(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属酸化物Xと前記金属酸化物Yとはそれぞれ、チタニア、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の光拡散カバー。
前記低融点ガラスは、硼硅酸ビスマス塩系ガラス、硼酸ビスマス亜鉛系ガラス、アルミノリン酸塩系ガラス、リン酸亜鉛系ガラス、ホウ珪酸塩系ガラスのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の光拡散カバー。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の拡散光源50を示す図である。拡散光源50は、例えば、発光ダイオードランプである。
拡散光源50は、筒状のガラス管56を有している。ガラス管56は、透明な又は透光性のある直管形ガラス管である。ガラス管56のガラスは、摂氏900度以下の温度では溶けない高融点ガラスが望ましい。
【0011】
発光部60は、発光ダイオードLED51(LED51)と基板52とヒートシンク54を有している。
発光部60は、ガラス管56に収納されて発光方向に光を発光する。発光部60は、ガラス管56の長手方向に渡って延在している。
【0012】
LED51は、光源の一例であり、LED(発光ダイオード)単体又はLEDモジュールからなる。LED51は、LEDチップともいう。
基板52は、複数のLED51を均等に配置配列している。
【0013】
ヒートシンク54は、アルミニウム製などの金属製であり、基板52を取り付ける台座となりかつ放熱部材となる。
【0014】
ガラス管56の両端に一対の口金55がある。
各口金55は、一対の給電端子58を備えている。給電端子58の本数や形は、図に限らず他の本数でも他の形状でもよい。
【0015】
1対の口金55は、ガラス管56の両端を覆うとともに、発光部60のヒートシンク54の両端とガラス管56の両端に固定されている。
【0016】
拡散光源50は、長期使用の観点で、使用中に安全を損なうランプ内へのホコリの侵入ができない構造を備えている。すなわち、ガラス管56と口金55とは接着されており、発光部60は、密封されている。
【0017】
拡散光源50は、ガラス製外郭を有し外形が従来通りの市販されている直管形蛍光ランプと同じ形状である。また、拡散光源50は、機能を損なわずには恒久的に分解できない直管形LEDランプシステムである。
【0018】
図2は、
図1の拡散光源50のAA端面図である。
ガラス管56の内周面全体に、保護膜70が形成されている。保護膜70は、保護層と呼ばれることもある。
さらに、保護膜70の内周面全体に、光拡散膜80が形成されている。光拡散膜80は、光拡散層と呼ばれることもある。
ヒートシンク54の下面(裏面)の一部分に接着剤90が塗布されて、光拡散膜80に接着されている。
長手方向と直交する平面によるヒートシンク54の断面形状は、D字状形状あるいは半月形状をしている。ヒートシンク54は、平板部62と弧状部63とからなる一体成型された一つの部品である。ヒートシンク54の断面中央には、中空部64がある。中空部64の円弧部分の下方に弧状部63があり、中空部64の上方の弦部分に平板部62がある。
【0019】
図3は、ガラス管56の一部を切り欠いた斜視図である。
光拡散カバー40は、ガラス管56と保護膜70と光拡散膜80とからなる。
ガラス管56には、保護膜70と光拡散膜80とが、ガラス管56の長手方向全部に渡り、かつ、ガラス管56の内周全周に渡り、積膜されている。
【0020】
図4は、
図3のA部の拡大図であり、ガラス管56と保護膜70と光拡散膜80との模式図である。
【0021】
ガラス管56の内面には、ガラス内面傷57が存在する。このガラス内面傷57は、ガラス管56の外観に筋や線をとなって視覚的に現れ、膜肌の美観を損なう原因となる。
【0022】
保護膜70は、金属酸化物Xから構成されている。
金属酸化物Xは、例えば、平均粒子径が0.05〜0.3μm(50〜300nm)の微粒子シリカである。
以下、「粒子径」のことを単に「粒径」ともいう。
保護膜70の厚さは、例えば、0.5〜5.0μmである。
以下、「膜の厚さ」を「膜厚」ともいう。
【0023】
保護膜70は、例えば、水または水とポリエチレンオキサイドとの混合液などの液に微粒シリカ等の金属酸化物Xを分散させて懸濁液を作製し、懸濁液をガラス管56内に流し込んでガラス管56内面に懸濁液を塗布し、温風エアーで懸濁液を乾燥させて形成される。
【0024】
光拡散膜80は、金属酸化物Yと低融点ガラス83とを有している。低融点ガラス83は、ガラス管56のガラスの融点よりも低い温度の融点を有し、例えば、摂氏500度〜800度で溶解するガラスである。低融点ガラス83は、透明な又は透光性のあるガラスである。
光拡散膜80における金属酸化物Yの含有率が、例えば、光拡散膜80における金属酸化物Yの含有率が、体積比で30%以上50%以下である。あるいは、光拡散膜80における低融点ガラス83の含有率が、体積比で70%以上50%以下である。
光拡散膜80が金属酸化物Yと低融点ガラス83とのみからなる場合、光拡散膜80は、体積比で、金属酸化物Yの含有率が30%以上50%以下であり、かつ、低融点ガラス83の含有率が70%以上50%以下である。
光拡散膜80における金属酸化物Yの含有率が、体積比で30%以上60%以下であり、光拡散膜80における低融点ガラス83の含有率が、体積比で70%以上40%以下であってもよい。
金属酸化物Yは、例えば、平均粒子径が0.05〜20μm(50〜20000nm)のシリカである。
光拡散膜80の厚さは、例えば、5.0〜20.0μmである。
【0025】
光拡散膜80は、樹脂溶液に低融点ガラス83の粒子とシリカ等の金属酸化物Yの粒子を分散させて膜液を作製し、膜液をガラス管56内の保護膜70の表面に流し込んで膜液を塗布し、摂氏500度〜800度で熱して、樹脂を飛ばし、低融点ガラス83を溶解させて作成する。シリカ等の金属酸化物Yの粒子は、溶解した低融点ガラス83の内部に残り、放熱により低融点ガラス83が固化することにより光拡散膜80が形成される。
【0026】
光拡散膜80の中に拡散材としての金属酸化物Yの含有率が多くなると、膜が脆くなり、はがれやすくなり、また、拡散が強くなりすぎて光が弱くなる。光拡散膜80の中に低融点ガラス83が多くなると、拡散効果が少なくなる。最適なところが存在するはずである。
【0027】
保護膜70は、以下の機能を有する。
1.ガラス内面傷57への金属酸化物Xの充填
保護膜70は、ガラス管56の内周にあるガラス内面傷57に入り込み、ガラス内面傷57を外部なら見えないようにする。このためガラス管56の美的外観が向上する。
ガラス内面傷57があると光屈折率が変わる問題、もしくは、ガラス表面の細かい傷により、液の流れが不規則となることにより塗りムラとなる問題があった。金属酸化物Xがガラス内面傷57に充填されることにより、外観からガラス内面傷57による膜肌の荒れをなくすことができ、美観が向上する。
2.ガラス管56の溶融防止
低融点ガラス83にホウ素が含まれている。低融点ガラス83が摂氏500度〜800度で溶融する場合に、このホウ素がガラス管56を摂氏500度〜800度の温度でも溶融しやすくする。ガラス管56の内面に保護膜70が存在することで、低融点ガラス83のホウ素のガラス管56への影響を減少させることができ、低融点ガラス83の溶融時にガラス管56の溶融を防止することができる。
3.光の拡散
保護膜70の金属酸化物Xにより、光を拡散する。
【0028】
光拡散膜80は、以下の機能を有する。
1.光拡散膜80の低融点ガラス83は、光拡散膜80の強度を保つために用いられる。金属酸化物Yのみの光拡散膜は、剥離しやすい。
2.光拡散膜80の低融点ガラス83は、ガラス管内部に金属酸化物Yの粒子を膜として形成するために用いられる。
3.光拡散膜80の金属酸化物Yは、光を拡散分散させるための光拡散剤として用いられる。
【0029】
図5に示すように、光拡散膜80に入射した光は、低融点ガラス83内を通過し、金属酸化物Yの表面で多方向に反射する。こうして光は光拡散膜80内で拡散される。
【0030】
光拡散膜80から保護膜70に入射した光は、保護膜70の厚さが薄いため、保護膜70の金属酸化物Xによってある程度拡散され、ガラス管56に至り、ガラス管56から出射される。
【0031】
本実施の形態の光拡散カバー40は、光拡散膜80に入射する光束を100%とすると、ガラス管56から出射される光束は、好適な場合に、98%以上となる。
保護膜70がない従来の一般的な樹脂による光拡散膜の場合、光拡散膜80に入射する光束を100%とすると、ガラス管56から出射される光束は85%であるから、本実施の形態の光拡散カバー40は、光束比を13%以上向上させている。
【0032】
以下、金属酸化物Xがシリカ、金属酸化物Yがシリカである場合について、
図6以降に示す具体的データを用いて説明する。
図6以降において、表中の太枠内が望ましい値である。
【0033】
各図の列の意味は以下のとおりである。
まず、光拡散カバー40の仕様となる項目は以下のとおりである。
「光拡散膜80体積比」:光拡散膜80の金属酸化物Yと低融点ガラス83と樹脂との体積比。
「A」:金属酸化物Yをシリカとした場合。
「B」:低融点ガラス83をホウ珪酸塩系低融点ガラスとした場合。
「C」:低融点ガラス83の代わりに、樹脂を用いた場合。
「X保護膜70シリカ粒径」:保護膜70の金属酸化物Xがシリカの場合のシリカ平均粒径
「保護膜70シリカ膜厚」:保護膜70の厚さ。
「Y光拡散膜80シリカ粒径」:光拡散膜80の金属酸化物Yがシリカの場合のシリカ平均粒径
「光拡散膜80シリカ膜厚」:光拡散膜80の厚さ
【0034】
上記仕様に対する結果の項目は以下のとおりである。
「光束比」:光の透過率。96%以上、望ましくは、98%以上を目安にする。
「拡散性」:光の拡散の度合い。
「膜強度」:JIS規定のひっかき試験による光拡散膜80の接着強度。
「ガラス強度」:ガラスの衝撃に対する耐性。
【0035】
評価結果の記号の意味は以下のとおりである。
二重丸:優良。
一重丸:良好。
三角:普通。
バツ:不良。
なお、以下の記載で、「A〜B」は、A以上B以下を意味する。
以下、「良好」と「優良」の状態を、良好状態と呼ぶ。
【0036】
図6は、比較例1〜3のデータ図である。
比較例1は、光拡散膜80の体積比で金属酸化物Yの含有率が70%であり、樹脂の含有率が30%で、保護膜70がない場合であるが、光束比に難点がある。
比較例2は、光拡散膜80が金属酸化物Y(シリカ)のみであり、保護膜70がない場合であるが、拡散性と膜強度に難点がある。
比較例3は、光拡散膜80が低融点ガラス83のみであり、保護膜70がない場合であるが、拡散性とガラス強度に難点がある。
【0037】
図7は、比較例4〜7のデータ図である。
図8は、比較例4〜7のシリカ体積比に対する膜厚と光束との関係グラフである。
比較例4〜7では、光拡散膜80の金属酸化物Y(シリカ)の体積比を変化させ、かつ、光拡散膜80の厚さを変化させた。
金属酸化物Y(シリカ)が70%の場合は、膜強度が低下した。また、
図8に示すように、金属酸化物Y(シリカ)が70%の場合は、光束比が低下している。
その結果、金属酸化物Y(シリカ)は70%未満がよいことになる。望ましくは、60%以下がよく、できれば50%±10%程度、あるいは、50%がよい。
【0038】
図9は、実施例1〜5のデータ図である。
実施例1〜5では、比較例5に対して保護膜70を形成し、保護膜70の厚さを変化させ、かつ、光拡散膜80の厚さを変化させた。
実施例1〜5に示すように、保護膜70の厚さが0.5〜5.0μmの場合、かつ、光拡散膜80の厚さが5〜20μmの場合、比較例5と比べて、ガラス強度が改善された。保護膜70により、ガラス強度が高くなることが分かる。
しかし、保護膜70の厚さが5.0μmの場合、膜強度が低下した。したがって、実施例1〜5の条件では、保護膜70の厚さが5.0μm未満が望ましく、4.0μm以下がよく、望ましくは3.0μm以下がよい。
また、光拡散膜80の厚さが厚くなるほど、光束比が低下するが、拡散性が改善された。
【0039】
図10は、実施例6〜9のデータ図である。
実施例6〜9では、比較例6に対して保護膜70を形成し、保護膜70の厚さを変化させ、かつ、光拡散膜80の厚さを変化させた。
実施例6〜9に示すように、保護膜70の厚さが0.5〜5.0μmの場合、かつ、光拡散膜80の厚さが5〜20μmの場合、比較例6と比べて、ガラス強度が同等以上に改善された。保護膜70の厚さが10.0μmの場合、膜強度が低下した。
また、光拡散膜80の厚さが厚くなるほど、光束比が低下するが、拡散性が改善された。
【0040】
図11は、実施例10、実施例11と、実施例12と、好適値とのデータ図である。
【0041】
実施例10では、実施例8の金属酸化物Yの含有率が50%であり低融点ガラス83の含有率が50%の場合に、金属酸化物Yの粒径を変化させた。
実施例10に示すように、金属酸化物Yの粒径が0.05〜20μmの場合、光束比がやや落ちるが良好状態を満足する。金属酸化物Yの粒径が0.05〜1μmの場合、光束比が97.5%以上になりかつ拡散性が優良になるので、望ましい。
金属酸化物Yの粒径が、30μmになると光束比、拡散性、膜強度が低下する。
【0042】
実施例11では、実施例10の金属酸化物Yの粒径が15μmの場合、金属酸化物Xの粒径を変化させた。
実施例11に示すように、金属酸化物Xの粒径が0.05〜0.3μmの場合、光束比がやや落ちるが光束比96%以上でありかつ良好状態を満足する。金属酸化物Xの粒径が0.05〜1μmの場合、光束比が97.0%になるので、望ましい。
金属酸化物Xの粒径が、0.5μmになると膜強度が低下する。
【0043】
実施例12は、実施例1〜11の結果及びその他の試験から求めた「最適値」の組み合わせである。「最適値」として、以下の値の組み合わせがよい。あるいは、以下の値の±10%(望ましくは±5%、さらに望ましくは±2%)の範囲がよい。
「光拡散膜80体積比」:金属酸化物Yの含有率が50%±10%、低融点ガラス83の含有率が50%±10%
「X保護膜70シリカ粒径」:0.1μm±10%
「保護膜70シリカ膜厚」:1.0μm±10%
「Y光拡散膜80シリカ粒径」:1.0μm±10%
「光拡散膜80シリカ膜厚」:10.0μm±10%
金属酸化物Yの含有率が50%+10%の場合、低融点ガラス83の含有率が50%−10%になる。金属酸化物Yの含有率が50%−10%の場合、低融点ガラス83の含有率が50%+10%になる。すなわち、光拡散膜80は、金属酸化物Yと低融点ガラス83のみからなり、金属酸化物Yの含有率+低融点ガラス83の含有率=100%となる。
このとき、光束比が98%になり、拡散性とガラス強度が良好になり、膜強度が優良になる。
【0044】
また、実施例1〜11の結果及びその他の試験からは、
図11の最下行の「好適値」のとおり、以下の値の組み合わせがよい。
「光拡散膜80体積比」:金属酸化物Yの含有率が30%〜50%、低融点ガラス83の含有率が70%〜50%
「X保護膜70シリカ粒径」:0.05〜0.3μm
「保護膜70シリカ膜厚」:0.5〜5.0μm
「Y光拡散膜80シリカ粒径」:0.05〜20μm
「光拡散膜80シリカ膜厚」:5.0〜20.0μm
【0045】
以下、光束比が97%以上になり、拡散性と膜強度とガラス強度と良好状態になる仕様を実施例1〜11に沿って説明する。
【0046】
実施例1〜9の結果からは、以下の値の組み合わせがよい。
「光拡散膜80体積比」:金属酸化物Yの含有率が30%〜50%、低融点ガラス83の含有率が70%〜50%
「X保護膜70シリカ粒径」:0.05μm
「保護膜70シリカ膜厚」:0.5〜5.0μm
「Y光拡散膜80シリカ粒径」:0.1μm
「光拡散膜80シリカ膜厚」:5.0〜20.0μm
上記仕様の中で、光束比を重視するならば、「光拡散膜80シリカ膜厚」を5.0μmにするのがよい。
上記仕様の中で、拡散性を重視するならば、「光拡散膜80シリカ膜厚」を20.0μmにするのがよい。
上記仕様の中で、光束比と拡散性の両方を重視するならば、「光拡散膜80シリカ膜厚」を10.0μmにするのがよい。
【0047】
実施例10の結果からは、以下の値の組み合わせがよい。
「光拡散膜80体積比」:金属酸化物Yの含有率が50%、低融点ガラス83の含有率が50%
「X保護膜70シリカ粒径」:0.05μm
「保護膜70シリカ膜厚」:5.0μm
「Y光拡散膜80シリカ粒径」:0.05〜20.0μm
「光拡散膜80シリカ膜厚」:20.0μm
上記仕様の中で、光束比と拡散性を重視するならば、「Y光拡散膜80シリカ粒径」を0.05〜1.0μmにするのがよい。
【0048】
実施例11の結果からは、以下の値の組み合わせがよい。
「光拡散膜80体積比」:金属酸化物Yの含有率が50%、低融点ガラス83の含有率が50%
「X保護膜70シリカ粒径」:0.05〜3.0μm
「保護膜70シリカ膜厚」:5.0μm
「Y光拡散膜80シリカ粒径」:15.0μm
「光拡散膜80シリカ膜厚」:20.0μm
上記仕様の中で、光束比を重視するならば、「X保護膜70シリカ粒径」を0.05〜0.1μmにするのがよい。
【0049】
以上のように、この実施の形態の光拡散カバー40は、直管形LEDランプの光拡散カバーに用いるのが好適である。
この実施の形態の光拡散カバー40は、素材をガラス管56とし、ガラス管56の内側表面に金属酸化物Xからなる0.5〜5.0μmの厚さの保護膜70を形成した後に、5.0μm〜20.0μmの厚さの光拡散膜80を内側に形成する。
光拡散膜80に低融点ガラス83を使用するため、樹脂を使用する場合に比べて光拡散膜80による光束透過を向上させることができる。
【0050】
この実施の形態の光拡散カバー40の光拡散膜80は、低融点ガラス83と平均粒径が0.05μm〜20.0μmである金属酸化物Yの粒子を用いており、光拡散膜80中の金属酸化物Yの含有率が30%から50%である。この光拡散膜80をガラス管56内の保護膜70の内側に5.0〜20.0μmの厚さで形成する。
【0051】
また、ガラス管56と光拡散膜80の間に、平均粒径が0.05μm〜0.3μmである金属酸化物Xの粒子からなる保護膜70を形成する。
【0052】
この実施の形態の光拡散カバー40の光拡散膜80によれば、厚さを薄くでき、光の拡散性はそのままでLEDのデバイスが見えにくくなる。加えて光拡散膜80が薄いので光の吸収が少なく、直進または拡散されてランプの外にでる光の割合は膜が厚い場合より多い。
【0053】
以上のように、この実施の形態のLEDランプの光拡散カバー40は、ガラス管56の内面に金属酸化物Xの保護膜70が形成され、前記保護膜70の上面に光拡散膜80が形成された光拡散カバーである。
光拡散膜80は、金属酸化物Yとガラス管56の溶解温度よりも低い温度で溶解する低融点ガラス83とからなる。
【0054】
この実施の形態のLEDランプの光拡散カバー40は、低融点ガラス83を用いることにより、樹脂で発生する経年劣化による着色を回避することができるとともに、光束の低下を抑制することができる。
また、低融点ガラス83は、樹脂と比較し、光透過率もよいことから、長時間経過後においても着色が少なく、高い拡散性機能を備えつつ、明るい光拡散カバーを装着したLEDランプを実現することができる。
【0055】
前記保護膜70は、平均粒子径が50〜300nmである金属酸化物Xからなり、前記保護膜70の厚さは0.5〜5.0μmである。
【0056】
このような、保護膜70を形成することにより、金属酸化物Yと低融点ガラス83とで形成した光拡散膜80のみの場合(例えば比較例4〜6)のようにガラス強度の低下により割れることがない。
また、金属酸化物Xの粒径、保護膜70の厚さをコントロールすることにより、保護膜70による、光拡散膜80とガラス管56への被着強度や膜強度が弱くならないLEDランプを実現できる。
【0057】
前記光拡散膜80は、平均粒子径が50〜2000nmである金属酸化物Yと、低融点ガラス83からなり、前記光拡散膜80に対し金属酸化物Yが30〜60%の体積比で存在し、前記光拡散膜80の厚さは5.0〜20.0μmである。
前記光拡散膜80に対し、金属酸化物Yは、70%未満がよく、例えば、60%以下がよいし、50%±10%がなおよい。
【0058】
このように金属酸化物Yと低融点ガラス83を組合せて形成した光拡散膜80とすることで、光拡散効果を向上し、金属酸化物Yの粒径、金属酸化物Yの含有量、光拡散膜80の膜厚を最適化することで、膜強度を保ちながら、薄くても光拡散効果の大きいLEDランプを実現できる。
【0059】
金属酸化物Xと、金属酸化物Yは、それぞれ、チタニア、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛のうち、少なくとも1つを含む。金属酸化物Xと金属酸化物Yとは同一の金属酸化物であることが望ましい。また、金属酸化物Xと金属酸化物Yとは、シリカであることが望ましい。その際、接着剤としてシリコーンを用いるのが望ましい。
【0060】
前記低融点ガラス83は、硼硅酸ビスマス塩系ガラス、硼酸ビスマス亜鉛系ガラス、アルミノリン酸塩系ガラス、リン酸亜鉛系ガラス、ホウ珪酸塩系ガラスのうち、少なくとも1つを含む。前記低融点ガラス83は、ホウ珪酸塩系低融点ガラスが望ましい。
【0061】
なお、上記各値は、各値の±10%(望ましくは±5%、さらに望ましくは±2%)の範囲で変化しても、各値と同じ効果あるいは類似の効果を奏する。
また、保護膜70と光拡散膜80には、上記以外の物質が例えば10%程度以内の範囲で混入していてもかまわない。
【0062】
実施の形態2.
以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
図3に示したように、この実施の形態2のガラス管56の内面に形成されている光拡散膜80は全周にある。
一方、
図12は、比較例であるが、ガラス管56の内面に形成されている光拡散膜80は、全周にない。アパーチャー91には、光拡散膜80が存在していない。比較例では、接着剤90は、光拡散膜80のアパーチャー91に塗布され、ガラス管56の内面とヒートシンク54の外周面とを接着する。
【0063】
この実施の形態2の光拡散カバー40は、接着剤90をシリコーン、金属酸化物Xをシリカとし、金属酸化物Yを結晶性シリカとする。
このため、光拡散膜80の上から接着剤90を塗っても接着力が落ちることがなくなり、アパーチャー91を作成することなく、光拡散膜80を塗布することができる。
これにより、接着剤90の塗布部分が目立たなくなり、接着剤塗布の幅に気を使わなくてよい分、生産性が向上する。
また、金属酸化物Xをシリカとし、金属酸化物Yを結晶性シリカとすることで、LED本体(ヒートシンク54)からガラス管56への熱伝導率を向上させることができる。
【0064】
以上のように、この実施の形態の光拡散カバー40は、ガラス管56と、ガラス管56の内側全周に設けられ金属酸化物Yと低融点ガラス83とを有し光を拡散する光拡散膜80とを備えている。
そして、この実施の形態の拡散光源50は、ガラス管56とLED本体(ヒートシンク54)との接合に、シリコーン系の接着剤90を用いる。
【0065】
なお、光拡散膜80の仕様を、実施の形態1の光拡散膜80の仕様と同じにしてもよい。
また、この実施の形態の接着剤90による光拡散膜80とヒートシンク54との接着という点のみからみれば、保護膜70はなくてもよく、実施の形態2の光拡散カバー40は、接着剤90をシリコーン、金属酸化物Yを結晶性シリカとすればよい。もちろん、保護膜70があれば、保護膜70の機能が発揮されるから、保護膜70があればなおよい。
【0066】
実施の形態3.
以上の各実施の形態及び各実施例において、光拡散カバー40の素材に筒状のガラス管を用いたが、本発明の適用形状は管状とは限らない。例えば、平面又は曲面のガラス板の少なくとも片側一方に光拡散膜を形成すれば、平面上の又は曲面状の拡散光源に応用することも可能である。
【0067】
例えば、光拡散カバー40のガラス(ガラス板)の形状は、筒状に限らず、平板状、箱状、球状、ボール状、釣鐘状、ドーム状、円錐状、角錐状、柱状、蒲鉾状、山状、ドーナツ状、リング状、環状、帯状、放射状、あるいは、これらの組み合わせ等の形状でもかまわない。
ここで、単に、ガラス(ガラス板)という場合は、低融点ガラス83とは異なるガラスであり、前述した各実施の形態及び各実施例において説明したガラス管56と同じように、低融点ガラス83の融点以上の融点を有しているガラス(ガラス板)のことをいう。
なお、拡散光源50も、筒状に限らず、平板状、箱状、球状、ボール状、釣鐘状、ドーム状、円錐状、角錐状、柱状、蒲鉾状、山状、ドーナツ状、リング状、環状、帯状、放射状、あるいは、これらの組み合わせ等の形状でもかまわない。
また、さらに、光源はLEDでなくてもよく、光を発するものであればよい。
また、市販されている照明ランプ等の既存の光源(既製品ランプ)を、前述した各実施の形態で述べた光拡散カバー40で覆うことにより、拡散光源50を製造してもよい。
【0068】
以上のように、この実施の形態の光拡散カバー40は、
ガラスと、
前記ガラスの片方の面に形成された金属酸化物Xの保護膜70と、
前記保護膜70のガラスがある面と反対の面に形成され、金属酸化物Yとガラスの溶解温度よりも低い温度で溶解する低融点ガラス83とからなる光拡散膜80と
を備えている点が特徴である。
【0069】
なお、上記各実施の形態で示した各値は、各値の±10%(望ましくは±5%、さらに望ましくは±2%)の範囲で変化しても、各値と同じ効果あるいは類似の効果を奏する。
また、保護膜70と光拡散膜80には、上記以外の物質が例えば10%程度又は5%程度以内の範囲で混入していてもかまわない。
【0070】
以上のように、実施の形態1〜3の光拡散カバーは、
ガラスと、
前記ガラスの片方の面に形成された金属酸化物Xの保護膜と、
前記保護膜のガラスがある面と反対の面に形成され、ガラスの溶解温度よりも低い温度で溶解する低融点ガラスと金属酸化物Yとからなる光拡散膜と
を備えたことを特徴とする。
【0071】
前記保護膜は、平均粒子径が0.05〜0.3μmである金属酸化物Xからなり、
前記保護膜の厚さは、0.5〜5.0μmであることを特徴とする。
【0072】
前記光拡散膜は、
平均粒子径が0.05〜20.0μmである金属酸化物Yと、
前記ガラスの融点よりも低い融点の低融点ガラスと
からなり、
前記光拡散膜に対し金属酸化物Yが30〜60%の体積比で存在し、
前記光拡散膜の厚さは、5.0〜20.0μmであることを特徴とする。
【0073】
前記光拡散膜の体積比において、
金属酸化物Yの含有率が50%±10%、
低融点ガラスの含有率が50%±10%であることを特徴とする。
【0074】
前記金属酸化物Xの粒子径が0.1μm±10%、
前記保護膜の膜厚が1.0μm±10%
であることを特徴とする。
【0075】
前記金属酸化物Yの粒子径が1.0μm±10%、
前記光拡散膜の膜厚が10.0μm±10%
であることを特徴とする。
【0076】
前記金属酸化物Xと前記金属酸化物Yとはそれぞれ、チタニア、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0077】
前記低融点ガラスは、硼硅酸ビスマス塩系ガラス、硼酸ビスマス亜鉛系ガラス、アルミノリン酸塩系ガラス、リン酸亜鉛系ガラス、ホウ珪酸塩系ガラスのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0078】
実施の形態1〜3の拡散光源は、
前記光拡散カバーと、
発光ダイオード(LED)を搭載した発光部とを備え、
光拡散膜と発光部とを接着剤で接着したことを特徴とする。
【0079】
前記金属酸化物Yは、結晶性シリカであり、接着剤は、シリコーン系接着剤であることを特徴とする。