(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
基板に対して水平に液晶分子が配向し、上下基板間で液晶分子の配向方位が90°ねじれたTN液晶セルを互いに平行ニコルな2枚の偏光板間に配置し、一方の基板面における液晶分子配向方位と平行又は直交に偏光板吸収軸を配置した時、透過光強度Tは、液晶材料の屈折率異方性をΔn、上下基板間距離をd、入射波長をλとした時、下式(1)により示される。
・・・・(1)
【0003】
上記式(1)においてλ=450,550,650nmそれぞれについて、Δndを
パラメータにした時の透過光強度の変化をプロットしたのを
図14に示す。Δnd増加に従って透過光強度が0になる極小値が得られ、最も小さいΔndで得られるパラメータを第1ミニマム、以下第2、第3ミニマムと続く。透過光の波長により極小値を取るΔndの値が異なることもわかる。
【0004】
従来のノーマリーホワイト型TN液晶表示素子の場合、Δndを第1ミニマムに設定することが多いが、ノーマリーブラック型TN液晶表示素子の場合は
図14で示した通り良好な無彩色暗状態を得ることは困難であると考えられる。
【0005】
90°ねじれTN液晶セルにおいて液晶層のリタデーションΔndが入射波長λより著しく大きい、すなわちΔnd>>λの場合、液晶セルの一方の基板面から入射した直線偏光はすべての波長において液晶層内で偏光状態を全く変化させず90°旋光し、もう一方の基板面から直線偏光で出射する。
【0006】
この条件はモーガン条件と呼ばれるが、実際の液晶表示素子に適用する場合、明暗表示をスイッチングする応答時間が遅くなり実用に堪えないことから、少なくともRGBの主3波長において透過率を低くすることにより、略無彩色暗状態を実現するための技術が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1には、ねじれ角が90°のTN液晶表示素子においてΔndを略2.64μmにすることが示されており、特許文献2にはΔndを2.3〜2.5μmにすることが示されている。なお、これらの液晶表示素子において液晶セルの外側に配置される偏光板はいずれも平行ニコル配置である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施例によるノーマリーブラック型TN液晶表示素子100の一画素内の概略的な断面図である。実施例によるノーマリーブラック型TN液晶表示素子100は、相互に平行に対向配置された表側基板1、裏側基板2、及び両基板1、2間に挟持されたツイストネマチック液晶層3を含んで構成される。
【0015】
表側基板1は、表側透明基板12、表側透明基板12上に形成された透明電極13、及び透明電極13上に形成された表側配向膜14を含む。裏側基板2は、裏側透明基板22、裏側透明基板22上に形成された透明電極23、透明電極23上に形成された裏側配向膜24を含む。
【0016】
表側、裏側透明基板12、22は、たとえばガラスで形成される。透明電極13、23は、たとえばITO等の透明導電材料で形成される。
【0017】
液晶層3は、表側基板1の表側配向膜14と、裏側基板2の裏側配向膜24との間に配置される。液晶層3内の液晶分子は分子配列が略水平で一方の基板から他方の基板に向かって捩れた配向状態を有する。液晶層3に使用する液晶材料は、例えば、Δnが0.25のネマチック液晶である。液晶層3を形成する液晶材料にはカイラル剤が添加されている。カイラルピッチp、液晶層の厚さ(セル厚)dとしたとき、d/pが0.1となるように調整する。なお、後述するシミュレータによる解析では、液晶層3の厚さdは、それぞれ10μm、8μm、12μmに設定した。
【0018】
表側及び裏側配向膜14、24には、ラビングにより配向処理が施されている。表側配向膜14と裏側配向膜24の配向処理方向(ラビング方位)間角度ψを、後述するように、90°、75°、110°等に設定してシミュレータによる解析を行った。なお、配向処理により発現したプレティルト角は1.5°とした。
【0019】
駆動電源20が、表裏透明電極13、23に電気的に接続されている。駆動電源20によって、電極13及び23に電圧を印加することが可能である。
【0020】
表側基板1、裏側基板2それぞれの液晶層3と反対側の面には、表側偏光板11、裏側偏光板21が配置される。両偏光板11、21は、例えば、ポラテクノ製SHC13Uを用いることが可能である。
【0021】
なお、光源は裏側偏光板21の下に配置され、光源からの光は裏側偏光板21から入射して、液晶層3等を介して、表側偏光板11から出射する。
【0022】
図2は、本発明の実施例によるノーマリーブラック型TN液晶表示素子100の座標系を表す概念図である。本明細書及び全ての図面において
図2に示す座標系を用いる。
【0023】
本発明の実施例によるノーマリーブラック型TN液晶表示素子100の座標系は、
図2に示すように観察者から(表側基板1側から)見て右方位が0°の反時計回り方位座標系であり、各種軸方位は液晶表示素子の表面から観察した時のものである。
【0024】
裏側基板2のラビング方位(点線の矢印)を裏側基板配向方位R1、表側基板1のラビング方位(破線の矢印)を表側基板配向方位R2、裏側偏光板21の吸収軸(二点鎖線の矢印)を裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板11の吸収軸(一点鎖線の矢印)を表側偏光板吸収軸P2とし、裏側偏光板21から表側偏光板11へ光が伝播した時の2枚の基板1、2間の液晶層3のねじれ角である裏側基板配向方位R1と表側基板配向方位R2間の角度をψ、裏側基板配向方位R1と裏側偏光板吸収軸P1間角度をφ1、表側基板配向方位R2と表側偏光板吸収軸P2間角度をφ2と定義する。また、本実施例では、液晶層中央分子配向方向は、270°(6時方位)に固定した。
【0025】
なお、本明細書及び図面における「ねじれ方向」は、裏側偏光板21から表側偏光板11へ光が伝播した時、すなわち紙面裏面から光が入射し表面から出射する場合における方向であり、紙面上、時計回りが「左ねじれ」、反時計回りが「右ねじれ」である。例えば、
図4に示すように、「90°左回り」の場合は、図面上(観察者から見た場合)は時計回り方向(右方向)に90°回転するように示される。したがって、液晶層3のツイスト方向が「左回り」の場合は、反時計回りの方向が「ねじれ方向」であり、時計回りの方向が「逆ねじれ方向」である。また、液晶層3のツイスト方向が「右回り」の場合は、時計回りの方向が「ねじれ方向」であり、反時計回りの方向が「逆ねじれ方向」である。
【0026】
本発明の実施例は、裏側基板配向(ラビング)方位R1、表側基板配向(ラビング)方位R2、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2、液晶層中央分子配向方向の関係を調整することにより、正面観察時よりも、左右方位において斜めから観察した時に暗状態(電圧無印加時)における透過率が低くなるノーマリーブラック型TN液晶表示素子を実現するものである。したがって、裏側基板配向方位R1、表側基板配向方位R2、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2、液晶層中央分子配向方向の最適値を得るために、本発明者らは、液晶表示素子100の光学特性をシンテック製液晶表示機シミュレータLCDMASTER7.2により解析した。
【0027】
図3は、裏側基板配向方位R1=−45°、表側基板配向方位R2=+45°、ねじれ角Ψ=−90°の左ねじれ90°液晶セルを用い、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2を35°〜55°までそれぞれ変化させたときの正面観察時の透過率及び液晶表示素子法線方向を基準に左右方位(180°及び0°)極角40°における透過率の計算結果をまとめた表である。
図3(A)に正面観察時、
図3(B)に右方位極角40°観察時、
図3(C)に左方位極角40°観察時の暗状態(電圧無印加時)における透過率を示す。なお、液晶層厚dは10μmとして、Δnd=2.5μmとした。
【0028】
図4は、裏側基板配向方位R1、表側基板配向方位R2、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2、液晶層中央分子配向方向の関係を示すグラフである。
図4(A)には、正面観察時における最適値(最低透過率)、
図4(B)には、左右方位極角40°観察時における最適値(最低透過率)を得るための関係を示す。
【0029】
図3(A)の表に示すように、正面観察時に透過率が最低となるのは、裏側偏光板吸収軸P1=表側偏光板吸収軸P2=45°の条件で、そのときの透過率は0.188%であった。表から明らかなように、裏側偏光板吸収軸P1=表側偏光板吸収軸P2=45°を中心にこの値から離れるほど透過率が上昇することが分かる。このときの条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図4(A)のようになる。すなわち、表側基板吸収軸P2は、近接する表側基板の配向方位R2と同一の方位である45°に配置され、裏側基板吸収軸P1も45°に配置される、いわゆる平行ニコル配置である。
【0030】
図3〜
図13に示す表において、2重線の枠で囲んで示す数値は正面観察時に最低透過率を得られる条件(側偏光板吸収軸P1及び表側偏光板吸収軸P2の角度)における暗状態(電圧無印加時)での透過率を表し、太字で示す数値は裏側偏光板吸収軸P1及び表側偏光板吸収軸P2の角度(方位)が正面観察時と同一の場合に、正面観察時よりも暗状態(電圧無印加時)での透過率が低く、且つ正面観察時において最低透過率を示した条件(
図3(A)〜(C)の場合は、裏側偏光板吸収軸P1=表側偏光板吸収軸P2=45°)における左右方位極角40°観察時の透過率(
図3(B)では、「0.494%」、
図3(C)では「0.404%」)よりも低い暗状態(電圧無印加時)での透過率である。また、太字に下線を施した数値は、正面観察時における最低透過率(
図3(A)では「0.188%」)よりも低い又はほぼ同等の透過率を示した暗状態(電圧無印加時)での透過率である。すなわち、太字及び太字に下線を施した数値を得られた条件(裏側偏光板吸収軸P1及び表側偏光板吸収軸P2の角度)では、正面観察時よりも左右方位40°極角にて優れた光学特性(暗状態(電圧無印加時)での低い透過率)を得られる。
【0031】
図3(B)の表から、右方位40°極角にて観察した場合には、裏側偏光板吸収軸P1が35°〜40°、表側偏光板吸収軸P2が42.5〜50°のときに、
図3(A)に示す正面観察時の同一条件下(同一の吸収軸P1及び表側偏光板吸収軸P2角度)における透過率よりも透過率が低く、且つ正面観察時において最低透過率を示した条件(裏側偏光板吸収軸P1=表側偏光板吸収軸P2=45°)における左右方位極角40°観察時の透過率(「0.494%」)よりも低い透過率が得られたことが分かる。
【0032】
また、裏側偏光板吸収軸P1が37.5°〜40°、表側偏光板吸収軸P2が45°のときには、正面観察時における最低透過率(「0.188%」)とほぼ同等の透過率(それぞれ「0.19%」、「0.196%」)が得られたことが分かる。
【0033】
図3(C)の表から、左方位40°極角にて観察した場合には、裏側偏光板吸収軸P1が35°、表側偏光板吸収軸P2が45〜47.5°のとき、裏側偏光板吸収軸P1が37.5°〜40°、表側偏光板吸収軸P2が42.5〜50°のとき、及び、裏側偏光板吸収軸P1が42.5°、表側偏光板吸収軸P2が50°のときに、
図3(A)に示す正面観察時の同一条件下(同一の吸収軸P1及び表側偏光板吸収軸P2角度)における透過率よりも透過率が低く、且つ正面観察時において最低透過率を示した条件(裏側偏光板吸収軸P1=表側偏光板吸収軸P2=45°)における左右方位極角40°観察時の透過率(「0.494%」)よりも低い透過率が得られたことが分かる。
【0034】
また、裏側偏光板吸収軸P1が40°、表側偏光板吸収軸P2が45°のときには、正面観察時における最低透過率(「0.188%」)より低い透過率(「0.182%」)が得られたことが分かる。
【0035】
以上より、左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件は、裏側偏光板吸収軸P1が35°〜40°で表側偏光板吸収軸P2が42.5〜50°の条件であり、より好ましくは裏側偏光板吸収軸P1が37.5〜40°、表側偏光板吸収軸P2が42.5〜47.5°の条件である。さらに好ましいのは正面観察時の同等の透過率が40°極角にて得られる裏側偏光板吸収軸P1が40°、表側偏光板吸収軸P2が45°の条件であると考えられる。
【0036】
図3(B)及び
図3(C)に示す表における最適条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図4(B)のようになる。すなわち、裏側基板配向方位R1=−45°、表側基板配向方位R2=+45°、ねじれ角Ψ=−90°の左ねじれ90°液晶セルでは、表側基板吸収軸P2は、近接する表側基板の配向方位R2と同一の方位である45°に配置される場合、裏側基板吸収軸P1は40°に配置される。これにより、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能となる。なお、上述したように、裏側偏光板吸収軸P1が35°〜40°で表側偏光板吸収軸P2が42.5〜50°の条件を満たせば、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能である。
【0037】
次に液晶層3の厚さがd=8μmとd=12μm、すなわちΔnd=2μm及び3μmにおける正面観察時及び右方位40°極角観察時の光学特性を計算した。
図5(A)は、Δnd=2μmの右方位40°極角観察時の光学特性計算結果を示す表であり、
図5(B)は、Δnd=3μmの右方位40°極角観察時の光学特性計算結果を示す表である。
【0038】
Δnd=2μmの場合、正面観察時における最低透過率は0.314%であったので、
図3(A)に示すΔnd=2.5μmの場合の最低透過率に比べてかなり上昇している。このことから、
図5(A)に示す表では、この透過率(「0.314%」)より低い領域(裏側偏光板吸収軸P1が37.5〜40°、表側偏光板吸収軸P2が42.5〜45°の条件)が太字に下線を施して表示されており、
図3(B)に示す例に比べて、右方位40°極角で良好な光学特性が得られる範囲が広くなっている。
【0039】
一方、Δnd=3μmの場合、正面観察時における最低透過率は0.136%となりΔnd=2.5μmの条件に比べ低くなっているが、太字及び太字に下線を施して示す範囲はほぼ等しい領域(裏側偏光板吸収軸P1が35〜40°、表側偏光板吸収軸P2が40〜50°、但し裏側偏光板吸収軸P1が35°、表側偏光板吸収軸P2が50°の場合を除く条件)であることが分かった。
【0040】
したがって、左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件はΔnd=2μm、3μmともに上述した
図3に示すΔnd=2.5μmの場合の範囲がカバーされていることが分かった。
【0041】
よって、Δnd=2.5μm、2μm及び3μmのいずれの場合においても、裏側基板配向方位R1=−45°、表側基板配向方位R2=+45°、ねじれ角Ψ=−90°の左ねじれ90°液晶セルでは、左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件は、裏側偏光板吸収軸P1が35°〜40°で表側偏光板吸収軸P2が42.5〜50°の条件であり、より好ましくは裏側偏光板吸収軸P1が37.5〜40°、表側偏光板吸収軸P2が42.5〜47.5°の条件である。さらに好ましいのは正面観察時の同等の透過率が40°極角にて得られる裏側偏光板吸収軸P1が40°、表側偏光板吸収軸P2が45°の条件であると考えられる。
【0042】
次に、裏側基板配向方位R1=−45°、表側基板配向方位R2=+45°、ねじれ角Ψ=−90°の左ねじれ90°液晶セルを用い、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2を125°〜145°までそれぞれ変化させたときの正面観察時及び、液晶表示素子法線方向を基準に左右方位(180°及び0°)極角40°における透過率を計算した。なお、液晶層厚dは10μmとして、Δnd=2.5μmとした。左方位(180°)及び右方位(0°)極角40°における透過率の計算結果を
図6(A)及び(B)にそれぞれ示す。
【0043】
図6(A)及び(B)の表で2重線で囲んで示すように、正面観察時に透過率が最低となるのは、裏側偏光板吸収軸P1=表側偏光板吸収軸P2=135°の条件であった。このときの条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図7(A)のようになる。すなわち、裏側基板吸収軸P1は、近接する裏側基板の配向方位R1と同一の方位である135°(−45°)に配置され、表側基板吸収軸P2も135°に配置される、いわゆる平行ニコル配置である。
【0044】
図6(A)及び(B)に示す表から、左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件は、裏側偏光板吸収軸P1が130°〜137.5°、表側偏光板吸収軸P2が140〜145°、より好ましくは裏側偏光板吸収軸P1が132.5〜137.5°、表側偏光板吸収軸P2が140〜142.5°、さらに好ましいのは正面観察時の同等の透過率が40°極角にて得られる裏側偏光板吸収軸P1が135°、表側偏光板吸収軸P2が140°の条件であると考えられる。
【0045】
図6(A)及(B)に示す表における最適条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図7(B)のようになる。すなわち、裏側基板配向方位R1=−45°、表側基板配向方位R2=+45°、ねじれ角Ψ=−90°の左ねじれ90°液晶セルにおいて、裏側基板吸収軸P1が、近接する裏側基板の配向方位R1と同一の方位である45°に配置される場合、表側基板吸収軸P2は140°に配置される。これにより、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能となる。なお、上述したように、裏側偏光板吸収軸P1が130°〜137.5°で表側偏光板吸収軸P2が140〜145°の条件を満たせば、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能である。
【0046】
次に、裏側基板配向方位R1=−135°、表側基板配向方位R2=+135°、ねじれ角Ψ=+90°の右ねじれ90°液晶セルを用い、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2を35°〜55°までそれぞれ変化させたときの正面観察時及び、液晶表示素子法線方向を基準に左右方位(180°及び0°)極角40°における透過率を計算した。なお、液晶層厚dは10μmとして、Δnd=2.5μmとした。左方位(180°)及び右方位(0°)極角40°における透過率の計算結果を
図8(A)及び(B)にそれぞれ示す。
【0047】
図8(A)及び(B)の表で2重線で囲んで示すように、正面観察時に透過率が最低となるのは、裏側偏光板吸収軸P1=表側偏光板吸収軸P2=45°の条件であった。このときの条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図9(A)のようになる。すなわち、裏側基板吸収軸P1は、近接する裏側基板の配向方位R1と同一の方位である45°に配置され、表側基板吸収軸P2も45°に配置される、いわゆる平行ニコル配置である。
【0048】
図8(A)及び(B)の表から、左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件は、裏側偏光板吸収軸P1が42.5°〜50°、表側偏光板吸収軸P2が35〜40°、より好ましくは裏側偏光板吸収軸P1が45〜47.5°、表側偏光板吸収軸P2が37.5〜40°、さらに好ましいのは正面観察時の同等の透過率が40°極角にて得られる裏側偏光板吸収軸P1が45°、表側偏光板吸収軸P2が40°の条件であると考えられる。
【0049】
図8(A)及(B)に示す表における最適条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図9(B)のようになる。すなわち、裏側基板配向方位R1=−135°、表側基板配向方位R2=+135°、ねじれ角Ψ=+90°の右ねじれ90°液晶セルにおいて、裏側基板吸収軸P1が、近接する裏側基板の配向方位R1と同一の方位である45°(−135°)に配置される場合、表側基板吸収軸P2は40°に配置される。これにより、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能となる。なお、上述したように、裏側偏光板吸収軸P1が42.5°〜50°、表側偏光板吸収軸P2が35〜40°の条件を満たせば、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能である。
【0050】
次に、裏側基板配向方位R1=−55°、表側基板配向方位R2=+55°、ねじれ角Ψ=−70°の左ねじれ70°液晶セルを用い、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2を25°〜65°までそれぞれ変化させたときの正面観察時及び、液晶表示素子法線方向を基準に左右方位(180°及び0°)極角40°における透過率を計算した。なお、液晶層厚dは10μmとして、Δnd=2.5μmとした。正面観察時、左方位(180°)及び右方位(0°)極角40°における透過率の計算結果を
図10(A)〜(C)にそれぞれ示す。
【0051】
図10(A)の表中二重線で囲んだように、正面観察時における最低透過率が得られる条件は裏側偏光板吸収軸P1=35°、表側偏光板吸収軸P2=55°であった。この条件下で得られた透過率は0.122%と低いものであった。正面観察時の最適条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図11(A)のようになる。すなわち、表側基板吸収軸P2は、近接する表側基板の配向方位R2と同一の方位である55°に配置され、裏側基板吸収軸P1は35°に配置される。
【0052】
図10(B)及び(C)の表から、左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件は、裏側偏光板吸収軸P1が25°〜30°、表側偏光板吸収軸P2が55〜60°、さらに好ましいのは正面観察時の同等の透過率が40°極角にて得られる裏側偏光板吸収軸P1が30°、表側偏光板吸収軸P2が55°の条件であると考えられる。正面観察時の透過率が低いため、上述したねじれ角が90°の場合と比べて、左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件の範囲が狭くなっている。
【0053】
図10(B)及(C)に示す表における最適条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図11(B)のようになる。すなわち、裏側基板配向方位R1=−55°、表側基板配向方位R2=+55°、ねじれ角Ψ=−70°の左ねじれ70°液晶セルにおいて、表側基板吸収軸P2が、近接する表側基板の配向方位R2と同一の方位である55°に配置される場合、裏側基板吸収軸P2は30°に配置される。これにより、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能となる。なお、上述したように、裏側偏光板吸収軸P1が25°〜30°、表側偏光板吸収軸P2が55〜60°の条件を満たせば、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能である。
【0054】
なお、本発明者らは、シミュレーション解析以外の解析により、ねじれ角60°〜90°の液晶素子において、上述のシミュレーション解析結果と同様の傾向が観察されることを確認した。
【0055】
以上の計算結果をまとめると、ねじれ角が60°以上90°以下で液晶層3のリタデーションΔndが2μm〜3μmのノーマリーブラック型TN液晶表示素子100において、正面観察時を基準に当該液晶表示素子100を左右方位に傾けたときの暗状態の透過率が、正面観察時の暗状態における透過率よりも低くなる条件が導き出せる。
【0056】
すなわち、表側偏光板吸収軸P2と近接する表側基板1上の配向方位R2間の角度φ2が、裏側偏光板21から表側偏光板11へ光が伝播した時の2枚の基板1、2間の液晶層3のねじれ方向に対して2.5°以下、逆ねじれ方向に対して5°以下、より好ましくは、ねじれ方向、逆ねじれ方向ともに2.5°以下、さらに好ましくは0°となるように表側偏光板吸収軸P2を配置する場合、裏側偏光板吸収軸P1は表側偏光板吸収軸P2を基準に、ねじれ方向へ90°回転したのち逆ねじれ方向へねじれ角から所定角度αを引いた角度(ねじれ角分−α)回転させ配置する。この時αは2.5°以上15°以下、より好ましくは2.5°以上10°以下、さらに好ましくは5°である。
【0057】
また、裏側偏光板吸収軸P1と近接する表側基板2上の配向方位R1間の角度φ1が、裏側偏光板21から表側偏光板11へ光が伝播した時の2枚の基板1、2間の液晶層3のねじれ方向に対して5°以下、逆ねじれ方向に対して2.5°以下、より好ましくは、ねじれ方向、逆ねじれ方向ともに2.5°以下、さらに好ましくは0°となるように裏側偏光板吸収軸P1を配置する場合、表側偏光板吸収軸P2は裏側偏光板吸収軸P1を基準に、逆ねじれ方向へ90°回転したのちねじれ方向へねじれ角から所定角度αを引いた角度(ねじれ角分−α)回転させ配置する。この時αは2.5°以上15°以下、より好ましくは2.5°以上10°以下、さらに好ましくは5°である。
【0058】
なお、上記2つの条件は、液晶層3のねじれ方向を、光が光源(バックライト)から観察者に向かう場合の通常観察時の光のねじれ方向ではなく、基準となる一方の偏光板からもう他方の偏光板に光が伝播した場合に光がねじれる方向をねじれ方向として定義することにより、以下のようにまとめることが可能である。すなわち、一方の偏光板の吸収軸と当該一方の偏光板が近接する基板の配向方位とがなす角度が、当該一方の偏光板から他方の偏光板へ光が伝播したときの2枚の基板間の液晶層のねじれ方向に対して5°以下、逆ねじれ方向に対して2.5°以下の範囲、より好ましくは、ねじれ方向、逆ねじれ方向ともに2.5°以下の範囲、さらに好ましくは0°(平行)となるように一方の偏光板の吸収軸を配置する場合、他方の偏光板の吸収軸は、上記一方の偏光板の吸収軸を基準として、逆ねじれ方向へ90°回転したのちねじれ方向へねじれ角から所定角度αを引いた角度(ねじれ角分−α)回転させ配置する。この時αは2.5°以上15°以下の範囲、より好ましくは2.5°以上10°以下の範囲、さらに好ましくは5°である。
【0059】
次に、裏側基板配向方位R1=−35°、表側基板配向方位R2=+35°、ねじれ角Ψ=−110°の左ねじれ110°液晶セルを用い、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2を25°〜65°までそれぞれ変化させたときの正面観察時及び、液晶表示素子法線方向を基準に右方位(180°及び0°)極角40°における透過率を計算した。なお、液晶層厚dは10μmとして、Δnd=2.5μmとした。右方位(0°)極角40°における透過率の計算結果を
図12(A)に示す。なお正面観察時における最低透過率は裏側偏光板吸収軸P1=55°、表側偏光板吸収軸P2=35°で得られた0.269%であった。
【0060】
図12(A)の表に示すように、正面観察時の最低透過率と同等、又は下回る40°極角観察時透過率は得られなかったため太字に下線を施した数値は存在しないが、それぞれの偏光板配置条件において正面観察時より40°極角観察時の方が、正面観察時最低透過率が得られる条件の40°極角観察時の透過率(二重線枠)よりも低い、太字で示す透過率は得られることが分かった。左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件は、裏側偏光板吸収軸P1が45〜50°、表側偏光板吸収軸P2が30〜40°、より好ましくは裏側偏光板吸収軸P1が50°、表側偏光板吸収軸P2が30〜40°、さらに好ましいのは正面観察時と同等の透過率が40°極角にて得られる裏側偏光板吸収軸P1が50°、表側偏光板吸収軸P2が35°の条件であると考えられる。
【0061】
図12(A)に示す表における最適条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図12(B)のようになる。すなわち、裏側基板配向方位R1=−35°、表側基板配向方位R2=+35°、ねじれ角Ψ=−110°の左ねじれ110°液晶セルにおいて、表側基板吸収軸P2が、近接する表側基板の配向方位R2と同一の方位である35°に配置される場合、裏側基板吸収軸P1は50°に配置される。これにより、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能となる。なお、上述したように、裏側偏光板吸収軸P1が45°〜50°、表側偏光板吸収軸P2が30〜40°の条件を満たせば、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能である。
【0062】
次に、裏側基板配向方位R1=−35°、表側基板配向方位R2=+35°、ねじれ角Ψ=−110°の左ねじれ110°液晶セルを用い、裏側偏光板吸収軸P1、表側偏光板吸収軸P2を115°〜155°までそれぞれ変化させたときの正面観察時及び、液晶表示素子法線方向を基準に右方位(180°及び0°)極角40°における透過率を計算した。なお、液晶層厚dは10μmとして、Δnd=2.5μmとした。右方位(0°)極角40°における透過率の計算結果を
図13(A)に示す。なお正面観察時における最低透過率は裏側偏光板吸収軸P1=145°、表側偏光板吸収軸P2=125°で得られた0.269%であった。
【0063】
図13(A)の表に示すように、正面観察時の最低透過率と同等、又は下回る40°極角観察時透過率は得られなかったため太字に下線を施した数値は存在しないが、それぞれの偏光板配置条件において正面観察時より40°極角観察時の方が、正面観察時最低透過率が得られる条件の40°極角観察時の透過率(二重線枠)よりも低い、太字で示す透過率は得られることが分かった。左右方位40°極角にて正面観察時より優れた光学特性を示す条件は、裏側偏光板吸収軸P1が145〜150°、表側偏光板吸収軸P2が130〜135°、より好ましくは裏側偏光板吸収軸P1が145°、表側偏光板吸収軸P2が130〜135°、さらに好ましいのは正面観察時と同等の透過率が40°極角にて得られる裏側偏光板吸収軸P1が145°、表側偏光板吸収軸P2が130°の条件であると考えられる。
【0064】
図13(A)に示す表における最適条件を、
図2と同様の座標系で示すと、
図13(B)のようになる。すなわち、裏側基板配向方位R1=−35°、表側基板配向方位R2=+35°、ねじれ角Ψ=−110°の左ねじれ110°液晶セルにおいて、裏側基板吸収軸P1が、近接する裏側基板の配向方位R1と同一の方位である−35°(145°)に配置される場合、表側基板吸収軸P1は130°に配置される。これにより、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能となる。なお、上述したように、裏側偏光板吸収軸P1が145°〜150°、表側偏光板吸収軸P2が130〜135°の条件を満たせば、正面観察時よりも左右方位観察時において優れた光学特性を得ることが可能である。
【0065】
なお、本発明者らは、シミュレーション解析以外の解析により、ねじれ角が90°より大きく120°以下の液晶素子において、上述のシミュレーション解析結果と同様の傾向が観察されることを確認した。
【0066】
以上の計算結果をまとめると、ねじれ角が90°より大きく120°以下で液晶層3のリタデーションΔndが2μm〜3μmのノーマリーブラック型TN液晶表示素子100において、正面観察時を基準に当該液晶表示素子100を左右方位に傾けたときの暗状態の透過率が、正面観察時の暗状態における透過率よりも低くなる条件が導き出せる。
【0067】
液晶層3のねじれ方向を、光が光源(バックライト)から観察者に向かう場合の通常観察時の光のねじれ方向ではなく、基準となる一方の偏光板からもう他方の偏光板に光が伝播した場合に光がねじれる方向をねじれ方向として定義すると、一方の偏光板の吸収軸と当該一方の偏光板が近接する基板の配向方位とがなす角度が、当該一方の偏光板から他方の偏光板へ光が伝播したときの2枚の基板間の液晶層のねじれ方向に対して5°以下、逆ねじれ方向に対して2.5°以下の範囲、より好ましくは、ねじれ方向、逆ねじれ方向ともに2.5°以下の範囲、さらに好ましくは0°(平行)となるように一方の偏光板の吸収軸を配置する場合、他方の偏光板の吸収軸は、上記一方の偏光板の吸収軸を基準として、ねじれ方向へ90°回転したのち逆ねじれ方向へねじれ角から所定角度αを引いた角度(ねじれ角分−α)回転させ配置する。この時αは2.5°以上15°以下の範囲、より好ましくは2.5°以上10°以下の範囲、さらに好ましくは5°である。
【0068】
以上、本発明の実施例によれば、ノーマリーブラック型TN液晶表示素子を左右方位の斜めから観察した場合に良好な暗状態が得られるようになり、外観上視角特性が広がる効果が得られる。よって、斜め方向から観察する表示機に好適な液晶表示素子を提供することができる。
【0069】
なお、上述の実施例においては、液晶表示素子100のセル厚dが均一である場合のみを説明したが、少なくとも一方の基板面に凹凸がランダムに配置され、液晶層3のリタデーションΔndが2μm〜3μmの範囲内に収まる構造であれば、実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0070】
また、液晶層3内に2wt%以下程度の二色性色素を添加すると電圧無印加時における暗状態がさらに改善される。
【0071】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。