タグは、少なくとも3ヌクレオチド長(例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40または少なくとも50ヌクレオチド長、例えば、3〜50、3〜20、12〜50または12〜30ヌクレオチド、例えば、3、5、10、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長)である。
【0190】
D.シーケンシングアダプターの付加
シーケンシングアダプターは、生成されたとき、NPPFの一部(例えば、フランキング配列の一部)であり得る。別の例において、シーケンシングアダプターは、後で、例えば、NPPFの増幅中に、付加されて、シーケンシングアダプターを含むNPPFアンプリコンをもたらす。NPPF上に普遍的なフランキング配列が存在するおかげで、例えば増幅中に、NPPF上に他の配列を導入し得る普遍的なプライマーを使用することが可能になる。
【0191】
シーケンシングアダプターは、特定のシーケンシングプラットフォームにとって必要な配列をNPPFアンプリコン(ampilcon)に付加するために使用され得る。例えば、いくつかのシーケンシングプラットフォーム(例えば、454およびIlluminaプラットフォーム)は、配列決定される核酸分子が、その5’および/または3’末端に特定の配列(例えば、配列決定される分子を捕捉するための配列)を含むことを要求する。例えば、適切なシーケンシングアダプターは、配列決定チップまたはビーズ上の相補的配列によって認識され、NPPFは、シーケンシングアダプターが存在することによって捕捉される。
【0192】
1つの例において、ポリA(またはポリT)、例えば、少なくとも10ヌクレオチド長のポリAまたはポリTが、PCR増幅中にNPPFに付加される。特定の例において、ポリA(またはポリT)は、NPPFの3’末端に付加される。いくつかの例において、この付加される配列は、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Tdt)を使用して、その3’末端においてポリアデニル化される。
【0193】
特定の例において、付加される配列決定タグは、少なくとも12ヌクレオチド(nt)長(例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40または少なくとも50nt長、例えば、12〜50または12〜30nt、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30nt長)である。
【0194】
E.検出可能な標識
いくつかの例において、開示されるNPPF、PCRプライマーまたはその両方が、1つ以上の検出可能な標識を含む。検出可能な標識は、当該分野で周知である。検出可能な標識は、サンプル中のNPPFまたはNPPFアンプリコン(例えば、結合したまたはハイブリダイズしたプローブ)の存在または濃縮を示唆する検出可能なシグナルを生成するために使用され得る分子または材料である。したがって、標識されたNPPFは、サンプル中の標的核酸配列(例えば、標的DNAまたは標的RNA)の存在または濃縮の指標を提供する。本開示は、特定の標識の使用に限定されないが、例が提供される。
【0195】
いくつかの例において、標識は、NPPFの合成中にNPPFに組み込まれる。いくつかの例において、標識は、例えば、標識されたプライマーを使用して、増幅中にNPPFに組み込まれる(したがって、標識されたNPPFアンプリコンが生成される)。なおも他の例において、NPPFは、そのNPPF(例えば、NPPFアンプリコン)の一部(例えば、NPPFのフランキング領域)に相補的、ゆえにそれにハイブリダイズする、標識されたプローブを使用することによって、標識される。
【0196】
いくつかの例において、開示される方法において使用される複数のNPPFに含まれるNPPFの各々は、同じ検出可能な標識で標識される。他の例において、少なくとも1つのNPPFが、複数のNPP中の少なくとも1つの他のNPPFとは異なる検出可能な標識で標識される。例えば、複数のNPPFに含まれる少なくとも1つのNPPFは、フルオロフォア(例えば、Cy−3
TM)で標識され得、複数のNPPに含まれる少なくとも1つのNPPFは、異なるフルオロフォア(例えば、Cy−5
TM)で標識され得る。いくつかの例において、複数のNPPFは、少なくとも2、3、4、5、6個またはそれ以上の異なる検出可能な標識を含み得る。同様に、本明細書中に提供される方法において使用される増幅プライマーは、同じまたは異なる検出可能な標識で標識され得る。
【0197】
1つ以上の核酸分子(例えば、NPPFまたは増幅プライマー)と会合した標識は、直接または間接的に検出され得る。標識は、任意の公知の機序または未だ発見されていない機序(光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外周波数、可視周波数および紫外周波数の光子を含む)の吸収、放射および/または散乱を含む)によって検出され得る。検出可能な標識としては、有色、蛍光性、電子発光性、リン光性および発光性の分子および材料、1つの物質を別の物質に変換して検出可能な差異を提供する(例えば、無色の物質を有色の物質に変換するかもしくはその逆によって、または沈殿物を生成するかもしくはサンプル濁度を高めることによって)触媒(例えば、酵素)、ハプテンならびに常磁性および磁性の分子または材料が挙げられる。さらなる検出可能な標識としては、ラマン(光散乱)標識(例えば、Nanoplex(登録商標)biotags,Oxonica,Bucks,UK)が挙げられる。他の例示的な検出可能な標識としては、ジゴキシン、エネルギー転移およびエネルギークエンチング対(例えば、FRET)の使用、IRならびに吸光度/比色標識が挙げられる。
【0198】
非限定的な例において、NPPFまたはプライマーは、ハプテン分子(例えば、ニトロ芳香族化合物(例えば、ジニトロフェニル(DNP))、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニンなど)に共有結合的に付着されたdNTPで標識される。ハプテンおよび他の標識をdNTPに結合体化するための方法(例えば、標識されたプローブへの組み込みを促進するために)は、当該分野で周知である。手順の例として、例えば、米国特許第5,258,507号、同第4,772,691号、同第5,328,824号および同第4,711,955号を参照のこと。標識は、dNTPに、そのdNTP上の任意の位置(例えば、リン酸(例えば、α、βまたはγリン酸)または糖)において直接または間接的に付着され得る。いくつかの例において、標識された核酸分子の検出は、ハプテン−標識NPPを1次抗ハプテン抗体と接触させることによって達成され得る。1つの例において、1次抗ハプテン抗体(例えば、マウス抗ハプテン抗体)は、酵素で直接標識される。別の例において、酵素に結合体化された二次抗抗体(例えば、ヤギ抗マウスIgG抗体)が、シグナル増幅のために使用される。他の例において、ハプテンは、ビオチンであり、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP))に結合体化されたアビジンまたはストレプトアビジンとハプテン標識NPPFを接触させることによって検出される。
【0199】
検出可能な標識のさらなる例としては、蛍光分子(または蛍光色素)が挙げられる。数多くの蛍光色素が当業者に公知であり、それらは、例えば、Life Technologies(以前はInvitrogen)から選択され得る。例えば、The Handbook−A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologiesを参照のこと。核酸分子(例えば、NPPF)に付着され得る(例えば、化学的に結合体化され得る)特定のフルオロフォアの例は、Nazarenkoらに対する米国特許第5,866,366号に提供されており、例えば、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’ジスルホン酸、アクリジンおよび誘導体(例えば、アクリジンおよびアクリジンイソチオシアネート)、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5ジスルホネート(Lucifer Yellow VS)、N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、Brilliant Yellow、クマリンおよび誘導体(例えば、クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC,Coumarin120)、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(trifluoromethylcouluarin)(Coumarin 151));シアノシン;4’,6−ジアミニジノ−2−フェニルインドール(DAPI);5’,5”−ジブロモピロガロール−スルホンフタレイン(Bromopyrogallol Red);7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセテート;4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸;4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸;5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロリド(DNS,塩化ダンシル);4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアネート(DABITC);エオシンおよび誘導体(例えば、エオシンおよびエオシンイソチオシアネート);エリスロシンおよび誘導体(例えば、エリスロシンBおよびエリスロシンイソチオシアネート);エチジウム;フルオレセインおよび誘導体(例えば、5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびQFITC(XRITC);2’,7’−ジフルオロフルオレセイン(OREGON GREEN(登録商標));フルオレサミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4−メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロザニリン;フェノールレッド;B−フィコエリトリン;o−フタルジアルデヒド;ピレンおよび誘導体(例えば、ピレン、ピレンブチレートおよびスクシンイミジル1−ピレンブチレート);Reactive Red4(Cibacron Brilliant Red 3B−A);ローダミンおよび誘導体(例えば、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、ローダミングリーン、スルホローダミンB、スルホローダミン101およびスルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(Texas Red));N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸およびテルビウムキレート誘導体である。
【0200】
他の好適なフルオロフォアとしては、およそ617nmで放射するチオール反応性ユウロピウムキレート(Heyduk and Heyduk,Analyt.Biochem.248:216−27,1997;J.Biol.Chem.274:3315−22,1999)、ならびにGFP、Lissamine
TM、ジエチルアミノクマリン、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、4,7−ジクロロローダミンおよびキサンテン(Leeらに対する米国特許第5,800,996号に記載されているような)およびそれらの誘導体が挙げられる。当業者に公知の他のフルオロフォア(例えば、Life Technologies(Invitrogen;Molecular Probes(Eugene,OR))から入手可能なもの、およびALEXA FLUOR(登録商標)シリーズの色素(例えば、米国特許第5,696,157号、同第6,130,101号および同第6,716,979号に記載されているような)、BODIPYシリーズの色素(ジピロメテンボロンジフルオリド色素、例えば、米国特許第4,774,339号、同第5,187,288号、同第5,248,782号、同第5,274,113号、同第5,338,854号、同第5,451,663号および同第5,433,896号に記載されているような)、Cascade Blue(米国特許第5,132,432号に記載されているスルホン化ピレンのアミン反応性誘導体)およびMarina Blue(米国特許第5,830,912号)を含む)も使用され得る。
【0201】
蛍光標識は、上に記載された蛍光色素に加えて、蛍光ナノ粒子(例えば、半導体ナノ結晶、例えば、QUANTUM DOT
TM(例えば、Life Technologies(QuantumDot Corp,Invitrogen Nanocrystal Technologies,Eugene,OR)から得られる)であり得る;米国特許第6,815,064号;同第6,682,596号;および同第6,649,138号も参照のこと)。半導体ナノ結晶は、サイズ依存性の光学特性および/または電気特性を有する微小粒子である。半導体ナノ結晶が、一次エネルギー源で照射されると、その半導体ナノ結晶において使用されている半導体材料のバンドギャップに対応する周波数のエネルギーの二次放射が生じる。この放射は、特定の波長の有色光または蛍光として検出され得る。種々のスペクトル特性を有する半導体ナノ結晶は、例えば、米国特許第6,602,671号に記載されている。例えば、Bruchezら、Science 281:2013−2016,1998;Chanら、Science 281:2016−2018,1998;および米国特許第6,274,323号に記載されている手法によって、種々の生物学的分子(dNTPおよび/または核酸を含む)または基材に結合され得る半導体ナノ結晶。
【0202】
様々な組成の半導体ナノ結晶の形成は、例えば、米国特許第6,927,069号;同第6,914,256号;同第6,855,202号;同第6,709,929号;同第6,689,338号;同第6,500,622号;同第6,306,736号;同第6,225,198号;同第6,207,392号;同第6,114,038号;同第6,048,616号;同第5,990,479号;同第5,690,807号;同第5,571,018号;同第5,505,928号;同第5,262,357号および米国特許公開番号2003/0165951、ならびにPCT公開番号99/26299(1999年5月27日に公開)に開示されている。異なるスペクトル特性に基づいて識別可能な半導体ナノ結晶の別個の集団が生成され得る。例えば、その組成、サイズまたはサイズおよび組成に基づいて異なる色の光を発する半導体ナノ結晶が生成され得る。例えば、サイズに基づいて種々の波長(565nm、655nm、705nmまたは800nmの発光波長)で発光する、本明細書中に開示されるプローブにおける蛍光標識として好適な、量子ドットが、Life Technologies(Carlsbad,CA)から入手可能である。
【0203】
さらなる標識としては、例えば、放射性同位体(例えば、
3H)、金属キレート(例えば、放射性または常磁性の金属イオン(Gd
3+のような)のDOTAおよびDPTAキレート)およびリポソームが挙げられる。
【0204】
核酸分子(例えば、NPPFまたは増幅プライマー)とともに使用され得る検出可能な標識には、酵素、例えば、HRP、AP、酸ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼまたはβ−ラクタマーゼも含まれる。検出可能な標識が、酵素を含む場合、色素原、蛍光発生化合物または発光性(luminogenic)化合物が、その酵素と組み合わせて使用されることにより、検出可能なシグナルを発生し得る(数多くのそのような化合物は、例えば、Life Technologies,Carlsbad,CAから商業的に入手可能である)。色素生産性化合物の特定の例としては、ジアミノベンジジン(DAB)、4−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)、ファストレッド、ファストブルー、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、AP Orange、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’−アジノ−ジ−[3−エチルベンゾチアゾリンスルホネート](ABTS)、o−ジアニシジン、4−クロロナフトール(4−CN)、ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)、o−フェニレンジアミン(OPD)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−Gal)、メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド(MU−Gal)、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(PNP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−Gluc)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルーおよびテトラゾリウムバイオレットが挙げられる。
【0205】
あるいは、金属組織検出スキームでは、酵素が使用され得る。金属組織検出方法としては、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)を、水溶性の金属イオンおよびその酵素の酸化還元不活性基質とともに使用することが挙げられる。その基質は、その酵素によって酸化還元活性な物質に変換され、その酸化還元活性な物質は、その金属イオンを還元して、検出可能な沈殿物を形成させる。(例えば、米国特許出願公開番号2005/0100976、PCT公開番号2005/003777および米国特許出願公開番号2004/0265922を参照のこと)。金属組織検出方法は、オキシドレドクターゼ酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)を水溶性金属イオン、酸化剤および還元剤とともに使用して、再度、検出可能な沈殿物を形成する工程も包含する。(例えば、米国特許第6,670,113号を参照のこと)。
【0206】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、NPPFまたはプライマーの5’末端または3’末端に付着されるか、または組み込まれる(例えば、NPPFまたはプライマーは、末端が標識されたプローブである)。他の例において、検出可能な標識は、NPPFまたはプライマーの内部の位置(例えば、NPPFもしくはプライマーの5’末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15もしくはそれ以上の塩基、またはNPPFもしくはプライマーの3’末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15もしくはそれ以上の塩基)に組み込まれる。
【0207】
1つの例において、NPPFのフランキング領域の1つは、アクセプターまたはエミッター(例えば、アクセプターフルオロフォア)を含み、フランキング領域に相補的な増幅プライマーは、逆のもの(例えば、ドナーフルオロフォア)を含む。したがって、プライマー−NPPF二重鎖は、検出可能なシグナルを放射するが、一本鎖プライマーまたは一本鎖NPPFは、放射しない。シグナルの出現は、サンプル中のNPPFの量の尺度であり、標識された過剰なプライマーを増幅された付加物から分離することなく測定され得る。FRETアクセプター−ドナー対の例は、当該分野で公知であり、その例としては、JOE、TAMRAおよびROXとともに使用するためのドナーフルオロフォアとしてのFAMが挙げられ得、3−(ε−カルボキシ−ペンチル)−3’−エチル−5,5’−ジメチルオキサカルボシアニン(CYA)は、アクセプターフルオロフォアとして使用され得るローダミン誘導体(例えば、R6G、TAMRAおよびROX)に対するドナーフルオロフォアとして働き得る。Grantら(Biosens Bioelectron.16:231−7,2001)は、本明細書中に開示される方法において使用され得るFRET対の特定の例を提供している。
【0208】
V.サンプル
サンプルは、1つ以上の標的を含む任意の集合体である(例えば、生物学的サンプルまたは生物学的検体)。そのサンプルは、当業者に周知の方法を用いて回収することができるかまたは得ることができる。開示される方法において有用なサンプルには、核酸(例えば、ゲノムDNA、cDNA、ウイルスDNAまたはRNA、rRNA、tRNA、mRNA、miRNA、オリゴヌクレオチド、核酸フラグメント、改変された核酸、合成核酸など)を含む任意の検体が含まれ得る。1つの例において、サンプルは、不安定なRNAを含む。いくつかの例において、検出されるかまたは配列決定される核酸分子は、サンプル中で架橋されているか(例えば、架橋されたDNA、mRNA、miRNAまたはvRNA)、またはサンプル中で可溶性である。いくつかの例において、サンプルは、固定されたサンプル(例えば、標的分子の架橋を引き起こす物質を含むサンプル)である。いくつかの例において、サンプル中の標的核酸は、標的核酸分子の検出または配列決定の前に、抽出されないか、可溶化されないか、またはその両方が行われない。
【0209】
いくつかの例において、開示される方法は、サンプルの解析の前にサンプルを得る工程を包含する。いくつかの例において、開示される方法は、腫瘍を有する被験体を選択する工程、および次いで、いくつかの例において、例えば、被験体または1つ以上の治療の選択に対する診断または予後診断を確定するために、その被験体の腫瘍に基づいて検出する1つ以上の標的DNAまたはRNAをさらに選択する工程を包含する。いくつかの例において、解析されるサンプル中の核酸分子は、まず、サンプルから単離されるか、抽出されるか、濃縮されるか、またはそれらの組み合わせが行われる。
【0210】
いくつかの例において、サンプル中のRNAは、本明細書中に提供される方法を行う前に逆転写される。しかしながら、標的RNA配列が、ハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ活性によって相補的なプローブ配列に効率的に変換されるとき、開示される方法は、逆転写を必要としない。RNA分子は、必ずしもそのDNA鋳型と同一線形順序に並んでいるわけではないので、時折、RNAをコードする遺伝子配列ではなくそのRNA分子を配列決定することが望ましい。そして、一部の生物は、RNAである(例えば、RNAウイルス)。
【0211】
いくつかの例において、サンプルは、溶解される。溶解緩衝液は、酵素を不活性化するように、およびRNAの分解を防止するようにデザインされるが、それは、ハイブリダイゼーション希釈緩衝液への限界希釈の後、ヌクレアーゼ活性を可能にし、ストリンジェントな特異性でのハイブリダイゼーションを促進する。希釈緩衝液は、溶解緩衝液および他の緩衝液の阻害活性(例えば、他の酵素(例えば、ポリメラーゼ)に対する阻害活性)を中和するために加えられ得る。あるいは、溶解緩衝液および他の緩衝液の組成は、例えば、ポリメラーゼが許容する組成に変更され得る。
【0212】
いくつかの例において、本方法は、複数のサンプルを同時または同時発生的に解析する工程を包含する。例えば、本方法は、少なくとも2つの異なるサンプル(例えば、種々の患者由来のサンプル)を同時または同時発生的に解析し得る。1つの例において、本方法は、少なくとも2つの異なるサンプル(例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000または少なくとも10,000個の異なるサンプル)中の少なくとも2つの異なる標的核酸分子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なる標的)を同時または同時発生的に検出し得るかまたは配列決定し得る。
【0213】
例示的なサンプルとしては、細胞、細胞溶解産物、血液塗抹標本、集細胞遠心調製物(cytocentrifuge preparations)、細胞学塗抹標本(cytology smears)、体液(例えば、血液およびその画分(例えば、血清および血漿)、唾液、痰、尿、髄液、胃液、汗、精液など)、細胞学的塗抹標本、頬側細胞、組織、細胞もしくは器官の抽出物、組織生検材料(例えば、腫瘍生検材料)、細針吸引材料、パンチ生検材料、循環腫瘍細胞、新鮮組織、凍結組織、固定された組織、固定され、ワックス(例えば、パラフィン)包埋された組織、骨髄、および/または組織切片(例えば、クライオスタット組織切片および/またはパラフィン包埋された組織切片)が挙げられるがこれらに限定されない。生物学的サンプルは、研究室での研究のサンプル(例えば、細胞培養サンプルまたは上清)でもあり得る。
【0214】
被験体からサンプルを得る方法は、当該分野で公知である。例えば、組織または細胞サンプルを得る方法は、通例の方法である。例示的なサンプルは、正常な細胞もしくは組織から得てもよいし、腫瘍性の細胞もしくは組織から得てもよい。新形成は、1つ以上の細胞が、分化喪失、速い成長速度、周囲組織の浸潤、および細胞が転移でき得ることとともに、特徴的な退形成を起こした生物学的状態である。特定の例において、生物学的サンプルは、腫瘍サンプル(例えば、腫瘍性の細胞を含むサンプル)を含む。
【0215】
例示的な腫瘍性の細胞または組織は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、例えば、肺扁平上皮癌種)、乳癌腫(例えば、小葉癌腫および管癌腫)、副腎皮質癌、エナメル上皮腫、膨大部癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、胆管腫、直腸結腸癌、子宮体癌、食道癌、胃癌、神経膠腫、顆粒細胞腫(granular call tumor)、頭頸部癌、肝細胞癌、胞状奇胎、リンパ腫、メラノーマ、中皮腫、ミエローマ、神経芽細胞腫、口腔癌、骨軟骨腫、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、毛母腫、前立腺癌、腎細胞癌、唾液腺腫瘍、軟部組織腫瘍、スピッツ母斑、扁平上皮細胞癌、奇形癌および甲状腺癌を含む固形腫瘍に含まれ得るかまたはそれらから単離され得る。例示的な腫瘍性の細胞は、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病および慢性リンパ性白血病)を含む)、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性型および高悪性型)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群および骨髄形成異常を含む血液癌にも含まれ得るかまたはそれらからも単離され得る。
【0216】
例えば、細胞材料を含む腫瘍由来のサンプルは、その腫瘍の全部または一部の外科的切除によって、その腫瘍から細針吸引材料を回収することによって、ならびに当該分野で公知の他の方法によって、得ることができる。いくつかの例において、組織または細胞サンプルは、基材に適用され、1つ以上の標的DNAまたはRNAが存在するかを判定するために解析される。開示される方法において有用な固体支持体は、生物学的サンプルを有することだけが必要であり、必要に応じて、サンプル中の成分(例えば、タンパク質および/または核酸配列)の好都合な検出を可能にする。例示的な支持体としては、顕微鏡用スライド(例えば、ガラスの顕微鏡用スライドまたはプラスチックの顕微鏡用スライド)、カバーガラス(例えば、ガラスのカバーガラスまたはプラスチックのカバーガラス)、組織培養皿、マルチウェルプレート、膜(例えば、ニトロセルロースまたはポリフッ化ビニリデン(PVDF))またはBIACORE
TMチップが挙げられる。
【0217】
開示される方法は、高感度かつ特異的であり、限られた数の細胞しか含まないサンプル中の標的核酸分子の検出を可能にする。少数の細胞(例えば、250,000個未満の細胞(例えば、100,000個未満、50,000個未満、10,000個未満、1,000個未満、500個未満、200個未満、100個未満の細胞または10個未満の細胞))を含むサンプルとしては、FFPEサンプル、細針吸引材料(例えば、肺、前立腺、リンパ、乳房または肝臓からのもの)、パンチ生検材料、針生検材料、小集団の(例えば、FACS)選別された細胞もしくは循環腫瘍細胞、肺吸引材料、少数のレーザー捕捉されたかもしくは肉眼解剖された(macrodissected)細胞もしくは循環腫瘍細胞、エキソソームおよび他の細胞内粒子、または体液(例えば、血漿、血清、髄液、唾液および乳房吸引材料)が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、わずか1000個の細胞(例えば、1000個またはそれ以上の細胞、例えば、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10,000、15,000、20,000、50,000個またはそれ以上の細胞を含むサンプル)において標的DNAまたは標的RNAが検出され得る。いくつかの例において、約1000〜100,000個の細胞、例えば、約1000〜50,000、1000〜15,000、1000〜10,000、1000〜5000、3000〜50,000、6000〜30,000または10,000〜50,000個の細胞において標的DNAまたは標的RNAの発現が検出され得る。いくつかの例において、約100〜250,000個の細胞、例えば、約100〜100,000、100〜50,000、100〜10,000、100〜5000、100〜500、100〜200または100〜150個の細胞において標的DNAまたは標的RNAの発現が検出され得る。他の例において、約1〜1000個の細胞(例えば、約1〜500個の細胞、約1〜250個の細胞、約1〜100個の細胞、約1〜50個の細胞、約1〜25個の細胞または約1個の細胞)において標的DNAまたは標的RNAの発現が検出され得る。
【0218】
サンプルは、サンプルと標的特異的試薬(例えば、NPPF)との接触の前に(またはその接触と同時発生的に)、当業者に公知のいくつかの方法で処理され得る。1つの比較的単純な処理は、サンプルを緩衝液、例えば、溶解緩衝液に懸濁することである(それにより、そのサンプルのすべての成分が単一溶液中に保存される)。標的を検出するための多くの従来の方法は、標的が標的特異的試薬に到達できるようにするために、より複雑なサンプル処理(例えば、複数の工程および/または様々なタイプの特殊機器が関わるもの)を必要とする。例えば、ある特定の検出方法は、サンプルからの標的(例えば、DNAまたはmRNA)の部分的または完全な単離(例えば、抽出)を必要とする。標的(例えば、DNAまたはRNA)は、サンプル中の他の非標的生物学的成分から精製されるとき、単離されているかまたは抽出されている。精製は、サンプル中に見られる1つ以上の外来性成分からの標的の分離のことを指す。例えば、対の標的特異的プライマーを用いたmRNAのPCRに基づく検出の前に、全または可溶性mRNA(標的mRNAを含む)が、サンプル中の細胞タンパク質および他の核酸から分離されることが多い。混合された検体またはサンプルから単離されるか、抽出されるかまたは精製される成分は、代表的には、未精製または未抽出のサンプルと比べて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも98%または実に少なくとも99%濃縮される。
【0219】
サンプルからの生物学的成分の単離は、時間のかかるものであり、例えば、分解および/または単離のために使用されるプロセスの不良な効率もしくは不完全さによる、単離されている成分の喪失のリスクを負うものである。さらに、いくつかのサンプル(例えば、固定された組織)を用いるとき、標的(例えば、DNAまたはRNA(例えば、mRNAまたはmiRNA))は、悪名高いことに、高忠実度で単離することは困難である(例えば、新鮮または凍結組織と比べて)。なぜなら、標的の少なくともいくらかの割合が、固定されたサンプル中の他の成分に架橋されており、ゆえに、容易に単離できないかまたは可溶化できず、可溶性画分と不溶性画分とが分離される際に失われる可能性があると考えられているからである。したがって、いくつかの例において、標的核酸を検出する方法は、サンプルを1つ以上のNPPFと接触させる前に、サンプルからの標的の精製、抽出もしくは単離を必要としないかもしくはそれらを含まず、かつ/またはサンプルを標的特異的試薬と接触させる前に、サンプルの全成分を保持する溶液、例えば、溶解緩衝液にサンプルを懸濁することだけを含む。
【0220】
いくつかの例において、サンプル中の細胞は、水溶液において(例えば、溶解緩衝液を使用して)溶解されるか、または透過処理される。その水溶液または溶解緩衝液としては、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)および1つ以上のカオトロピック剤(例えば、ホルムアミド、グアニジニウムHCl、グアニジニウムイソチオシアネートまたは尿素)を含む。その溶液は、緩衝剤(例えば、SSC)も含み得る。いくつかの例において、溶解緩衝液は、約15%〜25%のホルムアミド(v/v)、約0.01%〜0.1%のSDSおよび約0.5〜6×SSC(例えば、約3×SSC)を含む。その緩衝液は、必要に応じて、tRNA(例えば、約0.001〜約2.0mg/ml)またはリボヌクレアーゼ;DNAase;プロテイナーゼK;タンパク質、マトリックス、炭水化物、脂質もしくは1種類のオリゴヌクレオチドを分解する酵素(例えば、コラゲナーゼまたはリパーゼ)、またはそれらの組み合わせを含み得る。溶解緩衝液は、フェノールレッドなどのpH指示薬も含み得る。特定の例において、溶解緩衝液は、20%ホルムアミド、3×SSC(79.5%)、0.05%SDS、1μg/mlのtRNAおよび1mg/mlのフェノールレッドを含む。細胞を溶解するためまたは透過処理するのに、十分な時間(例えば、約1分〜約60分、例えば、約5分〜約20分または約10分)にわたって、十分な温度(例えば、約22℃〜約110℃、例えば、約80℃〜約105℃、約37℃〜約105℃または約90℃〜約100℃)において、細胞を上記水溶液中でインキュベートする(必要に応じて、蒸発を防ぐためまたはパラフィンに対するシンク(sink)として働くためにオイルで重層する)。いくつかの例において、溶解は、約95℃で行われる。いくつかの例において、溶解工程は、サンプルを約95℃で約5〜15分間インキュベートして、サンプル中のゲノムDNAではなくRNAを変性させる工程を包含する。他の例において、溶解工程は、サンプルを約105℃で約5〜15分間インキュベートして、サンプル中のRNAとゲノムDNAの両方を変性させる工程を包含する。1つの例において、プロテイナーゼKは、溶解緩衝液とともに含められる。
【0221】
いくつかの例において、粗細胞溶解物は、さらなる精製なしに直接使用される。それらの細胞は、開示されるNPPFの1つ以上の存在下または非存在下において溶解され得る。それらの細胞が、プローブの非存在下において溶解される場合、続いてその粗溶解産物に1つ以上のプローブが加えられ得る。他の例において、接触前の溶解産物を1つ以上のNPPFと接触する前に細胞溶解産物から核酸(例えば、DNAおよび/またはRNA)が単離される。
【0222】
他の例において、組織サンプルは、組織を媒質中で固定し、包埋することによって調製されるか、または細胞懸濁液は、例えば、固体支持体(例えば、スライドガラス)上に細胞を塗抹するかまたは遠心することによって、その固体支持体上に単層として調製される。さらなる例において、新鮮凍結(例えば、固定されていない)組織または組織切片が、本明細書中に開示される方法において使用され得る。特定の例において、FFPE組織切片が、開示される方法において使用される。
【0223】
いくつかの例において、包埋媒質が使用される。包埋媒質は、将来の解析のために組織および/または細胞を保存するのを助けるために、それらが包埋される不活性な材料である。包埋は、組織サンプルを薄切片にスライスするのも可能にする。包埋媒質としては、パラフィン、セロイジン、OCT
TM化合物、寒天、プラスチックまたはアクリル樹脂が挙げられる。多くの包埋媒質は、疎水性である;ゆえに、その不活性な材料は、主に親水性の試薬を使用する解析の前に除去される必要があり得る。脱パラフィンまたは脱ろうという用語は、生物学的サンプルからの任意のタイプの包埋媒質の部分的または完全な除去のことを指すために本明細書中で広く使用される。例えば、パラフィン包埋された組織切片は、有機溶媒(例えば、トルエン、キシレン、リモネンまたは他の好適な溶媒)に通すことによって、脱ろうされる。他の例において、パラフィン包埋された組織切片は、直接(例えば、脱ろう工程なしで)使用される。
【0224】
組織は、灌流を含む任意の好適なプロセスまたは固定液に浸すことによって固定され得る。固定液は、架橋剤(例えば、アルデヒド類、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド、ならびに非アルデヒド架橋剤)、酸化剤(例えば、金属イオンおよび金属錯体、例えば、四酸化オスミウムおよびクロム酸)、タンパク質変性剤(例えば、酢酸、メタノールおよびエタノール)、不明な機序の固定液(例えば、塩化第二水銀、アセトンおよびピクリン酸)、組み合わせ試薬(例えば、カルノア固定液、メタカルン(methacarn)、ブアン液、B5固定液、Rossman液およびGendre液)、マイクロ波および様々な固定液(例えば、排除体積固定(excluded volume fixation)および蒸気固定)として分類され得る。添加物(例えば、緩衝剤、界面活性剤、タンニン酸、フェノール、金属塩(例えば、塩化亜鉛、硫酸亜鉛およびリチウム塩)およびランタン)もまた固定液に含められ得る。
【0225】
組織または細胞サンプルを調製する際に最もよく使用される固定液は、一般にホルマリン溶液の形態のホルムアルデヒドである(緩衝液中の4%ホルムアルデヒド、10%緩衝ホルマリンと称される)。1つの例において、固定液は、10%中性緩衝ホルマリンであり、ゆえに、いくつかの例において、サンプルは、ホルマリン固定されている。
【0226】
いくつかの例において、サンプルは、環境サンプル(例えば、土壌、大気もしくは水サンプル、または表面から得られる(例えば、拭き取ることによって)サンプル)、または例えば、存在し得る病原体を検出するための、食品サンプル(例えば、野菜、果物、乳製品または食肉を含むサンプル)である。
【0227】
VI.標的核酸
標的核酸分子は、検出可能な、または目的の、または開示される方法による検出に有用な、核酸分子である。真核生物、原核生物、ウイルス、真菌、細菌または他の生物学的生物に由来するかに関係なく、標的には、一本鎖、二本鎖または他の多重鎖の核酸分子(例えば、DNA(例えば、ゲノム、ミトコンドリアまたは合成)、RNA(例えば、mRNA、miRNA、tRNA、siRNA、長い非コード(nc)RNA、生物学的に存在するアンチセンスRNA、Piwi相互作用RNA(piRNA)または低分子RNA(snoRNA)))が含まれる。ゲノムDNA標的は、ゲノムの1つまたはいくつかの部分(例えば、コード領域(例えば、遺伝子またはエキソン)、非コード領域(既知の生物学的機能を有するか未知の生物学的機能を有するかは関係なく、例えば、エンハンサー、プロモーター、制御領域、テロメアまたは「ナンセンス」DNA))を含み得る。いくつかの実施形態において、標的は、天然に存在し得るかまたは別途誘導され得る変異(例えば、化学的にまたは放射線照射によって誘導される変異)(例えば、生殖細胞系列変異または体細胞変異)を含み得るか、またはその結果であり得る。そのような変異は、ゲノム再編成(例えば、転座、挿入、欠失または逆位)、単一ヌクレオチド変異および/またはゲノム増幅を含み得る(またはそれらに起因し得る)。いくつかの実施形態において、標的は、1つ以上の改変されたまたは合成のモノマー単位(例えば、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、メチル化された核酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、架橋された核酸または架橋されたアミノ酸)を含み得る。
【0228】
NPPFが特異的に結合し得る標的核酸分子の一部も、再度、文脈が指示するとき、「標的」と称される場合があるが、より詳細には、標的部分、相補的領域(CR)、標的部位、保護された標的領域もしくは保護された部位または類似物と称される場合がある。その相補的領域に特異的に結合したNPPFは、複合体を形成し、その複合体は、全体としておよび/もしくはサンプルとして標的と組み込まれたままであり得るか、または全体としておよび/もしくはサンプルとして標的から分離され得る(または分離され得るかまたは分離されるようになり得る)。いくつかの実施形態において、NPPF/CR複合体は、例えば、S1ヌクレアーゼなどのヌクレアーゼの作用によって、全体としておよび/またはサンプルとして標的から分離される(または解離されるようになる)。
【0229】
すべてのタイプの標的核酸分子が、開示される方法を用いて解析され得る。1つの例において、標的は、リボ核酸(RNA)分子、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、マイクロRNA(miRNA)、siRNA、アンチセンスRNAまたはウイルスRNA(vRNA)である。別の例において、標的は、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic)(DNA)分子、例えば、ゲノムDNA(gDNA)、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、葉緑体DNA(cpDNA)、ウイルスDNA(vDNA)、cDNAまたはトランスフェクトされたDNAである。特定の例において、標的は、アンチセンスヌクレオチドである。いくつかの例において、細胞または組織の全トランスクリプトームが、開示される方法を用いて解析され得る。1つの例において、標的核酸分子は、例えば、サンプル中に約100,000回未満、約10,000回未満、約5,000回未満、約100回未満、10回未満または1回だけしか現れない稀な核酸分子(例えば、サンプル中に1〜10,000、1〜5,000、1〜100または1〜10回しか現れない核酸分子)である。
【0230】
複数の標的が、同じサンプルもしくはアッセイにおいて、または複数のサンプルもしくはアッセイであっても、例えば、同時または同時発生的に、検出され得るかまたは配列決定され得る。同様に、単一の標的が、複数のサンプルにおいて、例えば、同時または同時発生的に、検出され得るかまたは配列決定され得る。1つの例において、標的核酸分子は、miRNAおよびmRNAである。したがって、そのような例では、本方法は、そのmiRNAに特異的な少なくとも1つのNPPFおよびそのmRNAに特異的な少なくとも1つのNPPFの使用を含み得る。1つの例において、標的核酸分子は、2つの異なるDNA分子である。したがって、そのような例では、本方法は、第1の標的DNAに特異的な少なくとも1つのNPPFおよび第2の標的DNAに特異的な少なくとも1つのNPPFの使用を含み得る。1つの例において、標的核酸分子は、2つの異なるRNA分子である。したがって、そのような例では、本方法は、第1の標的RNAに特異的な少なくとも1つのNPPFおよび第2の標的RNAに特異的な少なくとも1つのNPPFの使用を含み得る。
【0231】
いくつかの例において、開示される方法は、DNAまたはRNAの単一ヌクレオチド多型(SNP)または単一ヌクレオチドバリアント(sNPV)、スプライスジャンクション、メチル化されたDNA、遺伝子融合または他の変異、タンパク質に結合したDNAまたはRNA、およびcDNA、ならびに発現レベル(例えば、DNAまたはRNAの発現、例えば、cDNA発現、mRNA発現、miRNA発現、rRNA発現、siRNA発現またはtRNA発現)の検出または配列決定を可能にする。ヌクレアーゼ保護プローブがハイブリダイズするようにデザインされ得る任意の核酸分子は、標的核酸分子自体が配列決定される必要がなかったとしても、そしていくつかの例においては破壊されていたとしても、開示される方法によって定量され得、識別され得る。
【0232】
1つの例において、標的サンプルを処理する際に、メチル化された塩基が、NPPF中の塩基に相補的な異なる塩基に変換されるように、メチル化が生じているかまたは生じていない部位に塩基ミスマッチを含むNPPFを使用することによって、DNAのメチル化が検出される。
【0233】
当業者は、標的が、天然塩基もしくは非天然塩基またはそれらの組み合わせを含み得ることを認識するだろう。
【0234】
特定の非限定的な例において、新生物(例えば、癌)に関連する標的核酸(例えば、標的DNAまたは標的RNA)が選択される。数多くの染色体異常(転座および他の再編成、重複または欠失を含む)または変異が、腫瘍性の細胞、特に癌細胞(例えば、B細胞およびT細胞白血病、リンパ腫、乳癌、結腸癌、神経の癌など)において同定されている。
【0235】
いくつかの例において、標的核酸分子には、GAPDH(例えば、GenBankアクセッション番号NM_002046)、PPIA(例えば、GenBankアクセッション番号NM_021130)、RPLP0(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001002またはNM_053275)、RPL19(例えば、GenBankアクセッション番号NM_000981)、ZEB1(例えば、GenBankアクセッション番号NM_030751)、Zeb2(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001171653またはNM_014795)、CDH1(例えば、GenBankアクセッション番号NM_004360)、CDH2(例えば、GenBankアクセッション番号NM_007664)、VIM(例えば、GenBankアクセッション番号NM_003380)、ACTA2(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001141945またはNM_001613)、CTNNB1(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001904、NM_001098209またはNM_001098210)、KRT8(例えば、GenBankアクセッション番号NM_002273)、SNAI1(例えば、GenBankアクセッション番号NM_005985)、SNAI2(例えば、GenBankアクセッション番号NM_003068)、TWIST1(例えば、GenBankアクセッション番号NM_000474)、CD44(例えば、GenBankアクセッション番号NM_000610、NM_001001389、NM_00100390、NM_001202555、NM_001001391、NM_001202556、NM_001001392、NM_001202557)、CD24(例えば、GenBankアクセッション番号NM_013230)、FN1(例えば、GenBankアクセッション番号NM_212474、NM_212476、NM_212478、NM_002026、NM_212482、NM_054034)、IL6(例えば、GenBankアクセッション番号NM_000600)、MYC(例えば、GenBankアクセッション番号NM_002467)、VEGFA(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001025366、NM_001171623、NM_003376、NM_001171624、NM_001204384、NM_001204385、NM_001025367、NM_001171625、NM_001025368、NM_001171626、NM_001033756、NM_001171627、NM_001025370、NM_001171628、NM_001171622、NM_001171630)、HIF1A(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001530、NM_181054)、EPAS1(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001430)、ESR2(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001040276、NM_001040275、NM_001214902、NM_001437、NM_001214903)、PRKCE(例えば、GenBankアクセッション番号NM_005400)、EZH2(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001203248、NM_152998、NM_001203247、NM_004456、NM_001203249)、DAB2IP(例えば、GenBankアクセッション番号NM_032552、NM_138709)、B2M(例えば、GenBankアクセッション番号NM_004048)およびSDHA(例えば、GenBankアクセッション番号NM_004168)が含まれる。
【0236】
いくつかの例において、標的miRNAには、hsa−miR−205(MIR205,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029622)、hsa−miR−324(MIR324,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029896)、hsa−miR−301a(MIR301A,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029842)、hsa−miR−106b(MIR106B,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029831)、hsa−miR−877(MIR877,例えば、GenBankアクセッション番号NR_030615)、hsa−miR−339(MIR339,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029898)、hsa−miR−10b(MIR10B,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029609)、hsa−miR−185(MIR185,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029706)、hsa−miR−27b(MIR27B,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029665)、hsa−miR−492(MIR492,例えば、GenBankアクセッション番号NR_030171)、hsa−miR−146a(MIR146A,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029701)、hsa−miR−200a(MIR200A,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029834)、hsa−miR−30c(例えば、GenBankアクセッション番号NR_029833、NR_029598)、hsa−miR−29c(MIR29C,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029832)、hsa−miR−191(MIR191,例えば、GenBankアクセッション番号NR_029690)またはhsa−miR−655(MIR655,例えば、GenBankアクセッション番号NR_030391)が含まれる。
【0237】
1つの例において、標的は、病原体核酸(例えば、ウイルスRNAまたはDNA)である。例示的な病原体としては、ウイルス、細菌、真菌および原生動物が挙げられるが、これらに限定されない。1つの例において、標的は、ウイルスRNAである。ウイルスには、プラス鎖RNAウイルスおよびマイナス鎖RNAウイルスが含まれる。例示的なプラス鎖RNAウイルスとしては、ピコルナウイルス(例えば、Aphthoviridae[例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)])、Cardioviridae;Enteroviridae(例えば、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスおよびポリオウイルス);Rhinoviridae(ライノウイルス));Hepataviridae(A型肝炎ウイルス);トガウイルス(その例としては風疹;アルファウイルス(例えば、西部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルスおよびベネズエラウマ脳炎ウイルス)が挙げられる);フラビウイルス(その例としては、デングウイルス、西ナイルウイルスおよび日本脳炎ウイルスが挙げられる);およびコロナウイルス(その例としては、SARSコロナウイルス、例えば、Urbani株が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なマイナス鎖RNAウイルスとしては、オルソミクソウイルス(Orthomyxyoviruses)(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)およびパラミクソウイルス(その例としては、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスおよびパラインフルエンザウイルスが挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。1つの例において、標的は、DNAウイルス(例えば、ヘルペスウイルス(例えば、水痘・帯状疱疹ウイルス、例えば、Oka株;サイトメガロウイルス;ならびに単純ヘルペスウイルス(HSV)タイプ1および2)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルスタイプ1およびアデノウイルスタイプ41)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)およびパルボウイルス(例えば、パルボウイルスB19))由来のウイルスDNAである。別の例において、標的は、レトロウイルス核酸(例えば、ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV−1)、例えば、サブタイプC,HIV−2由来の核酸;ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ネコ白血病ウイルス(FeLV);サル免疫不全ウイルス(SIV);およびトリ肉腫ウイルス)である。1つの例において、標的核酸は、細菌の核酸である。1つの例において、細菌の核酸は、グラム陰性菌(例えば、大腸菌(K−12およびO157:H7)、志賀赤痢菌およびコレラ菌)由来の核酸である。別の例において、細菌の核酸は、グラム陽性菌(例えば、Bacillus anthracis、Staphylococcus aureus、pneumococcus、gonococcusおよびstreptococcal meningitis)由来の核酸である。1つの例において、標的核酸は、原生動物、線形動物(nemotodes)または真菌由来の核酸である。例示的な原生動物としては、Plasmodium、Leishmania、Acanthamoeba、Giardia、Entamoeba、Cryptosporidium、Isospora、Balantidium、Trichomonas、Trypanosoma、NaegleriaおよびToxoplasmaが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な真菌としては、Coccidiodes immitisおよびBlastomyces dermatitidisが挙げられるが、これらに限定されない。
【0238】
当業者は、本明細書中に開示される方法を使用して検出され得るさらなる標的DNAもしくはRNAおよび/またはさらなる標的miRNAを識別し得る。
【0239】
VII.アッセイのアウトプット
いくつかの実施形態において、開示される方法は、サンプル中の1つ以上の標的核酸分子の存在または量を測定する工程を包含する。他のまたはさらなる実施形態において、開示される方法は、サンプル中の1つ以上の標的核酸分子の配列を決定する工程(検出された配列の定量を含み得る)を包含する。それらの方法の結果は、試験結果についての情報を提供する感知可能なアウトプットとして、ユーザー(例えば、科学者、臨床医もしくは他の医療従事者、研究室の職員または患者)に提供され得る。いくつかの例において、そのアウトプットは、紙のアウトプット(例えば、筆記のまたは印刷されたアウトプット)、スクリーン上の表示、図画によるアウトプット(例えば、グラフ、チャートまたは他の線図)または可聴式のアウトプットであり得る。1つの例において、アウトプットは、サンプル中の検出された(または検出されなかった)標的核酸分子の存在または量(例えば、正規化された量)の定性的または定量的な指標を含む表またはグラフである。他の例において、アウトプットは、基材上に存在するシグナルのマップまたはイメージ(例えば、アレイからの蛍光のデジタル画像)である。他の例において、実施形態、アウトプットは、サンプル中の1つ以上の標的核酸分子の配列(例えば(such a)、標的分子における特定の変異の存在を示す(indicting)レポート)である。
【0240】
いくつかの例において、アウトプットは、サンプル中の標的核酸分子の量などの数値である。さらなる例において、アウトプットは、グラフ表示、例えば、サンプル中の標的核酸分子の値(例えば、量または相対量)を検量線上に示すグラフである。さらなる例において、アウトプットは、グラフ表示、例えば、サンプル中の標的核酸分子の配列を示すグラフ(例えばそれは、変異が存在する位置を示し得る)である。いくつかの例において、アウトプットは、例えば、物理的、可聴式または電子的手段を介して(例えば、メール、電話、ファクシミリ通信、電子メールまたは電子的診療記録への通信によって)アウトプットを提供することによって、ユーザーと通信される。
【0241】
アウトプットは、定量的情報(例えば、特定の標的核酸分子の量、またはコントロールのサンプルもしくは値と比較したときの特定の標的核酸分子の量)を提供し得るか、または定性的情報(例えば、特定の標的核酸分子の存在または非存在の判定)を提供し得る。さらなる例において、アウトプットは、サンプル中の標的核酸分子の相対量に関する定性的情報(例えば、コントロールと比べて増加もしくは減少の識別またはコントロールと比べて変化がないこと)を提供し得る。
【0242】
本明細書中で述べられるように、NPPFアンプリコンは、例えば、特定の患者、サンプル、実験または標的配列を識別するために使用され得る1つ以上の実験タグを含み得る。そのようなタグを使用することにより、検出されるかまたは配列決定されるNPPFアンプリコンを「選別する」ことまたは計数することさえ可能になり、ゆえに、複数の異なるサンプル(例えば、種々の患者由来の)、複数の異なる標的(例えば、少なくとも2つの異なる核酸標的)またはそれらの組み合わせの解析が単一反応において可能になる。1つの例において、IlluminaおよびBowtieソフトウェアが、そのような解析のために使用され得る。
【0243】
1つの例において、NPPFは、異なる各標的核酸分子にとってユニークな実験タグを含む。そのようなタグを使用することにより、NPPF全体を配列決定することなく、単にこのタグを配列決定するかまたは検出することにより、そのNPPFを特定の核酸標的に対応するNPPFと識別することが可能になる。さらに、複数の核酸標的が解析される場合、各標的にとってユニークな実験タグを使用することにより、検出されるかまたは配列決定される各実験タグが選別され得、所望であれば計数され得るので、解析が単純化される。NPPFアンプリコンは、サンプル中の標的に化学量論的に比例するので、これにより、サンプル中に存在した標的核酸の定量が可能になる。例えば、サンプル中の複数の標的核酸が、検出されるかまたは配列決定される場合、本方法は、単に実験用タグを検出するかまたは配列決定し、次いで、選別することによって、各標的配列および検出されたかまたは配列決定されたコピー数を示す表またはグラフの作成を可能にする。
【0244】
別の例において、NPPFは、異なる各サンプルにとってユニークな実験タグ(例えば、各患者サンプルに対するユニークなタグ)を含む。そのようなタグを使用することにより、検出された特定のNPPFアンプリコンと特定のサンプルとを関連づけることが可能になる。したがって、複数のサンプルが、同じ反応(例えば、同じウェルまたは同じ配列決定反応)において解析される場合、検出されるかまたは配列決定される各NPPFが、特定のサンプルと関連づけられ得るので、各サンプルにとってユニークな実験タグを使用することにより、その解析が単純化される。例えば、サンプル中の標的核酸が、検出されるかまたは配列決定される場合、本方法は、各サンプルに対する解析結果を示す表またはグラフの作成を可能にする。
【0245】
当業者は、各NPPFアンプリコンが、複数の実験タグ(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の実験タグ)(例えば、標的配列を代表するタグおよびサンプルを代表する別のタグ)を含み得ることを認識するだろう。いったん各タグが検出されるかまたは配列決定されると、適切なソフトウェアを使用することによって、任意の所望の形式(例えば、グラフまたは表)においてデータが選別され得る。例えば、これにより、複数のサンプル中の複数の標的配列の解析が同時または同時発生的に可能になる。
【0246】
いくつかの例において、検出されるかまたは配列決定されるNPPFアンプリコンは、各標的核酸配列に対する公知の配列の参照データベースと比較される。いくつかの例において、そのような比較は、SNPなどの変異の検出を可能にする。いくつかの例において、そのような比較は、参照NPPFの存在量と、SNPを含むと判明した領域におけるNPPFプローブの存在量との比較を可能にする。
【0247】
本開示はさらに、以下の非限定的な実施例によって例証される。
【実施例】
【0248】
実施例1
複数のNPPFの同時配列決定
この実施例では、NPPFを作製するためおよび配列決定するために使用される方法を説明する。
【0249】
7つの異なるNPPFを作製した。各NPPFは、62℃というTm中央値を有する25ヌクレオチド長の特定の標的核酸分子に特異的な領域、ならびに両端にフランキング配列を含んだ。5’−フランキング配列と3’−フランキング配列とは異なっていたが、それらは、その7つの異なるNPPFの各々に対して同じだった。5’−フランキング配列は、61℃のTmを有する25ヌクレオチドであり、3’フランキング配列は、63℃のTmを有する25ヌクレオチドだった。
【0250】
その7つの異なるNPPFを、既知の比(1:1.5:2:4:5)でプールし、以下のとおりPCR増幅した。それらのNPPFをPCRプライマーとインキュベートした。1つのプライマーは、5’−フランキング配列に相補的な配列を含み、第2のプライマーは、3’−フランキング配列に相補的な配列を含んだ。第2のプライマーは、得られたアンプリコンに6ヌクレオチドの実験タグを組み込むことを可能にする配列も含み、その結果、このプライマーを用いて増幅される各NPPFは、同じ6ヌクレオチドの実験タグを有した。いくつかのそのような反応を、各々異なるタグを用いて行った。第1のプライマーは、49塩基長だった。これらの塩基のうちの20個は、5’−フランキング配列と同一だった。これらの20塩基は、54℃のTmを有し、プライマー全体の全体としてのTmは、70℃だった。3’−フランキング配列に相補的な第2のプライマーは、全体で約70℃のTmを有する57ヌクレオチドだった。第2のプライマーの最初の19ヌクレオチドは、3’−フランキング領域にまさに相補的であり、54℃のTmを有した。
【0251】
8つの別個のPCR反応を行ったところ、相違を識別できた。得られたアンプリコンを、ゲル精製または標準的なカラムに基づく精製(Qiagen QIAQuickスピンカラム)を使用して浄化した。次いで、NPPFおよび実験用タグを含むアンプリコンを、Illuminaプラットフォームを使用して配列決定した。配列決定された各アンプリコンを、実験タグ配列(各タグは、7つのNPPFのうちの1つの反復プールを代表するものだった)に基づいて選別した。各実験タグ群の中で、7つのタグの各々に対して識別されたアンプリコンの数を数えた。
【0252】
1億2800万個のアンプリコンを配列決定し、そのうち1億1000万個(87%)が、完全に配列決定された実験タグをもたらした。それらのアンプリコンを、Bowtieを使用して、予想される配列と比較したところ、約80%の完全一致(prefect−match)配列が得られた。これは、Illuminaシステムにとって、その公開されているエラーおよび品質規格に基づくと良好な完全一致配列のパーセンテージである。
図5は、PCRの前にプールされたNPPFの元の比に対応する7つのユニークなNPPFの各々に対して検出されたアンプリコンの数を示している。それらのプローブ(その各々が、増幅中に付加された異なる実験用タグを有した)を8つの別個の実験において測定した。これらはすべて、配列分析装置の単一チャネルにプールされ、配列決定された。エラーバーは、その8つの実験の再現性(1SD)を示している。
【0253】
図5に示されたデータの再プロットである
図6は、各プローブに対する8つの個別の実験結果、平均値(エラーバーなし,同じ平均値が、
図5ではエラーバーを伴って示された)および期待値(サンプルに添加されたNPPFの量に基づく)を示している。7つのNPPFの各々に対して観察された比は、期待される比(PCR反応に加えられたNPPFの元の量に基づく)と一致した。
【0254】
実施例2
複数のNPPFの同時検出
この実施例では、NPPFを作製し、アレイを用いて検出するために使用される方法および行われた増幅の程度の定量を説明する。
【0255】
3つの異なるNPPFを作製した(1つは、ヒトBAX遺伝子に相補的な配列を含み、1つは、EML4−ALK融合遺伝子に相補的な配列を含み、1つは、EML4に相補的な配列を含む)。したがって、各NPPFは、特定の標的核酸分子に特異的な領域、ならびに両端にフランキング配列を含んだ。各NPPFの5’末端は、ビオチン標識を有した。それらのNPPFは、63℃〜65℃のTmを有する25ヌクレオチドだった。5’−フランキング配列と3’−フランキング配列とは異なっていたが、それらは、7つの異なるNPPFの各々に対して同じだった。5’−フランキング配列は、61℃のTmを有する25ヌクレオチドであり、3’−フランキング配列は、63℃のTmを有する25ヌクレオチドだった。
【0256】
1つの実験において、未増幅のNPPFを、qNPAに従ってアレイにハイブリダイズした。そのアレイは、二機能性リンカーに結合したアンカープローブを含んだ。その二機能性リンカーの一方の半分は、そのアンカーに相補的であり、他方の半分は、NPPFの遺伝子特異的部分に相補的である。したがって、そのリンカーは、アンカーとNPPFとの間に架橋を形成する。3つの異なるNPPFを、既知の比でプールし、目的の標的配列を含む合成RNAにハイブリダイズさせ、加えて、NPPF上のフランキング領域に相補的なCFSにハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしなかったRNA、NPPFおよびCFSのS1媒介性消化の後、その反応物を分割した。1つの画分を、NPPFが適切な二機能性リンカーに結合するのを可能にする条件下でアレイとインキュベートした。NPPFとアレイとの結合を、蛍光ストレプトアビジン(streptavadin)−フィコエリトリンを使用して、NPPF上に存在するビオチン標識によって検出した。
【0257】
別の実験において、プールされた反応物の別の画分を、アレイへのハイブリダイゼーションの前にPCR増幅し、その産物を、アレイへのハイブリダイゼーションの前に1:10または1:100希釈した。PCR増幅のために、NPPFを含む反応物をPCRプライマーとインキュベートした。1つのプライマーは、5’−フランキング配列と同一の配列を含み(かつビオチン標識を含み)、第2のプライマーは、3’−フランキング配列に相補的な配列を含んだ。5’−フランキング配列に相補的な第1のプライマーは、22ヌクレオチドであり、59℃のTmを有し、3’−フランキング配列に相補的な第2のプライマーは、22ヌクレオチドであり、56℃のTmを有した。同じフランキング配列を有する(が異なる標的特異的領域を有する)NPPFを使用する利点は、それらのフランキング配列が、普遍的なPCRプライマーの使用を可能にして、複数の異なるNPPF配列を増幅するために、ただ1つの5’−プライマー配列およびただ1つの3’−プライマー配列が必要であるだけである点である。次いで、NPPFアンプリコンを、1:10または1:100希釈し、上に記載されたようにアレイにハイブリダイズさせ、検出した。
【0258】
図7に示されるように、ハイブリダイゼーション捕捉の前にPCR増幅を使用することにより、感度が少なくとも150倍高まる(PCR工程の後のアンプリコンの希釈を考慮して)。
【0259】
実施例3
mRNAまたはmiRNAを測定するようにデザインされた複数のNPPFの同時配列決定
この実施例では、NPPFを作製するためおよび配列決定するために使用される方法を説明する。
【0260】
2つのNPPFセットを作製した。第1のセットでは、46個の異なるNPPFを作製した。各NPPFは、56℃というTm中央値を有する25ヌクレオチド長の特定の標的核酸分子に特異的な領域、ならびに両端にフランキング配列を含んだ。第2のセットについては、13個の異なるNPPFを作製した。各NPPFは、51℃というTm中央値を有する18〜25ヌクレオチド長の特定のmiRNA標的核酸分子に特異的な領域、ならびに両端にフランキング配列を含んだ。
【0261】
標的に関係なく、すべてのNPPFについて、5’−フランキング配列と3’−フランキング配列とは異なっていたが、それらは、異なるNPPFの各々に対して同じだった。5’−フランキング配列(5’−AGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATC3’;配列番号17)は、61℃のTmを有する25ヌクレオチドであり、3’−フランキング配列(5’GATCGTCGGACTGTAGAACTCTGAA3’;配列番号18)は、63℃のTmを有する25ヌクレオチドだった。
【0262】
これらのNPPFをプローブとして使用して、2つの細胞株由来の溶解産物において異なる濃度でqNPAを行った。
図10は、qNPA反応、投入材料として使用されたサンプル、および配列決定の前に付加された実験タグを示している。各細胞濃度について3つ組で反応を行った。いくつかの実験タグは、配列分析装置のソフトウェアによって認識されず、ゆえに、それらの実験タグでタグ化された反応物は、この解析において考慮されなかった。種々のNPPFをプールし、細胞溶解産物のRNA、ならびにNPPF上のフランキング領域に相補的なCFSにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションを、セット1の46個のNPPFに対しては50℃において行ったが、セット2の13個のNPPFに対しては37℃で行った。温度の差異は、より短い長さのmiRNA NPPFおよびそれに対応するより低いTmを考慮するものである。
【0263】
ハイブリダイズしていないRNA、NPPFおよびCFSのS1媒介性消化の後、1M Tris pH9.0を加えることによってその反応物を中和し、20分間95℃に加熱することによってS1ヌクレアーゼを不活性化した。次いで、得られた各反応物(サンプル中の元の転写物の代表としてNPPFを含む)をPCRプライマーとインキュベートした。1つのプライマーは、5’−フランキング配列に相補的な配列を含み、第2のプライマーは、3’−フランキング配列に相補的な配列を含んだ。第2のプライマーは、得られたアンプリコンに6ヌクレオチドの実験タグを組み込むことを可能にする配列も含み、その結果、このプライマーを使用して増幅される各NPPFは、同じ6ヌクレオチドの実験タグを有した。
【0264】
第1のプライマー(5’−AATGATACGGCGACCACCGACAGGTTCAGAGTTCTACAGTCCGACGATC3’;配列番号19)は、49塩基長だった。これらの塩基のうちの20個が、5’−フランキング配列と同一だった。これらの20塩基は、54℃のTmを有し、プライマー全体の全体としてのTmは、70℃だった。3’−フランキング配列に相補的な第2のプライマー(5’−CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATnnnnnnGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTT3’;配列番号20)は、全体で約70℃のTmを有する57ヌクレオチドだった。第2のプライマーの最初の19ヌクレオチドは、3’−フランキング領域にまさに相補的であり、54℃のTmを有した。上記の「nnnnnn」で記された6塩基は、以下の表2における24個の配列のうちの1つだった。得られた配列を右欄に示し、その配列番号を括弧内に示す。
【0265】
【表2-2】
各3つ組の反応物を、別個のPCR反応において増幅し、それらは、別個の実験用タグを有したことから、相違を識別することができた(
図10を参照のこと)。得られたアンプリコンを、ゲル精製または標準的なカラムに基づく精製(Qiagen QIAQuickスピンカラム)を使用して浄化した。次いで、NPPFおよび実験用タグを含むアンプリコンを、Illuminaプラットフォームを使用して配列決定した。実験用タグは、いくつかの箇所に配置され得るが、この実施例では、そのタグは、インデックスリード(index−read)配列決定プライマーに相補的な領域のすぐ下流のアンプリコンの3’末端に配置された。したがって、Illumina配列決定を2つの工程において行った(その配列の最初の読み取りに続く、第2の配列決定プライマーを使用した実験用タグの第2の読み取り)。この様式において2つの配列決定プライマーを使用することは、Illuminaプラットフォームにおいてサンプルを多重化するための1つの標準的な方法である。
【0266】
配列決定された各アンプリコンを、第1に実験タグ(バーコード)に基づいて選別し、次いで、各実験タグ群の中で、種々のタグの各々に対して識別されたアンプリコンの数を数えた。それらのアンプリコンを、Bowtieを使用して、予想される配列と比較した。
【0267】
図11は、46個のmRNA NPPFを使用した、THP1細胞に対する3つ組のqNPA反応の結果を示している。優れた再現性が反復間に観察され、CVは低い。このグラフは、PCRの前にプールされたNPPFの元の比に対応する46個のユニークなNPPFの各々に対して検出されたアンプリコンの数を表している。エラーバーは、平均値からの1標準偏差を表している。これらのプローブは、3つの別個の実験において測定され、その実験の各々は、異なる実験用タグを増幅中に付加させた。これらをすべて配列分析装置の単一チャネルにプールし、配列決定した。エラーバーは、3つの実験の再現性(1SD)を示している。
【0268】
図12Aおよび12Bは、4点THP1細胞滴定において行われた反応からの46個のmRNA NPPFのうちの12個について得られたプロット数を示している。示されているデータは、最低(A)および最高(B)の存在量のNPPFを表しており、配列決定を用いて入手可能な大きな検出範囲を証明している。そのデータは、高存在量と低存在量の両方のプローブに対するqNPS反応の線形性も証明している(サンプル中の対応するRNAの高発現および低発現を表している)。
【0269】
図13は、3点HepG2細胞滴定(5,000個の細胞〜5,0000個の細胞)において行われた反応の13個のmiRNA NPPFのうちの5つに対する結果をプロットしている。これらの5つは、同様のレベルを有し、同じプロット上にはっきりと見ることができたので、これらを選択した。そのプロットは、miRNAが、開示される方法を使用して細胞溶解産物において検出可能であり、試験されたサンプルサイズに対して良好な線形性を示すことを証明している。
【0270】
実施例4
配列決定およびアレイ上へのNPPFの捕捉を使用してmRNAを測定するようにデザインされた複数のNPPFの検出
この実施例では、NPPFを作製し、配列決定するために使用される方法を説明する。
【0271】
9つの異なるNPPFを作製した。各NPPFは、57℃というTm中央値を有する25ヌクレオチド長の特定の標的核酸分子に特異的な領域、ならびに両端にフランキング配列を含んだ。5’−フランキング配列と3’−フランキング配列とは異なっていたが、それらは、異なるNPPFの各々に対して同じだった。5’−フランキング配列(5’−AGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATC−3’;配列番号17)は、61℃のTmを有する25ヌクレオチドであり、3’−フランキング配列(5’GATCGTCGGACTGTAGAACTCTGAA−3’;配列番号18)は、63℃のTmを有する25ヌクレオチドだった。各NPPFの5’フランキング配列にビオチン標識を含めた。
【0272】
qNPA溶解緩衝液中の合成RNA(インビトロで転写されたRNA)の希釈物を含むサンプルにおいてqNPAを行った。各サンプル濃度について3つ組で反応を行った。種々のNPPFを、各々166pMでプールし、上に記載されたサンプル、ならびにNPPF上のフランキング領域に相補的なCFSにハイブリダイズさせた。CFSを、10倍のモル比で反応物に含めた(1.6nMの各CFS)。30μlという総反応体積において、50℃で少なくとも16時間、ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションの後、20μlのS1反応緩衝液をその反応物に加えた。この緩衝液は、100mM NaOAc pH5.0、250mM KCl、22.5nM ZnSO4および25UのS1ヌクレアーゼを含む。S1反応を、50℃において90分間進めた。ハイブリダイズしていないRNA、NPPFおよびCFSのS1媒介性消化の後、1.5μlの1M Tris pH9.0を加えることによって、その反応物を中和し、20分間95℃に加熱することによって、S1ヌクレアーゼを不活性化した。得られた各反応物は、サンプル中の元の転写物の代表としてNPPFを含んだ。この時点において、反応物を2つの部分に分割した。
【0273】
一方の部分の増幅されないNPPFを、qNPA後にアレイにハイブリダイズさせた。そのアレイは、二機能性リンカーに結合したアンカープローブを含んでいた。その二機能性リンカーの一方の半分は、そのアンカーに相補的であり、他方の半分は、NPPFの遺伝子特異的部分に相補的である。したがって、そのリンカーは、アンカーとNPPFとの間に架橋を形成する。その反応物をアレイハイブリダイゼーションに使用される条件に調整するために、上記反応からのNPPFに塩置換緩衝液を補充し(塩置換緩衝液は、3.225M NaCl;67.5mM EDTA pH8.0;3×SSC;500mM HEPES pH7.5である)、50℃で16時間、アレイとインキュベートした。NPPFとアレイとの結合を、蛍光ストレプトアビジン−フィコエリトリンを使用して、NPPF上に存在するビオチン標識によって検出した。
【0274】
上記反応物の他方の部分を、配列決定のために調製した。その反応物を、まずPCRプライマーとインキュベートした。1つのプライマーは、5’−フランキング配列に相補的な配列を含み、第2のプライマーは、3’−フランキング配列に相補的な配列を含んだ。第2のプライマーは、得られたアンプリコンに6ヌクレオチドの実験タグを組み込むことを可能にする配列も含み、その結果、このプライマーを使用して増幅される各NPPFは、同じ6ヌクレオチドの実験タグを有した。
【0275】
第1のプライマーは、49塩基長だった。これらの塩基のうちの20個が、5’−フランキング配列と同一だった。これらの20塩基は、54℃のTmを有し、プライマー全体の全体としてのTmは、70℃だった。3’−フランキング配列に相補的な第2のプライマーは、全体で約70℃のTmを有する57ヌクレオチドだった。第2のプライマーの最初の19ヌクレオチドは、3’−フランキング領域にまさに相補的であり、54℃の5Tmを有した。
【0276】
各3つ組の反応物を、別個のタグを用いて別個のPCR反応において増幅したところ、相違を識別できた。得られたアンプリコンを、ゲル精製または標準的なカラムに基づく精製(Qiagen QIAQuickスピンカラム)を使用して浄化した。次いで、NPPFおよび実験用タグを含むアンプリコンを、実施例3に記載されたように実験タグを配列決定する第2のインデックスリード法を使用するIlluminaプラットフォームを使用して配列決定した。
【0277】
PCR反応を、配列決定の結果に対するサイクル数の影響を測定するように設定した。簡潔には、各3つ組の反応物を3つの別個のPCR反応において増幅した(各反応では別個のタグを用いた)ところ、相違を識別できた。これらの3つのPCR反応を、10、12または15サイクルのPCRで行い、得られたアンプリコンを、ゲル精製または標準的なカラムに基づく精製(Qiagen QIAQuickスピンカラム)を使用して浄化した。次いで、NPPFおよび実験用タグを含むアンプリコンを、実施例3に記載されたように実験タグを配列決定する第2のインデックスリード法を使用するIlluminaプラットフォームを使用して配列決定した。
【0278】
配列決定された各アンプリコンを、第1に実験タグ(バーコード)に基づいて選別し、次いで、各実験タグ群の中で、種々のタグの各々に対して識別されたアンプリコンの数を数えた。それらのアンプリコンを、Bowtieを使用して、予想される配列と比較した。
【0279】
図14は、少ないPCRサイクル数(10、12および15)が、配列決定の結果に過度に影響しないことを示している。この棒グラフは、配列決定後に各NPPFに対して生成されたカウントを示している。サイクル数、および元のサンプル中の投入材料の量が示されている。異なるサイクルおよび投入レベルの比較を可能にするために、データを正規化した。これらのサイクルのいずれもが開示される方法とともに使用され得ることが明らかであるが、15PCRサイクルの後のサンプル中の材料の増加は、配列決定ライブラリーのその後の浄化をより容易にした。15を超えるサイクルでは、アンプリコンの所望のサイズよりも大きいおよび小さい偽産物が生成される。したがって、いくつかの例において、開示される方法は、10〜15PCRサイクル(例えば、10、11、12、13、14または15サイクル)を使用する。
【0280】
図15Aおよび15Bは、分割後の同じ3つ組のqNPA反応の結果を示している。アレイへのハイブリダイゼーションによって(
図15A)または配列決定されたNPPFを数えることによって(
図15B)、NPPFを検出した。示されているバーは、3つ組の平均であり、エラーバーは、平均値からの1標準偏差を表している。
【0281】
開示される本発明の原理が適用され得る多くの可能性のある実施形態に鑑みて、例証された実施形態は、本開示の単なる例であって、本開示の範囲を限定すると見なされるべきでないと認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項によって定義される。ゆえに、本発明者らは、これらの請求項の範囲および精神内に入るすべてを本発明者の発明と主張する。