特許第5951982号(P5951982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951982非水系二次電池用セパレータおよび非水系二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951982
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】非水系二次電池用セパレータおよび非水系二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-283551(P2011-283551)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-134858(P2013-134858A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 勧
(72)【発明者】
【氏名】西川 聡
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−154937(JP,A)
【文献】 特表2010−538173(JP,A)
【文献】 特許第4215718(JP,B2)
【文献】 特開2003−171495(JP,A)
【文献】 特開2002−203604(JP,A)
【文献】 特開平01−158051(JP,A)
【文献】 特開2001−236939(JP,A)
【文献】 特開2001−176482(JP,A)
【文献】 Yong Min Lee et al.,Novel porous separator based on PVdF and PE non-woven matrix for rechargeable lithium batteries,Journal of Power Sources,2005年,139,pp. 235-241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布基材と、この基材を内包した状態に形成され、かつポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、
前記セパレータは、空孔率が55〜70%であり、
前記接着性多孔質層は、平均孔径が43〜100nmであり、
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が100万以上300万以下である、
非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記接着性多孔質層の重量が3〜10g/mであることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂はフッ化ビニリデンが98mol%以上含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のセパレータを用いた非水系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水系二次電池用セパレータおよび非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表されるような非水系二次電池は、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、カムコーダなどの携帯用電子機器の電源として広く用いられている。更に近年においてこれらの電池は高エネルギー密度を有するという特徴から自動車などへの適用も検討されている。
【0003】
携帯用電子機器の小型化・軽量化に伴い、非水系二次電池の外装の簡素化がなされてきている。当初は外装としてステンレス製の電池缶が用いられていたが、アルミ缶製の外装が開発され、さらには現在ではアルミラミネートパック製のソフトパック外装も開発されている。アルミラミネート製のソフトパック外装の場合、外装が柔らかいため、充放電に伴って電極とセパレータとの間に隙間が形成される場合があり、サイクル寿命が悪くなるという技術的課題がある。この課題を解決するという観点から、電極とセパレータを接着する技術が重要であり、多くの技術的提案がなされている。
【0004】
その1つの提案として、従来のセパレータであるポリオレフィン微多孔膜にポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層(以下、接着性多孔質層ともいう)を成形したセパレータを用いる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。接着性多孔質層は、電解液を含んだ状態で電極に重ねて熱プレスすると、電極とセパレータを良好に接合させることができ、接着剤として機能し得る。そのため、ソフトパック電池のサイクル寿命を改善することができる。
【0005】
また、従来の金属缶外装を用いて電池を作製する場合、電極とセパレータを重ね合わせた状態で捲回して電池素子を作製し、この素子を電解液と共に金属缶外装内に封入して、電池を作製する。一方、上述した特許文献1のようなセパレータを用いてソフトパック電池を作製する場合は、上記の金属缶外装の電池と同様にして電池素子を作製し、これを電解液と共にソフトパック外装内に封入して、最後に熱プレス工程を加えて、電池を作製する。よって、上記のような接着性多孔質層を有したセパレータを用いる場合、上記の金属缶外装の電池と同様にして電池素子を作製できるため、従来の金属缶外装電池の製造工程に対し大幅な変更を加える必要がない、というメリットもある。
【0006】
例えば、特許文献1では十分な接着性の確保とイオン透過性の両立という観点からポリフッ化ビニリデン系樹脂層の多孔構造と厚みに着眼した技術提案がなされている。
別の提案として、網目状支持体を内包し、電解液に膨潤し該電解液を保持する有機高分子からなる多孔膜からなるセパレータを用いる技術が知られている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4127989号公報
【特許文献2】特許第4030312号公報
【特許文献3】特許第4215718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般的な非水系二次電池の正極あるいは負極は、集電体と、この集電体上に形成された電極活物質およびバインダー樹脂を含む活物質層から構成されている。そして、上述した接着性多孔質層は、熱プレスによって電極と接合させた場合、電極中のバインダー樹脂に対して接着する。そのため、より良好な接着性を確保するためには、電極内のバインダー樹脂の量は多い方が好ましい。
【0009】
しかしながら、電池のエネルギー密度をより高めるためには、電極中の活物質の含有量を高める必要があり、バインダー樹脂の含有量は少ない方が好ましい。そのため、従来技術において十分な接着性を確保するためには、より高い温度や高い圧力といった厳しい条件で熱プレスを行う必要があった。そして、従来技術においては、そのような厳しい条件で熱プレスした場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる接着性多孔質層の多孔構造が潰れてしまう問題があった。そのため、熱プレス工程後のイオン透過性が十分でなくなり、良好な電池特性を得るのが困難であった。
【0010】
また、従来は電極に用いるバインダー樹脂はポリフッ化ビニリデン系樹脂が一般的だったのに対し、近年はスチレン−ブタジエンゴムを適用する場合も増えてきている。このようなスチレン−ブタジエンゴムを用いた電極に対しては、従来の接着性多孔質層を備えたセパレータでは、イオン透過性と接着性を両立して十分な電池特性を得ることが難しかった。
【0011】
例えば、特許文献1の構成ではポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層の空孔率が50〜90%と非常に高い空孔率となっているが、このような構成は前述のような接着工程の厳しい接着条件に対して力学物性が不十分であるという課題がある。さらに表面構造は孔径0.05〜10μmの孔が点在している構成であるが、このような不均一な表面構造では、電極との接着性、イオン透過性、および電池のサイクル特性を両立させることが難しくなってきているのが現状である。
【0012】
また、特許文献2と3では、網目状支持体として耐熱性ポリマーからなる不織布を使用し、電解液に膨潤し、かつ電解液を保持する有機高分子としてポリフッ化ビニリデンを主体に使用したセパレータが記載されているが、接着性についての議論はない。
このような背景から、本発明は従来のものに比べて電極との接着性に優れ、電極と接着した後にも十分なイオン透過性を確保でき、さらに、熱プレスにも十分に耐え得る力学的物性と均一な多孔質構造を有する接着性多孔質層を備えた非水系二次電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用する。
1. 不織布基材と、この基材の少なくとも表面に形成され、かつポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、前記セパレータは、空孔率が50〜80%であり、前記接着性多孔質層は、平均孔径が1〜100nmであることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
2. 前記接着性多孔質層の重量が3〜10g/mであることを特徴とする上記1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
3. 前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂はフッ化ビニリデンが98mol%以上含まれていることを特徴とする上記1または2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
4. 上記1〜3のいずれかに記載のセパレータを用いた非水系二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のものに比べて電極との接着性に優れ、電極と接着した後にも十分なイオン透過性を確保でき、さらに、熱プレスにも十分に耐え得る力学的物性と均一な多孔質構造を有する接着性多孔質層を備えた非水系二次電池用セパレータを提供することができる。このような本発明のセパレータを用いれば、エネルギー密度が高く、高性能なアルミラミネートパック外装の非水系二次電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、不織布基材と、この基材の少なくとも表面に形成され、かつポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、前記セパレータは、空孔率が50〜80%であり、前記接着性多孔質層は、平均孔径が1〜100nmであることを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下において数値範囲で「〜」と示したものは、上限値および下限値を含む数値範囲であることを意味する。
【0016】
[不織布基材]
本発明において、不織布基材を構成する材料はポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート等のポリエステル系材料、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系材料、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリアミド等の耐熱性樹脂、あるいはこれらの混合物を使用することができる。特に、不織布としてはポリエステル系材料を主成分としたものが好ましい。ここで主成分とは、不織布基材においてポリエステル系材料が50重量%以上を占めることを意味し、残部としてポリオレフィン系材料等を混合して含ませることができる。中でも、ポリエチレンテレフタラート、またはポリエチレンテレフタラートとポリオレフィン系材料の混合が好適である。
【0017】
本発明において、不織布基材は、膜厚は5〜30μmの範囲が好適であり、10〜20μmがより好ましい。膜厚が5μmより薄いと十分な力学物性を得ることが困難となりハンドリング上の課題が生じる。膜厚が30μmより厚いと内部抵抗が高くなったりして電池性能の観点から好ましくない。イオン透過性の指標であるガーレ値(JIS P8117)は0〜500秒/100ccの範囲が好適である。500秒/100ccより大きいとイオン透過性が不十分で十分な電池特性が得られないことがある。また、突刺強度は50g以上のものが内部短絡防止、製造歩留まりの観点から適切である。
【0018】
[ポリフッ化ビニリデン系樹脂]
本発明の非水系二次電池用セパレータにはポリフッ化ビニリデン系樹脂を適用する。ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(すなわちポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体、あるいはこれらの混合物が用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーは、テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、トリフロロエチレン、トリクロロエチレン、フッ化ビニル等の一種類又は二種類以上を用いることができる。
このようなポリフッ化ビニリデン系樹脂は乳化重合または懸濁重合により得ることが可能である。
【0019】
本発明において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、構成単位としてフッ化ビニリデンが98mol%以上含まれていることが好ましい。フッ化ビニリデンが98mol%以上含まれることで、より厳しいプレス条件に対しても十分な力学物性と耐熱性を確保できる。一方、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、構成単位としてヘキサフロロプロピレンが0.1〜2mol%含まれていると、電解液に膨潤しやすくなりかつ十分なイオン透過性を確保できる観点から好ましい。
【0020】
本発明に用いるポリフッ化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量が30万〜300万の範囲のものが好ましい。より好ましくは30万〜150万であり、さらに好ましくは50万〜120万の範囲である。重量平均分子量が30万より小さいと、接着性多孔質層が電極との接着工程に耐える程の力学物性を有さない場合があり、十分な接着性が得られない場合がある。また、重量平均分子量が300万より大きくなると成形時の粘度が高く成形することが困難となる場合や、ポリフッ化ビニリデンからなる多孔構造を得るときに十分な結晶を形成することができず、好適な多孔構造を得ることが困難となる場合があるため好ましくない。
【0021】
[接着性多孔質層]
本発明において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層の多孔構造は重要な技術要素であり、その平均孔径は1〜100nmである。ここで、接着性多孔質層とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含んで構成されており、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっている層を意味する。このような接着性多孔質層は、不織布の少なくとも表面に形成されている、すなわち、接着性多孔質層は不織布の片面または両面に形成されているか、あるいは、さらに不織布の内部にも含まれて全体として不織布を内包した状態で形成されていてもよい。また、平均孔径は、多孔質層の表面を走査型電子顕微鏡により、倍率30000倍で撮影して得た写真から無作為に開孔20箇所を選んで直径を測定し、直径の平均値を求めて平均孔径とした。孔の形状は円形に限らず、楕円形や異形になることもありうる。この場合の孔の直径とは、該楕円形の長軸方向の長さと短軸方向の長さの平均をその孔径として算出する。また、孔の形状が円形でも楕円形でもないときには円または楕円に近似して直径を算出する。
【0022】
接着性多孔質層の平均孔径は、1〜100nmの範囲である必要があり、20〜100nmであればより好ましい。平均孔径が100nmより大きくなると、孔の不均一性が増大し、接着点がまばらになるため、十分なサイクル特性を得るだけの接着性を確保することが困難となる。また、イオンの移動も不均一となる傾向にあり、そのような観点からも十分なサイクル特性を得ることが難しくなり、さらに負荷特性も悪くなる。また、平均孔径は均一性という観点では出来るだけ小さいことが好ましいが、1nmより小さい多孔構造を形成することは現実的に困難である。また、接着性多孔質層に電解液を含浸させた場合、該ポリフッ化ビニリデン系樹脂は膨潤するが、平均孔径が小さすぎると、膨潤により孔が閉塞し、イオン透過性が阻害されてしまう観点からも好ましくない。
【0023】
当然、前述の膨潤はポリフッ化ビニリデン系樹脂の構成、電解液の組成によって異なり、それによって発生する不具合の程度も異なる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂について着目すると、例えばヘキサフロロプロピレンのような共重合成分を多く共重合させると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は膨潤しやすくなる。このような観点から本発明では本発明の多孔構造を特定する1〜100nmの平均孔径の範囲において前述の不具合を生じさせないようなポリフッ化ビニリデン系樹脂を選定する必要があり、電解液による膨潤を制御するという観点からもフッ化ビニリデンを98mol%以上含むポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いることが好ましい。一般的に誘電率の高いエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートといった環状カーボネートの量が電解液中で多くなるほどポリフッ化ビニリデン系樹脂は膨潤しやすくなるが、本発明で特定したポリフッ化ビニリデン系樹脂の場合は、溶媒が環状カーボネートのみからなる電解液を適用しても、該ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層で十分なイオン透過性が得られ、電池性能を損なうことはない。
【0024】
本発明における接着性多孔質層の多孔構造は、非水系二次電池用セパレータとして適当な空孔率を有しているにも関わらす、従来のものに比べその平均孔径が非常に小さいことが特徴的である。これは微細な多孔構造が発達していて、均一であることを意味する。このような多孔構造は前述したようにセパレータ電極界面におけるイオンの移動の均一性が良好であるため、均一な電極反応を可能とし、電池の負荷特性、サイクル特性を向上させる効果がある。また、接着に寄与する該ポリフッ化ビニリデン系樹脂部の面内分布の均一性も高いため良好な電極との接着が達成される。
【0025】
さらに本発明のセパレータは不織布基材と接着性多孔質層との界面におけるイオン移動も良好にする。一般的に、積層型セパレータは層界面のイオン移動が目詰まりにより好ましくなく、そのため良好な電池特性を得るのが難しいことがある。しかし、本発明における接着性多孔質層は、微細な多孔構造が発達しており、均一でかつその孔の数が多い。また、不織布基材を使用するため目詰まりによるイオン移動抑制は発生しない。そのため、不織布基材の孔と接着性多孔質層の孔を良好に接続できる確率が高くなるから、目詰まりによる性能低下を著しく抑制することが可能となる。
【0026】
本発明のように微細な多孔質構造を有する接着性多孔質層を得るためには、例えば重量平均分子量が高い、具体的には60万以上、好ましくは100万以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂を適用する方法が挙げられる。また、該ポリフッ化ビニリデン系樹脂のフッ化ビニリデンの含有量を多くする、具体的には98mol%以上としたり、凝固浴の温度をより低くしたりする方法等が挙げられる。
【0027】
なお、接着性多孔質層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、無機物あるいは有機物からなるフィラーやその他添加物を混入することも可能である。このようなフィラーを混入させることで、セパレータの滑り性や耐熱性を改善させることが可能となる。無機フィラーとしては、例えばアルミナ等の金属酸化物や、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等を用いることができる。有機フィラーとしては例えばアクリル樹脂等を用いることができる。
【0028】
[非水系二次電池用セパレータ]
本発明の非水系二次電池用セパレータは、上述したように、不織布基材と、この基材の少なくとも表面に形成され、かつポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層と、を備えている。ここで、接着性多孔質層は、電解液を含んだ状態で熱プレスによって電極と接着する接着層であるため、セパレータの最外層として存在する必要がある。当然、正極および負極の両方とセパレータを接着させた方がサイクル寿命の観点から好ましいので、不織布基材の両面に接着性多孔質層を形成した方が好ましく、さらに不織布基材を接着性多孔質層中に完全に内包させた方が好ましい。
【0029】
本発明の非水系二次電池用セパレータの空孔率は50〜80%の範囲である必要があり、55〜70%の範囲であればより好ましい。空孔率が80%を超えると、電極と接着させるプレス工程に耐える力学物性を得るのが難しくなる。また、空孔率が80%より高いと表面開孔率が高くなり、接着機能を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂が占める面積が減るため、十分な接着力を確保することが困難となり好ましくない。空孔率が50%より低くなると、イオン透過性が著しく低下し、十分な電池特性を得るのが困難となるため好ましくない。
【0030】
本発明の非水系二次電池用セパレータのガーレ値は10〜800秒/100ccの範囲が好適である。ガーレ値が800秒/100ccより高いと十分な電池性能が得られないことがある。
該ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量は3.0〜10.0g/mの範囲が好適である。3.0g/mより少ないと電極との接着性が十分でなくなることがある。また、10.0g/mより多いとイオンの透過性を阻害し電池の負荷特性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0031】
本発明において、非水系二次電池用セパレータの曲路率は、良好なイオン透過性を確保するという観点から、1.5〜2.5の範囲であることが好ましい。非水系二次電池用セパレータの膜厚は、機械強度とエネルギー密度の観点から、5〜35μmが好ましい。接着性多孔質層の片面の膜厚としては、接着性と良好なイオン透過性を確保するという観点から、0.5〜5μmの範囲であることが好ましい。接着性多孔質層におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂のフィブリル径は、サイクル特性の観点から、10〜1000nmの範囲であることが好ましい。非水系二次電池用セパレータの膜抵抗は、十分な電池の負荷特性を確保するという観点から、1〜10ohm・cmの範囲であることが好ましい。ここで膜抵抗とはセパレータに電解液を含浸させたときの抵抗値であり、交流法にて測定される。当然、電解液の種類、温度によって異なるが、上記の数値は電解液として1M LiBF プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート(1/1重量比)を用い、20℃にて測定した数値である。
【0032】
[非水系二次電池用セパレータの製造方法]
上述した本発明の非水系二次電池用セパレータは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層を形成し、さらにこれと不織布基材を複合化する必要があるが、例えば、これは以下のような方法によって達成される。
具体的に、まずポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶媒に溶解して、塗工液を作製する。この塗工液を不織布基材上へ塗工し、適切な凝固液に浸漬する。これにより、相分離現象を誘発しながら、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を固化させる。この工程でポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる層は多孔構造となっている。その後、水洗することで凝固液を除去し、乾燥することで接着性多孔質層を不織布基材上に一体的に形成することができる。
【0033】
上記の塗工液としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解する良溶媒を用いることができる。このような良溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどの極性アミド溶媒を好適に用いることができる。良好な多孔構造を形成するという観点においては、上記の良溶媒に加えて、相分離を誘発させる相分離剤を混合させる方が好ましい。このような相分離剤としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、あるいはトリプロピレングリコールなどが挙げられる。このような相分離剤は、塗工に適切な粘度が確保できる範囲で添加することが好ましい。また、接着性多孔質層にフィラーやその他添加物を混入させる場合は、上記塗工液中に混合あるいは溶解させればよい。
【0034】
塗工液の組成は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が3〜15重量%の濃度で含まれていることが好ましい。溶媒としては、適切な多孔構造を形成する観点から、良溶媒を60重量%以上、相分離剤を40重量%以下含む混合溶媒を用いることが好ましい。
凝固液としては、水、水と前記良溶媒の混合溶媒、あるいは、水と前記良溶媒と前記相分離剤の混合溶媒を用いることができる。特に水と良溶媒と相分離剤の混合溶媒が好ましく、その場合、良溶媒と相分離剤の混合比はポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶解に用いた混合溶媒の混合比に合わせた方が生産性の観点から好適である。水の濃度は、良好な多孔構造を形成し、生産性を向上させる観点から、40〜90重量%であることが好ましい。
【0035】
不織布基材への塗工液の塗工は、マイヤーバー、ダイコーター、リバースロールコーター、グラビアコーターなどの従来の塗工方式を適用可能である。接着性多孔質層を不織布基材の両面に形成する場合、塗工液を片面ずつ塗工してから凝固、水洗および乾燥することも可能だが、塗工液を両面同時に不織布基材上に塗工してから凝固、水洗および乾燥する方が、生産性の観点から好適である。
【0036】
なお、本発明のセパレータは、上述した湿式塗工法以外に、乾式塗工法でも製造することができる。ここで、乾式塗工法とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と溶媒を含んだ塗工液を不織布基材上に塗工し、これを乾燥することで溶媒を揮発除去することにより、多孔膜を得る方法をいう。ただし、乾式塗工法の場合、湿式塗工法と比べて塗工膜が緻密膜になり易く、塗工液にフィラー等を添加しなければ多孔質層を得ることは殆ど不可能である。また、このようなフィラー等を添加したとしても、良好な多孔質構造は得られ難い。よって、このような観点からすれば、本発明では湿式塗工法を用いることが好ましい。
【0037】
また、本発明のセパレータは、接着性多孔質層と不織布基材を別個に作製しておき、これらのシートを重ね合わせて、熱圧着や接着剤により複合化する方法等によっても製造できる。接着性多孔質層を独立したシートとして得る方法としては、塗工液を剥離シート上に塗工し、上述した湿式塗工法あるいは乾式塗工法を用いて接着性多孔質層を形成し、接着性多孔質層のみを剥離する方法等が挙げられる。
【0038】
[非水系二次電池]
本発明の非水系二次電池は、上述した本発明のセパレータを用いたことを特徴とする。
本発明において、非水系二次電池は、正極および負極の間にセパレータが配置され、これらの電池素子が電解液と共に外装内に封入された構成となっている。非水系二次電池としてはリチウムイオン二次電池が好適である。
【0039】
正極としては、正極活物質、バインダー樹脂および導電助剤からなる電極層を、正極集電体上に形成した構成を採用できる。正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウム、あるいはオリビン構造のリン酸鉄リチウムなどが挙げられる。本発明では、セパレータの接着性多孔質層を正極側に配置した場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が耐酸化性に優れるため、4.2V以上の高電圧で作動可能なLiMn1/2Ni1/2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3といった正極活物質を適用しやすくなるという利点もある。バインダー樹脂としては例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂などが挙げられる。導電助剤としては例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末などが挙げられる。集電体としては例えば厚さ5〜20μmのアルミ箔などが挙げられる。
【0040】
負極としては、負極活物質、およびバインダー樹脂からなる電極層を、負極集電体上に形成した構成を採用でき、必要に応じて電極層中に導電助剤を添加してもよい。負極活物質としては、例えばリチウムを電気化学的に吸蔵することができる炭素材料や、シリコンあるいは錫などのリチウムと合金化する材料などを用いることができる。バインダー樹脂としては、例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂やブチレン−スタジエンゴムなどが挙げられる。本発明の非水系二次電池用セパレータの場合、接着性が良好であるため、負極バインダーとしてポリフッ化ビニリデン系樹脂だけでなくブチレン−スタジエンゴムを用いた場合でも十分な接着性を確保できる。また、導電助剤としては例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末などが挙げられる。集電体としては例えば厚さ5〜20μmの銅箔などが挙げられる。また、上記の負極に代えて、金属リチウム箔を負極として用いることも可能である。
【0041】
電解液は、リチウム塩を適切な溶媒に溶かした構成となっている。リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClOなどが挙げられる。溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フロロエチレンカーボネート、ジフロロエチレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびそのフッ素置換体等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル、あるいは、これらの混合溶媒を好適に用いることができる。特に、環状カーボネート/鎖状カーボネート=20〜40/80〜60重量比の溶媒に、リチウム塩を0.5〜1.5M溶解したものが好適である。なお、従来の接着性多孔質層を備えたセパレータにおいては、使用する電解液の種類によって電極に対する接着性を発揮し難い場合もあったが、本発明のセパレータによれば、電解液の種類によらず良好な接着性を発揮し得る点にも大きな利点がある。
【0042】
本発明の非水系二次電池用セパレータは金属缶外装の電池にも適用可能であるが、電極との接着性が良好であるためアルミラミネートフィルム外装のソフトパック電池に好適に用いられる。このような電池を作製する方法は、前記正極および負極をセパレータを介して接合させ、これに電解液を含浸させアルミラミネートフィルム内に封入する。それを熱プレスすることで、非水系二次電池を得ることができる。このような本発明の構成であれば、電極とセパレータを良好に接着でき、サイクル寿命に優れた非水系二次電池を得ることができる。また、電極とセパレータの接着性が良好なため、安全性にも優れた電池となる。電極とセパレータの接合方法は電極とセパレータを積層させていくスタック方式、電極とセパレータを一緒に捲回する方式などがあり、本発明はいずれにも適用可能である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
[測定方法]
(ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層の平均孔径)
多孔質層の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス株式会社:商品名「VE8800」)により、倍率30000倍で撮影して得た写真から、無作為に開孔20箇所を選んで直径を測定し、すべての直径の平均値を求めて平均孔径とした。
【0045】
(膜厚)
接触式の厚み計(LITEMATIC ミツトヨ社製)を用いて測定した。測定端子は直径5mmの円柱状のものを用い、測定中には7gの荷重が印加されるように調整して行った。
【0046】
(目付)
サンプルを10cm×10cmに切り出し、その重量を測定した。重量を面積で割ることで目付を求めた。
【0047】
(ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量)
セパレータの目付から基材の目付を差し引くことでポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量を求めた。
【0048】
(空孔率)
非水系二次電池用セパレータ及び基材の空孔率は、下記式1から求めた。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100… (式1)
ここで、ε:空孔率(%)、Ws:目付(g/m)、ds:真密度(g/cm)、t:膜厚(μm)である。
具体的に、例えばPET不織布基材とポリフッ化ビニリデン系樹脂のみからなる多孔質層とを積層させた複合セパレータについては、当該複合セパレータの空孔率ε(%)は以下の式2から算出した。
ε={1−(Wa/1.38+Wb/1.78)/t}×100 … (式2)
ここで、WaはPET不織布基材の目付(g/m)、Wbはポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量(g/m)、tは膜厚(μm)である。ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層の空孔率を算出する場合は、Wa=0(g/m)であり、tはポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層の厚み、すなわちセパレータの膜厚から基材の膜厚を引いた値とすればよい。
【0049】
(ガーレ値)
JIS P8117に従い、ガーレ式デンソメータ(G−B2C 東洋精機社製)にて測定した。
【0050】
[実施例1]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂としてクレハ化学社製のKFポリマー #9300(フッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン=98.9/1.1mol% 重量平均分子量100万)を用いた。該ポリフッ化ビニリデン系樹脂を5重量%でジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=7/3重量比である混合溶媒に溶解し塗工液を作製した。これを繊度0.2dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維に繊度0.06dtexバインダー用PET短繊維をブレンドし、湿式抄造法により製膜、カレンダーロール掛けした不織布状シート(平均膜厚16μm、目付7g/m)の両面に等量塗工し、水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13重量比の凝固液(40℃)に浸漬することで固化させた。これを水洗、乾燥することで本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータは、ポリエステルからなる不織布基材が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層中に内包された構造となっていた。このセパレータについて、セパレータの膜厚、PVdF系樹脂中のVDFの含有量、セパレータの空孔率、接着性多孔質層の平均孔径と重量、セパレータのガーレ値の測定結果を表1に示す。なお、以下の実施例および比較例のセパレータについても同様に表1にまとめて示す。
【0051】
[実施例2、3]
実施例1と同様の塗工液、および不織布基材を用い、同様の方法で、表1に示すように塗工量のみ変化させて本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
【0052】
[比較例1]
共重合組成がフッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン/クロロトリフロロエチレン=92.2/4.4/3.4重量比となるポリフッ化ビニリデン系樹脂を乳化重合にて作製した。このポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は41万であった。該ポリフッ化ビニリデンを12重量%でジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=70/30重量比である混合溶媒に溶解し塗工液を作製した。これを繊度0.2dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維に繊度0.06dtexバインダー用PET短繊維をブレンドし、湿式抄造法により製膜、カレンダーロール掛けした不織布状シート(平均膜厚16μm、目付7g/m)の両面に等量塗工し、水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13重量比の凝固液(40℃)に浸漬することで固化させた。これを水洗、乾燥することで、ポリエステルからなる不織布基材が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層中に内包された構造となった非水系二次電池用セパレータを得た。
【0053】
[比較例2]
凝固液の温度を0℃とした以外は実施例1と同様の方法にて非水系二次電池用セパレータを得た。
【0054】
[比較例3]
共重合組成がフッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン/クロロトリフロロエチレン=92.2/4.4/3.4重量比となるポリフッ化ビニリデン系樹脂を乳化重合にて作製した。このポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は41万であった。該ポリフッ化ビニリデンを18重量%でジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=70/30重量比である混合溶媒に溶解し塗工液を作製した。これを繊度0.2dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維に繊度0.06dtexバインダー用PET短繊維をブレンドし、湿式抄造法により製膜、カレンダーロール掛けした不織布状シート(平均膜厚16μm、目付7g/m)の両面に等量塗工し、水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13重量比の凝固液(40℃)に浸漬することで固化させた。これを水洗、乾燥することで、ポリエステルからなる不織布基材が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層中に内包された構造となった非水系二次電池用セパレータを得た。
【0055】
[非水系二次電池の作製]
(負極の作製)
負極活物質である人造黒鉛300g、バインダーであるスチレン−ブタジエン共重合体の変性体を40重量%含む水溶性分散液7.5g、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース3g、適量の水を双腕式混合機にて攪拌し、負極用スラリーを作製した。この負極用スラリーを負極集電体である厚さ10μmの銅箔に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、プレスして負極活物質層を有する負極を作製した。
【0056】
(正極の作製)
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末を89.5g、導電助剤のアセチレンブラック4.5g、バインダーであるポリフッ化ビニリデンを6重量%となるようにNMPに溶解した溶液をポリフッ化ビニリデンの重量が6重量%となるように双腕式混合機にて攪拌し、正極用スラリーを作製した。この正極用スラリーを正極集電体である厚さ20μmのアルミ箔に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、プレスして正極活物質層を有する正極を作製した。
【0057】
(電池の作製)
前記の正極と負極にリードタブを溶接し、セパレータを介してこれら正負極を接合させ、電解液をしみ込ませてアルミパック中に真空シーラーを用いて封入した。ここで電解液は1M LiPF エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(3/7重量比)を用いた。これを熱プレス機により電極1cm当たり20kgの荷重をかけ、90℃、2分の熱プレスを行うことで試験電池を作製した。
【0058】
[負荷特性試験]
負荷特性試験は前記作製した非水系二次電池を用いて実施した。電池の負荷特性は25℃にて0.2Cの放電容量を基準にした2Cの相対放電容量を測定し、これを指標とした。この試験を実施例1〜3、比較例1〜3のセパレータを用いた電池について実施した。その結果を表2に示す。
【0059】
[充放電サイクル試験]
充放電サイクル試験は前記作製した非水系二次電池を用いて実施した。充電条件は1C、4.2Vの定電流定電圧充電、放電条件は1C、2.75Vカットオフの定電流放電としサイクル特性試験を実施した。ここでサイクル特性の指標は100サイクル後の容量維持率とした。この試験を実施例1〜3、比較例1〜3のセパレータを用いた電池について実施した。その結果を表2に示す。
【0060】
[電極と接着性確認]
充放電サイクル試験後の電池を解体しセパレータと電極の接着性を確認した。接着性は接着力と均一性の観点から確認し、その結果を表2に示す。なお、接着力に関しては、正極側について、実施例1のセパレータを用いた場合の剥離強度を100としたときの相対値で表2に示す。均一性に関しては、接着性多孔質層がほぼ全て電極表面に付着していたものを均一性が良好(〇)と判断し、接着性多孔質層の大部分が電極表面に付着しているが一部破損しているものは均一性が中程度(△)と判断し、接着性多孔質層の大部分が電極表面に付着しておらず著しく破損していたものは均一性が不良(×)と判断した。
比較例1では接着性が好ましくないが、これは接着性多孔質層の平均孔径が大きく空孔率が高いため、電極との接着工程である熱プレス時に接着性多孔質層が力学的に耐えることができず、電極とセパレータの間に保持されず外部にはみ出してしまったことによる。それに対し、実施例1〜3ではそのようなことがなかった。このような観点から本発明非水系二次電池用セパレータの平均孔径、空孔率は好適であることが分かる。
【0061】
[電解液の種類と接着性]
実施例1と比較例1のセパレータについて、各種電解液を用いて、上記と同様にして電極との接着性テストを実施した。なお、電解液Aとして1M LiPF エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(3/7重量比)を用い、電解液Bとして1M LiPF エチレンカーボネート/プロピレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(3/2/5重量比)を用い、電解液Cとして1M LiPF エチレンカーボネート/プロピレンカーボネート(1/1重量比)を用いた。結果を表3に示す。なお、表3には、実施例1のセパレータの正極、負極おのおので得られた剥離強度を100としたときの剥離強度の相対値で、正極と負極の剥離強度の平均値が70以上のものについては〇と記載し、50以上70未満のものについては△と記載し、50未満のものについては×と記載した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の非水系二次電池セパレータは非水系二次電池に好適に用いることができ、特に電極との接合が重要なアルミラミネート外装の非水系二次電池に好適である。