特許第5952027号(P5952027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952027
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】中空構造板の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20160630BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20160630BHJP
   B29C 51/22 20060101ALI20160630BHJP
   B29C 51/16 20060101ALI20160630BHJP
   B32B 3/28 20060101ALI20160630BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20160630BHJP
   B29L 22/00 20060101ALN20160630BHJP
【FI】
   B29C65/02
   B29C51/10
   B29C51/22
   B29C51/16
   B32B3/28 A
   B29L9:00
   B29L22:00
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-36217(P2012-36217)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-169751(P2013-169751A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】田口 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】平子 慎二
(72)【発明者】
【氏名】嶺木 義孝
(72)【発明者】
【氏名】藤稿 壮士
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−77193(JP,A)
【文献】 特開2000−326430(JP,A)
【文献】 国際公開第03/080326(WO,A1)
【文献】 特開2007−83407(JP,A)
【文献】 特開2005−169635(JP,A)
【文献】 特開2001−269995(JP,A)
【文献】 特開昭63−147628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
B29C 51/00−51/46
B29C 69/00−69/02
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空成形により、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部を千鳥状に形成して、成形シートを得る工程と、
真空成形後の成形シートを強制的に冷却する冷却工程と、
それぞれ別個に形成され、冷却された2枚の成形シートを、その中空凸部同士を突き合わせて熱融着し、一体化する工程と、を有し、
前記成形シートを得る工程では、少なくとも一つ以上の前記中空凸部に係合し得る溝部を有するガイドローラーを用い、
前記一体化する工程では、複数のピンが千鳥状に形成された1組のローラーを使用し、前記ローラーのピンを各成形シートの中空凸部に挿入し、各中空凸部の頂点部分の少なくとも一部を内側から押圧し、
前記一体化する工程の直前において、前記中空凸部と前記ピンとの嵌合を補助する押さえローラーを用い、
前記一体化する工程で用いるローラーの回転速度は、前記成形シートを得る工程で用いるローラーの回転速度と同等以上とする中空構造板の製造方法。
【請求項2】
中空凸部を熱融着する前に各成形シートを予備加熱することを特徴とする請求項1に記載の中空構造板の製造方法。
【請求項3】
更に、前記一体化する工程により得た中間体の両面に、面材を積層する工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の中空構造板の製造方法。
【請求項4】
前記一体化する工程を大気中で行うことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の中空構造板の製造方法。
【請求項5】
減圧チャンバー内に成形ローラーが回転可能に配置され、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部を千鳥状に形成する真空成形部と、
複数のピンが千鳥状に設けられた1組のローラーを備え、前記真空成形部で成形された2枚の成形シートを、その中空凸部同士を突き合わせて熱融着し、一体化する熱融着部と、を有し、
前記熱融着部では、前記ローラーのピンが各成形シートの中空凸部に挿入され、前記ピンにより各中空凸部の頂点部分の少なくとも一部が内側から押圧される中空構造板の製造装置。
【請求項6】
前記熱融着部の手前に、各成形シートを予備加熱する加熱槽が設けられていることを特徴とする請求項に記載の中空構造板の製造装置。
【請求項7】
真空成形部に、真空成形後の成形シートを強制的に冷却する冷却機構が設けられていることを特徴とする請求項又はに記載の中空構造板の製造装置。
【請求項8】
前記熱融着部は、開放系であることを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の中空構造板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製の中空構造板の製造方法及び製造装置に関する。より詳しくは、2枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部が突き合わされた状態で熱融着された構成の中空構造板の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の中空構造板は、軽量で、かつ耐薬品性、耐水性、断熱性、遮音性及び復元性に優れ、取り扱いも容易であることから、箱材や梱包材などの物流用途、壁や天井用のパネル材などの建築用途、更には、自動車用途などの幅広い分野に使用されている。特に、2枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部が突き合わされた状態で熱融着された構成の所謂ツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板は、曲げ性能及び圧縮性能に優れると共に、厚さ方向の構造が上下対称のため反りが極めて少ないことから、自動車内装材、物流資材余帯建材など、様々な分野で使用されている。
【0003】
一般に、ツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板は、2枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部が突き合わされた状態で熱融着された中間体の両面に、熱可塑性樹脂などからなる面材が積層された構成となっている(例えば、特許文献1,2参照)。また、ツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板を製造する際は、特許文献1,2に記載されているように、先ず、減圧チャンバー内に2枚の熱可塑性樹脂シートを導入し、その中で複数のピンが突設された1対のローラーにより、各樹脂シートに複数の中空凸部を形成すると共に、その中空凸部同士を熱融着して中間体を得る。次に、得られた中間体の両面に、面材を熱融着などの方法で積層して、中空構造板とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/080326号(特許第4231792号)
【特許文献2】特開2007−83407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の中空構造板の製造方法には、以下に示す問題点がある。即ち、従来の方法では、熱可塑性樹脂シートに中空凸部を形成する工程と、各熱可塑性樹脂シートに形成された中空凸部同士を突き合わせて熱融着する工程とを、同一のローラーを使用して、同一工程内で実施しているため、温度条件や成形速度に制約があり、生産性向上が難しい。また、この従来の中空構造板の製造方法では、一方の工程の条件を変更すると、他方の工程にも影響するため、条件調整が煩雑で、作業性に劣るという問題点もある。
【0006】
そこで、本発明は、生産性及び作業性に優れた中空構造板の製造方法及び製造装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前述した課題を解決するために鋭意実験検討を行った結果、以下に示す知見を得た。熱可塑性樹脂シートに中空凸部を形成した後は、冷却したローラーに密着させることにより、成形シートを冷却し、固化させることが望ましいが、従来の中空構造板の製造方法では、過度に冷却すると、中空凸部同士を融着する際に温度不足となり、接着強度が低下してしまう。
【0008】
一方、中空凸部を融着するためにローラーを温調して予熱すると、予熱温度によっては成形シートが固化せず、中間体を形成することができなくなる。そして、これらの相反する事象により発生する制約のため、従来の中空構造板の製造方法では、生産速度を上げることができず、生産性を向上させることができなかった。そこで、本発明者は、熱可塑性樹脂シートに中空凸部を形成する工程と、中空凸部同士を熱融着して2枚の成形シートを一体化する工程とを、それぞれ別工程で行うこととした。
【0009】
即ち、本発明に係る中空構造板の製造方法は、真空成形により、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部を千鳥状に形成して、成形シートを得る工程と、それぞれ別個に形成された2枚の成形シートを、その中空凸部同士を突き合わせて熱融着し、一体化する工程と、を有し、前記一体化する工程では、複数のピンが千鳥状に形成された1組のローラーを使用し、前記ローラーのピンを各成形シートの中空凸部に挿入し、各中空凸部の頂点部分の少なくとも一部を内側から押圧する。
本発明の製造方法では、成形シートを形成する工程と、中空凸部同士を熱融着する工程とを、別工程としているため、温度条件や成形速度に制約がなくなり、加工条件の調整が容易になる。
この中空構造板の製造方法では、中空凸部を熱融着する前に各成形シートを予備加熱してもよい。
また、真空成形後の成形シートを強制的に冷却することもできる。
更に、前記一体化する工程により得た中間体の両面に、面材を積層する工程を有していてもよい。
更にまた、前記一体化する工程は、大気中で行うこともできる。
【0010】
本発明に係る中空構造板の製造装置は、減圧チャンバー内に成形ローラーが回転可能に配置され、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部を千鳥状に形成する真空成形部と、複数のピンが千鳥状に設けられた1組のローラーを備え、前記真空成形部で成形された2枚の成形シートを、その中空凸部同士を突き合わせて熱融着し、一体化する熱融着部と、を有し、前記熱融着部では、前記ローラーのピンが各成形シートの中空凸部に挿入され、前記ピンにより各中空凸部の頂点部分の少なくとも一部が内側から押圧される。
本発明の製造装置では、真空成形部と熱融着部を別に設けているため、各部で温度条件や成形速度を設定することが可能で、各種条件の調整も容易になる。
この製造装置では、前記熱融着部の手前に、各成形シートを予備加熱する加熱槽が設けられていてもよい。
また、真空成形部に、真空成形後の成形シートを強制的に冷却する冷却機構を設けることもできる。
更に、前記熱融着部は、開放系であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形シートを形成する工程と、その中空凸部同士を熱融着する工程とを、別工程としているため、中空構造板を製造する際の生産性及び作業性の両方を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の中空構造板の製造方法を示すフローチャート図である。
図2】本発明の実施形態の中空構造板を製造する際に使用する製造装置の概念図である。
図3図1に示す方法で製造される中空構造板の構成を模式的に示す断面図である。
図4図3に示す成形シート2の一形態を示す斜視図である。
図5図3に示す成形シート2の一形態を示す平面図及び側面図である。
図6図2に示すガイドローラー14,24の一形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。図1は本発明の実施形態に係る中空構造板の製造方法を示すフローチャート図であり、図2はその際使用する製造装置の概念図である。また、図3図1に示す方法で製造される中空構造板の構成を模式的に示す断面図であり、図4及び図5はその成形シート2の一形態を示す図である。更に、図6図2に示すガイドローラー14,24の一形態を模式的に示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る中空構造板の製造方法においては、熱可塑性樹脂シートに錐台形状の中空凸部を千鳥状に形成するシート成形工程(ステップS1)と、ステップS1で作製した2枚の成形シートの中空凸部2a同士を熱融着する熱融着工程(ステップS2)と、をそれぞれ別工程で行う。また、必要に応じて、ステップS2で作製した中間体3の両面に、面材4を積層する面材積層工程(ステップS4)を行う。
【0015】
[中空構造板1の全体構成]
図3に示すように、本実施形態の製造方法により得られる中空構造板1は、図4及び図5に示す錐台形状の中空凸部2aが千鳥状に形成された2枚の成形シート2が、その中空凸部2a同士を突き合わされて熱融着されている。また、この中空構造板1では、2枚の成形シート2からなる中間体3の両面に、例えば面材4などが積層されている。
【0016】
ここで、中間体3を構成する成形シート2の材質は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリカーボネート(PC)などを使用することができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、コスト、成形性及び物性の面から、特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン及びブロック状ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が好ましい。
【0017】
また、成形シート2を形成する熱可塑性樹脂には、タルク、マイカ及び炭酸カルシウムなどのフィラーや、ガラス繊維、アラミド繊維及び炭素繊維などのチョップドストランドが添加されていてもよい。これにより、中間体4の剛性を向上させることができる。更に、成形シート2を形成する熱可塑性樹脂には、難燃性、導電性及び耐候性などを向上させるための改質剤が添加されていてもよい。なお、中間体4を構成する2枚の成形シート2は、通常、同じ材料で形成されるが、熱融着可能な範囲で相互に異なる材料で形成することもできる。
【0018】
[中空凸部2aの構成]
本実施形態の中空構造板1では、成形シート2における開口部から仮想される水平面と中空凸部2aとがなす角度(傾斜角)θが、45°〜80°であることが好ましい。傾斜角θが45°未満の場合、面材4との総接着面積が小さくなるため、得られた中空構造板1に荷重をかけた際に接着部が剥がれやすくなり、強度低下を招く。一方、傾斜角θが80°を超えると、真空成形した際に、成形シート2の厚さが薄くなりすぎて中空凸部2a側面がフィルム化し、十分な強度が得られないことがある。
【0019】
なお、傾斜角θは、50°〜70°であることがより好ましく、これにより、中間体3の剛性を高めると共に、中空構造板1としたときの強度を向上させることができる。また、中空凸部2aの傾斜角θは一定でなくてもよく、中空凸部2aが中心軸に対して非対称な形状であってもよい。
【0020】
一方、中空凸部aの先端部の直径は2〜4mmとすることが好ましく、これにより、中空凸部2aの数を所定の値以上にすることができるため、厚さ方向における圧縮強度を向上させることができる。また、中空凸部2aの間隔は、1〜5mmとすることが好ましい。中空凸部2aの間隔が1mm未満の場合、賦形性が低下することがあり、また5mmを超えると、単位面積あたりの中空凸部2aの数が少なくなり、厚さ方向において十分な圧縮強度が得られないことがある。
【0021】
更に、成形シート2における中空凸部2aの高さは、3mm以上であることが好ましい。中空凸部2aの高さが3mm未満の場合、中空構造板1の各種用途において、その中空構造による有用性が低くなると共に、製造上の困難性も低下する。なお、中空凸部2aの高さhが15mmを超えると成形が難しくなるため、製造工程における成形性を考慮すると、中空凸部2aの高さhは15mm以下であることが好ましい。
【0022】
[目付け]
本実施形態の中空構造板1の目付けは、特に限定されるものではないが、500〜3500g/mとすることが好ましい。中空構造板1の目付けが50g/m未満の場合、成形シート2の厚さが薄くなりすぎて凸部2a側面がフィルム化し、強度や剛性が低下することがあり、また、目付けが3500g/mを超えると、質量が増加し、用途によっては軽量性が損なわれることがあるからである。
【0023】
[ステップS1:シート成形工程]
シート成形工程では、真空成形により、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部2aを千鳥状に形成して、成形シート2を作製する。このシート成形工程は、例えば、図2に示すように、減圧チャンバー11内に、表面に円錐台形状又は角錐台形状のピン12aが複数突設されている1組の成形ローラー12が、その回転軸が相互に平行になるように配置されている真空成形装置(真空成形部10)により実施することができる。
【0024】
この真空成形装置(真空成形部10)の各成形ローラー12には、熱可塑性樹脂シート5を効果的にピン12aに沿わせ、所望の形状に短時間で斑なく成形するために、熱可塑性樹脂シート5を吸引保持するための吸引孔が設けられている。
【0025】
また、真空成形装置(真空成形部10)には、中空凸部2aが形成された成形シート2を、強制的に冷却する冷却機構が設けられていることが好ましい。このように、真空成形後の成形シートを強制的に冷却することにより、溶融状態の熱可塑性樹脂シート5を真空成形し、成形シート2の状態で固化させるために必要な時間を短縮することができ、生産速度を高めることが可能となる。なお、真空成形装置(真空成形部10)に設けられる冷却機構としては、例えば、成形ローラー12のオイル循環冷却、成形シート2への風冷装置や微細ミスト発生機の設置などがある。
【0026】
ここで、成形ローラー12の温度は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂シート5を形成する樹脂の種類などに応じて適宜設定することができるが、10〜40℃が好適である。これにより、成形シート2の固化状態をより良好なものにすることができる。
【0027】
この装置を使用して、中間体4を作製する際は、先ず、ダイ13から、溶融状態の熱可塑性樹脂シート5を押し出す。又は、前述した溶融状態の熱可塑性樹脂シート5を押し出す代わりに、既にシート化された熱可塑性樹脂シートを加熱し、溶融状態にして送り出してもよい。そして、これら熱可塑性樹脂シート5は、成形ローラー12に吸引保持され、ピン12aに対応する形状の中空錐台状の凸部2aが形成されて、成形シート2となる。
【0028】
その際、熱可塑性樹脂シート5の厚さは、特に限定されるものではないが、0.2〜2.0mmであることが好ましい。熱可塑性樹脂シート5の厚さが0.2mm未満の場合、得られる成形シート2の物性が十分でないことがある。また、熱可塑性樹脂シート5の厚さが2.0mmよりも厚いと、真空成形により凸部2aを形成することが困難になることがある。
【0029】
更に、このシート成形工程では、真空成形により熱可塑性樹脂シート5の一方の面に、錐台形状の中空凸部2aを千鳥状に形成するが、その際、例えばガイドローラー14,24に、図6に示すような溝部14a,24aを有するものを用いることで、成形シート2の横ずれを抑制することが可能となる。
【0030】
[ステップS2:熱融着工程]
熱融着工程では、前述したシート成形工程で作製した2枚の成形シート2を、その中空凸部2a同士を突き合わせて熱融着し、一体化する。この熱融着工程は、例えば、図2に示すように、真空成形部10のローラー12とロール径が同等で、表面に複数のピン21aが複数突設されている1組のローラー21が、回転軸が相互に平行になるように配置されている熱融着部20により実施することができる。
【0031】
その場合、各ローラー21のピン21aをそれぞれ成形シート2の中空凸部2aに挿入し、ピン21aにより各中空凸部2aの頂点部分の少なくとも一部を内側から押圧することにより、2枚の成形シートの中空凸部2aを熱融着して、一体化する。これにより、2枚の成形シート2からなる中間体3が得られる。
【0032】
ここで使用するローラー21のピン21aは、中空凸部2aに挿入可能な形状であれば、真空成形部10のローラー12と同一形状である必要はなく、円錐台形状や角錐台形状に限らず、棒状や柱状などでもよい。更に、熱融着部20のローラー21の回転速度は、前述したローラー21のピン21aへの嵌め込みやすさなどの観点から、真空成形部10のローラー12の回転速度と同じか、少し早くすることが望ましい。
【0033】
なお、熱融着部20には、ローラー21の他に、成形シート2を加熱するための加熱治具22や、成形シート2の中空凸部2aとローラー21のピン21aとの嵌合を補助する押さえローラー23などを設けることができる。ここで、加熱治具22は、接触方式及び非接触方式のいずれでもよく、例えば熱風発生器、遠赤外線ヒーター、ハロゲンヒーターなどを使用することができる。この熱融着部20は、減圧チャンバー内に設けられていてもよいが、開放系とすることもできる。このように熱融着工程を、大気中で実施可能とすることにより、設備を簡略化することができるため、作業性が向上する。
【0034】
また、本実施形態の中空構造板の製造方法では、中空凸部2aを熱融着する前に各成形シート2を予備加熱してもよい。成形シート2の予備加熱温度は、成形シート2の材質に応じて適宜設定することができ、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂の場合は、30〜150℃とすることができる。なお、予備加熱の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱融着部20の手前に加熱槽30を設ける方法などが挙げられる。
【0035】
[ステップS3:面材積層工程]
面材積層工程では、前述した熱融着工程で作製した中間体3の両面に、面材4を積層する。ここで使用する面材4としては、前述した成形シート2と同様に、熱可塑性樹脂シートを使用することができる。その材質は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリカーボネート(PC)などを使用することができる。また、面材4の厚さは、特に限定されるものではなく、中間体3の厚さ及び中空構造板1の厚さに応じて適宜設定することができる。
【0036】
この面材積層工程は、例えば、1対のローラーが、その回転軸が相互に平行になるように所定の間隔をあけて配置されている装置により実施することができる。この装置を使用して、面材4を積層する際は、先ず、ダイから溶融状態の面材シートを押し出したり、既にシート化された面材シートを溶融状態にして送り出したりする。これら面材シートは、それぞれラミネート用のローラーによって、加熱加圧され、予熱装置によって予熱された中間体3の表面に熱融着されて、面材4となる。その後、中間体4の表面に表面材シート5,6が熱融着された中空構造板1は、空冷、冷却ロール及び冷却装置などによって冷却される。
【0037】
なお、本実施形態の中空構造板1は、面材4の上に、更に、熱可塑性樹脂シートやその他の材料を積層することができる。その積層材料としては、熱可塑性樹脂シート以外に、例えば熱硬化性樹脂シート、発泡シート、紙、織布、不織布、金属板、金属メッシュ体、金属酸化物板などが挙げられる。また、積層方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱融着、超音波融着、接着剤による接着、ラミネートなどの公知の方法を適用することができる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態の中空構造板1の製造方法では、シート成形工程と、熱融着工程とを、別工程で行っているため、各工程で、温度条件や成形速度を自由に設定することができ、生産性が向上する。また、一方の工程の条件を変更しても、他方の工程にも影響しないため、条件の設定や変更がしやすく、作業性も向上する。
【0039】
なお、図2では、シート成形工程と、熱融着工程とを、同一ライン上で連続的に行う例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらを別ラインで行うこともできる。具体的には、ステップS1のシート成形工程で得られた成形シート2を、一旦巻き取るなどした後に、別途ステップS2の熱融着工程を実施するなどのオフラインで、非連続的に行ってもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、図2に示す装置を使用し、以下に示す条件で、図3に示す構成の中空構造板を製造し、その生産性(生産速度)を評価した。
【0041】
<実施例>
目付が500g/mの2枚の熱可塑性樹脂シート5を、相互に平行な位置関係を保った状態で、減圧チャンバー11内に導入した。その際、熱可塑性樹脂シート5は、いずれも、熱可塑性樹脂(プライムポリマー社製 ポリプロピレン E601)に、フィラー(竹原化学工業社製 タルク含有マスターバッチ 2070T)を配合した熱可塑性樹脂組成物を、ダイから溶融状態で押し出すことにより形成した。
【0042】
そして、減圧チャンバー11内に回転可能に配置された1対の成形ローラー12(ピン構成:高さ4.5mm、最小直径2mm、最大直径6mm、傾斜角度約64°)の周面に、熱可塑性樹脂シート5を吸着させて、成形ローラー12に突設されたピン12aの形状に応じて熱可塑性樹脂シート5に多数の中空凸部2aを真空成形し、引き取って、成形シート2を得た。
【0043】
次に、真空成形部10よりも下流で、かつ熱融着部20よりも手前に設置された120℃の加熱槽30を通過させることで、再度成形シート2を加熱した後、その中空凸部2aに、熱融着部20内に回転可能に配置された1対の成形ローラー21(ピン構成:高さ6mm、最小直径2mm、最大直径6mm、傾斜角度約72°)のピン21aを挿入した。
【0044】
そして、その状態で、ライスター・テクノロジーズ社製 熱風溶接機を用いて成形シート2の中空凸部2aの頂点部分を加熱しながら、1対の成形ローラー21の接線位置で、中空凸部2a同士を熱融着した。その結果、3m/分の生産ライン速度で、中間体4を製造することができた。
【0045】
<比較例>
目付けが500g/mの2枚の熱可塑性樹脂シート5を、相互に平行な位置関係を保った状態で、減圧チャンバー11内に導入した。そして、減圧チャンバー11内に回転可能に配置された1対の成形ローラー12(ピン構成:高さ4.5mm、最小直径2mm、最大直径6mm、傾斜角度約64°)の周面に、熱可塑性樹脂シート5を吸着させて、成形ローラー12に突設されたピン12aの形状に応じて熱可塑性樹脂シート5に多数の中空凸部2aを真空成形した。
【0046】
引き続き、熱可塑性樹脂シート5の間に接触状態で配置された熱融着用の加熱手段により、中空凸部2aが形成された成形シート2の頂点部分を加熱し、成形ローラー12の接線位置で中空凸部2a同士を突き合わせて熱融着した。その結果、生産ライン速度が2m/分に達した時点で、成形シート2が固化しなくなり、中間体を製造することができなくなった。
【0047】
以上の結果から、本発明によれば、生産性及び作業性に優れた中空構造板の製造方法及び製造装置を実現できることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 中空構造板
2 成形シート
2a 凸部
3 中間体
4 表面材
5 熱可塑性樹脂シート
10 真空成形部
11 減圧チャンバー
12、21、23 ローラー
12a、21a ピン
13 ダイ
14、24 ガイドローラー
14a,24a 溝部
20 熱融着部
22 加熱治具
30 加熱槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6