特許第5952024号(P5952024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952024
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】液滴吐出装置及び清掃方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20160630BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   B41J2/165 205
   B41J2/14 305
   B41J2/165 207
   B41J2/165 301
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-32104(P2012-32104)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-121712(P2013-121712A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-248019(P2011-248019)
(32)【優先日】2011年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】川井 智也
(72)【発明者】
【氏名】武内 彬
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−003324(JP,A)
【文献】 特開2009−248430(JP,A)
【文献】 特開平10−006521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を格納するヘッドを備え、
上記ヘッドは、液滴を吐出するノズル及び当該ノズルから液滴を吐出するために当該ノズルに連通するインク貯留室に振動を与える振動素子を備え、
上記ヘッドのノズルが設けられた面を拭き取ることで清掃する拭き取り部と、
上記ヘッドの位置を制御するヘッド位置制御手段と、
上記ヘッドに対する液体の供給圧を上げることで上記ノズルから液滴を吐出させることによる上記ノズルの清掃である第一の清掃を制御する第一の清掃制御手段と、
上記拭き取り部による上記面の清掃を制御する拭き取り部制御手段と、
上記ヘッドに対する液体の供給圧を制御する供給圧制御手段と、を備え、
上記ヘッド位置制御手段は、上記ヘッドが被記録媒体に液滴を吐出して描画を行なっている途中において、予め定められたときに上記第一の清掃を行なうための場所に上記ヘッドを移動させ、
上記第一の清掃制御手段は、上記第一の清掃を行なうための場所に上記ヘッドが移動したら上記ヘッドに上記第一の清掃を行なわせ、
上記拭き取り部制御手段は、上記第一の清掃が終了した後に、上記拭き取り部に上記面の清掃を行なわせ、
上記ヘッド位置制御手段は、上記拭き取り部による上記面の清掃が終了した後に、上記被記録媒体上に上記ヘッドを移動させて、上記描画を再開させ、
上記供給圧制御手段は、上記第一の清掃制御手段によって上記第一の清掃を行なうときに、上記ヘッドに対する液体の供給圧を上げるものであることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
上記第一の清掃制御手段による清掃の終了後、上記拭き取り部制御手段による清掃が始まるまでに、上記ヘッド位置制御手段は上記ヘッドを移動させないことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
上記供給圧制御手段は、上記拭き取り部制御手段によって上記拭き取り部に清掃を行なわせるときに、上記ヘッドに対する液体の供給圧を大気圧より下げることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
上記振動素子によって上記インク貯留室に振動を与えることで上記ノズルから液滴を吐出させることによる上記ノズルの清掃である第二の清掃を制御する第二の清掃制御手段をさらに備え、
上記第二の清掃制御手段は、上記拭き取り部による上記面の清掃後に、上記振動素子に上記第二の清掃を行なわせ、
上記ヘッド位置制御手段は、上記第二の清掃が終了した後に、上記被記録媒体上に上記ヘッドを移動させて、上記描画を再開させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
上記拭き取り部制御手段による清掃の終了後、上記第二の清掃制御手段による清掃が始まるまでに、上記ヘッド位置制御手段は上記ヘッドを移動させないことを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
上記ヘッドを複数備え、
上記ヘッド位置制御手段による上記ヘッドを上記第一の清掃を行なうための場所に移動させるときが、複数の上記ヘッドのそれぞれに定められていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
上記ヘッド位置制御手段は、上記ヘッドが上記被記録媒体上を予め定められた回数走査した後に、上記ヘッドを上記第一の清掃を行なうための場所に移動させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
液体を格納するヘッドを備え、
上記ヘッドは、液滴を吐出するノズル及び当該ノズルから液滴を吐出するために当該ノズルに連通するインク貯留室に振動を与える振動素子を備え、上記ヘッドのノズルが設けられた面を清掃する拭き取り部と、を備える液滴吐出装置のヘッド及びノズルの清掃方法であって、
上記ヘッドが被記録媒体に液滴を吐出して描画を行なっている途中において、予め定められたときに、上記ヘッドに対する液体の供給圧を上げることで上記ノズルから液滴を吐出させることによる上記ノズルの清掃である第一の清掃を行なうための場所に上記ヘッドを移動させるヘッド移動工程と、
上記第一の清掃を行なうための場所に上記ヘッドが移動したら上記ヘッドに上記第一の清掃を行なわせる第一の清掃工程と、
上記第一の清掃工程が終了した後に、上記拭き取り部に上記面の清掃を行なわせる拭き取り部清掃工程と、
上記拭き取り部清掃工程が終了した後に、上記被記録媒体上に上記ヘッドを移動させて、上記描画を再開させる描画再開工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
上記拭き取り部清掃工程の後に、上記振動素子によって上記インク貯留室に振動を与えることで上記ノズルから液滴を吐出させることによる上記ノズルの清掃である第二の清掃を行なう第二の清掃工程をさらに含み、
上記描画再開工程は、上記第二の清掃工程が終了した後に、上記被記録媒体上に上記ヘッドを移動させて、上記描画を再開させる工程であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばインク等の液滴によって図等を描画する液滴吐出装置及びノズル及びヘッドの清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドのフェイスを清掃するブレードがオリフィスの上を通過するのに連動してオリフィスよりインク液滴を吐出させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−95862号公報(1990年4月6日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット印刷機では、作図中に吐出するインクがミスト状になり、ヘッドに付着することでヘッドが汚れる。このため、ワイパー等を使ってヘッドに付着したインクを除去するワイピングと呼ばれる工程を行なうことが多い。
【0005】
例えばラテックスインク等、インクの種類によってはミストによるヘッドの汚染が激しいものがあり、作図中に頻繁にワイピングを行なうことが望ましい場合がある。しかし、このようなインクを用いたヘッドに、作図後にワイピングを行なうと付着して高粘度になったインクをヘッドのノズルに押し込むことになるという問題がある。
【0006】
なお、上述のような従来技術では、インクのパージとワイピングを両立させることは困難であるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、作図中に円滑にノズルの清掃及びヘッドに付着した液滴の除去を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液滴吐出装置は、液体を格納するヘッドを備え、上記ヘッドは、液滴を吐出するノズル及び当該ノズルから液滴を吐出するために当該ヘッドのノズルに連通するインク貯留室に振動を与える振動素子を備え、上記ヘッドのノズルが設けられた面を清掃する拭き取り部と、上記ヘッドの位置を制御するヘッド位置制御手段と、上記ヘッドに対する液体の供給圧を上げることで上記ノズルから液滴を吐出させることによる上記ノズルの清掃である第一の清掃を制御する第一の清掃制御手段と、上記拭き取り部による上記面の清掃を制御する拭き取り部制御手段と、上記ヘッドに対する液体の供給圧を制御する供給圧制御手段と、を備え、上記ヘッド位置制御手段は、上記ヘッドが被記録媒体に液滴を吐出して描画を行なっている途中において、予め定められたときに上記第一の清掃を行なうための場所に上記ヘッドを移動させ、上記第一の清掃制御手段は、上記第一の清掃を行なうための場所に上記ヘッドが移動したら上記ヘッドに上記第一の清掃を行なわせ、上記拭き取り部制御手段は、上記第一の清掃が終了した後に、上記拭き取り部に上記面の清掃を行なわせ、上記ヘッド位置制御手段は、上記拭き取り部による上記面の清掃が終了した後に、上記被記録媒体上に上記ヘッドを移動させて、上記描画を再開させ、上記供給圧制御手段は、上記第一の清掃制御手段によって上記第一の清掃を行なうときに、上記ヘッドに対する液体の供給圧を上げるものであることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る方法は、液体を格納するヘッドを備え、上記ヘッドは、液滴を吐出するノズル及び当該ノズルから液滴を吐出するために当該ヘッドのノズルに連通するインク貯留室に振動を与える振動素子を備え、上記ヘッドのノズルが設けられた面を清掃する拭き取り部と、を備える液滴吐出装置のヘッド及びノズルの清掃方法であって、上記ヘッドが被記録媒体に液滴を吐出して描画を行なっている途中において、予め定められたときに、上記ヘッドに対する液体の供給圧を上げることで上記ノズルから液滴を吐出させることによる上記ノズルの清掃である第一の清掃を行なうための場所に上記ヘッドを移動させるヘッド移動工程と、上記第一の清掃を行なうための場所に上記ヘッドが移動したら上記ヘッドに上記第一の清掃を行なわせる第一の清掃工程と、上記第一の清掃工程が終了した後に、上記拭き取り部に上記面の清掃を行なわせる拭き取り部清掃工程と、上記拭き取り部清掃工程が終了した後に、上記被記録媒体上に上記ヘッドを移動させて、上記描画を再開させる描画再開工程を含むことを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、作図中において第一の清掃後に拭き取り部による清掃を行なうことで、ヘッドに付着して粘度の上昇した液滴をノズルに押し込むことなく、付着した液滴の粘度が上昇する前に拭き取り部による清掃を行なうことができる。また、作図の途中でノズルを第一の清掃により清掃した上で、ヘッドに付着した液滴を拭き取り部で清掃できる。よって、作図中に円滑にノズルの清掃及びヘッドに付着した液滴の除去を行なうことができる。
【0011】
なお、第一の清掃はヘッドへのインク供給圧を上昇させることにより行なう。ヘッド内のインクを吸引することによりノズルの清掃を行なう方法もあるが、この吸引する方法に比べて第一の清掃の方が高速にノズルの清掃を行なうことができる点で有利である。
【0012】
本発明に係る液滴吐出装置では、上記第一の清掃制御手段による清掃の終了後、上記拭き取り部制御手段による清掃が始まるまでに、上記ヘッド位置制御手段は上記ヘッドを移動させないことがより好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、ノズルの第一の清掃とヘッドの拭き取り部による清掃とを同じ場所で行なうことで、第一の清掃後に速やかに拭き取り部による清掃を行なうことができる。これにより、例えば、液滴を乾燥させるための強力なヒータを用いて周辺環境が高温になり、液滴の粘度が上昇しやすく、液滴の固着が生じやすい場合であっても、粘度の上昇及び固着の前に拭き取り部によるヘッドの清掃を行なうことができる。よって、拭き取り部によるヘッドの清掃の効率を高めることができる。また、第一の清掃を行なうための場所から拭き取り部による清掃を行なうための場所に移動する際に液滴が落下して周辺を汚染することを防ぐことができる。
【0014】
本発明に係る液滴吐出装置では、上記供給圧制御手段は、上記拭き取り部制御手段によって上記拭き取り部に清掃を行なわせるときに、上記ヘッドに対する液体の供給圧を大気圧より下げることがより好ましい。
【0015】
拭き取り部による清掃を行なうときにヘッドに対する液体の供給圧を大気圧より下げておくことにより、ノズルに液体を引きこむ力を与えつつ拭き取り部による清掃をすることができる。ノズルに液体を引きこむ力を与えないで拭き取り部による清掃を行なうと、ヘッドが複数の種類の色の液体を格納したものである場合に、或るノズルから漏れ出した液体が別のノズルの中に押し込まれることによってノズル内のインクが混色する虞がある。しかし、ヘッドに対する液体の供給圧を大気圧より下げることにより、ノズルにインクを引きこむ力を与えノズルからの漏れ出しを抑制した状態でワイピングすることができるため、混色を防ぐことができる。
【0016】
また、後述のように第二の清掃を行なう場合、第二の清掃はヘッドに対する液体の供給圧を大気圧より下げておく必要がある。しかし、ヘッドに対する液体の供給圧を大気圧より下げておくことにより、速やかに第二の清掃を行なうことができ、ひいては、より短時間で印刷を再開できる。
【0017】
本発明に係る液滴吐出装置では、上記振動素子によって上記ヘッドのノズルに連通するインク貯留室に振動を与えることで上記ノズルから液滴を吐出させることによる上記ノズルの清掃である第二の清掃を制御する第二の清掃制御手段をさらに備え、上記第二の清掃制御手段は、上記拭き取り部による上記面の清掃後に、上記振動素子に上記第二の清掃を行なわせ、上記ヘッド位置制御手段は、上記第二の清掃が終了した後に、上記被記録媒体上に上記ヘッドを移動させて、上記描画を再開させることがより好ましい。
【0018】
また、本発明に係る方法では、上記拭き取り部清掃工程の後に、上記振動素子によって上記ヘッドのノズルに連通するインク貯留室に振動を与えることで上記ノズルから液滴を吐出させることによる上記ノズルの清掃である第二の清掃を行なう第二の清掃工程をさらに含み、上記描画再開工程は、上記第二の清掃工程が終了した後に、上記被記録媒体上に上記ヘッドを移動させて、上記描画を再開させる工程であることがより好ましい。
【0019】
ヘッド内で複数の色の液滴を吐出する場合、拭き取り部による清掃によって異なる色の液滴がノズルに押し込まれて混色する虞がある。第二の清掃を行なうことにより、ノズル内に残留する混色したインクを排出することができる。
【0020】
本発明に係る液滴吐出装置では、上記拭き取り部制御手段による清掃の終了後、上記第二の清掃制御手段による清掃が始まるまでに、上記ヘッド位置制御手段は上記ヘッドを移動させないことがより好ましい。
【0021】
拭き取り部による清掃の後に、第二の清掃を行なう場所に移動するための時間のロスを低減することができる。
【0022】
本発明に係る液滴吐出装置では、上記ヘッドを複数備え、上記ヘッド位置制御手段による上記ヘッドを上記第一の清掃を行なうための場所に移動させるとき(タイミング)が、複数の上記ヘッドのそれぞれに定められていることがより好ましい。
【0023】
ヘッドのいずれかが、第一の清掃を行なうための場所に移動させるタイミングとなったときに、対応するヘッドを第一の清掃を行なう場所に配置して、第一の清掃を行ない、引き続き、拭き取り部による清掃、必要であれば第二の清掃を行なう。このように、清掃が必要なヘッドのみに適宜清掃を行なうことによって時間のロスを低減できる。また、第一の清掃、拭き取り部による清掃、第二の清掃の場所をヘッド一個分だけ用意すればよいため、ヘッドのメンテナンス機構の構成を簡略化及び省スペース化できる。
【0024】
本発明に係る液滴吐出装置では、上記ヘッド位置制御手段は、上記ヘッドが上記被記録媒体上を予め定められた回数走査した後に、上記ヘッドを上記第一の清掃を行なうための場所に移動させることがより好ましい。
【0025】
ヘッドが所定回数走査した後に、第一の清掃、拭き取り部による清掃、必要であれば第二の清掃を行なうように制御することで、より安定して印刷の品質を維持することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、作図中に円滑にノズルの清掃及びヘッドに付着した液滴の除去を行なうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態である液滴吐出装置1の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態である液滴吐出装置1が備える制御部50の構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態である液滴吐出装置1の動作の一例を示すフロー図である。
図4】本発明の一実施形態である液滴吐出装置1におけるヘッドのノズル付近のインク圧力の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る液滴吐出装置の一実施形態について、図1図3を用いて詳細に説明する。
【0029】
〔液滴吐出装置1の構成〕
まず、本発明に係る液滴吐出装置の一実施形態である液滴吐出装置1の構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は液滴吐出装置1の構成を模式的に示す図であり、図2は液滴吐出装置1が備える制御部50の構成を模式的に示す図である。
【0030】
図1に示すように液滴吐出装置1はヘッド10、クリーニング機構20、フラッシング用ステーション30、ガイド機構40を備えている。また、液滴吐出装置1はメディア(被記録媒体)100に対して図等を描画するためのものである。
【0031】
ヘッド10はインク(液体)を格納するものであり、インクをメディア100に吐出するためのものである。
【0032】
ヘッド10のメディア100に対向する面(フェイス)上にはノズル11が複数設けられている。また、図2に示すように、ヘッド10の内部にはノズル11に連通するインク貯留室(図示せず)を振動させるための振動素子12が備えられている。なお、説明の簡単のため図示していないが、インク貯留室は、ヘッド10の中にあり、インクの色毎に隔てられた空間であり、当該色を吐出するノズル11に連通している。振動素子12は吐出するインクの色に応じてこの各インク貯留室に振動を与える。
【0033】
作図中においては、ヘッド10は矢印A方向に往復運動してメディア100上を走査しながら、作図する図形の情報に応じて振動素子12が振動して、ノズル11からインクの液滴がメディア100上に吐出される。
【0034】
クリーニング機構20はヘッド10のフェイス上をクリーニングするためのものである。クリーニング機構20はワイパー(拭き取り部)21を備えている。ワイパー21がフェイス上に付着した付着物(インク)を拭き取ることによりフェイスの清掃(ワイピング)が行なわれる。
【0035】
クリーニング機構20にはインク回収容器22が設けられている。本実施形態では、インクのパージ(第一の清掃)をクリーニング機構20上で行なうが、このパージによって吐出されたインクはインク回収容器22に回収される。
【0036】
本実施形態のようにパージとワイピングを同じ場所で行なうことによって、パージ用の場所からワイピング用の場所にヘッドを移動させるための時間のロスを防ぐことができる。また、液滴吐出装置1はインク回収容器22を備えることによって、パージによって吐出されたインクが他の場所を汚す問題を解消することができる。
【0037】
ここで「パージ」、つまり本発明における「第一の清掃」とは、ヘッドの振動素子を使わずに、ヘッドに液滴を供給する際の供給圧を上げることでノズルから液滴を吐出して、ノズルを清掃することをいう。供給圧は例えば大気圧以上に上げることで、パージが好適に行なわれる。
【0038】
なお、パージを行なうときにワイパー21及びワイパーを支えたり駆動させたりする部材(図示せず)が、ノズルの直下に位置しない構成が望ましい。
【0039】
フラッシング用ステーション30はフラッシング(第二の清掃)を行なうための場所である。ヘッド10はフラッシング用ステーション30の上まで移動した後にフラッシングを行ない、ノズルの清掃が行なわれる。
【0040】
ここで「フラッシング」、つまり本発明における「第二の清掃」とは、振動素子によりヘッドのノズルに連通するインク貯留室に振動を与えることによってノズルから液滴を吐出して、ノズル内の混色インクなどを排出することで、ノズルを清掃することをいう。
【0041】
ガイド機構40はヘッド10の移動方向を規定するための部材である。ガイド機構40があることにより、ヘッド10は、メディア100上に図等を描画する間、メディア100上を矢印A方向に走査する。また、パージ、フラッシング等を行なうときはガイド機構40に沿ってヘッド10はクリーニング機構20及びフラッシング用ステーション30上に移動する。
【0042】
次に図2を用いて液滴吐出装置1が備える制御部50の構成について説明する。
【0043】
制御部50は、ヘッド位置制御部(ヘッド位置制御手段)51、パージ制御部(第一の清掃制御手段)52、フラッシング制御部(第二の清掃制御手段)53、ワイパー制御部(拭き取り部制御手段)54、供給圧制御部(供給圧制御手段)55を備える。
【0044】
ヘッド位置制御部51はヘッド10の位置を制御するものである。例えば、メディア100に描画するときには、予め入力された図形の情報に基づいてヘッド10をメディア100上で走査させる。また、ヘッド位置制御部51は、パージ又はワイピングを行なうときにはヘッド10をクリーニング機構20上に移動させ、フラッシングを行なうときにはヘッド10をフラッシング用ステーション30上に移動させる。例えば、パージをするときには、予め定められた図形の描画を行なっている途中において、予め定められたときに、クリーニング機構20上にヘッド10を移動させる。ヘッド10をクリーニング機構20上に移動させるタイミングについては、適宜ユーザが設定すればよく、例えば、描画を開始して予め定められた時間が経過した後でもよく、描画を開始してヘッド10が予め定められた回数だけメディア100上を走査した後でもよい。
【0045】
パージ制御部52は、パージを行なうための場所(クリーニング機構20上)にヘッド10が移動して、パージを行なうときになるとヘッド10にパージを行なわせる。つまり、パージを行なうとき、パージ制御部52は、供給圧制御部55にパージを開始することを示す信号を送信して、供給圧制御部55にヘッド10に対するインクの供給圧を上昇させる。「パージを行なうとき」とは、パージを行なうタイミングになったことをパージ制御部52が認識したときである。例えば、ヘッド位置制御部51がヘッド10をクリーニング機構20上に移動させた後にパージ可能となったことをパージ制御部52に通知するなど、別の制御部(図示しているものもしていないものも含む)から指示を受けたときであってもよく、クリーニング機構20にヘッド10がその上に来たことを認識するセンサ等を設けて、当該センサ等からヘッド10がクリーニング機構20上に来たことを示す信号をパージ制御部52が受け取ることによってパージを行なうときを認識してもよい。また、後述のように、ワイパー21をワイピングの開始位置に移動させる場合には、ヘッド位置制御部51がヘッド10をクリーニング機構20上に移動させたことを示す信号をワイパー制御部54に送信して、ワイパー制御部54がワイパー21をワイピングの開始位置に移動させた後に、その移動が終了したこと示す信号をパージ制御部52に送信して、パージ制御部52がパージを行なうときを認識してもよい。パージ制御部52がパージを行なうときを判断する方法はここに記載した例の他にも適宜設定可能である。
【0046】
フラッシング制御部53は、後述するワイパー21によるワイピングが終了した後に、振動素子12を振動させてフラッシングを行なわせる。つまり、フラッシング制御部53は、フラッシングを行なうとき、振動素子12によってヘッド10を振動させてフラッシングに必要な量のインクをノズル11から吐出させる。「フラッシングを行なうとき」とは、フラッシングを行なうタイミングになったことをフラッシング制御部53が認識したときである。例えば、ヘッド位置制御部51がヘッド10をフラッシング用ステーション30上に移動させた後にフラッシングをするようにフラッシング制御部53に指示を送るなど、別の制御部(図示しているものもしていないものも含む)から指示を受けたときであってもよく、フラッシング用ステーション30にヘッド10がその上に来たことを認識するセンサ等を設けて、当該センサ等からヘッド10がフラッシング用ステーション30上に来たことを示す信号をフラッシング制御部53が受け取ることによってフラッシングを行なうときを認識してもよい。フラッシング制御部53がフラッシングを行なうときを判断する方法はここに記載した例の他にも適宜設定可能である。
【0047】
ワイパー制御部54は、パージが終了した後に、ワイパー21にフェイスのワイピングを行なわせるものである。ワイパー制御部54は、例えば、パージ制御部52からパージが終了したことを示す信号を受け取ることにより、パージの終了を認識する。次に、ワイパー21を駆動させてフェイスのワイピングを開始する。このとき、ワイパー制御部54は予めワイパー21を、ワイピングを開始する位置まで移動させておく。ワイピングが終了すると、ワイピングの終了を示す信号をヘッド位置制御部51に送る。これによりヘッド位置制御部51はヘッド10をフラッシング用ステーション30上に移動させる。
【0048】
供給圧制御部55は、パージ制御部52から受信するパージを行なうときを示す信号及びパージを終了することを示す信号に基づいて、ヘッド10に対するインクの供給圧を上げたり、下げたりするものである。具体的には、パージ制御部52からパージを開始することを示す信号を受信すると、ヘッド10に対するインクの供給圧を上げるように制御する。また、パージ制御部52からパージを終了することを示す信号を受信すると、ヘッド10に対するインクの供給圧を下げるように制御する。
【0049】
また、供給圧制御部55は、ワイパー制御部54によってワイピングを行なわせるときに、ヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げるものである。具体的には、ワイパー制御部54からワイピングを開始することを示す信号を受信すると、ヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げるように制御する。
【0050】
ワイピングを行なうときにヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げておくことにより、ノズルに液体を引きこむ力を与えつつワイピングすることができる。ノズルに液体を引きこむ力を与えないでワイピングすると、ヘッド10が複数の種類の色のインクを格納したものである場合に、或るノズルから漏れ出したインクが別のノズルの中に押し込まれることによってノズル内のインクが混色する虞がある。しかし、ヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げてワイピングすることにより、ノズルにインクを引きこむ力を与えノズルからの混色を防ぐことができる。
【0051】
また、フラッシングはヘッド10に対するインク供給圧を大気圧より下げておく必要がある。しかし、ワイピング中にヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げておくことにより、速やかにフラッシングを行なうことができ、ひいては、より短時間で印刷を再開できる。つまり、フラッシングの間は供給圧制御部55によりヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下に維持される。
【0052】
〔液滴吐出装置1の動作〕
次に液滴吐出装置1の動作の一例について図3を用いて説明する。図3は液滴吐出装置1の動作の一例を示すフロー図である。ここで説明する方法は、本発明に係る方法の一実施形態である。
【0053】
まず、描画を開始させる(ステップS1)。ヘッド位置制御部51はヘッド10をメディア100上で走査させる。別の制御部、又はヘッド位置制御部51自身が、描画する図形の情報に基づいて振動素子12を振動させて、インクを吐出させて描画を行なう。
【0054】
次に、ヘッド位置制御部51は、ヘッド10による走査回数が予め定められた回数に達したか否かを判断する(ステップS2)。予め定められた回数に達した場合(ステップS2においてYES)、ヘッド位置制御部51はヘッド10をクリーニング機構20上に移動させる(ステップS3、ヘッド移動工程)。ステップS2においてNOの場合、ヘッド位置制御部51は、ヘッド10による走査回数が予め定められた回数に達したか否かを判断を再度行なう。
【0055】
ヘッド10がクリーニング機構20上に移動した後、移動が終了したことを示す信号をヘッド位置制御部51がワイパー制御部54に送信する。次にワイパー制御部54はワイパー21をワイピングの開始位置に移動させる(ステップS4)。当該開始位置はノズル11より外側に位置している。そのため、次のパージの際に、ワイパー21がインクで汚れることを防ぐことができる。
【0056】
次に、パージ制御部52はヘッド10に対するインクの供給圧を上昇させてノズル11からインクを吐出させることによりパージを行なう(ステップS5、第一の清掃工程)。このとき、パージ制御部52からパージを開始する信号を受信した供給圧制御部55がヘッド10に対するインクの供給圧を上昇させる。次に、供給圧制御部55から当該供給圧が上昇したことを示す信号を受信して、パージ制御部52はパージ終了を判定する。パージが終了した後は、パージ制御部52はワイパー制御部54にパージが終了したことを示す信号を送信する。また、パージ制御部52は供給圧制御部55にパージを終了することを示す信号を送信して、供給圧制御部55はインクの供給圧を下げ始める。
【0057】
パージが終了した後、ワイパー制御部54はワイパー21を駆動させてワイピングを行なう(ステップS6、拭き取り部清掃工程)。このとき、ワイパー制御部54はワイピングを開始する信号を供給圧制御部55に送信して、供給圧制御部55はヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げる。ワイピングが終了した後は、ワイパー制御部54はヘッド位置制御部51にワイピングが終了したことを示す信号を送信する。
【0058】
次に、ヘッド位置制御部51はヘッド10をフラッシング用ステーション30上に移動させる(ステップS7)。移動が終了した後は、ヘッド位置制御部51はフラッシング制御部53に当該移動が終了したことを示す信号を送信する。
【0059】
次に、フラッシング制御部53は振動素子12によりヘッドのノズル11に連通するインク貯留室に振動を与えてフラッシングを行なう(ステップS8、第二の清掃工程)。フラッシングが終了した後は、フラッシング制御部53はヘッド位置制御部51にフラッシングが終了したことを示す信号を送信する。なお、フラッシングを行なう間、供給圧制御部55によって、ヘッド10に対するインクの供給圧は大気圧より低く維持される。
【0060】
次にヘッド位置制御部51はヘッド10をメディア上に移動させて、描画を再開する(ステップS9、描画再開工程)。
【0061】
以上により、描画の途中にヘッド10のフェイス及びノズル11の清掃を行なうことができる。
【0062】
ここで、図4を用いて、パージを始めてからフラッシングを終了するまでの供給圧制御部55による供給圧の制御について説明する。図4は本発明の一実施形態である液滴吐出装置1におけるヘッドのノズル付近のインク圧力の経時変化を示す図である。
【0063】
まず、通常の印刷時においてはヘッド10に対するインクの供給圧は大気圧より低い状態で維持されている。
【0064】
次に、パージ制御部52によりパージを開始することとなると、供給圧制御部55はヘッド10に対するインクの供給圧を上げ始める(加圧)。供給圧が大気圧より高くなり、さらにインクを押し出そうとする力が、インクのノズル壁面に対する摩擦等の抵抗等を上回っている間、ノズルからインクが出ることでパージが行なわれる。
【0065】
次に、パージを終了させるために、供給圧制御部55はヘッド10に対するインクの供給圧を下げ始める。ただし、十分に供給圧が下がるまではノズルからインクは出ており、物理的にはインクがパージされている状態がしばらく続き、十分に供給圧が下がるとノズルからインクが出なくなり、パージが完全に終了する。例えば、供給圧が−1.0kPaを下回ると供給圧制御部55はワイパー制御部54に供給圧が−1.0kPaを下回ったことを示す信号を送り、ワイパー制御部54はワイピングを開始する。ワイピングの間、供給圧制御部55はヘッド10に対するインクの供給圧を、例えば、−2.4kPa程度という大気圧より低い圧力まで徐々に下げた上で維持する。
【0066】
なおワイピングの直前にはノズル周辺のインクがノズル内に引き込まれることになるが、引き込む分量を予め予測して、パージ時間を確保しておけばよい。
【0067】
ワイピングが終了すると、ワイパー制御部54はヘッド位置制御部51にワイピングが終了したことを示す信号を送信する。ヘッド位置制御部51はヘッド10をフラッシング用ステーション30上に移動させる。移動が終了した後は、ヘッド位置制御部51はフラッシング制御部53に当該移動が終了したことを示す信号を送信する。フラッシング制御部53は振動素子12によりヘッドのノズル11に連通するインク貯留室に振動を与えてフラッシングを行なう。この間、供給圧制御部55はヘッド10に対するインクの供給圧を−2.4kPa程度で維持している。フラッシングが終了すると印刷が再開される。
【0068】
〔変形例〕
(フラッシングの省略)
本発明に係る方法ではフラッシングは必須ではない。例えば、ワイピングによってノズル内のインクが混色する虞がない場合等には、フラッシングを省略してワイピングの後に描画を再開してもよい。
【0069】
(フラッシングの場所)
フラッシングをフラッシング用ステーション30上で行なう形態について説明したが、フラッシングもパージ及びワイピングと同じ場所で行なってもよい。この場合、フラッシング用ステーションに移動するための時間のロスを低減できる。
【0070】
(ヘッドの数)
ヘッドが一個の場合について説明したが、ヘッドを複数備えていてもよい。以上の説明では、キャリッジの説明を省いたが、ヘッドはキャリッジに格納され、キャリッジがガイド機構に接続されていてもよい。つまり、キャリッジが移動することによりヘッドも移動する。そして、キャリッジの中にはヘッドが複数格納されていてもよい。
【0071】
このとき、パージ、ワイピング、フラッシングを行なうタイミングはヘッドのそれぞれに設定されていてもよい。つまり、ヘッド位置制御部によるヘッドを、パージを行なうための場所に移動させるときが、複数のヘッドのそれぞれに定められていてもよい。
【0072】
キャリッジに格納されているヘッドのいずれかが、パージを行なうための場所に移動させるタイミングとなったときに、キャリッジごとクリーニング機構の方向に移動して、対応するヘッドをクリーニング機構上に配置して、パージを行ない、引き続き、ワイピング、必要であればフラッシングを行なう。このように、清掃が必要なヘッドのみに適宜清掃を行なうことによって時間のロスを低減できる。また、パージ、ワイピング、フラッシングの場所をヘッド一個分だけ用意すればよいため、ヘッドのメンテナンス機構の構成を簡略化及び省スペース化できる。
【0073】
〔付記事項〕
以上のように、本発明に係る媒体処理装置の一実施形態である液滴吐出装置1は、インクを格納するヘッド10を備え、ヘッド10は、インクを吐出するノズル11及び当該ノズルからインクを吐出するために当該ヘッドのノズル11に連通するインク貯留室を振動させる振動素子12を備え、ヘッド10のノズル11が設けられた面(フェイス)を清掃するワイパー21と、ヘッド10の位置を制御するヘッド位置制御部51と、ヘッド10に対するインクの供給圧を上げることでノズル11からインクを吐出させることによるノズル11の清掃であるパージを制御するパージ制御部52と、ワイパー21によるフェイスのワイピングを制御するワイパー制御部54と、ヘッド10に対するインクの供給圧を制御する供給圧制御部55と、を備え、ヘッド位置制御部51は、ヘッド10がメディア100にインクを吐出して描画を行なっている途中において、予め定められたときにパージを行なうための場所であるクリーニング機構20上にヘッド10を移動させ、パージ制御部52は、クリーニング機構20上にヘッド10が移動したらヘッド10にパージを行なわせ、ワイパー制御部54は、パージが終了した後に、ワイパー21にフェイスの清掃を行なわせ、ヘッド位置制御部51は、ワイパー21によるフェイスのワイピングが終了した後に、メディア100上にヘッド10を移動させて、描画を再開させ、供給圧制御部55は、パージ制御部52によってパージを行なうときに、ヘッド10に対するインクの供給圧を上げるものである。
【0074】
また、本発明に係る方法の一実施形態は、インクを格納するヘッド10を備え、ヘッド10は、インクを吐出するノズル11及びノズル11からインクを吐出するためにヘッドのノズル11に連通するインク貯留室に振動を与える振動素子12を備え、ヘッド10のノズル11が設けられた面(フェイス)を清掃するワイパー21と、を備える液滴吐出装置1のヘッド10及びノズル11の清掃方法であって、ヘッド10がメディア100にインクを吐出して描画を行なっている途中において、予め定められたときに、ヘッド10に対するインクの供給圧を上げることでノズル11からインクを吐出させることによるノズル11の清掃であるパージを行なうための場所であるクリーニング機構20上にヘッド10を移動させる工程と、クリーニング機構20上にヘッド10が移動したらヘッド10にパージを行なわせる工程と、パージが終了した後に、ワイパー21にフェイスのワイピングを行なわせる工程と、ワイピングが終了した後に、メディア100上にヘッド10を移動させて、描画を再開させる工程を含む。
【0075】
上記の構成によれば、作図中においてパージ後にワイピングを行なうことで、ヘッド10に付着して粘度の上昇したインクをノズル11に押し込むことなく、付着したインクの粘度が上昇する前にワイピングを行なうことができる。また、作図の途中でノズル11をパージにより清掃した上で、ヘッド10に付着したインクをワイパー21で清掃できる。よって、作図中に円滑にノズル11の清掃及びヘッド10に付着したインクの除去を行なうことができる。
【0076】
液滴吐出装置1では、パージ制御部52によるパージの終了後、ワイパー制御部54によるワイピングが始まるまでに、ヘッド位置制御部51はヘッド10を移動させないことがより好ましい。
【0077】
上記の構成によれば、パージとワイピングとを同じ場所で行なうことで、パージ後に速やかにワイピングを行なうことができる。これにより、例えば、インクを乾燥させるための強力なヒータを用いて周辺環境が高温になり、インクの粘度が上昇しやすく、インクの固着が生じやすい場合であっても、粘度の上昇及び固着の前にワイパー21によるワイピングを行なうことができる。よって、ワイピングの効率を高めることができる。また、パージを行なうための場所からワイピングを行なうための場所に移動する際にインクが落下して周辺を汚染することを防ぐことができる。
【0078】
液滴吐出装置1では、供給圧制御部55は、ワイパー制御部54によってワイピングを行なわせるときに、ヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げる。
【0079】
ワイピングを行なうときにヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げておくことにより、ノズルに液体を引きこむ力を与えつつワイピングすることができる。ノズルに液体を引きこむ力を与えないでワイピングすると、ヘッド10が複数の種類の色のインクを格納したものである場合に、或るノズルから漏れ出したインクが別のノズルの中に押し込まれることによってノズル内のインクが混色する虞がある。しかし、ヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げることにより、ノズルにインクを引きこむ力を与えノズルからの漏れ出しを抑制した状態でワイピングすることができるため、混色を防ぐことができる。
【0080】
また、後述のようにフラッシングを行なう場合、フラッシングはヘッド10に対するインク供給圧を大気圧より下げておく必要がある。しかし、ヘッド10に対するインクの供給圧を大気圧より下げておくことにより、速やかにフラッシングを行なうことができ、ひいては、より短時間で印刷を再開できる。
【0081】
液滴吐出装置1では、振動素子12によってヘッドのノズル11に連通するインク貯留室に振動を与えることでノズル11からインクを吐出させることによるノズル11の清掃であるフラッシングを制御するフラッシング制御部53をさらに備え、フラッシング制御部53は、ワイパー21によるワイピング後に、振動素子12にフラッシングを行なわせ、ヘッド位置制御部51は、フラッシングが終了した後に、メディア100上にヘッド10を移動させて、描画を再開させることがより好ましい。
【0082】
また、本発明に係る方法の一実施形態では、ワイピングの後に、振動素子によってヘッドのノズル11に連通するインク貯留室に振動を与えることでノズル11からインクを吐出させることによるノズル11の清掃であるフラッシングを行なう工程をさらに含み、描画を再開させる工程では、フラッシングが終了した後に、メディア100上にヘッド10を移動させて、描画を再開させる工程であることがより好ましい。
【0083】
ヘッド10内で複数の色のインクを吐出する場合、ワイピングによって異なる色の液滴がノズルに押し込まれて混色する虞がある。フラッシングを行なうことにより、この混色を防ぐことができる。
【0084】
液滴吐出装置1では、ワイパー制御部54によるワイピングの終了後、フラッシング制御部53によるフラッシングが始まるまでに、ヘッド位置制御部51はヘッド10を移動させないことがより好ましい。
【0085】
ワイピングの後に、フラッシングを行なう場所に移動するための時間のロスを低減することができる。
【0086】
液滴吐出装置1及び本発明に係る方法の一実施形態では、ヘッド10を複数備え、ヘッド位置制御部51によるヘッド10をパージを行なうための場所に移動させるときが、複数のヘッド10のそれぞれに定められていることがより好ましい。
【0087】
ヘッド10のいずれかが、パージを行なうための場所に移動させるときとなったときに、対応するヘッド10をパージを行なう場所に配置して、パージを行ない、引き続き、ワイピング、必要であればフラッシングを行なう。このように、清掃が必要なヘッド10のみに適宜パージ等の清掃を行なうことによって時間のロスを低減できる。また、パージ、ワイピング、フラッシングの場所をヘッド10一個分だけ用意すればよいため、ヘッド10のメンテナンス機構の構成を簡略化及び省スペース化できる。
【0088】
液滴吐出装置1及び本発明に係る方法の一実施形態では、ヘッド位置制御部51は、ヘッド10がメディア100上を予め定められた回数走査した後に、ヘッド10をパージを行なうための場所に移動させることがより好ましい。
【0089】
ヘッド10が所定回数走査した後に、パージ、ワイピング、フラッシングを行なうように制御することで、より安定して印刷の品質を維持することができる。
【0090】
最後に、制御部50の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0091】
すなわち、制御部50は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、
上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである制御部50の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、制御部50に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0092】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0093】
また、制御部50を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動
体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0094】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、インクジェットプリンタ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 液滴吐出装置
10 ヘッド
11 ノズル
12 振動素子
21 ワイパー(拭き取り部)
51 ヘッド位置制御部(ヘッド位置制御手段)
52 パージ制御部(第一の清掃制御手段)
53 フラッシング制御部(第二の清掃制御手段)
54 ワイパー制御部(拭き取り部制御手段)
55 供給圧制御部(供給圧制御手段)
100 メディア(被記録媒体)
図1
図2
図3
図4