特許第5951803号(P5951803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951803
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】鋳鋼製鉄道車輪
(51)【国際特許分類】
   B60B 17/00 20060101AFI20160630BHJP
   B22D 41/00 20060101ALI20160630BHJP
   B22D 25/02 20060101ALI20160630BHJP
   B22C 9/08 20060101ALI20160630BHJP
   B22C 9/10 20060101ALI20160630BHJP
   B22C 9/28 20060101ALI20160630BHJP
   B22C 1/00 20060101ALN20160630BHJP
   B22D 18/02 20060101ALN20160630BHJP
【FI】
   B60B17/00 B
   B60B17/00 F
   B22D41/00
   B22D25/02 E
   B22C9/08 C
   B22C9/10 M
   B22C9/28
   !B22C1/00 D
   !B22D18/02 D
【請求項の数】23
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-555544(P2014-555544)
(86)(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公表番号】特表2015-515405(P2015-515405A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】US2012050523
(87)【国際公開番号】WO2013115842
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】13/362,457
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512244901
【氏名又は名称】アムステッド、レイル、カンパニー、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AMSTED RAIL COMPANY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、シューマッハー
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−262916(JP,A)
【文献】 特開平10−029401(JP,A)
【文献】 特許第083171(JP,C2)
【文献】 特開2005−008142(JP,A)
【文献】 特開2009−166641(JP,A)
【文献】 米国特許第03452798(US,A)
【文献】 米国特許第06463994(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 17/00
B22C 9/08−9/28
B22D 25/02
B22D 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の空洞を有するハブと、
前記空洞と同心のリムと、
前記ハブから前記リムに向かって放射状に延在するプレートと、
を備え、
前記プレートは、前面及び背面を有しており、前記プレートは、前記ハブと前記リムとの間に延在する複数のスポークを有しており、隣接するスポークは、前記前面と前記背面との間で規定される異なる厚みを有し
前記プレートの前記背面は、非連続的であり、かつ、対応するスポークを規定する一連のリッジ及びボイドにより規定され、
前記スポークは、ハブ側端部及びリム側端部を有しており、当該スポークは、円周方向に一連に配置され、交互に大型及び小型である、複数のスポークを含んでおり、
前記ハブ側端部における前記小型スポークの厚みは、前記ハブ側端部における前記大型スポークの厚みよりも小さく、
前記リム側端部における前記小型スポークの厚みは、前記リム側端部における前記大型スポークの厚みと同等であり、
前記大型スポークの厚みは、前記ハブから前記リムへ径方向長さに沿って減少し、
前記小型スポークの厚みは、前記ハブから前記リムへ径方向長さに沿って全体として一定である
ことを特徴とする鋳鋼の鉄道車輪。
【請求項2】
前記複数のスポークは、互いに一体とされ、前記プレートが前記ハブと前記リムとの間で連続的であるように形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車輪。
【請求項3】
前記複数のスポークは、円周方向に一連に配置され、交互に大型及び小型である、複数のスポークを含んでおり、
前記大型スポークは、隣接する小型スポークよりも厚く、
前記小型スポークは、隣接する大型スポークよりも薄い
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車輪。
【請求項4】
前記大型スポークは、当該大型スポークの厚みを増大させるリッジを有しており、
前記小型スポークは、前記リッジ間に規定されたそれ自体の外側に、ボイドを有している
ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪。
【請求項5】
前記複数のスポークは、隣接するスポーク間の境界を規定する肩部を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車輪。
【請求項6】
隣接するスポーク間の厚みの差異は、全体的に、前記スポークに沿っての径方向外側へのトラベリング(traveling)を減少させる
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車輪。
【請求項7】
軸方向の空洞を有するハブと、
前記空洞と同心のリムと、
前記ハブから前記リムに向かって実質的に放射状に延在するプレートと、
を備え、
前記プレートは、前面及び背面を有しており、前記プレートは、前記前面と前記背面との間で規定される厚み寸法を有しており、
前記背面上において、前記プレートは、円周方向に一連に配置され、交互であるリッジ及びボイドを含み、
前記リッジにおける前記プレートは、隣接するボイドにおける前記プレートよりも厚く、
前記ボイドにおける前記プレートは隣接するリッジにおける前記プレートよりも薄く、
前記リッジはスポークを含み、
前記スポークは、ハブ側端部及びリム側端部を有しており、当該スポークは、円周方向に一連に配置され、交互に大型及び小型である、複数のスポークを含んでおり、
前記ハブ側端部における前記小型スポークの厚みは、前記ハブ側端部における前記大型スポークの厚みよりも小さく、
前記リム側端部における前記小型スポークの厚みは、前記リム側端部における前記大型スポークの厚みと同等であり、
前記大型スポークの厚みは、前記ハブから前記リムへ径方向長さに沿って減少し、
前記小型スポークの厚みは、前記ハブから前記リムへ径方向長さに沿って全体として一定である
ことを特徴とする鋳鋼の鉄道車輪。
【請求項8】
前記ボイドに沿った場合と比較して、前記リッジに沿った前記プレートの厚みの差異は、全体的に、前記ハブから径方向外側へのトラベリングを減少させる
ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪。
【請求項9】
前記プレートは、前記リッジと前記ボイドとの間の境界を規定する肩部を有している
ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪。
【請求項10】
前記リッジは、前記プレートの略半分を含んでおり、前記ボイドは、前記プレートの略半分を含んでいる
ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪。
【請求項11】
前記プレートは、前記リッジの間に挟まれた前記ボイドとともに、およそ4つ乃至8つのリッジを含んでいる
ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪。
【請求項12】
前記リッジ及び前記ボイドは、前記プレートの略同等の切頭扇形(truncated sectors)を規定している
ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪。
【請求項13】
前記リッジに沿った前記プレートは、前記ハブの近傍においてより厚く、前記リムの近傍においてより薄い
ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪。
【請求項14】
前記リッジ及び前記ボイドは、前記前面上及び前記背面上の双方に設けられており、
前記前面上及び前記背面上の前記リッジは、全体的に、互いに整列され、
前記前面上及び前記背面上の前記ボイドは、全体的に、互いに整列されている
ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の鋳鋼の鉄道車輪を製造するための鋳造組立体であって、
溶融金属を保持するためのレードルと、
前記レードルから前記溶融金属を受容するための鋳型と、
を備え、
前記鋳型は、上型部分及び下型部分を、それらの間に規定され前記鉄道車輪を形成するべく形作られた型キャビティとともに有しており、
前記上型部分は、前記型キャビティの一部を規定する第一キャビティ面を有しており、前記下型部分は、前記型キャビティの一部を規定する第二キャビティ面を有しており、
前記第一キャビティ面及び第二キャビティ面の少なくとも一方は、円周方向に一連に配置され、交互であるボス及びキャビティを有しており、当該ボス及び当該キャビティは、鋳造時に前記鉄道車輪の表面上に対応するリッジ及びボイドを形成し、
前記型キャビティは、前記第一キャビティ面と前記第二キャビティ面との間に規定された厚みを有しており、
前記キャビティと整列された領域内の前記型キャビティの厚みは、前記ボスと整列された領域内の前記型キャビティの厚みより大きくされている
ことを特徴とする鋳鋼の鉄道車輪を製造するための鋳造組立体。
【請求項16】
前記型キャビティの径方向中央の位置で、前記鋳型内に受容されるハブコア組立体であって、鋳造中に余剰の溶融金属を受容するべく構成されたハブライザ(hub riser)を有しており、前記ハブライザは、前記鉄道車輪の冷却中及び凝固中に前記余剰の溶融金属を前記型キャビティへ供給し、前記ボスと整列された領域を通じてよりも前記キャビティと整列された領域を通じてより大容量の溶融金属が前記型キャビティ内に注ぎ込まれる、というハブコア組立体
を更に備えたことを特徴とする請求項15に記載の鋳造組立体。
【請求項17】
前記第一キャビティ面は、全体的に滑らかであり、かつ、ボス及びキャビティを含んでおらず、
前記第二キャビティ面は、前記ボス及び前記キャビティを含んでいる
ことを特徴とする請求項15に記載の鋳造組立体。
【請求項18】
肩部が前記ボスと前記キャビティとの間に延在し、当該肩部は、対応する前記第一キャビティ面又は前記第二キャビティ面に対し、略垂直である
ことを特徴とする請求項15に記載の鋳造組立体。
【請求項19】
前記ボスは、前記対応するキャビティ面の略半分を含んでおり、
前記キャビティは、前記対応するキャビティ面の略半分を含んでいる
ことを特徴とする請求項15に記載の鋳造組立体。
【請求項20】
前記ボス及び前記キャビティは、対応する前記キャビティ面の略同等の切頭扇形を規定している
ことを特徴とする請求項15に記載の鋳造組立体。
【請求項21】
前記型キャビティは、前記ボスに沿って径方向外側に移動するにつれて、当該ボスに沿って前記第一キャビティ面と前記第二キャビティ面との間で、一定の厚みを有しており、更に、
前記型キャビティは、前記キャビティに沿って径方向外側に移動するにつれて、前記キャビティに沿って前記第一キャビティ面と前記第二キャビティ面との間で、全体として減少していく厚みを有している
ことを特徴とする請求項15に記載の鋳造組立体。
【請求項22】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の鋳鋼の鉄道車輪を製造するための製造方法であって、
上型部分及び下型部分を有する鋳型を、それらの間に規定され前記鉄道車輪を形成するべく形作られた型キャビティとともに、提供する工程と、
前記上型部分は、前記型キャビティの一部を規定する第一キャビティ面を有しており、前記下型部分は、前記型キャビティの一部を規定する第二キャビティ面を有しており、前記第一キャビティ面及び前記第二キャビティ面の少なくとも一方は、円周方向に一連に配置され、交互であるボス及びキャビティを有しており、当該ボス及び当該キャビティは、前記鉄道車輪の表面上に対応するリッジ及びボイドを形成し、
前記上型部分は、径方向中央に配置されるハブ部を有しており、前記下型部分は、径方向中央に配置されるハブ部を有しており、
溶融金属が前記型キャビティ内の前記上型部分及び下型部分の双方に入り込むように、前記下型部分及び前記上型部分の前記ハブ部内に、前記溶融金属を注入する工程と、
溶融金属を、前記ハブ部に対して整列されたハブライザ内に注入する工程と、
を備え、
前記ハブライザ内の前記溶融金属は、前記溶融金属の注入の停止後に、溶融金属を前記型キャビティに供給するべく使用され、
前記ボスと整列された領域よりも、前記キャビティと整列された領域を通じて、より大容量の溶融金属が前記型キャビティ内に注入され
前記型キャビティは、前記第一キャビティ面と前記第二キャビティ面との間に規定された厚みを有しており、
前記キャビティと整列された領域内の前記型キャビティの厚みは、前記ボスと整列された領域内の前記型キャビティの厚みより大きくされている
ことを特徴とする鋳鋼の鉄道車輪の製造方法。
【請求項23】
前記鉄道車輪が冷却し凝固するに従って、前記ハブライザから前記型キャビティ内に溶融金属を重力注入する工程であって、前記キャビティは、前記ボスよりも、前記溶融金属が流れる前記型キャビティ内のより大きな領域を提供する、という工程
を更に備えたことを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題事項は、全体的に、鋳造操作を用いた鋳造物品に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼鉄製鉄道車輪は、溶鋼が機械加工された黒鉛鋳型の中に注入されるという鋳造操作の間に製造される。当該黒鉛鋳型は、典型的には、通常は黒鉛ブロックである上半分又は上型と、同様に通常は黒鉛ブロックである下半分又は下型と、を含む。鋳造される物品の上部又は前面(の形状)は、上型内に機械加工され、鋳造される物品の下部又は背面(の形状)は、下型内に機械加工される。当該型は、鉄道車輪のハブ、プレート及びリムを形成する部分を含んでいる。上型部分及び下型部分が完全な鋳型を形成するべく結合されると、そのような完全な鋳型は、鉄道車輪のハブ、プレート及びリムを形成するべく、当該型内のキャビティ内に溶鋼が注入される鋳込ステーションへ配置される。
【0003】
いくつかの既知の組立体においては、中央ライザ(central riser)が鋳型の上型部分に設けられていて、注湯直後の鉄道車輪の冷却中及び凝固中に鋳型内を下方に向かって充填するべく、必要に応じて追加的な溶融金属が保持され得るようになっている。鋼鉄製鉄道車輪の空隙率には公認の基準があり、当該空隙率は、車輪の冷却中及び凝固中に鋳型内を下方に向かって充填するのに十分な量の金属を保持するべく、中央ライザを設計することによって、充足されなければならない。型キャビティ及び中央ライザの充填時に、金属の鋳込みは停止され、黒鉛鋳型は、その後鋳込ステーションから移動され、上型部分と下型部分とが分割される前に、鋼鉄が凝固するのに十分な時間が与えられる。
【0004】
機械加工された黒鉛鋳型では、黒鉛は、鋳造される車輪が当該黒鉛に接している外表面からかなり急速に冷却されかつ凝固されるという態様で、溶鋼から熱を吸収する。このことは、注湯後すぐに上型及び下型が互いからかなり迅速に分離され得るので、車輪の高い生産速度を許容する。これにより、車輪がその製造中に適切に冷却され、あるいは、熱処理されることを許容している。黒鉛鋳型によって溶鋼から熱を急速に吸収するので、厚いプレートをハブとリムとの間に設けて当該プレートの中心部が十分な長さの時間にわたり溶融したままであることを保証することが、現在の実務となっており、これにより、中央ライザ内の余剰の溶融金属がハブからプレートを通じてリムへ流れることを許容し、鉄道車輪内の所望の空隙率を達成する。プレートの追加された厚みは、鉄道車輪の全重量を増大させる。プレートの余分な材料は、後に機械加工により除去されるだろう。しかし、この工程は、製造工程に時間及びコストを加える。
【0005】
プレート内の材料の総量を減少させ、それでもなお、鋳鋼製鉄道車輪の所望の空隙率を達成するのに十分に長い時間にわたってプレートが溶融し続けることを許容することが、望まれる。
【発明の概要】
【0006】
一つの実施の形態では、鋳鋼製鉄道車輪が、軸方向の空洞を有するハブを有するものとして提供される。リムは、空洞と同心である。プレートは、ハブからリムに向かって実質的に放射状に延在している。プレートは、前面及び背面を有している。プレートは、ハブとリムとの間に延在する複数のスポークを有している。隣接するスポークは、前面と背面との間で規定される異なる厚みを有している。
【0007】
選択的に、より厚いスポークは、鉄道車輪の鋳造中に、ハブからリムに向かってより大容量の溶融金属が流れることを許容し得る。複数のスポークは、互いに一体とされてよく、プレートがハブとリムとの間で連続的であるように鉄道車輪の鋳造中に形成されてもよい。選択的に、複数のスポークは、円周方向に一連に配置され、交互に大型及び小型である複数のスポークを含み得る。大型スポークは、隣接する小型スポークよりも厚くし得る。小型スポークは、隣接する大型スポークよりも薄くし得る。大型スポークは、大型スポークの厚みを増大させるリッジを含み得る。小型スポークは、それ自体の外側にリッジ間に規定されたボイドを有し得る。
【0008】
選択的に、プレートの前面は、滑らかで連続的であり得る。プレートの背面は、非連続的であり得て、対応するスポークを規定している一連のリッジ及びボイドにより、規定され得る。複数のスポークは、隣接するスポーク間の境界を規定する肩部を有し得る。隣接するスポーク間の厚みの差異は、全体的に、当該スポークに沿っての径方向外側へのトラベリング(travelling)を減少させ得る。選択的に、スポークは、ハブ側端部及びリム側端部を有し得る。ハブ側端部における小型スポークの厚みは、ハブ側端部における大型スポークの厚みよりも著しく小さくし得る。リム側端部における小型スポークの厚みは、リム側端部における大型スポークの厚みと略同等にし得る。
【0009】
他の実施の形態では、鋳鋼製鉄道車輪は、軸方向の穿孔を有するハブを有しているものとして提供される。リムは、ボアと同心である。プレートは、ハブからリムに向かって実質的に放射状に延在している。プレートは、前面及び背面を有している。プレートは、前面と背面との間に規定される厚み寸法を有している。プレート上において、前面及び背面の少なくとも一方は、円周方向に一連に配置され、交互であるリッジ及びボイドを含んでいる。リッジは、隣接するボイドよりも厚く規定され、ボイドは、隣接するリッジよりも薄く規定される。
【0010】
選択的に、より厚いリッジは、より大容量の溶融金属が鉄道車輪の鋳造中に、ハブからリムに向かって流れることを許容し得る。リッジとボイドとの間の厚みの差異は、全体的に、前記ハブから径方向外側へのトラベリング(traveling)を減少させ得る。プレートは、リッジとボイドとの間の境界を規定する肩部を含み得る。選択的に、リッジは、プレートの略半分を含むことができ、ボイドは、プレートの略半分を含み得る。プレートは、リッジの間に挟まれたボイドとともに、およそ4つ乃至8つのリッジを有し得る。リッジ及びボイドは、プレートの略同等の切頭扇形を規定し得る。リッジは、ハブの近傍においてより厚く、リムの近傍においてより薄くし得る。選択的に、リッジ及びボイドは、前面上及び背面上の双方に備えられ得る。前面上及び背面上のリッジは、全体的に互いに整列され得る。前面上及び背面上のボイドは、全体的に相互に整列され得る。
【0011】
更なる実施の形態では、鋳鋼製鉄道車輪を製造するための鋳造組立体(casting assembly)は、溶融金属を保持するためのレードルを有するものとして提供される。当該鋳造組立体は、レードルから溶融金属を受容する鋳型を含んでいる。当該鋳型は、上型部分及び下型部分を、それらの間に規定され鉄道車輪を形成するべく形作られた型キャビティとともに有している。当該上型部分は、型キャビティの一部を規定する第一キャビティ面を有している。当該下型部分は、型キャビティの一部を規定する第二キャビティ面を有している。第一キャビティ面及び第二キャビティ面の少なくとも一方は、円周方向に一連に配置され、交互であるボス及びキャビティを有しており、当該ボス及び当該キャビティは、鋳造時に鉄道車輪の表面上に対応するリッジ及びボイドを形成する。
【0012】
選択的に、鋳造組立体は、型キャビティの径方向中央の位置で鋳型内に受容されるハブコア組立体を、更に有し得る。当該ハブコア組立体は、鋳造中に余剰の溶融金属を受容するべく構成されたハブライザを有し得る。当該ハブライザは、鉄道車輪の冷却及び凝固の間に、余剰の溶融金属を型キャビティへ供給する。ボスと整列された領域を通じてよりも、キャビティと整列された領域を通じてより大容量の溶融金属が型キャビティ内に注入される。
【0013】
選択的に、第一キャビティ面は、全体的に滑らかであり得て、ボス及びキャビティを含んでいないのに対して、第二キャビティ面は、ボス及びキャビティを含んでいる。選択的に、肩部がボスとキャビティとの間に延在し得る。当該肩部は、対応する第一キャビティ面又は第二キャビティ面に対し、略垂直とされ得る。選択的に、ボスは、対応するキャビティ面の略半分を含み得て、キャビティは、対応するキャビティ面の略半分を含み得る。当該ボス及び当該キャビティは、対応するキャビティ面の略同等の切頭扇形を規定し得る。型キャビティは、ボスに沿って径方向外側に移動するにつれて、当該ボスに沿って第一キャビティ面と第二キャビティ面との間で、実質的に一定の厚みを有し得る。型キャビティは、キャビティに沿って径方向外側に移動するにつれて、当該キャビティに沿って第一キャビティ面と第二キャビティ面との間で、全体的として減少していく厚みを有し得る。
【0014】
更なる実施の形態では、鋳鋼製鉄道車輪の製造方法は、上型部分及び下型部分を有する鋳型を、それらの間に規定され鉄道車輪を形成するべく形作られた型キャビティとともに提供する工程を含む。上型部分は、型キャビティの一部を規定する第一キャビティ面を有している。下型部分は、型キャビティの一部を規定する第二キャビティ面を有している。第一キャビティ面及び第二キャビティ面の少なくとも一方は、円周方向に一連に配置され、交互であるボス及びキャビティを有しており、当該ボス及び当該キャビティは、鉄道車輪の表面上に対応するリッジ及びボイドを形成する。上型部分は、径方向中央に配置されるハブ部を有しており、下型部分は、径方向中央に配置されるハブ部を有している。本製造方法は、溶融金属が型キャビティの上型部分及び下型部分の双方の中に入り込むように、下型部分及び上型部分のハブ部内に、溶融金属を注入する工程を含む。本製造方法は、溶融金属を、ハブ部に対して整列されたハブライザ内に注入する工程を含む。ハブライザ内の溶融金属は、溶融金属の注入の停止後に、溶融金属を型キャビティに供給するべく使用される。ボスと整列された領域よりも、キャビティと整列された領域を通じてより大容量の溶融金属が型キャビティ内に注入される。
【0015】
選択的に、型キャビティは、第一キャビティ面と第二キャビティ面との間に規定された厚みを有し得る。キャビティと整列された領域内の型キャビティの厚みは、ボスと整列された領域内の型キャビティの厚みよりも大きくされ得る。選択的に、本製造方法は、鉄道車輪が冷却し凝固するに従って、ハブライザから型キャビティ内に溶融金属を重力注入(gravity pouring)する工程を含んでよい。キャビティは、ボスよりも、溶融金属が流れる型キャビティ内のより大きな領域を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例示的な一実施の形態に従って形成された鉄道車輪を示している。
図2図1に示された車輪の平面図である。
図3図1に示された車輪の背面図である。
図4】車輪のより厚い領域を通る当該車輪の断面図である。
図5】車輪のより薄い領域を通る当該車輪の断面図である。
図6】車輪のより厚い部分及びより薄い部分に沿った、プレートの厚みの差異を示す当該車輪の断面図である。
図7】当該車輪を製造するための鋳造組立体の部分断面図である。
図8】当該車輪の背面を形成するべく使用される、鋳型の下型部分の例示的な一実施の形態を示している。
図9】代替的な実施の形態に従う当該車輪を製造するための他の鋳造組立体の一部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、例示的な一実施の形態に従って形成された鉄道車輪100を示している。車輪100は、車軸(不図示)の一端を従来の方式で受容するべく配置された軸方向の空洞104を有するハブ102を、含んでいる。ハブ102と一体に形成されそこから放射状に延在しているものは、プレート106である。リム108は、プレート106の径方向の外縁において周辺的に形成される。リム108は、トレッド面110と、車輪100のインボード側(車室側)上に当該トレッド面110の放射状に外方向に延在しているフランジ112と、を有する。例示的な一実施の形態では、リム108は、従来の方式で、ハブ102から車輪100のアウトボード側(車外側)に向かって、軸方向にオフセットされている。
【0018】
例示的な一実施の形態では、車輪100は、鋳造工程を用いて形成されており、当該車輪100を形成するべく、例えば溶鋼などの溶融金属が型キャビティに注入される。例示的な一実施の形態では、溶融金属は、型キャビティを充填するべく当該型キャビティ内に上注ぎ(top poured)される。あるいは、溶鋼は、型キャビティ内に加圧下注ぎ(bottom pressure poured)されてもよい。中央ハブライザ(central hub riser)は、型キャビティの完全な充填と、凝固後における車輪100内の金属の適正な空隙率と、を保証するために、キャビティ内に溶融金属を下方に供給できるようにするべく、鋳造工程の間、余剰の溶融金属をある期間にわたり保持(貯留)するために、使用される。溶融金属は、車輪100の冷却及び凝固の間、型キャビティに溶融金属を供給するべく、十分に長い期間にわたり液体のままである。溶融金属は、車輪100が冷却し凝固するに従って、ハブライザからプレート106を通じてリム108内に流れる。凝固は、全体的に、車輪100の外側から当該車輪100の内側に向かって生じる。
【0019】
例示的な一実施の形態では、車輪100は、とりわけプレート106において、より厚い領域を通じた凝固中の十分な金属の溶融流(molten flow)と、当該車輪100の全重量を減少させることの競合する利点と、を釣り合わせるべく、異なる厚みの領域、例えば、いくつかの厚い領域及びいくつかの薄い領域を有している。プレート106の薄い領域は、当該領域内により少ない金属材料が供給されるため、車輪100の全重量を減少させる。プレート106の厚い領域は、リム108に給送するための樋(gutters)又はパイプとして作用し、このようにして、車輪100の冷却及び凝固の間に溶融金属が流れるための、溶融管(molten tubes)を生成する。車輪100は外側から中へ冷却されるので、厚い領域内での車輪100は、より長い期間にわたり溶融した(凝固されない)まま残り、より長い期間にわたり溶融金属がハブ102からリム108に流れることを許容する。
【0020】
図2は、車輪100の平面図である。図3は、車輪100のインボード側を示す当該車輪100の背面図である。図4は、図3中の線4−4によって示される、車輪100のより厚い領域を通る当該車輪の断面図である。図5は、図3中の線5−5によって示される、車輪100のより薄い領域を通る当該車輪100の断面図である。
【0021】
図1乃至図5を参照すると、様々な厚みのプレート106が、ハブ102とリム108との間に延在する複数のスポーク120を含んで示されている。当該スポーク120は、互いと一体でありかつ車輪100の鋳造中に形成されており、プレート106がハブ102とリム108との間で連続的であるようになっている。隣接するスポーク120は、プレート106の前面122と背面124との間で規定された異なる厚みを有している。前面122は、アウトボード側に面しているのに対し、背面124は、インボード側に面している。図示された実施の形態では、プレート106の前面122は、滑らかで連続的である。もっとも、前面122は非連続的であり得るし、かつ、背面124に関して後に記述されるのと類似の特徴を含み得るということが理解される。例えば、代替的な実施の形態では、リッジ及びボイド126、128は、背面124よりむしろ前面122上に設けられ得る。他の代替的な実施の形態では、リッジ及びボイド126、128は、前面122及び背面124の双方の上に設けられ得る。そのような実施の形態では、前面及び背面122、124上のリッジ126は、互いに対して整列され得て、前面及び背面122、124上のボイド128は、互いに対して整列され得る。
【0022】
プレート106の背面124は、非連続的であり、一連の、リッジ126及び当該リッジ126間のボイド128により規定される。リッジ及びボイド126、128は、対応するスポーク120を規定する。例えば、一本のスポーク120は、複数のリッジ126のうちの一つを有するプレート106の領域により規定され、一方、隣接するスポーク120は、複数のボイド128のうちの一つを有するプレート106の領域により規定される。
【0023】
スポーク120は、円周方向に一連に配置され、交互に大型及び小型である、複数のスポーク130、132を含んでいる。大型スポーク130は、隣接する小型スポーク132よりも厚い。小型スポーク132は、隣接する大型スポーク130よりも薄い。大型スポーク130は、リッジ126を有するプレート106の一部である。小型スポーク132は、ボイド128を有するプレート106の一部である。リッジ126は、小型スポークと比較して、大型スポーク130の厚みを増大させる。ボイド128は、リッジ126間の小型スポーク132に沿って、プレート106の外面に規定される。
【0024】
大型スポーク130(例えば、より厚いスポーク)は、車輪100の鋳造中に、ハブ102からリム108に向かって、より大容量の溶融金属が流れることを許容する。小型スポーク132(例えば、より薄いスポーク)は、本質的に、車輪100の重量を減少するべく取り除かれた当該車輪100の体積(例えば、ボイド128)を有する。ボイド128の寸法(例えば、幅、厚み、長さ、形状)は、重量の減少を車輪100の構造的一体性及び強度に対して、釣り合わせるように選択され得る。リッジ126の寸法(例えば、幅、厚み、長さ、形状)は、鋳造工程中における、ハブライザからプレート106を通じてのリム108への溶鋼の供給を制御するべく選択され得る。例えば、より大型のリッジ126を有することは、凝固工程中に、より大容量の溶鋼がリム108に流れることを許容する。例えば、より大型のリッジ126を有することは、溶融管がより長い期間にわたって存続することを許容し、車輪100の内部(例えば、リッジ126の領域内)が凝固するためのより長い期間を受け持つ。
【0025】
肩部134は、リッジ126の外縁を規定する。ボイド128は、隣接するリッジ126の肩部134間で規定される。肩部134は、隣接する大型スポーク及び小型スポーク130,132間の境界を規定する。例示的な一実施の形態では、肩部134は、背面124に関して略垂直に延在している。選択的に、肩部134は、背面124の非連続的な表面間の滑らかな遷移を提供するべく、湾曲され得る。例えば、肩部134の底部に隅肉(fillet)が設けられ得る。代替的に、肩部134は、背面124に関して非垂直の角度に角度付けられ得る。
【0026】
例示的な一実施の形態では、同数のリッジ126及びボイド128が設けられる。ボイド128は、リッジ126間に挟まれている。例示的な一実施の形態では、リッジ126は、プレート106の背面124の略半分を含み得て、更に、ボイド128は、プレート106の背面124の略半分を含み得る。ボイド128又はリッジ126により覆われる領域は、当該ボイド128及び当該リッジ126の寸法及び形状に依存し得る。いくつかの実施の形態では、ボイド128が、プレート106の半分を超えた背面124を含み得る。他の実施の形態では、リッジ126が、プレート106の半分を超えた背面124を含み得る。図示された実施の形態では、プレート106は、6つのリッジ126と、当該リッジ126間に挟まれた6つのボイド128と、を有している。プレート106は、代替的な実施の形態では、6つよりも多い又は少ないリッジ126及びボイド128含み得る。選択的に、プレート106は、およそ4つ乃至8つのリッジ126を、それらの間に挟まれた対応するボイド128とともに含み得る。リッジ126及びボイド128の数は、車輪100の直径、当該車輪100の重量の所望の削減量、鋳造中にハブ102からリム108へ流れるために必要な溶融金属の量、及び/又は、鋳造工程中における車輪100の冷却及び凝固の速度に、依存し得る。図示された実施の形態では、リッジ126及びボイド128は、プレート106の略等しい切頭扇形を規定している。スポーク120が全体的にパイの形状になるよう、肩部134は、ハブ102から径方向外側に延在している。リッジ126の中央線は、ハブ102からリム108に向かって径方向外側に延びている。代替的な実施の形態では、他の形状が可能である。選択的に、リッジ126は、ボイド128とは異なって形作られ得る。
【0027】
図6は、大型スポーク130及び小型スポーク132(仮想線で示される)の双方に沿ったプレート106の厚みの差異を示す、車輪100の断面図であり、それらは、双方とも、図3中で確認される。リッジ126におけるプレート106は、ボイド128における当該プレート106よりも厚い。領域Aは、リッジ126によって規定され、当該リッジ126は、プレート106の増大された領域であり、車輪100の鋳造中に、ハブ102からリム108へより大容量の溶融金属が流れることを許容する。リッジ126においてプレート106の増大された厚みは、車輪100の鋳造中に、ハブ102からリム108へより大容量の溶融金属が流れることを許容する。ボイド128におけるプレート106は、リッジ126におけるプレート106よりも薄い。
【0028】
プレート106の厚みTは、前面122と背面124との間で規定される。ボイド128に沿って、プレート106は、厚みTを有している。リッジ126に沿って、プレート106は、全体として厚みTを有している。プレート106の径方向長さLは、ハブ102とリム108との間で規定される。リッジ厚Tは、プレート106の径方向長さLの少なくとも一部に沿って、ボイド厚Tよりも全体的に大きい。例示的な一実施の形態では、リッジ厚Tは、径方向長さLの大部分に沿って、ボイド厚Tよりも大きい。リッジ厚Tとボイド厚Tとの差異は、Tにより表される。選択的に、厚み差異Tは、径方向長さLに沿って可変的である。選択的に、厚み差異Tは、径方向長さLの少なくとも一部に沿ってゼロであり得る。
【0029】
スポーク120は、ハブ102の近傍にハブ側端部140を有しており、リム108の近傍にリム側端部142を有している。例示的な一実施の形態では、プレート106は、ハブ側端部140においてプレート106の前面及び背面122、124に沿って、隅肉144、146を含んでいる。プレート106は、リム側端部142の前面及び背面122、124において、隅肉148、150を含んでいる。隅肉144乃至150は、プレート106とハブ102又はリム108との間の滑らかな遷移を提供する。プレート106の厚みTは、隅肉144乃至150において、全体的に増大する。隅肉144乃至150は、プレート106とハブ102又はリム108との間の境界で、車輪100の強度を増大させる傾向がある。隅肉144乃至150は、プレート106とハブ102又はリム108との間の境界で、応力又は疲労亀裂を減少させる傾向がある。
【0030】
例示的な一実施の形態では、リッジ126に沿ったプレート106は、ハブ102近傍でより厚く、リム108近傍でより薄い。プレート106の厚みTの差異は、ハブ102から径方向外側へのトラベリングの径方向長さLに沿って、全体的に減少する。例示的な一実施の形態では、プレート106のボイド厚Tは、径方向長さLに沿って全体的に一定であるが、リッジ厚Tは、ハブ側端部140とリム側端部142との間で全体的に減少している。背面124に沿った点Pにおいて、リッジ126はプレート106内に遷移し、点Pの径方向外側において、リッジ及びボイド126、128は消滅するようになっているが、プレート106は、当該プレート106がリム108内に遷移するに従って滑らかな連続的な表面を有している。点Pの径方向外側における厚みTの差異は、ゼロである。
【0031】
リッジ126は、大型スポーク130を規定し、ボイド128は、小型スポーク132を規定する。例示的な一実施の形態では、ハブ側端部140における小型スポーク132の厚みTは、ハブ側端部140における大型スポーク130の厚みTよりも著しく小さい。リム側端部142における小型スポーク132の厚みTは、当該リム側端部142における大型スポーク130の厚みTと略同等である。
【0032】
代替的な実施の形態では、リッジ126及びボイド128が背面124上に設けられるのではなく、当該リッジ及びボイドは、前面122上に設けられ得て、これについては、仮想線で示されたリッジ126’及びボイド128’により図6中に示されている。他の代替的な実施の形態では、リッジ126及び126’の双方は、前面及び背面122、124の双方の上に設けられ得て、ボイド128及び128’の双方は、前面及び背面122、124の双方の上に設けられ得る。図7は、車輪100などの鋳造物品を製造するための、鋳造組立体160の部分断面図である。ここに示される方法及び工程を用いて、他の物品が鋳造され得る。組立体160は、溶鋼などの溶融金属を保持するレードル162と、鋳型180内に溶鋼を注入するための鋳込管組立体(pouring tube assembly)164と、を含んでいる。鋳込み処理中に、溶融金属は、鋳込管組立体164を通じて鋳型180内に注入される。鋳型180は、鉄道車輪100を形成するべく、鋳造操作中に鋳込管組立体164から、溶融金属を受容する。
【0033】
鋳型180は、上型部分又は上方領域182と下型部分又は下方領域184とを含んでいる。上型部分182は、完全な鋳型組立体を提供するべく、下型部分184の上部に配置される。下型部分184及び上型部分182は、鋳造物品を冷却するべく、通常は急速に熱を散逸させる黒鉛材料又は他の材料を、含んでいる。型キャビティ186は、上型部分182と下型部分184との間で規定され、鉄道車輪100を形成するべく形作られている。例えば、上型部分182及び下型部分184の双方は、その内部に機械加工された車輪キャビティの一部を有し得て、鉄道車輪100のための鋳物を共に規定する。
【0034】
上型部分182は、型キャビティ186の一部を規定する第一キャビティ面188を有している。下型部分184は、型キャビティ186の一部を規定する第二キャビティ面190を有している。例示的な一実施の形態では、第一及び/又は第二キャビティ面188、190は、ハブ102、プレート106及びリム108を規定するべく形作られている。第一及び/又は第二キャビティ面188、190は、プレート106の背面124及び/又は前面122上にリッジ及びボイド126、128を規定する、という特徴を含み得る。
【0035】
例示的な一実施の形態では、鋳型180は、車輪100のハブ102を形成するためのハブコア組立体192を有している。例示的な一実施の形態では、ハブコア組立体192は、車軸を受容するハブ102の空洞104を規定する、柱194を含んでいる。ハブコア組立体192は、鋳込み工程中に余剰の溶融金属を受容するハブライザ196を含んでいる。例えば、余剰の溶融金属がハブライザ196から型キャビティ186内に重力供給されるという重力注入工程によって、当該ハブライザ196は、鉄道車輪100の冷却及び凝固の間に、余剰の溶融金属を型キャビティ186に供給する。重力注入工程は、加圧注入工程の後、冷却/凝固工程の間に生じる。図示された実施の形態では、ハブライザ196は、鋳型180の上型部分182の一部であり得る。例えば、上型部分182は、型キャビティ186の上方に、機械加工されたキャビティを含み得て、当該キャビティは、鉄道車輪100が冷却し凝固するに従って、型キャビティ186内への後の放出のために、余剰の溶融金属を受容し、かつ、当該余剰の溶融金属を保持する。
【0036】
代替的な実施の形態では、ハブライザ196は、柱194に置き換わり、かつ、鉄道車輪100が冷却し凝固するに従って余剰の溶融金属がハブコア部材から型キャビティ186内に流れることを許容する開口を有する、円筒状のコア部材などの分離した構成要素であり得る。ハブコア部材は、最終的には空洞104を規定する空間を充填することにより、ハブ102内に当該空洞104を形成し得る。
【0037】
金属が冷却し凝固するに従って、金属は収縮し、型キャビティ186を完全に充填するべく追加的な量の溶融金属を必要とするであろう。ハブライザ内の余剰量の溶融金属が、型キャビティ186の容積を充填するべく使用される。選択的に、ハブライザ196(及び/又はハブコア)は、型キャビティ186内に径方向中心に配置され得る。
【0038】
図8は、車輪100の背面124を形成するべく使用される、鋳型180の下型部分184を示している。下型部分184は、リッジ126及びボイド128を形成するべく形作られている。例示的な一実施の形態では、下型部分184の第二キャビティ面190は、円周方向に一連に配置され、交互であるボス200及びキャビティ202を有しており、当該ボス200及び当該キャビティ202は、鉄道車輪100の背面124上に、対応するボイド128及びリッジ126を形成する。ボス200は、型キャビティ186内に延びており、キャビティ202は、当該ボス200の間に挟まれている。ボス200及びキャビティ202は、対応するボイド128及びリッジ126を規定するための、あらゆる寸法及び/又は形状とされ得る。図示された実施の形態では、ボス200及びキャビティ202は、第二キャビティ面190の板状領域204に沿って、当該第二キャビティ面190の略等しい切頭扇形を規定している。第二キャビティ面190はまた、ハブ102を形成するべく使用されるハブ領域206と、リム108を形成するべく使用されるリム領域208と、を有している。板状領域204は、リム領域206とハブ領域208との間に配置される。板状領域204は、滑らかでなく、むしろ、非連続的であり、ボス200及びキャビティ202によって規定されている。
【0039】
肩部210は、ボス200とキャビティ202との間に延在している。肩部210は、第二キャビティ面190と垂直に延在している。選択的に、肩部210は、第二キャビティ面190に関して非垂直の角度で角度付けられ得る。肩部210は、ボス200とキャビティ202との間の滑らかな遷移を規定するべく、湾曲され得る。例示的な一実施の形態では、ボス200及び/又はキャビティ202は、互いに関して先細りにされ、リム領域208の近傍において、ボス及びキャビティ200、202が全体的に互いに一致するようになっており、ハブ領域206の近傍において、ボス200がキャビティ202に関して上昇されている。
【0040】
選択的に、ボス200は、第二キャビティ面190の領域の略半分を含み得て、キャビティ202は、当該第二キャビティ面190の領域の略半分を含み得る。代替的な実施の形態では、ボス200は、第二キャビティ面190の領域の半分を超えて含み得る。代替的な実施の形態では、キャビティ202は、第二キャビティ面190の領域の半分を超えて含み得る。
【0041】
上型部分182と下型部分184とが一体に組み立てられるときに、型キャビティ186は、キャビティ202に沿った場合と比較して、ボス200に沿った場合には異なる厚みを有している。型キャビティ186は、キャビティ202に沿って、より厚みがあり、このことは、ボス200と整列された領域を通じた場合よりもキャビティ202に対して整列された領域を通じて、より大容量の溶融金属が、型キャビティ186内に注入されることを許容する。キャビティ202は、最終的に鉄道車輪100のリッジ126を形成し、ボス200は、最終的に鉄道車輪100のボイド128を形成する。ボス200は、型キャビティ186の容積を満たす傾向にあり、車輪100を形成するために使用される金属材料の総量を減少させ、このようにして、当該車輪100の全重量を減少させる。
【0042】
図9は、車輪100などの鋳造物品を製造するための代替的な実施の形態に従う加圧下注鋳造組立体(bottom pressure casting assembly)260の部分断面図である。ここに示される方法及び工程を用いて、他の物品が鋳造され得る。組立体260は、保持タンク264内に配置されたレードル262を含んでいる。タンクカバー266及び鋳込管組立体268は、容器272を密閉するべく、保持タンク264の上部270上に配置される。鋳込管組立体268は、レードル262内のタンクカバー266から当該レードル262の底部276付近まで延びる鋳込管274を含んでいる。溶鋼などの溶融金属は、レードル262内に保持される。鋳込管274は、セラミック材料を含み得る。
【0043】
鋳込操作中に、加圧された空気又は不活性ガスが、容器272内に圧力下で注入され、それにより、鋳込管274を通じて、レードル262及び保持タンク264の上方に配置された鋳型280内に、溶融金属を上方に押しやる。鋳型280は、鉄道車輪100を形成するべく、鋳造操作中に鋳込管274から溶融金属を受容する。
【0044】
鋳型280は、上型部分又は上方領域282と下型部分又は下方領域284とを含む。上型部分282は、完全な鋳型組立体を提供するべく、下型部分284の上部に配置される。加圧下注鋳造工程(bottom pressure casting process)では、下型部分284及び上型部分282は、鋳造物品を冷却するべく、通常は黒鉛材料又は急速に熱を散逸させる他の材料を含んでいる。型キャビティ286は、上型部分282と下型部分284との間で規定され、鉄道車輪100を形成するべく形作られている。例えば、上型部分282及び下型部分284の双方は、その内部に機械加工される車輪キャビティの一部を有し得て、当該車輪キャビティは、鉄道車輪100のための鋳物を共に規定する。
【0045】
上型部分282は、型キャビティ286の一部を規定する第一キャビティ面288を有している。下型部分284は、型キャビティ286の一部を規定する第二キャビティ面290を有している。例示的な一実施の形態では、第一及び/又は第二キャビティ面288、290は、ハブ102、プレート106及びリム108を規定するべく形作られている。第一及び/又は第二キャビティ面288、290は、プレート106の背面124及び/又は前面122上にリッジ及びボイド126、128を規定する、という特徴を含んでいる。
【0046】
例示的な一実施の形態では、鋳型280は、車輪100のハブ102を形成するためのハブコア組立体292を有している。鋳造の間、ハブコア組立体292は、鉄道車輪100の形成のため型キャビティ286が溶融金属で充填されたときなどに、鋳込管274を通じて型キャビティ286内への溶融金属の加圧鋳込(pressurized pouring)を停止させるために使用される。
【0047】
例示的な一実施の形態では、ハブコア組立体292は、ボア104及びハブ102の形成のため、ハブコア294を含む。ハブコア294は、加圧鋳込工程の間に余剰の溶融金属を受容するハブライザ296を規定する、キャビティを含む。余剰の溶融金属がハブライザ296から型キャビティ286内に重力供給されるという重力注入工程などによって、当該ハブライザ296は、鉄道車輪100の冷却及び凝固の間に、余剰の溶融金属を型キャビティ286に供給する。ハブコア294は、鋳型280内において移動可能な円筒状のコア部材である。ハブコア294は、開口298を含んでおり、当該開口298は、鋳込み機構からの当該溶融金属の加圧鋳込の間、溶融金属がハブライザ296内に流れることを許容し、更に、鉄道車輪100が冷却し凝固するに従って、余剰の溶融金属がハブライザ296から型キャビティ286内に流れることを許容する。
【0048】
上記の説明は、例証であり非制限的なものとして意図されていることが理解されるべきである。例えば、上記された具体例(及び/又はその特徴)は、互いに組み合わせて使用され得る。さらに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるべく、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形がなされ得る。ここで説明された、様々な構成要素の寸法、材料のタイプ、向き、更に、様々な構成要素の数及び位置は、特定の実施の形態のパラメータを規定することが意図されたに過ぎず、決して制限的なものではなく、単に例示的な実施の形態に過ぎない。前記の説明を概観することにより、特許請求の範囲の精神及び範囲内で多くの他の実施の形態及び変形が、本技術分野における当業者にとって明らかである。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に、決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「〜を含む(including)」及び「その中に(in which)」の語句は、「〜を含む(comprising)」及び「その中に(wherein)」の各語句の平易な英語の同義語として用いられている。更に、以下の特許請求の範囲では、「第一(first)」、「第二(second)」及び「第三(third)」などの語句は、単にラベルとして用いられているに過ぎず、それらの物品について数の要件を課すことは意図されていない。更に、以下の特許請求の範囲の限定は、ミーンズ・プラス・ファンクション形式(means-plus-function format)で記載されたものでなく、そのような特許請求の範囲の限定が、追加的な構造を含まない機能の陳述が後続する「means for」フレーズを明白に使用しない限り、35USC112条、6項に従って解釈されることを意図されていない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9