(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下地コンクリート上に,水系エポキシ樹脂と水硬性セメントから成る水系エポキシ樹脂セメント組成物を塗布して硬化させた層と,水硬性セメントと骨材と水系エポキシ樹脂を含む水系エポキシ樹脂モルタル組成物であって,水硬性セメントと水の重量比が0.3以上0.4以下,エポキシ樹脂に該エポキシ樹脂と反応する硬化剤を加えたものを樹脂とした場合の該樹脂の樹脂固形分重量が,水を含んだ全配合物の重量に対して4%以上10%以下,硬化物の総細孔量が0.05cc/g以上0.2cc/g以下,T.I値が1.0〜1.5の塗材組成物を0.8〜2.0kg/m2塗付して硬化させた層と,その上に水硬性セメントと水系ウレタン樹脂とから成る水系ウレタン樹脂セメント組成物を0.08〜0.15kg/m2塗付して硬化させた層と,さらにその上に形成された無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ層と,から成ることを特徴とする床コンクリート仕上げ構造。
下地コンクリート上に,水系エポキシ樹脂と水硬性セメントから成る水系エポキシ樹脂セメント組成物を塗布して硬化させ,水硬性セメントと骨材と水系エポキシ樹脂を含む水系エポキシ樹脂モルタル組成物であって,水硬性セメントと水の重量比が0.3以上0.4以下,エポキシ樹脂に該エポキシ樹脂と反応する硬化剤を加えたものを樹脂とした場合の該樹脂の樹脂固形分重量が,水を含んだ全配合物の重量に対して4%以上10%以下,硬化物の総細孔量が0.05cc/g以上0.2cc/g以下,T.I値が1.0〜1.5の塗材組成物を0.8〜2.0kg/m2塗付して硬化させ,その上に水硬性セメントと水系ウレタン樹脂とから成る水系ウレタン樹脂セメント組成物を0.08〜0.15kg/m2塗付して硬化させ,さらにその上に無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材層を形成することを特徴とする床コンクリート仕上げ方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は,水硬性セメントと骨材と水系エポキシ樹脂を含む水系エポキシ樹脂モルタル組成物であって,水硬性セメントと水の重量比が0.3以上0.4以下,エポキシ樹脂に該エポキシ樹脂と反応する硬化剤を加えたものを樹脂とした場合の該樹脂の樹脂固形分重量が,水を含んだ全配合物の重量に対して4%以上10%以下,硬化物の総細孔量が0.05cc/g以上0.2cc/g以下,T.I値が1.0〜1.5の塗材組成物を床コンクリート表面に塗布した場合であって,硬化した塗材組成物の表面にエポキシ樹脂の硬化剤の主たる成分であるアミンの炭酸塩が多く存在する場合であっても,この上に塗布する無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材の付着性が良好な床コンクリート仕上げ構造及び床コンクリート仕上げ方法を提供するとともに,塗材組成物中の水分が下地に吸い込まれて,硬化後の塗材組成物に微細な空隙が生じて,結果としてこの上に塗付される無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材の付着性が低下する,ということがなく,かつ万が一にも塗材組成物中に微細な空隙が生じても,この上に塗付される無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材の付着性が低下することがない床コンクリート仕上げ構造及び床コンクリート仕上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は,下地コンクリート上に,水系エポキシ樹脂と水硬性セメントから成る水系エポキシ樹脂セメント組成物を塗布して硬化させた層と,水硬性セメントと骨材と水系エポキシ樹脂を含む水系エポキシ樹脂モルタル組成物であって,水硬性セメントと水の重量比が0.3以上0.4以下,エポキシ樹脂に該エポキシ樹脂と反応する硬化剤を加えたものを樹脂とした場合の該樹脂の樹脂固形分重量が,水を含んだ全配合物の重量に対して4%以上10%以下,硬化物の総細孔量が0.05cc/g以上0.2cc/g以下,T.I値が1.0〜1.5の塗材組成物を0.8〜2.0kg/m
2塗付して硬化させた層と,その上に水硬性セメントと水系ウレタン樹脂とから成る水系ウレタン樹脂セメント組成物を0.08〜0.
15kg/m
2塗付して硬化させた層と,さらにその上に形成された無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ層と,から成ることを特徴とする床コンクリート仕上げ構造である。
【0008】
請求項2記載の発明は,下地コンクリート上に,水系エポキシ樹脂と水硬性セメントから成る水系エポキシ樹脂セメント組成物を塗布して硬化させ,水硬性セメントと骨材と水系エポキシ樹脂を含む水系エポキシ樹脂モルタル組成物であって,水硬性セメントと水の重量比が0.3以上0.4以下,エポキシ樹脂に該エポキシ樹脂と反応する硬化剤を加えたものを樹脂とした場合の該樹脂の樹脂固形分重量が,水を含んだ全配合物の重量に対して4%以上10%以下,硬化物の総細孔量が0.05cc/g以上0.2cc/g以下,T.I値が1.0〜1.5の塗材組成物を0.8〜2.0kg/m
2塗付して硬化させ,その上に水硬性セメントと水系ウレタン樹脂とから成る水系ウレタン樹脂セメント組成物を0.08〜0.
15kg/m
2塗付して硬化させ,さらにその上に無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材層を形成することを特徴とする床コンクリート仕上げ方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る床コンクリート仕上げ構造及び床コンクリート仕上げ方法は,水硬性セメントと骨材と水系エポキシ樹脂を含む水系エポキシ樹脂モルタル組成物であって,水硬性セメントと水の重量比が0.3以上0.4以下,エポキシ樹脂に該エポキシ樹脂と反応する硬化剤を加えたものを樹脂とした場合の該樹脂の樹脂固形分重量が,水を含んだ全配合物の重量に対して4%以上10%以下,硬化物の総細孔量が0.05cc/g以上0.2cc/g以下,T.I値が1.0〜1.5の塗材組成物において,例えば低温下で硬化した該塗材組成物の上に無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材を塗布した場合であっても,該無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材の付着性が良好であるという効果がある。
【0010】
また本発明に係る床コンクリート仕上げ構造及び床コンクリート仕上げ方法は,水系エポキシ樹脂セメント組成物層と水系エポキシ樹脂モルタル組成物層と水系ウレタン樹脂セメント組成物層と無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材層とから成るため施工工程中で使用する材料に溶剤を含まず,このため施工者である職人の健康を害することが少ないという効果があると共に,溶剤が与えるような環境への負荷が発生しないという効果がある。
【0011】
また本発明に係る床コンクリート仕上げ構造及び床コンクリート仕上げ方法は,下地コンクリートから上昇してくる水分の無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材裏面への透過を防ぎ,該仕上げ材に剥がれ,膨れ等の不具合を生じさせない効果があり,塗付する塗材組成物はT.I値が1.0〜1.5と低くセルフレベリング性を有するという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の床コンクリート仕上げ構造は,下地コンクリート上に,まず水系エポキシ樹脂と水硬性セメントから成る水系エポキシ樹脂セメント組成物を塗布して硬化させる。該水系エポキシ樹脂セメント組成物は,下地コンクリート表面の空隙を充填すると共に,次に塗付する水系エポキシ樹脂モルタル組成物である塗材組成物を塗布した際,該塗材組成物中の水分が下地コンクリートに吸水され,その影響で塗材組成物中に微細な空隙が生じ,さらに該塗材組成物がその状態で硬化して硬化後の微細な空隙が下地から供給される水分の通り道となり,結果として塗材組成物の上層に塗付される無溶剤系ウレタン樹脂仕上げが,微細な空隙を通過してきた水分によって付着力が不十分となることを効果的に防止する。
【0014】
万が一塗材組成物中に硬化後の微細な空隙が存在していても本発明においては,塗材組成物の上層に水硬性セメントと水系ウレタン樹脂とから成る水系ウレタン樹脂セメント組成物を塗布して硬化させるため,塗材組成物中の微細な空隙を通過する水分は,該水系ウレタン樹脂セメント組成物中の未水和のセメントに吸着されて,この層で阻止される。
【0015】
このように,本発明は,下地コンクリートからの水分の無溶剤系ウレタン樹脂仕上層裏面への移動を,水系エポキシ樹脂セメント組成物層,塗材組成物層,水系ウレタン樹脂セメント組成物層の3層にて,阻止していることに大きな特徴があり,この構成は従来にない画期的なものである。
【0016】
水系エポキシ樹脂と水硬性セメントからなる水系エポキシ樹脂セメント組成物は,上記のように下地の目止めを行なうために塗付され,特許第4794007号公報記載のエポキシ樹脂と水系硬化剤から成る水系エポキシ樹脂に,水硬性セメントを加えて攪拌混合し均一にしたものである。水硬性セメントは該水系エポキシ樹脂100重量部に対して50重量部〜200重量部配合することが好ましく,75重量部〜150重量部がより好ましい。50重量部未満では目止めの硬化が不十分であり,200重量部超では作業性が不良となる。75重量部未満では目止めの硬化が不十分になる傾向が有り,150重量部超では作業性が不良となる傾向にある。施工にあたっては金鏝等により下地に擦り込むようにシゴキ塗りし,塗付量は0.05〜0.3kg/m
2が好ましい。0.05kg/m
2未満では下地の目止めが不十分であり,0.3kg/m
2超ではシゴキ塗りすることが出来ない。
【0017】
水硬性セメントは,市販の普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、アルミン酸石灰質セメント、ケイ酸アルミン酸石灰質セメント、リン酸セメント等を使用することが出来る。
【0018】
硬化した水系エポキシ樹脂セメント組成物の上には,水硬性セメントと骨材と水系エポキシ樹脂を含む水系エポキシ樹脂モルタル組成物であって,水硬性セメントと水の重量比が0.3以上0.4以下,エポキシ樹脂に該エポキシ樹脂と反応する硬化剤を加えたものを樹脂とした場合の該樹脂の樹脂固形分重量が,水を含んだ全配合物の重量に対して4%以上10%以下,硬化物の総細孔量が0.05cc/g以上0.2cc/g以下,T.I値が1.0〜1.5の塗材組成物を0.8〜2.0kg/m
2塗付して硬化させた層を形成する。上記水系エポキシ樹脂および水系エポキシ樹脂モルタル組成物は,特許第4794007号公報記載の水系エポキシ樹脂または水性エポキシ樹脂モルタル組成物である。
【0019】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物である塗材組成物に使用する水系エポキシ樹脂は,水系エポキシ樹脂セメント組成物と同様に特許第4794007号公報に記載の,エポキシ樹脂と,これと混合して水分を良好に分散させることができる水系硬化剤との混合物をいい,エポキシ樹脂及び水系硬化剤は該公報に示されているものを使用する。エポキシ樹脂の市販品としては該公報に明示されているようにジョリエースJEX210A(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂,エポキシ当量180,固形分100%,粘度0.7Pa・s/25℃)が挙げられ,水系硬化剤で自己乳化型硬化剤の市販品としては,該公報に明示されているようにジョリエースJEX210B(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂硬化剤,商品名,活性水素当量750,固形分18%水溶液,粘度7mPa・s/25℃)が挙げられる。
【0020】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物における水硬性セメントと水の重量比とは,水/水硬性セメントの重量比であり,一般的にW/Cと呼称されているものを言う。総細孔量とは塗材組成物中の数nmから数十μm程度の非常に小さな穴の総量をいい、水銀圧入法により水銀の注入圧と注入量から細孔分布を求め、各細孔半径ごとの体積(細孔量)を合算したものである。T.I値はJIS A6024のチクソトロピックインデックスの試験方法に準じ、BH型回転粘度計の2rpmの粘度を20rpmの粘度で除したときの値である。T.I値が1.0未満ではセメントを含む骨材が急速に沈降し、T.I値が1.5超となると、セルフレベリング性が低下し、鏝で塗付した後に鏝波が残る。なお,塗材組成物の粘度であるが、BH型粘度計で4号ローター20rpm時の粘度が0.3Pa・s以上8Pa・s以下が施工性の点から望ましく,該粘度が0.3Pa・s未満、及び8Pa・s超では鏝さばきが不良となる。
【0021】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物である塗材組成物は,特許第4794007号公報に明示されているように,硬化後の細孔組織が緻密であり,そのJISA6909 透水試験B法の透水量も0.2ml以下であるため,下地コンクリートに水分が多く含まれていても該水分は塗材組成物によって閉じ込められ,また水硬性セメントとエポキシ樹脂を含むため,水で湿潤した下地コンクリートと極めて付着性が良好である。
【0022】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物である塗材組成物に使用する水硬性セメントは,水系エポキシ樹脂セメント組成物と同様に,市販の普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、アルミン酸石灰質セメント、ケイ酸アルミン酸石灰質セメント、リン酸セメント等を使用することが出来る。特に塗材組成物においては,白セメント即ち白色ポルトランドセメントが,流動性が良い点で好ましい。
【0023】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物である塗材組成物に使用する骨材は,通常水硬性材料と混合して使用できるものであれば良いが,セルフレベリング性を持たせるにはJISG5901の48号〜150号のけい砂であることが好ましく,前記水硬性セメントと水の重量比,及び全固形分重量に対する樹脂固形分重量にて配合成分と配合量が確定するので,実際には残る成分となる。骨材は粒径等が同じであれば,等しい効果がえられるものの,コスト,入手性から,けい砂が最適となる。JISG5901の150号より細かいと粘度が高くなり,セルフレベリング性と鏝作業性が低下し,48号より大きいと強度,収縮による割れ,骨材の凹凸による表面仕上がり性が劣る結果となる。市販品としては東北けい砂6,7号(北日本産業(株),商品名)等がある。
【0024】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物である塗材組成物にはその他の材料としては,AE減水剤を配合することができ,AE減水剤は特許第4794007号公報段落0045に記載されているものを使用することができる。
【0025】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物である塗材組成物の配合物の混合形態としては,エポキシ樹脂,水系硬化剤,水,水硬性成分,骨材が主たる配合物であるが,2液,1粉体とするのが使用に際して好ましい。すなわち,水系硬化剤と水,エポキシ樹脂,骨材と水硬性成分とするのが,混合・分散不十分,特性の失活,計量ミス・誤差を防ぐには好ましいが,別個に配合しても構わない。
【0026】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物は,水硬性セメントと水の重量比が0.3以上0.4以下で、かつ樹脂固形分重量が全固形分重量に対して4%以上10%以下であることで、硬化物の総細孔量は0.05cc/g以上0.2cc/g以下となり、下地コンクリートとの付着性が良好であると共に,重層される,水硬性セメントと水系ウレタン樹脂とから成る水系ウレタン樹脂セメント組成物との付着性が良好である。また下地コンクリートから上昇してくる水分の無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ層裏面への透過を防止し、強靱な床構造になり、これによって、無溶剤ウレタン樹脂仕上げ層に剥離が生じることがなく,結果として膨れが発生することがない。
【0027】
また,該水系エポキシ樹脂モルタル組成物は,特許第4794007号公報に明示されているように,エポキシ樹脂に該エポキシ樹脂と反応する硬化剤を加えたものを樹脂とした場合の該樹脂の樹脂固形分重量が,水を含んだ全配合物の重量に対して4%以上10%以下であって,その混合直後のT.I値が1.0〜1.5であるため,施工時の鏝さばきが良く、セルフレベリング性が良い。
【0028】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物の塗付量は0.8〜2.0kg/m
2であり,0.8kg/m
2未満ではこの上に重層される水系ウレタン樹脂セメント組成物と無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ層との付着性が不十分となり,2.0kg/m
2超では該エポキシ樹脂モルタル組成物の硬化表面の強度が不十分となり,同様にこの上に重層される水系ウレタン樹脂セメント組成物と無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ層との付着性が不十分となる。
【0029】
水系エポキシ樹脂モルタル組成物の硬化層の上には,水硬性セメントと水系ウレタン樹脂から成る水系ウレタン樹脂セメント組成物を塗付して硬化させた層を形成する。水系ウレタン樹脂セメント組成物に使用される水硬性セメントは特に限定されるものではない。市販の水硬セメントとしては,例えば早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、アルミン酸石灰質セメント、ケイ酸アルミン酸石灰質セメント、リン酸セメント等がある。
【0030】
水系ウレタン樹脂は,水性ポリオールまたは水分散性ポリオールからなる主剤と,2個以上のイソシアネート基を持つ化合物である硬化剤から成る。
【0031】
水性ポリオールとしては,ポリヒドロキシ化合物としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキサンジオールグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール若しくはオキシアルキレン誘導体と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、若しくは多価カルボン酸エステルより得られるエステル化合物や,ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアセタールポリオール、ヒマシ油ポリオール等のポリオール化合物やその変性体が挙げられる。
【0032】
水分散性ポリオールとは水酸基を有する水に分散可能な樹脂であつて、例えば、水酸基含有成分としてメタアクリル酸2ヒドロキシエチルエステル、メタアクリル酸2ヒドロキシプロピルエステル、メタアクリル酸2ヒドロキシプロピルエステル等の少なくとも1種を含み、アクリロニトリル、メタアクリル酸、メタアクリル酸アルキルエステル等の不飽和化合物から選ばれる少なくとも1種類の不飽和化合物とを乳化重合してた調製されたアクリル共重合体系ポリオールや、芳香族、脂肪族、脂環族ジイソシアネートあるいはそれらを使用したイソシアネートオリゴマーとポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール等の多価アルコールあるいはビスヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酢酸等のヒドロキシカルボン酸の中から選ばれた少なくとも1種類以上のアルコール化合物をウレタン化反応し、必要によりカルボン酸を中和したウレタン系ポリオール等、その他ポリエーテルオール類、ポリエステルポリオール類等が挙げられる。これらは界面活性剤の乳化作用を利用して水中に分散させることができる。なお、主剤に硬化助剤として水系ジブチル錫ジウラートを0.01〜0.2重量%添加することによりタックフリー迄の時間を短縮することができる。
【0033】
硬化剤である2個以上のイソシアネート基を持つ化合物は,好ましくはポリメリックジイソシアネート、ポリメチレン・ポリフェニル・ポリイソシアネート等のポリメリックMDIと称せられるものでNCO%が15〜35%のものが適している。
【0034】
水性ポリオールまたは水分散性ポリオール,イソシアネート化合物及び水硬性セメントとの好ましい配合割合は水性ポリオールまたは水分散性ポリオール100重量部に対してイソシアネート化合物80〜120重量部、水硬性セメント50〜150重量部である。水硬性セメントが50重量部未満では水硬性セメントによる水分の吸収が少なくなりイソシアネート化合物と水分との反応により発泡する傾向が強くなり適さない。150重量部超ではセメント組成物が硬くなりすぎて塗付作業性が低下する。
【0035】
また,イソシアネート化合物が80重量部未満では硬化性が劣るため好ましくない。逆に120重量部超では水分と反応して発泡する傾向があり適さない。市販の水系ウレタン樹脂としては,水性ポリオールとしてジョリエースJJ−100A(水分散性ひまし油変性ポリオール,OH当量560g/eq,固形分70%,商品名,アイカ工業株式会社製),イソシアネート化合物としてジョリエースJJ−100B(ポリメリックMDI,NCO重量%;32%,アイカ工業株式会社製)がある。
【0036】
施工にあたっては下地層となる水系エポキシ樹脂モルタル組成物の主たる硬化形態が水和であるため,該水系エポキシ樹脂モルタル組成物が塗付されて24時間程度経過した硬化直後には,該水系エポキシ樹脂モルタル組成物層に未水和の水分が残留している場合があり,前記水系ウレタン樹脂には,該水分による発泡等の不具合が生じないように残留している水分を吸着することをも目的として水硬性セメントを配合する。該水硬性セメントの配合はこれらの目的のほか,上記万が一にも塗材組成物中の微細な空隙を通過してきた水分を吸着することも目的としている。
【0037】
また施工にあたっては金鏝,刷毛,ローラー刷毛等で硬化した塗材組成物の上に均一に塗付し,塗布量は0.08〜0.4kg/m
2が好ましく,より好ましくは0.1〜0.35kg/m
2である。0.08kg/m
2未満では均一に塗布することが難しく,この上に塗付される無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ層の付着性が不良となり,0.4kg/m
2超では塗布作業性が不良となる。0.1kg/m
2未満では均一に塗布することが難しくなる傾向があるため,この上に塗付される無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ層の付着性が不良となる傾向があり,0.35kg/m
2超では,塗布作業性が不良となる傾向がある。
【0038】
本願発明に係る床コンクリート仕上げ構造及び床コンクリート仕上げ方法は,水系ウレタン樹脂セメント組成物を塗付して硬化させた後,無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材を塗布して該無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ層を形成する。無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材の市販品としては,硬質タイプとしてアイカピュールJJ103(商品名,アイカ工業株式会社製)があり,軟質タイプとしてジョリエースJU−20(商品名,アイカ工業株式会社製)がある。
【0039】
なお本発明の床コンクリート仕上げ方法は,上記床コンクリート仕上げ構造を形成するための施工方法であり,上記に示した方法で施工される。
【0040】
以下,実施例及び比較例にて本出願に係る床コンクリート仕上げ構造及び床コンクリート仕上げ方法について具体的に説明する。
【実施例】
【0041】
実施例1及び実施例2
23℃50%RH雰囲気下において,攪拌機にジョリエースJEX210A(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂、商品名、エポキシ当量180、固形分100%、粘度0.7Pa・s/25℃)100重量部とジョリエースJEX210B(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂硬化剤、商品名、活性水素当量750、固形分18%水溶液、粘度7mPa・s/25℃)400重量部と、普通ポルトランドセメント500重量部を入れ均一に攪拌混合した水系エポキシ樹脂セメント組成物を,JISA5371−2010 プレキャスト無筋コンクリート製品の平板300×300×60mm上に金鏝で0.2kg/m
2シゴキ塗りする。塗付前の下地はをサンドペーパー#120で研磨して表面のレイタンスを除去すると共に,表面水分を測定し,ケット水分計HI−500または同HI−520(商品名,株式会社ケット科学研究所製)のコンクリートレンジ,コンクリート厚さ40mmで5.0%以下となっていることを確認した。
【0042】
該水系エポキシ樹脂セメント組成物が硬化後,その上に,上記ジョリエースJEX210A 100重量部とジョリエースJEX210B 400重量部とけい砂(JISけい砂100号)1265重量部、ホワイトセメント(太平洋セメント(株),白色ポルトランドセメント)2120重量部,水415重量部を配合し、けい砂およびホワイトセメント混合時に,Melflux AP101F((株)デグサコンストラクション社製,変成ポリカルボン酸系減水剤,商品名)5重量を配合して,水硬性セメントと水の重量比0.35、樹脂固形分重量が全固形分重量に対して4%,粘度0.7Pa・s/23℃,T.I値1.3の塗材組成物(特許第4794007号公報における実施例7)を塗付量1.8kg/m
2で金鏝にて塗付する。該塗材組成物は,特許第4794007号公報に示されているように,硬化物の総細孔量は0.15cc/gである。
【0043】
塗付1日後に水系ウレタン樹脂セメント組成物として,ジョリエースJJ−100A(水分散性ひまし油変性ポリオール,OH当量560g/eq,固形分70%,商品名,アイカ工業株式会社製)100重量部とジョリエースJJ−100B(ポリメリックMDI,NCO重量%;32%,アイカ工業株式会社製)100重量部と市販ポルトランドセメント100重量部とを十分に攪拌混合して,0.15kg/m
2塗付した。水系ウレタン樹脂セメント組成物が硬化後,無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材としてジョリエースJU−20(商品名,アイカ工業株式会社製)を1.0kg/m
2塗付し実施例1とした。実施例1において水系エポキシ樹脂モルタル組成物が硬化後,該硬化表面全体をサンドペーパー#120で研磨した後,上記水系ウレタン樹脂セメント組成物及び無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材を同様に塗布したものを実施例2とした。
【0044】
比較例1及び比較例2
上記実施例1で水系ウレタン樹脂セメント組成物を塗付せず,水系エポキシ樹脂モルタル組成物の硬化表面に直接無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材ジョリエースJU−20を塗布したものを比較例1とし,実施例2で同様に水系ウレタン樹脂セメント組成物を塗付せず,水系エポキシ樹脂モルタル組成物の硬化表面に直接無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材ジョリエースJU−20を塗布したものを比較例2とした。
【0045】
評価項目及び評価方法
【0046】
常態付着性
上記実施例1,2及び比較例1,2を無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材を塗布した後,23℃7日間養生する。無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材の塗膜が30mm×50mmの形状で残るように該塗膜の周囲の塗膜を除去する。仕上げ材の短辺側(30mm)部分の仕上げ材(
図1及び
図2においては塗材10)と,実施例1及び2では水系ウレタン樹脂セメント組成物層との界面に,比較例1及び2では水系エポキシ樹脂モルタル組成物層との界面に
図1及び
図2に示す付着力測定器の刃先1を挿入させ、刃先1に荷重することにより仕上げ材と各々の組成物層との界面に刃先1をさらに挿入進展して仕上げ材を剥離させ、剥離時の荷重を付着力とし付着性を評価した。付着力測定器の正面図を
図1に、同平面図を
図2に示す。刃先角度は11°とし、本付着力測定器での測定値が15N/cm以上を○とし、15N/cm未満10N/cm以上を△,10N/cm未満を×と評価した。
【0047】
耐水付着性
上記実施例1,2及び比較例1,2を無溶剤系ウレタン樹脂仕上げ材を塗布した後,23℃7日間養生し,さらに35℃温水に7日間,コンクリート平板全体を浸漬した。その後温水中より取り出し,直ちに,上記と同様の方法で付着力測定器により仕上げ材を剥離させ,剥離時の荷重を付着力として付着性を評価した。評価は常態付着性と同じに15N/cm以上を○とし、15N/cm未満10N/cm以上を△,10N/cm未満を×とした。
【0048】
評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
まとめ
実施例1及び実施例2においては常態付着性及び耐水付着性は共に良好で○評価であったが,比較例1及び2は常態付着性は△評価で有り,特に耐水付着性は×評価であった。
【0051】
上記常態付着性及び耐水付着性の評価で使用した付着力測定器の概念の詳細を以下に示す。
【0052】
図1及び
図2に示した付着力測定器は、刃先(刃物)1と、刃先1に角度(
図1においては11°)を保持させる支持輪2と、刃先1を先端方向に被測定物である塗材10側に連結棒6及び秤外筒8を介して押し付けるための取っ手3と、この押力の最大を測定する器具4(筒状のばね秤)からなる。当該付着力測定器は、被塗物11に塗材10が塗付されて硬化した後、所定の幅に切り出された被測定物である塗材10の端部において、塗材10と被塗物11の付着界面に刃先1の先端を、取っ手3を手で握りながら押し付け、塗材10が被塗物11より剥離する際の最大応力を、押力の最大を測定する器具4によって測定するものである。
【0053】
押力の最大を測定する器具4は秤外筒8に秤内筒9が擦動自在に内接され、該秤内筒9の下側前後には連結棒6が略垂直に固着され、該連結棒6には刃先1と一体となったカワスキが固着されている。秤内筒9は秤外筒8の内部において秤外秤8の取っ手3側の端部にコイルバネ(図示せず)によって張着されている。従って秤内筒9の後端部(
図1において右側)は秤外筒8の開放右端(
図1において右側)より突出し、刃先1が塗材10に押し付けられると、その押力が大きくなるにつれ、秤内筒9の後端部が序々に秤外筒8の開放右端から遠ざかるように摺動する。つまり、前記コイルバネ(図示せず)が伸展することによって刃先1が塗材10に押し付けられる力も大きくなることになる。測定時において秤内筒9が最大に摺動した時点が刃先1が塗材10に最も大きな力で押されたこととなり、その際塗材10は被塗物11より剥離することになる。この秤内筒9の最大の摺動位置が置き針5によって秤外筒8の所定位置に添着されて、塗材10が被塗物11より剥離して秤内筒9が秤外筒8内にすべて収納され
図1の状態になった後でも、置き針5が置かれた位置によって刃先1が塗材10に押し付けられた力を読み取ることが出来るものである。なお12は秤外筒8の下部前後に渡って細長に設けられた秤外筒の切り欠き部であり、この秤外筒の切り欠き部12を連通して連結部6が秤内筒9と固着されている。また7は両側に配置された2個の支持輪2を回転自在に固着する支持輪台であり、前記刃先1と一体となったカワスキの下側に固着されている。刃先1の角度は当該支持輪2の位置を前後することや支持輪2の直径を変化させることにより変えることが出来る。つまり支持輪2の位置を
図1において右側に移動させ、又は支持輪2の直径を小さくすることにより刃先1の角度を小さくすることが出来る。
【0054】
なお、押力の最大を測定する器具4は
図1及び
図2では円筒状のバネ秤を用いたが、デジタルセンサー式でも構わない。