(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る吸収性物品の検査方法の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら、以下に説明する。まず、吸収性物品の検査方法を実施する検査装置の好ましい一例を、
図1によって説明する。
【0010】
図1に示すように、本発明の吸収性物品の検査装置100は、照明部110から照明光Lを照射し、その照明光Lにより照明された検査領域(図示せず)の反射光Lrを撮像部120で受光して撮像する。
上記照明部110は、検査領域を照明する光を発光する発光部111と、発光部111の発光素子を発光させる電源部112とを有する。発光部111は、図示はしなしが、LED発光素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子、白色蛍光管、白熱電球等の白色発光素子を用いる。
【0011】
照明部110は、通常の白色照明光(色温度が例えば4200Kから6500K)を照射する照明装置を用いることが好ましい。また、吸収体10に照射される照明光Lにむらを生じないように、図示はしないが複数の白色LED発光素子が複数行複数列に配列されている。さらに、むらのない均一な照度の照明光とするために、照明装置内の側面等に反射板が配されていても好ましい。その照度は、反射画像が得られる照度であればよく、撮像素子の感度にもよるが、露出オーバーとならない照度以下が好ましい。また、照明光Lの半透明不織布21に対する照射角度は10°以上、80°以下であり、好ましくは撮像範囲を均一に照射する観点から30°以上60°以下である。図示例では照射角度を45°とした。
【0012】
撮像部120は、カメラ本体部121と撮像レンズ122を有する撮像装置を用いることが好ましい。カメラ本体部121の撮像素子には、固体撮像素子を用いることによりデジタル処理による画像処理がしやすくなる。固体撮像素子としては、カラー撮像素子を用い、例えば128階調以上の階調表現ができる撮像素子であればよく、電荷結合素子(CCD)であってもCMOSセンサであってもよい。また、撮像素子の画素数は、十分な解像度を得るために、好ましくは400画素以上、より好ましくは600画素以上であればよい。なお、画像処理速度が遅くなるために必要以上に高画質(高画素)にする必要はない。また撮像素子の2画素もしくは4画素またはそれ以上の複数画素を1画素として、階調表現を高めてもよい。また、撮像レンズ122には検査領域が撮像できる焦点距離のレンズであればよく、画像の歪みを少なくするうえでは短焦点レンズよりも長焦点レンズのほうが好ましい。長焦点レンズとは標準レンズよりも焦点の長いレンズをいう。標準レンズとは通常のフィルムカメラの35mm判換算で焦点距離がおよそ43mmから58mmのレンズをいう。
【0013】
撮像部120には、撮像した画像信号を処理する画像処理部130が接続されている。画像処理部130は、例えば、専用の画像センサ用コントローラを用いるのがよく、またはパーソナルコンピュータを用いることもできる。そして、下記に説明する画像処理を実行するとともに、「検査開始信号」を入力し、検査を開始するものであればよい。
【0014】
次に、撮像部120によって取得された吸収体の画像の画像処理を含む検査方法の実施形態を、以下に説明する。
【0015】
図2に示すように、予め、吸収性物品における吸収体の非肌面に配された難透明である裏面シート2に検査領域31を設定する。難透明とは、目視によって裏面シートに被覆された物体に印刷された文字、記号、図形等の形状の輪郭が容易に視認できない状態をいう。例えば、裏面シート2の最外部(非肌面側と肌面側の最外面)に配される吸収体下不織布には、半透明シートである半透明不織布21が用いられる。半透明とは、目視によって半透明シートの裏面側に配された印刷が施された物体の印刷された文字、記号、図形等の形状の輪郭が視認できる状態をいう。この半透明不織布21の各角部付近には検査領域31が設定されている。この検査領域31は、裏面シート2に印刷された、有色の図形、文字、記号等のデザインからなる印刷領域33上で、半透明不織布21に検査領域31の面積の1/2程度かかるように、例えば長方形に設定されることが好ましい。より具体的には、検査領域31は、半透明不織布21の長手方向で対向する両辺の幅方向端部の合計4か所に設定される。しかも、検査領域31は、検査領域31の例えば半分が半透明不織布21にかかり、残りの半分が半透明不織布21から長手方向に外れて裏面シート2上に存するように、設定される。この設定は検査領域31の半分に限定されることはない。
【0016】
そして前記
図1に示した検査装置100において、
図3に示すように、先ず、「色範囲指定」S1を行う。次に「検査開始信号入力の有無」S2にて検査開始信号Sgが入力されたか否かを判断する。
検査開始信号Sgは図示しない外部の装置あるいは検査員によって入力される。検査開始信号入力の有無」S2が「No」、すなわち、検査開始信号Sgの入力がない場合には、検査開始信号Sgの入力を待機する。
上記判断で「Yes」の場合、すなわち、検査開始信号Sgが入力された場合には、
図2を参照して説明した検査領域31に対し、「撮像」S3で、半透明不織布22側から撮像を行う。そして検査領域31を含む撮像画像をRGB画像として取得する。
次に、
図1に示した画像処理装置130により、「検査領域の抽出」S4では、撮像画像から検査領域31の画像(
図3参照)を抽出する。
次いで、「色抽出処理」S5で検査領域内の撮像画像をRGB表色系からHSV表色系に変換して、検査領域31の色情報を取得する。ここでの変換は、HSL表色系に変換してもよい。そして画素の2値化処理を行う。すなわち、検査領域内かつ良品範囲内にある画素を白(255,255,255)、良品範囲外の画素を黒(0,0,0)に変換した画像を作成する。
次に、「結果判別処理」S6を行う。その詳細は後述する。
そして、「良品判別し、結果出力」S7で検査領域の色が良品か不良品かを判別してその結果を出力する。
「Yes」の場合には、良品判別結果フラグFをONとして「良品の信号出力」S8を行う。一方、「No」の場合には、良品判別結果フラグFをOFFとして「不良品の信号出力」S9を行う。
【0017】
上記「色範囲指定」S1について、詳細に説明する。
「色範囲指定」S1は、裏面シート2のデザインで用いる色のすべてについて、半透明不織布の配置が規定の範囲内か否かを判定する際に用いる上記デザインの色の指定である。例えば、
図4に示すように、紺色、緑色、オレンジ色、青色、紫色の5色を用いたとする。この場合、例えば、CMYK表色系に基づいて、100%となる基準色を決定する。例えば、上記紺色はC100M90、上記緑色はC80Y100、上記オレンジ色はM75Y100、上記青色はC100M40、上記紫色はC55M100の色を100%基準色として選択する。そして、各100%基準色について、100%から10%まで、10%ずつ透明度を低下させた色を求め、それらを各透明度の基準色とする。上記透明度は印刷濃度とすることができる。それぞれのサンプルは、例えば10mm×10mmとすることができる。このサンプルの大きさは、上記に限定されず、更に大きくてもよく、撮像部110(
図1参照)の解像度が充分に高い場合にはさらに小さくてもよい。方形の場合の大きさは、好ましくは20mm四方、より好ましくは10mm四方である。
【0018】
具体的には、
図5に示すように、上記サンプルに対して色範囲の指定のための「撮像」S11を行う。この撮像では、上記100%基準色および透明度(印刷濃度)を順次低下させた各基準色について撮影を行い、裏面シートの印刷濃度が振れた場合の許容範囲を見極める。撮影は、各基準色について、半透明不織布が無い場合と1枚ある場合について行い、それぞれについて、検査領域の撮像画像のRGB画像から彩度を求める。すなわち、半透明不織布の存在領域に基づいて彩度を求める。
上記半透明不織布21は、坪量が17g/m
2の白色のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布を用いる。
撮影条件は、絞りf=1.4、シャッタースピード=1/5000s(電子シャッター)、照明照度8000lxとする。
【0019】
続いて、撮影ごとに「RGBからHSVへ変換」S12で、上記撮影で得た画像を、RGB表色系(以下、RGBともいう。)からHSV表色系(以下、HSVともいう。)に変換する。具体的には、RGB色空間からHSV色空間に変換する。この変換は既知の変換方法による。
RGBからHSVへの変換は以下のように行う。
RGB色空間のR,G,B∈[0,1]から、最大M=max(R,G,B)と、最小m=min(R,G,B)を求める。すなわち、各色R,G,Bの最大値と最小値を求める。
HSV、HSL色空間の彩度S
HSV、彩度S
HSLはM、mの二つの値から求まる。
M=m=0の場合、S
HSV=0となる。
M=m=0以外の場合、S
HSV=(M−m)/Mとなる。
上記式では、M=m、つまりR=G=Bのとき彩度が0、m=0、つまりR,G,Bのいずれかが0のとき彩度が1となることがわかる。
ただし、HSVでは黒の場合、そのままでは彩度が不定となるので、その場合の彩度は0とする。
またHSL色空間の場合もHSV色空間と同様である。
M=m=0の場合、S
HSL=0となる。
M=m=0以外の場合、S
HSL=(M−m)/(1−|M+m−1|)となる。
この場合も、M=m、つまりR=G=Bのとき彩度が0、m=0、つまりR,G,Bのいずれかが0のとき彩度が1となることがわかる。
ただし、HSLでは白または黒の場合、そのままでは彩度が不定となるので、その場合の彩度は0とする。
【0020】
次に、「検査領域内の良品範囲を指定」S13で、検査領域内のHSV化した画像のHSVヒストグラムを得て、そのヒストグラムを基にHSVの良品範囲を指定する。良品範囲は、
図6に示す通り、基準となる印刷部分の彩度のピークを含む山となっている領域である。
まず、上記各基準色の各色について、HSVヒストグラムを得る。例えば、上記紺色の100%基準色についてみると、半透明不織布が1枚被覆された場合には、
図6(a)に示すようなヒストグラムが得られる。また半透明不織布が1枚も被覆されていない場合には、
図6(b)に示すようなヒストグラムが得られる。このようなヒストグラムを各基準色の濃度100%から0%までについて得る。
【0021】
次に、各ヒストグラムから各色の色範囲を得る。各色範囲では、各基準色の半透明不織布が無い場合と1枚ある場合の印刷濃度による彩度を求める。その結果は例えば
図7から
図11に示すようになる。
図7に示すように、紺色(C100M90)の場合、印刷濃度が60%以上の場合を良品の商品と認識する。なお、白色と印刷領域の階調差は159階調であった。
図8に示すように、緑色(C80Y100)の場合、印刷濃度が80%以上の場合を良品の商品と認識する。なお、白色と印刷領域の階調差は108階調であった。
図9に示すように、オレンジ色(M75Y100)の場合、印刷濃度が70%以上の場合を良品の商品と認識する。なお、白色と印刷領域の階調差は158階調であった。
図10に示すように、青色(C100M40)の場合、印刷濃度が70%以上の場合を良品の商品と認識する。なお、白色と印刷領域の階調差は175階調であった。
図11に示すように、紫色(C55M100)の場合、印刷濃度が70%以上の場合を良品の商品と認識する。なお、白色と印刷領域の階調差は93階調であった。
上記良品の商品と認識するのは、半透明不織布が無い場合の彩度と1枚ある場合の彩度が例えば50階調以上の差が生じた場合を良品と認識する。このように彩度の階調差が50階調以上あれば、半透明不織布の有無を確実に認識できる。
【0022】
次いで、「良品範囲の格納」S14で、上記各色の良品範囲を画像処理部130(
図1参照)内の記憶部(図示せず)に格納して色範囲指定が終了する。
【0023】
次に
図3に示した上記「色抽出処理」S5について説明する。
「色抽出処理」S5は、前述の通り「撮像」S3によって得た検査領域31を含む画像から上記「検査領域の抽出」S4で抽出した検査領域31の画像に対して行う。
「色抽出処理」S5は、
図12に示すように、「RGBからHSVに変換」S21で検査領域31の画像をRGB表色系(色空間)からHSV表色系(色空間)に変換する。ここでの変換は、HSL表色系に変換してもよい。続いて「画素の2値化処理」S22を行う。すなわち、前述の「色範囲指定」S1で定めた、予め取得しておいた半透明シートの色範囲と取得しておいた色情報とを比較して半透明不織布の存在領域を抽出する。半透明シートの存在領域は、色範囲および色情報の彩度により抽出する。そして検査領域内かつ良品範囲内にある画素を白(255,255,255)、範囲外の画素を黒(0,0,0)に変換した画像を作成する。
そして、「変換画像の格納」S23で、上記HSVに変換した画像を画像処理部130(
図1参照)内の記憶部(図示せず)に格納する。この点は、
図17を参照して後述する。
【0024】
次に、
図3に示した上記「結果判別処理」S6について説明する。
「結果判別処理」S6は、
図13に示すように、「検査領域内の白色画素数のカウント」S31で、上記「画素の2値化処理」S22によって得た白色画素を計数する。そしてあらかじめ設定した上限画素数THおよび下限画素数TLと白色画素数nを比較する(S32参照。)。その結果、nがTL<n<THの範囲であれば、良品と判別され「判別結果フラグFをON」S33とする。一方、上記範囲外は不良品と判別され「判別結果フラグFをOFF」S34とする。
上限画素数THおよび下限画素数TLは、白色画素数nの測定結果を基に決定する。すなわち、同一サンプルを複数回撮像してnの振れを測定する、または複数のサンプルを撮像してnの振れを測定する。そしてnの上限値n
maxおよび下限値n
minを求める。ここでnの振れに対する余裕代をαとすると、TL=n
min−α、TH=n
max+αとなる。αは振れに対する余裕代として0以上の任意の正の整数で設定する。
【0025】
例えば、裏面シート2に何がしかが印刷された部分において、半透明不織布が1枚配されている場合を正常な良品とし、全く配されていない状態および2枚の半透明不織布が配されている場合を不良品とした。この場合、上記の検査方法では、以下のように判別する。
図14(a)に示すように、裏面シート2に何がしかが印刷された部分において、半透明不織布が1枚配されている。この場合は、印刷領域の色解析をすると、
図14(b)に示すようなヒストグラムが得られる。すなわち、彩度が低い領域に白い文字を示すピークがあり、さらに基準となる印刷領域を示す彩度のピークが現れている。なお、各ヒストグラムは縦軸に画素個数を取り、横軸に彩度を取っている。さらに、色(彩度)抽出処理をすることによって、
図14(c)に示すような印刷領域の画像が得られる。さらに収縮、膨張処理を行うことで、
図14(d)に示すような印刷領域の画像が得られる。
【0026】
図15(a)に示すように、裏面シート2に何がしかが印刷された部分において、半透明不織布が配されていない。この場合は、印刷領域の色解析をすると、
図15(b)に示すようなヒストグラムが得られる。すなわち、半透明不織布が1枚配されている場合と同様の彩度が低い領域に白い文字を示すピークが存在する。さらに半透明不織布がない分だけ彩度が高い領域に基準となる印刷領域を示す彩度のピークが現れている。さらに、色(彩度)抽出処理をすることによって、
図15(c)に示すような印刷領域の画像が得られる。さらにフィルタ処理として収縮、膨張処理を行うことで、
図15(d)に示すような印刷領域の画像が得られる。
【0027】
図16(a)に示すように、裏面シート2に何がしかが印刷された部分において、半透明不織布が2枚配されている。この場合は、印刷領域の色解析をすると、
図16(b)に示すようなヒストグラムが得られる。すなわち、半透明不織布が1枚配されている場合と同様の彩度が低い領域に白い文字を示すピークがある。さらにこのピークと重なるように、半透明不織布が2枚になった分だけ彩度が低い領域に基準となる印刷領域を示す彩度のピークが現れている。なお、この彩度のピークより高い位置にある小さな彩度のピークは、印刷領域が完全に2枚の半透明不織布で覆われておらず、一部が半透明不織布1枚に覆われている。そのため、半透明不織布1枚に被覆されている部分の彩度のピークである。さらに、色(彩度)抽出処理をすることによって、
図16(c)に示すような印刷領域の画像が得られる。さらにフィルタ処理として収縮、膨張処理を行うことで、
図16(d)に示すような印刷領域の画像が得られる。
【0028】
画像処理における上記フィルタ処理は、一般的に、3行3列の画素のフィルタを用いる。そして、3×3画素の画像を対象として、0から255階調の画像に対して、以下のように処理する。
フィルタ処理における収縮処理では、3×3の中心の画素の輝度を、中心の画素とその周りの画素の合計9個のなかでの最小輝度に置き換える。この処理によって、白いノイズ成分が除去される。
フィルタ処理における膨張処理では、3×3の中心の画素の輝度を、中心の画素とその周りの画素の合計9個のなかでの最大輝度に置き換える。この処理によって、黒いノイズ成分が除去される。
【0029】
このように、裏面シート2上に半透明不織布が重なるごとに印刷領域の彩度が低くなる。したがって、半透明不織布が1枚のときの彩度を抽出することで、半透明不織布のめくれや有無を検出することができる。
【0030】
次に、上記検出方法にしたがって、半透明不織布の検出アルゴリズムを以下に説明する。
図17(a)、(b)に示すように、裏面シート2(もしくは吸収体(図示せず))上に半透明不織布21が配された場合の検査領域31を設定する。この設定方法は、
図2を参照しながら説明した上述の通りである。
図17(a)は良品の場合であり、
図17(b)は半透明不織布21が一部めくれた不良品の場合である。
【0031】
次に、前記「撮像」S3によって上記検査領域31を撮像し、「検査領域の抽出」S4によって検査領域を含む撮像画像から検査領域の画像を抽出する。次に前記「色抽出処理」S6を行う。前述のように、予め半透明不織布が1枚配された状態の裏面シート2に印刷された色を計測する。そして
図17(c)に示すように、得られたヒストグラムから、上記説明したのと同様にして、彩度の良品範囲Gを設定する。
【0032】
このとき、「RGBからHSVに変換」S21によって、撮影された検査領域の色を計測する。そして「2値化処理」S22によって、
図17(d)に示すように、彩度が良品範囲Gにある部分を白色に変換し、白色の部分の面積を計算する。次に前記「良品の判別」S8において、
図17(e)に示すように、上記計算した面積が良品の範囲内であれば良品「OK」と判定し、良品の範囲外であれば不良「NG」と判定する。
【0033】
次に、白色の裏面シート上に白色の半透明不織布を配した場合について、上記の緑色(C80Y100)、オレンジ色(M75Y100)、青色(C100M40)、紫色(C55M100)の各100%基準色のHSV(色相、彩度、明度)を調べた。同様に、白色の裏面シートのみの場合、白色の裏面シートに印刷領域を配してその上に白色の半透明不織布を配した場合、および白色の裏面シートに印刷領域33を配した場合について、上記の緑色、オレンジ色、青色、紫色の各100%基準色のHSVを調べた。印刷領域は、文字などはなく、各基準色のみを印刷した、いわゆる、べた塗りにされている。なお、吸収性物品の品種によって各色を変更することで、吸収性物品の品種を見分けることができるようになる。
その結果を
図18から
図21に示す。
【0034】
図18に示すように、緑色(C80Y100)の場合、半透明不織布の有無によって、彩度では印刷領域において誤差範囲よりも大きい差を生じた((b)参照)。色相には大きな差が無く((a)参照)、明度では白色の裏面シート上に白色の半透明不織布を配した場合に差異を見いだせた。一方、印刷領域上では、差があったが誤差範囲内であった((c)参照)。
したがって、印刷領域上の彩度を検出することにより、半透明不織布の有無を判定できることが実証された。
【0035】
図19に示すように、オレンジ色(M75Y100)の場合、半透明不織布の有無によって、彩度では印刷領域において誤差範囲よりも大きい差を生じた((b)参照)。色相では印刷領域において半透明不織布が無い場合には色相が0であり、半透明不織布がある場合にはわずかに色相があり、両者にわずかな差が生じた((a)参照)。また、明度では白色の裏面シート上に白色の半透明不織布を配した場合に差異を見いだせた。一方、印刷領域上では、差があったが誤差範囲内であった((c)参照)。
したがって、印刷領域上の彩度を検出することにより、半透明不織布の有無を判定できることが実証された。
【0036】
図20に示すように、青色(C100M40)の場合、半透明不織布の有無によって、彩度では印刷領域において誤差範囲よりも大きい差を生じた((b)参照)。色相では大きな差が無く((a)参照)、明度では白色の裏面シート上に白色の半透明不織布を配した場合に差異を見いだせた。一方、印刷領域上では差があったが誤差範囲内であった((c)参照)。
したがって、印刷領域上の彩度を検出することにより、半透明不織布の有無を判定できることが実証された。
【0037】
図21に示すように、紫色(C55M100)の場合、半透明不織布の有無によって、彩度では印刷領域において誤差範囲よりも大きい差が生じた((b)参照)。色相では大きな差が無く((a)参照)、明度では白色の裏面シート上に白色の半透明不織布を配した場合に差異を見いだせた。一方、印刷領域上では差があったが誤差範囲内であった((c)参照)。
したがって、印刷領域上の彩度を検出することにより、半透明不織布の有無を判定できることが実証された。
【0038】
上記印刷領域の形状は長方形の検査領域の範囲であることが好ましい、また、検査領域内であれば、いかなるデザインの印刷であってもよい。
例えば、
図22(a)、(b)に示すように、裏面シート2の幅方向の最外部側にサイドシート5の一部が折り込まれ、さらに裏面シート2の長手方向に半透明不織布21が配されている。そして、裏面シート2の検査領域31に印刷領域33(
図23参照。)が配されている。このような場合、検査領域31は、裏面シートの幅方向両側がサイドシート5により被覆されているため、その被覆領域は避けて設定される。例えば、裏面シート2の両側からそれぞれ45mmの範囲は避けることが好ましい。
また、半透明不織布21の角折れの検出感度を高めるために、検査領域31は、幅方向に離間して2箇所を、長手方向両端部(長手方向前後端部ともいう。)側に配することが好ましい。すなわち、離間して4か所に配しることが好ましい。
例えば、裏面シート2の幅方向中央より外側に20mmの位置に検査領域31の幅方向の中心が一致するように配することが好ましい。また半透明不織布21の配置振れもしくは裏面シート2の配置振れを考慮すると、半透明不織布21の長手方向前後端部より長手方向内側に15mmの位置に配することが好ましい。
検査領域31は、例えば印刷領域33の中心より長手方向に±20mmとすることが好ましい。また、印刷領域33の検出の安定度、デザインの自由度を持たせるために、検査領域31の幅は20mmとする。すなわち、検査領域31は、長手方向に40mmとし、幅方向に20mmとする。そして、検査領域31の面積における印刷領域33の面積は50%以上とすることが検出感度を維持するうえで好ましい。
また検出領域31内の印刷領域33の着色は、べた塗りとすることが好ましく、その内部にべた塗りの面積に対して50%以上の着色領域である印刷領域33が確保されていることが好ましい。
【0039】
図23(a)、(b)に示すように、検査領域31に対して上記印刷領域33は種々の形状の模様で構成することもできる。ただし、一つの模様の大きさが、検査の安定性、すなわち撮像した画像の分解能を考慮すると、例えば7mm四方より大きいことが好ましい。
また、
図23(f)、(g)に示すように、検査領域31に対して印刷領域33は、吸収性物品の「前」であることを表示する前マーク34が含まれていてもよい。前マークはべた塗りの矩形内に文字、記号等が記載されたものであることが好ましい。
上記数値は一例であって、吸収性物品のサイズ、検出感度等によって、適宜変更されてもよい。
【0040】
上記実施形態では、製品(吸収性物品)の外観を損ねることなく、半透明不織布の有無や重なり状態を検査することができる。また、予め、良品とされる範囲を登録しておけば、デザインが変更になっても、色が変更になっても、検査が可能である。もしくは、検査領域に予め登録した色を用いれば、多少のデザインの変更があっても検出することが可能である。
【0041】
半透明不織布21としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、等の繊維で構成された、例えば、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、ステッチボンド不織布等が挙げられる。
半透明不織布21の坪量は、10g/m
2以上50g/m
2以下であり、好ましくは15g/m
2以上30g/m
2以下である。また、半透明不織布21の白色光の透過率は、20%以上であり、好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。
【0042】
上記半透明不織布21の白色光の透過率は、
図24に示す透過率測定装置200により測定される。
図24に示すように、透過率測定装置200は、照明部210から照明光L2を照射し、照明部210から照射された照明光L2により照明された半透明不織布の試験片250の透過光Ltを撮像部220で受光して撮像する。
上記照明部210は、検査領域を照明する光を発光する発光部211の発光素子を発光させる電源部212を有する。発光部211は、図示はしなしが、LED発光素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子、白色蛍光管、白熱電球等の白色発光素子を用いる。
【0043】
照明部210は、通常の白色照明光(色温度が例えば4200Kから6500K)を照射する照明装置を用いることが好ましい。また、把持部240により把持された半透明不織布の試験片250(100mm×100mm)に照射される照明光L2にむらを生じないように、図示はしないが複数の白色LED発光素子を複数行複数列に配列されている。さらに、むらのない均一な照度の照明光とするために、フライアイレンズ(図示せず)等が配されていても好ましい。その照度は、透過画像が得られる照度であればよく、1000lx以上、好ましくは2000lx以上、さらに好ましくは5000lx以上である。また撮像素子の感度に応じて、露出オーバーとならない照度以下として、50000lx以下、好ましくは30000lx以下である。
また、照明むらを抑えるために、画像の中央部に照明が写るようにし、照明の中央部(例えば、50mm×50mm)の範囲を計測領域に設定することが好ましい。
【0044】
撮像部220は、カメラ本体部221と撮像レンズ部222を有する撮像装置を用いることが好ましい。カメラ本体部221の撮像素子には、固体撮像素子を用いることによりデジタル処理による画像処理がしやすくなる。固体撮像素子としては、カラー撮像素子、モノクロ撮像素子のいずれも用いることができる。また256階調以上の階調表現ができる撮像素子であればよく、電荷結合素子(CCD)であってもCMOSセンサであってもよい。また、撮像素子の画素数は、十分な解像度を得るために、好ましくは15万画素以上、より好ましくは30万画素以上であればよい。画像処理速度が遅くなるために必要以上に高画質(高画素)にする必要はない。また撮像素子の2画素もしくは4画素またはそれ以上に複数画素を1画素として、階調表現を高めてもよい。
【0045】
撮像部220には、撮像した画像信号を処理する画像処理部230が接続されている。画像処理部230は、例えば、専用の画像センサ用コントローラを用いてもよく、またはパーソナルコンピュータを用いることもできる。
半透明不織布の試験片250の透過率の測定方法は、上記透過率測定装置200を用いる。まず試験片がない状態で撮像し、撮像した画像から、そのときの照明の明るさを計測する。すなわち、計測領域内の平均階調値を算出する。
次に、半透明不織布の試験片250がある状態で撮像し、撮像した画像から、そのときの計測領域内の平均階調値を算出する。各画素の階調値はRGB階調値の平均値とする。
そして、不織布が無い場合にA階調であり、不織布がある場合にB階調であったとすれば、透過率は(B/A)×100(%)で求めることができる。
【0046】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の形態を開示する。
【0047】
<1>
印刷が施された吸収性物品を構成する構成部品に配された半透明シートの配置状態を検査する吸収性物品の検査方法であって、
前記半透明シートが配された構成部品に照明光を照射して、前記印刷が施された印刷領域上の前記半透明シートを含む検査領域を撮像する工程と、
前記撮像した画像から色情報を取得する工程と、
予め取得しておいた前記半透明シートの色範囲情報と前記取得した色情報とを比較して前記半透明シートの存在領域を抽出する工程と、
前記抽出された前記半透明シートの存在領域を基に前記半透明シートの配置状態の良否を判定する工程と、を有する吸収性物品の検査方法。
<2>
前記半透明シートは不織布からなる<1>に記載の吸収性物品の検査方法。
<3>
前記色範囲と前記色情報は、HSV表色系もしくはHSL表色系を使用する<1>または<2>に記載の吸収性物品の検査方法。
<4>
前記半透明シートの存在領域は、前記色範囲及び前記色情報の彩度により抽出する<3>に記載の吸収性物品の検査方法。
<5>
前記照明光を照射する照明は反射照明を用いる<1>から<4>のいずれか1に記載の吸収性物品の検査方法。
<6>
前記反射照明は白色光を使用する<5>に記載の吸収性物品の検査方法。
<7>
前記吸収性物品における吸収体の非肌側に配された裏面シートに前記検査領域を設定する<1>から<6>のいずれか1に記載の吸収性物品の検査方法。
<8>
前記検査領域は、前記半透明シートに該検査領域の面積の1/2がかかるように設定される<1>から<7>のいずれか1に記載の吸収性物品の検査方法。
<9>
前記吸収性物品の裏面シートの最外部(非肌側)に配される吸収体下不織布には、前記半透明シートである半透明不織布を用い、該半透明不織布の各角部付近に前記検査領域を設定する<1>から<8>のいずれか1に記載の吸収性物品の検査方法。
<10>
前記検査領域は、前記裏面シートの非肌当接面側に印刷された、有色の図形、文字、記号のデザインからなる前記印刷領域上で設定される<9>に記載の吸収性物品の検査方法。
<11>
前記検査領域は、前記半透明不織布の長手方向で対向する両辺の幅方向端部の合計4か所に設定される<9>または<10>に記載の吸収性物品の検査方法。
<12>
前記検査領域は、前記半透明不織布にかかり、残りが前記半透明不織布から外れて前記裏面シート上に存する<9>から<11>のいずれか1に記載の吸収性物品の検査方法。
<13>
前記半透明不織布側から前記検査領域の撮像を行い、前記検査領域の撮像画像を取得する<9>から<12>のいずれか1に記載の吸収性物品の検査方法。
<14>
前記検査領域内の撮像画像をRGBからHSV表色系に変換し、そして画素の2値化処理を行う<13>に記載の吸収性物品の検査方法。
<15>
前記検査領域内かつ良品範囲内にある画素を白(255,255,255)、良品範囲外の画素を黒(0,0,0)に変換した画像を作成する<14>に記載の吸収性物品の検査方法。
<16>
前記画素の2値化処理によって得た前記検査領域内の白色画素を計数し、あらかじめ設定した上限画素数THおよび下限画素数TLと白色画素数nを比較し、nがTL<n<THの範囲であれば良品、それ以外を不良品として判別する<14>または<15>に記載の吸収性物品の検査方法。
<17>
<1>から<16>のいずれか1に記載の吸収性物品の検査方法が実施される吸収性物品の検査装置であって、
前記検査領域を照明する照明部と、
前記照明部により照明された前記検査領域を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像した前記検査領域の画像から色情報を取得し、予め取得しておいた前記半透明シートの色範囲と前記取得した色情報とを比較して前記半透明シートの存在領域を抽出し、前記抽出された前記半透明シートの存在領域を基に前記半透明シートの配置状態の良否を判定する処理部とを有する吸収性物品の検査装置。
<18>
前記撮像部は固体撮像素子と撮像レンズを有する撮像装置を用いる<17>に記載の吸収性物品の検査装置。
<19>
前記固体撮像素子はカラー撮像素子を用いる<18>に記載の吸収性物品の検査装置。
<20>
前記固体撮像素子は128階調以上の階調表現ができる撮像素子である<18>または<19>に記載の吸収性物品の検査装置。
<21>
前記撮像レンズは長焦点レンズである<18>から<20>いずれか1に記載の吸収性物品の検査装置。