(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
充填された液体を排出するための排出口が形成された先端部と、前記先端部と反対側の基端部と、前記先端部と前記基端部とに連続する側周部と、を有する円筒状のシリンジと、
前記先端部に装着され、前記側周部の外半径よりも大きな外半径を有する装着部材と、
下端部に底部と、前記底部の周囲に連続し、上方に向かって延びる周壁部と、を有する容器本体と、
前記周壁部の内側に係合して前記底部に対向すると共に、前記シリンジが上下方向に抜き差し可能な貫通孔を有し、前記シリンジを前記貫通孔に挿通させて保持するシリンジ保持部と、を備え、
前記貫通孔を形成する内周面は、上端部の半径が前記装着部材及び前記側周部の外半径よりも大きく、且つ、下端部の半径が上端部の半径よりも大きく形成されると共に、前記下端部から上方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ部を有し、
前記シリンジは、前記基端部にフランジ部を有し、
前記フランジ部の少なくとも一部の外半径は、前記貫通孔の前記上端部における半径よりも大きく、
前記シリンジが前記貫通孔の上方から挿入され、前記フランジ部が前記シリンジ保持部に係止されることにより、前記シリンジが前記シリンジ保持部に保持されており、
前記シリンジ保持部に保持されている前記シリンジに装着された前記装着部材は、前記テーパ部よりも下方に位置する
シリンジ収納容器。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液等が充填される前のシリンジの搬送あるいは保管には、複数のシリンジを直立の状態で保持することのできるシリンジ収納容器が広く使用されている。このようなシリンジ収納容器は、上面が開口されたボックス形状の容器本体と、複数のシリンジを直立の状態で保持できるシリンジ保持部とで構成される。容器本体の内側には、シリンジ保持部を支持するための棚状部分が設けられている。シリンジ保持部は、複数の貫通孔を有する板状部材で構成されており、シリンジを貫通孔に差し入れて、シリンジ端部に設けたフランジ部分を貫通孔に引っ掛けることで、シリンジがシリンジ保持部に保持される。このようなシリンジ収納容器を用いると、複数のシリンジを直立に、かつ、薬液の充填口を上向きにした状態で保持することができる。
【0003】
一般的に、シリンジの製造会社と薬液の製造会社が異なる場合には、シリンジの製造会社で製造されたシリンジ収納容器は、シリンジの製造会社から出荷されて、薬液の製造会社へ搬送される。そして、薬液の製造会社にて、薬液をシリンジへ充填する作業が行われる。上記のようなシリンジ収納容器を用いると、シリンジの製造会社においては、複数のシリンジを同時に保管、搬送することが可能となる。また、薬液の製造会社においては、複数のシリンジが保持されているシリンジ保持部を収納容器内から取り出して、そのままの状態で薬液の充填装置へセットすることができ、シリンジへの薬液の充填作業を効率よく行うことができる。
【0004】
上記のような収納容器として、特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載された医療用容器は、上面が開口したボックス状の容器本体と、容器本体内に設置される板状の保持具と、保持具に形成された円筒状の複数の保持部と、を備える。
【0005】
この医療用容器では、ノズルキャップが施された注射筒の収納時において、注射筒を保持部の筒孔に差し入れると、注射筒のフランジ部分が保持部に引っ掛かる。これによって、注射筒が保持具に保持されて容器本体に収納される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来から、シリンジ(注射筒)の先端とキャップ(ノズルキャップ)又は注射針を保持する針保持部材とをねじ結合するルアーロック式のシリンジが知られている。充填量が少量、例えば0.5ミリリットル(ml)で小径のルアーロック式のシリンジに装着されるキャップを、シリンジ本体の外径と等しい外径で形成した場合、キャップも小径となり、手でキャップを取り外し方向に回転させることが難しくなる。
【0008】
上記問題を解決するために、キャップの外径をシリンジ本体の外径よりも大きくすることが考えられる。
【0009】
しかし、特許文献1に記載の医療用容器で、シリンジ本体の外径よりも大きな外径のキャップが装着されたシリンジを収納すると、保持部の筒孔の直径とキャップの外径との差が小さくなる。
一般的な薬剤、特にワクチン等のタンパク製剤においては、医療用容器内のシリンジに充填した後、タンパク製剤の出荷判定後に包装ラインに移される。しかしながら、この製剤は、室温では保管できないため、出荷判定まで冷蔵保管庫に保管するのが一般的である。この際に、薬剤充填作業後のシリンジを包装ラインに効率良く流動させるため、また、効率良く冷蔵保管庫に収納するため、シリンジをロンド・トレイに一方向に整列させ、重ねて保管する。このロンド・トレイにシリンジを整列させるため、シリンジは保持具取り出し自動機によって垂直方向に高速で引き抜かれる。
このため、保持具に保持されているシリンジの中心軸線と、筒孔の中心軸線のずれ量が大きいと、シリンジを引き抜く際に、キャップが、貫通孔を区画する保持部の内周縁に引っ掛かる可能性がある。キャップが保持部に引っ掛かった後、シリンジを更に引き抜こうとすると、保持具がシリンジと共に上方に持ち上がってしまう可能性がある。
その後、保持具とキャップとが相対的に移動してキャップが保持部から離れて、保持具が落下すると、その振動によって、保持具に保持された他のシリンジが保持部の筒孔から抜け出るおそれがある。シリンジが保持部の筒孔から抜け出ると、充填された充填剤がシリンジの外に漏れたり、シリンジが傷付いたりするおそれがある。
【0010】
本発明は、このような状況を考慮してなされたものであり、シリンジ保持部を持ち上げることなく、シリンジを引き抜くことができるシリンジ収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明のシリンジ収納容器は、シリンジと、装着部材と、容器本体と、シリンジ保持部と、を備えている。
シリンジは、充填された液体を排出するための排出口が形成された先端部と、先端部と反対側の基端部と、先端部と基端部とに連続する側周部と、を有し、円筒状に形成されている。装着部材は、先端部に装着され、側周部の外半径よりも大きな外半径を有する。容器本体は、下端部に底部と、底部の周囲に連続し、上方に向かって延びる周壁部と、を有する。シリンジ保持部は、周壁部の内側に係合して底部に対向すると共に、シリンジが上下方向に
抜き差し可能な貫通孔を有し、シリンジを貫通孔に挿通させて保持する。また、貫通孔を形成する周面は、上端部の半径が装着部材
及び側周部の外半径よりも大きく、且つ、下端部の半径が上端部の半径よりも大きく形成されると共に、下端部から上方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ部を有する。
また、シリンジは、基端部にフランジ部を有し、フランジ部の少なくとも一部の外半径は、貫通孔の上端部における半径よりも大きい。また、シリンジが貫通孔の上方から挿入され、フランジ部がシリンジ保持部に係止されることにより、シリンジがシリンジ保持部に保持されており、シリンジ保持部に保持されているシリンジに装着された装着部材は、テーパ部よりも下方に位置する。
【0012】
上記構成のシリンジ収納容器では、シリンジ保持部の貫通孔を形成する周面が、テーパ部を有している。このテーパ部は、周面の下端部から上方に向かうにつれて径が小さくなるように形成されている。
このため、装着部材が装着され、シリンジ保持部に保持されているシリンジを貫通孔から引き抜く際に、シリンジの中心軸線と、貫通孔の中心軸線とのずれ量が大きければ、装着部材又は装着部材が装着されたシリンジの先端部はテーパ部に当接する。そして、装着部材又はシリンジの先端部は、テーパ部の傾斜に沿って上方へ摺動し、シリンジの中心軸線と貫通孔の中心軸線とのずれ量が小さくなる。したがって、装着部材又はシリンジの先端部がシリンジ保持部における貫通孔の周囲に引っ掛かることを防止することができる。このため、シリンジ保持部を持ち上げることなく、シリンジを引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシリンジ収納容器によれば、シリンジ保持部を持ち上げることなく、シリンジを引き抜くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のシリンジ収納容器の一実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0016】
[シリンジ収納容器の概略構成]
まず、本実施形態におけるシリンジ収納容器1の概略構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるシリンジ収納容器1の斜視図である。
【0017】
本実施形態のシリンジ収納容器1は、複数のシリンジ10を同時に搬送、保管する場合に用いられる。
図1に示すように、シリンジ収納容器1は、略四角箱状に形成された容器本体50と、容器本体50の内側に係合するシリンジ保持部40と、シリンジ保持部40に保持されたシリンジ10と、シリンジ10に装着されたキャップ30(
図2参照)から構成されている。シリンジ10は、先端部にキャップ30が装着された状態で、シリンジ保持部40に形成された貫通孔43に挿入されて、シリンジ保持部40に保持される。
【0018】
次に、本実施形態のシリンジ10とキャップ30について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2及び
図3は、本実施形態のキャップ30が装着されたシリンジ10を示す図である。
【0019】
[シリンジ]
本実施形態のシリンジ10は、
図2及ぶ
図3に示すように、略円筒状に形成され、先端部がキャップ30によって塞がれた状態で、筒孔に薬液などの液体が充填される。
【0020】
シリンジ10は、略円筒状に形成された側周部11と、側周部11の一端側に形成された排出部(先端部)12(
図3参照)と、排出部12と反対側すなわち側周部11の他端側に形成されたフランジ部(基端部)16と、を有している。
【0021】
側周部11は、排出部12及びフランジ部16と一体的に形成されている。すなわち、側周部11は、排出部12とフランジ部16とに連続している。側周部11の内部には、充填された薬液を貯留する液室15が形成されている。
【0022】
側周部11の外半径R1(
図2参照)は、用途や液室15に貯留する薬液の容量に応じて適宜設定可能である。例えば薬液の容量が0.5mlの場合は、側周部11の外半径R1を3.4〜4.1mmに設定することが好ましい。また、薬液の容量が1mlの場合は、側周部11の外半径R1を4.05〜4.7mmに設定することが好ましい。本実施形態では、液室15に貯留する薬液の容量を0.5mlにし、側周部11の外半径R1を3.5mmに設定した。
【0023】
図3に示すように、排出部12は、略円筒状に形成され、側周部11の一端部から側周部11の中心軸線と同軸に突出している。排出部12の外半径は、側周部11の外半径R1よりも小さい。排出部12は、先端に向かうにつれて外半径が連続的に小さくなるテーパ状に形成されている。排出部12の先端部には、薬液を排出するための排出口13が形成されている。また、排出部12の内部には、排出口13及び側周部11の液室15と連通して、液室15に貯留する薬液を排出口13から排出するための排出路14が形成されている。
【0024】
排出部12には、ルアーロック部20が設けられている。ルアーロック部20は、側周部11と同軸に配置された略円筒状の部材であり、中心軸線方向に沿って延びる筒部21と、筒部21の一端部から径方向内側に曲折して延びる嵌合部22と、を有している。
【0025】
筒部21の外半径は、側周部11の外半径R1よりも大きい。筒部21の内周面には、雌ねじ部23が一体的に形成されている。また、筒部21の他端部には、中心軸線方向に突出する複数の凸部24が中心軸線を中心とする周方向に所定の間隔を空けて形成されている。
【0026】
嵌合部22の略中央部には、嵌合孔25が形成されており、嵌合孔25に排出部12が挿入されて、嵌合部22が排出部12の基端側と嵌合することで、ルアーロック部20は、排出部12に取り付けられている。
【0027】
フランジ部16は、側周部11の他端部から径方向の外側に曲折して延び、背面視略楕円状に形成されている。フランジ部16の略中央部には、側周部11の液室15と連通する充填口17が形成されている。充填口17は、薬液の液室15への充填を容易にするために漏斗状に形成されている。フランジ部16の一部の外半径は、後述するシリンジ保持部40の貫通孔43を形成している保持筒部42の上端部における内半径よりも大きい。このため、シリンジ10をシリンジ10の排出部12側からシリンジ保持部40の貫通孔43に上方から挿入すると、フランジ部16はシリンジ保持部40の保持筒部42に係止され、シリンジ10はシリンジ保持部40に保持される。なお、フランジ部16の形状は、本実施形態の楕円状に限られず、例えば、円環状であってもよい。
【0028】
なお、シリンジ10の材質としては、本実施形態では、樹脂を用いるが、各種金属や各種ガラスを用いてもよい。また、ルアーロック部20を排出部12に一体的に形成してもよい。
【0029】
[キャップ]
キャップ30は、略円筒状に形成された樹脂製の部材であり、小径部31と、大径部32と、排出部挿通孔33を有している。
【0030】
小径部31は、キャップ30の一端側に設けられ、キャップ30の他端側に設けられた大径部32よりも外半径が小さい。小径部31と大径部32とは一体的に形成されている。小径部31の外周面には、シリンジ10のルアーロック部20に形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部34が形成されている。
【0031】
排出部挿通孔33は、キャップ30の内部に設けられ、キャップ30の中心軸線に沿って延び、一端側が小径部31の一端側に設けられた開口35に連通して開口し、他端側が閉じている。また、排出部挿通孔33の他端側には、略円柱状の弾性部材(例えばゴム)からなるパッキン36が嵌合している。パッキン36の略中央部には、中心軸線方向に突出するパッキン凸部37が形成されている。
【0032】
大径部32の一端部には、径方向内側に曲折して小径部31の他端側の外周縁まで延びる当接面38が形成されている。当接面38には、中心軸線方向に突出する複数のキャップ凸部39(
図2参照)が中心軸線を中心とする周方向に所定の間隔を空けて形成されている。
【0033】
大径部32の外周面には、中心軸線方向に沿って延びる複数の溝32aが所定の間隔で形成されている。この溝によって、使用者がキャップ30をシリンジ10から取り外す際の手指との間に生じる摩擦抵抗が大きくなるので、使用者はキャップ30を取り外し方向に容易に回転させることができる。
【0034】
大径部32の外半径R2は、シリンジ10のルアーロック部20や側周部11の外半径R1よりも大きい。一般的にキャップ、ロック、パッキンからなるシリンジは、滅菌方法、製品の輸送、振動、落下を考慮した薬剤の液密性を、有効期限内において担保しなければならない。この液密性を担保する方法として、キャップに緩み止めシールを貼付する方法の他に、キャップを相当量のトルクで締め付け、シリンジの排出部の先端部をパッキンに沈み込ませる方法がある。この方法を採用する場合、キャップ、ロック、パッキンの製造寸法公差を加味して、パッキンに排出部の先端部を0.5mm以上沈み込ませる必要がある。したがって、この液密性をユーザーが解除する場合、ユーザーがキャップを回転させて開栓するが、その際にも、相当量のトルクが必要である。キャップの大きさ(外径)が大きければ大きい程、トルクが発生しやすいため開栓しやすくなる。現在、市販されているキャップ、ロック、パッキンからなるシリンジにおけるキャップの大きさは、最も小さいもので、8.0mm程度必要である。
【0035】
後述するように、大径部32の外半径R2は、側周部11の外半径R1との差が1〜2mmとなるように設定することが好ましい。以下、大径部32の外半径R2と側周部11の外半径R1との差をシリンジ径差と称する。本実施形態では、大径部32の外半径R2を5mmに設定した。すなわち、本実施形態におけるシリンジ径差は、大径部32の外半径R2の5mmと側周部11の外半径R1の3.5mmの差である1.5mmとなる。
【0036】
排出部挿通孔33に排出部12を挿入し、キャップ30の小径部31をルアーロック部20における筒部21の筒孔に挿入し、キャップ30を取り付け方向に所定量回転させると、小径部31の雄ねじ部34と、ルアーロック部20の雌ねじ部23とが螺合する。また、キャップ凸部39は筒部21の凸部24に当接した後で筒部21の凸部24を乗り越え、キャップ30の当接面38が筒部21の凸部24の先端に当接する。これによって、キャップ30が、ルアーロック部20に結合してシリンジ10に装着される。
【0037】
また、シリンジ10の排出部12の先端部がパッキン36に沈み込み、パッキン凸部37が排出部12の排出口13を封止する。これによって、液室15に貯留された薬液が排出路14及び排出口13を介してシリンジ10の外側に漏れるのを防止する。
【0038】
なお、キャップ30が装着された後、筒部21の凸部24は、キャップ凸部39に当接することによって、キャップ30が取り外し方向に回転することを規制する。キャップ30に対して取り外し方向に所定の力以上の力が入力されてキャップ凸部39が筒部21の凸部24を乗り越えると、キャップ30は取り外し方向に回転可能、すなわち取り外し可能になる。
【0039】
[シリンジ保持部]
次に、シリンジ保持部40について、
図4を参照して説明する。
図4はシリンジ保持部40を示す図である。
【0040】
シリンジ保持部40は、樹脂製の部材であり、矩形平板状のベース板部41と、ベース板部41の上面から突出する複数の保持筒部42とを有している。保持筒部42の内部には、ベース板部41を貫通し、シリンジ10が挿通される貫通孔43が形成されている。
【0041】
貫通孔43を形成する保持筒部42の内周面(周面)44は、上端部の半径が大径部32の外半径R2よりも大きく、下端部の半径が上端部の半径よりも大きくなるように形成さている。また、内周面44は、下端部から保持筒部42の略中央部まで上方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ部45を有している。テーパ部45のテーパ形状は、線形テーパ、指数関数テーパ、逆放物線テーパなどがあげられ、特に好ましいのは線形テーパである。なお、保持筒部42の略中央部から保持筒部42の上端部までの内周面44は、径が一定になるように形成されている。
【0042】
テーパ部45の下端部の半径R3とテーパ部45の上端部の半径R4は、後述するように、これらの差(以下、テーパ距離Lと称する)がシリンジ径差以上になるように設定されるのが好ましい。本実施形態では、テーパ部45の下端部の半径R3を7.5mmに設定し、テーパ部45の上端部の半径R4を5.865mmに設定した。すなわち、本実施形態におけるテーパ距離Lは、シリンジ径差1.5mmよりも大きい1.635mmとなる。
【0043】
また、貫通孔43の中心軸線に対するテーパ部45の傾斜角度(以下、テーパ角度θと称する)は、後述するようにシリンジ径差が1mmの場合、テーパ距離Lが1mm以上4mm以下であれば、5度以上40度以下に設定することが好ましい。また、シリンジ径差が2mmの場合、テーパ距離Lが2mm以上4mm以下であれば、テーパ角度θは、5度以上30度以下が好ましい。本実施形態では、テーパ角度θを13.35度に設定した。
【0044】
複数の保持筒部42は、ベース板部41上に所定の間隔を空けて千鳥状に配置されている。これによって、隣り合う保持筒部42間の距離が略等しくなり、保持筒部42に挿通されて保持されたシリンジ10間の距離が等しくなる。このため、シリンジ収納容器1の搬送中における振動等によって、隣り合うシリンジ10が接触することを防止することができる。
【0045】
ベース板部41の対向する2辺には、それぞれ上面視略半円状に形成された切欠部46が形成されている。切欠部46に指などを挿入してシリンジ保持部40を引き上げることによって、後述するように容器本体50の内側に係合したシリンジ保持部40をシリンジ保持部40から容易に取り外すことができる。
【0046】
[容器本体]
次に、容器本体50について、
図5を参照して説明する。
図5は、
図1のシリンジ収納容器1のV−V線矢視断面図である。
【0047】
容器本体50は、略四角箱状に形成された樹脂製の部材である。容器本体50は、
図5に示すように、略矩形平板状の底部51と底部51の外周縁から上方へ曲折して延びる周壁部52と、を有している。また、容器本体50は、周壁部52の上端部に囲まれた開口部53と、周壁部52の上端部に連続し、上端部を囲むフランジ54を有している。周壁部52と底部51とで区画された容器本体50の内部空間は、シリンジ保持部40及びシリンジ10を収納する収納空間となる。
【0048】
周壁部52は、下周壁部55と、上周壁部56と、棚部57と、を有している。下周壁部55は、底部51の外周縁から上方へ、且つ、外側へ傾斜しながら延びる。棚部57は、下周壁部55の上端縁から、底部51に対して平行に、且つ、下周壁部55の外側へ曲折して延びる枠状に形成されている。上周壁部56は、棚部57の外周縁から上方へ曲折して延びる。
【0049】
フランジ54は、上周壁部56の上端縁から底部51に対して平行に、且つ、外側へ曲折して延びる枠状に形成されている。フランジ54には、シリンジ収納容器1に出荷時にシリンジ収納容器1を密封する図示しないフィルムが貼り付けられる。なお、フィルムとしては、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)やEOG(エチレンオキサイドガス)滅菌等の高温の蒸気やガスを用いた滅菌処理が可能な透湿・防水シートが用いられる。
【0050】
なお、シリンジ10、キャップ30、シリンジ保持部40及び容器本体50に用いられる樹脂は、高圧蒸気滅菌やEOG滅菌等の高温の蒸気やガスを用いた滅菌処理によって変性しないことが好ましい。上記樹脂として、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂、PET等の耐久性に優れた樹脂が挙げられる。また、シリンジ保持部40及び容器本体50は、容器本体50の内部の視認性を確保するために、実質的に透明あるいは半透明であることが好まく、このような材料としては、上記樹脂のうち、ポリカーボネートやポリスチレン、PETが挙げられる。
【0051】
次に、
図5を参照し、本実施形態のシリンジ収納容器1において、容器本体50内に配置したシリンジ保持部40にキャップ30を装着したシリンジ10を保持させた状態を説明する。
図5は、
図1のシリンジ収納容器1のV−V線矢視断面図である。
【0052】
図5に示すように、シリンジ保持部40は上方から容器本体50内に収容され、シリンジ保持部40のベース板部41における外周縁部の下面が棚部57の上面と当接している。すなわち、シリンジ保持部40は棚部57に載置されることで容器本体50の内側に係合している。棚部57は、シリンジ保持部40が容器本体50内の下方へ下降することを規制する。
また、シリンジ保持部40のベース板部41が容器本体50の底部51と対向している。
【0053】
シリンジ保持部40の貫通孔43には、キャップ30が装着されたシリンジ10が挿通している。保持筒部42の上端部がシリンジ10のフランジ部16を係止してシリンジ保持部40がシリンジ10を保持している。
【0054】
次に、本実施形態のシリンジ収納容器1におけるテーパ角度θ、シリンジ径差、テーパ距離Lの値を変化させた場合のシリンジ保持部40に対するシリンジ10の引っ掛かりを調べた実験について説明する。本実験では、異なるテーパ角度θ、シリンジ径差及びテーパ距離Lの組み合わせに対応するシリンジ収納容器1を用意し、各シリンジ収納容器1のシリンジ10を引き抜いたとき、シリンジ保持部40が持ち上がるか否かを確認した。
【0055】
具体的には、この実験では、シリンジ径差が1mm、2mm、3mmの3タイプのキャップ30を用いた。また、テーパ距離Lを1mm、2mm、3mm、4mmに設定し、テーパ部45のテーパ角度θを5度、10度、30度、40度、50度に設定した20タイプのシリンジ保持部40を用いた。
【0056】
また、この実験では、治具(図示省略)に固定した各シリンジ保持部40の貫通孔43に各キャップ30を装着させたシリンジ10を一本挿通させ、且つ、このシリンジ10と貫通孔43の中心軸線のずれ量を大きく設定した。これによって、このシリンジ10を上方に引き上げる際にシリンジ10のルアーロック部20又はキャップ30がシリンジ保持部40における内周面44のテーパ部45に当接するようにした。
【0057】
そして、この実験では、シリンジ保持部40に挿通させたシリンジ10をロボットアーム(図示省略)で上方に引き上げ、シリンジ保持部40がシリンジ10又はキャップ30に引っ掛かって持ち上がるか否かを確認した。ロボットアームによるシリンジ10の引き上げ速度は、500mm/分に設定した。また、各キャップ30と各シリンジ保持部40の組み合わせにつき、実験を3回行った。
実験の結果を表1に示す。
【0059】
表1では、各キャップ30と各シリンジ保持部40の組み合わせに係る実験において、1回でもシリンジ保持部40が持ち上がった場合を「×」、1回も持ち上がらなかった場合を「○」で示している。
【0060】
実験の結果から、シリンジ径差は、1〜2mmが好ましいことが判った。また、テーパ距離Lがシリンジ径差以上であることが好ましいことが分かった。また、シリンジ径差が1mmの場合、テーパ距離Lが1mm以上4mm以下であれば、テーパ角度θは5度以上40度以下が好ましいことが判った。また、シリンジ径差が2mmの場合、テーパ距離Lが2mm以上4mm以下であれば、テーパ角度θは5度以上30度以下が好ましいことが判った。
【0061】
本実施形態のシリンジ収納容器1では、貫通孔43を形成する保持筒部42の内周面44が、下端部から保持筒部42の略中央部まで上方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ部45を有している。
このため、キャップ30が装着され、シリンジ保持部40に保持されているシリンジ10を貫通孔43から引き抜く際に、シリンジ10の中心軸線と貫通孔43の中心軸線とのずれ量が大きければ、ルアーロック部20又はキャップ30はテーパ部45に当接する。そして、ルアーロック部20又はキャップ30は、テーパ部45に当接後、テーパ部45の傾斜に沿って上方へ摺動し、シリンジ10の中心軸線と貫通孔の中心軸線とのずれ量が小さくなる。したがって、ルアーロック部20又はキャップ30がシリンジ保持部40における貫通孔43の周囲に引っ掛かることを防止することができる。このため、シリンジ保持部40を持ち上げることなく、シリンジ10を引き抜くことができる。
【0062】
また、キャップ30の大径部32の外半径R2がシリンジ10の側周部11の外半径R1よりも大きいので、充填量が少量、例えば0.5mlや1mlで小径のシリンジ10を用いても、使用者はキャップ30をシリンジ10から容易に取り外すことができる。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した上記実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により限定されることはない。
本実施形態では、装着部材としてキャップ30を用いた態様を説明したが、装着部材はシリンジ10の先端部に装着される他の部材であってもよい。例えば、注射針を保持する注射針保持部であってもよい。
【0064】
また、本実施形態では、保持筒部42がベース板部41の上面から上方へ突出する態様を説明したが、保持筒部42をベース板部41の上下方向に突出するように形成してもよい。
また、保持筒部42をベース板部41の下面から下方へ突出するように形成してもよい。この場合、シリンジ10のフランジ部16は保持筒部42の上端部及びベース板部41の上面に係止される。
【0065】
また、ベース板部41を肉厚に形成し、ベース板部41自体にテーパ部45を有する貫通孔43を形成してもよい。この場合、保持筒部42は省略され、シリンジ10のフランジ部16はベース板部41の上面に係止される。
すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。