(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の放電セルの基本的な構造は、特許文献1に開示されている。
【0003】
図1に、本発明に関連する放電セル(比較例)を示す。この放電セル101は、外観が角柱形状をしたセル本体102を有し、そのセル本体102の四隅に設けられた端子部103に高周波高圧電源104から延びる電線105が接続されている。セル本体102の上面には、原料ガスが流入するガス流入口106、オゾンガスが流出するガス流出口107、冷媒としての冷却水が流入する冷媒流入口108、及び冷却水が流出する冷媒流出口109が設けられている。
【0004】
放電セル101の使用時には、冷却水を供給しながら高電圧が印加される。そうして、ガス流入口106から原料ガスを流入させることにより、オゾンガスがガス流出口107から流出する。
【0005】
図2に示すように、セル本体102は、上下の蓋板111a,111bや誘電板112a,112b、絶縁板113a,113b、及び流路基板114a,114bなどの基板で構成されている。誘電板112a等はガラス系の接合ペーストを用いて接合されている。誘電板112a,112bの間には、オゾンガスを生成する放電隙間が形成されている。その放電隙間に無声放電を発生させるため、各誘電板112a,112bの背面に薄膜電極層115が形成されている。
【0006】
各基板の四隅には、同じ位置に同じ大きさの貫通孔117が形成されている。各基板を位置決めして積層することにより、これら貫通孔117は互いに重なり合う。それにより、セル本体102の四隅に、上下に細長く延びる孔(スルーホール118)が形成される。端子部103は、スルーホール118を利用して構成されている。
【0007】
図3に、端子部103の具体的構成を示す。スルーホール118には、中空のセラミック棒119が挿入されており、その周囲に充填材として銀ペースト120が充填されている。各基板の間には、溶融した接合ペーストからなる接合層121が存在している。接合層121とスルーホール118との間には、周方向に凹む隙間122が存在している。薄膜電極層115の一部は、その隙間122に面して露出している。
【0008】
銀ペースト120の一部は蓋板111aの上面に露出している。その露出部分と電線105とが、はんだ付けされ、薄膜電極層115と電線105とが電気的に接続されている。放電セル101に接続された電線105の先端部分は、その周囲を囲む樹脂製の筒状カバー123と、その内側に充填された接着剤124とによって保護強化されている。
【0009】
これら端子部103は、各基板の接合処理の際に形成される。
図4に、その処理の流れを示す。まず、接合ペーストが塗布された各基板を所定の順序で重ね合わせて積層体を形成し、セル本体102を仮組みする(ステップS101)。それにより、積層体の四隅にはスルーホール118が形成される。セラミック棒119は、外周面に銀ペースト120が満遍なく塗布され、スルーホール118に挿入される(ステップS102、S103)。
【0010】
セラミック棒119の外径は、スルーホール118の内径よりも僅かに小さく設定されている。従って、セラミック棒119を各スルーホール118に挿入することにより、各基板は所定位置に位置決めされる。また、銀ペースト120が、隙間122にはみ出して薄膜電極層115と接触する。
【0011】
続いて、積層体は850℃以上の温度で焼成される(ステップS104)。焼成により、接合ペーストが溶融し、各基板は一体化する。銀ペースト120も固化するため、セラミック棒119も固定され、端子部103が形成される。
【0012】
その後は、はんだ付けにより、蓋板111aの上面に露出した各端子部103の端部に電線105が接続され(ステップS105)、筒状カバー123等による被覆処理が行われる(ステップS106)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
比較例の放電セル101では、電線105と薄膜電極層115とが、セラミック棒119とスルーホール118の間に充填された銀ペースト120を介して接続されている。銀ペースト120は、セラミック棒119に塗布し、そのセラミック棒119を挿入することによってスルーホール118に充填されるため、薄膜電極層115との十分な接触が得られずに導通不良を招くおそれがある。また、スルーホール118とセラミック棒119との間に隙間が生じて、セラミック棒119の固定が不充分になるおそれもある。
【0015】
更に、スルーホール118にセラミック棒119を挿入する時に、スルーホール118から銀ペースト120がはみ出して仮組みした基板の間に入り込むおそれがある。銀ペースト120が基板の間に入り込むと接合不良を招く。また、はんだ付けによって銀ペースト120と電線105とが接続されているが、はんだ付けは手間がかかるうえに確実性に欠け、外れ易い傾向がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、大掛かりな設計変更を伴うことなく、より高品質な放電セル及びオゾンガス発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る放電セルは、無声放電によってオゾンガスを生成する放電セルである。放電セルは、突き合わされた一対の誘電板を含む積層された複数の基板と、これら基板に介在するガラス系の接合層とを有するセル本体と、前記一対の誘電板の間に形成され、ガス流入口及びガス流出口に連通する放電隙間と、前記誘電板のそれぞれの背面に形成された薄膜電極層と、前記薄膜電極層と外部の電線とを電気的に接続する端子部とを備える。前記端子部は、前記基板に開口する要素孔が重なって形成され、前記セル本体の内部を積層方向に延びる長孔と、前記長孔に充填される電気伝導性を有する充填材とを有している。前記薄膜電極層は、前記誘電板の要素孔周辺の隙間に拡がって前記長孔に露出する背面露出部を有している。そして、前記誘電板の要素孔の径が、他の前記基板の要素孔の径よりも小さく形成されている。
【0018】
この放電セルでは、ガラス系の接合層を介して複数の基板が積層されたセル本体に、各基板に開口する要素孔が重なって長孔が形成されている。この長孔や充填材などで、セル本体内の薄膜電極層と外部の電線とを電気的に接続する端子部が構成されている。
【0019】
そして、薄膜電極層が有する背面露出部が、要素孔の周辺の隙間に拡がって長孔に露出しており、その要素孔の径が、他の要素孔の径よりも小さく形成されている。すなわち、積層方向から長孔を見たとき、背面露出部は、長孔の内側に張り出して見得る状態にある。従って、長孔に充填される充填材は、背面露出部の上面に受け止められるため、充填材と薄膜電極層とを確実性をもって接触させることができ、導通不良が防止できる。
【0020】
更に、前記薄膜電極層は、前記誘電板の要素孔の内側に入り込んで当該要素孔内に露出する孔内露出部を有するのが好ましい。
【0021】
そうすれば、薄膜電極層が長孔の内側で更に広範囲に拡がるため、充填材と薄膜電極層とをより確実性をもって接触させることができ、導通不良をよりいっそう防止できる。
【0022】
更に、前記長孔に挿入される棒状部材を有しているのが好ましい。
【0023】
そうすれば、棒状部材と長孔との組み合わせにより、積層される各基板を所定位置にしっかりと位置決めできる。
【0024】
また、前記棒状部材に電気伝導性を有する線材を用いるのが好ましい。
【0025】
そうすれば、薄膜電極層と電線との間を、充填材と線材の両方で電気的に接続することができる。しかも、通常は、充填材よりも線材の方が電気伝導性に優れるため、端子部全体としての電気伝導性を向上させることができる。
【0026】
その場合、前記充填材に樹脂成分を含む導電性接着剤を用いるのが好ましい。
【0027】
そのような導電性接着剤であれば、本形態の端子部にとって最適な導電性接着剤を容易に入手することができる。従って、薄膜電極層との接触をより確実性をもって達成でき、端子部の品質向上が図れる。生産性の向上や製造コストの抑制も図れる。
【0028】
またその場合、前記長孔から前記棒状部材の端部が突出し、当該端部に、圧着端子を用いて前記電線が接続されているようにするとよい。
【0029】
そうすれば、圧着端子で線材と電線とを直接接続することができるので、電気的にも確実性をもって接続できるし、機械的にも簡単な作業で強固に接続することができる。
【0030】
このような放電セルを備えたオゾンガス発生装置であれば、耐久性に優れ、より安定してオゾンガスを発生させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高品質な放電セル及びオゾンガス発生装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0034】
(オゾンガス発生装置)
図5に、オゾンガス発生装置の一例を示す。このオゾンガス発生装置1は、高純度なオゾンガスを安定して生成できるように設計されており、例えば、半導体分野で使用される。オゾンガス発生装置1には、無声放電によってオゾンガスを生成する放電セル2、電源供給部3などが備えられている。装置前面には、スイッチ、ランプ及びディスプレイなどからなる操作部4が設置されている。
【0035】
このオゾンガス発生装置1では、外部から高純度の酸素ガスの供給を受けてオゾンガスを生成する。例えば、半導体製造設備では、このオゾンガス発生装置1で生成されたオゾンガスを純水に溶解させてオゾン水を生成し、シリコンウエハの洗浄等に用いられる。
【0036】
(放電セル)
図6に、放電セル2を示す。放電セル2は、外観が角柱形状をしたセル本体10を有し、そのセル本体10の四隅に設けられた端子部30に、電源供給部(高周波高圧電源)3から延びる電線50が接続されている。詳しくは、隣接した一方の2つの端子部30に、電源供給部3から延びる一対の高圧側の電線50a,50aが接続されている。他方の2つの端子部30に、電源供給部3から延びる一対の低圧側の電線50b,50bが接続されている。
【0037】
セル本体10の上面の四辺には、ガス流入口10a、ガス流出口10b、冷媒流入口10c、及び冷媒流出口10dが設けられている。詳しくは、各辺の縁部分の中間に、ガス流入口10aとガス流出口10b、冷媒流入口10cと冷媒流出口10dが、それぞれ対向配置されている。
【0038】
図示はしないが、ガス流入口10aには、原料としての酸素ガスが流入し、ガス流出口10bからオゾンガスが流出する。また、冷媒流入口10cには、冷媒として冷えた冷却水が流入し、冷媒流出口10dから温まった冷却水が流出する。
【0039】
図7に示すように、セル本体10は、誘電板11a,11bや絶縁板12a,12b、流路基板13a,13b、及び蓋板14a,14bなど、機能の異なる同寸法の略正方形状をした基板を厚み方向に積層して形成されている。具体的には、上下の蓋板14a,14bの間に、一対の誘電板11a,11bが突き合わされた状態で配置され、これら誘電板11a,11bに対して上下対称状に、一対の絶縁板12a,12b及び一対の流路基板13a,13bが配置されている。
【0040】
これら基板は、ガラス系素材のペーストを用いて互いに接合されている。また、これら基板の四隅には、それぞれ厚み方向に貫通する断面円形の要素孔15が形成されている。これら要素孔15に線材70(棒状部材の一例)を挿入することにより、端子部30が構成されている。端子部30の構造については別途後述する。
【0041】
誘電板11a,11b、絶縁板12a,12b、及び流路基板13a,13bの組み合わせにより、放電セル2の基本となるセル要素16が構成される。セル本体10は、そのオゾンガス発生能力に応じて、上下の蓋板14a,14bの間に、流路基板13a(13b)を共用しながら複数のセル要素16を積層することができる。本実施形態のセル本体10は、2つのセル要素16で構成されている。
【0042】
上下の蓋板14a,14bは、それぞれ2〜10mm程度の板厚を有するアルミナ製の基板である。誘電板11a,11b等は、上下の蓋板14a,14bによって挟持される。ガス流入口10a、ガス流出口10b、冷媒流入口10c、及び冷媒流出口10dは、上側の蓋板14aの上面に開口している。
【0043】
誘電板11a,11b、絶縁板12a,12b、及び流路基板13a,13bは、それぞれ0.1〜5mm程度の板厚を有するアルミナ製の基板である。これら基板の一方の対向した辺部には、それぞれ、各辺に沿って延びるガス用長孔17a,17bが貫通している。
図7に実線矢印で示したように、一方のガス用長孔17aは、重なり合ってガス流入口10aに連通するガス縦流路18aを構成し、他方のガス用長孔17bは、重なり合ってガス流出口10bに連通するガス縦流路18bを構成する。
【0044】
更に、誘電板11a,11b及び絶縁板12a,12bには、これら基板の他方の対向した辺部にも、それぞれ、各辺に沿って延びる冷媒用長孔19a,19bが貫通している。
図7に破線矢印で示したように、一方の冷媒用長孔19aは、重なり合って冷媒流入口10cに連通する冷媒縦流路20aを構成し、他方の冷媒用長孔19bは、重なり合って冷媒流出口10dに連通する冷媒縦流路20bを構成する。
【0045】
各誘電板11a,11bの対向面には、ガス用長孔17a,17bに直交して並ぶ複数のリブ11cが形成されている。各誘電板11a,11bの背面には、例えば10μm程度の厚みを有する電気伝導性に優れた薄膜電極層21が、印刷手法を用いて所定形状に形成されている。具体的には、薄膜電極層21は、一対のガス用長孔17a,17b及び一対の冷媒用長孔19a,19bに囲まれた範囲に拡がる対向電極部21aと、対向電極部21aから誘電板11a,11bの隣接した2つの隅部のそれぞれに張り出す一対の端子電極部21bとを有している。
【0046】
各絶縁板12a,12bは、例えば2mm程度の厚みを有する基板である。そして、各流路基板13a,13bは、例えば1mm程度の厚みを有する基板である。流路基板13a,13bには、一対のガス用長孔17a,17bの間に、ガス用長孔17a,17bと平行な複数の冷却長孔13cが並設されている。これら冷却長孔13cの両端部は、冷媒縦流路20a,20bに重なってこれらと連通するように、絶縁板12a,12bの縁近傍まで延びている。
【0047】
図8に、
図6のX−Y−Z線におけるセル本体10の断面構造を示す。同図中、符号22は、各基板の間に存在し、これらを互いに接合している接合層であり、例えば30μm程度の厚みを有している。接合層22は、融点が800℃以上のガラス系素材のペーストが溶融、固化することによって形成されている。
【0048】
一対の誘電板11a,11bの間には、接合されたリブ11cで複数の流路に区画された放電隙間23が形成されている。同図中、実線矢印が示すように、ガス流入口10aから流入する酸素ガスは、ガス縦流路18aを通って放電隙間23に流入する。また、点線矢印が示すように、冷媒流入口10cから流入する冷却水は、冷媒縦流路20aを通って各冷却長孔13cに流入し、他方の冷媒縦流路20bを通って冷媒流出口10dから流出する。
【0049】
そして、一対の薄膜電極層21,21の間に高電圧が印加されると、放電隙間23に無声放電が発生する。この無声放電の作用により、放電隙間23ではオゾンガスが生成する。生成したオゾンガスは、放電隙間23から流出し、ガス縦流路18bを通ってガス流出口10bから流出する。
【0050】
(端子部の構造)
図9に、端子部30の構造を示す。端子部30は、スルーホール31(長孔)、線材70、充填材33及び端子電極部21bなどで構成されていて、薄膜電極層21と電線50とを電気的に接続している。
【0051】
スルーホール31は、各基板に開口する要素孔15が重なって形成されており、内周面に段差を有しながらセル本体10の内部を積層方向に延びている。詳しくは、誘電板11a,11bの要素孔15(特に15aで示す)の内径は、それ以外の基板、つまりは絶縁板12a,12b、流路基板13a,13b、及び蓋板14a,14bの要素孔15の内径よりも小さく形成されており、スルーホール31は、絶縁板12a等で構成された大径部31aと、誘電板11a,11bで構成された、大径部31aよりも径の小さな小径部31bとを有している。例えば、大径部31aの直径は4mm、小径部31bの直径は3mmである。
【0052】
また、要素孔15の周囲に拡がる接合層22は、要素孔15から僅かに離れて位置している。そのため、スルーホール31が接合層22に面している部分には、径方向に僅かに窪む環状凹部31cが形成されている。環状凹部31cの直径は例えば直径6mmである。
【0053】
線材70は、電気伝導性に優れ、可撓性を有する断面円形の金属線である。本実施形態では、線材70に軟銅線が用いられている。線材70の線径は例えば2mmである。線材70は、セル本体10を貫通するようにスルーホール31に挿入される。線材70の一方の端部は、スルーホール31から突出し、上側の蓋板14aの上に露出している。
【0054】
充填材33は、電気伝導性を有し、スルーホール31に注入可能で、注入後に固化する部材であり、線材70が挿入されたスルーホール31の隙間の部分に充填されている。充填材33には、溶剤の蒸発によって固化する合成樹脂成分を含む導電性接着剤が用いられている。特に、固化前に適度な流動性を有する導電性接着剤が選定されている。
【0055】
なお、耐熱性の低い線材70や充填材33が使用できるのは、後述するように、焼成したセル本体10に端子部30が後付けされるからである。
【0056】
端子電極部21bは、
図7に示したように、誘電板11a,11bの背面における要素孔15の周辺部分に環状に拡がるように形成されている。そして、積層後には、
図9に示したように、その端子電極部21bの一部が、環状凹部31cに張り出してスルーホール31に露出している(背面露出部34)。背面露出部34は積層方向に向いている。
【0057】
更に、本実施形態の端子電極部21bは、背面露出部34から更に延びて、要素孔15の内側にまで入り込み、要素孔15の内側にも露出している(孔内露出部35)。孔内露出部35は背面露出部34と直交している。孔内露出部35は、例えば、薄膜電極層21の形成時に、要素孔15aを通じて吸引しながら電極材料の印刷を行うこと(スルーホール印刷)によって形成することができる。
【0058】
スルーホール31から突出した線材70の端部には、圧着端子36を用いて電線50が接続されている。圧着端子36と接続された電線50の先端部分の周囲は、樹脂製の筒状カバー37で覆われていて、その内側は接着剤38で固められている。
【0059】
(端子部の形成方法)
本実施形態の端子部30は、セル本体10に後付けすることによって形成されている。
図10に、その処理の流れを示す。まず、誘電板11a等に接合ペーストを塗布して所定の順序で重ね合わせ、積層体を形成する(ステップS1)。続いて、位置ずれしないように支持した状態で積層体を850℃以上の温度で焼成する(ステップS2)。
【0060】
焼成により、接合ペーストは溶融する。焼成後、接合層22が形成され、各基板は接合されて一体化する。その結果、四隅にスルーホール31を有するセル本体10が形成される。
【0061】
すなわち、端子部30は、焼成後に後付けされるので、比較例の放電セル101のように、高度な耐熱性を有するセラミック棒119や銀ペースト120を用いる必要はなく、耐熱性の低い線材70や充填材33を用いることができる。基板の間に充填材33が入り込むおそれもない。
【0062】
次に、各スルーホール31に充填材33を注入する(ステップS3)。例えば、
図11に示すように、要素孔15aの内径よりも小さな外径の注射針80を有する注射器を用いて注入すればよい。適度な流動性を有する充填材33を選択することで注射器が利用でき、充填材33をスルーホール31の隅々まで容易に行き渡らせることができる。
【0063】
このとき、積層方向から見て、端子電極部21bの背面露出部34が大径部31aの内側に張り出しているので、大径部31aに充填される充填材33は背面露出部34の上面に受け止められる。従って、充填材33と端子電極部21bとを確実性をもって接触させることができ、導通不良が防止できる。
【0064】
しかも、端子電極部21bは要素孔15aの周辺だけでなく要素孔15aの内部まで延びている。すなわち、端子電極部21bはスルーホール31の内側に大きく拡がっているので、充填材33と端子電極部21bとをより確実性をもって接触させることができる。
【0065】
充填材33の注入は手作業でもよいが、注入装置81を用いて自動的に行うのが好ましい。注入装置81は、所定位置にセットされたセル本体10のスルーホール31に出退可能に注射器を支持する。注射針80の引き抜き速度や充填材33の注入速度は任意に設定できる。従って、注入装置81を用いれば、安定的かつ高精度な充填が行える。
【0066】
充填材33が固化する前に、スルーホール31に線材70を挿入する(ステップS4)。線材70は撓むし、スルーホール31に大径部31aがあるので、仮にスルーホール31が多少歪んでいても容易に線材70を挿入できる。線材70の挿入によって充填材33がスルーホール31の周囲に押し拡げられるため、充填材33はスルーホール31に隈無く行き渡る。
【0067】
またこのとき、線材70の外周面と僅かな隙間を隔てて対向している要素孔15aの内側には、孔内露出部35が露出していて、線材70の挿入に伴い、その隙間に充填材33が入り込む。従って、充填材33と端子電極部21bとをよりいっそう確実性をもって接触させることができる。
【0068】
しかも、線材70と端子電極部21bとは、直接又は僅かな充填材33を介して電気的に接続される。通常、充填材33よりも線材70の方が電気伝導性に優れるため、この構造により、端子部30全体としての電気伝導性が向上する。充填材33が固化すると、線材70はセル本体10に強固に固定される。
【0069】
次に、スルーホール31から突出した線材70の端部に圧着端子36で電線50を接続する(ステップS5)。圧着端子36で線材どうしが直接接続されるので、簡単な作業で強固に接続することができる。
【0070】
後は、筒状カバー37等を用いて接続部分の被覆処理を行うことで(ステップS6)、
図6に示した放電セル2が得られる。
【0071】
なお、本発明にかかる放電セルは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0072】
例えば、比較例の放電セル101に、実施形態のスルーホール31の構造を適用してもよい。すなわち、各基板のうち、誘電板の要素孔を、他の基板の要素孔よりも小さくする。そうすれば、銀ペーストが薄膜電極層と接触し易くなるため、導通不良が改善できる。