特許第5951880号(P5951880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951880頭部保護エアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951880
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】頭部保護エアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20160630BHJP
   B60R 21/237 20060101ALI20160630BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20160630BHJP
【FI】
   B60R21/232
   B60R21/237
   B60R21/213
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-502718(P2015-502718)
(86)(22)【出願日】2013年12月2日
(86)【国際出願番号】JP2013082374
(87)【国際公開番号】WO2014132513
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-39158(P2013-39158)
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 篤
(72)【発明者】
【氏名】濱田 満寛
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−201312(JP,A)
【文献】 特開2002−331901(JP,A)
【文献】 特開2007−161167(JP,A)
【文献】 特開2010−201998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグが、
インフレーターからの膨張用ガスの流入時、車両の前席と後席との側方の窓の上縁側の収納部位から下方へ展開しつつ、車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨張して、前記前席と前記後席との側方の前記窓の車内側を覆う前膨張遮蔽部及び後膨張遮蔽部と、
前記エアバッグの膨張完了時の前後方向の中央付近の上縁側に配置されて、前記前膨張遮蔽部と前記後膨張遮蔽部とを連通する連通部と、
を備え、
前記前膨張遮蔽部が、主膨張部と、該主膨張部の前側に配置されて、前記主膨張部の膨張完了後に膨張を完了させるように前記主膨張部と連通する副膨張部と、を備え、
前記副膨張部が、膨張完了時の下端に、前記窓のベルトラインの下方における車体側部材の車内側に支持される支持膨張部を備えて、
頭部保護エアバッグ装置に使用される構成とし、
前記収納部位に収納可能に折り畳むエアバッグの折り畳み方法であって、
平らに展開した状態の下縁側を上縁側に接近させる上下寸法縮小折り工程と、
該上下寸法縮小折り工程の前に、平らに展開した状態の前記副膨張部の前下隅部を、前記エアバッグの前縁から下縁にかける斜め後下方向に沿う折目を付けて、前記車内側壁部における前記ベルトラインに対応する位置より上方の車内側に配置させる内折り工程と、
を含んで構成されることを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【請求項2】
前記上下寸法縮小折り工程が、前記エアバッグの下縁側を前記車外側壁部の側に巻く外ロール折り工程を主体として、前記エアバッグを折り畳んでいることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグの折り畳み方法。
【請求項3】
前記外ロール折り工程が、前記エアバッグの下縁から前記連通部の上下方向の幅寸法の中央付近までの領域を外ロール折りしていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグの折り畳み方法。
【請求項4】
前記上下寸法縮小折り工程は、前記外ロール折り工程の前に、前記内折り工程後の前記エアバッグの下縁側を前後方向に沿った折目を付けて車外側に外折りする下縁外折り工程を、具備していることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグの折り畳み方法。
【請求項5】
前記上下寸法縮小折り工程が、前記連通部の上下方向の上側半分の領域を前後方向に沿った折目を付けた蛇腹折りする蛇腹折り工程を、含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエアバッグの折り畳み方法。
【請求項6】
前記エアバッグが、上縁側に、前記窓の上縁側の車体側に取り付ける複数の取付部を備えるとともに、
前端の前記取付部が、前記エアバッグの前縁に配設され、
前記内折りの折目が、
上端を前記エアバッグの前端の前記取付部の直下付近に配置し、下端を前記副膨張部の下端の後下隅部を越えた後方側に配置させて、
前端の前記取付部の直下から前記後下隅部を通るような直線として設定されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグの折り畳み方法
【請求項7】
前記内折りの折目が、前記エアバッグの前縁から下縁に向けて、斜め後下向きの45°の傾斜角度として、下端を副膨張部の前後方向の中間付近に配置させるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグの折り畳み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内側の窓の上縁側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、窓を覆うように展開膨張するエアバッグを備え、膨張したエアバッグが、車両のロールオーバ時に、乗員の車外放出を防止できるように、乗員を受け止めて車内側に拘束する頭部保護エアバッグ装置とそのエアバッグの折り畳み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のロールオーバ時に、乗員を車内側に拘束可能なエアバッグを備えた頭部保護エアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、主膨張部と、主膨張部の膨張完了後に膨張を完了させるように主膨張部に連通する副膨張部と、を備えて構成されていた。副膨張部は、膨張完了時の下端に、窓のベルトラインの下方における車体側部材の車内側に支持される支持膨張部を備えていた。
【0003】
このような頭部保護エアバッグ装置では、支持膨張部がベルトライン下方の車体側部材に支持され、エアバッグが車外側に移動し難く、車両のロールオーバ時、乗員を車内側に拘束しやすい。
【0004】
また、他の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグの副膨張部の下端側が、エアバッグの車内側壁部の車内側に折られて、その後、エアバッグの全体が、ロール折り等されて、窓の上縁側の収納部位に収納されるものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−201312号公報
【特許文献2】特開2007−161167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の頭部保護エアバッグ装置では、車両の側面衝突時にもエアバッグを膨張させる。しかしその際、ベルトライン下方の車体側部材が車内側に押し込まれれば、エアバッグの副膨張部の下端側が、車体側部材の上縁に載って車内側に配置されず、エアバッグが折れ曲がる事態を招き、窓を円滑に覆えなくなってしまう。
【0007】
一方、特許文献2の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグの折り畳み当初、副膨張部が車内側壁部の側に折り返されているため、車両の側面衝突時に伴なって車体側部材が車内側に押し込まれても、副膨張部が、展開膨張時に、車体側部材の車内側に重なるように展開して膨張するため、車体側部材の上縁に載ってエアバッグが折れ曲がるという事態を防止できる。
【0008】
しかし、特許文献2のエアバッグでは、折り畳み当初、副膨張部の下縁全体が、車内側壁部の側に折り返されており、ロールオーバ対応時より乗員を受け止めるタイミングを早くする側面衝突対応時に、乗員頭部が窓に接近していると、展開膨張時の副膨張部付近が、乗員頭部と窓との間に進入し難くなって、エアバッグにおける乗員頭部と窓との間に進入する割り込み性能を悪化させてしまう。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、車両のロールオーバ時のエアバッグの良好な乗員拘束性能とエアバッグの良好な割り込み性能とを確保できる頭部保護エアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、エアバッグが、インフレーターからの膨張用ガスの流入時、車両の前席側方の窓の上縁側の収納部位から下方へ展開しつつ、車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨張して、前記窓の車内側を覆う前膨張遮蔽部を備え、
該前膨張遮蔽部が、主膨張部と、該主膨張部の前側に配置されて、前記主膨張部の膨張完了後に膨張を完了させるように前記主膨張部と連通する副膨張部と、を備え、
前記副膨張部が、膨張完了時の下端に、前記窓のベルトラインの下方における車体側部材の車内側に支持される支持膨張部を備え、
前記エアバッグが、平らに展開した状態の下縁側を上縁側に接近させる上下寸法縮小折りにより、折り畳まれて、前記収納部位に収納される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、前記上下寸法縮小折りの前に、平らに展開した状態の前記副膨張部の前下隅部を、前記エアバッグの前縁から下縁にかける斜め後下方向に沿う折目を付けて、前記車内側壁部における前記ベルトラインに対応する位置より上方の車内側に配置させる内折りを行って、前記収納部位に収納されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが膨張用ガスを流入させると、折り畳み順序と逆の態様で折りを解消しつつ、エアバッグは、収納部位から展開膨張する。そして、エアバッグの前膨張遮蔽部では、折りの解消の最終段階で、内折りした副膨張部の前下隅部が、窓のベルトラインの下方の車体側部材の車内側に重なるように、展開しつつ、膨張する。そのため、車体側部材が車内側に押し込まれていても、円滑に、副膨張部は、下端の支持膨張部を含めて、ベルトライン下方の車体側部材の車内側に展開し、そして、厚さを増すように膨張することができて、エアバッグの前膨張遮蔽部は、車外側に移動し難く、車両のロールオーバ時、乗員を車内側に的確に拘束できて、所定の乗員拘束性能を発揮できる。
【0012】
また、乗員頭部が窓に接近していても、エアバッグの折り畳み当初に車内側に折り返される部位が、前膨張遮蔽部の主膨張部の前方に配置される副膨張部の前下隅部であり、換言すれば、車両の側面衝突時に膨張する主膨張部の前方側の前縁側である。そのため、側面衝突対応時の膨張当初に、乗員頭部が窓に接近していても、折り返した副膨張部の前下隅部付近は、乗員頭部と接触し難く、接触したとしても、折り返した後部側の小さい三角部位であって、その三角部位は、乗員頭部と窓との間に容易に進入する。その結果、エアバッグは、前膨張遮蔽部の下縁までの全域を、展開させることが可能となり、良好な割り込み性能を維持できる。
【0013】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、車両のロールオーバ時のエアバッグの良好な乗員拘束性能とエアバッグの良好な割り込み性能とを確保できる。
【0014】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記上下寸法縮小折りが、前記エアバッグの下縁側を前記車外側壁部の側に巻く外ロール折りを主体として、前記エアバッグを折り畳んでいることが望ましい。
【0015】
このような上下寸法縮小折りにより、エアバッグが折り畳まれていれば、展開膨張時における上下寸法縮小折りの解消時、エアバッグは、窓に沿って展開し易く、安定した割り込み性能を確保できる。
【0016】
また、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグが、上縁側に、前記窓の上縁側の車体側に取り付ける複数の取付部を備えるとともに、
前端の前記取付部が、前記エアバッグの前縁に配設されていれば、
前記内折りの折目は、
上端を前記エアバッグの前端の前記取付部の直下付近に配置し、下端を前記副膨張部の下端の後下隅部を越えた後方側に配置させて、
前端の前記取付部の直下から前記後下隅部を通るような直線として設定することが望ましい。
【0017】
このような構成では、内折りとして、主膨張部を折ること無く、副膨張部の領域内での内折りした部位の面積を広く確保できることから、側面衝突時の車体側部材の車内側への移動量が大きくとも、容易に対処して、副膨張部が、支持膨張部を車体側部材の車内側に配置させることができる。
【0018】
勿論、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグの内折りの折目は、前記エアバッグの前縁から下縁に向けて、斜め後下向きの45°の傾斜角度として、下端を副膨張部の前後方向の中間付近に配置させるように設定されていてもよい。
【0019】
さらに、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記上下寸法縮小折りにおける外ロール折りの前に、前記内折り後の前記エアバッグの下縁側が、前後方向に沿った折目を付けて車外側に外折りされていてもよい。
【0020】
このような構成では、外ロール折りする折り治具(具体的には、外折りした折目付近の全域を吸引して巻く折り治具)を、その折目の直線に合わせて円滑に配置できて、外ロール折りが行い易くなる。
【0021】
さらにまた、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグが、
前記前膨張遮蔽部の車両後方側に後膨張遮蔽部を備えるとともに、
膨張完了時の前後方向の中央付近の上縁側に、前記前膨張遮蔽部と前記後膨張遮蔽部とを連通する連通部を備えていれば、
前記連通部の上下方向の上側半分の領域を、前後方向に沿った折目を付けた蛇腹折りして、
前記収納部位に収納されることが望ましい。
【0022】
このような構成では、エアバッグに膨張用ガスが供給されて、連通部が折りを解消する際、蛇腹折りの折りの解消が、外ロール折りより素早く行われることから、前膨張遮蔽部と後膨張遮蔽部とが、迅速に連通して膨張できる。
【0023】
本発明に係るエアバッグの折り畳み方法では、エアバッグが、
インフレーターからの膨張用ガスの流入時、車両の前席と後席との側方の窓の上縁側の収納部位から下方へ展開しつつ、車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨張して、前記前席と前記後席との側方の前記窓の車内側を覆う前膨張遮蔽部及び後膨張遮蔽部と、
前記エアバッグの膨張完了時の前後方向の中央付近の上縁側に配置されて、前記前膨張遮蔽部と前記後膨張遮蔽部とを連通する連通部と、
を備え、
前記前膨張遮蔽部が、主膨張部と、該主膨張部の前側に配置されて、前記主膨張部の膨張完了後に膨張を完了させるように前記主膨張部と連通する副膨張部と、を備え、
前記副膨張部が、膨張完了時の下端に、前記窓のベルトラインの下方における車体側部材の車内側に支持される支持膨張部を備えて、
頭部保護エアバッグ装置に使用される構成とし、
前記収納部位に収納可能に折り畳むエアバッグの折り畳み方法であって、
平らに展開した状態の下縁側を上縁側に接近させる上下寸法縮小折り工程と、
該上下寸法縮小折り工程の前に、平らに展開した状態の前記副膨張部の前下隅部を、前記エアバッグの前縁から下縁にかける斜め後下方向に沿う折目を付けて、前記車内側壁部における前記ベルトラインに対応する位置より上方の車内側に配置させる内折り工程と、
を含んで構成されることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る折り畳み方法では、折り畳まれて収納部位に収納されたエアバッグが膨張用ガスを流入させると、折り畳み順序と逆の態様で折りを解消しつつ、エアバッグは、収納部位から展開膨張する。そして、エアバッグの前膨張遮蔽部では、折りの解消の最終段階で、内折りした副膨張部の前下隅部が、窓のベルトラインの下方の車体側部材の車内側に重なるように、展開しつつ、膨張する。そのため、車体側部材が車内側に押し込まれていても、円滑に、副膨張部は、下端の支持膨張部を含めて、ベルトライン下方の車体側部材の車内側に展開し、そして、厚さを増すように膨張することができて、エアバッグの前膨張遮蔽部は、車外側に移動し難く、車両のロールオーバ時、乗員を車内側に的確に拘束できて、所定の乗員拘束性能を発揮できる。
【0025】
また、乗員頭部が窓に接近していても、エアバッグの折り畳み当初に車内側に折り返される部位が、前膨張遮蔽部の主膨張部の前方に配置される副膨張部の前下隅部であり、換言すれば、車両の側面衝突時に膨張する主膨張部の前方側の前縁側である。そのため、側面衝突対応時の膨張当初に、乗員頭部が窓に接近していても、折り返した副膨張部の前下隅部付近は、乗員頭部と接触し難く、接触したとしても、折り返した後部側の小さい三角部位であって、その三角部位は、乗員頭部と窓との間に容易に進入する。その結果、エアバッグは、前膨張遮蔽部の下縁までの全域を、展開させることが可能となり、良好な割り込み性能を維持できる。
【0026】
したがって、本発明に係るエアバッグの折り畳み方法では、車両のロールオーバ時のエアバッグの良好な乗員拘束性能とエアバッグの良好な割り込み性能とを確保できるように、エアバッグを折り畳むことができる。
【0027】
本発明に係るエアバッグの折り畳み方法では、前記上下寸法縮小折り工程が、前記エアバッグの下縁側を前記車外側壁部の側に巻く外ロール折り工程を主体として、前記エアバッグを折り畳んでいることが望ましい。
【0028】
このような上下寸法縮小折り工程により、エアバッグが折り畳まれていれば、展開膨張時における上下寸法縮小折りの解消時、エアバッグは、窓に沿って展開し易く、安定した割り込み性能を確保できる。
【0029】
また、本発明に係るエアバッグの折り畳み方法では、前記外ロール折り工程が、前記エアバッグの下縁から前記連通部の上下方向の幅寸法の中央付近までの領域を外ロール折りすることが望ましい。
【0030】
このような構成では、エアバッグの全域、すなわち、エアバッグの上縁側の連通部の上下方向の中央付近から下方の全域が、外ロール折りされることから、一層、窓に沿って展開し易く、安定した割り込み性能を確保できる。
【0031】
さらに、本発明に係るエアバッグの折り畳み方法では、前記上下寸法縮小折り工程は、前記外ロール折り工程の前に、前記内折り工程後の前記エアバッグの下縁側を前後方向に沿った折目を付けて車外側に外折りする下縁外折り工程を、具備していることが望ましい。
【0032】
このような構成では、このような構成では、外ロール折りする折り治具(具体的には、外折りした折目付近の全域を吸引して巻く折り治具)を、その折目の直線に合わせて円滑に配置できて、外ロール折り工程が行い易くなる。
【0033】
さらにまた、本発明に係るエアバッグの折り畳み方法では、前記上下寸法縮小折り工程が、前記連通部の上下方向の上側半分の領域を前後方向に沿った折目を付けた蛇腹折りする蛇腹折り工程を、含むことが望ましい。
【0034】
このような構成では、エアバッグに膨張用がガスが供給されると、連通部が折りを解消する際、蛇腹折りの折りの解消が、外ロール折りより素早く行われることから、前膨張遮蔽部と後膨張遮蔽部とが、迅速に連通して膨張できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置の搭載状態を示す車両の車内側から見た側面図である。
図2】第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置に使用するエアバッグを平らに展開させた状態を示す正面図である。
図3】第1実施形態のエアバッグの折り畳み工程を説明する図であり、内折りの工程を示す。
図4】第1実施形態のエアバッグの折り畳み工程を説明する図であり、上下寸法縮小折りの工程を説明する図である。
図5】第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置の作動時を説明する概略縦断面図であり、作動初期の状態を示す。
図6】第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置の作動時を説明する概略縦断面図であり、図5の後の状態を示す。
図7】第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置の作動完了状態を示す車内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sは、図1に示すように、エアバッグ20、エアバッグ20に膨張用ガスを流入させるインフレーター16、エアバッグカバー11、ブラケット13,17、及び、ボルト14,18、を備えてなる。エアバッグ20は、車両Vの車内側における前席や後席の側方で前後に並設される窓(サイドウインド)W1,W2の上縁WU側を収納部位SPとして、フロントピラー部FPの下縁側から、中間ピラー部CPの上方を経て、リヤピラー部RPの上方まで、の範囲に、折り畳まれて収納されている。
【0037】
インフレーター16は、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、エアバッグ20における膨張用ガスを流入させるための流入口部24に挿入され、エアバッグ20と連結されている。このインフレーター16は、ブラケット17により保持され、ブラケット17がボルト18止めされることにより、中間ピラー部CPの上方付近におけるルーフサイドレール部RRのインナパネル2に対し、ルーフヘッドライニング5の下縁5aに覆われて、取付固定されている。なお、インナパネル2は、車両Vのボディ(車体)1側の部材である。
【0038】
また、インフレーター16は、車両Vのロールオーバや側面衝突(側突)を検知した所定の制御装置により、作動されるものであり、その出力は、エアバッグ20の容量に対応し、エアバッグ20の後述する保護膨張部26が車両Vの側突時からロールオーバ時にわたって、所定の内圧を維持できるように、設定されている。
【0039】
各ブラケット13は、ボルト14によって、エアバッグ20の後述する取付部54をインナパネル2に取付固定している。なお、各ボルト14は、インナパネル2にナット等を設けてなるねじ孔に、締結される。
【0040】
エアバッグカバー11は、図1に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4の下縁4a側と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5の下縁5a側と、からなり、収納部位SPに折り畳まれて収納されているエアバッグ20の車内側Iを覆っている。エアバッグ20の収納部位SPは、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRのインナパネル2に設けられている。
【0041】
エアバッグ20は、折畳可能な可撓性を有しており、図2に示すように、ポリアミドやポリエステル等のエアバッグ用基布80からなる車内側壁部22aと車外側壁部22bとを縫製して形成した縫製バッグとしている。なお、エアバッグ20の車内側壁部22aと車外側壁部22bとを縫製した結合部51には、気密性を良好にするように、シール材が塗布されている。
【0042】
エアバッグ20は、図1,7に示すように、インフレーター16からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2、中間ピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うように展開膨張する。さらに、エアバッグ20は、膨張完了時、下縁20bを、窓W1,W2の車内側における下縁側のベルトラインBLの車体側部材(図例ではドアトリム)DTに、支持される。
【0043】
また、エアバッグ20は、図2,6に示すように、膨張用ガスGを流入させて車内側壁部22aと車外側壁部22bとを離すように膨張するガス流入部22と、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを結合させたような状態として膨張用ガスGを流入させない非流入部50と、を備えて構成されている。
【0044】
非流入部50は、結合部51、結合部51の周囲の周縁部52、及び、周縁部52の上縁52a側の取付部54、からなる。周縁部52は、ガス流入部22の周囲を囲むように形成されている。
【0045】
取付部54は、エアバッグ20の上縁20a側における周縁部52の上縁52aから上方へ突出するように、複数(実施形態では6個)形成されている。各取付部54には、ボルト14を挿通させる取付孔54aが、形成されている。各取付部54には、既述したように、ボディ1側のインナパネル2に取り付けるためのブラケット13が固着され、そして、各取付孔54aを挿通するボルト14がインナパネル2の各ねじ孔に締結されることにより、各取付部54が、インナパネル2に固定される。前端の取付部54Fは、エアバッグ20の前縁20cの周縁部52に対して、ポリアミド等の織布から形成された別体の布材を縫合して、形成されている。また、この取付部54Fは、フロントピラー部FPの下部付近に固定されて、エアバッグ20の膨張完了時、エアバッグ20の下縁20b側、具体的には、取付部54Fとフロントピラー部FPから離れた最後端の取付部54(54B)とを結ぶライン上に、強い張力を発揮させ、エアバッグ20における乗員Mの室内側への拘束性を良好にするように、構成されている(図7参照)。
【0046】
結合部51は、ガス流入部22の周囲を区画するとともに、ガス流入部22内を区画したり、さらに、厚さを規制するようにガス流入部22の領域に進入するように配設されており、種々の区画部55,59,62,64、厚さ規制部58,60,63を備えている。
【0047】
中央区画部55は、保護膨張部26の後述する前後の前膨張遮蔽部27と後膨張遮蔽部35とを区画するものであり、略T字状の横区画部56と縦区画部57とを備えてなる。横区画部56と周縁部52の上縁52aとの間は、前後の前膨張遮蔽部27と後膨張遮蔽部35とを連通させる連通部33としている。また、縦区画部57は、前方に延びる前張出部57aを備えている。
【0048】
前側区画部59は、前膨張遮蔽部27の後述する主膨張部28と副膨張部29とを区画するように、前膨張遮蔽部27の下縁20b側の結合部51から上方に延びるように配設されている。
【0049】
後側区画部62は、後膨張遮蔽部35の後述する主膨張部36と副膨張部37とを区画するように、エアバッグ20の後縁20d側の結合部51から前方に延びるように配設されている。分割区画部64は、後膨張遮蔽部35の副膨張部37を前後に分割するように、エアバッグ20の下縁20b側の結合部51から上方に延びるように配設されている。
【0050】
下厚さ規制部58と前厚さ規制部60とは、前膨張遮蔽部27の厚さを規制するものであり、下厚さ規制部58が、前膨張遮蔽部27の下縁20b側の結合部51から上方に張り出すように形成され、前厚さ規制部60が、前膨張遮蔽部27の領域内で、周縁部52から離れて配設されている。
【0051】
なお、実施形態の場合、前厚さ規制部60は、連通部33の前端33aから前方に流れる膨張用ガスGが、後述する入口29aを経て直ちに副膨張部29に流入することを防止できるように、入口29aと連通部33の前端33aとの間における入口29a近傍に、配設されている。
【0052】
後厚さ規制部63は、後膨張遮蔽部35の厚さを規制するものであり、後膨張遮蔽部35の領域内で、周縁部52から離れて配設されている。
【0053】
ガス流入部22は、インフレーター16と接続される流入口部24、連通部33、及び、保護膨張部26を備えて構成されている。流入口部24内には、耐熱性を高めるために、インナチューブ68が配設されている。
【0054】
連通部33は、流入口部24の下部と連通して、エアバッグ20の膨張完了時の前後方向の中央付近の上縁20a側で、前後方向に延びるように配設されている。
【0055】
保護膨張部26は、ガス流入部22の流入口部24と連通部33付近とを除いた部位として、前膨張遮蔽部27と後膨張遮蔽部35とを備えてなる。前膨張遮蔽部27と後膨張遮蔽部35とは、既述の中央区画部55により前後で区画され、前膨張遮蔽部27は、膨張完了時、車両Vの前席側方の窓(フロントサイドウインド)W1と中間ピラー部CPの一部との車内側を覆い、後膨張遮蔽部35は、膨張完了時、後席側方の窓(リヤサイドウインド)W2とリヤピラー部RPとの車内側を覆う(図1,7参照)。
【0056】
さらに、前膨張遮蔽部27は、前側区画部59で区画されて、前後に並設される主膨張部28と副膨張部29とを備えてなる。主膨張部28は、副膨張部29より膨張用ガスGの上流側として、側突時の前席の乗員Mの頭部Hを保護可能に、副膨張部29より先に膨張するように、連通部33の前端33aと連通し、副膨張部29の後方側に配置されている。副膨張部29は、車両Vのロールオーバ時に対応するように、主膨張部28と前後方向で並んで主膨張部28の前方側で膨張する。
【0057】
実施形態の副膨張部29は、エアバッグ20の上縁20aから下縁20bまでの上下方向に延びた縦セルとして、略長方形板状に膨張する。また、副膨張部29は、前側区画部59の上端とエアバッグ20の上縁20a側の結合部51との間の入口29aから膨張用ガスGを流入させ、下端29bは、膨張完了時に、窓W1のベルトラインBLの下方における車体側部材(ドアトリム)DTの車内側Iに支持される支持膨張部30としている。
【0058】
後膨張遮蔽部35は、後側区画部62と横区画部56の後端56a付近とで区画されて、前後に並設される主膨張部36と副膨張部37とを備えてなる。主膨張部36は、副膨張部37より膨張用ガスGの上流側として、側突時の後席の乗員Mの頭部Hを保護可能に、副膨張部37より先に膨張するように、連通部33の後端33bと連通し、副膨張部37の後方側に配置されている。そして、副膨張部37は、車両Vのロールオーバ時に対応するように、主膨張部36と前後方向で並んで主膨張部36の前方側で膨張する。なお、副膨張部37は、分割区画部64によって前後二室の前室38と後室39とに分割され、後室39が、下部後方側に延びる膨張部位39aを備えて、主膨張部36と連通している。
【0059】
副膨張部37は、膨張部位39aの上縁側に位置した後側区画部62の前端と横区画部56の後端56aとの間の入口37aから膨張用ガスGを流入させ、膨張完了時、膨張部位39aが、窓W2のベルトラインBLの下方における車体側部材(ドアトリム)DTの車内側Iに支持される支持膨張部40となる。
【0060】
そして、インフレーター16が作動して、エアバッグ20内に膨張用ガスGが流入する際、流入口部24と連通部33とを経て、まず、インフレーター16が作動した20〜30ms後に、一次膨張部としての主膨張部28,36が膨張を完了させる。ついで、インフレーター16が作動した70〜80ms後に、主膨張部28,36からの膨張用ガスGを入口29a,37aから流入させて、二次膨張部としての副膨張部29,37が膨張を完了させる。その後、エアバッグ20は、インフレーター16の作動後の6s程度まで、全体の膨張完了状態を維持して車両Vのロールオーバに対応することとなる。
【0061】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sの車両Vへの搭載は、まず、エアバッグ20を折り畳む。エアバッグ20の折り畳み工程は、内折り工程と上下方向縮小折り工程とからなる。上下方向縮小折り工程は、下縁外折り工程、外ロール折り工程、及び、蛇腹折り工程からなる。
【0062】
内折り工程では、図3のA,Bに示すように、平らに展開した状態(平らに広げた状態)の副膨張部29の前下隅部31側の内折り部72を、エアバッグ20の前縁20cから下縁20bにかける斜め後下方向に沿う折目70を付けて、車内側壁部22aの側に折り重ねる。この時、副膨張部29の前下隅部31は、平らに展開した状態のエアバッグ20におけるベルトラインBLに対応する位置より上方に配置させるように、内折りし、内折り部72を、副膨張部29の上部側の被重なり部73の車内側Iに、重ねる。
【0063】
なお、実施形態の場合、折目70は、上端70aを前端の取付部54Fの直下付近に配置し、下端70bを副膨張部29の下端29bの後下隅部29bbを越えた後方側に配置させ、前端の取付部54Fの直下から後下隅部29bbを通るような直線としている。そして、実施形態の折目70は、前下隅部31をベルトラインBLとエアバッグ20の上縁20aとの中間付近に配置させつつ、副膨張部29の領域内での内折り部72の面積を広く確保できるように、設定されている。
【0064】
上下寸法縮小折り工程の下縁外折り工程では、図3のBから図4のAに示すように、エアバッグ20の下縁20b側の下縁外折り部75を、前後方向に沿う折目74を付けて、車外側Oに外折りする。
【0065】
外ロール折り工程では、図4のBに示すように、下縁外折り工程後のエアバッグ20の下縁側、すなわち、下縁外折り部75の下縁75aを、車外側壁部22bの側に巻いて外ロール折りする。なお、外ロール折りの領域は、下縁75aから連通部33の上下方向の幅寸法の中間付近までのエアバッグ20の部位76である。
【0066】
蛇腹折り工程では、図4のBに示すように、連通部33の上側半分の領域におけるエアバッグ20の部位78を、前後方向に沿う折目を付けて折り重ねるように、蛇腹折りする。なお、連通部33が蛇腹折りされれば、膨張用ガスGを流入させて折りを解消する際、外ロール折りより、迅速に折りを解消できることから、折りを解消した連通部33により、前膨張遮蔽部27と後膨張遮蔽部35とを、素早く連通させて、迅速に膨張させることができる。
【0067】
そして、エアバッグ20の折り畳みが完了すれば、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、エアバッグ20を巻き、そして、図4のBに示すように、ブラケット17を取り付けたインフレーター16を、エアバッグ20の流入口部23と接続させ、また、エアバッグ20の各取付部54にブラケット13を取り付けてエアバッグ組付体を形成する。
【0068】
その後、ブラケット13を組み付けた各取付部54を、ボディ1側のインナパネル2の対応する収納部位SPに配置させ、各取付孔54aに挿通させる等して、ボルト14を取付孔に締結し、さらに、ブラケット17をボルト18止めし、インフレーター16をインナパネル2に固定して、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。
【0069】
ついで、インフレーター16に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付け、さらに、中間ピラーガーニッシュ7やリヤピラーガーニッシュ8をボディ1に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Sを、車両Vに搭載することができる。
【0070】
頭部保護エアバッグ装置Sの車両Vへの搭載後における車両Vの側突時若しくはロールオーバ時に、インフレーター16が作動して膨張用ガスGを吐出させれば、膨張用ガスGが、図2の二点鎖線に示すように、流れる。そのため、エアバッグ20は、ガス流入部22の連通部33や保護膨張部26を膨らませ、エアバッグカバー11を押し開いて、窓W1,W2を覆うように、上縁WUから下方へ展開膨張する。
【0071】
その際、エアバッグ20が膨張用ガスGを流入させると、折り畳み工程の逆の態様で折りを解消しつつ、エアバッグ20は、収納部位SPから展開膨張する。すなわち、エアバッグ20は、蛇腹折りを解消して、外ロール折りを解消し、さらに、下縁外折りを解消することとなる。
【0072】
この時、エアバッグ20の前膨張遮蔽部27では、図5のA,Bに示すように、蛇腹折りを解消して、外ロール折りを解消し、さらに、下縁外折りを解消して、折りの解消の最終段階で、図6のA.Bに示すように、内折りした副膨張部29の内折り部72が、窓W1のベルトラインBLの下方の車体側部材DTの車内側Iに重なるように、展開しつつ、膨張する。
【0073】
そのため、図5のBの二点鎖線に示すように、車体側部材DTが車内側Iに押し込まれていても、折目70より上方の被重なり部73がベルトラインBLの上方で展開し、そして、図6のA,Bに示すように、内折り部72が、折目70を延ばすように車体側部材DTの車内側Iに展開して膨張する。この時、部分的に折目70付近が車体側部材DTの上に載っても、その部位より前方側の部位、すなわち、エアバッグ20の前縁20c側では、折目70とともに内折り部72自体が、確実に、ベルトラインBLの上方位置にある。そのため、そのベルトラインBLの上方位置の内折り部72における車体側部材DTの車内側Iへの展開により、車体側部材DTの上に載っている部位から延びる内折り部72が、車体側部材DTの車内側Iに引きずられて、車体側部材DTの車内側Iに配置されて膨張することとなる。
【0074】
その結果、副膨張部29は、下端29bの支持膨張部30を含めて、ベルトラインBL下方の車体側部材DTの車内側Iに展開し、そして、厚さを増すように膨張することができて、エアバッグ20の前膨張遮蔽部27は、車外側Oに移動し難く、車両Vのロールオーバ時、乗員Mを車内側Iに的確に拘束できて、所定の乗員拘束性能を発揮できる。
【0075】
また、乗員Mの頭部Hが窓W1に接近していても、エアバッグ20の折り畳み当初に車内側Iに折り返される部位が、前膨張遮蔽部27の主膨張部28の前方に配置される副膨張部29の前下隅部31であり、換言すれば、車両Vの側面衝突時に膨張する主膨張部28の前方側の前縁20c側である。そのため、側面衝突対応時の膨張当初に、乗員Mの頭部Hが窓W1に接近していても、折り返した副膨張部29の前下隅部31付近は、乗員Mの頭部Hと接触し難く、接触したとしても、折り返した内折り部72における後部側の小さい三角部位32(図3のB参照)であって、三角部位32が乗員Mの頭部Hと窓W1との間に容易に進入する。その結果、エアバッグ20は、前膨張遮蔽部27の下縁20bまでの全域を、展開させることが可能となり、良好な割り込み性能を維持できる。
【0076】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sとエアバッグ20の折り畳み方法では、エアバッグ20の前膨張遮蔽部27が、車両Vのロールオーバ時の良好な乗員拘束性能と良好な割り込み性能とを確保できる。
【0077】
また、実施形態では、上下寸法縮小折り工程が、外ロール折りを主体としており、換言すれば、エアバッグ20の下縁20b側の大部分の部位76を、車外側壁部22bの側に巻く外ロール折りしている。
【0078】
そのため、実施形態では、このような上下寸法縮小折り工程により、エアバッグ20が折り畳まれていれば、展開膨張時における上下寸法縮小折りの解消時、エアバッグ20は、窓W1,W2に沿って展開し易く、安定した割り込み性能を確保できる。
【0079】
さらに、実施形態では、外ロール折りの前に、前後方向に沿った折目74を付けて、下縁外折り部75を車外側壁部22bの側に折っており、外ロール折りする下縁75aが、前後方向に沿った直線状の折目74の部位となって、外ロール折りする折り治具(具体的には、折目74付近の全域を吸引して巻く折り治具)を、折目74の直線に合わせて円滑に配置できて、外ロール折り工程が行い易くなる。
【0080】
なお、実施形態では、内折りの折目70として、上端70aを前端の取付部54Fの直下付近に配置し、下端70bを副膨張部29の下端29bの後下隅部29bbを越えた後方側に配置させ、前端の取付部54Fの直下から後下隅部29bbを通るような直線として、前下隅部31をベルトラインBLとエアバッグ20の上縁20aとの中間付近に配置させつつ、副膨張部29の領域内での内折り部72の面積を広く確保している。しかし、この内折りは、折りの解消時に、内折り部72が車体側部材DTの車内側Iに展開できるように、副膨張部29の前下隅部31が、平らに展開した状態のエアバッグ20におけるベルトラインBLに対応する位置より上方に配置させればよい。そのため、例えば、折目70は、エアバッグ20の前縁20cから下縁20bに向けて、斜め後下向きの45°の傾斜角度として、下端70bを副膨張部29の前後方向の中間付近に配置させるようにしてもよい。
【0081】
但し、実施形態のように、前端の取付部54Fの直下から後下隅部29bbを通るような直線として、主膨張部28を折ること無く、副膨張部29の領域内での内折り部72の面積を広く確保できれば、側面衝突時の車体側部材DTの車内側Iへの移動量が大きくとも、容易に対処して、副膨張部29は、支持膨張部30を車体側部材DTの車内側Iに配置させることができる。
【0082】
また、実施形態では、エアバッグ20として、縫製バッグを例示したが、本発明では、袋織りにより形成されるエアバッグを使用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…(車体)ボディ、20…エアバッグ、20b…下縁、20c…前縁、22a…車内側壁部、22b…車外側壁部、27…前膨張遮蔽部、28…主膨張部(一次膨張部)、29…副膨張部(二次膨張部)、29b…下端、30…支持膨張部、31…前下隅部、70…折目、72…内折り部、76…外ロール折り部、
V…車両、W1…窓(サイドウインド)、WU…上縁、SP…収納部位、BL…ベルトライン、DT…ドアトリム(車体側部材)、I…車内側、O…車外側、G…膨張用ガス、M…乗員、H…頭部、S…頭部保護エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7