(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のアモルファス鉄心を用いたリアクトル装置の原理を説明するための構成を示す斜視図である。
【
図2A】本発明のアモルファス鉄心を用いたリアクトル装置の全体斜視図を示す。
【
図2B】
図2Aの底部から視たリアクトル装置の全体斜視図を示す。
【
図2C】本発明の零相鉄心、磁脚鉄心及びコイルを装着したときの斜視図を示す。
【
図2D】
図2Aのリアクトル装置の内部縦断面図を示す図である。
【
図2E】本発明の零相鉄心、磁脚鉄心及びコイルを実装したときのリアクトル装置の斜視図を示す。
【
図3】ヨーク鉄心、磁脚鉄心及び零相鉄心の外観斜視図を示す。
【
図4】下締め金具に積層板及びヨーク鉄心を装着する工程の斜視図を示す。
【
図5】下締め金具に配置したスタッドに零相鉄心を装着する零相鉄心受けを実装する工程の斜視図を示す。
【
図6】磁脚鉄心を積み上げ、装着する工程の斜視図を示す。
【
図7】磁脚鉄心にコイルを差し込んで装着する工程の斜視図を示す。
【
図8】3脚の磁脚鉄心にそれぞれコイルを装着する斜視図を示す。
【
図10】3脚のコイルを固定する工程の斜視図を示す。
【
図11】積層板及びヨーク鉄心を装着し、上締め金具で覆う工程の斜視図を示す。
【
図12】リアクトル装置を吊るすアイナットを装着する工程の斜視図を示す。
【
図13】実施例3のヨーク鉄心、磁脚鉄心及び零相鉄心の外観斜視図を示す。
【
図14】下締め金具に積層板及びヨーク鉄心を装着する工程の斜視図を示す。
【
図15】下締め金具に零相鉄心を装着する工程の斜視図を示す。
【
図16】中央スタッドの周囲にコイル支え金具を配置する工程の斜視図を示す。
【
図17】丸形磁脚鉄心を積み上げ、装着する工程の斜視図を示す。
【
図18】磁脚鉄心にコイルを差し込む工程の斜視図を示す。
【
図19】3脚の磁脚鉄心にそれぞれコイルを装着した状態の斜視図を示す。
【
図20】3脚のコイルに上部を固定するコイル支え金具を装着する工程を示す斜視図を示す。
【
図21】積層板及びヨーク鉄心の上方より上締め金具で覆う工程の斜視図を示す。
【
図22】リアクトル装置を吊るすアイナットを装着する工程の斜視図を示す。
【
図23】リアクトル装置のベースにキャスタを取り付け、完成した状態の斜視図を示す。
【
図24】実施例4のコイル端子をリアクトル装置の内側から引き出した構成の斜視図を示す。
【
図25】上下締め金具と積層板の間に吸音材を配置した構成の斜視図を示す。
【
図26A】下締め金具に下側のヨーク鉄心を装着する構成の斜視図を示す。
【
図26B】下締め金具の中央にコイル支え金具及び絶縁物を配置する構成の斜視図を示す。
【
図26C】(a)は円柱形の磁脚鉄心を組み立てる斜視図を示し、(b)は円柱形の磁脚鉄心とヨーク鉄心の配置の関係を示す図である。
【
図26D】積み重ねた円柱形の磁脚鉄心にコイルを差し込むコイル装着を示す斜視図である。
【
図26E】3脚の磁脚鉄心にそれぞれコイル101を差し込んで装着した構成及びコイル支え金具でコイルを固定した構成の斜視図を示す。
【
図26F】コイルの上部に上側のヨーク鉄心を装着する斜視図を示す。
【
図26G】全ての部品を装着した断面が丸形の磁脚鉄心を搭載したリアクトル装置の上面図を示す。
【
図26H】全ての部品を装着した断面が丸形の磁脚鉄心を搭載したリアクトル装置の正面図を示す。
【
図26I】全ての部品を装着した断面が丸形の磁脚鉄心を搭載したリアクトル装置の外観斜視図を示す。
【
図27】断面が丸形の磁脚鉄心を4段積み上げた状態に絶縁物の筒状体を組み込んだ磁脚鉄心の構成の斜視図を示す。
【
図28】本発明の実施例8を示すヨーク鉄心の斜視図である。
【
図29A】本発明の実施例9を示す、下側のヨーク鉄心を下締め金具に装着する斜視図を示す。
【
図29B】(a)は磁脚鉄心を装着する工程の外観斜視図を示し、(b)は(a)の上面図を示す。
【
図29C】(a)はコイルを装着する外観斜視図を示し、(b)はコイルの断面図を示す。
【
図29D】
図29C(a)の1脚の磁脚鉄心及びコイルの装着を繰り返して、3脚の磁脚鉄心及びコイルを装着した外観斜視図を示す。
【
図29E】3脚のコイルの上側にヨーク鉄心を載置し、上締め金具で固定する外観斜視図を示す。
【
図29F】全ての部品を装着した、断面が扇形の磁脚鉄心を搭載したリアクトル装置の外観斜視図を示す。
【
図30】(a)はコイル固定金具を装着した場合の平面図を示し、(b)はコイル固定金具の外観図を示す。
【
図31】本発明の実施例11のコイル固定方法を示す斜視図である。
【
図32A】本発明の実施例12の上締め金具の中央に通気孔を配置した斜視図を示す。
【
図32B】リアクトル装置の縦断面図で、空気の流れを示す図である。
【
図32C】リアクトル装置のコイル部分の横断面図で、空気の流れを示す図である。
【
図33】リアクトル装置の上締め金具の中央にファンを配置したリアクトル装置の斜視図を示す。
【
図34A】磁脚鉄心、コイル及びヨーク鉄心の配置位置を示す平面図を示す。
【
図34B】扇形状の磁脚鉄心とヨーク鉄心の位置関係を示す図である。
【
図34C】磁脚鉄心とヨーク鉄心のオーバラップの状態を示す図である。
【
図34D】磁脚鉄心とコイルと下締め金具または上締め金具との配置関係、及び正三角形の鉄心位置合わせ積層板の配置を示す図である。
【
図35A】磁脚鉄心、コイル及びヨーク鉄心の寸法設定についてのフローチャート示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
本発明のリアクトル装置の基本的な構造について
図1を用いて説明する。
図1は、リアクトル装置の基本的な構造を示す斜視図で、
図1において、160、161はヨーク鉄心、140は磁脚鉄心、100はコイル、60は零相鉄心である。ヨーク鉄心160、161は、アモルファス薄帯をトロイダル状(円環状)に巻いて形成し、中空を有する円形の厚みを備えた形状である。
【0010】
磁脚鉄心140は、扇型形状をしている。ここでいう扇型形状には、アモルファス薄帯をトロイダル状に巻いて、軸方向に切断し、扇型形状に形成し、その扇形形状のブロックを複数個積み上げて構成するものや、実施例13(
図34B、
図34C参照)に記載のような、多角形の形状のものが含まれる。この扇型形状の特徴に関しては、実施例9や実施例13にて詳述する。以下、本実施例では、前者のようにアモルファス薄帯をトロイダル状に巻いて、軸方向に切断し、扇型形状に形成し、その扇形形状のブロックを複数個積み上げて構成したものを想定して説明する。このような扇型形状の磁脚鉄心とした場合には、内側と外側がヨーク鉄心同様円形上になっているためヨーク鉄心と重ねた際、ヨーク鉄心と脚部鉄心で重なっていない部分を最小にすることができ、鉄損や質量の無駄な増大を防ぐことができる。
【0011】
また、磁脚鉄心140の周囲は、コイル100を巻回して構成する。ヨーク鉄心160、161は、リアクトル装置の上下端に対向して配置され、磁脚鉄心140及びコイル100は、ヨーク鉄心160と161の間に3個配置され、上下のヨーク鉄心とを磁気的に接続する。
【0012】
磁脚鉄心140に巻回したコイル100を3個備える理由は、リアクトル装置が3相交流用の3相リアクトル装置として機能させるためである。また、磁脚鉄心140及びコイル100は、中空を有する円形形状のヨーク鉄心160、161の同心軸を基準として、ヨーク鉄心の円周上に互いに略120度の角度の位置関係で配置する。これは、電気的な対称性を確保するためである。
【0013】
また、リアクトル装置には、零相鉄心60を複数枚の矩形状のアモルファス薄帯を積層して直方体形状として、中空を有する円形形状のヨーク鉄心160、161の同心軸を基準として、磁脚鉄心60の位置からそれぞれ略60度の角度だけ回転させた円周上に配置(3個の零相鉄心60の相互間では略120度)し、磁脚鉄心140と同様にヨーク鉄心160と161とを磁気的に接続している。この零相鉄心60は、3個の磁脚鉄心140に巻回したコイル100に流れる三相交流電流の位相が理想状態からずれたときに発生する零相インピーダンスによる磁束を流す経路として設置している。以上が、本発明のリアクトル装置の基本的な構造の説明である。
【0014】
また、
図1において、トロイダル状に巻かれたヨーク鉄心160、161の内径をL1(300)とし、磁脚鉄心141に巻かれたコイル100の厚みL2(310)とし、L1>2*L2の関係にする。このような構成にすることにより、ヨーク内径L2(310)が小さいとリアクトル装置を小型化できるが、コイルの放熱効果が低くなるため、上記の関係にすると良い。
【0015】
次に、
図2A〜
図2Fにより、本発明のリアクトルの構成について説明する。
図2A〜
図2Fにおいて、10はリアクトル装置、20は上締め金具、30は下締め金具、40は内側のコイル端子、41は外側のコイル端子、50は
リアクトル本体を吊るすときの
アイナット、60は零相鉄心、70はスタッドの固定金具、80は零相鉄心支え金具、81は零相鉄心受け、90はリアクトル本体の外周に設けたスタッド、91はリアクトル本体の中央に設けたスタッド、100はコイル、120はコイル締め金具、130はベース、140は磁脚鉄心、150はコイル支え金具、152はコイル支え金具を止めるコイル止め具、160、161はヨーク鉄心である。
【0016】
先ず、本発明のリアクトル装置の内部構成について、
図2C及び
図2Dを用いて説明する。磁脚鉄心140は、中心軸側が狭い扇形状とし、この扇形状の磁脚鉄心140にコイル100を巻回し、下締め金具30の上側に積層板171を載置し、この積層板171の上に磁脚鉄心140及びコイル100を120度間隔で配置する。また、
図2Dに示すように磁脚鉄心140は所定の高さの鉄心を積み上げて形成し、磁脚鉄心の間には積層板を挿入している。そして磁脚鉄心140の全体の周囲にはコイル100を巻回する。
【0017】
また、磁脚鉄心140及びコイル100は、下側のトロイダル状に巻いたヨーク鉄心161と上側のトロイダル状に巻いたヨーク鉄心160とで挟まれて形成される。また、下側のヨーク鉄心161は下締め金具30のケースに納められて固定され、上側のヨーク鉄心160は上締め金具20のケースで覆って固定されている。また、零相鉄心60は、各コイルの間に円周上に120度の等間隔で配置されている。零相鉄心の構成は、矩形状のアモルファス薄帯を積層して直方体形状として、スタッド90に設置された零相鉄心支え金具80に接続された矩形状の零相鉄心受け81に差し込んで配置し、固定している。また、零相鉄心60は、磁脚鉄心140と同じように下側のヨーク鉄心161と上側のヨーク鉄心160とで挟まれて形成される。
【0018】
このように3個の磁脚鉄心140と零相鉄心60の高さを同じとし、ヨーク鉄心160、161とで挟む構成とすることによりそれぞれ磁路を形成している、組立においては、磁脚鉄心140とヨーク鉄心160、161との間隔はmm単位の精度で調整を必要とする。
【0019】
零相鉄心60を支持するスタッド90は、零相鉄心を配置するリアクトル本体10の外周に形成し、1本の軸部すべてにネジが切られている。中央のスタッド91も同様に、1本の軸部すべてにネジが切られている。また、スタッド90の上側は、上締め金具20と溶接などにより接続固定している矩形の金属板にスタッド用の孔を設けたスタッドの固定金具70とをロックナットで締めて固定し、スタッド90の下側は、下締め金具30と溶接などにより接続固定している矩形の金属板に、スタッド用の孔を設けたスタッドの固定金具71とをロックナットで締めて固定している。
【0020】
また、スタッド90には、零相鉄心60を受ける金属板の矩形の枠体の零相鉄心受け81と接続固定した矩形の金属板にスタッド用孔を有した零相鉄心支え金具80を2ヶ所配置し、この零相鉄心支え金具80の孔にスタッド90を貫通させ、所定の位置でロックナットにより締め付け固定している。また、中央に配置されたスタッド91は、上締め金具20と下締め金具30を締め付け、リアクトル本体10の外周に配置した3本のスタッド90も上締め金具20と下締め金具30を締め付けて固定している。また、中央のスタッド91の先端には、リアクトル本体10を吊るす時に使用するアイナット50を装着している。
【0021】
また、コイル100は、リアクトル本体10の中央部に設けた三角形状のコイル支え金具120に押し当てて外部よりコイル支え金具150で締め付けて固定している。コイル支え金具150は、細長い矩形の金属板で、2個のピースより形成している。また、下締め金具30の側面にボルトを溶接などにより固定し、そのボルトの上側の上締め金具20の側面にもボルトを固定する。そして、下側のピースは、細長い矩形の金属板の一端を階段状に折り曲げ、ボルトを貫通する孔を形成し、他端はボルトを溶接して固定し、下締め金具20のボルトにコイル支え金具150の孔を差し込んで配置する。また、上締め金具20のボルト及び下側のピースのボルトに、上側のピースである矩形の金属板の略中央部を階段状に折り曲げ、それぞれの面にボルトを貫通する孔を形成して差し込み、それぞれロックナットで締め付けて固定する。図においては、下締め金具30を2ピースにしているが、1枚の板材で形成して1ピースにしても良い。
【0022】
また、
図2Eにおいて、コイル100の巻始め及び巻終わりから上側にコイル端子40、41を引き出して、パワーコントローラシステムの電力回路に接続できるようにする。また、コイル100の表面は絶縁紙を巻いて保護する。
【0023】
図2Fは、
図2Eに示したリアクトルの中央の高さの上面断面図を示す。
図2Fにおいて、扇形状の磁脚鉄心140は、コイル100を巻回して、扇形状の磁脚鉄心140の外周が上締め金具20及び下締め金具30の外周と一致するように配置し、すなわち扇形状のコイルの外周部分は上締め金具及び下締め金具よりはみ出して配置し、配置する間隔は120度である。また、コイル100の外周側には、コイル端子を配置し、内側端子40と外側端子41は所定の距離離して配置する。また、磁脚鉄心140及びコイル100の中心側は、円弧状ではなく直線状とし、三角形状のコイル支え金具120に押し当てて精度良く位置決めして固定する。
図2Fにおいては、コイル100の中心側を直線状としているが、円弧状とし、コイル支え金具120も円弧状にすることも可能である。また、磁脚鉄心140及びコイル100は、コイル100の外周の端子横の両端をコイル締め金具で固定されている。さらに、零相鉄心60は、コイル100の間に配置し、零相鉄心間は120度の等間隔である。そして、零相鉄心60は、円形のリアクトルの中心線軸に対して、矩形の細長いアモルファスの金属板を積層して、平行となるように配置する。また、零相鉄心60の外周には、零相鉄心支え金具80を配置し、零相鉄心60を支持する。
【0024】
次に、
図2A、
図2Bにより本発明のリアクトル装置の外観について説明する。
図2Aは、リアクトル装置を上方斜め方向からみた外観図で、
図2Bは下方斜め方向からみた外観図を示す。
図2A及び
図2Bにおいて、コイル100はコイル支え金具150の上下を締めることにより、また上締め金具20及び下締め金具30を締めることにより固定される。零相鉄心60は、スタッド90に2ヶ所配置した零相鉄心支え金具80で支持し、固定する。また、このスタッド90には、上締め金具20に固定したスタッド固定金具70と、下締め金具30に固定したスタッド固定金具71とを取り付け、上締め金具20と下締め金具30とを締め付け、固定している。リアクトル10の底部には、U字形状のベース130を3ヶ所外周に等間隔に配置し固定している。
【0025】
(実施例2)
次に、本発明のリアクトル装置の製造方法について説明する。扇形状の磁脚鉄心140を用いた場合のリアクトル装置の製造方法を
図3〜
図12に示す。
図3において、
図3(a)は、リアクトル10の上下に配置し、磁脚鉄心140と零相鉄心60を挟むように構成するヨーク鉄心160、161の斜視図を示す。
図3(a)のヨーク鉄心は、同心円となっているが、実際はアモルファス薄帯をトロイダル状に巻いた中心が孔を有する円柱形状である。また、
図3(b)は、磁脚鉄心140の外観斜視図を示し、アモルファス薄帯をトロイダル状に巻いた鉄心を軸方向に切断して扇形状の鉄心としている。
図3(c)は、零相鉄心60の外観斜視図で、細長い矩形のアモルファス薄帯を積層して、直方体を形成したものである。
【0026】
次に、本発明のリアクトルの製造方法を組み立て工程の順番に図を用いて説明する。
図4は、下側のヨーク鉄心の組立を示す図である。
図4において、先ず、下締め金具30の底部にスタッド固定金具70を溶接などにより固定し、それにスタッド90を配置し、中央にもスタッド91を配置し、ロックナットにより締め付け固定する。次に、この状態で、中空の円盤状の積層板171を下締め金具30内に載置し、さらにその上に、ヨーク鉄心160を載置し、さらにヨーク鉄心160の上に積層板172を載置する。ヨーク鉄心160を載置した状態が
図4の右図である。
【0027】
次に、
図5を用いてコイル固定金具の取り付け工程について説明する。
図5の構成において、中央のスタッド91の周りにコイル100を押し当てて位置決めするコイル支え金具120を取り付ける。そして、リアクトル本体10の外周に配置された3本のスタッド90に、零相鉄心60を受ける金属の枠体の零相鉄心受け81と接続された零相鉄心支え金具80をそれぞれ2ヶ所取り付け、ロックナットにより締め付け固定する。次に、コイル100を固定するためのコイル締め金具120を6ヶ所下締め金具30の外周面に仮止めして取り付ける。
【0028】
次に、
図6を用いて、磁脚鉄心140の組立について説明する。
図6において、
図6(a)はリアクトル装置の外観斜視図を示し、
図6(b)はその側面図を示す。
図6(a)において、扇形状の磁脚鉄心140をヨーク鉄心160の上に載置し、次に磁脚鉄心140の上に積層板170を載置する。そして、積層板170の上に磁脚鉄心140を載置し、これを繰り返して、図においては5個の磁脚鉄心140を積み上げ、その磁脚鉄心140の間に積層板170を挟み形成する。また、ここで、リアクトルのインダクタンス値(L値)は、積層板170の厚さ、すなわち磁脚鉄心140と磁脚鉄心140の間隙(gap)を変化させることで可変とすることができるため、インダクタンス値(L値)を調整することができる。
【0029】
次に、コイルの組み込みについて
図7を用いて説明する。
図7において、
図7(a)はリアクトル装置の外観斜視図を示し、
図7(b)はその側面図を示す。
図7(a)、(b)において、コイル100は、磁脚鉄心140の扇形状と同じ扇形状をなし、コイル100の表面は絶縁物(絶縁紙)を取り付けた状態で、積層板170と交互に積み上げた磁脚鉄心140に上方より差し込む。そして、コイル支え金具150の位置を調整して固定する。また、コイル100とコイル支え金具120、コイル100と磁脚鉄心140の間隙には、絶縁紙を挿入してガタがないように調整する。
【0030】
次に、
図6に示した磁脚鉄心140を積む工程と、
図7に示した磁脚鉄心140にコイル100を差し込む工程を繰り返し、3脚分のコイル100と磁脚鉄心140とを組み込む工程を
図8に示す。
図8は、3脚の磁脚鉄心140にそれぞれコイル100を差し込む工程を示し、差し込んだ後ガタがないように間隙には絶縁紙を用いる。
【0031】
次に、零相鉄心60を装着する工程について、
図9を用いて説明する。
図9において、
図9(a)は零相鉄心60を装着する外観斜視図で、
図9(b)は正面図を示す。零相鉄心60は、絶縁物(絶縁紙)で覆い、金属枠で形成した零相鉄心受け81に上側より差し込んでヨーク鉄心160上に載置し固定する。また、零相鉄心受け81は、
図9(a)に示しているように零相鉄心支え金具80の反対側の辺を垂直方向に切り欠きを形成しているが、この切り欠きのない枠形状でも問題はない。
【0032】
また、零相鉄心60の装着において、ガタがないように取り付ける必要があり、ガタがある場合は絶縁紙などを用いてガタがないようにして構成する。さらに、零相鉄心60と磁脚鉄心140の高さを揃える必要があるため、揃っていない場合も絶縁紙を用いて、高さの調整を行うようにする。金属板はSUSなどの材質のものを用いる。また、零相鉄心60は、アモルファス薄帯を積層して矩形状に切断し、直方体を形成しているが、アモルファス薄帯でなく、珪素鋼板などの金属材料を用いることもできる。
【0033】
次に、コイル100の上側を固定する工程について、
図10を用いて説明する。
図10において、コイル100をコイル支え金具150で固定した状態で、上方より三角形状の絶縁物154をリアクトル装置10の中心部に差し込み、その上からコイル支え金具123を差し込む。絶縁物154は、3脚のコイル100間の絶縁距離を確保する目的で、絶縁破壊などが生じるのを防止する。そしてその構造は三角柱の筒体形状で、三角柱の稜線部にはそれぞれのコイル100の端部を覆う翼部を形成する。また、コイル支え金具123の構造は、三角柱の筒体形状とし、三角柱の稜線部にはコイルの端部を覆う翼部を形成し、三角柱の筒体上部は、中央にスタッド91が貫通する孔を設けた金属板で塞いだ構造とする。絶縁物154及びコイル支え金具123を差し込んで、組み立てた後スタッド91をロックナットにて締め付け固定する。
【0034】
次に、上側のヨーク鉄心を装着する工程について説明する。
図11は、上側のヨーク鉄心を装着している状態の外観斜視図を示す。
図11において、161は上側のヨーク鉄心、173、174は積層板、20は上締め金具、70は上側のスタッド固定金具である。また、
図11において、磁脚鉄心140とヨーク鉄心161との間には積層板173を配置し、ヨーク鉄心161をその積層板173の上に装着する。そして、ヨーク鉄心161の上面には積層板171を載置し、その上から上締め金具20で覆い、スタッド固定金具70に形成された孔がスタッド90に貫通するように、また、上締め金具20の中央の孔がスタッド91に貫通するように位置決めして組み込む。そして、積層板173、ヨーク鉄心161、積層板174、上締め金具20の順で、締め金具51をスタッド91に取り付ける。また、このときヨーク鉄心161の側面は、絶縁紙で覆い、取り付け時にガタがないようにする。
【0035】
次に、リアクトル本体10を吊るすアイナットの装着について説明する。
図12は、アイナット50を装着している状態と、組み込みが完了した状態のリアクトル10の外観斜視図を示す。
図12において、上締め金具20の中央の孔を貫通したスタッド91に、締め金具51により下締め金具30と上締め金具20に挟まれた磁脚鉄心140、零相鉄心60、及びヨーク鉄心161を締め付けて固定する。また、上締め金具20の側面に設置したボルトにコイル支え金具150を取り付け、ロックナットで締め付け固定する。その後、スタッド91の先端にアイナット50をねじ込み装着し、コイル100より引き出されたコイル端子40、41のライン線に絶縁チューブを挿入し、ライン線間を所定の長さ以上離す。 以上の構成により、リアクトル本体のU、V、W相のインダクタンス値(L値)を、LCRメータを用いて所定値であるか確認し、所定値と異なる場合は、
図6に示した磁脚鉄心の組み込み工程まで戻り、磁脚鉄心間の間隙(gap)を調整することになる。以上が、扇形状の磁脚鉄心を採用した場合のリアクトルの製造方法の説明である。
【0036】
(実施例3)
次に、本発明の第3の実施の形態のリアクトル
装置の製造方法について説明する。
図13は、本発明のリアクトルの用いる鉄心の斜視図を示し、
図13(a)はヨーク鉄心160、161、
図13(b)は丸形の磁脚鉄心、
図13(c)は零相鉄心を示す。
図13において、実施例2と異なるのは、磁脚鉄心が丸形で、中央にスリット
143を形成している点である。すなわち、アモルファス薄帯を巻いて円柱形を形成し、中心を通る線で切断して絶縁紙を挟み、接着してスリット143を形成する。また、
図13(a)に示したヨーク鉄心及び
図13(c)に示した零相鉄心は、実施例2と同じであるため、説明を省略する。
【0037】
次に、下側のヨーク鉄心の装着について、
図14を用いて説明する。
図14において、下側の下締め金具30の底部に固定したスタッド固定金具71の外周に、スタッド90を3本配置し、また、下締め金具30の中央にスタッド91を配置し、ロックナットにより締め付け固定する。次に、下締め金具30のケースに中空の円盤状の積層板170を載置し、その積層板170の上にヨーク鉄心160を載置し、さらに層の上に絶縁物(絶縁シート)172を載置する。積層板170は、エポキシ樹脂などの材質のシートである。また、下締め金具30のケースの高さは、積層板170、ヨーク鉄心160及び絶縁物172を積んだ高さと同じとする。
【0038】
次に、零相鉄心60の装着について、
図15を用いて説明する。
図15において、下締め金具30の外周に配置した3本のスタッド90には、零相鉄心支え金具80を各スタッド90に2ヶ所配置する。また、零相鉄心支え金具80は、直方体の零相鉄心60を受ける矩形の金属枠で形成された零相鉄心受け81と接続され、一体となっている。この金属枠の零相鉄心受け81に、零相鉄心60を上方より差し込んで、積層板172の絶縁シートの上に載置する。また、零相鉄心受け81の矩形の金属枠で、中心側の面には切欠きを形成して零相鉄心60を挿入し易くしている。
【0039】
次に、磁脚鉄心及びコイルの装着について、
図16を用いて説明する。
図16は、リアクトル装置10の中央にコイル支え金具及び絶縁物を配置する構成を示す図である。
図16において、125はコイル支え金具で、126は絶縁物である。コイル支え金具125の形状は、コイル101の円形形状に倣い円弧状とし、3個のコイル支え金具125は、中央のスタッド91の周囲で、かつ零相鉄心60の間に120度の等間隔で配置し、スタッド91に固定する。また、絶縁物126は、絶縁シートをコイル101の円形形状に倣い、円弧状とし、3個のコイル支え金具125の外側に配置し、各々の隣り合うコイル101同士の絶縁効果を向上させている。また、コイル支え金具125とコイル101の間隙にはシリコンゴムなどの絶縁物を挟む。
【0040】
次に、丸形の磁脚鉄心141を組み立てる方法について、
図17を用いて説明する。
図17において、
図17(a)は磁脚鉄心を組み立てる斜視図を示し、
図17(b)はヨーク鉄心160と磁脚鉄心141の配置の関係を示す図である。
図17(a)において、磁脚鉄心141は各々の零相鉄心60の間に配置し、ヨーク鉄心60上の絶縁物(絶縁シート)172の上に載置する。そして、磁脚鉄心141の上に積層板175を載置し、さらに層の上に磁脚鉄心141を載置し、これを繰り返して磁脚鉄心141を積み上げて組み立てる。図においては、5個の磁脚鉄心141を積み上げている。
【0041】
また、磁脚鉄心141とヨーク鉄心160との配置関係は、
図7(b)に示すように、磁脚鉄心141の直径の長さと、ヨーク鉄心160の内側の孔の半径とトーク鉄心160の半径との長さを等しくなるように形成し、円形の磁脚鉄心141を、ヨーク鉄心160の内側の孔に外接し、ヨーク鉄心160の外周円に内接するように形成する。また、磁脚鉄心141に形成したスリット143の線方向は、トロイダル状に巻いたヨーク鉄心160の巻方向と平行となるようにする。すなわちトロイダル状に巻くヨーク鉄心160の巻線の接線方向に、磁脚鉄心141のスリット143の線を配置する。このような構成にすることにより、渦電流損が低減できる効果を有する。また、このリアクトル装置10のインダクタンス値(L値)は、磁脚鉄心141の間に挟んだ積層板175の厚み、すなわち磁脚鉄心141間の間隙(Gap)を変えることで調整する。
【0042】
次に、積み上げた磁脚鉄心141にコイル101を差し込む方法について、
図18を用いて説明する。
図18においは、ヨーク鉄心160上に積み上げた円形の磁脚鉄心141にコイル101を上方から垂直に差し込む。また、コイル101の内径と磁脚鉄心141の外径との間隙には絶縁物を挿入し、ガタがないように調整する。また、コイル101の端子40、41において、内側のコイル端子40は、コイルの内周側から引き出し、外側のコイル端子41はコイル101の外周側より引き出し、外側のコイル端子41には階段状の折り曲げ(1段)を設け、内側のコイル端子40と離間距離を増加する。
【0043】
次に、3脚のコイル101を磁脚鉄心141に差し込んだ状態の斜視図を
図19に示す。
図19は、
図17に示す磁脚鉄心141を積み上げる工程と、
図18に示すコイル101を磁脚鉄心141に差し込む工程を繰り返して、磁脚鉄心141及びコイル101を固定した状態を示している。
図19において、3個の零相鉄心60とその間に配置した磁脚鉄心141の高さをほぼ同じとし揃える。
【0044】
次に、磁脚鉄心141及びコイル101を装着した状態において、上部よりコイル101を固定する方法について
図20を用いて説明する。
図20において、158は絶縁物で、127はコイル支え金具を示し、絶縁物158は、コイル101の円形形状に倣った円弧状とし、コイル101を覆うように形成し、隣り合うコイル間の絶縁距離を稼ぐ効果を有する。また、コイル支え金具127は、略三角形の金属板で、この三角形板の辺に垂直に、コイル101の円形形状に倣った円弧形状を有する金属板を接続する。そして、絶縁物158を装着した後、上方よりコイル支え金具127を差し込んで装着する。そして、コイル支え金具127の中心に形成された孔に、スタッド91を貫通させ、ロックナットで締め付け固定する。
【0045】
次に、上側のヨーク鉄心161の装着について、
図21を用いて説明する。
図21において、零相鉄心60、磁脚鉄心141及びコイル101を組み込んだ構成の上に、積層板173を載置し、その上にヨーク鉄心161を載置し、その上に積層板174を載置する。そして、この積層板173、ヨーク鉄心161及び積層板174を上締め金具20のケースで覆う。また、上締め金具20の上面の外周には、スタッド固定金具70を溶接などにより固定する。
【0046】
次に、リアクトル装置10の各鉄心及びコイルを締め付け固定する方法について、
図22を用いて説明する。
図22において、上締め金具20の外周に形成したスタッド固定金具70は矩形の金属板で、上締め金具20より突き出た部分に孔を形成し、この孔にスタッド90を貫通させ、3か所のスタッド90にロックナットで締め付け固定する。また、上締め金具20の中央には、孔を形成し、この孔にスタッド91を貫通させ、締め金具51を用いて下締め金具30とをロックナットで締め付け、リアクトル全体を固定する。そして、スタッド91の先端にはリアクトル本体を吊るすためのアイナット50を取付ける。また、コイル101は、上締め金具20の側面に配置したコイル押さえ200をコイル1脚に対して2ヶ所配置し、コイル端子40、41の両サイドを押さえるように構成している。210は銘板で、装置の品名、型式、製造番号、製造年月日及び製造者名などを表示している。
【0047】
次に、リアクトル装置10の底部のベース130にキャスタ201を設置した構成を
図23に示す。
図23において、下締め金具30の底部の円周に3ヶ所等間隔で配置したU字形状のベース130にキャスタ201を取り付け、リアクトル装置10の移動をスムーズにできるようにし、丸形の磁脚鉄心141を搭載したリアクトル装置の組み立て工程は完了する。
【0048】
(実施例4)
次に、本発明のリアクトル装置において、3脚のコイル端子をリアクトルの中央から引き出す構成について、
図24を用いて説明する。
図24は、扇形状の磁脚鉄心140の周囲にコイル100を差し込んで配置し、そのコイル100の間に零相鉄心60を配置した構成を示し、リアクトル装置の中央部からコイル端子220、221を上方に引き出した斜視図を示す。
図24において、3脚の磁脚鉄心140の周囲に配置しているコイル100の内側に、コイルの巻始め及び巻終わりにそれぞれ孔を有した板状のコイル端子220、221を接続する構成とする。また、図示していないが、ヨーク鉄心161の中央の孔は、コイル端子221と接触しないように絶縁を施す。さらに、上締め金具20の中央部は、コイル端子220、221が突き出るため孔を設ける構成とする。
【0049】
(実施例5)
次に、上下締め金具と積層板の間に吸音材400を配置する構成について、
図25を用いて説明する。
図25は、下締め金具30と積層板171の間に吸音材400を配置する斜視図を示す。
図25において、ヨーク鉄心160を積層板170及び積層板172で挟み、下側の積層板170と下締め金具30との間に吸音材400を配置し、音を吸収する。リアクトル装置で音の原因になるのは、パワーコントローラシステムにインバータを搭載しているため、電力に種々の周波数成分が発生し、磁脚鉄心やヨーク鉄心などが振動し音となって現れる。これらの音を吸収するために吸音材を用いる。吸音材としては、多孔質材料すなわち小さい孔をたくさん有した繊維状のグラスウールやスポンジ状のウレタンなどがあり、これらを用いる。
【0050】
また、
図25では、吸音材400を積層板170と下締め金具30の間に配置しているが、上下の積層板を含め、上下のヨーク鉄心、3個の磁脚鉄心及びコイル、3個の零相鉄心の全体を吸音材で覆う構成にしても良い。
【0051】
(実施例6)
次に、丸形の磁脚鉄心を用いて組み立てる方法について説明する。前記実施例3で説明した丸形の磁脚鉄心と異なる大きな点は、零相鉄心を装着していない点である。先ず、下側のヨーク鉄心の装着について、
図26Aを用いて説明する。
図26Aにおいて、円形のケースの下締め金具30の中心に1か所、外周に3ヶ所、下締め金具30の底面に垂直にスタッド90、91を配置する。また、外周に配置する3本のスタッド90は、120°間隔に配置し、固定したスタッド固定金具71の外周に配置し、中央のスタッド91は、下締め金具30の中央に配置し、ロックナットにより締め付け固定する。このような状態において、下締め金具30のケース内に、中空の円盤状のシリコーンゴムなどの積層板171を配置する。そして、その積層板171の上に中空のドーナツ形状のヨーク鉄心160を載置し、さらにその上に中空の絶縁物(絶縁シート)172を載置し、ヨーク鉄心160の上に載置する磁脚鉄心との絶縁を図る。積層板170は、シリコーンゴムやエポキシ樹脂などのシートを用いる。また、下締め金具30のケースの高さは、積層板171とヨーク鉄心160及び絶縁物172を積み重ねた高さとほぼ同じとしている。
【0052】
次に、磁脚鉄心及びコイルの装着について説明する。
図26Bは、下締め金具20の中央にコイル支え金具125及び絶縁物を配置する構成を示している。
図26Bにおいて、125はコイル支え金具で、表面を絶縁物で覆い、コイル間の絶縁を図る。コイル支え金具125の形状は、コイル101の形状に倣い、円弧状とし、3個のコイル支え金具125は、中央のスタッド91の周囲に120°の等間隔で配置し、スタッド91または積層板172に固定している。また、コイル支え金具125を覆う絶縁物は、コイル支え金具125の形状に倣い、円弧状とし、各々の隣り合うコイル101同士の絶縁効果を向上させる。絶縁物としては、シリコーンゴムなどを用いる。
【0053】
次に、断面が丸形の磁脚鉄心を組み立てる方法について、
図26Cを用いて説明する。
図26Cにおいて、
図26C(a)は円柱形の磁脚鉄心141を組み立てる斜視図を示し、
図26C(b)は円柱形の磁脚鉄心とヨーク鉄心の配置の関係を示す図である。
図26C(a)において、円柱形の磁脚鉄心141は、ヨーク鉄心160の上の絶縁シート172の上に載置する。また、円柱形の磁脚鉄心141は、4段積み重ねで、各々の磁脚鉄心141の間には積層板175を挿入して積み上げる。この構成を3ヶ所、120°間隔で、コイル支え金具125の対応する位置に配置する。
【0054】
また、
図26C(b)において、円柱形の磁脚鉄心141とヨーク鉄心160との配置関係は、磁脚鉄心141の直径の長さと、ヨーク鉄心160の内側の孔162の半径の長さとの和が、ヨーク鉄心の半径の長さと等しくなるように形成し、断面が円形の磁脚鉄心141をヨーク鉄心160の内側の孔162に外接させ、ヨーク鉄心160の外周内に内接するように形成する。また、円形の磁脚鉄心141に形成したスリット143のラインは、トロイダル状に巻いたヨーク鉄心160の巻き方向と平行となるように形成する。すなわち、トロイダル状に巻くヨーク鉄心160のコイルの接線方向に磁脚鉄心141のスリットのラインを配置する。このような構成にすることにより、渦電流損が低減できる効果を有する。また、リアクトル装置のインダクタンス値(L値)は、磁脚鉄心141の間に挟んだ積層板175の厚み、すなわち磁脚鉄心141間の間隙で決まり、この間隙を変えることでL値を調整できる。
【0055】
次に、積み重ねた円柱形の磁脚鉄心141にコイルを差し込むコイル装着方法について、
図26Dを用いて説明する。
図26Dにおいて、ヨーク鉄心160上に積み上げられた磁脚鉄心141に、コイル101を上方より垂直に絶縁板172に達するまで差し込んで固定する。また、コイル101の内周側と磁脚鉄心141の外周側との間隙には絶縁物を挿入し、ガタがないように調整する。コイル101の端子42、43において、内側の端子42はコイル101の内周側より引き出し、外側の端子43はコイルの外周側より引き出して形成する。また、端子がコイルから出た部分は段差を設けて、離間距離を稼ぐように形成している。また、磁脚鉄心141にコイルを差し込んで装着するとき、コイル101は、コイル支え金具125に当接するようにして位置決めする。このようにすることによりコイル101が120°の等間隔に精度良く配置される。
【0056】
次に、3脚のコイル101をそれぞれ丸形の磁脚鉄心141に装着し、コイル支え金具でコイルを固定する方法について説明する。
図26Eは、3脚の磁脚鉄心141にそれぞれコイル101を差し込んでコいる支持金具92の上に載置し装着した構成を示し、コイル支え金具125でコイルを固定した構成を右図に示す。3脚の丸形の磁脚鉄心141にコイル104を装着した状態で、中央部にコイル固定金具127を配置する。コイル固定金具127は、三角形状の金属板で形成し、中央に孔を設け、中央のスタッド91に挿入して配置する。そして、コイル支え金具127の裏側は、コイル支え金具125と同じようなコイル101の外形形状に倣った円弧状の部材を120°の等間隔で配置し、円弧状の部材には絶縁シートを覆い、コイル同士の絶縁性を高めている。
【0057】
次に、コイルの上部に、上側のヨーク鉄心を装着する方法について、
図26Fを用いて説明する。
図26Fにおいて、3脚の磁脚鉄心141及びコイル101を組み込んだ構成の上に積層板173を載置し、その上にヨーク鉄心161を載置し、さらにその上に積層板174を載置する。そして、積層板173、その上のヨーク鉄心161及び積層板174を上締め金具20のケースで覆う。上締め金具20の上面の外周には、矩形の金属板のスタッド固定金具70を、下側の下締め金具30に配置したスタッド固定金具71に対応した位置に3個配置し固定する。また、上締め金具20の上面の外周には、コイルを押さえ固定するコイル押さえ金具134の棒部分を受けるコイル押さえ金具受け132を配置し、配置している箇所はそれぞれの端子が配置されている両側で、全体で6ヶ所である。矩形の金属板のスタッド固定金具70には、上締め金具20の外周より突き出た部分に孔を形成し、この孔にスタッド90を貫通させ、スタッド90にロックナット93を用いて締め付けて固定する。
【0058】
また、コイル押さえ金具受け132も矩形の金属板で同じように上締め金具20の外周より突き出た部分に孔を設け、コイル押さえ金具134の棒部分を貫通するように構成し、ロックナット133により締め付けて固定している。また、上締め金具20の中央には、矩形の金属板で形成した締め金具51を配置し、締め金具51の中央には孔を配置し、スタッド91を貫通できるようにする。締め金具51は、スタッド91を挿通した後、ロックナット95で締め付けて固定する。このように、3本のスタッド90と中央のスタッド91で、下締め金具30と上締め金具20とを締め付けて固定しているので、上下の締め金具に挟まれたヨーク鉄心、磁脚鉄心及びコイルは強固に固定される。また、コイルは、コイル押さえ金具134により頑丈に固定される。
【0059】
次に、上締め金具20の中央のスタッド91の上部には、アイナット50を取り付け、リアクトル本体を吊れるようにする。コイル押さえ金具134は、丸い棒状の先端が棒状の直径より大きい円形状で、コイルの一部を押さえる程度の面積を有しており、コイル押さえ金具受け132に貫通させ、ロックナット132によりコイル101を下締金具30に押し付けて、締め付け固定する。また、端子42、43には、孔45を複数配置し、電力線を接続できるようにしている。
【0060】
次に、全ての部品を装着した、断面が丸形の磁脚鉄心を搭載したリアクトル装置の外観斜視図を
図26Iに示し、その正面図を
図26Hに、上面図を
図26Gに示す。
図26G、
図26H、
図26Iにおいて、コイル101は、下締め金具30の周囲に配置されたコイル支持金具92の上に載置し、金属棒で先端に円板を接続したコイル押さえ金具134で押さえ付け、金属棒の反対側は上締め金具20の周囲に配置したコイル支持金具受け132で受けて、ロックナット133で締め付けて固定している。コイル101の固定箇所は、1脚のコイルに対し端子板42、43の両脇の部分の2ヶ所である。
【0061】
(実施例7)
次に、磁脚鉄心を実施例3に示した固定方法とは別の固定方法の実施例7について説明する。
図27は、スリット143を配置した断面が丸形の磁脚鉄心141を、絶縁物の積層板175を挟んで4段に積み上げた状態に、上方から絶縁物の筒状体180を挿入して組み込んだ磁脚鉄心の構成の斜視図を示す。
図27に示した絶縁物の筒状体180で覆われた磁脚鉄心を3脚120°の等間隔にヨーク鉄心160の上に配置し、
図26Eに示したようにコイル101を挿入して形成する。このように断面が丸形の磁脚鉄心141を積み上げて筒状体180で覆うことにより、個々の磁脚鉄心141の積み上げている方向のずれがなくなる効果を有する。磁脚鉄心141のずれが生じると、漏れ磁束が増加し、鉄損が悪化することになりこれを防止することができる。
【0062】
(実施例8)
次に、本発明の実施例8のヨーク鉄心について、
図28を用いて説明する。
図28は、中央に円形の孔を設けたドーナツ形状のヨーク鉄心160、161の斜視図を示す。
図28において、ヨーク鉄心は内側の孔の円周面に円形状の金属板の補強金具181を装着して構成し、この金属板の補強金具の厚さは2mm以上としている。ヨーク鉄心の中央の孔の内側を補強しておかないと、孔部分の円形状が歪んだ形となる恐れがあり、鉄心の応力が掛かることになる。そして鉄心の応力が掛かると、ヨーク鉄心の鉄損が大きくなり悪化することになる。従って、ヨーク鉄心の内側の孔の内周面を補強することにより、歪による形状変化を防止できる。
【0063】
また、
図28のヨーク鉄心において、ヨーク鉄心160、161の最外周面に、絶縁物163を巻きつける構成としている。絶縁物163は、絶縁シートを用い、ヨーク鉄心の外周を巻き付ける。このようにヨーク鉄心160、161の側面である外周面を絶縁シート163で巻き付けることにより、ヨーク鉄心と上締め金具または下締め金具との間で異常電流が発生しない。また、絶縁シートを用いることによりヨーク鉄心と上締め金具または下締め金具との沿面距離を稼ぎ、浮遊損を低減することができ、特性を劣化させない。また、ヨーク鉄心と上締め金具または下締め金具との間のガタをなくす働きも有する。
【0064】
(実施例9)
次に、本発明の実施例9のリアクトルの構成及び組立方法について、図を用いて説明する。先ず、
図29Aは、下側のヨーク鉄心を装着する組立図を示す。
図29Aにおいて、31は下締め金具、131はベース、90、91はスタッド、173は積層板、161は下側のヨーク鉄心、174は積層板、55は磁脚鉄心位置決め積層板、163はヨーク鉄心161の周囲に巻いた絶縁シートである。
【0065】
下締め金具31は、略6角形状で、飛び飛びに折り返し部を有したケース形状を成し、中央部にスタッド91を垂直に配置し、折り返し部でなくヨーク鉄心の配置位置の外周領域の中央に、スタッド90を垂直に3ヶ所120°の等間隔に配置する。また、ベース131は、L字形状として強度を増加し、L字形状の1辺を下締め金具31の底面に2本並べて溶接などにより固定し、リアクトル装置を安定にしている。
【0066】
下締め金具31と2本のベース131の位置関係は、
図2B(b)に示しているように、ベース131は平行とし、下締め金具31の2辺とは直交する位置関係となるように配置する。下締め金具31の上には、絶縁シートの積層板173を載置し、その積層板173の上に中空のドーナッツ状のヨーク鉄心161を載置し、さらに、ヨーク鉄心161の上に積層板174を載置する。そして、積層板174の上に正三角形状の磁脚鉄心の鉄心位置決め積層板鉄心を配置する。鉄心位置決め積層板55は、正三角形の中心部(中点)に孔を配置し、中央のスタッド91を貫通して配置し、その方向は
図2B(b)に示すように正三角形の一つの角から引いた垂線と下締め金具31に固定した2個のベースの長手方向の線とが平行になるように配置する。また、ヨーク鉄心161の側面は、絶縁シート163を巻回してガタがないように形成する。
【0067】
次に、磁脚鉄心の装着について
図29Bを用いて説明する。
図29Bにおいて、
図29B(a)は磁脚鉄心を装着する工程の外観斜視図を示し、
図29B(b)は、
図29B(a)の上面図を示す。ここで磁脚鉄心142は、実施例1で説明したように、概略扇型形状をしている。この磁脚鉄心142の製作方法は実施例1とは異なり、所定の厚み、長さに切断した短冊状の鉄心材を積み上げることにより製作する。この磁脚鉄心142は、ヨーク鉄心161の上の積層板174の上に載置する。また、扇形状の磁脚鉄心142の中心部はカットし、平坦部を形成し、
図29B(b)に示すようにこの平坦部を正三角形状の鉄心位置決め積層板の一辺に当接して配置する。このように配置することにより磁脚鉄心の位置決めを精度良く配置することが可能となる。磁脚鉄心142の扇形状の両翼部はカットし、また円弧状部は、円弧状の部分を略三等分して、三等分した円弧部分をカットする。そして、概略八角形の変形扇形状の磁脚鉄心142を形成する。
【0068】
図29Bにおいては磁脚鉄心142を4段積み重ねており、磁脚鉄心142の間には積層板175を挟んでいる。コイルを装着する工程については次に詳述するが、コイルは磁脚鉄心の周囲を囲むように形成されるため、コイルを含めた形状は鉄心の形状に依存する。したがって、このように磁脚鉄心を概略八角形の変形扇形状とする場合には、磁脚鉄心の最外形を小さくすることができ、必然的にコイルの最外形も小さくすることができるので、最終的なリアクトル全体の径方向の大きさを小さくすることができる。このようなリアクトルであれば、盤等の設置場所や寸法制限がある場合に有効である。
【0069】
また、
図29Bにおいて、円形状の積層板174の外周に配置した3本のスタッド90には、コイル締め金具151を配置する。
コイル締め金具151は、細長い金属板で中央にネジ孔を設け、ネジを切ってスタッド90に取り付け、所定の高さすなわちコイルを支持する高さ位置でコイル締め金具151の裏側をロックナットで締め付け、固定する。3個のコイル締め金具151の高さは、ほぼ同じである。
【0070】
次に、コイルを装着する工程について、
図29Cを用いて説明する。
図29Cにおいて、
図29C(a)はコイルを装着する外観斜視図を示し、
図2C(b)はコイルの断面図を示す。
図29C(a)において、個々の磁脚鉄心142を4段積み重ねた状態の磁脚鉄心に上方よりコイル102を垂直に差し込んで装着する。また、コイル102には上側に端子42、43を配置し、電源ラインと接続できるようにしている。また、
図29C(b)に示すように、コイル102の内側の孔の形状は、磁脚鉄心142の外形形状と同じ形状とし、コイル102の孔を差し込めるように僅か大きくしている。また、コイル102の内側には、3ヶ所絶縁ボード176を配置し、磁脚鉄心142とコイル102との間に間隙を有し、ガタがある場合は絶縁ボード176で調整し、ガタが生じないようにする。
【0071】
次に、3脚の磁脚鉄心及びコイルを装着する工程を、
図29Dを用いて説明する。
図29Dにおいて、
図29Dは
図29C(a)の1脚の磁脚鉄心及びコイルの装着を繰り返して、3脚の磁脚鉄心及びコイルを装着した外観斜視図を示し、
図29Dの右図は装着したコイル102の上部より鉄心位置決め積層板55を配置する斜視図を示す。1脚の磁脚鉄心142を鉄心間に積層板175を挟んで4段積み重ねて形成し、磁脚鉄心の上方よりコイルを差し込んで装着する工程を、他の2極についても行い、
図2Dに示すように3脚すべてについて行い、磁脚鉄心とコイルの装着を完了する。
【0072】
この
図2Dの状態において、正三角形状の鉄心位置決め積層板55を、中央に配置したネジ孔をスタッド91に取り付けることにより鉄心位置決め積層板55を配置し、鉄心の位置を調整する。ここで、磁脚鉄心142はコイル102より僅か高くしている。また、
図2Dにおいて、コイル102が高精度に位置決めされると、コイル締め金具151を外周のスタッド90にネジにより取り付け、下側のコイル締め金具151と上側のコイル締め金具151とでコイル102を締め付けて、ロックナットにより固定する。コイル102の固定は3脚においてそれぞれ行う。
【0073】
次に、コイル102の上側にヨーク鉄心を装着する工程を
図29Eを用いて説明する。
図29Eは、3脚のコイル102の上側にヨーク鉄心を載置し、上締め金具で固定する外観斜視図を示す。
図29Eにおいて、3脚のコイル102の上には、円形状の中空の積層板177を配置し、この上にヨーク鉄心162を載置する。ヨーク鉄心162は下側のヨーク鉄心161と同じ円形状で、中空のドーナッツ形状を成している。また、円形のヨーク鉄心162の上に、円形で中空の積層板178を載置する。ヨーク鉄心162の周囲は、絶縁シートで巻いて、周りの部品との絶縁を図っている。これら積層板177、178とヨーク鉄心162を上締め金具21のケースで覆い、上締め金具21の中央部に配置した中央のスタッド91用の孔57にスタッド91を貫通し、上締め金具21の周囲に配置した3本のスタッド用孔56にスタッド90を貫通し、それぞれロックナットで締め付けて、磁脚鉄心、コイル及びヨーク鉄心を固定する。また、中央のスタッド91の先端にはアイナット50を設け、リアクトル装置を吊り下げることができるように構成する。210は銘板で、装置の品名、型式、製造番号、製造年月日、及び製造者を刻印している。
【0074】
次に、全ての部品を装着した、断面が扇形の磁脚鉄心を搭載したリアクトル装置の外観斜視図を
図29Fに示し、その正面図を
図29Hに、上面図を
図29Gに示す。
図29Fにおいて、2本のL字形状のベース131を下締め金具31に溶接などにより固定し、下締め金具31のケース内にヨーク鉄心161及び積層板174を収納する。31は、
図29Gに示すように正三角形状の3個の頂点から所定の長さの所でカットした変形の6角形状を成している。すなわち
図29Gにおいては、正三角形の一辺を1とすると、頂点から約0.26の辺の点でカットし、変形の6角形の締め金具の外形を示している。そして、カットしたそれぞれの辺の内側にスタッド90を配置し、カットしていない辺は、折り曲げ加工を施してヨーク鉄心及び積層板を収納できるようにし、最小の面積となるように下締め金具を形成し小型化としている。これは上締め金具も同じ構成である。
【0075】
コイル102は、折り曲げた辺の内側に配置し、コイル102内の磁脚鉄心とヨーク鉄心がオーバラップするようにコイル012を配置している。そして、コイル102の内側と外側より垂直方向に出力端子42、43を出し、外部端子と接続できるようにしている。また、コイル102は、スタッド90に配置している2個のコイル締め金具151で、コイル102の一部分を挟んで上下のロックナットで締め付けて固定している。また、下締め金具31と上締め金具21とは3本の外周のスタッド90と1本の中央のスタッド91に取り付けたロックナット96で、ヨーク鉄心161、162とコイル102及び磁脚鉄心142を締め付けて固定している。
【0076】
(実施例10)
次に、本発明の実施例10の磁脚鉄心の固定方法について、
図30を用いて説明する。
図30において、
図30(a)はコイル固定金具190を装着した場合の平面図を示し、
図30(b)はコイル固定金具の外観図を示している。コイル固定金具190は、
図30(b)に示すように中心より所定の幅の金属板を3方向に放射状に伸ばし、その金属板をリアクトルの中心から磁脚鉄心142の最も近い箇所とコイル102の内側の孔の部分の最も近い箇所で形成される間隙までの長さで折り曲げ、それぞれをL字形状とし、磁脚鉄心142とコイル102との間隙に挿入して固定する爪部192を形成する。また、3方向の角度は、120°の等間隔で、コイル固定金具190の中心にはリアクトルの中心に配置しているスタッド91に取り付けるための孔191を設けている。
【0077】
図30(a)は、
図30(b)に示したコイル固定金具190を磁脚鉄心142を装着したコイル102を配置した平面図を示しており、コイル固定金具190の中心の孔191をスタッド91に挿入し、コイル固定金具190の突起状の爪192を各々の磁脚鉄心142とコイル102の間隙に挿入して、スタッド91のロックナットで締め付けて固定する。このようにコイル固定金具を用いる上記の構成をコイル102の上下に設けることにより、コイル102は中心から半径方向にすなわち放射状にずれることを防止できる。また、コイル固定金具190がコイル102及び磁脚鉄心142と接触しているため、コイル102や磁脚鉄心142で発生する熱を放熱する効果もあり、リアクトル装置全体の放熱効果を向上させる。
【0078】
(実施例11)
次に、本発明の実施例11のコイルの固定方法について、
図31を用いて説明する。
図31は、3脚のコイル102と3本のスタッド90の周囲にバンド205を巻き、バンド205でコイル102を締め付けて固定する。このようにリアクトル装置のコイル部分をバンド205で締め付け固定することで、3脚のコイル102が中心より放射状にずれることを防止できる。バンド205は一重に限らず、二重以上にすることもできる。また、バンド205は、ステンレス材の板材や金属線を撚ったワイヤなどを用いる。
【0079】
(実施例12)
次に、本発明の実施例12のリアクトル装置の冷却構造について、
図32A〜
図32C及び
図33を用いて説明する。
図32Aは、
図29Fに示したリアクトル装置の外観図と同じ構成をしているが、違いは上締め金具21の中央に通気孔211を配置した点である。
図32Aにおいて、
図29Fと共通する部分の説明は省略し、異なる通気孔211の部分を説明する。
【0080】
図32Aにおいて、リアクトル装置の上部の上締め金具21の中央付近に通気孔211を配置し、通気孔211はメッシュやパンチング穴で形成し、ヨーク鉄心162の内側の孔の範囲内に形成する。また、リアクトル装置の下側の下締め金具31の中央付近にも同じように、ヨーク鉄心161の内側の孔の範囲内に通気孔211を配置すると、リアクトル装置の中央部に空気の流れが、
図32Bに示すようにリアクトル装置の下方から上方に向かって流れ、磁脚鉄心142やコイル102より発生した熱を奪い、外部へ排気し冷却する。
【0081】
図32Bは、リアクトル装置10の中央部に縦断面図を示し、図において91は中央のスタッド、161は下側のヨーク鉄心、142は磁脚鉄心、102はコイル、162は上側のヨーク鉄心、214は空気の流れを示している。本発明のリアクトル装置の構成は、中央のスタッド91の周囲が空間を有しているので、下側の下締め金具31と上側の上締め金具21の中心軸方向に通気孔211を配置すると、リアクトル装置の中央の空間において下方から上方に空気214が流れ、磁脚鉄心142及びコイル102とが冷却され、内側に熱がこもることはない。リアクトル装置のコイル部分の外周は、外気に触れているため大気に放熱される。
【0082】
また、
図32Cは、リアクトル装置のコイル部分の横断面図を示し、
図32Cにおいて、隣り合うコイル102の間には隙間213を形成しているので、リアクトル装置の外部からの空気がコイル102間の隙間213より中央に流れ込んで(矢印212)、リアクトル装置の下方からあるいは中央から上方に流れ出る構成としている。また、コイル102間の隙間213から外部へ流れ出る空気もある。このような
図32A〜
図32Cに示した構成によりコイル102及び磁脚鉄心142を冷却することができ、冷却効率を向上させる。また、アモルファス薄帯を用いた磁脚鉄心やヨーク鉄心の場合、発熱量が小さく、コイルの発熱量が大きいため、コイル周辺を冷却する本発明の冷却構造は有効である。
【0083】
次に、本発明のリアクトル装置の別方式の冷却構造を
図33に示し、この構造について説明する。
図33は、リアクトル装置の上側の上締め金具21の中央にファン215を配置したリアクトル装置の斜視図である。
図33において、冷却用ファン215は、
図32Aに示した通気孔211の上部に設置する構成である。このように
図32A〜
図32Cに示した構成において、上締め金具21の中央付近の通気孔211にファン215を設置した構成としたため、空気が下締め金具31の中央の通気孔211や隣り合うコイル102の隙間213から強制的に吸い込まれ、上締め金具21の中央から排気され、冷却する。また、
図33では、ファン215を上側の上締め金具21の中央に設置しているが、下側の下締め金具31の中央の通気孔211にもファンを設置し、外部の空気を強制的に吸い込む構成にしても良い。ファンは一方向に空気を送るプロペラファンやターボファンなどがある。
【0084】
(実施例13)
次に、本発明の実施例13の磁脚鉄心とコイルの形状及びその関係について説明する。リアクトル装置は、一般的に配電盤などの製品の中に設置されており、全体の寸法や重量に制限が設けられている場合が多い。また、同じ磁束密度で製造された鉄心において、鉄心の質量が増大するとそれに伴い鉄損値も増大する。高周波が印加されるリアクトル装置において、全体損失に対する鉄損の割合は大きく、数%でも無視できないレベルである。このような理由によりリアクトル装置は総重量、体積の増大を抑える必要がある。そして、リアクトル装置の重量及び体積に最も関係しているのが、鉄心とコイルである。特に、コイルを巻き付ける3脚の磁脚鉄心の形状、すなわち磁脚鉄心の断面積が非常に重要になってくる。
【0085】
図34Aは、磁脚鉄心、コイル及びヨーク鉄心の配置位置を示す平面図である。
図34Aにおいて、ヨーク鉄心161、162が中央が孔のドーナツ形状の円形状である場合、3相のインダクタンス値を揃えるために同じ形状の磁脚鉄心142を120°等間隔に配置する。同等の鉄心特性で、鉄心を小さくするには鉄心に流れる磁束密度を一定にするように磁脚鉄心の断面積を一定にする必要がある。ここで、断面積とはヨーク鉄心へ磁束が流れることを考慮し、磁脚鉄心の断面積とヨーク鉄心の端面の重なった部分の面積を指している。
【0086】
この鉄心の断面積の増大を防ぐために、120°±10°間隔で配置している磁脚鉄心の形状を
図34Aに示し、磁脚鉄心の内周側の頂角を120°±10°にする。このとき、ヨーク鉄心161、162の内側の内円164の内側にある磁脚鉄心部分すなわち鉄心同士でオーバラップしていない部分は、磁束が流れないので必要でない部分となり、円弧状または直線で面取りを行っている。すなわち、
図34Bに磁脚鉄心142とヨーク鉄心161、162の位置関係を示しているが、左上の扇形状の磁脚鉄心142の場合、扇形状の外周は円弧状302に面取りし、扇形状の頂角(中心)部分はヨーク鉄心161、162と重なっていないため、不要な部分としてヨーク鉄心の内側の内円164に倣い、円弧状302に面取りを行う。また、この円弧状の部分は直線に面取りしてもよい。また、
図34Bの右上の磁脚鉄心142の場合、磁脚鉄心142の外周部をヨーク鉄心161、162の外円165に沿って弦301で揃えてもよい。ここでは円弧状を3本の弦301で揃えている。さらに扇形状の両端をカットして先端を尖らせないように形成している。
【0087】
次に、磁脚鉄心142の断面積について説明する。磁脚鉄心142の断面積として、
図34Cの右上の磁脚鉄心142のように最小の断面積は、扇形状の円弧状の外周を1個の弦301とした場合である。従って、磁脚鉄心142の断面積は、これ以上の大きさとする必要がある。ここで、
図34Cの左上の磁脚鉄心142において、扇形状の中心の頂角を120°±10°、扇形状の中心の頂点よりヨーク鉄心161、162の内側の孔の内円164までの距離をR1、扇形状の中心の頂点よりヨーク鉄心の外円165(最外周円を指す)までの距離をR2とし、ヨーク鉄心の内円164より内側に入っている磁脚鉄心142の断面積をS1、ヨーク鉄心と重なっている磁脚鉄心142の断面積をS2とすると、
となる。よって、このようなS
2−S
1の領域で現される形状の磁脚鉄心であっても良い。リアクトル装置は設置箇所の環境に応じて要求される外形形状が異なる場合があるが、最小断面積を有するこのような形状が要求される外形形状を満たしていれば、この形状とするのが良い。さらに言えば、磁脚鉄心の形状で頂角が鋭角であると、通電時部分放電が発生するため、磁脚鉄心142とコイル102間の寸法を必要以上に広げることになり、リアクル全体の重量及び体積の増加を招く。このため、S
2−S
1の領域で現される形状から、外周側の2つの頂角を面取りし、全ての頂角を90°以上とすれば、リアクトル全体の重量及び体積の増加を抑制することができる。
【0088】
また、120°±10°で設置した磁脚鉄心142は、
図34Dに示すように、3脚を等しい応力で締め付ける必要がある。このため、磁脚鉄心締め付け用のスタッド90を、ヨーク鉄心を中心に120°±10°の間隔で配置し、上締め金具21と下締め金具31の間の磁脚鉄心、コイル及びヨーク鉄心をスタッド90及びスタッド91でもって締め付け固定する。
【0089】
また、
図34Dにおいて、磁脚鉄心位置決め積層板55は、正三角形の形状を有しており、正三角形の中点の位置に中央のスタッド91用の孔を配置する。そして、正三角形の各辺に三脚の磁脚鉄心の内側の円弧状部分又は直線部分が当接するように形成し、位置決めを行い精度良く磁脚鉄心が配置されるようにする。
【0090】
(実施例14)
次に、磁脚鉄心、コイル及びヨーク鉄心の設定について、
図35Aに示したフローチャート及び
図35Bにより説明する。
図35Aのフローチャートにおいて、先ず、コイル材料を板厚とコイルの巻き数を決定し、コイルの厚さを決定する(S10)。コイル材料の板厚は損失を考慮し、巻き数はインダクタンス値を考慮して決定する。次に、磁脚鉄心の断面形状を決定する(S20)。すなわち、コイルの巻数と設計の磁束密度から逆算して断面積を決定し、その断面積の中で磁脚鉄心の形状を決定する。磁脚鉄心の形状は扇状や円状等があり質量や全体形状や特性によって決定する(
図35B(a))。次に、三相分の磁脚鉄心とコイルを120°の等間隔で円周上に配置する(S30)(
図35B(b))。次に、ヨーク鉄心の内側の孔の内径と、ヨーク鉄心の外径を決定する(S40)。ステップS30で、磁極鉄心及びコイルの位置関係を確認し、磁脚鉄心とヨーク鉄心とが重なるようにヨーク鉄心の孔の内径と最外周の外径を決定する(
図35B(c))。次に、ヨーク鉄心の幅を決定する(S50)。すなわち、設計のコイルの磁束密度とヨーク鉄心の積層の厚さ(高さ)から逆算して、ヨーク鉄心の幅(外径と内径の差)を決定する(
図35B(d))。次に、コイルの厚さ(高さ)と、磁脚鉄心間のGAP寸法を決定する(S60)(
図35B(e))。上記の通り、コイル、磁脚鉄心及びヨーク鉄心の必要な寸法を決定し、これらの値がリアクトル装置の各部の寸法、スタッドとの取り合い、温度、リアクトル装置の特性等について判定する(S70)(
図35B(f))。判定結果がYESであれば、設計は終了し、NOであればステップS10へ戻り、このフローを繰り返す。