(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952062
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】樹脂成型品の取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20160630BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20160630BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160630BHJP
B29C 65/64 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
F16B5/02 F
F16B43/00 Z
B60R16/02 623T
B29C65/64
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-87175(P2012-87175)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-217422(P2013-217422A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 貴典
(72)【発明者】
【氏名】石原 義之
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−248962(JP,A)
【文献】
実開昭62−045408(JP,U)
【文献】
実開昭61−050047(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
F16B 43/00
B60R 16/02
B29C 65/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成型品の取付部の装着孔に装着された金属カラーのネジ挿通孔に挿通されるボルトを介し、前記樹脂成型品を取り付け対象側の座面に取り付ける樹脂成型品の取付構造であって、
前記ネジ挿通孔が前記取り付け対象側の座面における締結方向と一致するように、前記取付部の前記座面に向けられる取付面が傾斜し、
前記装着孔は、開口が多角形状であり、
前記金属カラーは、筒部の外形が前記装着孔の内面に合致する前記多角形状であり、
前記金属カラーの前記座面に向けられる開口端側が前記取付部の取付面と面一となるように傾斜し、
前記金属カラーの前記開口端側とは反対側に前記ボルトの頭部に当接するフランジが設けられている
ことを特徴とする樹脂成型品の取付構造。
【請求項2】
前記金属カラーは、前記多角形状が四角形状であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成型品の取付構造。
【請求項3】
前記金属カラーは、前記座面に向けられる開口端側の第1の開口端面が前記取付部の肉厚側の取付面の位置と同じ高さとされ、前記第1の開口端面と対向する第2の開口端面が前記取付部の肉薄側の取付面の位置と同じ高さとされ、第3及び第4の開口端面が前記第1の開口端面から前記第2の開口端面に向けて下がるように傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の樹脂成型品の取付構造。
【請求項4】
前記金属カラーは、前記装着孔に対し圧入又は一体成形されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成型品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば車両にワイヤーハーネス等を固定する場合に用いられる樹脂成型品の取り付けに適した樹脂成型品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、車両にワイヤーハーネス等を固定する場合、樹脂成型品であるプロテクタ等の取付ブラケットを用いて行うことが多い。この場合、取付ブラケットのボルト挿通孔にボルトのネジ軸部を通し、そのボルトで取付ブラケットを車体の座面に締結し、その取付ブラケットを介してワイヤーハーネス等を車体側に固定している。また、車体側にネジ軸部を設けておき、そのネジ軸部にナットを締め付けることにより、取付ブラケットを車体に締結する場合もある。
【0003】
ところで、このような取付ブラケットは、ボルトやナットの締め込みにより破損する場合がある。このようなボルトやナットの締め込みによる破損を防止する場合、たとえば特許文献1に示される合成樹脂部品の取付構造のように、ボルト挿通孔の内周に円柱状の金属カラーを嵌め込むことで補強することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−304023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に示されている合成樹脂部品の取付構造では、円柱状の金属カラーによる補強によってボルトやナットの締め込みによる破損が防止されるようになっている。
【0006】
ところで、たとえば車体側に形成されているネジ孔が車体側の座面に対して直交している場合、取付ブラケットのボルト挿通孔に挿通されたボルトの挿通方向と、座面のネジ孔におけるボルトの締結方向とが一致する。この場合、たとえば取付ブラケットの取付面(車体側の座面に向けられる面)側に、たとえば取付ブラケットのボルト挿通孔でのボルトの挿通方向と、座面のネジ孔におけるボルトの締結方向とを一致させるような加工を施す必要がない。
【0007】
そのため、円柱状の金属カラーを用いた場合であっても、ボルトによる締結時には、金属カラーの開口端面(車体側の座面に向けられる面)の全体と車体側の座面とが面接触し、金属カラーの開口端面と車体側の座面との間に隙間が生じない。
【0008】
ちなみに、ボルトによる締結時に、金属カラーの開口端面(車体側の座面に向けられる面)と車体側の座面との間に隙間を生じてしまうと、車体側の座面に対するボルトの締結力が弱くなる。この場合、取付ブラケットにガタが生じてワイヤーハーネス等の車体側への固定が不完全なものとなってしまう。
【0009】
一方、たとえば車体側に形成されているネジ孔が車体側の座面に対して直交していない場合、すなわち、そのネジ孔が座面に対して傾いて形成されていると、取付ブラケットのボルト挿通孔でのボルトの挿通方向と、座面のネジ孔におけるボルトの締結方向とが一致しないため、座面のネジ孔にボルトを締結することができなくなる。なお、ネジ孔が座面に対して傾いて形成されている例としては、たとえば車体側の座面が傾斜している場合に多く見受けられる。
【0010】
この場合、取付ブラケットのボルト挿通孔でのボルトの挿通方向と、座面のネジ孔におけるボルトの締結方向とが一致するように、取付ブラケットの取付面(車体側の座面に向けられる面)側を傾斜させる必要がある。ちなみに、取付ブラケットの取付面とは反対側の面を傾斜させると、たとえばボルトの頭部の一部がその取付面とは反対側の面で浮いてしまう。併せて、ボルトの締結時に、円柱状の金属カラーの開口端面(車体側の座面に向けられる面)が車体側の座面に面接触するように、その開口端面を傾斜させる必要ががある。
【0011】
なお、円柱状の金属カラーは、取付ブラケットのボルト挿通孔に圧入される場合と、インサート成形時に予め金型にセットされて一体成形される場合とがある。このようなことを踏まえ、取付ブラケットの取付面(車体側の座面に向けられる面)側を傾斜させ、さらに円柱状の金属カラーの開口端面を車体側の座面に合うように傾斜させた場合について考察する。
【0012】
すなわち、たとえば
図7(a)に示すように、車体側の座面80には矢印x(ボルトの締結方向)で示す方向に図示しないネジ孔が形成されているものとする。ここで、円柱状の金属カラー70を取付ブラケット60のボルト挿通孔61に圧入する場合、車体側の座面80に対して取付ブラケット60の取付面(車体側の座面に向けられる面)の取り付け方向等を考慮しながら金属カラー70の開口端面を車体側の座面80の傾斜に合うよう位置合わせする必要がある。
【0013】
この場合、金属カラー70の開口端面が取付ブラケット60の取付面(車体側の座面に向けられる面)と面一とされるように、金属カラー70の開口端面の頂点(開口端面の最も高い位置)71を取付ブラケット60の肉厚側に位置合わせすることになる。このようにすると、ボルトによる締結時には、車体側の座面80との間に隙間を生じないことになる。
【0014】
これに対し、たとえば
図7(b)に示すように、金属カラー70の開口端面の頂点(開口端面の最も高い位置)71が取付ブラケット60の肉薄側に向いた状態で、金属カラー70が取付ブラケット60のボルト挿通孔61に圧入されてしまうと、金属カラー70の開口端面の頂点(開口端面の最も高い位置)71が取付ブラケット60の取付面(車体側の座面に向けられる面)から突出してしまう。
【0015】
この場合、ボルトによる締結時には、金属カラー70の開口端面の一部と車体側の座面80との間に隙間を生じてしまい、上述したように、取付ブラケット60にガタが生じてワイヤーハーネス等の車体側への固定が不完全なものとなってしまう。
【0016】
一方、上述した金属カラー70が予め金型にセットされて一体成形される場合は、金属カラー70の開口端面の傾斜を成形後の上述した取付ブラケット60の取付面の傾斜に合うように、金属カラー70を金型内の円柱突起(上述したボルト挿通孔61が形成される部分)にセットする必要がある。
【0017】
ところが、金型のキャビティーに樹脂が注入されると、その流圧により円柱突起にセットされた金属カラー70が回転してしまい、たとえば上述した
図7(b)と同様に、金属カラー70の開口端面の頂点(開口端面の最も高い位置)71が取付ブラケット60の肉薄側に向いた状態で一体成形されてしまうことがある。
【0018】
この場合も、上記同様に、金属カラー70の開口端面の一部と車体側の座面80との間に隙間を生じてしまい、上述したように、取付ブラケット60にガタが生じてワイヤーハーネス等の車体側への固定が不完全なものとなってしまう。
【0019】
このようなことから、たとえば車体側に形成されているネジ孔が車体側の座面80に対して直交していない場合、すなわち、そのネジ孔が座面80に対して傾いて形成されている場合であっても、取付ブラケット60を車体側の座面80に確実に取り付けることができる樹脂成型品の取付構造の開発が望まれていた。
【0020】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、取り付け対象側の座面におけるボルトによる締結方向が座面に対して直交していない場合であっても、樹脂成型品を取り付け対象側の座面に確実に取り付けることができる樹脂成型品の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の樹脂成型品の取付構造は、樹脂成型品の取付部の装着孔に装着された金属カラーのネジ挿通孔に挿通されるボルトを介し、前記樹脂成型品を取り付け対象側の座面に取り付ける樹脂成型品の取付構造であって、前記ネジ挿通孔が前記取り付け対象側の座面における締結方向と一致するように、前記取付部の前記座面に向けられる取付面が傾斜し、前記装着孔は、開口が多角形状であり、前記金属カラーは、筒部の外形が前記装着孔の内面に合致する前記多角形状であり、前記金属カラーの前記座面に向けられる開口端側が前記取付部の取付面と面一となるように
傾斜し、前記金属カラーの前記開口端側とは反対側に前記ボルトの頭部に当接するフランジが設けられていることを特徴とする。
また、前記金属カラーは、前記多角形状が四角形状であることを特徴とする。
また、前記金属カラーは、前記座面に向けられる開口端側の第1の開口端面が前記取付部の肉厚側の取付面の位置と同じ高さとされ、前記第1の開口端面と対向する第2の開口端面が前記取付部の肉薄側の取付面の位置と同じ高さとされ、第3及び第4の開口端面が前記第1の開口端面から前記第2の開口端面に向けて下がるように傾斜していることを特徴とする。
また、前記金属カラーは、前記装着孔に対し圧入又は一体成形されることを特徴とする。
本発明の樹脂成型品の取付構造では、外形が多角形状の金属カラーを開口が多角形状の装着孔に装着することで、装着孔に対する金属カラーの位置合わせが容易となり、しかも装着後での位置ズレが生じない。また、ネジ挿通孔が取り付け対象側の座面における締結方向と一致するように、取付部の座面に向けられる取付面が傾斜し、金属カラーの座面に向けられる開口端側が取付部の取付面と面一となるように傾斜しているため、ボルトによる締結時には座面に向けられる金属カラーの開口端側と座面との間に隙間を生じさせることなく確実に面接触させることができる。
また、ボルトの締結時には、ボルトの頭部が金属カラーのフランジに当接し、金属カラーの開口端側が座面に当接するので、ボルトの締結力が取付部に作用しない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂成型品の取付構造によれば、ボルトによる締結時には座面に向けられる金属カラーの開口端側と座面との間に隙間を生じさせることなく確実に面接触させるようにしたので、取り付け対象側の座面におけるボルトによる締結方向が座面に対して直交していない場合であっても、樹脂成型品を取り付け対象側の座面に確実に取り付けることができる。
また、ボルトの締結力が取付部に作用しないので、ボルトの締結力を大きくすることができ、座面に対して取付部を破損させることなくより強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の樹脂成型品の取付構造の一実施形態を説明するものであって、プロテクタと金属カラーとを示す斜視図である。
【
図2】
図1のプロテクタの取付部を示す平面図である。
【
図3】
図1の金属カラーを説明するためのものであり、同図(a)は金属カラーを示す斜視図、同図(b)はプロテクタの取付部の装着孔に金属カラーが圧入された状態を示す断面図、同図(c)は金属カラーの座面に向けられる開口端側を示す平面図である。
【
図4】
図1の金属カラーが一体成形される場合を説明するための断面図である。
【
図5】
図1の金属カラーが一体成形される場合を説明するための断面図である。
【
図6】
図1のプロテクタが車体側に取り付けられる場合を説明するための断面図である。
【
図7】従来の円柱状の金属カラーを説明するためのものであり、同図(a)は金属カラーに位置ズレが生じていない場合を説明するための断面図、同図(b)は金属カラーに位置ズレが生じている場合を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の樹脂成型品の取付構造の一実施形態の詳細を、
図1〜
図6を参照して説明する。なお、以下においては、本発明の樹脂成型品の取付構造を、たとえば車両にワイヤーハーネス等を固定する場合に用いられる、樹脂成型品であるプロテクタに適用した場合として説明する。また、以下に説明する金属カラーは、成形後のプロテクタに対して圧入される場合と、インサート成形によって予め一体成形される場合とがあり、それぞれについては順次説明するものとする。
【0025】
まず、金属カラーが成形後のプロテクタの取付部に対して圧入される場合について説明する。すなわち、
図1及び
図2に示すように、成形後のプロテクタ1には、図示しないワイヤーハーネス等を保持するプロテクタ本体2と、後述の
図6に示す車体パネル50の座面51に後述の
図6に示すボルト30によって取り付けられる取付部3とが設けられている。取付部3には、補強用の金属カラー20が圧入される開口が四角形状の装着孔4が形成されている。なお、取付部3の背面側である後述の
図3に示す取付面3aは、金属カラー20の後述のネジ挿通孔23が、後述の
図6に示す車体パネル50の座面51の締結方向gと一致するように、傾斜している。
【0026】
金属カラー20は、後述の
図6に示すボルト30や図示しないナットの締め込みにより、取付部3の破損を防止するために用いられるものであり、その外形が装着孔4の内面に合致する四角形状とされている。また、金属カラー20には、プロテクタ1の取付部3の装着孔4に圧入される筒部21と、装着孔4の開口縁部に係合されるフランジ22と、後述の
図6に示すボルト30のネジ軸部31が挿通されるネジ挿通孔23とが設けられている。
【0027】
すなわち、金属カラー20は、
図3(a)に示すように、四角形状の筒部21の一方の開口端側にフランジ22が設けられている。これら筒部21及びフランジ22の中心には、ネジ挿通孔23が形成されている。ネジ挿通孔23は、寸法e、fが後述の
図6に示すボルト30のネジ軸部31の直径程度となる大きさとされている。これにより、ネジ挿通孔23に後述のボルト30のネジ軸部31が挿通されたとき、ネジ軸部31とネジ挿通孔23との間にガタが生じないようになっている。
【0028】
また、金属カラー20の他方の開口端側は、
図3(b)(c)に示すように、プロテクタ1の取付部3の取付面3aの傾斜に合うように傾けられている。なお、この取付面3aの傾斜は、金属カラー20のネジ挿通孔23が、後述の
図6に示す車体パネル50の座面51の締結方向gと一致させるためのものである。
【0029】
ここで、第1〜第4の開口端面a〜dのうち、第1の開口端面aが取付部3の肉厚側の取付面3aの位置までの高さとされ、第1の開口端面aと対向する第2の開口端面bが取付部3の肉薄側の取付面3aの位置までの高さとされている。そして、第3及び第4の開口端面c、dが第1の開口端面aから第2の開口端面bに向けて下がるように傾斜している。言い換えれば、金属カラー20が装着孔4に圧入されると、金属カラー20の他方の開口端側が取付部3の取付面3aと面一となるような形状とされている。
【0030】
このような構成では、図示しないワイヤーハーネス等を車体側に固定する場合、まず
図1に示すプロテクタ1の取付部3の開口が四角形状の装着孔4に金属カラー20の四角形状の筒部21を圧入する。この場合、上述したように、筒部21の第1の開口端面aを取付部3の肉厚側に向け、第1の開口端面aと対向する第2の開口端面bを取付部3の肉薄側に向けるようにする。
【0031】
また、この場合、第1の開口端面aと第2の開口端面bとの高さが異なるため、取付部3の四角形状の装着孔4に対する金属カラー20の圧入方向を容易に把握することができ、金属カラー20の筒部21を装着孔4に向きを間違えることなく圧入することができる。このとき、金属カラー20の四角形状の筒部21が同形状の装着孔4に圧入されるため、金属カラー20が装着孔4に対してガタ付いたり位置ズレしたりすることなく装着される。
【0032】
次に、金属カラー20がインサート成形によって予め一体成形される場合について説明する。まず、
図4(a)において、符号40はプロテクタ1の取付部3のみの成形を略図的に表した金型であり、符号41は上金型であり、符号42は下金型である。また、符号43は、上述したプロテクタ1の取付部3の四角形状の装着孔4を形成するための突起である。また、符号44は、上述したプロテクタ1が形成されるために樹脂が充填されるキャビティーを示している。
【0033】
ここで、突起43の一側辺側a−1は、上述した筒部21の第1の開口端面aと同様に、取付部3の肉厚側の取付面3aの位置までの高さとされている。一側辺側a−1と対向する対向辺側b−1は、上述した筒部21の第2の開口端面bと同様に、取付部3の肉薄側の取付面3aの位置までの高さとされている。残り2辺の他側辺側c−1及びd−1は、上述した筒部21の第3及び第4の開口端面c、dと同様に、一側辺側a−1から対向辺側b−1に向けて下がるように傾斜している。
【0034】
そして、下金型42の突起43に金属カラー20を装着する場合、
図4(b)及び
図5に示すように、筒部21の第1の開口端面aを突起43の一側辺側a−1に向け、筒部21の第2の開口端面bを突起43の対向辺側b−1に向けるようにする。これにより、下金型42の突起43に対する金属カラー20の装着方向が決められるため、下金型42の突起43に対する金属カラー20の装着を間違えることなく確実に行うことができる。また、キャビティー44内に樹脂が注入されて金属カラー20にその流圧が加わっても、金属カラー20は四角形状の突起43に装着されているため、回転することなく、位置ズレも生じない。
【0035】
次に、上述した成形後に金属カラー20が圧入されたプロテクタ1や、上述したインサート成形によって金属カラー20が予め一体成形されたプロテクタ1を車体側に取り付ける場合について説明する。
【0036】
まず、
図6に示すように、取り付け対象側である車体パネル50の座面51は、傾斜方向hで示すように、たとえば下方に向けて突出するように傾斜している(所定の傾斜角を有している)。また、車体側の車体パネル50の座面51には、ボルト30のネジ軸部31が締結されるネジ孔52が形成されている。ここで、車体パネル50の座面51が傾斜していることにより、座面51のネジ孔52の向きである、ボルト30の締結方向gは、車体パネル50の座面51の傾斜方向hに対して直交していないことになる。
【0037】
一方、プロテクタ1の取付部3の取付面3aは、金属カラー20のネジ挿通孔23がその締結方向gと一致するように傾斜している。また、その取付部3の装着孔4に圧入又は一体成形された金属カラー20は、上述したように、筒部21の第1の開口端面aが取付部3の肉厚側に向けられ、第1の開口端面aと対向する第2の開口端面bが取付部3の肉薄側に向けられている。
【0038】
これにより、金属カラー20の他方の開口端側は、
図3(b)で説明したように、プロテクタ1の取付部3の取付面3aの傾斜に合うように傾けられる。言い換えれば、上述したように、金属カラー20が装着孔4に圧入又は一体成形されると、金属カラー20の他方の開口端側が取付部3の取付面3aと面一となるような形状とされている。
このようなことから、プロテクタ1の取付部3の取付面3aを車体パネル50の座面51に向かい合わせたとき、金属カラー70の他方の開口端側と車体パネル50の座面51との間が隙間無く接することになる。
【0039】
そして、プロテクタ1の取付部3の装着孔4にボルト30を挿通し、そのネジ軸部31をネジ孔52に締結することで、プロテクタ1を車体側の座面51に確実に取り付けることができる。その結果、図示しないワイヤーハーネス等の車体側への固定が完全なものとなる。
【0040】
このように、本実施形態では、樹脂成型品であるプロテクタ1の取付部3の車体側の座面51に向けられる取付面3aを、金属カラー20のネジ挿通孔23が車体パネル50の座面51の締結方向gと一致させるように傾斜させ、開口が四角形状の装着孔4に外形が四角形状であり、しかも座面51に向けられる開口端側が取付部3の取付面3aと面一となるように傾斜している金属カラー20を圧入又は一体成形で装着しているので、プロテクタ1を座面51にボルト30の締結により取り付ける際、座面51に向けられる金属カラー20の開口端側と座面51との間に隙間を生じさせることなく面接触させることができる。これにより、取り付け対象側である車体側の座面51におけるボルト30による締結方向gが座面51に対して直交していない場合であっても、プロテクタ1を車体側の座面51に確実に取り付けることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、金属カラー20を外形が四角形状とした場合について説明したが、これに限らず、プロテクタ1の取付部3の装着孔4に圧入又は一体成形される際に、位置ズレが生じない形状であればよく、たとえば外形が三角形、五角形等のような多角形状としてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、単体のボルト30を金属カラー20のネジ挿通孔23に挿通することで、プロテクタ1を車体側の座面51の取り付ける場合として説明したが、この例に限らず、車体側の座面51に予めネジ軸部が設けられているような場合であっても、上記同様に、プロテクタ1を取り付け対象側の座面51に確実に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
たとえば車両にワイヤーハーネス等を固定する場合に用いられる、樹脂成型品であるプロテクタに適用する以外に、電力線や信号線等を取り付ける際に用いられるプロテクタ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 プロテクタ
2 プロテクタ本体
3 取付部
3a 取付面
4 装着孔
20 金属カラー
21 筒部
22 フランジ
23 ネジ挿通孔
30 ボルト
31 ネジ軸部
40 金型
41 上金型
42 下金型
43 突起
50 車体パネル
51 座面
52 ネジ孔
60 取付ブラケット
61 ボルト挿通孔
70 金属カラー
80 座面