特許第5952047号(P5952047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5952047水中油型乳化組成物及び水中油型乳化組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952047
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物及び水中油型乳化組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20160630BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160630BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20160630BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   A61K8/37
   A61K8/06
   A61K8/92
   A61K8/34
   A61K8/36
   A61K8/891
   A61K8/31
   A61K8/73
   A61Q17/04
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-67870(P2012-67870)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199443(P2013-199443A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真樹
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−095908(JP,A)
【文献】 特表2011−526272(JP,A)
【文献】 特表2004−519483(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/035915(WO,A1)
【文献】 特開2010−043027(JP,A)
【文献】 特開2010−222349(JP,A)
【文献】 特開2002−003338(JP,A)
【文献】 特開2004−051505(JP,A)
【文献】 特開平09−278644(JP,A)
【文献】 特開平07−284645(JP,A)
【文献】 特開平07−126121(JP,A)
【文献】 特開2002−104919(JP,A)
【文献】 特開2010−265189(JP,A)
【文献】 特開2011−136919(JP,A)
【文献】 特開平09−151112(JP,A)
【文献】 「Ganzpearl and Ultrasol series Ganz Chemical Co.,Ltd.」,DKSH社,2015年 8月 3日,[online],インターネット〈URL:https://www.in−cosmetics.com/__novadocuments/2370〉
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61K36/00−36/9068
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型の乳化組成物であって、
油溶性紫外線吸収剤と、
融点が30℃以上、45℃以下である極性油脂と、
25℃で固体である高級アルコール及び25℃で固体である高級脂肪酸の双方と、
揮発性オイルと、
疎水性粉体であるオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムとを含み、
水中油型乳化組成物100質量%中、前記油溶性紫外線吸収剤の含有量が1質量%以上、20質量%以下であり、
水中油型乳化組成物100質量%中、前記極性油脂の含有量が5質量%以上、15質量%以下であり、
水中油型乳化組成物100質量%中、前記25℃で固体である高級アルコール及び25℃で固体である高級脂肪酸の合計の含有量が4質量%以上、15質量%以下であり、
水中油型乳化組成物100質量%中、前記揮発性オイルの含有量が1質量%以上、15質量%以下である、水中油型乳化組成物。
【請求項2】
前記揮発性オイルが、環状シリコーン、軽質流動イソパラフィン、及び25℃での粘度が2cs以下である鎖状メチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物の製造方法であって、
融点が30℃以上、45℃以下である極性油脂と、25℃で固体である高級アルコールと、25℃で固体である高級脂肪酸と、揮発性オイルとを加温して溶解させた後、乳化し、次に50℃以下まで冷却した後、油溶性紫外線吸収剤と、疎水性粉体であるオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムとを添加し、混合することで、油溶性紫外線吸収剤と、融点が30℃以上、45℃以下である極性油脂と、25℃で固体である高級アルコール及び25℃で固体である高級脂肪酸の双方と、揮発性オイルと、疎水性粉体であるオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムとを含み、水中油型乳化組成物100質量%中、前記油溶性紫外線吸収剤の含有量が1質量%以上、20質量%以下であり、水中油型乳化組成物100質量%中、前記極性油脂の含有量が5質量%以上、15質量%以下であり、水中油型乳化組成物100質量%中、前記25℃で固体である高級アルコール及び25℃で固体である高級脂肪酸の合計の含有量が4質量%以上、15質量%以下であり、水中油型乳化組成物100質量%中、前記揮発性オイルの含有量が1質量%以上、15質量%以下である水中油型乳化組成物を得る、水中油型乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。本発明は、より詳細には、紫外線防御効果を有し、皮膚や頭髪などに塗布される化粧料として好適に用いられる水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線防御効果を有する日焼け止め化粧料が、夏場などに広く用いられている。また、近年、紫外線の皮膚に対する悪影響への意識の高まりや美白ニーズの高まりによって、夏場だけでなく、一年中日焼け止め化粧料が用いられている。
【0003】
また、特に冬場には乾燥するため、高いうるおい感と高い保湿効果とを兼ね備えたスキンケア用化粧料が、乾燥対策として用いられている。日焼け止め対策及び乾燥対策が特に求められる部位としては、日中太陽に晒されることがある顔、腕、手及び首等の部位が挙げられる。
【0004】
上記日焼け止め化粧料の一例として、下記の特許文献1には、35〜75質量%の油相を含む油中水型乳化日焼け止め化粧料が開示されている。この日焼け止め化粧料では、上記油相が、油相全量に対して10〜50質量%の紫外線吸収剤及び20〜60質量%の揮発性油分を含む。さらに、この日焼け止め化粧料は、デキストリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを化粧料全量に対して0.5〜2質量%で含む。
【0005】
下記の特許文献2には、(a)水溶性高分子と、(b)HLB8以下の非イオン性界面活性剤と、(c)アニオン性界面活性剤と、(d)油溶性紫外線吸収剤と、(e)多価アルコールとを含む水中油型日焼け止め化粧料が開示されている。この水中油型日焼け止め化粧料の25℃における見かけ粘度は、せん断速度1.0s−1において10000mPa・s以下である。また、上記水中油型日焼け止め化粧料では、必要に応じて、(f)水溶性紫外線吸収剤などが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−126832号公報
【特許文献2】特開2011−195478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の化粧料は、水中油型乳化化粧料ではなく、油中水型の乳化化粧料である。このような油中水型の化粧料を手にとり肌などの塗布部に塗布した場合には、塗布後にうるおい感は実感できるものの、塗布後にべたつき感や付着感があるという問題がある。また、使用後に手に化粧料が残りやすい。このため、塗布後の手でパソコンや携帯電話などの部材に触れたときに、該部材に化粧料が付着するという問題がある。また、油中水型の乳化化粧料は、安定性に劣るという問題もある。
【0008】
特許文献2に記載の化粧料は、水溶性高分子、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、油溶性紫外線吸収剤及び多価アルコールを含有する水中油型の化粧料である。特許文献2では、低粘度でありながら、経時での分離がなく安定性に優れ、肌なじみがよく、さっぱりとしたみずみずしい感触を有する化粧料であることが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の化粧料では、該化粧料はさっぱり感を有するが、塗布後の化
粧料が手に残り、パソコンや携帯電話などへ化粧料が付着するといった問題がある。
【0009】
また、特許文献2では、(f)水溶性紫外線吸収剤を用いてもよいことが記載されている。しかし、水溶性紫外線吸収剤は、耐水性が低く、水中油型化粧料中で劣化しやすいという問題がある。
【0010】
一方で、油溶性紫外線吸収剤が知られている。しかし、油溶性紫外線吸収剤の極性は比較的高い。このため、油溶性紫外線吸収剤を用いる場合に、さっぱりとした使用感を得ることを目的として水中油型乳化組成物を得ると、該組成物の塗布後にべたつきが生じやすいという問題がある。さらに、油溶性紫外線吸収剤を用いた水中油型乳化組成物では、安定性が低いという問題もある。
【0011】
本発明の目的は、紫外線防御効果を有し、塗布時の馴染みに優れ、塗布後のべたつきが少なく、かつ塗布後に組成物が接触物に付着し難く、更に油溶性紫外線吸収剤を含むにもかかわらず安定性に優れている水中油型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、水中油型の乳化組成物であって、油溶性紫外線吸収剤と、融点が30℃以上、45℃以下である極性油脂と、25℃で固体である高級アルコール及び25℃で固体である高級脂肪酸の内の少なくとも1種の成分とを含む、水中油型乳化組成物が提供される。
【0013】
本発明に係る水中油型乳化組成物のある特定の局面では、該水中油型乳化組成物は、揮発性オイルを含む。
【0014】
本発明に係る水中油型乳化組成物の他の特定の局面では、上記揮発性オイルは、環状シリコーン、軽質流動イソパラフィン、及び25℃での粘度が2cs以下である鎖状メチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0015】
本発明に係る水中油型乳化組成物の別の特定の局面では、該水中油型乳化組成物は、疎水性粉体を含む。
【0016】
本発明に係る水中油型乳化組成物の更に別の特定の局面では、上記疎水性粉体は、トウモロコシデンプン化合物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、油溶性紫外線吸収剤を含むので、紫外線防御効果を有する。さらに、本発明に係る水中油型乳化組成物は、油溶性紫外線吸収剤に加えて、融点が30℃以上、45℃以下である極性油脂と、25℃で固体である高級アルコール及び25℃で固体である高級脂肪酸の内の少なくとも1種の成分とを含むので、塗布時の馴染みを良好にし、更に塗布後のべたつきを少なくすることができる。さらに、塗布後に組成物が接触物に付着するのを抑制することができる。さらに、本発明に係る水中油型乳化組成物では、油溶性紫外線吸収剤を用いているにもかかわらず、安定性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、水中油型の乳化組成物である。本発明に係る水中油型乳化組成物は、油中水型の乳化組成物ではない。本発明に係る水中油型乳化組成物は
、(A)油溶性紫外線吸収剤と、(B)融点が30℃以上、45℃以下である極性油脂と、(C)25℃で固体である高級アルコール及び25℃で固体である高級脂肪酸の内の少なくとも1種の成分とを含む。
【0020】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、(A)油溶性紫外線吸収剤を含むため、紫外線防御効果を有する。本発明に係る水中油型乳化組成物は、例えば、日焼け止め効果を有する。
【0021】
さらに、本発明に係る水中油型乳化組成物における上記組成の採用によって、塗布時の馴染みを良好にし、更に塗布後のべたつきを少なくすることができる。例えば、水中油型乳化組成物を手にとって塗布部に塗布したときに、又は水中油型乳化組成物を塗布部に直接塗布したときに、馴染みを良好にすることができる。また、塗布後のべたつきを少なくすることで、使用感を高めることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る水中油型乳化組成物における上記組成の採用によって、塗布後に組成物が接触物に付着するのを抑制することができる。例えば、水中油型乳化組成物を手にとって塗布した後、塗布後の手でパソコンや携帯電話などの部材に触れたときに、該部材に組成物が付着するのを抑制することができる。特に、近年、タッチパネルが普及している。塗布後の手で、タッチパネルの操作画面を操作したとしても、操作画面に組成物を付着し難くすることができる。
【0023】
さらに、本発明に係る水中油型乳化組成物における上記組成の採用によって、油溶性紫外線吸収剤を用いているにもかかわらず、安定性を高めることができる。
【0024】
また、本発明に係る水中油型乳化組成物が、水中油型の乳化組成物であることも、上述した効果を得るために大きな役割を果たす。また、本発明に係る水中油型乳化組成物は、水中油型の乳化組成物であることから、保湿力にも優れている。
【0025】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、(D)揮発性オイルを含むことが好ましい。本発明に係る水中油型乳化組成物は、(E)疎水性粉体を含むことが好ましい。
【0026】
以下、本発明に係る水中油型乳化組成物に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0027】
((A)油溶性紫外線吸収剤)
(A)油溶性紫外線吸収剤の使用によって、上記水中油型乳化組成物が紫外線防御効果を有し、日焼け止め効果を有するようになる。(A)油溶性紫外線吸収剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
(A)油溶性紫外線吸収剤としては、パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸−エチルヘキシル及びサリチル酸エチルヘキシル等が挙げられる。紫外線防御効果及び組成物の安定性をより一層高める観点からは、(A)油溶性紫外線吸収剤は、パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸−エチルヘキシル及びサリチル酸エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシル及びパラジメチルアミノ安息香酸−エチルヘキシルの内の少なくとも1種であることがより好ましく、パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシルであることが更に好ましい。(A)油溶性紫外線吸収剤は、パラジメチルアミノ安息香酸−エチルヘキシルであってもよい。上記水中油型乳化組成物は、パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸−エチルヘキシル及びサリチル酸エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシル及びパラジメチルアミノ安息
香酸−エチルヘキシルの内の少なくとも1種を含むことがより好ましく、パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシルを含むことが更に好ましい。
【0029】
紫外線防御効果をより一層高める観点からは、組成物100質量%中、(A)油溶性紫外線吸収剤の含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。組成物の安定性をより一層高める観点からは、組成物100質量%中、(A)油溶性紫外線吸収剤の含有量は好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。組成物100質量%中、(A)油溶性紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
【0030】
((B)融点が30℃以上、45℃以下である極性油脂)
(B)極性油脂の融点は30℃以上、45℃以下である。(B)極性油脂は、室温(25℃)で固形である。(B)極性油脂は極性官能基を有することが好ましい。(B)極性油脂は極性官能基を複数有することが好ましい。(B)極性油脂は、高極性油脂であることが好ましい。(B)極性油脂は、炭素数16〜22の長鎖アルキル基を有していなくてもよい。(B)極性油脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記極性官能基としては、水酸基、カルボキシル基及びエステル基等が挙げられる。組成物の安定性をより一層高める観点からは、上記極性官能基は、水酸基又はカルボキシル基であることが好ましい。上記極性官能基は、水酸基であることが好ましく、カルボキシル基であることも好ましい。組成物の安定性を更に一層高める観点からは、上記極性官能基は、カルボキシル基であることが特に好ましい。
【0032】
(B)極性油脂として、植物由来の極性油脂、動物由来の極性油脂及び鉱物由来の極性油脂の内のいずれも使用可能である。(B)極性油脂としては、例えば、水添パーム油、水添ホホバ油、シア脂、(アジピン酸・2−エチルヘキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、オレイン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ステアリン酸ジペンタエリスリチル、ロジン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等が挙げられる。組成物の安定性をより一層高める観点からは、水添パーム油が好ましい。
【0033】
組成物の安定性をより一層高める観点からは、組成物100質量%中、(B)極性油脂の含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。組成物の接触物への付着をより一層抑制する観点からは、組成物100質量%中、(B)極性油脂の含有量は好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。組成物100質量%中、(B)極性油脂の含有量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である。
【0034】
((C)25℃で固体である高級アルコール及び25℃で固体である高級脂肪酸の内の少なくとも1種の成分)
(C)成分は、高級アルコール及び高級脂肪酸の内の少なくとも1種である。(C)成分は、高級アルコールであってもよく、高級脂肪酸であってもよく、高級アルコールと高級脂肪酸との双方であってもよい。高級アルコールと高級脂肪酸との双方を用いることが好ましい。上記高級アルコールは25℃で固体である。上記高級脂肪酸は25℃で固体である。上記水中油型乳化組成物は、高級アルコールを含むことが好ましく、高級脂肪酸を含むことが好ましい。上記水中油型乳化組成物は、高級アルコールと高級脂肪酸との双方を含むことが好ましい。(C)成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用さ
れてもよい。
【0035】
(C)成分の融点は、45℃を超えることが好ましい。(C)成分は極性官能基を有していなくてもよく、カルボキシル基を有していなくてもよい。(C)成分は極性官能基を複数有さないことが好ましい。(C)成分は、長鎖アルキル基を有することが好ましい。該長鎖アルキル基の炭素数は好ましくは16以上、好ましくは22以下である。
【0036】
上記高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、アラキルアルコール、セトステアリルアルコール及び硬化ナタネ油アルコール等が挙げられる。上記高級アルコールは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記高級脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、パーム脂肪酸及びヤシ油脂肪酸等が挙げられる。上記高級脂肪酸は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
塗布時の馴染みをより一層良好にする観点からは、組成物100質量%中、(C)成分の含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。塗布時のべたつきをより一層抑え、使用感をより一層高める観点からは、組成物100質量%中、(C)成分の含有量は好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。組成物100質量%中、(C)成分の含有量は、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0039】
また、組成物100質量%中、上記高級アルコールの含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。組成物100質量%中、上記高級脂肪酸の含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0040】
上記高級アルコールと上記高級脂肪酸とを併用する場合には、上記水中油型乳化組成物は、上記高級アルコールと上記高級脂肪酸とを質量比(高級アルコール:高級脂肪酸)で、1:9〜9:1で含むことが好ましく、1:7〜7:1で含むことがより好ましい。
【0041】
((D)揮発性オイル)
本発明に係る水中油型乳化組成物は、(D)揮発性オイルを含むことが好ましい。(D)揮発性オイルの使用により、塗布時の馴染みをより一層高め、塗布後のべたつきをより一層抑えることができる。(D)揮発性オイルは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
(D)揮発性オイルは、揮発性を有する。(D)揮発性オイルとしては、具体的には、環状シリコーン油、軽質流動イソパラフィン、鎖状メチルポリシロキサン及びイソドデカン等が挙げられる。
【0043】
上記環状シリコーン油としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサメチルポリシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0044】
上記鎖状メチルポリシロキサンは、25℃での粘度が2cs以下の鎖状メチルポリシロキサンであることが好ましい。上記「cs」は、センチストークス(Centi Storkes)を意味する。上記鎖状メチルポリシロキサンは、直鎖状メチルポリシロキサン
であることが好ましい。
【0045】
塗布時の馴染みをより一層高め、塗布後のべたつきをより一層抑える観点からは、(D)揮発性オイルは、環状シリコーン、軽質流動イソパラフィン、及び25℃での粘度が2cs以下である鎖状メチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。(D)揮発性オイルは、環状シリコーンであることが好ましく、軽質流動イソパラフィンであることが好ましく、25℃での粘度が2cs以下である鎖状メチルポリシロキサンであることが好ましい。
【0046】
塗布時の馴染みを更に一層高め、塗布後のべたつきを更に一層抑える観点からは、(D)揮発性オイルは、環状シリコーン油及び軽質流動イソパラフィンの内の少なくとも1種であることが好ましい。上記水中油型乳化組成物は、環状シリコーン油及び軽質流動イソパラフィンの内の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0047】
塗布時の馴染みをより一層高め、塗布後のべたつきをより一層抑える観点からは、組成物100質量%中、(D)揮発性オイルの含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。組成物100質量%中、(D)揮発性オイルの含有量は好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。組成物100質量%中、(D)揮発性オイルの含有量は好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である。
【0048】
((E)疎水性粉体)
本発明に係る水中油型乳化組成物は、(E)疎水性粉体を含むことが好ましい。(E)疎水性粉体の使用によって、塗布時ののびをより一層良好にし、塗布後に組成物の接触物への付着をより一層抑制することができる。(E)疎水性粉体は疎水性を有し、粉末状である。(E)疎水性粉体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
(E)疎水性粉体としては特に限定されないが、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム及びトウモロコシデンプンが挙げられる。これらの疎水性粉体は、引っ掛かりの無い滑らかな使用感を付与する。塗布時ののびをより一層良好にし、塗布後に組成物の接触物への付着をより一層抑制する観点からは、(E)疎水性粉体は、トウモロコシデンプン化合物であることが好ましい。上記トウモロコシデンプン化合物は、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム、及びトウモロコシデンプンの内の少なくとも1種であることが好ましい。(E)疎水性粉体は、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムであってもよく、トウモロコシデンプンであってもよく、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムとトウモロコシデンプンとの双方であってもよい。上記水中油型乳化組成物は、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムを含むことが好ましく、トウモロコシデンプンを含むことが好ましい。
【0050】
塗布時ののびを更に一層良好にし、塗布後に組成物の接触物への付着を更に一層抑制する観点からは、(E)疎水性粉体は、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムであることが好ましく、上記水中油型乳化組成物は、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムを含むことが好ましい。
【0051】
(E)疎水性粉体の市販品としては、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムであるDRY−FLO PC(National starch and Chemical社製)やオクティエ(日澱化学社製)、並びにトウモロコシデンプンであるトウモロコシデンプン日局(日澱化学社製)等が挙げられる。
【0052】
塗布後に組成物の接触物への付着をより一層抑制する観点からは、組成物100質量%中、(E)疎水性粉体の含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、塗布時に肌に馴染ませる際に発生するカス等をより一層抑制する観点から、組成物100質量%中、(E)疎水性粉体の含有量は好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。組成物100質量%中、(E)疎水性粉体の含有量は、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0053】
(他の成分)
本発明に係る水中油型乳化組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。該他の成分として、通常化粧品に用いられる成分などを用いることができる。上記他の成分として、例えば、非揮発性オイル、精製水、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、抗炎症剤、植物エキス及び香料等などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0054】
上記非揮発性オイルとしては、例えば、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、植物油及び動物油等が挙げられる。上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤等が挙げられる。上記保湿剤としては、グリセリン及びソルビトール等が挙げられる。上記増粘剤としては、水溶性高分子等が挙げられる。
【0055】
(水中油型乳化組成物の他の詳細)
本発明に係る水中油型乳化組成物は、公知の方法を用いて調製することが可能である。本発明に係る水中油型乳化組成物は特に限定されず、例えば、以下の調製方法により得ることが可能である。(B)及び(C)成分(必要に応じて(D)成分)を含む油性成分と保湿剤などの水性成分とをそれぞれ調製して、70℃〜80℃に加温して溶解させ後、ディスパーやホモジナイザー等を用いて混合し、乳化する。乳化後に、50℃以下まで冷却した後、(A)成分(必要に応じて(E)成分)を添加し、冷却し、混合する。
【0056】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、化粧料であることが好ましく、皮膚用又は頭髪用化粧料であることが好ましい。本発明に係る水中油型乳化組成物は、皮膚用化粧料であってもよく、頭髪用化粧料であってもよい。本発明に係る水中油型乳化組成物は、皮膚用化粧料であることが好ましい。本発明に係る水中油型乳化組成物は、日焼け止め化粧料であることが好ましい。本発明に係る水中油型乳化組成物は、顔、首、腕、脚及び手等いずれの部位にも適用可能である。本発明に係る水中油型乳化組成物は、スキンケア用組成物であることが好ましい。なお、スキンケアには、ボディケアが含まれる。本発明に係る水中油型乳化組成物は、顔に用いられる顔用組成物であることが好ましく、ボディに用いられるボディ用組成物であることが好ましい。
【0057】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、液状であってもよく、クリーム状であってもよい。本発明に係る水中油型乳化組成物は、ヘアクリーム、フェイスクリーム又はハンドクリームであることが好ましく、フェイスクリーム又はハンドクリームであることがより好ましく、ハンドクリームであることが更に好ましい。本発明に係る水中油型乳化組成物は、フェイスクリームであってもよい。
【0058】
本発明に係る水中油型乳化組成物の25℃での稠度は、好ましくは10gf以上、好ましくは40gf以下である。
【0059】
上記稠度は、レオメーター(サン科学社製「CR−500DX」)を用いて、測定条件;25℃、アダプター:φ17mm平型、ストローク20mmの条件下で測定することができる。
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例にのみ限定されない。なお、配合量の単位は、特記しない限り「質量%」である。
【0061】
実施例、参考例及び比較例では、下記の成分を用いた。
【0062】
シクロペンタシロキサン(D5)(環状シリコーン油、東レ・ダウコーニング社製「DOW CORNING TORAY SH245FLUID」)
シクロテトラシロキサン(D4)(環状シリコーン油、東レ・ダウコーニング社製「DOW CORNING TORAY SH244FLUID」)
シクロヘキサシロキサン(D6)(環状シリコーン油、東レ・ダウコーニング社製「DOW CORNING TORAY SH246FLUID」)
メチルポリシロキサン(1cs)(鎖状メチルポリシロキサン、25℃での粘度1cs、東レ・ダウコーニング社製「DOW CORNING TORAY SH200C FLUID 1CS」)
【0063】
(実施例1、参考例2,3、実施例5,6、参考例7〜15及び比較例1〜5)
下記の表1,2に示す各成分を下記の表1,2に示す含有量で配合し、混合して、水中油型乳化組成物(水中油型乳化化粧料)を得た。なお、実施例、参考例及び比較例で得られた水中油型乳化組成物の25℃での稠度はいずれも、10gf以上、40gf以下であった。
【0064】
(試験例1:馴染みの速さ評価)
専門パネル20名が、得られた組成物を手全体に指先まで塗布して、使用試験を行った。塗布時の肌への馴染みの速さについて、官能評価を行い、以下の基準で評価した。
【0065】
<馴染みの速さの評価基準>
○○:20名中16名以上が、肌馴染みが速いと回答
○:20名中11〜15名が、肌馴染みが速いと回答
△:20名中6〜10名以上が、肌馴染みが速いと回答
×:20名中5名以下が、肌馴染みが速いと回答
【0066】
(試験例2:べたつきのなさの評価)
専門パネル20名が、得られた組成物を手全体に指先まで塗布して、使用試験を行った。塗布後の乾き際のべたつきについて、官能評価を行い、以下の基準で評価した。
【0067】
<べたつきのなさの評価基準>
○○:20名中16名以上がべたつきがないと回答
○:20名中11〜15名がべたつきがないと回答
△:20名中6〜10名以上がべたつきがないと回答
×:20名中5名以下がべたつきがないと回答
【0068】
(試験例3:塗布後に手に残った組成物の付着のしにくさの評価)
専門パネル20名が、得られた組成物を手で腕全体に塗布して使用試験を行った。塗布後の指で携帯電話の液晶画面を触れた。組成物の付着のしにくさについて、官能評価を行い、以下の基準で評価した。
【0069】
<組成物の付着のしにくさの評価基準>
○○:20名中16名以上が携帯電話の液晶画面に組成物が付着しにくいと回答
○:20名中11〜15名が携帯電話の液晶画面に組成物が付着しにくいと回答
△:20名中6〜10名以上が携帯電話の液晶画面に組成物が付着しにくいと回答
×:20名中5名以下が携帯電話の液晶画面に組成物が付着しにくいと回答
【0070】
(試験例4:安定性の評価)
得られた組成物を容器に充填し、40℃で1ヶ月保管した。保管後の組成物の状態を目視で観察した。組成物の安定性を以下の基準で評価した。
【0071】
<安定性の評価基準>
○○:1ヵ月保管後の組成物と保管前の組成物とを隣接比較したときに差異がない
○:1ヵ月保管後の組成物が、保管前の組成物と離間比較したときに、差異が認められない程度に変化している
△:1ヵ月保管後の組成物が、保管前の組成物と離間比較したときに、差異が認められる程度に変化している
×:1ヵ月保管後の組成物において、明らかに分離しているか、塗布困難な程度に粘度が上昇しているか、又は粒の発生が認められる
【0072】
組成及び評価結果を下記の表1,2に示す。なお、中和剤は、組成物のpHが5.5〜7となる量で用いた。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
以下、水中油型乳化組成物の処方例を示す。なお、配合量の単位は「質量%」である。また、下記の処方例では、中和剤は、組成物のpHが5.5〜7となる量で用いた。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】